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タイトル:特許公報(B2)_トレハロース又はマルチトールと金属イオン化合物との会合物
出願番号:2003521247
年次:2009
IPC分類:C07H 3/04,A23L 1/20,A23L 1/22,A23L 1/237,A23L 1/304,A23L 1/337,A23L 2/38,A61K 8/60,A61K 31/7016,A61K 9/06


特許情報キャッシュ

奥 和之 久保田 倫夫 福田 恵温 三宅 俊雄 JP 4340151 特許公報(B2) 20090710 2003521247 20020808 トレハロース又はマルチトールと金属イオン化合物との会合物 株式会社林原生物化学研究所 000155908 奥 和之 久保田 倫夫 福田 恵温 三宅 俊雄 JP 2001245083 20010810 JP 2001338458 20011102 JP 2001395153 20011226 JP 2002195390 20020704 20091007 C07H 3/04 20060101AFI20090910BHJP A23L 1/20 20060101ALI20090910BHJP A23L 1/22 20060101ALI20090910BHJP A23L 1/237 20060101ALI20090910BHJP A23L 1/304 20060101ALI20090910BHJP A23L 1/337 20060101ALI20090910BHJP A23L 2/38 20060101ALI20090910BHJP A61K 8/60 20060101ALI20090910BHJP A61K 31/7016 20060101ALI20090910BHJP A61K 9/06 20060101ALI20090910BHJP JPC07H3/04A23L1/20A23L1/22A23L1/237A23L1/304A23L1/337A23L2/38A61K8/60A61K31/7016A61K9/06 C07H 3/04 CA/REGISTRY(STN) 特開2000−300213(JP,A) 特開2000−300190(JP,A) 特開昭57−134498(JP,A) 特開平11−089547(JP,A) 特開平07−250613(JP,A) 特開平08−183996(JP,A) 特開平11−346719(JP,A) Carbohydrate Research,1973年,vol.31,pp.265-275 斉藤典行,多機能糖質「トレハロース」,ジャパンフードサイエンス,1997年,11月号,pp.39-42 7 JP2002008132 20020808 WO2003016325 20030227 44 20050627 植原 克典 技術分野本発明は、糖質と金属イオン化合物との新規な会合物、より詳細には、トレハロース又はマルチトールと金属イオン化合物との会合物に関するものである。背景技術ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛、ニッケルなどの金属元素は、炭素、酸素、水素、窒素などと比べると量的には必ずしも多くが必要とされる訳ではないけれども、正常な生体機能を維持する上で、いずれも欠くことができない元素(必須元素)である。このような必須元素としての金属元素は、通常、塩などの、イオン化した金属元素を含む化合物(金属イオン化合物)の形態で生物体に摂取され、その体内でそれぞれの機能を果たしている。マグネシウム及びカルシウムは、人の生体内で多くの酵素反応などに関与しているミネラルであって、その必要量も比較的多いことが知られている。また、マグネシウム及びカルシウムは生体内においては骨に多く存在しているため、その欠乏症は骨粗鬆症、骨軟化症の原因になる。更に、最近になって、マグネシウムの欠乏は糖尿病、高血圧症といった疾患の一因であると考えられるようになってきた。マグネシウムは、植物にとっても必須のミネラルであって、一般には、植物栄養剤として、窒素、リン、カリウムとともに、液状又は固状肥料として、植物に供給され、生長に利用される。これが欠乏すると欠乏症状の出現することも知られている。上記のとおり種々の金属元素が生物体にとって必須である一方、塩類などの金属イオン化合物は、経口摂取において、その量によっては不快味を呈する場合がある。このため、食品工業分野においては、金属イオン化合物についての問題は、主として、これを経口的に摂取する際の呈味の悪さにあると捉えられ、この問題点を解決するための研究がこれまでに種々行われてきた。本発明者等は、これまでに、糖質ならびに糖質関連物質を中心に、主として、新規な食品素材の開発と利用を目指した研究を広く進めてきた。そして、その研究の一環として、糖質と金属イオン化合物とを含む組成物の新規かつ有効な食品工業における利用についての研究を重ねてきた。この研究の過程で、本発明者等は、食品分野で通常利用されている金属イオン化合物は、個々に、潮解性、還元力、酸化力、水への難溶性などの、食品もしくはその素材の製造や保存において好ましくない性質を有しているのに対して、これらの性質は一般に、個々の金属イオン化合物本来の改善し得ない性質であると見なされ、解決すべき問題としては必ずしも認識されてこなかったという事実を見出した。そして、これらの好ましくない性質が改善された金属イオン化合物の調製品を開発し、提供することによって、食品工業に多大な貢献ができるものと考えた。すなわち、本発明は、金属イオン化合物又は苦汁成分が本来的に有する、潮解性、還元力、酸化力、水への難溶性などといった、工業的な取扱いの上で好ましくない、金属イオン化合物本来の性質が改善された金属イオン化合物又は苦汁成分を含む調製品とその製造方法ならびに用途を提供するという、本発明者等による独自の着想に基づいて掲げられた全く新規な課題を解決しようというものである。発明の開示本発明者等は、糖質の利用に関する研究を通して得た独自の知見を生かして上記の課題を解決することを目指し、研究に着手した。先ずはじめに、糖質と金属イオン化合物とを諸種の組み合わせで共存させたときの金属イオン化合物本来の性質の変化について広く検討した。その結果、非還元性二糖であるトレハロース及びマルチトールは、金属イオン化合物と共存させたときに、金属イオン化合物の潮解性を改善したり、水への溶解性を高めたり、金属イオン化合物による酸化還元反応を抑制するなどの機能を発揮し、しかも、上記の糖質によるこれらの機能が、他の糖質に比べて特に際だったものであることが判明した。さらに、上記の糖質によってこれらの機能が発揮される機構を探るために、トレハロース又はマルチトールと金属イオン化合物とを共存させた際の両者の相互作用を分子のレベルで詳細に解析した。その結果、トレハロース及びマルチトールは共に、金属イオン化合物と共存するときに会合物を形成し、そして、この形成された会合物において、上記のような金属イオン化合物の性質の変化が認められることが判明した。以上の結果から、トレハロース又はマルチトールと金属イオン化合物とを共存させることにより得られる会合物は、食品工業において、従来の金属イオン化合物の調製品には見られない優れた利用価値を有していることが判明した。また、金属イオン化合物の具体例として、マグネシウムイオン化合物及び/又はカルシウムイオン化合物を含む金属イオン化合物が苦汁成分の場合も同様に会合物を形成し、優れた利用価値を提供できることが判明した。本発明は、以上の本発明者等による独自の知見に基づいて完成されたものである。なお、因みに、トレハロースと塩類との会合物に関しては、ウィリアム・ジェイ・クックら、『カーボハイドレート・リサーチ』、第31巻、265乃至275頁(1973年)に、トレハロースと臭化カルシウムとが約1:1のモル比で会合した会合物の結晶が報告されている。この結晶は、口腔内で歯垢が形成される機構の解明を目指した彼らの研究の過程で見出されたものであって、彼らの知見は、トレハロースと臭化カルシウムの会合物もしくはその結晶の工業的な利用に対しては何ら示唆を与えるものではない。したがって、食品製造をはじめとする諸種の産業において有用性を発揮する、臭化カルシウム以外の金属イオン化合物又は苦汁成分と、トレハロース又はマルチトールとの会合物ならびに、その製造方法及び用途の開示は、本発明をもって嚆矢とするものである。以上のとおり、本発明は、トレハロース又はマルチトールと金属イオン化合物又は苦汁成分との会合物とその製造方法ならびに用途を提供することによって上記の課題を解決するものである。発明を実施するための最良の形態本発明は、トレハロース又はマルチトールと、臭化カルシウム以外の金属イオン化合物又は苦汁成分との会合物とその製造方法ならびに用途に関するものである。本発明でいうトレハロースとは、2分子のグルコースが還元性基同士でα,α結合してなる二糖であるα,α−トレハロースを意味する。本発明でいうマルチトールとは、2分子のグルコースがα−1,4結合してなる二糖であるマルトースの還元体を意味する。本発明の実施において、トレハロースならびにマルチトールは、後述する金属イオン化合物との会合物を形成するものである限り、純度や性状(液状、非晶質粉末、含水結晶粉末、無水結晶粉末など)は問わない。本発明で利用するトレハロースならびにマルチトールは公知の方法で調製することができる一方、本発明の実施分野に応じて、市販品を利用することも随意である。トレハロースの市販品としては、例えば、含水結晶トレハロース粉末の食品級の調製品である株式会社林原商事販売の『トレハ』(登録商標)(HPLC分析によるトレハロース純度98%以上)があり、マルチトールの市販品としては、例えば、食品級のマルチトール含有シラップである株式会社林原商事販売の『マビット』(登録商標)(固形分含量74%以上、HPLC分析による全糖当たりのマルチトール含量75%以上)や無水結晶マルチトールの食品級の調製品である『結晶マビット』(水分1.5%以下、HPLC分析によるマルチトール純度99%以上)などがある。本発明でいう金属イオン化合物とは、陽イオンと陰イオンとの間のイオン結合を含む化合物のうち、陽イオンが金属イオンであるものを意味し、塩、アルカリ、錯化合物を含む。本発明の実施においては、トレハロース又はマルチトールとの会合物を形成しうる、臭化カルシウム以外の金属イオン化合物はいずれも有利に利用できる。例えば、陽イオンとして、1価又は2価以上の電荷を有する金属イオンの1種又は2種以上を含有するもの、詳細には、周期律表における1族乃至16族に属する金属原子のイオンの1種又は2種以上を含有するもの、より詳細には、周期律表における1族に属するリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムなど、2族に属するベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムなど、3族に属するスカンジウム、イットリウムなど、4族に属するチタン、ジルコニウム、ハフニウムなど、5族に属するバナジウム、ニオブ、タンタルなど、6族に属するクロム、モリブデン、タングステンなど、7族に属するマンガン、テクネチウム、レニウムなど、8族に属する鉄、ルテニウムなど、9族に属するコバルト、ロジウムなど、10族に属するニッケル、パラジウムなど、11族に属する銅、銀など、12族に属する亜鉛など、13族に属するアルミニウム、ガリウムなど、14族に属するゲルマニウムなど、15族に属するアンチモンなど、16族に属するポロニウムなどから選ばれる1種又は2種以上の金属原子のイオンを含有するものが挙げられる。これらのうち、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ストロンチウムイオンなどのアルカリ土類金属のイオン、鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオン、マンガンイオン、亜鉛イオンなどの遷移元素に属する金属のイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属のイオンから選ばれる1種又は2種以上を含む金属イオン化合物は、下記に詳述するような会合物としての有用性が比較的顕著であり、特に、2価以上の電荷を有する金属イオンを含む金属イオン化合物がさらに有用性が顕著であることから、これらは本発明の実施に特に有用である。また、本発明の金属イオン化合物における陰イオンとしては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン(対イオンとしてカルシウムイオンを有する場合を除く)などのハロゲンイオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、硫酸水素イオン、チオ硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン、亜塩素酸イオン、水酸化物イオン、アンモニウムイオンなどの無機陰イオンや、酢酸イオン、乳酸イオン、クエン酸イオン、フマル酸イオン、リンゴ酸イオンなどの有機陰イオンから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。これらのうち、下記に詳述するような会合物としての有用性は、陰イオンとして無機陰イオンを含むものにおいて比較的顕著であることから、無機陰イオンを含有する金属イオン化合物が本発明において特に有利に利用できる。なお、本発明の会合物を生体に適用することが想定される場合には、本発明の実施において、金属イオン化合物として、生理学的に許容されるものを用いるのが望ましいことはいうまでもない。以下、単に「金属イオン化合物」という場合、臭化カルシウムを除く全ての金属イオン化合物を意味するものとする。本発明でいう会合物とは、上記に示されるトレハロース又はマルチトールと金属イオン化合物とが、直接的な相互作用によって会合した状態にある物質をいい、実質的にトレハロース又はマルチトールと金属イオン化合物とから構成されている。ここでいう「直接的な相互作用」とは、例えば、水素結合、分子間力、イオン結合、配位結合などであり、液体、固体、気体、溶液又はペースト状の状態におけるこれらの結合を包含する。また、ここでいう「実質的にトレハロース又はマルチトールと金属イオン化合物とから構成される」とは、当該会合物が、構成成分として、通常、トレハロース又はマルチトールと金属イオン化合物とからなり、場合によっては、さらに、結合水などの該構成成分以外の分子を構成成分として含むことがあることを意味する。なお、当該会合物において、金属イオン化合物は、通常、該金属イオン化合物における金属イオンとその対イオンが中和しあう状態(例えば、塩など)でトレハロース又はマルチトールと会合しているけれども、場合によっては、該金属イオンとトレハロース又はマルチトールとが会合しあい、この会合物を中和するように該金属イオンに対する対イオンが存在する場合もある。本発明の会合物は、以下のようにして確認することができる。溶液中で形成されている当該会合物は、例えば、『実験化学講座5』、日本化学会編、丸善株式会社発行(1991年)、221乃至224頁に記載された核磁気共鳴吸収法(以下、「NMR」という。)により確認することができる。すなわち、本発明の会合物を溶解含有している溶液と、斯かる会合物を形成していないことが明かな、例えば、トレハロース又はマルチトールのみを溶解含有する溶液とをNMRに供して、構成原子の緩和時間を比較し、当該会合物の溶液における緩和時間がより短いという現象によって確認される。また、当該会合物をNMR分析に供し、常法により帰属される化学シフト(ppm)の少なくとも1個以上が、その会合物を形成しているトレハロース又はマルチトール単独の標品を用いて検出される、対応する化学シフトと比べて、明らかに異なる値を示すという事実によっても確認することができる。さらに、当該会合物は、例えば、これを溶液中で晶出させ、得られる結晶を単離し、その結晶構造を解析することによっても確認することができる。すなわち、本発明の会合物の結晶と、これを構成しているトレハロース又はマルチトールならびに金属イオン化合物の単独の結晶とについてX線回折図形を求め、当該会合物の回折図形が、上記の単独の結晶のX線回折図形ならびに、上記の単独の結晶のX線回折図形を組み合わせた図形のいずれとも一致しないという事実により確認される。以上のような本発明の会合物は、通常、トレハロース又はマルチトールに対して金属イオン化合物(もしくは金属イオン)を、モル比として、通常、0.5以上5以下、望ましくは、1以上4以下の範囲で含有する。また、後記実施例に詳述する、トレハロースと塩化カルシウムとの会合物の結晶ように、両者のモル比が約1又は約2というように、トレハロース又はマルチトールと金属イオンとがある一定のモル比で確認される場合もある。本発明の会合物は、トレハロース又はマルチトールと金属イオン化合物とを混合することにより形成させることができる。混合の方法は、トレハロース又はマルチトールと金属イオン化合物との接触が達成できるものであればよく、通常、同一の溶媒中で、両者が溶解する条件下で混合するのが好適である。溶媒としては、水、エタノール、メタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、酢酸などが挙げられる。食品分野、化粧品分野、医薬品分野などで利用される場合のように、本発明の会合物を生体に適用することを前提として調製する場合には、水やエタノールなどの生理学的に許容される溶媒を用いるのが望ましい。また、トレハロース又は金属イオン化合物としてそれぞれの水和物を用いたり、塩化カルシウムなどの本来的に潮解性を有する金属イオン化合物を用いる場合には、固体の状態にある両者を混合することによって目的とする会合物を形成させることも可能である。トレハロース又はマルチトールと金属イオン化合物との混合比は、金属イオン化合物の種類にもよるけれども、トレハロース又はマルチトールに対する金属イオン化合物のモル比を、通常、0.01以上100以下、望ましくは、0.1以上10以下の範囲に設定するのが好適であり、また、後記実施例に詳述する、トレハロースと塩化カルシウムとの会合物のように、モル比を約1又は約2というように、さらに特定されたモル比で混合することにより当該会合物が効率的に得られる場合もある。上記のように形成されるトレハロース又はマルチトールと金属イオン化合物との会合物は、会合物が形成されたそのままの状態で、例えば、溶液の状態で利用することができる。また、形成された会合物を単離した状態で利用することもでき、単離のための方法としては、例えば、抽出、濾過、濃縮、遠心分離、透析、分別沈澱、結晶化、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどが挙げられる。上記のようにして形成された会合物、もしくはこれを含む画分は、結晶化、分別沈澱、濃縮、乾燥(噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥を含む)などの方法により採取することができる。斯くして得ることができる当該会合物は、金属イオン化合物の種類によって、従来の金属イオン化合物の調製品と比べて、以下のような優れた特徴を有している。(1)潮解性の低減塩化カルシウムをはじめとするアルカリ土類金属のハロゲン化物などの、本来的に潮解性を有する金属イオン化合物は、トレハロース又はマルチトールとの間で会合物を形成することによって、その潮解性が顕著に低減される。したがって、本来的に潮解性を有している金属イオン化合物を含む本発明の会合物は、その取扱い性が優れているという特徴がある。この特性は、潮解性抑制剤として有利に利用でき、例えば、苦汁成分を含有する海産物干物の吸湿性を抑制させることができる。(2)難溶性又は不溶性の金属イオン化合物の生成の阻害金属イオンは、リン酸カルシウムなどの例に見られるように、ある種の対イオンとの間で水に対する溶解性が低い塩を形成することがある。このような金属イオンを水中で溶解含有している溶液に、該金属イオンと難溶性又は不溶性の塩を形成する対イオンが添加されると速やかに溶解性の低い物質が析出又はその沈澱が生成する。このような金属イオンを含む水溶性の化合物が難溶性又は不溶性の塩を形成する前に、該金属イオン化合物とトレハロース又はマルチトールとの間で会合物を形成させておけば、難溶性又は不溶性の塩の形成を抑えることができる。したがって、本来的に難溶性又は不溶性の塩を形成する可能性のある金属イオンを含む化合物とトレハロース又はマルチトールとの会合物は、水溶液中での沈澱や白濁が抑えられた調製品として利用することができる。この特性は、難溶性又は不溶性塩の析出抑制剤として有利に利用できる。(3)水に対する溶解性の向上トレハロース又はマルチトールと会合物を形成した金属イオン化合物は、多くの場合、その本来の水溶性を上回る水への溶解度を示す。比較的顕著な水溶性の向上が認められる金属イオン化合物は、例えば、マンガン塩、ニッケル塩、鉄塩、銅塩などの遷移金属イオン化合物や、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩などである。この特性は、トレハロース又はマルチトールが、これら金属イオン化合物の溶解性向上剤として有利に利用できる。したがって、これらの金属イオン化合物とトレハロース又はマルチトールとの会合物は、高濃度の金属イオン化合物溶液の提供が望まれる食品分野、化粧品分野、医薬品分野などで有利に利用できる。また、これら(2)、(3)の特性については、本発明者等が、更に鋭意研究を続けた結果、水溶性のキレート様化合物形成特性であって、且つ、無毒で安全性も高く、加えて、環境への負荷も少ないことから下記の用途に有利に利用できることが判明した。▲1▼金属イオン化合物、とりわけカルシウムイオン化合物の水溶液への溶解性を向上させ、該化合物を配合した清涼飲料、スポーツドリンク、ミネラル補給輸液などを長期間保存しても白濁若しくは曇りの発生を防止することができる。▲2▼加熱調理の際、例えば、煮物、鍋物を作る際に発生する難溶性の塩類、とりわけ、マグネシウムイオン化合物の析出を抑制でき、結果として、アクの発生量を大幅に抑制することができる。▲3▼また、金属イオン化合物を含有する、いわゆる硬水に石鹸を溶かす際にも、本来発生する難溶性の塩類、とりわけ、脂肪酸マグネシウムの析出を抑制でき、結果として、石鹸カスの発生量を大幅に抑制し、泡立ち、洗浄力の低下を起こしにくい。▲4▼また、同様に、いわゆる硬水を放置するか又は煮沸して本来発生する難溶性の塩類、とりわけ、鉄塩、マグネシウム塩などの析出を抑制でき、結果として、水の曇り、水アカ、湯アカの発生が抑制できる。▲5▼また、金属イオンと糖類以外の有機物質、例えば、配糖体、ポリフェノールなどが複合した難溶性又は不溶性物質に対しても、トレハロース又はマルチトールと、その金属イオン化合物とを会合させることにより、その有機物質の水に対する溶解性を向上させることができる。▲6▼また、金属イオン化合物に起因する汚れに対してもトレハロース又はマルチトールとその金属イオン化合物とを会合させることにより、その汚れを防止したり、仮に汚れてもその洗浄又は除去することが容易になる。従って、トレハロース又はマルチトールを金属イオン化合物汚染の予防剤、除去剤、洗浄剤、又は清拭剤などとして有利に利用できる。この用途としては、例えば、ガラス、金属、自動車、住居、衣類、身体などの表面の汚染防止又は汚染除去に好都合である。▲7▼また、カルシウムイオン化合物やマグネシウムイオン化合物などに起因する歯石、歯垢に対しても、トレハロースやマルチトールとその金属イオン化合物とを会合させることにより、付着を抑制又は付着したものの溶解を促進できることから、うがい水や練歯磨などに有利に利用できる。(4)酸化還元反応の抑制鉄や銅などの遷移金属やその他の金属のイオン化合物は、条件によって酸化されたり、また逆に還元される場合がある。このような酸化還元反応が起こることは、共存する他の物質に質的な劣化をもたらす可能性があることを意味している。以上のような金属イオン化合物がトレハロース又はマルチトールと会合物を形成すると、通常、その本来の、酸化もしくは還元を起こす反応性が抑制される。したがって、鉄塩や銅塩などの酸化還元反応をおこしうる金属イオン化合物とトレハロース又はマルチトールとの会合物は、他の物質の品質の劣化を惹き起こし難い金属イオン化合物の調製品として有利に利用できる。この特性は、比較的少量の鉄塩や銅塩の共存で、酸化、劣化を受けやすい物質、例えば、L−アスコルビン酸(以後、単にアスコルビン酸と略称することもある。)、トコフェロールなどのビタミンや、EPA、DHAなどの高度不飽和脂肪酸、更には、香料、色素などに、トレハロース又はマルチトールを共存させて金属イオン化合物との会合物を生成させることにより、それらの酸化、劣化を抑制することができる。更に、本発明のトレハロース又はマルチトールとマグネシウムイオン化合物及び/又はカルシウムイオン化合物を含む金属イオン化合物との会合物含有粉末(以下、本粉末を会合物含有粉末と略称することもある。)は、トレハロース又はマルチトールとマグネシウムイオン化合物及び/又はカルシウムイオン化合物を含む金属イオン化合物とを混合し、会合物を形成させ、次いで、粉末化することにより調製することができる。会合物調製のための混合方法は、トレハロース又はマルチトールとマグネシウムイオン化合物及び/又はカルシウムイオン化合物を含む金属イオン化合物とを、水系媒体中で溶解した状態で混合し、会合物を形成させるのが好適である。通常、トレハロース又はマルチトールに対して、マグネシウムイオン化合物及び/又はカルシウムイオン化合物を含む金属イオン化合物のモル比を、0.001乃至10、望ましくは、0.01乃至5の範囲に設定するのが好適である。モル比が0.001未満の場合は、マグネシウムイオン化合物及び/又はカルシウムイオン化合物を含む金属イオン化合物との会合物含有量が少なく、ミネラル強化剤などとしての利用が不便になり、モル比が10を越えるとマグネシウムイオン化合物及び/又はカルシウムイオン化合物を含む金属イオン化合物との会合物含有粉末としたときには潮解性などの改善が不十分となる。マグネシウムイオン化合物及び/又はカルシウムイオン化合物を含む金属イオン化合物は、市販されているマグネシウムイオン化合物とカルシウムイオン化合物を適当な割合で混合、含有させて調製することができる。既に混合状態で含まれているものの例としては苦汁がある。更に、必要に応じて、これに他の金属イオン化合物や有機物質、例えば、糖質並びに糖質関連物質などを含有させてもよい。苦汁とは、通常、海水を加熱方式及び/又はイオン交換方式で濃縮し、食塩を析出させ、分離した後の残液を指す。苦汁は強い刺激臭や苦味などの不快味を有し、主成分としてマグネシウムイオン化合物を含み、その他の成分としては、カルシウムイオン化合物、カリウムイオン化合物、ナトリウムイオン化合物などがあり、マグネシウム塩、カリウム塩などの製造原料や豆乳の風味改善剤、豆腐製造用の凝固剤として用いられる。苦汁成分とは、苦汁に含まれる金属イオン化合物であって、少なくともマグネシウムイオン化合物及び/又はカルシウムイオン化合物を含む。通常、苦汁として液状で売られており、その成分は、例えば、塩化マグネシウム17.5w/w%、塩化カルシウム8.1w/w%、塩化カリウム3.6w/w%、塩化ナトリウム2.9w/w%などを含有している。このような苦汁をそのまま濃縮して結晶化又は乾燥粉末化して得られる苦汁乾燥粉末は、強い吸湿性を示し、湿気のある場所での保存では、容易に潮解して溶液状となる。上記のように、本発明の方法で形成された会合物は、形態が溶液、ペースト状のみならず、結晶化、分別沈澱、濃縮、乾燥(噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥を含む)などの方法により粉末として採取することも有利に実施できる。斯くして得ることができる当該会合物含有粉末は、従来のマグネシウムイオン化合物及び/又はカルシウムイオン化合物を含む金属イオン化合物の粉末品と比べて、潮解性、還元力、酸化力、水への難溶性などといった、工業的な取扱いの上で好ましくない性質が改善された、優れた特徴を有している。上記で述べたような作用を発揮する本発明の会合物又は会合物含有粉末は、金属イオン化合物又は苦汁を原料、添加物、製品などとして扱う分野であって、例えば、食品分野(飲料分野を含む)、農林水産分野、化粧品分野、医薬品分野、日用品分野、化学工業分野ならびに、これらの分野で利用される原料又は添加物の製造分野などにおいて、単離された状態で、又は、目的に応じて、他の成分、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、乳糖、糖アルコール、環状糖質、デキストリン、澱粉、セルロースなどの増量剤や賦型剤の1種又は2種以上との組成物の形態で、極めて多岐にわたる分野において有用である。本発明の会合物又は会合物含有粉末を組成物の形態で利用する際に配合できる他の成分として、該組成物が生体に適用することが想定される場合には、生理学的に許容される成分であることが望ましく、例えば、食品分野で利用する場合には、ショ糖、グルコース、マルトース、L−フコース、L−ラムノース、ステビア、カンゾウ、アスパルテーム、グリチルリチン酸塩、スクラロースなどの甘味料、アジピン酸、クエン酸、グルコノデルタラクトン、酢酸、酒石酸、フマル酸、乳酸などの酸味料、アスパラギン酸ナトリウム、アラニン、クエン酸、グルタミン酸、テアニン、食塩などの調味料のほか、食品分野において一般に利用される着色料、着香料、強化剤、膨張剤、保存料、殺菌料、酸化防止剤、漂白剤、糊料、安定剤、乳化剤などの1種又は2種以上が挙げられる。具体的な用途としては、例えば、食卓塩、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、ダシ汁、ソース、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールウ、シチューの素、スープの素、ダシの素、核酸系調味料、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガーなどの各種調味料、せんべい、あられ、おこし、餅類、まんじゅう、ういろう、あん類、羊羹、水羊羹、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉などの各種和菓子、パン、ビスケット、クラッカー、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディーなどの洋菓子、アイスクリーム、シャーベットなどの氷菓、果実のシロップ漬、氷蜜などのシロップ類、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、スプレッドなどのペースト類、ジャム、マーマレード、シロップ漬、糖果などの果実、野菜の加工食品、福神漬、べったら漬、千枚漬、らっきょう漬などの漬物類、たくあん漬の素、白菜漬の素などの漬物の素類、ハム、ソーセージなどの畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、天ぷらなどの魚肉製品、干した海藻、丸干し又は開き干しなどの海産物の干物、ウニ、イカの塩辛、酢こんぶ、さきするめ、ふぐみりん干しなどの各種珍味類、のり、山菜、するめ、小魚、貝などで製造される佃煮類、煮豆、ポテトサラダ、こんぶ巻などの惣菜食品、ヨーグルト、チーズなどの乳製品、魚肉、畜肉、果実、野菜のビン詰、缶詰類、清酒、合成酒、リキュール、洋酒などの酒類、コーヒー、紅茶、ココア、ジュース、スポーツドリンク、ミネラル補給飲料、ミネラル強化飲料、更には、炭酸飲料、果汁飲料、乳性飲料、乳酸菌飲料野菜ジュース、豆乳などの清涼飲料水、プリンミックス、ホットケーキミックス、即席しるこ、即席スープなどの即席食品、離乳食、治療食、薬用人参エキス、笹エキス、梅エキス、松エキス、スッポンエキス、クロレラエキス、アロエエキス、プロポリスエキスなどのドリンク剤、ペプチド食品、冷凍食品、健康食品、乳酸菌や酵母の生菌、ローヤルゼリーなどの各種飲食物に、また、マグネシウム、カルシウムなどのミネラル強化剤、納豆の納豆菌の生育促進剤、風味改善剤、豆乳の風味改善剤、豆腐製造用の凝固剤などに有利に利用できる。本発明の会合物又は会合物含有粉末を農林水産分野で利用する場合には、会合物に含まれるミネラル成分がそのままで、又は、他の成分を配合する組成物の形態で、例えば、動物のための飼料、餌料や、植物のための栄養剤、活力剤などとして有利に利用できる。組成物の形態で利用する際に配合できる他の成分としては、それぞれの分野で通常利用される、例えば、バガス、コーンコブ、稲藁、干し草、穀類、小麦粉、澱粉、油粕類、糟糖類、ふすま、大豆糟、各種発酵糟、木屑、葉類などの飼料、餌料成分、また、例えば、硝酸塩、アンモニウム塩、尿素、リン酸塩、カリウム塩などの栄養剤、活力剤成分などの1種又は2種以上が挙げられる。具体的な用途としては、例えば、家畜、家禽、その他蜜蜂、蚕、昆虫、魚などの飼育動物用の各種濃厚飼料材料や配合飼料、配合餌料などや、例えば、穀類、いも類などの作物、蔬菜、茶、果樹園芸、庭園や街路樹の植栽、ゴルフ場の芝などの植物の栄養剤、活力剤などに有利に利用できる。本発明の会合物又は会合物含有粉末を組成物の形態で利用する際に配合できる他の成分として、化粧品分野や医薬品分野で利用する場合には、それぞれの分野で通常利用される、保湿剤、界面活性剤、色素、香料、酵素類、ホルモン類、ビタミン類、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤、溶剤、安定剤、界面活性剤、可塑剤、滑沢剤、可溶化剤、還元剤、緩衝剤、甘味剤、基剤、揮散補助剤、吸着剤、矯味剤、共力剤、結合剤、懸濁剤、抗酸化剤、光沢化剤、コーティング剤、湿潤剤、清涼化剤、軟化剤、乳化剤、賦形剤、防腐剤、保存剤などの1種又は2種以上が挙げられる。具体的な用途としては、例えば、乳液、クリーム、シャンプー、リンス、トリートメント、口紅、リップクリーム、ローション、浴用剤、練歯磨などの化粧品類、タバコなどの嗜好品、内服液、錠剤、軟膏、トローチ、肝油ドロップ、口中清涼剤、口中香剤、うがい剤、ハップ、マグネシウム補給剤、ミネラル強化剤などの医薬品類、各種酵素の安定化剤などに有利に利用できる。以上のような組成物を製造するには、当該会合物又は会合物含有粉末を、無水物換算で、通常、0.00001w/w%乃至75w/w%、望ましくは、0.0001w/w%乃至50w/w%、さらに望ましくは、0.001w/w%乃至25w/w%の範囲で含有させるのが好適である。また、トレハロース及びマルチトールが、肉や野菜を調理する際のアクや、石鹸カス及び湯アカの発生を抑制することから、煮物用、若しくは鍋物用調味料、ミネラルウォーター、入浴剤又は石鹸などの、アク、石鹸カスまたは湯アカの発生抑制剤として有利に利用できる。更に、トレハロースは、肉や野菜の調理に際し、これら食材などからのマグネシウムイオン化合物の溶出を抑制する作用を有しており、マグネシウムイオン化合物の溶出抑制剤として、煮物用、若しくは鍋物用調味料などに有利に利用できる。これら調味料を利用することによって、食材からのミネラル成分であるマグネシウム化合物の流失が抑制され、栄養成分の保持、食材本来の食味を発揮させることができる。以下、実験例1乃至実験例3によりトレハロース及びマルチトールが諸種の金属イオン化合物又は苦汁成分との間で会合物を形成する事実を示し、実験例4乃至実験例8で当該会合物の有用性を示す。また、実験例9乃至実験例12でトレハロース及びマルチトールの、調理時のアクの発生抑制効果、及びトレハロースのマグネシウムイオン化合物の溶出抑制効果を示す。実験例1 トレハロースと塩化カルシウムとの会合物実験例1−1 トレハロースと塩化カルシウムとの会合物の結晶実験例1−1(a) 会合物の結晶の単離塩化カルシウム2水和物147g(1モル)を1L容のガラスビーカーに入れ、これに脱イオン水250gを加え、加熱しながら完全に溶解させた。引き続き加熱した条件下で、この溶液に2含水結晶トレハロース(以下、単に「含水結晶トレハロース]という。)378g(1モル)を加え、完全に溶解させた後、加熱を止め、ビーカーを室温(約25℃)下、2日間静置したところ、ビーカー底部に、析出した結晶の沈澱が認められた。この結晶の沈澱をバケット型遠心分離器に移し、適量の脱イオン水を噴霧しながら分蜜して結晶を回収した。回収した結晶を40℃で4時間真空乾燥し、さらに、五酸化リン入りのデシケーター中で、室温下で20時間保持して十分に乾燥させた。その結果、白色の結晶粉末を約200g得た。塩化カルシウム2水和物294g(2モル)を1L容のガラスビーカーに入れ、これに200gの脱イオン水を加え、加熱しながら完全に溶解させた。引き続き加熱した条件下で、この溶液に含水結晶トレハロース378g(1モル)を加え、完全に溶解させた後、さらに加熱を続けた。この溶液が沸騰を始めてから約30分間沸騰させ続けたところ、結晶の析出が認められた。その時点で加熱を止め、ビーカーを60℃で24時間保持したところ、ビーカーの内容物は析出した結晶により含蜜ブロック状になっていた。この含蜜ブロック状の内容物を取り出し、大まかに砕いた後、バケット型遠心分離器で適量の脱イオン水を噴霧しながら分蜜して結晶を回収した。回収した結晶を40℃で4時間真空乾燥し、さらに、五酸化リン入りのデシケーター中で、室温下で20時間保持して十分に乾燥させた。その結果、白色の結晶粉末を約400g得た。実験例1−1(b) 会合物の結晶の理化学的性質(1)X線回折実験例1−1(a)に示す2とおりの方法で得た結晶それぞれについて、X線回折装置『RAD−2B』(理学電気社製)を用いて通常の粉末X回折法により、X線回折図形を調べた。同様の方法で、含水結晶トレハロース及び塩化カルシウム2水和物の結晶についてのX線回折図形も併せて調べた。実験例1−1(a)の方法で得た、トレハロースと塩化カルシウムのモル比が1:1の混合溶液から得た結晶、同モル比が1:2の混合溶液から得た結晶、含水結晶トレハロース、塩化カルシウム2水和物の結晶、の順で、それぞれのX線回折図形を図1乃至図4に示す。図1乃至図4から明らかなとおり、図1に示すX線回折図形における主な回折角(2θ)は、9.02°がとりわけ特徴的で、このほかに、17.98°、21.90°が認められ、一方、図2に示すX線回折図形における主な回折角(2θ)は12.66°、21.02°、25.48°であり、両図形とも、全体のパターンとしては、含水結晶トレハロース(図3)や塩化カルシウム2水和物の結晶(図4)のものとは全く異なっていた。このことは、実験1−1(a)で得た2種類の結晶が、いずれも、含水結晶トレハロースと塩化カルシウム2水和物の結晶との混合物ではなく、それぞれが独自の結晶構造を有する全く別々の結晶であることを示している。(2)成分分析実験例1−1(a)に示す2とおりの方法で得た結晶それぞれについて、下記の成分分析を行った。トレハロース各結晶25mgを、フェニル−β−D−グルコシドをガスクロマトグラフィー用内部標準物質として濃度2mg/mlで含有するピリジン5mlに溶解し、その250μlを常法によりトリメチルシリル誘導体化した後、ガスクロマトグラフィー(カラム『OV−17』、ジーエルサイエンス社製)に供した。別途、標準試料としての含水結晶トレハロースを精秤した後、同様にガスクロマトグラフィーに供し、ピーク面積から各結晶1g当りのトレハロース量を求めた。カルシウム各結晶25mgを、1v/v%塩酸に溶解し、10w/v%塩化ランタン溶液で100倍希釈した後、原子吸光光度計(パーキンエルマー社製、製品名『Model5100』)を用いてカルシウム量を測定した。そして、各結晶に含まれるカルシウムが全て塩化カルシウムの形態にあるとの仮定に基づき、この測定値より、各結晶1g当りの塩化カルシウム量を算出した。水分各結晶5gを通常の乾燥減量法に供し、1g当りの水分量を求めた。以上の分析結果をまとめて表1に示す。表1に示す結果から、実験例1−1(a)の方法で得た第一の結晶は、トレハロース、塩化カルシウム、水を構成成分とし、そのモル比が1:1:1である会合物の1含水結晶であり、第二の結晶は、トレハロースと塩化カルシウムを構成成分とし、そのモル比が1:2である会合物の無水結晶であることが判明した。以下、実験例1−1(a)による第一の結晶をトレハロース−塩化カルシウム会合物(モル比1:1)の結晶と呼び、第二の結晶をトレハロース−塩化カルシウム会合物(モル比1:2)の結晶と呼ぶ。実験例1−2 トレハロースと塩化カルシウムとの会合物のNMRによる分析実験例1−1の方法で調製した2種類のトレハロース−塩化カルシウム会合物(モル比1:1及び1:2)におけるトレハロースと塩化カルシウムとの会合の様子を分子のレベルで解析するために、以下のNMR分析を行った。(1)13C−NMR実験例1−1の方法で調製した2種類のトレハロース−塩化カルシウム会合物(モル比1:1及び1:2)の結晶及び含水結晶トレハロースそれぞれ50mgを1mlの重水(重水素化率99.9%)に溶解し、以下のとおり13C−NMR分析に供した。NMR分析には分析装置『JNM−AL300型』(日本電子株式会社製)を用い、観測核を13Cに設定し、観測共鳴周波数を75.45MHzとした。上記の溶液を含む管を本装置にセットし、本装置に添付された操作マニュアルに記載された反転回復法にしたがって操作して、上記条件下での、試料溶液中のトレハロースにおける個々の炭素原子のスピン−格子緩和時間(以下、単に「緩和時間」という。)を求めた。なお、分析結果として得た各ピーク(化学シフト、ppm)の帰属は、ジェイ・エイチ・ブラッドバリーら、『カーボハイドレート・リサーチ』、第126巻、125乃至126頁(1984年)に記載されたデータに基づいて行った。以上の分析による、炭素原子の帰属と各炭素原子の緩和時間を表2に示す(1にトレハロース単独の結果を、2にモル比1:1のトレハロース−塩化カルシウム会合物の結果を、3にモル比1:2のトレハロース−塩化カルシウム会合物の結果をそれぞれ示している)。表2に見られるとおり、2種類のトレハロース−塩化カルシウム会合物(モル比1:1及び1:2)において、2位及び/又は4位の炭素原子の緩和時間の減少が特に顕著であった。このことから、トレハロースと塩化カルシウムとの会合には、主としてトレハロースにおける2位及び/又は4位の炭素原子に結合している水酸基と塩化カルシウムとの直接的な相互作用が深く関わるものと推察された。(2)1H−NMR実験例1−1の方法で調製した2種類のトレハロース−塩化カルシウム会合物(モル比1:1及び1:2)の結晶及び含水結晶トレハロースの50mgを、それぞれ、1mlのジメチルスルホキシド−d4に溶解し、以下のとおり1H−NMR分析に供した。NMR分析には分析装置『JNM−AL300型』(日本電子株式会社製)を用い、観測核を1Hに設定し、観測共鳴周波数を300.4MHzとし、積算回数は8回とした。この分析で認められた各ピーク(化学シフト、ppm)の帰属は、上記表2に示した13C−NMRの結果を参照し、『実験化学講座5』、日本化学会編、丸善株式会社発行(1991年)、302乃至312頁に記載された二次元NMR法にしたがって解析することにより行った。それぞれの分析によってトレハロース分子中の各位置に帰属されたプロトンの化学シフト値を、トレハロース単独の場合と、トレハロース−塩化カルシウム会合物(モル比1:1又は1:2)との場合とで比較したところ、特定の位置のプロトンのみ、両者間で大きな違いが認められた。トレハロース単独の場合と会合物の場合とで化学シフト値に大きな違いが認められたプロトンについての分析値を表3にまとめて示す。表3に示すとおり、トレハロースの水酸基性プロトンの全ては、塩化カルシウムと会合物を形成したときに、その化学シフト値がトレハロース単独の場合と比べて大きく変化した。このことは、トレハロースにおける水酸基性プロトンが塩化カルシウムと相互作用しあうことによって、トレハロースと塩化カルシウムとが会合物を形成することの直接的な証拠である。そして、上記で示した13C−NMRの分析結果を考え併せると、2種類のトレハロース−塩化カルシウム会合物(モル比1:1及び1:2)の形成には、2位及び/又は4位の炭素原子に結合した水酸基性プロトンと塩化カルシウムとの相互作用が特に深く関わっていると考えられた。実験例2 トレハロースと他の金属イオン化合物又は苦汁成分との会合物実験例2−1 トレハロースと塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム又は苦汁成分との会合物のNMRによる分析塩化マグネシウム6水和物20.3gと含水結晶トレハロース37.8gとの混合物(モル比1:1)に脱イオン水20gを加え、加熱しながら完全に溶解させた。同様に、塩化ストロンチウム6水和物26.6gと含水結晶トレハロース37.8gとの混合物(モル比1:1)に脱イオン水20gを加え、加熱しながら完全に溶解させた。これらの溶液を室温まで放冷した後、80℃で15時間真空乾燥し、乾燥物を常法により粉砕して2種類の粉末を得た。市販の苦汁(讃岐塩業(株)製)20ml(無水物として6.42gを含む)に含水結晶トレハロース10gを加え、加熱しながら完全に溶解させた。これを60℃で15時間真空乾燥し、乾燥物を常法により粉砕して粉末を得た。(1)13C−NMR実験例1−2の方法にしたがって、上記の3種類の粉末50mgをそれぞれ1mlの重水に溶解させた後、13C−NMR分析に供し、トレハロースにおける個々の炭素原子について緩和時間を求めた。得られた各炭素原子についての緩和時間の、トレハロース単独の場合の対応する緩和時間に対する相対値を、実験例1−2で、含水結晶トレハロースについて得た結果(表2の1に示す結果)をもとに算出した。結果を表4にまとめて示す。表4に示すとおり、トレハロース及び塩化マグネシウム、トレハロース及び塩化ストロンチウム並びにトレハロース及び苦汁の混合物を溶解後に真空乾燥して得た粉末は、いずれも、特定位の炭素原子の緩和時間が、トレハロース単独の場合に比べて顕著に減少していた。この結果から、トレハロースは、塩化カルシウムに対する場合と同様に、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム及び苦汁成分とも直接的に相互作用して会合物を形成すること、すなわち、上記で得た3種類の粉末が、トレハロースと塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム又は苦汁成分との会合物であることが判明した。また、表4の1、2及び3に示す結果から、トレハロース−塩化マグネシウム会合物、トレハロース−塩化ストロンチウム会合物並びにトレハロース−苦汁成分との会合物の形成には、主としてトレハロースにおける2位及び/又は4位の炭素原子に結合している水酸基と金属イオン化合物との相互作用が深く関わっているものと推察された。(2)1H−NMR実験例1−2の方法にしたがって、上記の3種類の粉末50mgをそれぞれ1mlのジメチルスルホキシド−d4に溶解させた後、1H−NMR分析に供し、認められたトレハロースにおけるプロトンのピーク(化学シフト、ppm)を帰属した。結果を表5に示す。トレハロース−塩化カルシウム会合物の場合と同様に、水酸基性プロトンの化学シフト値のみが、トレハロース単独の場合と、トレハロース−金属イオン化合物会合物の場合とで大きな違いが認められた。これらのプロトンについての分析値と、表3に示したトレハロース単独の場合の分析値を併せて表5に示す。表5に示すとおり、トレハロースの水酸基性プロトンの全ては、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム又は苦汁成分との会合物を形成したときに、その化学シフト値がトレハロース単独の場合と比べて大きく変化した。この結果により、トレハロースが塩化マグネシウム、塩化ストロンチウムや苦汁成分とも会合物を形成することの直接的証拠が示された。そして、上記で示した13C−NMRの分析結果を考え併せると、上記のトレハロース−金属イオン化合物会合物の形成には、トレハロースにおける2位及び/又は4位の炭素原子に結合した水酸基性プロトンと金属イオン化合物との相互作用が特に深く関わっていると考えられた。実験例2−2 トレハロースとの会合物形成による金属イオン化合物の溶解度の変化トレハロースと金属イオン化合物とが共存したときのトレハロース及び/又は金属イオン化合物の水に対する溶解度の変化を調べた。試験用のトレハロースとして含水結晶トレハロースを用いた。試験用の金属イオン化合物として、塩化ストロンチウム6水和物、塩化第一銅2水和物、塩化第一鉄4水和物、塩化マンガン4水和物、塩化ニッケル6水和物を用いた。含水結晶トレハロース37.8g(0.1モル)といずれかの試験用金属イオン化合物0.1モルを100ml容ガラスビーカーに入れ、これに、トレハロース及び金属イオン化合物の結合水を考慮して、ビーカーあたりの水の量が30gとなるように脱イオン水を加え、加温してビーカー内容物を溶解させた。対照として、ビーカー当たり同量のトレハロースのみを含むもの、ビーカー当たり同量の金属イオン化合物のみを含むものを準備した。いずれのビーカーも、内容物が完全に溶解した後、室温(約25℃)下で24時間静置し、その後ビーカー内容物を肉眼で観察して結晶の析出の有無を判定した。結晶の析出が認められたものについては、その結晶を採取し、常法によりその結晶の成分を分析した。結果を表6に示す。NMR分析(実験例2−1)によってトレハロースと会合物を形成することが確認された塩化ストロンチウムの場合(表6、最上段)について先ず見てみると、トレハロースを含まない場合には塩化ストロンチウムの結晶の析出が明らかに認められたのに対して、この結晶の析出量はトレハロースの共存によって顕著に低減した。この結果は、金属イオン化合物がトレハロースと共存した場合の水溶性の変化を調べることにより、その金属イオン化合物とトレハロースとの会合の有無が判断できることを示している。この判断基準にしたがって、塩化第一銅、塩化第一鉄、塩化マンガン、塩化ニッケルの結果(表6、2乃至5段目)を見てみると、これらの金属イオン化合物も、全て、トレハロースの共存によって明かな水溶性の向上が認められた。このことから、これらの金属イオン化合物も、トレハロースと共存するとトレハロースと会合物を形成することが判明した。また、金属イオン化合物を含まない対照系の結果(表6、最下段)と他の結果とを比較してみると、トレハロースのみを含む本実験条件による水溶液からはトレハロースの結晶が析出したのに対して、これに上記の金属イオン化合物が共存するといずれもトレハロースの結晶が認められなかった。この結果から、本実験で用いた金属イオン化合物は、トレハロースと会合したとき、その金属イオン化合物本来の水溶性が上昇するのみならず、トレハロースの水溶性もが上昇することも明かとなった。実験例3 マルチトールと金属イオン化合物との会合物固形分として100mgのマルチトールと固形分として85.3mgの塩化カルシウムとの混合物を1gの重水に溶解させた。この溶液を、実験例1−2に記載の13C−NMRにしたがって分析し、マルチトールにおける個々の炭素原子について緩和時間を求めた。この分析で認められた各ピーク(化学シフト、ppm)は、ジェイ・エイチ・ブラッドバリーら、『カーボハイドレート・リサーチ』、第126巻、125乃至126頁(1984年)に記載されたデータに基づいて帰属した。対照として、固形分100mgのマルチトールのみを用いて同様に分析した。結果を表7にまとめて示す。表7に示すとおり、マルチトール及び塩化カルシウムの混合溶液においては、グルコース基の4位、ソルビトール基の3’位及び5’位の炭素原子の緩和時間が、マルチトール単独の場合に比べて顕著に減少していた。この結果から、マルチトールは、塩化カルシウムと直接的に相互作用して会合物を形成することが判明した。また、以上の結果から、マルチトール−塩化カルシウム会合物の形成には、主としてグルコース基の4位、ソルビトール基の3’位及び5’位の炭素原子に結合している水酸基と塩化カルシウムとの直接的な相互作用が深く関っているものと推察された。実験例4 トレハロースと塩化カルシウム又は苦汁成分との会合物の吸湿性トレハロース−塩化カルシウム会合物又はトレハロース−苦汁成分会合物含有粉末の吸湿性(潮解性)を、高い潮解性を有することが知られている対照の塩化カルシウム又は苦汁乾燥粉末と比較することを目的として、以下の吸湿試験を行った。被験試料として、実験例1−1又は実験例2−1に記載の方法にしたがって調製した2種類のトレハロース−塩化カルシウム会合物(モル比1:1及び1:2)の結晶又はトレハロース−苦汁成分会合物含有粉末と、塩化カルシウム2水和物又は苦汁乾燥粉末を用いた。なお、対照として、苦汁を60℃で15時間真空乾燥し、乾燥物を常法により粉砕して苦汁乾燥粉末を調製し、用いた。通常の乾燥減量法により各被験試料の水分含量(試料1g当りに含まれる水分の重量)を調べたところ、トレハロース−塩化カルシウム会合物(モル比1:1)の場合0.048g、トレハロース−塩化カルシウム会合物(モル比1:2)の場合0.000g、トレハロース−苦汁成分会合物含有粉末の場合は0.061g、塩化カルシウム2水和物の場合0.245g、苦汁乾燥粉末の場合は0.214gであった。これらの被験試料を約1.5gずつアルミニウム製秤量缶に入れ、相対湿度33.0%又は52.8%に調整しておいた調湿デシケーター内に置き、25℃で7日間保存した。各秤量缶の内容物重量を、保存開始時(保存期間0日)、保存期間1日、2日、4日、7日の各時点で精秤した。各試料について、第0日の時点の測定値に対する第1日以降の測定値の増加分が、個々の被験試料が吸湿した水分であるとの前提に基づいて、第1日以降の各試料1g当りの水分量を算出した。結果を表8に示す。表8に示すとおり、塩化カルシウム2水和物は、上記のいずれの相対湿度条件下においても保存開始後に速やかに吸湿を始め、7日間保存した時点で、試料1g当たり、相対湿度33.0%の場合には水分含量は0.364g、相対湿度が52.8%の場合には水分含量は0.430gに達した。これに対して、2種類のトレハロース−塩化カルシウム会合物は、7日間保存した時点で、いずれの試料も吸湿がほとんど見られず、保存期間中に水分含量はほとんど増加せず、塩化カルシウム2水和物と比較すると、吸湿の程度は明らかに低いものであった。また、肉眼観察においても、塩化カルシウム2水和物は潮解を起こしたものの、2種類のトレハロース−塩化カルシウム会合物には潮解は見られなかった。以上の結果は、トレハロース−塩化カルシウム会合物においては、塩化カルシウム2水和物本来の潮解性(吸湿性)が明らかに改善されていることを示している。苦汁乾燥粉末は、上記のいずれの相対湿度条件下においても保存後速やかに吸湿を始め、7日間保存した時点で、試料1g当たり、相対湿度33.0%の場合には水分含量は0.398g、相対湿度が52.8%の場合には水分含量が0.523gと高い値に達した。これに対し、トレハロース−苦汁成分会合物含有粉末は、7日間保存した時点で、試料1g当たり、相対湿度33.0%の場合には水分含量は0.175g、相対湿度が52.8%の場合には水分含量は0.356gとなり、苦汁乾燥粉末と比較すると明らかに低い値であった。また、肉眼観察において、苦汁乾燥粉末は潮解を起こしたものの、トレハロース−苦汁成分会合物含有粉末には潮解は見られなかった。以上の結果は、トレハロース−苦汁成分会合物含有粉末においては、苦汁本来の潮解性が明らかに改善されていることを示している。この特性は、海藻、魚類などの海産物の干物を生産するに際し、これら海産物を水系媒体中でトレハロースと接触、望ましくは、濃度2w/w%以上のトレハロース溶液と接触させ、トレハロースと海産物に含まれる苦汁成分との会合物を形成し、これを乾燥することにより、吸湿性の低減された、例えば、干し昆布、干しワカメ、干しアオサ、干し海苔などの干した海藻、トビウオ、カマス、キス、アジ、サバ、ホッケ、イワシ、サンマ、サヨリ、カレイ、タコ、イカなどの丸干し又は開き干物などの海産物干物の製造に有利に利用できる。実験例5 リン酸カルシウムの沈澱生成に対するトレハロース及びマルチトールの抑制作用塩化カルシウム水溶液にリン酸イオンが添加されるとカルシウムイオンとリン酸イオンが不溶性塩であるリン酸カルシウムを形成し、沈澱する。この現象に対するトレハロース、マルチトールならびに他の糖質の影響を以下のとおり調べた。塩化カルシウム水溶液は、塩化カルシウム2水和物3.68gを脱イオン水に溶解させ、全量を200mlに調整したものを用いた。試験糖質として、含水結晶トレハロース、無水結晶マルチトール、含水結晶マルトース及び無水結晶スクロースを用いた。リン酸溶液は、0.2Mリン酸二水素カリウム水溶液250mlに0.2M水酸化ナトリウム水溶液118mlを加え、全量を1Lに調整したもの(pH6.8)を用いた。上記の塩化カルシウム水溶液5mlに試験糖質のいずれかを固形分として26g加え、さらに脱イオン水を加えて試験糖質を溶解させた後、さらに脱イオン水を加えて全量を50mlとした。対照においては、上記の塩化カルシウム水溶液5mlに脱イオン水のみを加えて全量を50mlとした。その後、これらの塩化カルシウム溶液それぞれ10mlに、上記のリン酸溶液40mlを加え、37℃で3時間撹拌した後、10,000rpmで10分間遠心分離し、その上清を採取した。採取した上清におけるカルシウム濃度(溶性カルシウム濃度)を、原子吸光測定装置(パーキンエルマー社製、『Zeeman5100』)を用いて測定した。測定用試料として、上記の遠心分離後の上清5mlに、10w/v%塩化ランタン溶液を2ml加え、脱イオン水で全量を25mlとしたものを用いた。以上の操作を各系(試験糖質の4系及び対照系)ごとにそれぞれ独立して3回行い、各系における溶性カルシウム濃度の平均値を求めた。結果を表9にまとめて示す。表9に示すとおり、トレハロース及びマルチトールには、カルシウムイオンにリン酸イオンが共存したときに生成するリン酸カルシウムの沈澱を顕著に抑制する作用があることが判明した。トレハロース及びマルチトールが金属イオン化合物と会合物を形成することを示した実験例1乃至実験例3の結果を考え併せると、この作用は、トレハロース及びマルチトールが溶性カルシウム塩(本実験例においては塩化カルシウム)と会合することにより、この溶性カルシウム塩におけるカルシウムイオンとリン酸イオンとの間のイオン結合による不溶性塩(リン酸カルシウム)の生成を阻害した結果であると考えられる。実験例6 カルシウム有機酸塩のトレハロース及びマルチトールによる溶解性向上作用カルシウム有機酸塩の溶解性に与えるトレハロース、マルチトール並びに他の糖質としてのマルトースの影響を以下のとおり調べた。まず、35mlの脱イオン水に対してトレハロース、マルチトール及びマルトースをそれぞれ固形物として5g添加し、溶解させて異なる糖質をそれぞれ溶解してなる3種類の糖質水溶液を調製した。次いで、これらの糖質水溶液に対して、カルシウム有機酸塩として市販のDL−乳酸カルシウム5水和物またはグルコン酸カルシウム1水和物を5g添加、懸濁し、塩酸を用いてpH3.5に調整した後、脱イオン水を加えて全容を50mlとした。得られた各懸濁液を25℃で16時間攪拌した後、遠心分離(15,000rpm、30分)することにより不溶のカルシウム有機酸塩を除去し、得られた上清を用いてそれぞれのpHを測定し、また、それぞれの上清に含まれるカルシウムの濃度を実験例5と同様に原子吸光測定装置を用いて定量した。対照として糖質無添加の場合も同様に試験した。結果を表10に示す。表10に示すとおり、上清のpHはいずれも3.7にそろっていた。また、上清中のカルシウム濃度は、トレハロースまたはマルチトールの添加により増加しており、乳酸カルシウムの場合、糖質無添加系に比べトレハロースで29%、マルチトールで23%の増加が認められ、グルコン酸カルシウムの場合では、糖質無添加系に比べトレハロースで12%、マルチトールで28%の増加が認められた。トレハロース及びマルチトールには、乳酸カルシウムやグルコン酸カルシウムなどカルシウム有機酸塩の溶解性を向上させる作用があることが判明した。これらの作用は、カルシウム有機酸塩を配合した清涼飲料、スポーツドリンク、ミネラル補給飲料の長期間の保存における白濁、曇りの発生を防止する上で有用である。実験例7 鉄イオンの酸化に対するトレハロース及びマルチトールの抑制作用鉄イオンには、通常、2価イオン(Fe2+)と3価イオン(Fe3+)とがあり、Fe2+は光や熱により容易に酸化されてFe3+に変換する。この現象に対するトレハロース及びマルチトールの影響を以下のとおり調べた。塩化第一鉄(FeCl2)4水和物をFe2+イオン量として1w/v%相当含み、トレハロース又はマルチトールを固形分として5w/v%相当含む水溶液を調製した(被験液)。一方、対照液として塩化第一鉄4水和物のみを被験液と同濃度で含む水溶液を調製した。被験液、対照液の調製直後に、それぞれから一部をとり、後述するニトロソ・DMAP法に供してFe2+イオン量を測定した後、被験液、対照液10mlずつを、それぞれ別々の20ml容バイアル瓶に10mlずつ入れ、密封した。これらのバイアル瓶を約9000ルクスの条件で光照射しながら、37℃で4時間保持し、保持後の液をニトロソ・DMAP法に供して再度Fe2+イオン量を測定した。ニトロソ・DMAP法は以下のとおり行った。被験液又は対照液を脱イオン水で正確に100倍希釈した後、この希釈後の液0.5mlを50ml容のメスフラスコに入れ、これに、0.2w/v%ニトロソジメチルアミノフェノール−0.1N塩酸溶液5mlと、3Nアンモニア緩衝液(pH8.5)4mlを手早く加え、脱イオン水をさらに加えて全量を正確に50mlとした後、750nmの可視光の吸光度を測定した。濃度既知の塩化第一鉄水溶液の段階希釈液について同様の操作を行い、この測定値をもとに作成した標準曲線に、被験液ならびに対照液の測定値を内挿して、Fe2+イオン量を求めた。結果を表11に示す。表11に示すとおり、トレハロース又はマルチトールを共存させた被験液においては、光照射の後も、対照液に比べて明らかに多量のFe2+が残存していた。この結果と、トレハロースと鉄塩が会合物を形成することを示した実験例2−2の結果を考え併せると、トレハロース及びマルチトールによる上記の作用は、これらの糖質が鉄塩と会合物を形成した結果、発揮されたものと考えられる。実験例8 金属イオン存在下でのアスコルビン酸の劣化に対するトレハロース及びマルチトールの抑制作用アスコルビン酸は、鉄イオンや銅イオンが共存すると、酸化分解等により速やかに劣化して着色を起こす。この現象に対するトレハロース及びマルチトールの影響を以下のとおり調べた。下記の表12に示す組成の10種類の水溶液を調製した。アスコルビン酸のみ、ならびに、アスコルビン酸及び金属イオン化合物を含む水溶液は対照液であり、対照液の組成に加えてトレハロース又はマルチトールをさらに含むものが被験液である。これらの被験液及び対照液を、それぞれ別々の20ml容バイアル瓶に10mlずつ入れ、密封した。これらのバイアル瓶を50℃で保存した。塩化第一鉄を含む対照液及び被験液の場合は保存時間を96時間とし、塩化第二鉄又は硫酸銅を含む対照液及び被験液の場合は保存時間を40時間とし、保存後の各液の着色度を測定した。アスコルビン酸のみを含む対照液については、保存時間40時間及び96時間それぞれの時点で着色度を測定した。着色度の測定は、波長420nmの可視光の吸光度を測定することにより行った。結果を表12に示す。表12に示すとおり、トレハロース又はマルチトールを共存させた被験液の保存後の着色の度合いは、対照液に比べて明らかに低いものであった。この結果と、トレハロースが鉄塩ならびに銅塩と会合物を形成することを示した実験例2−2の結果を考え併せると、トレハロース及びマルチトールによるこの作用は、これらの糖質が鉄塩ならびに銅塩と会合物を形成した結果、発揮されたものと考えられる。実験例9 トレハロースによる煮物のアク発生の抑制作用肉単独又は肉類と野菜を混ぜて煮るとアクが発生し、極端な場合は、わざわざアク取りを行う必要がある。この現象に対するトレハロースの影響を以下のとおり調べた。400mlの水に、豚肉30gとほうれん草20gを入れ、これに、トレハロースを2w/w%、10w/w%、又は砂糖2w/w%を加えて、加熱し、1分間煮沸した後、加熱を止めて室温まで冷却した。冷却後、桐山ろ紙でアクのみをろ過することにより回収し、脱イオン水500mlを用いてアクを洗浄し、40℃で18時間乾燥して、アクを採取した。対照として、糖質を加えないものを同様に処理してアクを採取した。得られたアクの重量及びアクを構成する主な成分を測定した結果を表13に示す。表13に示すとおり、トレハロースは添加量が増すに従って、アクの発生重量が減少した。これに対して、砂糖はアクの減少が見られず、対照の糖無添加のものとほぼ同程度の発生量であった。この結果より、トレハロースはアクの発生を抑制する特質を有していることが明らかとなった。また。トレハロースによるアク発生の抑制は、アクに含まれる成分分析の結果から、カルシウムイオンとマグネシウムイオンとがアクの形成に深く関与しており、なかでも不溶性のマグネシウムイオン化合物の形成抑制、とりわけ、脂肪酸マグネシウムの形成が抑制されたものと推察される。実験例10 トレハロース及びマルチトールによる煮物のアク発生の抑制作用アクの発生に対するトレハロース及びマルチトールの影響を他の糖質と以下のとおり比較した。トレハロース、マルチトール、及び他の糖質としてネオトレハロース、砂糖、マルトース、グルコースをそれぞれ10w/w%含有する400mlの水溶液に、豚肉30gずつを入れ、10分間浸漬した後、加熱し、5分間煮沸した。加熱を止めて室温まで冷却した後、生じたアクのみを桐山ろ紙でろ過することにより回収し、脱イオン水500mlを用いてアクを洗浄し、40℃で18時間乾燥して、アクを採取した。対照として、糖質を加えないものを同様に処理してアクを採取した。得られたアクの重量及びアクに含まれるミネラル成分(カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム)を測定した。結果を表14に示す。表14に示すとおり、トレハロース及びマルチトールを用いた場合、アクの発生重量が糖質無添加のものに比べ半量以下に減少した。これに対して、ネオトレハロース、砂糖、マルトース、グルコースではアクの減少がほとんど見られず、対照の糖無添加のものとほぼ同程度の発生量であった。また、アクに含まれるミネラル成分分析の結果から、トレハロース及びマルチトールを用いた場合のアクでは、カルシウム及びマグネシウムが少ないことが判明した。トレハロース及びマルチトールは、不溶性のカルシウムイオン及びマグネシウムイオン化合物の形成を抑制することにより、アクの発生を抑制しているものと推察される。実験例11 トレハロースによる煮物調理時のマグネシウム溶出抑制作用実験例10においてアクをろ過することにより得た各糖質使用時のろ液をそれぞれ水で500mlとし、それぞれのろ液に含まれるミネラル成分(カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム)を測定した。その結果を表15に示した。また、表14(アクに含まれる量)と表15(ろ液に含まれる量)の各種ミネラル成分の定量値を合計すると、30gの豚肉から溶出した各ミネラル成分の総量になると考えられるので、この合計値と、糖質無添加の場合を100とした相対値を表16に示す。表16に示すとおり、トレハロースとマルチトールの場合を除いて、他の糖質では豚肉から溶出した各ミネラル成分の総量(アクとろ液に含まれる量の合計)は、糖質無添加の場合とほぼ同等であった。一方、トレハロースではとりわけマグネシウムの量が糖質無添加のものに比べ半量以下であり、豚肉からのマグネシウムイオン化合物の溶出を抑制していた。また一方で、マルチトールではカルシウム、マグネシウムの溶出量が糖質無添加のものより多く、豚肉からのカルシウムイオン化合物及びマグネシウム化合物の溶出を促進していた。この結果から、マルチトールは豚肉からのカルシウムイオン化合物及びマグネシウム化合物の溶出を促進するものの、これらの不溶化を抑制することによりアクの発生を抑制していること、また、トレハロースはカルシウムイオン化合物とマグネシウムイオン化合物、とりわけマグネシウムイオン化合物の豚肉からの溶出を抑制することにより、結果としてアクの発生を抑制していること、の2点が推察される。実験例12 トレハロースによる野菜煮物調理時のマグネシウム溶出抑制作用トレハロースによる煮物調理時のマグネシウム溶出抑制作用を野菜について調べた。トレハロースを10w/w%含有する400mlの水溶液に、春菊又はほうれん草を20gずつ入れ、10分間浸漬した後、加熱し、5分間煮沸した。加熱を止めて室温まで冷却した後、生じたアクのみを桐山ろ紙でろ過することにより回収し、脱イオン水500mlを用いてアクを洗浄し、40℃で18時間乾燥して、アクを採取した。アクは実験9と同様に重量及びアクに含まれるミネラル成分を測定した。また、アクをろ過して得たろ液を水で500mlとし、実験例10と同様にそれぞれのろ液に含まれるミネラル成分(カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム)を測定した。対照1として、糖質無添加のものを、対照2としてトレハロースに替えて砂糖を用いたものを同様に処理した。アクとろ液に含まれるミネラル成分の合計を調理によるミネラル溶出量とした。アク及びろ液に含まれるミネラルの量の測定結果を、表17及び18に、また、その合計(ミネラル溶出量)を表19にそれぞれ示す。表17、18、19に示すとおり、トレハロースは春菊、ほうれん草からのアクの発生を抑制し、とりわけマグネシウムイオン化合物の溶出を抑制していることがわかった。トレハロースは実験例11で示した肉の場合と同様に野菜の煮物調理時におけるマグネシウムイオン化合物の溶出抑制作用を有していた。なお、煮沸後の春菊、ほうれん草の色調は、肉眼観察の結果、トレハロースを用いたものが糖質無添加、あるいは砂糖使用の場合と比較して緑色を最もよく保持していた。実験例13 トレハロースによるうどん茹で時のマグネシウム溶出抑制作用トレハロースによるマグネシウム溶出抑制作用をうどん茹で時について調べた。トレハロースを10w/w%含有する40mlの水溶液に、生のうどんを5gずつ入れ、加熱し、2分間煮沸した。加熱を止めて室温まで冷却した後、うどんをガラス繊維ろ紙でろ過することにより除去し、得られたろ液を水で50mlとし、ろ液に含まれるミネラル成分の内、マグネシウムについてのみ実験例10と同様に測定した。対照として、糖質無添加のものを同様に処理した。ろ液に含まれるマグネシウムの量の測定結果を、表20に示す。表20に示すとおり、トレハロースはうどんを茹でた場合の、うどんからのマグネシウムイオン化合物の溶出を抑制していることがわかった。トレハロースは実験11及び12で示した肉及び野菜の煮物調理時と同様に、うどんにおけるマグネシウムイオン化合物の溶出抑制作用を有していた。以下、実施例により本発明の会合物及びその用途をより詳細に説明する。実施例1 トレハロースと塩化カルシウムとの会合物実験例1−1の方法にしたがって、2種類のトレハロース−塩化カルシウム会合物(モル比1:1及び1:2)の結晶を調製した。これらの調製品2.5mgずつを、賦形剤として200mgの臭化カリウムを用いて常法により錠剤とした後、フーリエ変換赤外分光光度計『FT−IR8200』により赤外吸収スペクトルを測定した。それぞれの結果を図5及び図6に示す。上記の製品は、塩化カルシウムに比べて潮解性が改善されているので、保存時や各種組成物に配合する際の操作性に優れている。また、上記の製品は、リン酸、リン酸塩又はリン酸イオンを含む組成物と混合した際にも、不溶性塩であるリン酸カルシウムを形成し難いので、スポーツドリンク、栄養剤、皮膚外用剤などのカルシウム含有水溶液の素材として用いると、濁りや沈澱が抑えられた最終製品を得ることができる。したがって、上記の2種類のトレハロース−塩化カルシウム会合物の結晶は、食品分野、化粧品分野、医薬品分野などの諸種の分野におけるカルシウム配合製品の素材として極めて有用である。実施例2 トレハロースと各種金属イオン化合物との会合物1重量部の含水結晶トレハロースと、モル数として該トレハロースと等量の、塩化マグネシウム6水和物、塩化ストロンチウム6水和物、塩化第一鉄4水和物、塩化第二銅4水和物、塩化ニッケル6水和物又は塩化マンガン6水和物とを混合し、混合物に0.53重量部の脱イオン水を加え、加熱しながら完全に溶解させた。得られた溶液を室温にまで冷却した後、80℃で15時間真空乾燥し、得られた乾燥物を粉砕して、7種類の会合物の粉末を得た。これらの粉末の一部をとり、実施例1の方法にしたがって赤外吸収スペクトルを測定した結果を、順に、図7乃至図12に示す。これらの会合物は、金属イオン化合物単独の場合に比べて水溶性が向上しているので、スポーツドリンク、栄養剤、皮膚外用剤などの金属イオン化合物含有水溶液の素材として用いると、濁りや沈澱が抑えられた最終製品を得ることができる。したがってこれらの会合物は、食品分野、化粧品分野、医薬品分野などの諸種の分野における金属イオン化合物配合製品の素材として極めて有用である。実施例3 マルチトールと各種金属イオン化合物との会合物1重量部の無水結晶マルチトールと、モル数として該マルチトールと等量の、塩化カルシウム2水和物又は塩化第一鉄4水和物とを混合し、混合物に0.53重量部の脱イオン水を加え、加熱しながら完全に溶解させた。得られた溶液を室温にまで冷却した後、80℃で15時間真空乾燥し、得られた乾燥物を粉砕して、3種類の会合物の粉末を得た。これらの粉末の一部をとり、実施例1の方法にしたがって赤外吸収スペクトルを測定した結果を、順に、図13乃至図14に示す。これらの会合物は、金属イオン化合物単独の場合に比べて水溶性が向上しているので、スポーツドリンク、栄養剤、皮膚外用剤などの金属イオン化合物含有水溶液の素材として用いると、濁りや沈澱が抑えられた最終製品を得ることができる。したがってこれらの会合物は、食品分野、化粧品分野、医薬品分野などの諸種の分野における金属イオン化合物配合製品の素材として極めて有用である。実施例4 粉末スポーツドリンク下記の処方にしたがって各成分を配合し、十分に混合して、粉末組成物を得た。含水結晶トレハロース 6000重量部上白糖 5000重量部ビタミンB1 0.1重量部ビタミンB2 0.3重量部ビタミンB6 0.4重量部ビタミンC 200重量部ナイアシン 4重量部リン酸一水素ナトリウム(無水物) 93重量部リン酸二水素カリウム(無水物) 62重量部実施例2の方法で得たトレハロース−塩化マグネシウム会合物90重量部実施例1の方法で得たトレハロース−塩化カルシウム会合物(モル比1:2)55重量部上記の粉末組成物を、200ml容のスクリューキャップ付きプラスチック瓶に小分けして、粉末スポーツドリンクとした。本品は、10gに対し約100mlの水を加えて、溶解させて飲用する。本品に配合されているトレハロースと金属イオン化合物との会合物は潮解性が低いので、長期間の保存が可能である。また、本品に配合されている当該会合物は、水に対して速やかに溶解するので、利用性に優れている。さらに、本品に配合されているトレハロース−塩化カルシウム会合物は、リン酸イオンと不溶性塩を形成し難いので、水に溶解させた際に沈澱を生じ難いので、溶解後、比較的長時間をおいた後に飲用しても、各成分の吸収性が低下しにくいという特徴がある。実施例5 皮膚外用ローション下記の処方にしたがって各成分を配合し、溶解させ、液状の組成物を得た。クエン酸 0.02重量部クエン酸ナトリウム 0.08重量部1,3−ブチレングリコール 2重量部エタノール 2重量部無水結晶マルチトール 1重量部含水結晶トレハロース 0.2重量部アスコルビン酸2−グルコシド 0.5重量部実施例3の方法で得たマルチトール−塩化第一鉄会合物0.0035重量部精製水 残余合計 100重量部上記の液状組成物を100ml容のスクリューキャップ付きガラス瓶に小分けして皮膚外用ローションとした。本品は皮膚に適用したときに適度の清涼感と保湿性を示すので、皮膚の健康を保つための基礎化粧品として有用である。本品に含まれるマルチトール−塩化第一鉄会合物は、他の成分の劣化を惹起し難いので、比較的長期に亙って保存した後も、所期の効果を得ることができる。実施例6 ビタミン剤下記の処方にしたがって各成分を配合し、十分に混合して、粉末組成物を得た。葉酸 0.0004重量部アスコルビン酸 0.2重量部実施例2の方法で得たトレハロース−塩化マグネシウム会合物5重量部実施例2の方法で得たトレハロース−塩化マンガン会合物0.008重量部含水結晶トレハロース 5重量部上記の粉末組成物を、80ml容のスクリューキャップ付きガラス瓶に小分けして、ビタミン剤とした。本品は、1日当たり、10g程度の摂取を目安とし、10gに対し約100mlの水又は温水を加えて溶解させて飲用する。本品に含まれるトレハロースと金属イオン化合物との会合物は水に対して速やかに溶解するので、その利用が極めて容易である。実施例7 トレハロースと苦汁成分との会合物含有粉末実験例2−1の方法にしたがって、含水結晶トレハロース4重量部と市販の苦汁(讃岐塩業(株)製)25重量部とを加え、加熱しながら完全に溶解させた。これを60℃で15時間真空乾燥し、得られた乾燥物を粉砕して会合物含有粉末を得た。実施例1の方法にしたがって本品の赤外吸収スペクトルを測定した結果を図15に示す。本品は、実験例4の方法にしたがって調製した対照の苦汁乾燥粉末に比べて潮解性が改善されているので、保存時や各種組成物に配合する際の操作性に優れている。また、本品は、トレハロースと会合物を形成することで苦汁の持つ刺激味、苦味などの不快味が抑制され改善されていることから、マグネシウム及びカルシウムなどを多く含むミネラル強化剤として、調味料、スポーツドリンク、栄養剤、飼餌料などの素材として、更には、風味の改善剤としてアン、納豆、豆乳又は豆腐の製造に、とりわけ、豆腐用の凝固剤として用いることができるのをはじめとして、広く、食品分野、農林水産分野、化粧品分野、医薬品分野などの諸種の分野におけるマグネシウム及びカルシウムなどのミネラル強化剤、植物栄養剤、植物活力剤、保湿剤、更には花粉症などのアレルギー反応抑制剤などとして各種製品の原材料として極めて有用である。実施例8 トレハロースと苦汁成分との会合物含有粉末含水結晶トレハロース1重量部と市販の苦汁(讃岐塩業(株)製)1重量部とを加え、加熱しながら完全に溶解させた。この溶液を無水結晶トレハロース300重量部に噴霧し、混合して、乾燥した会合物含有粉末を得た。本品は、実験例4の方法にしたがって調製した対照の苦汁乾燥粉末に比べて潮解性が改善されているので、保存時や各種組成物に配合する際の操作性に優れている。また、本品は、トレハロースと会合物を形成することで苦汁の持つ刺激味、苦味などの不快味が抑制され改善されていることから、マグネシウム及びカルシウムなどを多く含むミネラル強化剤として、調味料、スポーツドリンク、栄養剤、飼餌料などの素材として、更には、風味の改善剤として、アン、納豆、豆乳の製造に、とりわけ、豆腐用の凝固剤として用いることができるのをはじめとして、広く、食品分野、農林水産分野、化粧品分野、医薬品分野などの諸種の分野におけるマグネシウム及びカルシウムなどのミネラル強化剤、植物栄養剤、植物活力剤、保湿剤、更には、花粉症などのアレルギー反応抑制剤などとして各種製品の原材料として極めて有用である。実施例9 トレハロースと苦汁成分との会合物含有溶液実験例2−1の方法にしたがって、含水結晶トレハロース144重量部と市販の苦汁(讃岐塩業(株)製)202重量部とを加え、70℃に加熱しながら完全に溶解させ、これを減圧濃縮し、固形物として、63w/w%含有する溶液を得た。本品は、トレハロースと会合物を形成することで苦汁の持つ刺激味、苦味などの不快味が抑制され改善されていることから、マグネシウム及びカルシウムなどを多く含むミネラル強化剤として、調味料、スポーツドリンク、栄養剤、飼餌料などの原材料として、更には、風味の改善剤としてアン、納豆、豆乳又は豆腐の製造に、とりわけ、豆腐用の凝固剤として用いることができるのをはじめとして、広く、食品分野、農林水産分野、化粧品分野、医薬品分野などの諸種の分野におけるマグネシウム及びカルシウムなどのミネラル強化剤、植物栄養剤、植物活力剤、保湿剤、更には、花粉症などのアレルギー反応抑制剤などとして各種製品の原材料として極めて有用である。実施例10 マルチトールと苦汁成分との会合物含有粉末無水結晶マルチトール2重量部と市販の苦汁1重量部とを混合し、更に、混合物に脱イオン水1重量部を加え、加熱しながら完全に溶解させた。これを80℃で15時間真空乾燥し、得られた乾燥物を粉砕して会合物含有粉末を得た。本品は、実験例4の方法にしたがって調製した対照の苦汁乾燥粉末に比べて潮解性が改善されているので、保存時や各種組成物に配合する際の操作性に優れている。また、本品は、マルチトールと会合物を形成することで苦汁の持つ刺激味、苦味などの不快味が抑制され改善されていることから、天然のマグネシウム及びカルシウムなどを多く含むミネラル補給剤として、スポーツドリンク、栄養剤、飼餌料などの素材として、更には、味質の改善されたアン、納豆、豆乳又は豆腐の製造に用いることができるのをはじめとして、食品分野、農林水産分野、化粧品分野、医薬品分野などの諸種の分野における天然のマグネシウム及びカルシウムなどのミネラル配合製品の素材として極めて有用である。実施例11 食卓塩下記の処方にしたがって各成分を配合し、十分に混合した後、50℃で減圧乾燥し、固形物を得た。この固形物を粉砕し、粉末状の食卓塩を調製した。塩化ナトリウム 90重量部実施例9の方法で得たトレハロース−苦汁成分会合物含有溶液12重量部本食卓塩は、吸湿性も低く、流動性良好である。本品は、塩化ナトリウム及び苦汁成分に由来する刺激味や苦味などの不快味が抑制され、塩化ナトリウム、トレハロース、苦汁成分が適度に調和して旨味があり、飲食物の調理(焼物を含む)や調味に利用され、飲食物の風味を楽しむことができる。また、本品は、海水成分に近い組成を有していることから、生命にとってやさしい食塩であり、例えば、濃度約3%の水溶液にして貝の砂出しに用いることも有利に利用できる。実施例12 減塩調味塩下記の処方にしたがって各成分を配合し、十分に混合して、減塩調味塩を調製した。塩化ナトリウム 60重量部塩化カリウム 9重量部L−グルタミン酸モノナトリウム 1重量部実施例8の方法で得たトレハロース−苦汁成分会合物含有粉末5重量部本減塩調味塩は、吸湿性も低く、流動性良好である。本品は、苦汁成分に由来する苦みが抑制され、塩化ナトリウム、トレハロース、塩化カリウム、L−グルタミン酸モノナトリウムを含有することから塩から味に加えて旨味が増強されており、減塩品でありながら通常品と同様に飲食物の調味に利用され、飲食物の風味を楽しむことができる。また、本品は、循環器系疾病患者の治療促進や成人病の予防、更には、美容、健康の維持、増進などに有利に利用できる。実施例13 アン下記の処方にしたがって加工し、アンを調製した。市販の白生アン 1000重量部砂糖 700重量部サンマルト−S 100重量部水飴(DS75w/w%) 100重量部実施例8の方法で得たトレハロース−苦汁成分会合物含有粉末100重量部寒天 2.5重量部本アンは、苦汁成分、特にマグネシウムとトレハロースとを含有することから、風味良好で色調も良く、甘味は低いものの日持ちの良いアンであり、最中など和菓子用のアンに好適である。実施例14 調製豆乳下記の処方にしたがって加工し、調製豆乳を製造した。原料大豆10重量部を脱皮し、次いで130℃で10分間オートクレーブした後、これに90重量部の熱水を加えつつ磨砕し、遠心分離して残渣(おから)を除去し、約60重量部の豆乳を得た。これにマルトデキストリン(DE20)10重量部を加え、更に、結晶粉末マルトース(株式会社林原商事販売、登録商標 サンマルトS)5重量部、実施例11の方法で得た食卓塩0.05重量部、大豆油0.02重量部及び適量のレシチンを加え溶解し、加熱殺菌後、真空脱臭し、香料を適量添加したのち均質化処理、さらに冷却し、充填、包装して調製豆乳を得た。この調製豆乳は、従来の類似した豆乳とは違って、トレハロース並びに少量のマグネシウムが含有されていることから、苦味、えぐ味、いがらっぽさがなく、のどごしの良い飲みやすい飲料である。実施例15 豆腐下記の処方にしたがって加工し、豆腐を調製した。大豆1重量部を水洗し、水に12時間浸漬したのち磨砕した。この磨砕物に水5重量部を加えて5分間煮沸した後、布を用いて濾過して豆乳を調製した。この豆乳100重量部に対して、70℃で、プルラン1重量部、凝固剤として実施例7の方法で得たトレハロース−苦汁成分会合物含有粉末を1重量部を加えて凝固させ、豆腐を調製した。本豆腐は、苦汁を使って作ったときに比べて、豆乳の凝固に要する時間は約7分とやや長くなることから作業性が向上し、プルラン及びトレハロースを含有することから離水が少なくて歩留まりが高く、肌面が細かで艶のある、風味良好な豆腐であった。本品は、保存性に優れ、冷や奴、湯豆腐、味噌汁などに利用できる。実施例16 プルランフィルム下記の処方にしたがって調製したプルランを含有するフィルム原料水溶液を、減圧脱泡した。次いで、この水溶液を合成プラスチック上に連続して流延し、60℃の熱風中を通過させて乾燥し、厚さ30μmのプルランフィルムを調製した。プルラン(株式会社林原商事販売、商品名「プルランPI−20」)1000重量部シュガーエステル(ショ糖モノラウレート) 1重量部実施例9の方法で得たトレハロース−苦汁成分会合物含有溶液20重量部精製水 3400重量部本プルランフィルムは、湿度変化に対する安定性に優れ、水溶性を持っており、更に、トレハロース−苦汁成分会合物を含有することから味は良好であり、食品として、又は、二次加工の原材料として利用することができる。更に、本品中には苦汁成分を含有することから、マグネシウム、カルシウム、カリウムなどのミネラルの補給に、また、花粉症などによる鼻水、鼻づまりなどのアレルギー反応抑制剤としても有効である。実施例17 配合飼料下記の処方にしたがって各成分を配合し、配合飼料を調製した。粉麩 40重量部脱脂粉乳 38重量部ラクトスクロース 12重量部ビタミン剤 10重量部魚粉 5重量部第二リン酸カルシウム 5重量部液状油脂 3重量部炭酸カルシウム 3重量部食塩 2重量部実施例10の方法で得たマルチトール−苦汁成分会合物含有粉末2重量部上記配合飼料は、ミネラル分として加えたマルチトール−苦汁成分会合物含有粉末は潮解性を示さないので変性を起こし難く、嗜好性が向上した家畜、家禽などの飼料であって、とりわけ、子豚用飼料として好適である。本品はビフィズス菌増殖効果を発揮し、飼育動物の感染予防、下痢予防、食欲増進、肥育促進、糞便の悪臭抑制などに有利に利用することもできる。さらに、本品は、必要に応じて、他の飼料材料、例えば、穀類、小麦粉、澱粉、油粕類、糟糖類などと混合することにより濃厚飼料や、藁、乾草、バガス、コーンコブなどの粗飼料材料などと併用して、他の配合飼料にすることもできる。実施例18 化粧用クリーム下記の処方にしたがって各成分を配合し、化粧用クリームを調製した。モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール2重量部、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン5重量部、α−グルコシル ヘスペリジン(株式会社林原商事販売、登録商標 αGヘスペリジン)2重量部、流動パラフィン1重量部、トリオクタン酸グリセリン10重量部及び防腐剤適量を加え、常法にしたがって加熱溶解し、これにL−乳酸ナトリウム2重量部、1,3−ブチレングリコール5重量部、実施例10の方法で得たマルチトール−苦汁成分会合物含有粉末2重量部及び脱イオン水66重量部を加え、ホモゲナイザーにかけ乳化し、更に香料の適量を加えて攪拌混合しクリームを製造した。本品は、マルチトール及びマグネシウムを含むことから保湿性があり、日焼け止め、美肌剤、白色剤などとして有用である。実施例19 軟膏剤(外用剤)下記の処方にしたがって各成分を配合し、軟膏剤(外用剤)を調製した。実施例8の方法に従って調製したトレハロースと苦汁成分との会合物含有粉末200重量部及びマルトース300重量部に、ヨウ素3重量部を溶解したメタノール50重量部を加え混合し、更に10w/v%プルラン水溶液200重量部を加えて混合し、適度の延び、付着性を示す外傷治療用膏薬を得た。本品は、ヨウ素による殺菌作用のみならず、トレハロースと苦汁成分会合物を含有することから、苦汁に由来するミネラルを含有し、更に、マルトースによる細胞へのエネルギー補給剤としても作用することから、治癒期間が短縮され、創面もきれいに治る。実施例20 植物栄養剤下記の処方にしたがって各成分を配合し、液状の植物栄養剤を調製した。リン酸2アンモニウム 132重量部硝酸アンモニウム 17.5重量部塩化カリウム 71.5重量部実施例9の方法で得たトレハロース−苦汁成分会合物含有溶液360重量部水 1000重量部本品は、N:P2O5:K2O:MgO=10:20:15:3を含むことから、植物の受け換えや植え付け時の根の伸長を促し、生育を促進し、花及び実の着生を良くする働きがあり、穀類、いも類などの作物、蔬菜、茶、果樹園芸、庭園や街路樹の植栽、ゴルフ場の芝などの植物栄養剤として、適宜水で希釈し、利用することができる。実施例21 浴用剤下記の処方にしたがって各成分を配合し、浴用剤を調製した。炭酸水素ナトリウム 80重量部乾燥硫酸ナトリウム 12重量部塩化カリウム 4重量部沈降性炭酸カルシウム 2重量部含水結晶トレハロース 50重量部α−グルコシル ヘスペリジン(登録商標 αGヘスペリジン)2重量部実施例8の方法で得たトレハロース−苦汁成分会合物含有粉末100重量部着色料、香料 適量本品は、トレハロース、マグネシウムを含むことから保湿性、保温性に優れ、美肌剤、白色剤として好適であり、入浴用のお湯に1000倍乃至10000倍に希釈して用いればよい。本品は、浴槽に付着しやすい石鹸カス、水垢、湯アカの発生の少ない特徴を有している。また、本品は入浴だけでなく、洗顔用水、化粧水などに希釈して利用することもできる。実施例22 醤油下記の処方にしたがって各成分を配合し、醤油を調製した。市販のトレハロース無含有の減塩醤油(キッコーマン株式会社、商品名「特撰丸大豆減塩醤油」)に含水結晶トレハロースを10w/w%溶解含有させて、醤油を製造した。本品は、トレハロース無含有の醤油と比較して、比較的多量のトレハロースを含有することから、煮物、鍋物などの調理時のアクの発生が抑制され、とりわけ、マグネシウムイオン化合物の析出が抑制される。また、本品は減塩品でありながら、通常品と同様に煮物、惣菜、焼物、汁物などの調味に有利に利用でき、食品の風味を楽しむことができる。実施例23 味噌下記の処方にしたがって各成分を配合し、味噌を調製した。市販のトレハロース無含有の減塩味噌(株式会社竹屋、商品名「タケヤみそ塩ひかえ目」)に含水結晶トレハロースを8w/w%溶解含有させて、味噌を製造した。本品は、トレハロース無含有の味噌と比較して、比較的多量のトレハロース含有することから、煮物、鍋物などの調理時のアクの発生が抑制され、とりわけ、マグネシウムイオン化合物の析出が抑制される。また、本品は減塩品でありながら通常品と同様に、煮物、惣菜、焼物、汁物などの調味に有利に利用でき、食品の風味を楽しむことができる。実施例24 ミネラルウォーター下記の処方にしたがって加工し、ミネラルウォーターを調製した。山中にある井水を汲み上げ、含水結晶トレハロースを0.5w/w%加えて溶解した後、メンブランフィルターを用いて除菌濾過し、これを滅菌したボトルに充填し、ミネラルウォーターを調製した。なお、できたミネラルウォーターの金属イオンの主な組成は、カルシウム40.9ppm、ナトリウム12.5ppm、マグネシウム11.6ppmであった。本品は、トレハロースを含有することから、トレハロースと金属イオン化合物との会合物を生成し、その溶解性が優れていることから、長期に渡って保存しても曇りを生じず、適度なミネラルを含み、のど越しが爽やかで、飲んだ後も喉の渇きを覚えない、商品価値の高いミネラルウォーターである。実施例25 スポーツドリンク下記の処方にしたがって各成分を配合し、スポーツドリンクを調製した。異性化糖(果糖ぶどう糖液糖) 2重量部含水結晶トレハロース 3重量部マルチトール 3重量部レモン果汁 1重量部アスコルビン酸 0.1重量部クエン酸 0.06重量部クエン酸ナトリウム 0.03重量部塩化ナトリウム 0.05重量部リン酸1カリウム 0.05重量部乳酸カルシウム 0.015重量部塩化マグネシウム 0.01重量部着色料、香料 適量水 90.685重量部本品は、トレハロースおよびマルチトールを含有することから、カルシウム有機酸塩の溶解性が向上しており、長期にわたって保存しても白濁や曇りを生じず、のど越し爽やかな、商品価値の高いスポーツドリンクである。実施例26 乾燥ワカメ海水に、含水結晶トレハロースを濃度8w/w%に加熱溶解し、温度80乃至85℃に保って、これに採取したワカメを1分間ブランチング処理し、次いで、乾燥して乾燥ワカメを調製した。本ワカメは、ワカメの表面でトレハロースと海水中に含まれる苦汁成分との会合物を形成させたことから、乾燥した後の吸湿性が低減されており、保存時の吸湿に起因するべとつきのみられないものであり、そのままサラダ材料として有利に利用される。また、味噌汁などの具材に用いられ、調理時のアクの発生も少ない。更には、菓子などの食品又は食品原材料として優れたものである。実施例27 乾昆布海水に、含水結晶トレハロースを、常温のままで、濃度6w/w%に溶解し、この水溶液に採取した昆布をくぐらせた後、天日で乾燥して乾昆布を調製した。本乾昆布は、トレハロースと海水中に含まれる苦汁成分との会合物を形成させたことから、乾燥した後の吸湿性が低減されており、保存時の吸湿に起因するべとつきのみられないものであり、ダシ昆布として有利に利用され、調理時のアクの発生も少ない。また、昆布締、昆布巻等の料理、昆布茶に、更には、菓子などの食品又は食品原材料として優れた食材である。実施例28 石鹸下記の処方にしたがって各成分を配合し、石鹸を調製した。重量比2対1の牛脂及びヤシ油をけん化・塩析法に供して得たニートソープ80重量部含水結晶トレハロース 10重量部マルチトール 9重量部アスコルビン酸2−グルコシド 0.5重量部白糖 0.5重量部感光素201号 0.0001重量部香料 適量本品は、泡立ち、洗浄力の優れた商品価値の高い石鹸である。また、金属イオン化合物を含有する、いわゆる硬水に石鹸を溶かす際にも本来発生する難溶性の塩類、とりわけ、マグネシウムイオン化合物の析出を抑制でき、結果として、石鹸カスの発生量を大幅に抑制し、泡立ち、洗浄力の低下を起こしにくい。また、本品は、汗、アカ、皮脂などからの揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制するので、体臭の発生やかゆみを予防する石鹸として有利に利用できる。実施例29 練歯磨下記の処方にしたがって各成分を配合し、練歯磨を調製した。第二リン酸カルシウム 45重量部ラウリル硫酸ナトリウム 1.5重量部グリセリン 25重量部ポオキシエチレンソルビタンラウレート 0.5重量部含水結晶トレハロース 10重量部マルチトール 10重量部防腐剤 0.05重量部水 13重量部本品は、界面活性剤の洗浄力を落とすことなく、不快味を改良し、使用後感も良好である。また、カルシウムイオン化合物やマグネシウムイオン化合物などに起因する歯石、歯垢に対しても、トレハロースやマルチトールとその金属イオン化合物とが会合できることから、その付着を抑制又は付着したものの溶解を促進できることから、歯磨きの効果も優れている。実施例30 鍋物用ダシ汁下記の処方にしたがって各成分を配合し、鍋物用ダシ汁を調製した。市販のトレハロース無含有の粉末うどんダシ(ヒガシマル醤油株式会社、商品名「うどんスープ」)2.4重量部と含水結晶トレハロース10重量部を水90重量部に溶解含有させて、鍋物用ダシ汁を製造した。本品は、比較的多量のトレハロースを含有することから、鍋物など調理時に肉、野菜からのアクの発生が抑制され、とりわけ、マグネシウムイオン化合物の析出が抑制される。また、食材からのマグネシウムイオン化合物の溶出も抑制される。本品は通常品と同様に煮物、鍋物、惣菜、汁物などに有利に利用でき、食品の風味を楽しむことができる。産業上の利用の可能性以上説明したとおり、本発明は、トレハロース及びマルチトールが、ともに、金属イオン化合物又は苦汁成分と共存させたときに、金属イオン化合物又は苦汁成分と直接的な相互作用によって会合物を形成し、斯かる会合物においては、金属イオン化合物又は苦汁成分本来の潮解性が改善されたり、水への溶解性が高められたり、酸化・還元の反応性が低減されるなど、工業的な取扱いにおいて、従来の金属イオン化合物又は苦汁成分と比べて極めて利用価値が高い。本発明の会合物は、金属イオン化合物又は苦汁成分を原料、添加物、製品などとして扱う分野であって、例えば、食品分野(飲料分野を含む)、農林水産分野、化粧品分野、医薬品分野、日用品分野、化学工業分野ならびに、これらの分野で利用される原料又は添加物の製造分野など、極めて多岐にわたる分野において有用である。この発明は、斯くも顕著な作用効果を奏する発明であり、斯界に貢献すること誠に多大な意義のある発明である。【図面の簡単な説明】第1図は、トレハロース−塩化カルシウム会合物(モル比1:1)の結晶のX線回折図形である。第2図は、トレハロース−塩化カルシウム会合物(モル比1:2)の結晶のX線回折図形である。第3図は、含水結晶トレハロースのX線回折図形である。第4図は、塩化カルシウム2水和物の結晶のX線回折図形である。第5図は、トレハロース−塩化カルシウム会合物(モル比1:1)の赤外吸収スペクトルである。第6図は、トレハロース−塩化カルシウム会合物(モル比1:2)の赤外吸収スペクトルである。第7図は、トレハロース−塩化マグネシウム会合物の赤外吸収スペクトルである。第8図は、トレハロース−塩化ストロンチウム会合物の赤外吸収スペクトルである。第9図は、トレハロース−塩化第一鉄会合物の赤外吸収スペクトルである。第10図は、トレハロース−塩化第二銅会合物の赤外吸収スペクトルである。第11図は、トレハロース−塩化ニッケル会合物の赤外吸収スペクトルである。第12図は、トレハロース−塩化マンガン会合物の赤外吸収スペクトルである。第13図は、マルチトール−塩化カルシウム会合物の赤外吸収スペクトルである。第14図は、マルチトール−塩化第一鉄会合物の赤外吸収スペクトルである。第15図は、トレハロース−苦汁成分会合物含有粉末の赤外吸収スペクトルである。 トレハロースと塩化カルシウムとの会合物結晶。 結晶におけるトレハロースと塩化カルシウムと水とのモル比が1:1:1である請求項1記載の結晶。 粉末X線回折法において、主たる回折角(2θ)として、9.02°、17.98°、21.90°を示す請求項2記載の結晶。 結晶におけるトレハロースと塩化カルシウムとのモル比が1:2である請求項1記載の結晶。 粉末X線回折法において、主たる回折角(2θ)として、12.66°、21.02°、25.48°を示す請求項4記載の結晶。 トレハロースと、塩化カルシウムとを溶液中で混合してトレハロースと塩化カルシウムとの会合物を形成させる工程と、前記工程で形成された会合物を溶液から晶出させ、晶出した結晶を採取する工程とを含む、請求項1乃至5のいずれかに記載の結晶の製造方法。 請求項1乃至5のいずれかに記載の結晶を含んでなる、飲食品、化粧品又は医薬品としての組成物。


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