タイトル: | 特許公報(B2)_5’−グアニル酸ジナトリウム・5’−イノシン酸ジナトリウム混晶の製造法 |
出願番号: | 2003517077 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07H 19/20 |
金児 豊一 米納 靖雄 平野 直人 阿部 重光 東森 郁彦 JP 4453070 特許公報(B2) 20100212 2003517077 20020719 5’−グアニル酸ジナトリウム・5’−イノシン酸ジナトリウム混晶の製造法 味の素株式会社 000000066 霜越 正夫 100064687 金児 豊一 米納 靖雄 平野 直人 阿部 重光 東森 郁彦 JP 2001225445 20010726 20100421 C07H 19/20 20060101AFI20100401BHJP JPC07H19/20 C07H 19/20 REGISTRY(STN) CAplus(STN) 特公昭40−012914(JP,B1) 特公昭47−016783(JP,B1) 特開平03−223299(JP,A) 特開昭50−160295(JP,A) 特公昭54−016582(JP,B1) 特許第2770470(JP,B2) 特公昭55−047877(JP,B2) 2 JP2002007345 20020719 WO2003011886 20030213 6 20050609 三木 寛 (技術分野)本発明は、調味料、医薬品等として重要な5’−グアニル酸ジナトリウム(以下、5’−GMP2NaもしくはGMPと略称する)と5’−イノシン酸ジナトリウム(以下、5’−IMP2NaもしくはIMPと略称する)の両者を、それらの単なる混合物ではなく、それらの混晶の形態で製造する方法に関する。(背景技術)5’−GMP2Naおよび5’−IMP2Naは、前項記載のように、調味料や医薬品などの分野で重要なものであるが、両者を併用する必要のある場合、単に両者の結晶を粉体混合したのでは、それぞれの結晶の性状や粉体特性などの相違などにより、所定の混合比の混合物を調製することが極めて困難であり、加えてそのような混合物の取扱いも種々の困難を伴う。ところで、5’−GMP2Naと5’−IMP2Naを混晶の形態で製造する方法としては、大別して次の三種の方法が挙げることができる。すなわち、(1)5’−GMP2Naと5’−IMP2Naを水に溶解し、これから冷却、濃縮およびアルコール添加により5’−GMP2Naと5’−IMP2Naを両者の混晶(以下、I+G混晶と略称する)として析出せしめる方法(特公昭54−16582号公報および同55−4787号公報)、(2)5’−GMP2Naと5’−IMP2Naをメタノール等の親水性有機溶媒含有水溶液に溶解し、これから5’−GMP2Naと5’−IMP2Naの混晶(すなわち、I+G混晶)を得る方法や5’−IMP2Naと5’−GMP2Naの混合水溶液に有機溶媒を加える晶析方法(特公昭40−12914号公報)、そして、(3)5’−GMP2Naが液底体として存在するスラリー溶液に、5’−IMP2Na含有水溶液を徐々に添加してI+G混晶を生成させることを特徴とする方法(特公平3−215494号公報および特許第2770470号明細書)。一方、5’−GMP2Naと5’−IMP2Naは、メタノール等の親水性有機溶媒含有水溶液または単なる水溶液中で5’−IMP2Naの結晶格子の中に5’−GMP2Naを取り込む形でI+G混晶を形成することが知られている。この混晶のX線回折図はほぼ5’−IMP2Naと同じパターンを示し、化学構造の類似した5’−GMP2Naが5’−IMP2Naの結晶格子に入り込み、水素結合により安定状態を保つものと考えられている。5’−IMP2Naの結晶は結晶形状がよく、同じ格子を持つI+G混晶もほぼ同等のものとなる。さて、I+G混晶を取得する際に、前記(1)の方法では、望ましい5’−IMP2Naと5’−GMP2Naの比率(重量比)(以下、両者の比率(重量比)をI/G比と略称する)を有する製品(混晶)を得るために、濃縮晶析では濃縮ドレン、フィード液の管理や温度、圧力等の設定条件を厳しく管理する必要があり、また冷却晶析では連続的に晶析液組成が変化するため晶析液組成の管理がより厳しくなり、いずれも装置や工程管理が複雑化するという問題がある。(2)の方法では、高い回収率で晶析出来るが、有機溶媒を使用するため工業的には高価な防爆設備を要し、製造コストが上がる欠点がある。また、晶析条件のコントロールが難しく、晶析条件によってはGMPが発生し、これによって結晶分離性が低下してしまうという問題がある。(3)の方法では、原料を5’−IMP2Naと5’−GMP2Naに分ける必要があり、晶析以前での混合を避けるために設備数が増加する。(発明の開示)前項記載の従来技術の背景下に、本発明は、結晶の分離性に悪影響のある5’−GMP2Naの無定形固体の副生を抑制し、このような無定形固体を随伴せず従って結晶分離性の良なI+G混晶を高い生産性で製造する方法を提供することにある。本発明者らは、従来知られているような管理および工程の煩雑なI+G混晶の晶析方法を改良すべく鋭意検討を重ねた結果、工業的に管理が容易な溶媒濃度一定条件下での晶析を行うことにより、5’−GMP2Naの無定形固体の発生を防ぎ、安定した結晶分離性および品質を有するI+G混晶を取得できることを見出し、このような知見に基いて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、晶析缶内液相に占める親水性有機溶媒の割合を30〜70vol%に維持するようにして、5’−グアニル酸ジナトリウムと5’−イノシン酸ジナトリウムの混合水溶液と親水性有機溶媒を晶析缶に同時に注加して5’−グアニル酸ジナトリウム・5’−イノシン酸ジナトリウム混晶を析出せしめることを特徴とする5’−グアニル酸ジナトリウム・5’−イノシン酸ジナトリウム混晶の製造方法に関する。また、本発明は、このような5’−グアニル酸ジナトリウム・5’−イノシン酸ジナトリウム混晶の製造方法であって、5’−IMP2Naの結晶または/およびI+G混晶を種晶として添加することを特徴とする方法にも関する。以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いる5’−IMP2Naと5’−GMP2Naの混合水溶液は、両者の各製品結晶からはいうまでもなく、例えばI/G比が所定範囲外のI+G混晶、または発酵法、有機合成法などによる両者それぞれの製造工程中の粗結晶レベルのものからも作成できる。ただし、不純物の含有量は、I+G混晶の溶解度あるいは結晶成長速度に影響を与えない程度に限定されることは言うまでもない。混合水溶液の両者の組成は、目的とするI+G混晶のI/G比(重量比)に合わせて各々5〜40wt%の範囲内で設定することができるが、好ましくは各々8〜25wt%が望ましい。また、その混合水溶液には親水性有機溶媒を20vol%以下の量で含有しても良い。さらに、I/G比=1.0のI+G混晶を取得するためには、混合液のI/G比は0.90〜0.97の範囲に収める必要がある。晶析操作を行うpHは、5’−IMP2Naおよび5’−GMPNaのジナトリウム塩の存在領域、すなわち、pH6〜10の範囲にあればI+G混晶を得ることが出来るが、好ましくはpH7〜8程度が望ましい。使用する親水性有機溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、もしくはそれらの混合物を使用する事ができる。好ましくは、得られる結晶の形状が最も固液分離に適しているメタノールを用いた方が望ましい。また、使用する有機溶媒は、水で希釈して使用することも可能であるが、希釈倍率が増加すると溶媒の添加量が増加するので、工業的には、溶媒の濃度範囲は80〜100vol%が好ましい。本発明の製造方法に従って5’−IMP2Naと5’−GMP2Naの混合水溶液と親水性有機溶媒を晶析缶に注加混合してI+G混晶を晶析する際に、いわゆる接種晶析法により5’−IMP2Na結晶または/およびI+G混晶を種晶として添加することも可能である。種晶は、粉体もしくはスラリーの形態で添加することができる。また、種晶の添加のタイミングは、親水性有機溶媒総添加量の20%以内の時点で行うことが望ましい。固液分離に適した結晶を得るための種晶の使用量は、混合水溶液中における5’−IMP2Naおよび5’−GMP2Naの総量の0.1〜10wt%程度が好ましく、1〜5wt%程度が特に好ましい。種晶の添加は、粉体物性の1つである粗比容を低下させる効果を有する。5’−IMP2Naと5’−GMP2Naの混合水溶液を親水性有機溶媒と同時に晶析槽に注加する際には、予め、溶媒単独、あるいは5’−IMP2Naと5’−GMP2Naの混合水溶液と溶媒との混合液を晶析槽内の内容物を攪拌出来る程度張込んでおく必要がある。さらに、溶媒が混合水溶液と速やかに均一に混合するように速やかに拡散するよう攪拌が良好な状態に保たれている必要がある。また、I+G混晶の結晶形状を良好に保つために可能な限り撹拌は低速で行うことが望ましく、好ましくは、SV=0.3〜0.6が望ましい。同時注加中の温度は、20〜50℃に設定することが出来るが、好ましくは、40±5℃で行うことが望ましい。また、同時注加中は、冷却操作など温度変化を伴っても良い。同時注加終了後、そのまま直ちに固液分離を行うことも可能であるが、収率を向上せしめるために若干の親水性有機溶媒の追加添加や冷却操作を行うことも可能である。晶析系内液相に占める有機溶媒の割合(濃度)は、30〜70%volの範囲で可能であるが、工業的には、収率確保のため60vol%以上が好ましい。(発明を実施するための最良の形態)以下に本発明の具体例を示す。比較例15’−IMP2Na44.7gおよび5’−GMP2Na45.6gを含む水溶液436.0gを40℃に保温しておき、これに、95vol%メタノール水溶液867mlを5時間かけて注加した。その時の最終メタノール濃度は65vol%であった。注加終了後、10℃まで7時間で冷却した。冷却途中の10〜20℃で5’−GMP2Naの無定形固体が発生した。実施例1濃度30vol%のメタノール水溶液200mlを晶析缶に張込み40℃に保温しておき、これに5’−IMP2Na89.5gおよび5’−GMP2Na91.1gを含む水溶液872.0gと、95vol%メタノール水溶液を同時に5時間かけて注加した。同時注加中は、注加中の晶析缶内メタノール濃度が30vol%になるように行った。注加終了後、10℃まで冷却したが、5’−GMP2Naの無定形固体はその析出が確認されなかった。実施例2濃度35vol%のメタノール水溶液200mlを晶析缶に張込み40℃に保温しておき、これに5’−IMP2Na89.5gおよび5’−GMP2Na91.1gを含む水溶液872.0gと、95vol%メタノール水溶液を3時間かけて同時注加した。同時注加中は、晶析缶内液相のメタノール濃度が30vol%になるようにコントロールした。注加終了後、10℃まで冷却したが、5’−GMP2Naの無定形固体はその析出が確認されなかった。実施例3濃度45vol%のメタノール水溶液175mlを晶析缶に張込み40℃に保温しておき、これに5’−IMP2Na78.3gおよび5’−GMP2Na79.2gを含む水溶液763.0gと、95vol%メタノール水溶液を3時間かけて同時注加した。同時注加中は、晶析缶内液相のメタノール濃度が45vol%になるようにコントロールした。注加終了後、10℃まで冷却したが、5’−GMP2Naの無定形固体はその析出が確認されなかった。実施例4濃度65vol%のメタノール水溶液175mlを晶析缶に張込み40℃に保温しておき、これに5’−IMP2Na83.9gおよび5’−GMP2Na85.4gを含む水溶液817.5gと、95vol%メタノール水溶液を3時間かけて同時注加した。同時注加中は、晶析缶内液相のメタノール濃度が65vol%になるようにコントロールした。添加終了後、10℃まで冷却したが、5’−GMP2Naの無定形固体はその析出が確認されなかった。実施例5濃度45vol%のメタノール水溶液175mlを晶析缶に張込み40℃に保温しておき、これに種晶としてI+G混晶6.3gを添加した。そのスラリーに5’−IMP2Na78.3gおよび5’−GMP2Na79.2gを含む水溶液763.0gと、95vol%メタノール水溶液を3時間かけて同時注加した。同時注加中は、晶析缶内液相のメタノール濃度が45vol%になるようにコントロールした。添加終了後、10℃まで冷却したが、5’−GMP2Naの無定形固体はその析出が確認されなかった。実施例6濃度45vol%のメタノール水溶液175mlを晶析缶に張込み40℃に保温しておき、これに45vol%のメタノール水溶液で懸濁(リスラリー)したI+G混晶6.3gを種晶として添加した。そのスラリーに5’−IMP2Na78.3gおよび5’−GMP2Na79.2gを含む水溶液963.0gと、95vol%メタノール水溶液を3時間かけて同時注加した。同時注加中は、晶析缶内液相のメタノール濃度が45vol%になるようにコントロールした。添加終了後、10℃まで冷却したが、5’−GMP2Naの無定形固体はその析出が確認されなかった。以上のことから、本晶析方法により5’−GMP2Naの無定形固体の析出を回避できる事が分かった。分析結果比較例1および実施例1〜6で得られた結晶について、5’−IMP2Naおよび5’−GMP2Naそれぞれの含量およびI/G比、ならびに粗比容の測定を行った。結果を下記第1表に示す。また、得られた分離母液について、5’−IMP2Naおよび5’−GMP2Na濃度測定を行い、それらより母液のI/G比、およびI+G混晶の晶析収率を求めた。結果を下記第2表に示す。得られた各結晶における5’−IMP2Naおよび5’−GMP2Naのそれぞれの含量は、HPLCで定量し、また粗比容は、(株)蔵持科学器械製作所製のカサ比重測定器を用いて測定した。また、得られた分離母液についての5’−IMP2Naおよび5’−GMP2Naそれぞれの濃度測定は、HPLCで行なった。I+G混晶のI/G比は、全て、約1であった。粉体物性の指標である粗比容は、比較例1と比較し、本発明の晶析方法では低い値となり、望ましい結果が得られた。また、種晶を使用した場合(実施例5および6)、粗比容は更に低い値となり、良好な結果が得られる。また、母液のI/G比は、同時添加の濃度が高いほど、高くなった。収率は、全て同程度であった。(産業上の利用可能性)I+G混晶を有機溶媒を使用して5’−GMP2Naと5’−IMP2Naの混合液から、5’−IMP2Naの結晶又はI+G混晶を種晶として使用し、または使用せずに、晶析させる際、本発明の方法によれば5’−GMP2Naの析出を防ぐことが出来る。また、本発明の方法によって、I+G混晶の粉体物性の指標である粗比容が、従来技術に較べ小さくなる。 晶析缶内に予め(a)濃度30〜70vol%の親水性有機溶媒を単独にまたは(b)5’−イノシン酸ジナトリウムと5’−グアニル酸ジナトリウムの混合水溶液と親水性有機溶媒との混合液を、該混合液における親水性有機溶媒の濃度が30〜70vol%となるように、かつ缶内内容物を撹拌できる程度に張り込んで撹拌しておき、これに晶析缶内液相に占める親水性有機溶媒の割合を30〜70vol%に維持するようにして、5’−グアニル酸ジナトリウムと5’−イノシン酸ジナトリウムの混合水溶液と親水性有機溶媒を晶析缶に同時に注加して5’−グアニル酸ジナトリウム・5’−イノシン酸ジナトリウム混晶を析出せしめることを特徴とする5’−グアニル酸ジナトリウム・5’−イノシン酸ジナトリウム混晶の製造方法。 該5’−グアニル酸ジナトリウム・5’−イノシン酸ジナトリウム混晶の析出を、5’−イノシン酸ジナトリウム結晶または/および5’−グアニル酸ジナトリウム・5’−イノシン酸ジナトリウム混晶から選ばれる種晶を添加し、その存在下に行なうことを特徴とする請求項1記載の5’−グアニル酸ジナトリウム・5’−イノシン酸ジナトリウム混晶の製造方法。