タイトル: | 特許公報(B2)_IgG抗体の安定な凍結乾燥医薬製剤 |
出願番号: | 2003515210 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 39/395,A61K 9/19,A61K 47/14,A61K 47/18,A61K 47/26,A61K 47/36,A61P 43/00 |
カイシェバ,エリザベット エー. フローレス−ネイト,アレニ ガプタ,スプリヤ JP 4317010 特許公報(B2) 20090529 2003515210 20020725 IgG抗体の安定な凍結乾燥医薬製剤 ピーディーエル バイオファーマ,インコーポレイティド 500533422 青木 篤 100099759 石田 敬 100077517 古賀 哲次 100087413 中村 和広 100108903 西山 雅也 100082898 カイシェバ,エリザベット エー. フローレス−ネイト,アレニ ガプタ,スプリヤ US 60/307,878 20010725 20090819 A61K 39/395 20060101AFI20090730BHJP A61K 9/19 20060101ALI20090730BHJP A61K 47/14 20060101ALI20090730BHJP A61K 47/18 20060101ALI20090730BHJP A61K 47/26 20060101ALI20090730BHJP A61K 47/36 20060101ALI20090730BHJP A61P 43/00 20060101ALI20090730BHJP JPA61K39/395 MA61K9/19A61K47/14A61K47/18A61K47/26A61K47/36A61P43/00 111 A61K 39/395 特表平11−510170(JP,A) 特開平05−065233(JP,A) 特開平03−504605(JP,A) 米国特許第05268368(US,A) 9 US2002024078 20020725 WO2003009817 20030206 2004538287 20041224 22 20050714 安居 拓哉発明の背景 本発明は、抗体の医薬製剤の分野に関する。詳しくは本発明は、安定な凍結乾燥された高濃度抗体製剤に関する。本発明は、抗IL2受容体抗体の安定化された凍結乾燥製剤により例示される。発明の背景 ヒトへの投与が目的の多くのタンパク質調製物は、その調製物の使用前に、タンパク質への変性、凝集および他の変化を予防するための安定剤を必要とする。多くのタンパク質調製物は、非常に希薄なまたは高濃度溶液中で特に不安定である。この不安定性は、可溶性/不溶性凝集物の形成に現れ、タンパク質調製物を保存または輸送するとしばしば増加する。タンパク質薬剤の分野に存在する大きな課題は、タンパク質の安定性と活性の両方を維持する製剤の開発である。 特に免疫グロブリンは、溶液中で凝集物および粒状物を形成しやすい特徴を有するものとして認識されており、従って、静脈内注射用に使用する前にこれらの製剤をろ過する必要がある。タンパク質凝集物と粒状物の形成は、非経口免疫グロブリン製品の開発において長い間問題となっている。抗体を含む安定な医薬製剤に対するニーズが当該分野に存在する。 WO89/11297号は、1〜25mg/mlのモノクローナル免疫グロブリン抗体、2〜10%マルトース、およびpHが3.0〜6.0の、酢酸、リン酸、もしくはクエン酸ナトリウム緩衝液を含む凍結乾燥組成物を開示する。 シナギス(Synagis)(登録商標)(メドイミューン(MedImmune))は、RSウイルス(respiratory syncytial virus)(RSV)のTタンパク質のA抗原部位中のエピトープに対する、組換えDNA技術により産生されたヒト化モノクローナルIgG1抗体である。シナギス(Synagis)(登録商標)は、ヒト(95%)とマウス(5%)抗体配列の組成物である。シナギス(Synagis)(登録商標)は、注射用無菌水で復元される無菌凍結乾燥品として供給される。復元されたシナギス(Synagis)(登録商標)は、溶液が清澄化するまで少なくとも20分間室温で放置する必要がある。復元されたシナギス(Synagis)(登録商標)は、筋肉内注射でのみ投与される。復元されると、シナギス(Synagis)(登録商標)は以下の賦形剤を含有する:47mMヒスチジン、3.0mMグリシンおよび5.6%マンニトールと活性成分、100mg/バイアルのIgG1抗体(Physicians' Desk Reference(登録商標)を参照、メディカルエコノミック社(Medical Economic Company, Inc.)、モントベール(Montvale)、ニュージャージー州)。 米国特許出願公報 US2001/0014326A1号は、25mg/ml抗IgE抗体、5mMヒスチジン(pH 6.0)、85mMショ糖、および0.01%ポリソルベート20を含有するあらかじめ凍結乾燥した抗体製剤を開示する。 米国特許第6,171,586号は、あらかじめ凍結乾燥はされていない治療上有効量の抗体、pH約4.8〜約5.5の酢酸緩衝液、界面活性剤、およびポリオールを含む安定な水性医薬製剤であって、浸透圧調節量の塩化ナトリウムが欠如した医薬製剤を開示する。 WO97/45140号は、100mg/mlまたはそれ以上の濃度を有するCDw52に対するヒト化抗体のモノクローナル抗体調製物であって、調製物は凝集物を実質的に含まない調製物を開示する。 Clelandら(J. Pharm. Sci., 90:310-321 (2001))は、凍結乾燥モノクローナル抗体の保存安定性には、360:1のモル比の凍結乾燥保護剤が必要であることを開示する。 ヒトへの投与用の安定な高度に濃縮された凍結乾燥抗体調製物であって、抗体が短時間で復元でき、静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下注射を含む非経口投与に適した調製物に対するニーズがある。発明の要約 本発明は、例えば約5〜25mMのヒスチジン緩衝液(pHは約5.5〜約6.5)中の高濃度、例えば50mg/mlを超えるIgG抗体、約0.005%〜0.03%のポリソルベート、およびショ糖を、随時セリンおよび/またはマンニトールとともに含む水性調製物から調製される安定な凍結乾燥医薬製剤に関する。この製剤は、IgG抗体の安定性を保持し、ヒト被験体への投与を目的とした免疫グロブリンが最終製品中で凝集物/粒状物を形成することを防ぐ。凍結乾燥製剤は液体で復元されて、約2分間またはそれ以下で50mg/mlを超えるIgG抗体濃度を含有する清澄化溶液にされる。 この凍結乾燥製剤は、室温で少なくとも3ヶ月、好ましくは6ヶ月、およびさらに好ましくは1年間安定である。この凍結乾燥製剤はまた、2〜8℃で1年間、好ましくは2年間安定である。この凍結乾燥製剤は、復元時間が2分未満と短く、静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下注射を含む非経口投与に適している。発明の詳細な説明 本発明の目的は、保存と輸送時に安定な、凍結乾燥された高度に濃縮された抗体製剤を提供することである。本発明のさらなる目的は、患者への投与の前に短時間で復元できる凍結乾燥された高度に濃縮された抗体製剤を提供することである。I.定義 用語「増量剤」は、凍結乾燥品の構造を提供する物質を含む。増量剤のために使用される一般的な例には、マンニトール、グリシン、乳糖およびショ糖がある。薬剤学的にすっきりしたケーキを与える以外に、増量剤はまた、崩壊温度を変更する、凍結乾燥保護を提供する、そして長期保存時のタンパク質安定性を増強するという点で有用な性質を与える。これらの物質はまた、浸透圧調節物質としても作用する。 用語「緩衝剤」は、凍結乾燥前に許容される範囲で溶液pHを維持する物質を包含し、コハク酸(ナトリウムまたはカリウム)、ヒスチジン、リン酸塩(ナトリウムまたはカリウム)、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、ジエタノールアミン、クエン酸(ナトリウム)などを含む。本発明の緩衝剤は、pHが約5.5〜約6.5の範囲であり、好ましくは約6.0である。この範囲のpHを調節する緩衝剤の例には、コハク酸(例えばコハク酸ナトリウム)、グルコン酸、ヒスチジン、クエン酸、および他の有機酸緩衝剤がある。 用語「凍結防止剤」は一般に、おそらくはタンパク質表面から優先的に除去されることにより、凍結誘導性のストレスに対してタンパク質に安定性を与える物質を含む。これらはまた、1次および2次乾燥中および製品の長期保存中に保護を与える。例には、デキストランやポリエチレングリコールのようなポリマー;ショ糖、グルコース、トレハロース、および乳糖のような糖;ポリソルベートのような界面活性剤;およびグリシン、アルギニン、およびセリンのようなアミノ酸がある。 用語「凍結乾燥」、「凍結乾燥された(lyophilized)」および「凍結乾燥された(freeze-dried)」は、乾燥すべき物質がまず凍結されて、次に氷または凍結溶媒が真空環境中で昇華されて除去される工程を意味する。保存中の凍結乾燥品の安定性を増強するために、凍結乾燥前製剤中に賦形剤を含有してもよい。 用語「凍結乾燥保護剤」は、おそらく非晶質のガラス様マトリックスを与えることにより、および水素結合によりタンパク質と結合して、乾燥工程中に除去される水分子を置換することにより、乾燥中または「脱水」工程(1次および2次乾燥サイクル)中にタンパク質に安定性を与える物質を含む。これは、凍結乾燥サイクル中の、タンパク質コンフォメーションを維持しタンパク質分解を最小にしかつ長期の製品安定性を改良することを助ける。例には、ポリオールまたは糖(例えばショ糖およびトレハロース)がある。 用語「医薬製剤」は、活性成分が有効であるようにする型であり、かつ製剤が投与されるヒトに有害な追加の成分を含有しない調製物を意味する。 「薬剤学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加剤)は、使用される活性成分の有効用量を与えるように、被験体哺乳動物に妥当に投与できるものである。 「復元時間」とは、凍結乾燥製剤を溶液で再水和して、粒子の無い清澄化溶液にするのに必要な時間である。 「安定な」製剤は、その中のタンパク質が、保存中に基本的にその物理的安定性、および/または化学的安定性および/または生物活性を保持するものである。タンパク質安定性を測定するための種々の分析技術が、当該分野で利用でき、「ペプチドとタンパク質薬剤送達(Peptide and Protein Drug Delivery)」, 247-301, Vincent Lee編、マーセルデッカー社(Marcel Dekker Inc.)、ニューヨーク、ニューヨーク州、Pubs. (1991)、 およびJones, A. Adv. Drug Delivery Rev. 10:29-90 (1993)に総説がある。安定性は、選択された温度で選択された期間測定することができる。 「安定な」凍結乾燥抗体製剤は、冷蔵温度(2〜8℃)で少なくとも12ヶ月、好ましくは2年間、さらに好ましくは3年間;または室温(23〜27℃)で少なくとも3ヶ月、好ましくは6ヶ月、さらに好ましくは1年間、有意な変化が観察されない凍結乾燥抗体製剤である。安定性の基準は以下の通りである。SEC-HPLCにより測定すると、抗体モノマーの分解が10%以下、好ましくは5%以下である。再水和溶液は、視覚的に分析すると無色であるかまたは清澄〜やや乳白色である。製剤の濃度、pHおよび浸透圧は、±10%以下の変化である。力価は、対照の70〜130、好ましくは80〜120%である。観察されるクリッピング(clipping)は10%以下、好ましくは5%以下である。形成される凝集物は10%以下、好ましくは5%以下である。 抗体は、色および/または清澄度の視覚的検査により、または紫外線散乱、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、および動的光散乱により測定して、凝集、沈殿および/または変性の有意な上昇を示さないなら、医薬製剤中で「物理的安定性を保持する」。タンパク質のコンフォメーション変化は、蛍光分光法(これはタンパク質の3次構造を決定する)、およびFTIR分光法(これはタンパク質2次構造を決定する)により評価される。 抗体は、有意な化学変化を示さないなら、医薬製剤中で「化学的安定性を保持する」。化学的安定性は、化学的に変化した型のタンパク質を検出および定量することにより評価することができる。しばしばタンパク質の化学構造を変化させる分解工程は、加水分解またはクリッピング(サイズ排除クロマトグラフィーとSDS-PAGEなどの方法により評価される)、酸化(例えばペプチドマッピングを質量スペクトルまたはMALDI/TOF/MSと組合せた方法などにより評価される)、アミド分解(イオン交換クロマトグラフィー、毛細管等電点電気泳動、ペプチドマッピング、イソアスパラギン酸測定などの方法により評価される)、および異性体化(イソアスパラギン酸含量、ペプチドマッピングなどにより評価される)を含む。 ある時点での抗体の生物活性が、医薬製剤を調製した時点で示した生物活性のあらかじめ決められた範囲内にあるなら、その抗体は医薬製剤の「生物活性を保持する」。抗体の生物活性は、例えば抗原結合測定法により測定される。 用語「等張」は、目的の製剤がヒトの血液と基本的に同じ浸透圧を有することを意味する。等張製剤は一般に約270〜328mOsmの浸透圧を有する。わずかに低張な圧力は250〜269mOsmであり、わずかに高張な圧力は328〜350mOsmである。浸透圧は、例えば蒸気圧または氷凍結型浸透圧計を使用して測定することができる。 浸透圧調節物質:塩(NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2など)が、浸透圧を調節するための浸透圧調節物質として使用される。さらに、凍結防止剤/凍結乾燥保護剤および/または増量剤(例えば、ショ糖、マンニトール、グリシンなど)は、浸透圧調節物質として機能する。II.分析法 製品の安定性を評価するための分析法には、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、動的光散乱試験(DLS)、示差走査熱分析(DSC)、iso-asp定量、力価、340nmでの紫外線、紫外線分光法、およびFTIRがある。SEC(J. Pharm. Scien., 83:1645-1650 (1994);Pharm. Res., 11:485 (1994);J. Pharm. Bio. Anal., 15:1928 (1997);J. Pharm. Bio. Anal., 14:1133-1140 (1986))は、製品中のモノマーパーセントを測定し、可溶性凝集物の量の情報を与える。DSC(Pharm. Res., 15:200 (1998);Pharm. Res., 9:109 (1982))は、タンパク質変性温度とガラス転移温度の情報を与える。DLS(American Lab., Nov. (1991))は、平均拡散係数を測定し、可溶性および不溶性凝集物の量の情報を与える。340nmの紫外線は340nmでの散乱光強度を測定し、可溶性および不溶性凝集物の量についての情報を与える。紫外線分光法は、278nmでの吸光度を測定し、タンパク質濃度の情報を与える。FTIR(Eur. J. Pharm. Biopharm., 45:231 (1998);Pharm. Res., 12:1250 (1995);J. Pharm. Scien., 85:1290 (1996);J. Pharm. Scien., 87:1069 (1998))は、アミドワン(amide one)領域のIRスペクトルを測定し、タンパク質2次構造の情報を与える。 試料中のiso-asp含量は、イシクアントイソアスパラギン酸検出システム(Isoquant Isoaspartate Detection System)(プロメガ(Promega))を使用して測定される。キットは、酵素プロテインイソアスパルチルメチルトランスフェラーゼ(PIMT)を使用して、標的タンパク質中のイソアスパラギン酸残基の存在を特異的に検出する。PIMTは、α-カルボキシ位置でのメチル基のS-アデノシル-L-メチオニンからイソアスパラギン酸への転移を触媒して、S-アデノシル-L-ホモシステイン(SAH)を生成する。これは比較的小さな分子であり、通常、キット中で提供されるSAH HPLC標準物質を使用して、逆相HPLCにより単離および定量される。 抗体の力価または生物同一性は、その抗原に結合する能力により測定することができる。抗体の抗原への特異的結合は、当業者に公知の任意の方法により定量され、例えばELISA(酵素結合免疫吸着測定法)のような免疫測定法により測定される。III.抗体の調製 本発明は、抗体を含む安定な製剤に関する。抗体は、抗体を作成するために当該分野で利用できる方法を使用して調製され、そのような方法の例は、以下のセクションでより詳細に説明される。 抗体は目的の抗原に対するものである。好ましくは抗原は、生物学的に重要なポリペプチドであり、哺乳動物への抗体の投与は、疾患を予防または治療する。しかし非ポリペプチド抗原(例えば、腫瘍関連糖脂質抗原;米国特許第5,091,178号を参照)に対する抗体もまた企図される。 抗原がポリペプチドである時、これは膜貫通分子(例えば受容体)またはリガンド(例えば、増殖因子)でもよい。抗原の例には、レニンのような分子;ヒト成長ホルモンやウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;アルファ-1-アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝固因子、例えば第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、およびフォンウィルブラント因子;抗凝固因子、例えばプロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性物質;プラスミノーゲンアクチベータ、例えばウロキナーゼまたはヒト尿または組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA);ボンベシン;トロンビン;造血増殖因子;腫瘍壊死因子アルファおよびベータ;エンケファリナーゼ;RANTES(活性で制御され、正常にT細胞から発現され分泌される);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-アルファ);血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン;ミュラー管阻害物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;微生物タンパク質、例えばベータラクタマーゼ;DNase;IgE;細胞障害性Tリンパ球関連抗原(CTLA)、例えばCTLA-4;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモンまたは増殖因子の受容体;タンパク質AまたはD;リウマチ因子;神経向性因子、例えば骨由来神経向性因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、または-6(NT-3、NT4、NT-5、またはNT-6)、または神経増殖因子、例えばNGF-ベータ;血小板由来増殖因子(PDGF); 繊維芽細胞増殖因子、例えばaFGFとbFGF;表皮増殖因子(EGF);トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えばTGF-αとTGF-β(TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、またはTGF-β5を含む);インスリン様増殖因子-Iと-II(IGF-IとIGF-II);デス(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質;CDタンパク質、例えばCD3、CD4、CD8、CD19およびCD20;エリスロポエチン;骨誘導性因子;イムノトキシン;骨形成蛋白質(BMP);インターフェロン、例えばインターフェロン-α、-βおよび-γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えばM-CSF、GM-CSF、およびG-CSF;インターロイキン(IL)、例えばIL-1〜IL-10;インターロイキンIL-1〜IL-10に対する受容体;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;分解加速因子;ウイルス抗原、例えばAIDSエンベロープの一部;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;制御タンパク質;インテグリン、例えばCD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4およびVCAM;腫瘍関連抗原、例えばHER2、HER3、またはHER4受容体;および上記ポリペプチドの任意の断片がある。 組換え法を使用する時、抗体は細胞内、細胞周辺腔に産生されるか、または培地中に直接分泌される。抗体が細胞内で産生される場合、第1段階として、粒子状破片(宿主細胞または溶解細胞)が、例えば遠心分離または限外ろ過により除去される。抗体が培地に分泌される場合、そのような発現系からの上清は、まず市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばアミコン(Amicon)またはミリポアペリコン(Millipore Pellicon)限外ろ過ユニットを使用して濃縮される。前記工程の任意の場所にPMSFのようなプロテアーゼインヒビターを加えて、タンパク質分解を阻害し、抗生物質を加えて外因性の汚染物質の増殖を予防してもよい。 細胞から調製される抗体組成物は、例えばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、および親和性クロマトグラフィーを使用して精製することができ、親和性クロマトグラフィーが好適な精製法である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適切性は、抗体中に存在する免疫グロブリンFcドメインの種とイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2またはγ4 重鎖に基づく抗体を精製するのに使用することができる(Lindmark ら、J. Immunol. Meth. 62:1-13 (1983))。プロテインGは、すべてのマウスイソタイプとヒトγ3について推奨される(Gussら、EMBO J. 5:1567-1575(1986))。親和性リガンドが結合されるマトリックスは、ほとんどの場合アガロースであるが、他のマトリックスも利用できる。機械的に安定なマトリックス、例えば制御された多孔性ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンは、アガロースより速い流速と短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメイン含む場合、Bakerbond ABX(登録商標)樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, N.J.) が精製に適している。タンパク質精製のための他の方法、例えばイオン交換クロマトグラフィーでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSET(登録商標)のクロマトグラフィー、陰イオン交換樹脂または陽イオン交換樹脂(例えばポリアスパラギン酸カラム)のクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸沈殿もまた、回収される抗体により利用可能である。 本発明により包含される好適な抗体は、IgG抗体である。本発明は、ダクリズマブ(Daclizumab)のような抗IL2受容体抗体により例示される。この分子は、2つの同一の重鎖と2つの同一の軽鎖サブユニットとからなる。ジスルフィド結合が4つの鎖を結合させる。ダクリズマブモノマーは、分子量が約150,000ダルトンである。ダクリズマブは、活性化されたT細胞上で発現されるIL-2受容体のp55サブユニットに結合する。抗原標的はCD25である。ダクリズマブは、供給バッチ発酵培養により、重鎖と軽鎖遺伝子を含有するGS-NS0細胞株から産生される。バイオリアクター採取物を処理して細胞と破片を除去し、イオン交換とゲル濾過クロマトグラフィーおよび一連の限外ろ過とろ過法を使用して精製して、95%を超えるモノマー種を含有する薬剤物質を産生する。IV.製剤の調製 上記したように目的の抗体を調製後、抗体を含む医薬製剤が調製される。製剤開発アプローチは以下の通りである:最適な溶液pHを選択し、緩衝液の種類と濃度を選択し、液体の種々の賦形剤の作用と凍結乾燥安定性を評価し、I-最適実験計画を使用してスクリーニングした賦形剤の濃度を最適化する(「実験のための統計(Statistics for Experimental)」、Box, George E.P. ジョンワイリーアンドサンズインク(John Wiley and Sons Inc.)、1978)。 安定な凍結乾燥タンパク質産物を開発するのに以下の基準が重要である。凍結乾燥中のタンパク質の変性(unfolding)は最小にしなければならない。種々の分解経路を最小にしなければならない。ガラス転移温度(Tg)は、製品保存温度より高くなければならない。残存湿度は低くなければならない(重量で<1%)。強くてすっきりしたケーキ構造を得なければならない。好適な寿命は室温(22〜28℃)で少なくとも3ヶ月、好ましくは6ヶ月、さらに好ましくは1年間である。復元時間は短く、例えば5分未満、好ましくは2分未満、さらに好ましくは1分未満である。凍結乾燥品を復元する時は、復元試料は、2〜8℃で少なくとも48時間安定でなければならない。 本発明の組成物は、免疫グロブリンを含有する試薬中のタンパク質凝集物と粒状物の形成を最小にし、時間が経っても溶液中の抗体がその免疫活性を維持することを確保する。組成物は、中性または酸性pH(pH 5.5〜6.7)を有する緩衝液中の抗体、界面活性剤およびポリオールを含む、水性の凍結乾燥前製剤から調製される無菌の薬剤学的に許容される凍結乾燥製剤を含む。好適な組成物はさらに、増量剤および/または浸透圧調節物質を含有する。 凍結乾燥前製剤中の抗体は、50mg/ml以上の高濃度を有する。好適な抗体はIgG抗体、好ましくはモノクローナルIgG抗体である。 pH 5.5〜6.5の緩衝液が組成物中で使用される。この範囲のpHを制御する緩衝液の例には、コハク酸(例えばコハク酸ナトリウム)、グルコン酸、ヒスチジン、クエン酸、および他の有機酸緩衝液がある。ヒスチジンは、皮下、筋肉内および腹膜注射用の好適な緩衝液である。コハク酸ナトリウム緩衝液は、低いイオン強度で緩衝能が悪いため、あまり好ましくない。コハク酸ナトリウムの緩衝強度を増強するために、賦形剤の量は浸透圧を所望の範囲に維持するために低下させなければならない。凍結乾燥物質を充填容量の半分で復元する場合、凍結乾燥前(充填)液体の所望の浸透圧は140〜160mOsmである。ヒスチジン緩衝液の利点は、1mmolのヒスチジン緩衝液がわずかに1mOsmを寄与するのみであり、一方1mmolのコハク酸ナトリウム緩衝液は3mOsmを寄与する。ヒスチジン緩衝液は浸透圧への寄与が少なく、より多くの安定性賦形剤を製剤に加えることを可能にする。クエン酸緩衝液はまた皮下注射した時に痛みを引き起こすため、あまり好ましくない。好適な緩衝液は、約5〜25mMのヒスチジンを含有する。さらに好適な緩衝液は、約10〜20mMのヒスチジンを含有する。 抗体製剤に界面活性剤が加えられる。界面活性剤の例は、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、80、例えばツイーン(登録商標)20、ツイーン(登録商標)80)またはポロキサマー(例えばポロキサマー188)のような非イオン性界面活性剤を含む。加えられる界面活性剤の量は、製剤化された抗体の凝集を低下させ、および/または製剤中の粒状物の形成を最小にし、および/または容器へのタンパク質吸着を低下させるようなものである。界面活性剤はまた、凍結乾燥製剤の復元時間を短縮する。例えば界面活性剤は、製剤中に約0.001%〜約0.5%、好ましくは約0.005%〜約0.1%、最も好ましくは約0.01%〜約0.05%の量で存在する。 浸透圧調節物質および凍結防止剤/凍結乾燥保護剤として作用するポリオールが、製剤中に含有される。好適な実施態様においてポリオールは、非還元糖(例えば、ショ糖またはトレハロース)である。本発明において、ショ糖のようなポリオールは、抗体凝集に対する1次安定剤であり、粒状物の無い溶液に凍結乾燥製剤が復元する時間を短縮するのに重要な役割も果たす。ポリオールは、製剤の所望の浸透圧に応じて変化する量で製剤に加えられる。好ましくは復元後の凍結乾燥製剤は、等張であるが、高張または低張でもよい。凍結乾燥前製剤中のショ糖のようなポリオールの適当な濃度は、約100〜300mMの範囲、好ましくは約100〜200mMの範囲である。 良好な凍結乾燥ケーキ性を与える増量剤(例えば、セリン、グリシン、マンニトール)を、本発明の組成物に随時加えることができる。これらの物質はまた、製剤の浸透圧に寄与し、凍結−融解工程に対して保護を与え、長期安定性を改良する。好適な増量剤は、約15〜55mM、好ましくは約20〜30mMのセリンである。他の好適な増量剤は、約15〜55mM、好ましくは約20〜45mMのマンニトールである。凍結乾燥前製剤へのセリンまたはマンニトールの添加は、抗体を安定化するのに必要なポリオールの濃度を、例えば30〜180mMおよび好ましくは80〜130mMに低下させる。 塩(例えば、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2)のような浸透圧調節物質を、製剤に加えて浸透圧を調節することができる。 凍結乾燥前組成物の例は、約50mg/mlまたはそれ以上のIgG抗体、約10〜20mMのヒスチジン(pH 5.5〜6.5)、約0.005〜0.03%のポリソルベート20または80、および賦形剤の以下の組合せを含む製剤である:(a) 10〜200mMのショ糖、(b) 110〜130mMのショ糖と20〜45mMのマンニトール、(c) 100〜130mMのショ糖と15〜55mMのセリン、および(d) 7〜55mMのセリン、80〜130mMのショ糖、および10〜55mMのマンニトール。上記凍結乾燥前製剤は凍結乾燥されて乾燥した安定な粉末となり、これはヒトへの投与に適した粒状物を含まない溶液に容易に復元することができる。 凍結乾燥(lyophilization)は、医薬品の調製においてその生物活性を保持するためにしばしば使用される凍結乾燥(freeze drying)法である。液体組成物が調製され、次に凍結乾燥して乾燥したケーキ様の製品が形成される。この方法は一般に、すでに凍結しておいた試料を真空下で乾燥して氷を除去し、粉末またはケーキ様物質の形で非水性成分をそのまま残す。凍結乾燥された生成物は、生物活性が喪失することなく長期間かつ高温で保存することができ、適切な希釈剤を加えることにより粒状物を含まない溶液に容易に復元できる。適切な希釈剤は、生物学的に許容される任意の液体であり、その中で凍結乾燥粉末が完全に可溶性になる液体である。水、特に無菌の発熱性物質を含まない水が好適な希釈剤であり、これは、抗体の安定性に影響を与える塩または他の物質を含まないためである。凍結乾燥の利点は、種々の分子イベントが大幅に低下するレベルまで水分含量(これは、長期保存で製品を不安定にする)を低下させられることである。凍結乾燥品はまた、輸送の物理的ストレスに容易に耐えることができる。復元した製品は、粒状物を含まず、従ってあらかじめろ過することなく投与することができる。 液体製剤は、適切な乾燥パラメータを使用して凍結乾燥することができる。以下の乾燥パラメータが好ましい:1次乾燥期温度が約-20℃〜-50℃、圧力が約80mTorr〜約120mTorr;そして2次乾燥期温度が周囲温度で、圧力が約80mTorr〜約120mTorr。 凍結乾燥品は、モノクローナル抗体の免疫活性の安定性を保持し、ヒト被験体への投与を目的とした免疫グロブリンを、最終製品中での物理的および化学的分解から守る。 凍結乾燥品は、使用時に希釈剤(例えば、無菌水または食塩水)で再水和されて、粒状物を含まない溶液を与える。復元した抗体溶液は、周囲温度で凍結乾燥ケーキを長期保存した後も粒状物を含まない。復元した溶液は、被験体に非経口的に、好ましくは静脈内または皮下投与される。 凍結乾燥品の重要な特徴は、製品の復元時間または再水和するのに必要な時間である。非常に速い完全な再水和を可能にするために、高多孔性の構造を有するケーキが重要である。ケーキ構造は、タンパク質濃度、賦形剤の種類と濃度、および凍結乾燥サイクルのプロセスパラメータを含む多くのパラメータの関数である。一般に復元時間は、タンパク質濃度が上昇すると上昇し、従って、短い復元時間は、高濃度凍結乾燥抗体製剤の開発において重要な目標である。長い復元時間は、より濃縮された溶液にタンパク質がより長時間暴露されるため、製品の品質を劣化させる。さらに使用者の側からは、製品が完全に再水和されるまで投与することができない。これは、製品が粒状物を含まず、正しい用量が投与され、その無菌性が影響を受けないことを確保するためである。すなわち、迅速な再水和は、患者と医師により好都合である。 凍結乾燥品において、所望の投与量は、標的タンパク質濃度で製剤を凍結乾燥し、出発時の充填容量と同じ容量で製品を復元することにより得られる。所望の投与量はまた、より多量の希釈製剤を凍結乾燥し、より少量でこれを復元することにより得られる。例えば、所望の製品の投与量が1mlの製剤中100mgのタンパク質の場合、製剤は以下の液体構成で凍結乾燥することができる:100mg/mlのタンパク質製剤を1ml、50mg/mlを2ml、または25mg/mlを4ml。すべての場合に最終製品は、1mlの希釈剤で復元されて標的タンパク質濃度100mg/mlが得られる。しかし、凍結乾燥前製剤中のタンパク質濃度が低下すると、比例的に充填容量が上昇する。これは、対応して凍結乾燥サイクル(特に1次乾燥時間)の長さを延長し、製品のコストが大きく上昇させる。例えば凍結物質の1mlの充填容量(バイアルで1mmの高さ)はその水を昇華するのに約1時間必要であり、従って10ml(10mmの高さ)の凍結製品には約10時間の1次乾燥時間がかかる。従って、凍結乾燥プロセスがより効率的になるような濃縮された凍結乾燥前製剤(50mg/mlを超える抗体を有する)を有することが有利である。 本発明は、高度に濃縮された凍結乾燥前抗体製剤(50mg/mlを超える)を与え、これは効率的かつ有効に凍結乾燥されて、抗体の生物学的、物理的および化学的安定性を保持する乾燥製剤となる。この乾燥製剤は、室温保存で少なくとも3ヶ月、好ましくは6ヶ月安定である。乾燥製剤は、2分未満の短い時間で復元できて、50mg/ml を超える抗体を含有する粒状物を含まない溶液を与える。そのような高度に濃縮された抗体溶液は、静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下注射のような非経口投与をすることができる。 本発明をさらに以下の例で説明するが、これらは本発明をその具体的な方法に限定するものではない。実施例実施例1.凍結乾燥の操作バイアル構成:5mlのウィートン(Wheaton)バイアルに2ml 充填する;凍結乾燥サイクル: 1. 凍結: ・温度:-40℃ ・速度:2℃/分 ・凍結時間:3時間 2. 1次乾燥: ・温度:-20℃ ・速度:1℃/分 ・時間:12時間 ・圧力:150 mTorr 3. 2次乾燥: ・温度:-20℃ ・速度:1℃/分 ・時間:10時間 ・圧力:150 mTorr実施例2.賦形剤の予備スクリーニング この実験では、製剤マトリックスは、10mg/mlの抗IL2受容体抗体、10mMのヒスチジン(pH 6.0)、および0.015%のツイーン(登録商標)80を含有する。スクリーニングされた賦形剤は、(a) 凍結防止剤/凍結乾燥保護剤、例えばショ糖、トレハロース、ポリエチレングリコール(PEG)、およびポリビニルピロリドン(PVP);(b) 増量剤と浸透圧調節物質、例えばマンニトール、グリシン、およびセリン;および(c) Tg増強物質、例えばデキストランである。 2mlの各製剤をバイアルに充填し、実施例1の保存凍結乾燥サイクルにより凍結乾燥した。各凍結乾燥物質を2mlの無菌水で復元した。 各液体製剤と凍結乾燥物質の加速安定性試験を、55または40℃で行った。可溶性凝集物の量はSECにより決定した。異なる賦形剤のモノマー低下%を図1に示す。 結果は、PEG、デキストラン、およびグリシンが、凍結乾燥前液体の安定性を低下させることを示した。すべての他の賦形剤の作用は、賦形剤の無い対照製剤と同等であった。 結果はまた、PVP、デキストラン、およびグリシンが、凍結乾燥製剤中で有意なタンパク質凝集を引き起こすことを示した。対照製剤と比較して、ショ糖、マンニトールおよびセリンはそれぞれ、凝集に対して製剤を安定化させた。実施例3.ショ糖、マンニトールおよびセリン濃度の最適化 タンパク質安定性に及ぼすショ糖、マンニトールおよびセリンの作用を、I-Optimal(ハーディン−スローアン(Hardin-Sloane))実験計画法を使用して調べた。 この実験では、製剤マトリックスは、50mg/mlの抗IL2受容体抗体、10mMのヒスチジン(pH 6.0)、および0.015%のツイーン(登録商標)80を含有する。スクリーニングされた賦形剤は、セリン(0〜100mM)、ショ糖(0〜120mM)、およびマンニトール(0〜170mM)である。I-Optimal計画を表1に示す。試料1〜15は、試験製剤であり、試料16〜20は対照製剤である。 2mlの各製剤と対照製剤をバイアルに充填し、実施例2に記載の方法に従って凍結乾燥した。各凍結乾燥物質を1mlの無菌水で復元した。凍結乾燥物質を半量の溶液で復元すると、浸透圧とタンパク質濃度は倍になる。 凍結乾燥品安定性試験を37℃で4週間行った。製剤は区別できた。SECの分析法と復元時間は、製剤間で統計的に有意な応答を示す。 図2は、試験試料についてのモデル予測と実験的観察の比較を示す。図3は、対照についてのモデル予測と実験的観察の比較を示す。図4は、主作用と相互作用のモデル係数を示す。 図5は、マンニトール対ショ糖、[セリン]=0の代表的モデルシミュレーションを示す。結果は、凝集に対してショ糖とマンニトールがタンパク質を安定化させることを示す(ショ糖>マンニトール)。ショ糖は、復元時間の短縮に好ましい作用を有する。高濃度のショ糖とマンニトールを使用すると、製剤の安定性を増強させ、復元時間が短いケーキが得られる。 図6は、マンニトール対セリン、[ショ糖]=0の代表的モデルシミュレーションを示す。結果は、凝集に対してセリンとマンニトールがタンパク質を安定化させることを示す(マンニトール>セリン)。高濃度では、セリンは復元時間を延長させる。高濃度のセリンとマンニトールを使用すると、製剤の安定性を増強させ、これらの組合せは復元時間を有意に短縮する。 図7は、ショ糖対セリン、[マンニトール]=0の代表的モデルシミュレーションを示す。結果は、ショ糖とセリンの組合せが、凝集に対してタンパク質を有効に安定化させ、復元時間が短いケーキを形成することができることを示す。 図8は、マンニトール対セリン、[ショ糖]=100mMの代表的モデルシミュレーションを示す。モデルシミュレーションは、等張製剤を与える条件の選択を可能にする。データは、ショ糖濃度を最大にすることを支持する。100mMのショ糖では、モデルは、セリンおよび/またはマンニトールを最適化するための条件を提供する。 この実験の結論は以下の通りである。 高濃度のショ糖とマンニトールは、凍結乾燥製剤に最大の安定性を与えた。しかし浸透圧の制限により、両方の賦形剤の高濃度の添加は除外される。 ショ糖は、凍結乾燥物質の安定性に対して最も大きな安定化作用を有し、これはまた、復元時間が短いケーキを与える。実施例4.2つの製剤の安定性データ 製剤1と2を調製し、実施例1に記載の方法と類似の方法に従って凍結乾燥した。凍結乾燥した製剤を37℃で2.5ヶ月インキュベートした。異なる時点での凍結乾燥製剤を1mlの水で復元し、分析法により試験した。 製剤1(凍結乾燥前):10mMのヒスチジン緩衝液中50mg/mlの抗IL2受容体抗体、および0.015%のツイーン(登録商標)80(pH=6)、25mMのセリン、4%のショ糖(117mM)、0.25%のマンニトール(13.7mM) 製剤2(凍結乾燥前):10mMのヒスチジン緩衝液中50mg/mlの薬剤、および0.015%のツイーン(登録商標)80(pH=6)、4%のショ糖(117mM)、および0.5%のマンニトール(27.4mM)* 1mlの注射用水(充填容量の半分)でケーキを復元した後は、すべての賦形剤の濃度は倍になる。 Pre-lyo:凍結乾燥工程の前 T0:製剤は凍結乾燥され、この直後に1mlの注射用水で復元した T=2.5ヶ月:製剤を凍結乾燥した:ケーキを37℃で2.5ヶ月インキュベートし、次に1mlの注射用水(WFI)で復元した。実施例5.3つの凍結乾燥ダクリズマブ製剤の長期安定性試験試験の説明 以下の3つの製剤の長期安定性を、5、25および40℃で試験した。これらの試料の安定性を24ヶ月にわたって、T0、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、および24ヶ月で追跡する。異なる時点での凍結乾燥製剤を注射用水(WFI)で復元し、分析法で試験する。 1. 製剤I(FORM-I):50mg/mlの抗IL2受容体抗体、20mMのヒスチジン、4%(117mM)のショ糖、0.015%のツイーン(登録商標)80(pH 6.0)。バイアル構成:2mlのバイアルに2ml充填する。1mlのWFIで復元する。復元後タンパク質濃度=100mg/ml。 2. 製剤II(FORM-II):80mg/mlのタンパク質、20mMのヒスチジン、6.5%(190mM)のショ糖、0.025%のツイーン(登録商標)80(pH 6.0)。バイアル構成:2mlのバイアルに1.25ml充填する。1mlのWFIで復元する。復元後タンパク質濃度=100mg/ml。 3. 製剤III(FORM-III):80mg/mlのタンパク質、20mMのヒスチジン、4%のショ糖、0.015%のツイーン80(pH 6.0)。バイアル構成:2mlのバイアルに1.25ml充填する。1mlのWFIで復元する。復元後タンパク質濃度=160mg/ml。結果の要約 図9は、時間と温度の関数としての3つの製剤のサイズ排除クロマトグラフィーにより測定したモノマー%を示す。5℃で3ヶ月では、3つの製剤のモノマー含量に大きな変化は観察されなかった。25と40℃で3ヶ月では、すべての3つの製剤についてT0と比較して、モノマー含量の3%の低下が観察される。 図10は、時間と温度の関数としての3つの製剤のサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した凝集物%を示す。5℃では、凝集の有意な増加は観察されなかった。25℃で3ヶ月では、FORM-IとFORM-IIについての凝集の上昇は<1%、FORM-IIIについては〜2%である。40℃で3ヶ月ではFORM-IとFORM-IIについての凝集の上昇は2.5%であり、FORM-IIIについては<4%である。 図11は、時間と温度の関数としての3つの製剤についてサイズ排除クロマトグラフィーにより測定したクリップ%を示す。すべての温度で3ヶ月で、すべての3つの製剤について、クリップ%の最小の変化が観察された。すなわち、水性状態では重要な安定性の関心であった加水分解は、凍結乾燥製剤ではうまく短縮された。 さらに、初期の時点(T=0)の凍結乾燥製剤と40℃で3ヶ月目の復元した製剤でのタンパク質の2次構造を、フーリエ変換赤外吸収スペクトル法(FTIR)により測定する。すべての製剤について、2次構造に経時的な大きな変化は観察されなかった。さらに、凍結乾燥製剤と復元した製剤のタンパク質構造は、変化していないようである。一般に、凍結乾燥製剤と復元した製剤の間の2次構造の変化は、長期保存のタンパク質凝集と相関する。 温度の関数としてのT=0とT=3ヶ月の3つの製剤のアイソフォームプロフィールを、cIEFにより比較する。すべての製剤について3ヶ月でアイソフォームプロフィールに最小の変化が観察された。さらに温度の関数としての変化は見られない。一般に、アミド分解と加水分解のような化学的分解プロセスの結果としてアイソフォームの変化が生じる。従って、このデータは、40℃という高い温度で追跡される製剤の化学的安定性を示す。 表2は、ELISAベースの結合アッセイにより測定されるT=0とT=3ヶ月の3つの製剤の力価のリストである。凍結乾燥サイクルの間、試料の生物活性は保存され、40℃という高い温度での3ヶ月の保存でも変化しない。 本発明、およびこれを作成し使用する方法と工程が、当業者がこれを作成し使用することができるように、完全に、明瞭にかつ正確に記載されている。前記説明は本発明の好適な実施態様であり、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、変更が可能であることを理解されたい。本発明の主題を詳細に記載し、明確に特許請求するために、特許請求の範囲により本明細書を説明する。図1は、(A) 55℃で10日間保存後の液体、および(B) 40℃で12日間凍結乾燥したもの、を試験することによる、抗体安定性への賦形剤の影響を示す。図1は、(A) 55℃で10日間保存後の液体、および(B) 40℃で12日間凍結乾燥したもの、を試験することによる、抗体安定性への賦形剤の影響を示す。図2Aと2Bは、試験試料1〜15のモデル予測と実験的観察の比較を示す。図2Aはモノマーの低下%を示す。図2Bは復元時間を示す。図2Aと2Bは、試験試料1〜15のモデル予測と実験的観察の比較を示す。図2Aはモノマーの低下%を示す。図2Bは復元時間を示す。図3Aと3Bは、試験試料16〜20のモデル予測と実験的観察の比較を示す。図3Aはモノマーの低下%を示す。図3Bは復元時間を示す。図3Aと3Bは、試験試料16〜20のモデル予測と実験的観察の比較を示す。図3Aはモノマーの低下%を示す。図3Bは復元時間を示す。図4は、(A) 主作用、および(B) 相互作用、のモデル係数を示す。図4は、(A) 主作用、および(B) 相互作用、のモデル係数を示す。図5Aと図5Bは、マンニトール対ショ糖、[セリン]=0の代表的モデルシミュレーションを示す。図5Aはモノマー低下%を示す。図5Bは復元時間を示す。図5Aと図5Bは、マンニトール対ショ糖、[セリン]=0の代表的モデルシミュレーションを示す。図5Aはモノマー低下%を示す。図5Bは復元時間を示す。図6Aと図6Bは、マンニトール対セリン、[ショ糖]=0の代表的モデルシミュレーションを示す。図6Aはモノマー低下%を示す。図6Bは復元時間を示す。図6Aと図6Bは、マンニトール対セリン、[ショ糖]=0の代表的モデルシミュレーションを示す。図6Aはモノマー低下%を示す。図6Bは復元時間を示す。図7Aと図7Bは、ショ糖対セリン、[マンニトール]=0の代表的モデルシミュレーションを示す。図7Aはモノマー低下%を示す。図7Bは復元時間を示す。図7Aと図7Bは、ショ糖対セリン、[マンニトール]=0の代表的モデルシミュレーションを示す。図7Aはモノマー低下%を示す。図7Bは復元時間を示す。図8Aと図8Bは、マンニトール対セリン、[ショ糖]=100の代表的モデルシミュレーションを示す。図8Aはモノマー低下%を示す。図8Bは復元時間を示す。図8Aと図8Bは、マンニトール対セリン、[ショ糖]=100の代表的モデルシミュレーションを示す。図8Aはモノマー低下%を示す。図8Bは復元時間を示す。図9A〜9Cは、(A) 5℃、(B) 25℃、および(C) 40℃での時間の関数としての、製剤I、II、およびIII中のモノマーパーセントを示す。図9A〜9Cは、(A) 5℃、(B) 25℃、および(C) 40℃での時間の関数としての、製剤I、II、およびIII中のモノマーパーセントを示す。図9A〜9Cは、(A) 5℃、(B) 25℃、および(C) 40℃での時間の関数としての、製剤I、II、およびIII中のモノマーパーセントを示す。図10A〜Cは、(A) 5℃、(B) 25℃、および(C) 40℃での時間の関数としての、製剤I、II、およびIII中の凝集物パーセントを示す。図10A〜Cは、(A) 5℃、(B) 25℃、および(C) 40℃での時間の関数としての、製剤I、II、およびIII中の凝集物パーセントを示す。図10A〜Cは、(A) 5℃、(B) 25℃、および(C) 40℃での時間の関数としての、製剤I、II、およびIII中の凝集物パーセントを示す。図11A〜Cは、(A) 5℃、(B) 25℃、および(C) 40℃での時間の関数としての、製剤I、II、およびIII中のクリップパーセントを示す。図11A〜Cは、(A) 5℃、(B) 25℃、および(C) 40℃での時間の関数としての、製剤I、II、およびIII中のクリップパーセントを示す。図11A〜Cは、(A) 5℃、(B) 25℃、および(C) 40℃での時間の関数としての、製剤I、II、およびIII中のクリップパーセントを示す。 pH 5.5〜6.5を有する5〜25mMのヒスチジン緩衝液、 0.005%〜0.03%のポリソルベート、 100〜300mMのショ糖、および 50mg/ml以上の濃度をもつIgG抗体、を含む水性調製物を凍結乾燥することにより調製される安定な凍結乾燥製剤であって、該製剤は、5分またはそれ以下で液体で復元して、50mg/ml以上のIgG抗体を含有する粒状物を含まない溶液にされ、ここで、該IgG抗体はダクリズマブである、凍結乾燥製剤。 ショ糖濃度は100〜200mMである、請求項1に記載の安定な凍結乾燥製剤。 pH5.5〜6.5を有する5〜25mMのヒスチジン緩衝液、 0.005%〜0.03%のポリソルベート、 110〜130mMのショ糖、 20〜45mMのマンニトール、および 50mg/ml以上の濃度をもつIgG抗体、を含む水性調製物を凍結乾燥することにより調製される安定な凍結乾燥製剤であって、該凍結乾燥製剤は、5分またはそれ以下で液体で復元して、50mg/ml以上のIgG抗体を含有する粒状物を含まない溶液にされ、ここで、該IgG抗体はダクリズマブである、凍結乾燥製剤。 pH5.5〜6.5を有する5〜25mMのヒスチジン緩衝液、 0.005%〜0.03%のポリソルベート、 80〜130mMのショ糖、 7〜55mMのセリン、 10〜55mMのマンニトール、および 50mg/ml以上の濃度をもつIgG抗体、を含む水性調製物を凍結乾燥することにより調製される安定な凍結乾燥製剤であって、該凍結乾燥製剤は、5分またはそれ以下で液体で復元して、50mg/ml以上のIgG抗体を含有する粒状物を含まない溶液にされ、ここで、該IgG抗体はダクリズマブである、凍結乾燥製剤。 製剤は22〜28℃で少なくとも3ヶ月安定である、請求項1、3または4に記載の安定な凍結乾燥製剤。 製剤は2〜8℃で少なくとも1年間安定である、請求項1、3または4に記載の安定な凍結乾燥製剤。 前記液体で復元された溶液は、皮下注射に適している、請求項1、3または4に記載の安定な凍結乾燥製剤。 前記液体で復元された溶液は、等張性である、請求項1に記載の安定な凍結乾燥製剤。 前記ヒスチジン緩衝液のヒスチジン濃度は、10〜25mMである、請求項1に記載の安定な凍結乾燥製剤。