タイトル: | 特許公報(B2)_アミンボランを用いるアミンの製造方法 |
出願番号: | 2003436391 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 209/52,C07C 211/27,C07C 211/45,C07D 231/12 |
菊川 靖雄 JP 4478827 特許公報(B2) 20100326 2003436391 20031208 アミンボランを用いるアミンの製造方法 菊川 靖雄 000159065 菊川 靖雄 20100609 C07C 209/52 20060101AFI20100520BHJP C07C 211/27 20060101ALI20100520BHJP C07C 211/45 20060101ALI20100520BHJP C07D 231/12 20060101ALI20100520BHJP JPC07C209/52C07C211/27C07C211/45C07D231/12 C07C 209/52 C07C 211/27 C07C 211/45 C07D 231/12 特開平07−267912(JP,A) 特開2000−086594(JP,A) 特開2001−322991(JP,A) 特開2004−256511(JP,A) Journal of Organic Chemistry,1995年,Vol.60,p.5995−5996 Journal of Organic Chemistry,1996年,Vol.61,p.3849−3862 1 2005170917 20050630 8 20061116 野口 勝彦 発明の詳細な説明 本発明は、従来溶媒中で行われていたイミンの還元によるアミンの製造を無溶媒で行うアミンの製造法に関する。 これまでの還元的アミノ化反応はカルボニル化合物とアミンから生ずるイミンを適当な溶媒中適当な還元剤を用いて還元することで行われている。ナトリウム トリアセトキシボロヒドリドを還元剤とする還元的アミノ化反応ではジクロルエタン(非特許文献1)が、また、ピリジンボランではメタノール(非特許文献2)、エタノール(非特許文献3)、石油エーテル(非特許文献4)などが使用されている。近年、地球環境の保全のため有害な溶媒は使用しないことが強く推奨されている。 更に、上記の還元的アミノ化反応は全てのカルボニル化合物で収率良く進行するものではなく、一般に芳香族ケトンは反応性が低い。ナトリウム トリアセトキシボロヒドリドを用いる場合、アセトフェノンとベンジルアミンとの反応では10日間反応させて55%の収率で目的のアミンが得られているにすぎない(非特許文献1)。また、溶媒を用いるピリジンボランによる反応では、ほとんど目的物が得られないと報告されている(非特許文献2、非特許文献4)。 Abdel−Magid,A.F.;Carson,K.G.;Harris,B.D.;Mary anoff,C.A.;Shah,R.D.J.Org.Chem.1996,61,3849.Bomann,M.D.;Guch,I.C.;DiMare,M.J.Org.Chem.1995,60,5995.Moormann,A.E.Synth.Commun.1993,23,789.Pelter,A.;Rosser,R.M.J.Chem.Soc.,Perkin Trans.I 1984,717. 日本だけでなく全世界で、環境汚染が深刻な問題となっており、公害の少ない合成方法の開発は急務である。化合物の合成に際し、有機溶媒の使用は本来どの溶媒であっても地球環境の保全の面からは有害である。よって、最良の方法は溶媒を使用しないことであることは言うまでもない。無溶媒での還元的アミノ化反応は、特に大量合成を必要とする企業にとって産業上極めて有用な方法となるであろう。 本発明は、安定で取り扱い易い還元剤であるアミンボランを用いて、イミンからアミンを無溶媒で製造する還元方法を提供することを目的とする。 本発明は上記を目的に検討した結果、取り扱い易い還元剤であるアミンボランを用いることにより、イミンからアミンの製造が無溶媒で収率よく進行することを見出した。特に、従来反応しにくいとされている芳香族ケトンから由来するイミンについても無溶媒の方が収率良く還元的アミノ化が進行することを見出した。 かくして本発明は、第一アミン又は第二アミンとカルボニル化合物から生成するイミン又はイミニウム化合物を還元してアミンを製造するにあたり、無溶媒で、かつ還元剤としてピコリンボラン、ピリジンボラン、モルホリンボラン、ジエチルアニリンボラン、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボランから選択される一つ以上のアミンボランを用いることを特徴とするアミンの製造法である。 本発明において、イミンとはカルボニル化合物とアミンが縮合(脱水)して得られるシッフ塩基が代表的なものとして挙げられる。ここで、カルボニル化合物とは、非環系炭化水素基、環系炭化水素基、複素環基、及びこれらの基が本発明の還元反応に妨げとならない任意の官能基で置換された基を有する、アルデヒド又はケトンと総称される化合物群である。アミン化合物とは、非環系炭化水素基、環系炭化水素基、複素環基、及びこれらの基が本発明の還元反応に妨げとならない任意の官能基で置換された基を有する第一及び第二アミンである(「最新全有機化合物名称のつけ方」三共出版社、1999年3月10日発行等参照)。その他のイミンとしては、シッフ塩基の窒素原子の置換基が水素原子、水酸基、アルコキシ基又はアルカノイル基である化合物群が挙げられる。 本発明においてアミンボランとは、ピコリンボラン、ピリジンボラン、モルホリンボラン、ジエチルアニリンボラン、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボランなどが挙げられる。 本発明の製造法は、シッフ塩基を形成する反応に引き続きアミンボランを添加することによって行われることが好適である。しかし、一般的な反応操作としては、カルボニル化合物とアミンと少量の酢酸を混合した数分後、アミンボランをゆっくり添加し、室温1〜60時間攪拌することで目的のアミンをone potの反応で好収率に得ることができる。特に反応性の良いアルデヒドの場合、反応混合物に酢酸を加えない方が副産物を生じにくく目的物の収率も良い場合もあるが、通常ごく少量の酢酸を添加するほうがシッフ塩基を形成しやすく、有利な場合が多い。酸としてはギ酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸など一般の酸が有効であるが、安価な酢酸が最も実用的である。 還元的アミノ化反応は、本来、有機溶媒中で行われている。しかし、本発明の方法では無溶媒でも良い収率で目的物が得られる特徴を持つ。更に、得られたアミンの性状によっては抽出操作を省くことも可能なので、後処理が簡便で廃棄物も少量で済む利点をもつ。この種の還元反応に溶媒を使用しないことは画期的なことである。 本発明で用いられるアミンボランのうち、ピコリンボランは、取り扱いが容易で、安定に長期間保存でき、精製が容易で安価に用いることができる。これらアミンボランを用いることにより、無溶媒でイミンを還元しアミン類を得る有用な製造法が提供された。 以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。 Picoline−BoraneとAnilineを用いるCyclohexanoneの還元的アミノ化反応Cyclohexanone(3.000g,30.57mmol),aniline(2.847g,30.57mmol)の混合溶液に、氷冷攪拌下、picoline−borane(3.270g,30.57mmol)を約10分かけて加えた後、室温に戻し、argon気流下10時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に10%Na2CO3(50mL)を加え、水層をAcOEt(75mL x2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(30mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:AcOEt−Hexane=1:3)に付し、N−cyclohexylaniline(4.363g,81.4%)を得た。 IR(neat);3400,3050,2930,2850,1600,1510,700cm−11H NMR(DMSO−d6)δ;1.05−2.12(m,10H,CH2x5),3.07−3.23(m,1H,CH),5.35(s,1H,NH),6.46(t,J=7.2Hz,1H,ArH),6.54(d,J=7.8Hz,2H,ArH),7.02(t,J=7.8Hz,2H,ArH)EI−MS m/z;175(M+,41.27),132(100) Picoline−BoraneとAnilineを用いるCyclohexanoneの還元的アミノ化反応AcOH(0.5mL)を加え,反応時間を3.5時間にする以外は実施例1と全く同じ条件下反応を行いN−cyclohexylaniline(5.054g,94.3%)を得た。 Picoline−BoraneとPyrrolidineを用いるBenzaldehydeの還元的アミノ化反応Benzaldehyde(830mg,7.82mmol),pyrrolidine(1669mg,23.47mmol)の混合溶液に、氷冷下、AcOH(0.3mL)を加え、picoline−borane(837mg,7.83mmol)を約5分かけて加えた後、室温に戻し、argon気流下10時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に10%HCl(10mL)を加え、室温で30分撹拌した。反応溶液に、氷冷下、Na2CO3(約2.5g)を加えてアルカリ性とし、さらにH2O(10mL)を加え、水層をAcOEt(30mL x2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(15mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:AcOEt)に付し、N−benzylpyrrolidine(961mg,76.2%)を得た。 IR(neat);3040,2970,2800,1610,1500,740,700cm−11H NMR(CDCl3,270MHz)δ;1.70−1.87(m,4H,CH2 x2),2.43−2.58(m,4H,CH2 x2),3.61(s,2H,CH2),7.19−7.36(m,5H,ArH)13C NMR(CDCl3,67.8MHz);23.59,54.12,60.71,126.81,128.15,128.87,139.28EI−MS m/z;161(M+,34.21),91(100)HR−MS m/z;for C11H15N calcd 161.1204,found 161.1205 Picoline−BoraneとAnilineを用いるAcetophenoneの還元的アミノ化反応Acotophenone(1.000g,8.32mmol),aniline(0.775g,8.32mmol),AcOH(0.3mL)の混合溶液にpicoline−borane(0.890g,8.32mmol)を約5分かけて加え、argon気流下、室温で63.5時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に10%HCl(10mL)を加え、室温で30分撹拌した。反応溶液に、氷冷下、Na2CO3(約2.5g)を加えてアルカリ性とし、さらにH2O(10mL)を加え、水層をAcOEt(30mL x2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(15mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:AcOEt−Hexane=1:3)に付し、N−phenyl−1−phenethylamine(1.498g,91.2%)を得た。 IR(neat);3410,3050,3030,2970,2930,2870,1600,1510,750,700cm−11H NMR(CDCl3,270MHz)δ;1.51(d,J=6.8Hz,3H,CH3),4.02(s,1H,NH),4.48(q,J=6.7Hz,1H,CH),6.51(dd,J=7.7,0.9Hz,2H,ArH),6.64(td,J=7.3,1.0Hz,1H,ArH),7.08(t,J=7.6Hz,2H,ArH),7.17−7.48(m,5H,ArH)EI−MS m/z;197(M+,56.55),182(100),120(9.79),105(74.51),77(35.24). Picoline−BoraneとBenzylamineを用いるAcetophenoneの還元的アミノ化反応Acotophenone(1.000g,8.32mmol),benzylamine(0.892g,8.32mmol),AcOH(0.3mL)の混合溶液にpicoline−borane(0.890g,8.32mmol)を約5分かけて加え、argon気流下、室温で72時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に10%HCl(10mL)を加え、室温で30分撹拌した。反応溶液に、氷冷下、Na2CO3(約2.5g)を加えてアルカリ性とし、さらにH2O(10mL)を加え、水層をAcOEt(30mL x2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(15mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:AcOEt−Hcxane=1:3)に付し、N−benzyl−1−phenethylamine(1.534g,87.2%)を得た。 IR(neat);3320,3060,3030,2970,2930,2850,1600,1500,700cm−11H NMR(CDCl3,270MHz)δ;1.37(d,J=6.6Hz,3H,CH3),3.59(d,J=13.3Hz,1H,CH2),3.67(d,J=13.3Hz,1H,CH2)[3.63(ABq,J=13.3Hz,2H,CH2)],3.81(q,J=6.7Hz,1H,CH),7.19−7.39(m,10H,ArH)EI−MS m/z;211(M+,2.58),196(100),105(11.99)91(68.96). Picoline−BoraneとBenzylamineを用いる4−Methyl−2−pentanoneの還元的アミノ化反応 4−Methyl−2−pentanone(1.000g,9.98mmol),benzylamine(1.070g,9.99mmol)の混合溶液に氷冷下、AcOH(0.2mL)を加えpicoline−borane(1.068g,9.99mmol)を約5分かけて加えた後、室温に戻しargon気流下3.5時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に10%HCl(10mL)を加え、室温で30分撹拌した。反応溶液に、氷冷下、Na2CO3(約2.5g)を加えてアルカリ性とし、さらにH2O(10mL)を加え、水層をAcOEt(30mL x2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(15mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:AcOEt−Hexane=1:2)に付し、N−(1,3−dimethylbutyl)benzylamine(1.212g,63.5%)を得た。 IR(neat);3320,3090,3060,3030,2960,2870,1610,1500,700cm−11H NMR(CDCl3,270MHz)δ;0.86(dd,J=6.5,1.7Hz,6H,CH3 x2),1.07(d,J=6.1Hz,3H,3H3),1.10−1.24(m,1H,CH2),1.31−1.44(m,1H,CH2),1.52(s,1H,NH),1.58−1.75(m,1H,CH),2.66−2.82(m,1H,CH),3.72(d,J=12.9Hz,1H,CH2),3.84(d,J=12.9Hz,1H,CH2)[3.78(ABq,J=12.9Hz,2H,CH2)],7.18−7.38(m,5H,ArH) EI−MS m/z191(M+,0.95),91(100) Picoline−BoraneとAnilineを用いるCyclohexanoneの還元的アミノ化反応 Cyclohexanone(3.000g,30.57mmol),aniline(2.847g,30.57mmol)の混合溶液に氷冷下、AcOH(0.5mL)を加えpicoline−borane(3.270g,30.57mmol)を約10分かけて加えた後、室温に戻しargon気流下3.5時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に10%Na2CO3(50mL)を加えてアルカリ性とし、水層をAcOEt(75mL x2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(30mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:AcOEt−Hexane=1:5)に付し、N−cyclohexylaniline(5.054g,94.3%)を得た。 IR(neat);3400,3050,2930,2850,1600,1510,700cm−11H NMR(DMSO−d6)δ;1.05−2.12(m,10H,CH2x5),3.07−3.23(m,1H,CH),5.35(S,1H,NH),6.46(t,J=7.2Hz,1H,ArH),6.54(d,J=7.8Hz,2H,ArH),7.02(t,J=7.8Hz,2H,ArH) EI−MS m/z;175(M+,41.27),132(100) Pyridine−BoraneとAnilineを用いるCyclohexanoneの還元的アミノ化反応 Cyclohexanone(1.000g,10.19mmol),aniline(0.949g,10.19mmol)の混合溶液に氷冷下、AcOH(0.3mL)を加えpyridine−borane(0.947g,10.19mmol)を約3分かけて加えた後、室温に戻しargon気流下4時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に10%HCl(10mL)を加えると不溶物が析出したので、AcOEt(4mL)を加え、そのまま室温で30分撹拌した。反応溶液に、氷冷下、10%Na2CO3(10mL)及びNa2CO3(約1.5g)を順に加えてアルカリ性とし、さらにH2O(4mL)を加え、水層をAcOEt(30mL x2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt)に付し、N−cyclohexylaniline(1.758g,98.4%)を得た。 Dimethylamine−BoraneとAnilineを用いるCyclohexanoneの還元的アミノ化反応 Cyclohexanone(1.000g,10.19mmol),aniline(0.949g,10.19mmol)の混合溶液に氷冷下、AcOH(0.3mL)を加えdimethylamine−borane(0.600g,10.18mmol)を約5分かけて加えた後、室温に戻しargon気流下22時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に10%HCl(10mL)を加えると不溶物が析出したので、AcOEt(4mL)を加え、そのまま室温で30分撹拌した。反応溶液に、氷冷下、10%Na2CO3(10mL)及びNa2CO3(約1.5g)を順に加えてアルカリ性とし、さらにH2O(4mL)を加え、水層をAcOEt(30mL x2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt−Hexane=1:3)に付し、N−cyclohexylaniline(0.874g,48.9%)及び原料のaniline(0.433g,45.6%)を得た。 第一アミン又は第二アミンとカルボニル化合物から生成するイミン又はイミニウム化合物を還元してアミンを製造するにあたり、無溶媒で、かつ還元剤としてピコリンボラン、ピリジンボラン、モルホリンボラン、ジエチルアニリンボラン、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボランから選択される一つ以上のアミンボランを用いることを特徴とするアミンの製造法。