生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_レール・車輪間の粘着係数の測定方法
出願番号:2003432115
年次:2008
IPC分類:G01N 19/04,G01N 19/02


特許情報キャッシュ

野中 俊昭 大山 忠夫 遠藤 靖典 JP 4094542 特許公報(B2) 20080314 2003432115 20031226 レール・車輪間の粘着係数の測定方法 財団法人鉄道総合技術研究所 000173784 清水 守 100089635 川合 誠 100096426 野中 俊昭 大山 忠夫 遠藤 靖典 20080604 G01N 19/04 20060101AFI20080515BHJP G01N 19/02 20060101ALI20080515BHJP JPG01N19/04 CG01N19/02 Z G01N 19/02〜19/04 特開平11−252708(JP,A) 特開昭60−091805(JP,A) 特開昭63−031402(JP,A) 特開平11−252716(JP,A) 特開2005−189143(JP,A) 特開2001−264193(JP,A) 特開2000−233744(JP,A) 特開昭63−031403(JP,A) 2 2005189144 20050714 12 20060302 福田 裕司 本発明は、レール・車輪間の粘着係数の測定方法に関するものである。 鉄道車両のブレーキ時の力学的な挙動は、各軸に働くブレーキ力とレール・車輪間の粘着力とが相互に影響し合いながら、編成車両全体の並進運動エネルギーと各軸の回転運動エネルギーとをゼロにする運動とみなすことができる。したがって、鉄道車両のブレーキについて考える場合には、編成車両全体の力学的な挙動を考える必要がある。 ところで、鉄道車両は自動車などと異なり、実車試験を容易に行うことができないため、シミュレーションの活用が滑走防止制御(以下、ABS)などの研究開発を効率的に進めるために重要である。 しかしながらこれまで、鉄道車両のブレーキなどに対しては、1軸で力学モデルを表現している場合がほとんどであり(非特許文献1〜6参照)、ABSなどの性能評価に対する編成車両としての定式化およびシミュレーションは、ほとんど行われてこなかった。 また、ABSの研究開発には、ABSの制御性能の評価方法を確立する必要があり、そのためには、ABSの主要な目的である「ブレーキ距離の短縮」と「車輪損傷の低減」に対して定量的に評価する方法が必要となる。田中,長谷川,保田,高橋,山口,高速電車の速度と粘着特性に対応した減速度自動制御に関する研究,機論,52−481,C(1986),2432−2436.山崎,鉄道車両のブレーキ時における車輪滑走のシミュレーション,機講論,No.940−57(1994−12),232−236.塩見,板野,FUZZY制御応用ANTI−SKID制御装置,機講論,No.940−57(1994−12),237−240.飯田,喜多,熊野,菊地,ファジィ粘着制御方式の開発,電気学会産業応用部門全国大会,(1995−3),269−272.南京,空気ブレーキによる車両減速度制御に関する研究,鉄道総研報告,Vol.17,No.4(2003−4),35−38.Oldrich Polach,Winterthur,Rad−Schiene−Modelle in der Simulation der Fahrzeug− und Antriebsdynamik,Elektrische Bahnen,(2001−5),219−230.大山,内田,車輪/レール接触における巨視滑りまでの粘着力の挙動,機論,60−574,C(1994.6),2096−2102.内田,大山,野村,ブレーキ時の粘着力と滑走制御,鉄道総研報告,Vol.15,No.5(2001.5),1−6. 従来は、ABSの制御性能を評価するためのレール・車輪間の粘着係数の測定には、(1)歪みゲージをブレーキ装置に貼付ける、(2)歪み値に応じたブレーキ力を事前に確認する、(3)滑走した瞬間にブレーキ力=レール・車輪間の粘着力となることを利用する、 という方法を用いているが、 (A)歪みゲージを貼る場所が不適切だと適切な制輪子摩擦力が測定できないので、結果的に粘着係数も適切に想定できない、 (B)ユニットブレーキなど、ブレーキ装置によっては歪みゲージそのものを貼り付ける適切な場所がない。したがって、そもそも粘着係数を測定できない車両がある、 (C)歪みゲージの貼付、歪みゲージからの配線、歪み値の校正など、測定に関する作業の手間が多い、 (D)滑走した瞬間の粘着係数しか測定できない、といった問題点がある。 本発明は、上記状況に鑑みて、レール・車輪間の粘着係数を、一般のブレーキ試験と同程度の簡易さで、かつ、動特性として測定することができるレール・車輪間の粘着係数の測定方法を提供することを目的とする。 本発明は、上記目的を達成するために、 〔1〕レール・車輪間の粘着係数の測定方法において、編成車両全体の重量M、第i軸の慣性モーメントJi 、第i軸の車輪半径Ri (1≦i≦n)、編成車両の減速度β、編成車両のブレーキ開始前の減速度β0 を求めて、レール・車輪間の粘着係数の測定部に入力し、下記の理論式に基づいてレール・車輪間の粘着係数を得ることを特徴とする。 〔2〕上記〔1〕のレール・車輪間の粘着係数の測定方法において、複数軸の合計粘着力を下記の理論式に基づいて得ることを特徴とする。 本発明によれば、次のような効果を奏することができる。(1)容易にレール・車輪間の粘着係数の測定ができる。(2)レール・車輪間の粘着係数を時間の関数として測定することができる。(3)レール・車輪間の粘着係数を、一般のブレーキ試験と同程度の簡易さで、かつ、動特性として測定することができる。 レール・車輪間の粘着係数の測定方法において、編成車両全体の重量M、第i軸の慣性モーメントJi 、第i軸の車輪半径Ri (1≦i≦n)、編成車両の減速度β、ブレーキ開始前の減速度β0 を求めて、レール・車輪間の粘着係数の測定部に入力し、下記の理論式に基づいてレール・車輪間の粘着係数を得ることを特徴とする。 また、上記のレール・車輪間の粘着係数の測定方法において、複数軸の合計粘着力を下記の理論式に基づいて得ることを特徴とする。 よって、レール・車輪間の粘着係数を、一般のブレーキ試験と同程度の簡易さで、かつ、編成車両の動特性として測定することができる。 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。 まず、編成車両のブレーキに対する力学モデルについて説明する。 図1はn軸の編成車両のための動的モデルを示す図であり、表1は変数の定義を示す。 図1および表1をもとに、機械ブレーキ時における編成車両の挙動について考える。 図1において、1はレール、2は編成車両、3,4,5は車輪、6,7,8は車輪3,4,5のそれぞれの軸、9,10,11は車輪3,4,5のそれぞれの制輪子(またはパッド)である。 編成車両2に働くブレーキ力には、各軸6,7,8の回転運動に加わるブレーキ力として、各車輪3,4,5の制輪子(またはパッド)9,10,11の摩擦力(以下、制輪子摩擦力)があり、また、編成車両2の並進運動に加わる減速力として、空気抵抗と勾配抵抗(以下、両者の総和を「車体抵抗」と呼ぶ)がある。 ところで、制輪子摩擦力をFbi(1≦i≦n)、車体抵抗をFr とすると、制輪子摩擦力Fbiと車体抵抗Fr は共に、編成車両2の並進運動と、各軸6,7,8の回転運動の双方に影響する。具体的には、制輪子摩擦力Fbiと車体抵抗Fr によって、編成車両2の並進運動に対するブレーキ力Fと、各軸6,7,8の回転運動に対するブレーキ力Fi が発生する。つまり、制輪子摩擦力Fbiと車体抵抗Fr の総和は、編成車両2の並進運動に対するブレーキ力Fと各軸6,7,8の回転を停止させるブレーキ力Fi の総和に等しくなる。 このことは、別の見方をすると、編成車両2を停止させるためには、編成車両全体が持つ並進運動エネルギーMv2 /2と、各軸6,7,8の回転運動エネルギーJi ωi 2 /2とをゼロにする必要があり、制輪子摩擦力Fbiと車体抵抗Fr は、双方のエネルギーをゼロにするために与えられる力であると考えることができる。 一方、上限値を超えるように制輪子摩擦力Fbiを与えると、車輪は滑走状態(滑走の度合が増加している状態)となり、『角減速度と車輪半径の積>編成の減速度』となる。 以上を踏まえて、編成車両の並進運動と各軸の回転運動についての定式化を行う。なお、以下ではすべて、ブレーキ力方向を正とするとともに、編成としての車両は剛体であり、各軸とも固着(車輪の完全停止)に至ることはないものとする。また、制輪子摩擦力Fbiの摩擦係数を一定とするとともに、輪軸に働く軸受抵抗と曲線抵抗は、制輪子摩擦力Fbiに含まれるものとする。 編成車両の並進運動に減速度βを与える力をFとすると、 Mβ=F (1) また、各軸の回転を停止させるためのブレーキ力をFi とすると、 F,Fi の総和は,FbiとFr の総和と等しいので、という関係が成り立つ。 これは、編成車両の並進運動が減速度βで減速するとき、制輪子摩擦力Fbiのない軸においても回転運動が角減速度β/Ri で減速する運動を表現したものである。つまり、式(5)〜(11)のモデルは進行方向と同じ向きの、いわゆる負方向の粘着力Ji β/Ri 2 によって、制輪子摩擦力Fbiのない軸の回転運動が停止することを含め、編成車両の並進運動と各軸の回転運動との相関性を考慮したものとなっていることがわかる。 一方、このモデルでは、式(9)〜(11)が従来(非特許文献2,7,8参照)の1軸モデルにおける関係式と異なり、粘着力が負となる場合もあることから、理解し難いうえ、以後の理論展開が複雑になる。そこで、として変数変換すると、式(5)〜(11)は、それぞれ式(13)〜(19)のように書き直される。 定常状態 : Fbi=Fmi(∀i) (17) 滑走状態 : Fbi>Fmi(∀i) (18) 再粘着過程 : Fbi<Fmi(∀i) (19) 以上、式(13)〜(19)が編成車両のブレーキに対する力学モデルの定式化である。なお、Fmiは、物理的に、定常状態ではFbiの反力として発生する粘着力であり、滑走状態、再粘着過程を含め、自軸の回転運動のみを考慮した粘着力を示している。Fmiの力の向きは反進行方向である。 ところで、ブレーキ中、各軸の速度が、編成車両の速度を超えることはない。従って、これまでの議論は、初速度V0 から完全に停止するまでの間の任意の時刻Tに対して、 −Ri ωi ≦−v すなわち、を前提としている。式(15)、(16)を用いて式(20)を整理すると、 式(21)の意味するところは、「固着に至らない限り、時刻Tにおいて、Fbiによる運動量はFmiによる運動量よりも、滑走状態および再粘着過程では大きくなり、定常状態では等しくなる」ということであり、以下のように表される。 なお、以上の議論は、回生ブレーキなどの電気ブレーキに対しても同様に適用することができる。また、符号に注意すれば、力行時についても一般性を失わずに適用することができる。 次に、レール・車輪間の粘着係数の測定方法について説明する。 粘着係数の測定を行う際、測定を行う軸に対してのみ制輪子摩擦力Fbiを与えるが、測定を行う軸は通常1軸または少数であり、測定中の走行速度の変動は小さい。また、測定は、トンネルではない直線で、かつ、勾配のない(あるいは勾配が一定の)区間で行われる。したがって、車体抵抗Fr は、粘着係数の測定を行う際、測定中のすべての時間において一定であると考えて良い。 以下、第k軸の粘着係数を想定する場合を考える。 編成車両のブレーキ開始前では制輪子摩擦力Fbi=0(∀i)であり、編成車両全体に与えられるブレーキ力は車体抵抗Fr だけである。よって、編成車両のブレーキ開始前において、編成車両の減速度は一定となる。そこで、編成車両のブレーキ開始前の減速度をβ0 とする。 以上を踏まえ、まず編成車両のブレーキ開始前について考える。編成車両のブレーキ開始前では、式(1)、(3)は、それぞれ、と書き直すことができる。また、編成車両のブレーキ開始前に滑走は発生しない(定常状態である)ことから、である。よって、式(2)、(24)〜(26)より、となる。車体抵抗Fr はブレーキ中(Fbk>0)においても一定であるので、式(27)は、測定中のすべての時間において成立する。 さて、編成車両のブレーキ開始前およびブレーキ中(Fbk>0)において、式(15)により、である。式(28)に式(27)を代入すると、 ここで、制輪子摩擦力Fbiを与えない軸では、Fmi=0(∀i≠k)である。よって、式(29)は、となる。また、式(30)を式(12)に代入して整理すると、となる。 式(30)、(31)において、編成車両の減速度β,編成車両のブレーキ開始前の減速度β0 は、測定中に制輪子摩擦力Fbiを与えない軸の速度から、容易に測定可能である。また、M,Ji ,Ri は、設計値または粘着係数の測定とは別に容易に測定可能である。 また、第k軸の軸重Mk についても、測定中の軸重移動を無視すれば、容易に測定可能である。したがって、Fbkの反力としての粘着係数(これまでの歪みゲージによる測定方法や1軸モデルで考えてきた粘着係数)および真の粘着係数(他の軸の制輪子摩擦力や車体抵抗を考慮した実際に生じている粘着係数)ともに、式(30)、(31)から時間の関数として容易に算出できる。なお、歪みゲージによる従来の測定方法でも、軸重移動は無視している。 ところで、実際の車両では、1軸のみに制輪子摩擦力を与えることが困難な場合が多い。具体的には、在来線車両の多くは制輪子摩擦力を台車単位で与える構成である。1軸のみに制輪子摩擦力を与えるのが困難な車両において粘着係数を測定する場合は、以下の式(32)、(33)により、複数軸の合計粘着力を測定することで、平均粘着係数を算出することが可能である。 なお、式(32)、(33)は式(30)、(31)より容易に導出できる。 図2は本発明にかかるレール・車輪間の粘着係数の測定システムの構成図である。 この図において、20は入力装置であり、この入力装置20からは編成車両全体の重量M、第i軸の慣性モーメントJi 、第i軸の車輪半径Ri (1≦i≦n)、編成車両の減速度β、編成車両のブレーキ開始前の減速度β0 を求めて、インターフェース22を介してレール・車輪間の粘着係数の測定部21に入力する。このレール・車輪間の粘着係数の測定部21では、下記論理式を論理式編集部23で編集し、その編集された論理式を演算処理部24で演算して、出力部25へ出力する。 このように、下記の理論式に基づいてレール・車輪間の粘着係数を得ることができる。 また、上記のレール・車輪間の粘着係数の測定方法において、複数軸の合計粘着力を下記の理論式に基づいて得ることができる。 上記理論式に基づいて、複数軸の合計粘着力を得ることができ、レール・車輪間の粘着係数を、一般のブレーキ試験と同程度の簡易さで、かつ、編成車両の動特性として測定することができる。つまり、簡便に、かつ的確にレール・車輪間の粘着係数の測定を行うことができる。 なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。 本発明は、レール・車輪間の粘着係数の測定方法として利用することができる。本発明にかかる機械ブレーキ時における編成車両の挙動を示す図である。本発明にかかるレール・車輪間の粘着係数の測定システムの構成図である。符号の説明 1 レール 2 編成車両 3,4,5 車輪 6,7,8 軸 9,10,11 制輪子(またはパッド) 20 入力装置 21 レール・車輪間の粘着係数の測定部 22 インターフェース 23 論理式編集部 24 演算処理部 25 出力部 編成車両全体の重量M、第i軸の慣性モーメントJi 、第i軸の車輪半径Ri (1≦i≦n)、編成車両の減速度β、編成車両のブレーキ開始前の減速度β0 を求めて、レール・車輪間の粘着係数の測定部に入力し、下記の理論式に基づいてレール・車輪間の粘着係数を得ることを特徴とするレール・車輪間の粘着係数の測定方法。 請求項1のレール・車輪間の粘着係数の測定方法において、複数軸の合計粘着力を下記の理論式に基づいて得ることを特徴とするレール・車輪間の粘着係数の測定方法。


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