タイトル: | 特許公報(B2)_プランルカスト水和物含有製剤 |
出願番号: | 2003431375 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 31/41,A61K 9/14,A61K 47/38,A61P 11/02,A61P 11/06 |
秋元 悟 JP 4544856 特許公報(B2) 20100709 2003431375 20031225 プランルカスト水和物含有製剤 日医工株式会社 592073695 大谷 嘉一 100114074 秋元 悟 20100915 A61K 31/41 20060101AFI20100826BHJP A61K 9/14 20060101ALI20100826BHJP A61K 47/38 20060101ALI20100826BHJP A61P 11/02 20060101ALI20100826BHJP A61P 11/06 20060101ALI20100826BHJP JPA61K31/41A61K9/14A61K47/38A61P11/02A61P11/06 A61K 31/00−33/44 A61K 9/00− 9/72 A61K 47/00−47/48 特開昭61−050977(JP,A) 特開平09−059156(JP,A) 特開2005−139085(JP,A) 特開2005−112825(JP,A) 2 2005187406 20050714 8 20061219 小堀 麻子 本発明は、プランルカスト水和物含有製剤に関し、凝集性の強いプランルカスト水和物を高濃度で含んだ粉体の付着凝集性の改善方法、及び無包装状態での溶出の変化を抑えるのに効果的な製剤方法に係る。 4―オキソ―8―[4−(4―フェニルブトキシ)ベンゾイルアミノ]―2―(テトラゾール―5―イル)―4H―1―ベンゾピラン1/2水和物(一般名:プランルカスト水和物)は、ロイコトリエンに対する強力な拮抗作用を有する化合物であり、気管支喘息やアレルギー性鼻炎などの治療に広く用いられている。 しかし、プランルカスト水和物は付着凝集性の非常に強い微粉末であり、プランルカスト水和物に添加剤のみを配合した混合物粉末を打錠やカプセル充填しようとしても、付着凝集性が強いため、カプセル充填や打錠工程において、杵や臼、ターンテーブル等に粉末が固着してしまうため、連続運転が困難である。 付着凝集性の強い粉体特性を改善するには、造粒を行う方法が一般的であるが、プランルカスト水和物を高濃度に含む粉体の場合は、一般的な方法で造粒を行っても、十分な改善効果が得られない(特許第2958863号公報の比較例参照)。 プランルカスト水和物を高濃度に含む粉体の付着凝集性を改善する方法としては、特許第2958863号公報の「プランルカスト水和物および1種またはそれ以上の糖類を必須成分とし、さらに1種またはそれ以上の水溶性高分子および/または1種またはそれ以上の界面活性剤を含有することを特徴とする噴霧乾燥造粒物」が挙げられる。 本特許の製法で得られた造粒物は、付着凝集性がほとんどなく、流動性が良好で、カプセル充填や打錠等の連続生産に用いても全く問題がないと記載されている。 しかし、本特許で必須となる噴霧乾燥造粒法にはいくつかの問題があることが知られており、例えば「造粒ハンドブック」(日本粉体工業技術協会編、オーム社発行)249頁には、噴霧乾燥造粒法の特徴として、「装置が巨大化し、建設時の設備負担が大きい」「多量の熱風を使用するのでエネルギー多消費」など製造コストに関わる問題点が記述されている。 一方、同書の379頁には撹拌造粒法の特徴として、「撹拌造粒は短時間で造粒でき、しかも低コストで多量生産できる」と書かれている。 付着凝集性の改善や流動性の改善だけでなく、低コストでの製造を目標とした場合は、噴霧乾燥造粒法ではなく撹拌造粒法などの低コストな造粒法を採用すべきであるが、これまでの報告では、撹拌造粒法などの低コストな製法でプランルカスト水和物の付着凝集性を改善した例はない。さらには、「錠剤・カプセル剤の無包装状態での安定性情報」(社団法人日本病院薬剤師会編、医薬ジャーナル社発行)139頁には市販製剤の無包装状態の安定性情報が記載されており、25℃、75%RH、1週間で溶出が規格外になると記載されているとおり、安定性の改善が求められている。特許第2958863号公報錠剤・カプセル剤の無包装状態での安定性情報、(社団法人日本病院薬剤師会編、医薬ジャーナル社発行)、P139造粒ハンドブック、(日本粉体工業技術協会編、オーム社発行)P249、P379 本発明は、付着凝集性の強いプランルカスト水和物を高濃度で含んだ粉体の付着凝集性が、カプセル充填などの連続運転が可能な程度にまで改善されたプランルカスト水和物含有造粒物を、低コストな製法で提供することにある。 さらに、市販製剤で問題となっている、無包装状態での溶出の変化を最小限に抑えたプランルカスト水和物含有製剤を提供することにある。 上記の課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、プランルカスト水和物にヒドロゲル形成物質を配合して撹拌造粒または撹拌流動層造粒することによって、連続生産可能な程度にまで付着凝集性が改善され、経時安定性にも優れたプランルカスト水和物含有製剤を低コストで製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明のプランルカスト水和物含有製剤は、粉末のプランルカスト水和物と、粉末のヒドロゲル形成物質とを、撹拌機能を有する造粒機に投入及び混合した後に、ヒドロゲル形成物質含有溶液を添加して造粒した造粒物を含む製剤であって、造粒物中のプランルカスト水和物の量が50〜98重量%であり、ヒドロゲル形成物質は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースのいずれかを単独又は混合して用いたことを特徴とする。 また、粉末及び溶液中のヒドロゲル形成物質の合計量がプランルカスト水和物100重量部に対して1〜10重量部であるのが好ましい。 ここで、撹拌機能を有する造粒機の例としては、撹拌造粒機、撹拌流動層造粒機、撹拌転動流動層造粒機等が挙げられる。本発明により、付着凝集性がほとんどなく、カプセル充填などの連続運転が十分に可能なプランルカスト水和物含有造粒物を、低コストな製法で製造できる。さらに、市販製剤で問題となっている無包装状態での溶出の変化を最小限に抑えたプランルカスト水和物含有製剤を製造できるという利点がある。 本発明において、撹拌造粒または撹拌流動層造粒あるいは撹拌転動流動層造粒等の造粒物中のプランルカスト水和物の濃度は、用途に応じて選択できるが、通常30〜98重量%、好ましくは50〜80重量%である。 ヒドロゲル形成物質としては、セルロース誘導体や合成高分子類などが挙げられ、好ましくはセルロース誘導体、より好ましくはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびメチルセルロースが挙げられる。 ヒドロゲル形成物質の配合量は特に限定されないが、プランルカスト水和物100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは1〜10重量部である。 ヒドロゲル形成物質の添加方法は特に限定されず、粉末のまま添加することも、エタノールや水あるいはそれらの混合液に溶解させて添加することも可能である。 本発明の製剤には、必要に応じて、製剤分野で通常用いられる賦形剤(例えば、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、乳糖、D−マンニトール、リン酸水素カルシウムなど)や崩壊剤(低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなど)、界面活性剤(ポリソルベートなど)などを配合することができるが、その種類および配合量は特に限定されない。 本発明の製剤の製造方法としては、付着凝集性が強く、造粒が進行しにくいプランルカスト水和物含有粉体を適切に造粒するために、撹拌造粒法または、撹拌流動層造粒法、撹拌転動流動層造粒法(複合型流動層造粒法)が用いられる。 撹拌造粒法では、商品名:ハイスピードミキサー(深江工業製)や商品名:バーチカルグラニュレーター(パウレック製)、高速撹拌型混合造粒機(奈良機械製作所製)などが、撹拌流動層造粒法(複合型流動層造粒法)では、商品名:マルチプレックス(パウレック製)、撹拌転動流動層造粒法(複合型流動層造粒法)では、商品名:スパイラフロー(フロイント産業製)、商品名:ニューマルメライザー(不二パウダル製)などが用いられるが、撹拌機能を有する造粒機であれば機種は限定されない。 造粒工程で使用する溶媒としては、水、エタノール、あるいはこれらの溶媒と混和性の良い各種溶媒を単独、又は混合して使用することが可能である。 以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。 プランルカスト水和物112.5g、乳糖(商品名:乳糖200M、DMV製)57.4g、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC-L、日本曹達製)3.0gを撹拌造粒機(ハイスピードミキサー、深江工業製)に入れ、混合後、ヒドロキシプロピルセルロースの7%溶液(エタノール:水=1:1)34.0gを添加して造粒した。 得られた造粒物を流動層乾燥機(フローコーターミニ、フロイント産業製)で乾燥、18.5メッシュ篩で整粒し、プランルカスト水和物の造粒物を得た。(参考例) プランルカスト水和物281.3g、乳糖(商品名:乳糖200M、DMV製)143.5gを混合後、撹拌流動層造粒機(マルチプレックス、パウレック製)に入れ、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC-L、日本曹達製)の5%溶液(エタノール:水=1:1)270.0gをスプレーして造粒、乾燥した。 得られた造粒物を18.5メッシュ篩で整粒し、プランルカスト水和物の造粒物を得た。 プランルカスト水和物112.5g、乳糖(商品名:乳糖200M、DMV製)57.4g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:TC−5S、信越化学製)3.6gを撹拌造粒機(ハイスピードミキサー、深江工業製)に入れ、混合後、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの5%溶液(エタノール:水=1:1)36.0gを添加して造粒した。 得られた造粒物を流動層乾燥機(フローコーターミニ、フロイント産業製)で乾燥、18.5メッシュ篩で整粒し、プランルカスト水和物の造粒物を得た。 プランルカスト水和物112.5g、乳糖(商品名:乳糖200M、DMV製)57.4g、メチルセルロース(商品名:メトローズSM−15、信越化学製)3.6gを撹拌造粒機(ハイスピードミキサー、深江工業製)に入れ、混合後、メチルセルロースの5%溶液(エタノール:水=1:1)36.0gを添加して造粒した。 得られた造粒物を流動層乾燥機(フローコーターミニ、フロイント産業製)で乾燥、18.5メッシュ篩で整粒し、プランルカスト水和物の造粒物を得た。 プランルカスト水和物112.5g、無水リン酸水素カルシウム(協和化学製)57.4g、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC-L、日本曹達製)2.9gを撹拌造粒機(ハイスピードミキサー、深江工業製)に入れ、混合後、ヒドロキシプロピルセルロースの7%溶液(エタノール:水=1:1)36.0gを添加して造粒した。 得られた造粒物を流動層乾燥機(フローコーターミニ、フロイント産業製)で乾燥、18.5メッシュ篩で整粒し、プランルカスト水和物の造粒物を得た。 プランルカスト水和物112.5g、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC-L、日本曹達製)3.4gを撹拌造粒機(ハイスピードミキサー、深江工業製)に入れ、混合後、ヒドロキシプロピルセルロースの7%溶液(エタノール:水=1:1)29.0gを添加して造粒した。 得られた造粒物を流動層乾燥機(フローコーターミニ、フロイント産業製)で乾燥、18.5メッシュ篩で整粒し、プランルカスト水和物の造粒物を得た。 プランルカスト水和物1687.5g、乳糖(商品名:乳糖200M、DMV製)447.0g、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC-L、日本曹達製)49.5gを撹拌造粒機(バーチカルグラニュレーター、パウレック製)に入れ、混合後、ヒドロキシプロピルセルロースの7%溶液(エタノール:水=1:1)450.0gを添加して造粒した。 得られた造粒物を流動層乾燥機(マルチプレックス、パウレック製)で乾燥、18.5メッシュ篩で整粒し、プランルカスト水和物の造粒物を得た。(比較例1) プランルカスト水和物112.5g、乳糖(商品名:乳糖200M、DMV製)57.4g、ポリエチレングリコール(商品名:マクロゴール4000、日本油脂製)3.0gを撹拌造粒機(ハイスピードミキサー、深江工業製)に入れ、混合後、ポリエチレングリコールの7%溶液(エタノール:水=1:1)34.0gを添加して造粒した。 得られた造粒物を流動層乾燥機(フローコーターミニ、フロイント産業製)で乾燥、18.5メッシュ篩で整粒し、プランルカスト水和物の造粒物を得た。(比較例2) プランルカスト水和物281.3g、乳糖(商品名:乳糖200M、DMV製)143.5g、を混合後、流動層造粒機(マルチプレックス、パウレック製)に入れ、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC-L、日本曹達製)の5%溶液(エタノール:水=1:1)270.0gをスプレーして造粒、乾燥した。 得られた造粒物を18.5メッシュ篩で整粒し、プランルカスト水和物の造粒物を得た。 上記、実施例1,3〜7、参考例、及び比較例1、2の処方方法、造粒条件を図1の表にまとめた。 次に、造粒溶媒の影響を確認すべく、実施例1に対して溶媒のみを換えて以下のプランルカスト水和物の造粒物を得た。 プランルカスト水和物112.5g、乳糖(商品名:乳糖200M、DMV製)57.4g、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC-L、日本曹達製)3.0gを撹拌造粒機(ハイスピードミキサー、深江工業製)に入れ、混合後、ヒドロキシプロピルセルロースの7%溶液(水)34.0gを添加して造粒した。 得られた造粒物を流動層乾燥機(フローコーターミニ、フロイント産業製)で乾燥、18.5メッシュ篩で整粒し、プランルカスト水和物の造粒物を得た。 プランルカスト水和物112.5g、乳糖(商品名:乳糖200M、DMV製)57.4g、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC-L、日本曹達製)3.0gを撹拌造粒機(ハイスピードミキサー、深江工業製)に入れ、混合後、ヒドロキシプロピルセルロースの7%溶液(エタノール)34.0gを添加して造粒した。 得られた造粒物を流動層乾燥機(フローコーターミニ、フロイント産業製)で乾燥、18.5メッシュ篩で整粒し、プランルカスト水和物の造粒物を得た。上記、実施例8、9の処方方法、造粒条件を図2の表にまとめた。(試験1) 実施例1,3〜9、参考例、比較例1〜2で得られた造粒物の粉体物性を粉体特性測定装置(パウダテスタ、ホソカワミクロン製)で評価した結果を図3の表に示す。 一般的に安息角やスパチュラ角、圧縮度の値は、付着凝集性の強い粉体ほど大きな値を示す傾向がみられる。 実施例1,3〜9の造粒物は比較例1〜2の造粒物の値よりも明らかに小さな値を示したことから、付着凝集性の改善という点で実施例は優れていることが確認された。 また、実施例1と比較例2は同一組成の造粒物であるにもかかわらず、付着凝集性、流動性に大きな違いが発生したことから、撹拌造粒法および撹拌流動層造粒法の優位性も明らかとなった。 実施例1、3、4と比較例1の結果を比べるとヒドロゲル形成物質(セルロース誘導体)が効果的であることが分かる。 実施例5、6の結果から糖類(乳糖など)を配合しなくても付着凝集性が改善されることも分かる。 実施例1、6、7の結果からHPC配合系で、主薬含有率が63%〜94%の製剤が製造可能であることが確認できた。(試験2) 実施例7と比較例2で得られた造粒物に滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを1.5重量%添加、混合して、カプセル充填実験を行い、カプセル充填性を評価した結果を図4の表に示す。 本発明に係る造粒方法の方が、カプセル充填性に優れていることが明らかになった。(試験3) プランルカスト水和物含有製剤の経時的安定性を確認するために、実施例7で得られた造粒物のカプセル充填物とプランルカスト水和物の市販製剤であるオノンカプセル(小野薬品工業製)を無包装状態で、25℃、75%RH、2週間の加速試験を実施し、溶出試験をパドル法50rpm、試験液:崩壊試験法第2液(1%ポリソルベート80含有)900mLの条件で実施した。 その結果を図5の表に示す。 無包装状態での溶出挙動の経時的安定性を調べた結果、市販製剤のオノンカプセルは、「錠剤・カプセル剤の無包装状態での安定性情報」(社団法人日本病院薬剤師会編、医薬ジャーナル社より発行)にも、1週間で溶出が規格外になると書かれているように、溶出挙動が大幅に変化することが確認された。 一方、実施例7のカプセル充填物は、最大で10%程度溶出率が上昇したものの、最大で40%程度溶出率が上昇するオノンカプセルと比較すると、加速試験での溶出率の変化の割合はごくわずかであり、経時的安定性の面で明らかに優れた製剤であることが確認された。実施例1,3〜7、参考例、及び比較例1、2の処方、造粒条件を示す。実施例8、9の処方、造粒条件を示す。実施例1,3〜9、参考例、比較例1〜2で得られた造粒物の粉体物性を粉体特性測定装置で評価した結果を示す。カプセル充填性を評価した結果を示す。無包装状態での溶出挙動の経時的安定性を調べた結果を示す。 粉末のプランルカスト水和物と、粉末のヒドロゲル形成物質とを、撹拌機能を有する造粒機に投入及び混合した後に、ヒドロゲル形成物質含有溶液を添加して造粒した造粒物を含む製剤であって、造粒物中のプランルカスト水和物の量が50〜98重量%であり、ヒドロゲル形成物質は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースのいずれかを単独又は混合して用いたことを特徴とするプランルカスト水和物含有製剤。 粉末及び溶液中のヒドロゲル形成物質の合計量がプランルカスト水和物100重量部に対して1〜10重量部であることを特徴とする請求項1記載のプランルカスト水和物含有製剤。