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タイトル:特許公報(B2)_セレブロシドの製造方法
出願番号:2003428430
年次:2009
IPC分類:C12N 1/16,C12N 1/14,C12P 19/44,C12R 1/85,C12R 1/69,C12R 1/685,C12R 1/80,C12R 1/645


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田村 雅彦 松本 收 大西 正男 木村 幸史 JP 4246056 特許公報(B2) 20090116 2003428430 20031224 セレブロシドの製造方法 日本甜菜製糖株式会社 000231981 松本 久紀 100097825 戸田 親男 100075775 田村 雅彦 松本 收 大西 正男 木村 幸史 20090402 C12N 1/16 20060101AFI20090312BHJP C12N 1/14 20060101ALI20090312BHJP C12P 19/44 20060101ALI20090312BHJP C12R 1/85 20060101ALN20090312BHJP C12R 1/69 20060101ALN20090312BHJP C12R 1/685 20060101ALN20090312BHJP C12R 1/80 20060101ALN20090312BHJP C12R 1/645 20060101ALN20090312BHJP JPC12N1/16 BC12N1/14 BC12N1/16 EC12P19/44C12N1/16 BC12R1:85C12N1/14 BC12R1:69C12N1/14 BC12R1:685C12N1/14 BC12R1:80C12N1/14 BC12R1:645 C12N 1/00−1/38 C12P 19/44 PubMed BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) CA/CONFSCI/SCISEARCH(STN) JSTPlus(JDreamII) Yeast,2001年,vol. 18,679-695 日本農芸化学会2003年度(平成15年度)大会講演要旨集,2003年 3月 5日,87(2C01p17) Biochim. Biophys. Acta,1977年,vol. 486,161-171 日本脂質生化学研究,2003年 5月15日,vol. 45,37-40 15 2005185126 20050714 16 20060316 中村 正展 本発明は、真菌類から抽出するセレブロシドの製造法に関する。 本発明で使用するグルコシルセラミド等セレブロシド画分を抽出する原料となる真菌類は、グルコシルセラミド等セレブロシドを含有するものであり、抽出原料となる部位は特に限定されることがない。抽出原料となる真菌類の例として、酵母、カビ、及びキノコが挙げられる。 酵母の例として、サッカロマイセス属、具体的にサッカロマィセス・クルイヴェリ(Sacchromyces kluyveri IFO 1685)など、クルイヴェロマィセス属、具体的にクルイヴェロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis IFO 1090)、クルイヴェロマイセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans IFO 10067)、クルィヴェロマイセヌ・ワルティ(Kluyveromyces wa1tii IFO 1666)、クルイヴェロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus IFO 0617)、クルイヴェロマイセス・ウィッケルハミ(Kluyveromyces wickerhamii IFO 1675)など、チゴサッカロマイセス属、具体的にチゴサッカロマイセス・シドリ(Zygosaccharomyces cidri IFO 1990)、チゴサッカロマイセス・フェルメンタティ(Zygosaccharomyces fermentati IFO 1996)などがある。 また、カビの例として、アスベルギルス属、具体的にアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae IFO 30104)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)など、リゾープス属、具体的にリゾープス・オリゼ(Rhizopus oryzae IFO 31005)などがある。 また、キノコとしては食用できるキノコであれば特に制限はなく、子実体、菌糸体のいずれも使用することができる。キノコの例としてマイタケ(Grifola frondosa)、シイタケ(Lentinus edodes IFO 31866)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus IFO 30776)、エリンギ(Pleurotus eryngii)、タモギタケ(Pluerotus cornucopiae IFO 30528)、エノキダケ(Flammulina velutipes IFO 31862)、ナメコ(Pholiota nameko IFO 30373)、ツクリタケ(Agaricus bisporus IFO 30874)などがある。 抽出原料としては、これらの材料の粉砕物が好ましく使用できる。中でも好ましくは、送風乾燥粉砕物、熱風乾燥粉砕物、スプレードライ物、フレンチプレス乾燥物、凍結乾燥粉砕物などが使用される。 セレブロシドは、スフィンゴ糖脂質ともいわれ、スフィンゴイドと脂肪酸から構成されるセラミドに糖が結合した糖脂質であって、糖がグルコースの場合はグルコシルセラミド(グルコセレブロシド)ともいわれ、皮膚の角質層に多く含まれるスフィンゴ糖脂質であり、皮膚の保湿性や柔軟性にかかわっていると言われている。従来は安価な供給源として牛脳が用いられていたが、BSE(牛海綿状脳症)の発症の原因であるプリオンが脳幹部位に蓄積していることが明らかとなって以来、食品・化粧品用途での利用は不可能となった。 牛脳の代替供給源として現在では、大豆油さいやビール粕、米や小麦などの穀類の胚芽、コンニャク芋などからの抽出が行われているが、含有量が微量であることから、抽出精製のコストがかかるため、製品が高価となり、セレブロシド自体の用途が限られてしまうという問題があった(特許文献1、2)。 一方、ある種の酵母にセレブロシドが含有されていることは知られているが(非特許文献1)、含有量が少なかったり、酵母を大量に培養する技術が未だ開発されておらず、工業的に安定してセレブロシドを酵母から大量生産する方法は確立されていない。もちろん、ビートモラセスを用いてセレブロシド含有酵母を大量培養したり、ストレスを与えることによりセレブロシドの生産量、蓄積量を高めたり、溶媒抽出と冷凍処理の併用によって高純度のセレブロシドを効率的に製造したりすることは、いずれも、従来知られているものではない。ましてや、糸状菌について何も知られていない。 特開平4−282317号公報特開平11−193283号公報FEMS Yeast Research 1496(2002)1−6 培養という均一手段により、簡単に、しかも大量に培養でき、含有量の多い酵母菌体を選択することにより、均一なセレブロシドを大量に抽出することを目的とした。また、高純度セレブロシドを効率的に工業生産することも目的とした。 上記目的達成のため、本発明者らは各方面から検討した結果、安価な糖源である糖蜜、特にまた、ビート糖の製造時に副生するビート糖蜜(ビートモラセス)に着目して、セレブロシド含有酵母を培養したところ、培養が可能であるだけでなく、培養方法を改良することによって該酵母の大量培養が可能であることをはじめて見出し、セレブロシド含有菌体を大量に生産することにより、セレブロシド抽出の工業的原料として使用可能であることをはじめて見出した。 動物由来素材や植物由来素材ではなく、培養菌体を使用する利点は抽出する原料としての品質が一定であることから、抽出工程の管理を自動化することも可能となり、抽出コストの低減化も可能となる。また、培養に用いる菌株はパン酵母など食品用として古くから使用されているサッカロマイセス属等の酵母であることから供給源としても安全である。 そして更に本発明者らは研究をすすめ、酵母を大量培養するだけでなく、酵母菌体内におけるセレブロシドの蓄積量を高める点に着目し、各方面から検討、研究を行った結果、酵母にストレスを与えることでそれが可能となることをはじめて見出した。 そして更に本発明者らは、酵母培養後のセレブロシドの抽出の面についても着目し、鋭意研究の結果、エタノール抽出した後にこの抽出液を冷凍処理することにより、高純度のセレブロシドを効率よく得ることもはじめて見出した。また、本発明者らは、これらの有用新知見を糸状菌(カビ)及び担子菌(キノコ)についてもはじめて見出した。 本発明は、これら有用新知見に基づき、更に研究の結果、遂に完成されたものである。 以下、酵母を代表例にとり本発明について詳しく述べる。 北海道の主要畑作物であるビート(甜菜)とそこから砂糖を生産するビート糖業は地域の基幹産業となっている。ビート糖製造に際して副生されるビートモラセスは全量で年間約12,900t産出されているが、用途が限られている。本発明ではこのビートモラセスを発酵原料として利用し、アトピー性皮膚炎の改善や大腸ガン発生予防などの機能性や薬効が期待されるセレブロシドを蓄積する酵母サッカロマイセス・クルイベリを大量に培養するための技術を開発するとともに、セレブロシドの蓄積量を増加させる培養条件を見いだした。 大量培養するための方法としてはビートモラセスに含まれる糖を炭素源として、副原料として窒素源、燐酸源、グロースファクターとしてコーンスティープリカー(CSL)を添加した培地を用いることで安価な培地組成での大量培養を可能にした。ビートモラセス含有培地で大量培養可能な酵母としては、サッカロマイセス・クルイベリ(例えばSaccharomyces kluyveri IFO 1685)等サッカロミセス属菌や、クルイベロマイセス・ラクチス(例えばKluyveromyces lactis IFO 1090)等クルイベロマイセス属菌その他セレブロシド生産性を有する酵母が挙げられる。 同様に、糸状菌としては、アスペルギルス・オリーゼ(例えば、Aspergillus oryzae IFO 30104)、アスペルギルス・ニガー(例えば、Aspergillus niger IFO 4414)等アスペルギルス属菌や、ペニシリウム・ロックフォルティ(例えば、Penicillium roqueforti IFO 8889)等ペニシリウム属菌や、モナスクス・アンカ(例えば、Monascus anka IFO 6540)等モナスクス属菌その他セレブロシド生産性を有する糸状菌が挙げられる。 ビートモラセス含有培地で該酵母を培養することにより、大量培養が可能となるが、培地をアルカリ性にすると更なる大量培養が可能となる。培地pHとしてはpH5〜9が好ましく、更に好ましくはアルカリ性pH、例えば7.5〜8.8であり、特に限定するものではないが、通常、pH8.5前後で行われる。 このようにして本発明においては酵母を大量に培養、取得してセレブロシドを大量に製造するほか、個々の酵母自体におけるセレブロシドの生産量ないし蓄積量を高めることによりセレブロシドを大量に製造するシステムも包含するものである。 そのためには、セレブロシド生産性酵母の培養中に及び/又は培養した後に、培養した後に、ストレス環境下にて処理する必要がある。 ストレス環境下での処理としては、(A)飢餓条件、例えば窒素源及び/又は炭素源を含まない培地での処理、(B)食塩及び/又はエタノール添加培地(添加量は、それぞれ、0.5〜5%、好ましくは0.7〜3.5%、特に限定するものではないが、通常は1〜2%程度)での処理、(C)アルカリ性培地(そのpHは上記と同じ)での処理の少なくともひとつが挙げられる。これらストレス環境下での処理には、通気攪拌培養、静置培養その他の培養処理、及び、インキュベート処理の少なくともひとつが包含される。 このように、本発明によれば、大量培養を行う際に培地をアルカリ性にすることや塩濃度を高める事によって、炭素源や窒素源、グロースファクターの組成が同じであっても、セレブロシド含量を増加させることも可能である。 菌体内のセレブロシド蓄積量を増加させるもう一つの方法としては、上記したように、大量培養した菌体を回収、必要に応じて水洗した後、飢餓条件で再培養する方法も可能である。この方法によれば菌体が大量に取得できてもセレブロシド含量が低いという菌株があった場合に、予め大量の菌体を取得しておけば、後段の飢餓条件でセレブロシド蓄積量を高めることが可能となる。この飢餓条件は窒素源を含まない培地および炭素源を含まない培地によっても達成することが可能である。 これらの酵母からセレブロシドを抽出するには、酵母を超音波処理等常法にしたがって破壊した後(例えばセレブロシドが菌体内に蓄積される場合)又は破壊することなく(例えば、セレブロシドが菌体外に分泌される場合)、有機溶媒で抽出し、所望する場合、クロマトグラフィー処理等の常法により更に精製することができる。なお、菌体内にセレブロシドが蓄積される場合であっても、菌体を破壊することなく直接溶媒を用いて抽出することも可能である。菌体としては、乾燥菌体でも湿潤菌体のいずれでもよい。 溶媒抽出は次のようにして行えばよい。エタノール量:2〜100倍、好ましくは3〜10倍量。抽出温度:特に限定されていないが、一般に20〜100℃、50〜70℃が好ましく、常温でも可能。時間:5分〜24時間、好ましくは30分〜4時間。抽出回数:1〜10回、好ましくは1〜3回であるが、連続抽出も可能。有機溶媒種類:エタノールまたは含水エタノール(70〜99%エタノールが好ましいが;エタノール、含水エタノール、メタノール、含水メタノール、ヘキサン、アセトン、クロロホルム、クロロホルム−メタノール混液、ベンゼン、イソプロパノール等も使用可能。)抽出方法:攪拌抽出、還流抽出、浸漬抽出、振とう抽出、超音波抽出。 このようにして得られた抽出液は、適当な濃縮操作により、例えばエバポレーターのような減圧濃縮装置や加熱による溶媒除去などにより、濃縮し、濃縮液を得ることができる。さらに濃縮乾燥させて、濃縮乾固物を得ることもできる。このようにして得た濃縮乾固物は、通常、黄色の固形油脂の形状である。 こうして得られた抽出物から適当な精製手段によりグルコシルセラミド画分を得ることができる。例えば、該抽出物をシリカゲルカラムにてクロロホルム−メタノールを用いて、数回精製し、固形油脂状のグルコシルセラミド画分を得ることができる。 こうして得られたグルコシルセラミド画分におけるグルコシルセラミドを定量するには、例えばHPLC−光散乱検出器を使用することができる。実際、上記の抽出操作により、グルコシルセラミドを80〜99質量%程度含有するグルコシルセラミド画分を得ることができる。同様にして、他のセラミド画分も分画、入手することができる。 また更に、本発明は、酵母及び/又はその破砕物(菌体溶解物を含む)を有機溶媒(アルコール、特にエタノールが好適)抽出し、分離した有機溶媒溶液を冷凍処理して、セレブロシド(以下、スフィンゴ糖脂質ということもある)含有物の沈殿を得ることにより、セレブロシド(スフィンゴ糖脂質)濃度の高い同含有物を製造するシステムも包含するものである。 本発明は、例えば、乾燥した酵母素材1重量部に対して、エタノールを2〜5重量部を加えて、50〜60℃にて抽出した後、固形分を分離し、得られたエタノール抽出液を零下20℃以下に12時間以上保存して、スフィンゴ糖脂質含有物の沈殿物を得るスフィンゴ糖脂質含有物の製造方法を包含するものである。また更に、得られたスフィンゴ糖脂質含有物の沈殿物を、エタノール液より分離し、その沈殿物をアセトン及び/又はヘキサンにより混合洗浄して、スフィンゴ糖脂質以外の脂質を除去することによる高純度のスフィンゴ糖脂質含有物の製造方法を包含するものである。 後者の具体的態様としては、次のものが例示される。すなわち、素材をエタノール処理及び冷凍処理し、得られたスフィンゴ糖脂質含有物の沈殿が含まれるエタノール含有物を、下記する(1)〜(5)の工程の少なくともひとつで処理すること、を特微とするスフインゴ糖脂質の製造方法。 (1)固液分離して、エタノール溶液部と沈殿物を分離した後、沈殿物を乾燥して、固体又は粉体とする。 (2)固液分離して、エタノール溶液部と沈殿物を分離した後、沈殿物をアセトン及び/又はヘキサンにて洗浄した後、乾燥して、固体又は粉体とする。 (3)工程(2)において、アセトン及び/又はヘキサンにて洗浄処理した後、固液分離し、分離して得た沈殿物を乾燥して、固体又は粉体とする。 (4)工程(1)において得た固体又は粉体をアセトン及び/又はヘキサンにて洗浄した後、乾燥して、固体又は粉体とする。 (5)工程(2)において、アセトン/又はヘキサンにて洗浄処理した後、固液分離し、分離して得た沈殿物を乾燥して、固体又は粉体とする。 酵母から得られたスフィンゴ糖脂質は、セラミドに糖としてグルコースが結合したグルコシルセラミド(グルコセレブロシド)のほか、セラミドに各種の糖が結合したもの、例えば、更に単糖結合よりも糖鎖の大きい、ガングリオシド、ラクトシルセラミド、グロボシセラミド、その他、セラミドやスルファチド等からなるものであって、スフィンゴ糖脂質含有物ということができる。グルコシルセラミドの分子種の一例として、2−ヒドロキシ脂肪酸残基が炭素原子数18からなる飽和脂肪酸であり、スフィンゴイド塩基部位が9−メチル−4−トランス,8−トランス−スフィンガジエニンからなるグルコシルセラミド(18h:0−9Me d18:24t,8t−Glc)が挙げられる。 酵母由来素材としては、ビートモラセス培地で大量培養した酵母、該培地及び/又は通常の培地で培養した酵母をストレス処理して得た酵母、湿潤酵母、乾燥酵母(凍結乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、天然乾燥等常法にしたがって乾燥した酵母)その破砕物の少なくともひとつが適宜使用されるが、以下、乾燥酵母を例にとって説明する。他の場合はこの例に準じて抽出その他の処理を行えばよい。 本発明を実施するには、酵母由来素材を有機溶媒で抽出する必要があるが、本発明で使用するスフィンゴ糖脂質の抽出用有機溶媒としては、アルコール、特にエタノールが好適である。エタノールは水分がない市販のものが好ましいが、回収したエタノールでも水分5%以下のものであれば使用が可能である。エタノールの添加量は、原料素材1重量部に対して1〜10重量部、好ましくは2〜5重量部である。エタノールの添加量が少なければ、その後の操作が容易になるが、あくまでも各素材のスフィンゴ糖脂質の抽出率を高くする添加量を選ぶべきである。 抽出温度は、室温程度から70℃、さらに望ましくは50〜60℃の範囲がよい。抽出時間は、1〜24時間、望ましくは2〜5時間程度である。抽出中の攪拌などで時間を短縮でき、溶剤によって抽出時間が異なってくる。次に、抽出残渣の分離除去を行う。分離方法は特に限定されたものではなく、固液分離装置、例えば、遠心分離機、フィルタープレス、シリンダープレスなどによれば良い。 このようにして得られたエタノール抽出液は、本発明の冷凍処理を行う。冷凍処理は、冷凍温度は−20℃以下、好ましくは−50℃以下が好ましい。そして、その冷凍温度にてエタノール抽出液を静置状態にて6〜24時間、好ましくは12〜24時間保存する。この冷凍処理により、エタノール抽出液中にスフィンゴ糖脂質を含む沈殿物が生成してくる。 このようにして、エタノール抽出液の凍結処理によって沈殿を生成せしめ、これを固液分離システムによって液体(エタノール溶液部)と沈殿物に分離する。なお、本明細書においては、生成した沈殿を液体部と分離して得たものを沈殿物といい、液体部と分離しないものは、単に沈殿という。 上記凍結処理によって得られた沈殿物(すなわち、凍結処理によって生成した沈殿を分離した物)は、そのままあるいは乾燥して(固体及び/又は粉末化してもよい)スフィンゴ糖脂質含有液として提供することができる。 また、更に純度を高めたスフィンゴ糖脂質含有物を得るためには、凍結処理による沈殿物、及び/又は、これを乾燥したもの(固体あるいは所望に応じて粉末化したもの)をアセトン及び/又はヘキサン洗浄すればよい。洗浄処理は、沈殿物及び/又はその乾燥物にアセトン及び/又はヘキサンを添加、混合、攪拌した後、固液分離して液体部を除去し、その残部(沈殿物という)を取得すればよい。例えば、凍結処理による沈殿物の場合、沈殿物1重量部にアセトン及び/又はヘキサンの1〜20重量部、好ましくは5〜10重量部と混合攪拌して、その後液体部を除去することにより、純度を高めることができる。乾燥物の洗浄の場合も、上記した沈殿物の洗浄にならって適宜実施すればよい。 このようにして洗浄した後、沈殿物はそのままスフィンゴ糖脂質含有物として提供できるが、上記と同様にこれを乾燥して(固体及び/又は粉末化して)もよい。なお、洗浄溶媒としてアセトンとヘキサンの混液を使用する場合には、等量混合を含む1:99〜99:1の比率で混合した混液を使用することができる。 本発明においては、食品添加物として認可されている有機溶媒(エタノール、アセトン、ヘキサン)のみを用いて、エタノール抽出液の凍結処理(沈殿物の取得)、アセトン及び/又はヘキサンによる洗浄処理を行うことにより、容易に食用の高純度スフィンゴ糖脂質含有物を得ることを見出し、本発明を完成させた。また、スフィンゴ糖脂質含有物のスフィンゴ糖脂質純度を更に上げるためには、クロマトグラフィー等の処理を施せばよい。 クロマトグラフィー処理は、常法にしたがって行えばよく、例えばクロマト分離法としては、その分離装置は固定床方式(ワンパス方式)、連続方式(疑似移動床方式)、半連続方式(固定床方式と連続方式の組合せ)が適用できる。その装置の充填イオン交換樹脂としては、クロマト用のNa形、K形、Ca形等の強酸性イオン交換樹脂が使用される。その樹脂は均一粒径のスチレンジビニルベンゼン系樹脂等が用いられる。イオン交換樹脂のメーカーから種々のクロマト用樹脂が販売されているので、適宜選択してクロマト処理すればよい。 動植物から抽出するのではなく、真菌類、例えば酵母や糸状菌の培養という手段を使用し、工業的に大量、且つ、均一なセレブロシドを得ることができる。また、酵母又は糸状菌自体におけるセレブロシドの蓄積量を高めることもでき、更に、飲食品用途にも使用可能な抽出、精製法も提供される。しかも、ビート糖製造時に多量に副生するビートモラセスについても有用な新規用途が開発された。 以下に、本発明の実施例によって更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。〔YPD培地でのセレブロシド蓄積〕 供試菌株としてサッカロマイセス クルイベリの菌株番号NBRC1685、NBRC1811、NBRC1892、NBRC10847、NBRC10848、NBRC10955、CBS2861、CBS4104、CBS4566、CBS4568、CBS4569、CBS4570、CBS4798、CBS4799、CBS4800、CBS4801、CBS5828、CBS6545、CBS6546、CBS6547、CBS6548、CBS6626を使用し、YPD培地(イーストエキス1%、ポリペプトン2%、グルコース2%)10mlで30℃、24時間培養したものを種培養とし、同組成の培地100mlで30℃、36時間の振とう培養を行ない、培養終了後の菌体を遠心分離・水洗後、凍結乾燥し菌体重量を測定した。 供試菌株をYPD培地にて3回培養した結果ではサッカロマイセス クルイベリの収量はほとんどが0.8g/100ml〜1.0g/100mlに分布していた(表1)。 また、この凍結乾燥菌体をクロロホルム−メタノール混液で抽出した脂質を水洗・弱アルカリ処理後、光散乱検出器付き逆相HPLCでセレブロシドを定量した。 その結果、菌体のセレブロシド含量(CMH含量)は最高でも1.33mg/g乾燥菌体となった(表2)。〔ビートモラセス培地でのセレブロシド蓄積〕 供試菌株としてサッカロマイセス クルイベリの菌株番号NBRC1685、NBRC1811、NBRC1892、NBRC10847、NBRC10848、NBRC10955、CBS2861、CBS4104、CBS4566、CBS4568、CBS4569、CBS4570、CBS4798、CBS4799、CBS4800、CBS4801、CBS5828、CBS6545、CBS6546、CBS6547、CBS6548、CBS6626を使用し、YPDブロス10mlで30℃、24時間培養したものを種培養とし、ビートモラセス培地(硫酸アンモニウム0.3%、尿素0.19%、燐酸1カリウム0.075%、硫酸マグネシウム0.075%、コーンスティープリカー0.5%、ビートモラセス10%)100mlで30℃、36時間の振とう培養を行ない、培養終了後の菌体を遠心分離・水洗後、凍結乾燥し菌体重量を測定した(表3)。 ビートモラセス培地で培養した菌株の乾燥菌体重量はサッカロマイセス クルイベリの標準株NBRC1685株と比較してNBRC1811、NBRC10848、NBRC10955、CBS4566、CBS4798、CBS4799、CBS4801、CBS6545、CBS6547、CBS6626が高収量であった。 また、この凍結乾燥菌体をクロロホルム−メタノール混液で抽出した脂質を水洗・弱アルカリ処理後、光散乱検出器付き逆相HPLCでセレブロシドを定量した。標準株NBRC1685株よりCMH含量が高い株として4菌株(NBRC10847、CBS4800、CBS4568、CBS6546)が得られた。この中でNBRC10847、CBS6546株のCMH含量はNBRC1685株の約1.5倍であった(表4)。〔飢餓条件によるセレブロシド蓄積量変化〕 NBRC10847を使用し、菌体収得後の培養処理がセレブロシド蓄積量に与える影響を調べた。ビートモラセス培地にて培養した菌体0.7gを数種の飢餓培養培地100mlに接種して、48時間振とう培養を行いセレブロシド蓄積量を調べた。その結果、炭素源および窒素源を含まない水培地、炭素源を含まないイーストニトロゲンベース単独培地、2%食塩を含む培地においてセレブロシド蓄積量の増加が見られた(表5)。有意差ありとはならなかったが、エタノール1%及びエタノール2%の培地でもセレブロシド蓄積量は増加する傾向が見られた。〔培地食塩の影響〕 標準株NBRC1685を用いてYPDブロス10mlで30℃、24時間培養したものを種培養とし、食塩濃度を0%、1%、2%としたビートモラセス培地(硫酸アンモニウム0.3%、尿素0.19%、燐酸1カリウム0.075%、硫酸マグネシウム0.075%、コーンスティープリカー0.5%、ビートモラセス10%)100mlで30℃、43時間の振とう培養を行なった。培養終了後の菌体を遠心分離・水洗後・凍結乾燥し、凍結乾燥菌体をクロロホルム−メタノール混液で抽出した脂質を水洗・弱アルカリ処理後、光散乱検出器付き逆相HPLCでセレブロシドを定量した。食塩の添加によりセレブロシド含量は有意に増加することが分かった(表6)。〔培地アルカリ化の影響〕 標準株NBRC1685を用いてYPDブロス10mlで30℃、24時間培養したものを種培養とし、pH7.0、pH8.0としたビートモラセス培地(硫酸アンモニウム0.3%、尿素0.19%、燐酸1カリウム0.075%、硫酸マグネシウム0.075%、コーンスティープリカー0.5%、ビートモラセス10%)100mlで30℃、43時間の振とう培養を行なった。培養終了後の菌体を遠心分離・水洗後、凍結乾燥し、凍結乾燥菌体をクロロホルム−メタノール混液で抽出した脂質を水洗・弱アルカリ処理後、光散乱検出器付き逆相HPLCでセレブロシドを定量した。培地pHを8.0とすることでセレブロシド含量は有意に増加することが分かった。実施例5の条件との併用効果は明確にはならなかったが、コントロールと比べてセレブロシド含量が増加した(表6)。〔ビートモラセス培地を用いたジャー培養〕 フラスコレベルの培養によってセレブロシドの蓄積量が高蓄積であったNBRC10847、CBS4568、CBS4800、CBS6546、低蓄積であったCBS4798、CBS4799、CBS6626、さらに標準株NBRC1685を用いてバッチジャー培養を行った。使用機器は千代田製作所製TFL5型ジャー培養槽で温度コントロールのみを行い、pH、溶存酸素濃度(DO)を計測した。培養にはYPDブロス35mlで30℃、24時間培養したものを種培養として用い、ビートモラセス培地(硫酸アンモニウム0.3%、尿素0.19%、燐酸1カリウム0.075%、硫酸マグネシウム0.075%、コーンスティープリカー0.5%、ビートモラセス10%)3.5Lに接種した。培養時の通気量は3.5Lで攪拌数は開始時700rpmで溶存酸素の変動により変化させた。培養中には12時間間隔で100mlずつのサンプリングを行い遠心分離・水洗後、凍結乾燥し菌体重量を測定し、増殖経過を記録した(図1)。 また、この凍結乾燥菌体をクロロホルム−メタノール混液で抽出した脂質を水洗・弱アルカリ処理後、光散乱検出器付き逆相HPLCでセレブロシドを定量した(図2)。〔ビートモラセス培地で培養した菌体の飢餓処理〕 実施例6で収得した菌体のなかで標準株NBRC1685、CBS4798、CBS4799、CBS6626を用いて飢餓処理を行った。飢餓処理はビートモラセス培地での培養終了後、遠心分離・水洗後、滅菌水に懸濁した菌体を700mg/100mlの最終濃度になるようにグルコース2%、チアミン100ppmからなる培地3.5Lに接種した。飢餓処理時の通気量は3.5Lで攪拌数は700rpm一定で行った。培養中には6、12、24、48時間間隔で100mlずつのサンプリングを行い遠心分離・水洗後、凍結乾燥し菌体重量を測定し、得られた凍結乾燥菌体を用いてセレプロシド含量を測定した。 本実施例で用いた飢餓処理培地は窒素飢餓を目的としたものであり、実施例3では有意なセレブロシド含量の上昇が見られなかった処理条件ではあるが、図3に示した通り、48時間の飢餓処理で1.7〜2.0倍のセレブロシド蓄積量増加が見られた。〔酵母グルコシルセラミドの抽出精製〕 酵母菌体としては、サッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)NBRC 10847株を用いた。この酵母乾燥菌体20kgより、エタノール120Lで70℃にて攪拌抽出し、濾過して得られた抽出液を減圧乾固した。得られた抽出物をシリカゲルカラムにてクロロホルム−メタノールを用いて4回精製し、グルコシルセラミド画分19.9gを得た。 サッカロマイセス・クルイベリ NBRC 10847株の熱風乾燥菌体1kgを密閉式攪拌槽に投入し、そこにエタノール2.5Lを加え、60℃で6時間攪拌した。その後、吸引ろ過により抽出液と残渣を分離した。エタノール抽出液は冷凍庫(−50℃)にて12時間保存した。冷凍処理により得たエタノール抽出液中の沈殿物は遠心分離にて分取し、沈殿物を得た。この沈殿物にアセトン100mlを加え攪拌混合後、不溶物を遠心分離にて分取し、減圧乾燥機(50℃)にて乾燥して白褐色の粉末乾固物(セレブロシド含有物)を得た。 以上、サッカロマイセス・クルイベリを例にとって本発明を説明したが、本発明においては、他の酵母、例えばクルイベロマイセス・ラクティスといったクルイベロマイセス属菌も使用可能であるが、他の真菌、例えばアスペルギルス・オリーゼ、同ニガー等の黄麹菌や黒麹菌その他各種のアスペルギルス属菌、ペニシリウム・ロックフォルティ等のペニシリウム属菌、モナスクス・アンカ等のモナスクス属菌も上記と同様に本発明に包含され、本発明において使用可能である。酵母のジャー培養増殖経過を示す。酵母におけるセレブロシド蓄積量の経時変化を示す。ジャー培養酵母菌体の飢餓処理によるセレブロシド含量の変化を示す。 セレブロシド生産性酵母又は糸状菌をビートモラセスを炭素源として含有する培地で培養し、培養中及び/又は培養した後食塩添加培地での処理というストレス環境下にて処理すること、を特徴とするセレブロシド高含有酵母又は糸状菌の大量培養方法。 セレブロシド生産性酵母又は糸状菌をビートモラセスを炭素源として含有する培地で培養し、培養した後飢餓条件培地での処理というストレス環境下にて処理すること、を特徴とするセレブロシド高含有酵母又は糸状菌の大量培養方法。 飢餓条件培地に食塩を添加したこと、を特徴とする請求項2に記載の方法。 飢餓条件培地が、窒素源及び/又は炭素源を含まない培地であること、を特徴とする請求項2又は3に記載の方法。 該処理が培養及び/又はインキュベート処理であること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 pH7.5〜8.8の培地で培養すること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。 請求項1〜6のいずれかの方法により得たセレブロシド高含有酵母又は糸状菌を、破壊し又は破壊することなく有機溶媒抽出し、抽出物からセレブロシド含有画分を分画、採取すること、を特徴とするセレブロシド含有物の大量製造方法。 有機溶媒が、エタノール、含水エタノール、メタノール、含水メタノール、ヘキサン、アセトン、クロロホルム、クロロホルム−メタノール混液、ベンゼン、イソプロパノールから選ばれる少なくともひとつであること、を特徴とする請求項7に記載の方法。 請求項1〜6のいずれかの方法により得たセレブロシド高含有酵母又は糸状菌を、破壊し又は破壊することなく、エタノール抽出し、分離したエタノール溶液を冷凍処理して、セレブロシド含有物の沈殿を得ること、を特徴とするセレブロシド含有物の大量製造方法。 冷凍処理が、零下20℃に12時間以上保存し、セレブロシド含有物の沈殿を得ることを特徴とする請求項9に記載のセレブロシド含有物の大量製造方法。 請求項9又は10で得られたセレブロシド含有物の沈殿が含まれるエタノール含有液を、下記する(1)〜(5)の工程の少なくともひとつで処理すること、を特徴とするセレブロシド含有物の大量製造方法。(1)固液分離して、エタノール溶液部と沈殿物を分離した後、沈殿物を乾燥して、固体又は粉体とする。(2)固液分離して、エタノール溶液部と沈殿物を分離した後、沈殿物をアセトン及び/又はヘキサンにて洗浄した後、乾燥して、固体又は粉体とする。(3)工程(2)において、洗浄処理した後、固液分離し、分離して得た沈殿物を乾燥して、固体又は粉体とする。(4)工程(1)において得た固体又は粉体をアセトン及び/又はヘキサンにて洗浄した後、乾燥して、固体又は粉体とする。(5)工程(2)において、アセトン及び/又はヘキサンにて洗浄処理した後、固液分離し、分離して得た沈殿物を乾燥して、固体又は粉体とする。 酵母がサッカロマイセス属及び/又はクルイベロマイセス属に属する酵母であること、を特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。 酵母がサッカロマイセス・クルイベリ及び/又はクルイベロマイセス・ラクチスであること、を特徴とする請求項12に記載の方法。 糸状菌がアスペルギルス属、ペニシリウム属、モナスクス属の少なくともひとつに属する糸状菌であること、を特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。糸状菌がアスペルギルス・オリーゼ、アスペルギルス・ニガー、ペニシリウム・ロックフォルティ、モナスクス・アンカから選ばれるものであること、を特徴とする請求項14に記載の方法。


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