タイトル: | 特許公報(B2)_t−ブタノールの製法 |
出願番号: | 2003423275 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 29/04,C07C 31/12,C07B 61/00 |
ジルヴィア サンティアゴ フェルナンデス ベルンハルト ショルツ フランツ ニールリッヒ アルフレート カイツィーク ヴィルフリート ビュシュケン ディーター ロイシュ アンドレアス ベックマン JP 4292072 特許公報(B2) 20090410 2003423275 20031219 t−ブタノールの製法 エボニック オクセノ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 398054432 Evonik Oxeno GmbH 矢野 敏雄 100061815 山崎 利臣 100094798 久野 琢也 100099483 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 100114890 ラインハルト・アインゼル 230100044 ジルヴィア サンティアゴ フェルナンデス ベルンハルト ショルツ フランツ ニールリッヒ アルフレート カイツィーク ヴィルフリート ビュシュケン ディーター ロイシュ アンドレアス ベックマン DE 10259413.9 20021219 DE 10330710.9 20030708 20090708 C07C 29/04 20060101AFI20090618BHJP C07C 31/12 20060101ALI20090618BHJP C07B 61/00 20060101ALN20090618BHJP JPC07C29/04C07C31/12C07B61/00 300 C07C 29/04 C07C 31/12 特開昭56−010124(JP,A) 国際公開第99/033775(WO,A1) 特開昭60−233024(JP,A) 7 2004196805 20040715 19 20051222 松本 直子 本発明は、酸性イオン交換体の存在で、イソブテンに水を付加することによるt−ブタノールの製法に関する。 t−ブタノール(TBA)は、大工業的に製造される重要な生成物であり、かつメタクリル酸メチルエステルを製造するための溶剤および中間生成物として使用される。これは、少なくとも1個の第三ブチル基を有するペルオキシケタール、ペルエステルまたはジアルキルペルオキシドのような過酸化物を製造するための前駆体である。これらの化合物は、酸化剤として、かつラジカル反応、例えば、オレフィン重合またはプラスチックの架橋のための開始剤として使用される。イソブテン混合物から純粋なイソブテンを得るためにtert−ブタノールが中間生成物としてはたらく。さらに、これは、第三ブチル基を導入するための試薬である。そのアルカリ金属塩は、多くの合成で使用される強塩基である。 第三ブタノールは、酸性接触的にイソブテンに水を付加することにより得られる。工業的なイソブテン混合物は、頻繁に2−ブテンのような他のオレフィンを含有する。この出発物質を使用する場合には、工業的方法条件を使用し、その際に、専らイソブテンを水素化するが、しかし他のオレフィンは水素化されず、かつ副反応、例えばオレフィンのホモオリゴマー化またはヘテロオリゴマー化が殆ど完全に抑制される。このようなプロセスは、通常は液相中で行われ、かつ2つのグループに分けることができる:a)触媒水溶液中での反応の際に行われる方法、およびb)反応相中で殆ど不溶性の固体触媒が使用される不均一接触法。 均一接触法は、触媒として硫酸、ヘテロポリ酸、p−トルエンスルホン酸または他の強酸を使用する。高い活性を有するこれらの均一触媒は、反応生成物と一緒に通常は均一相を形成するので、触媒を機械的に分離することができない。機械的方法の場合には、付加的に溶剤が使用される。第三ブタノールを蒸留により反応溶液から得る場合には、逆の反応および副生成物の形成により収率が低下する。 不均一接触法に関しては、酸性イオン交換体が触媒として頻繁に使用される。 EP 0579153には、スルホン化ポリマー(1000〜100000g/molのモル質量を有するポリスチレンスルホン酸またはポリビニルスルホン酸)の水溶液を触媒として使用する方法が記載されている。イソブテンもしくはイソブテン含有出発物質および触媒相を、向流で反応器中に流している。反応排出物は、二相であり、かつt−ブタノール含有の上の有機相と触媒相とに分けられる。有機相は蒸留により後処理されてt−ブタノールにする。消費された水を触媒相に補った後に、これを反応器に戻している。 出発物質中にも生成物にも溶解しない固体酸性触媒を用いるイソブテンからt−ブタノールへの水和作用は、反応混合物が酸不含であり、かつ損失なしに再解離(redissociation)によるかまたは他の副反応により後処理してt−ブタノールにすることができるという利点を有する。反応は、触媒表面で行われる。従って、反応を起こすために、両方の反応相手が触媒の活性部位に同時になくてはならない。このことは、水とイソブテンもしくはイソブテン含有炭化水素混合物が、相互に混合できないことにより困難になる。許容される転化率を得るために、ここでは、水とイソブテン供給混合物から成る均一混合物を可能にする溶剤を使用している。 DE 3031702では、この目的のために、水およびイソブテンもしくはイソブテン含有炭化水素混合物のための溶剤として、メタノール溶剤が記載されている。生成物して、t−ブタノールおよびメチル−t−ブチルエーテルが同時に得られている。 EP 0010993には、両方の出発物質に、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸が溶剤として使用されている。この場合に、副生成物として、これらの酸の第三ブチルエステルが形成されている。これを加水分解してt−ブタノールとカルボン酸にしなくてはならない。 DE 3031702ではスルホランが使用され、US 4327231では、Neo-タイプの多価アルコール、例えばネオペンチルグリコールが使用されている。これらの溶剤は、t−ブタノールから分離しなくてはならない。さらに、このようなプラントで使用溶剤が継続して運転される間に分解する危険性がある。 WO 99/33775には、多段系反応器(multistage series reactor)中で、水、tert−ブタノールおよびイソブテンもしくはイソブテン含有炭化水素混合物から成る混合物を、カチオン交換樹脂上で反応させることによるt−ブタノールの製法が記載されている。個々の反応器中の反応温度は、65℃以下である。1番目の反応器からの中間生成物の一部は、同じ反応器の入り口に戻される。この場合に返送比(供給混合物に対する、1番目の反応器に再び戻される中間生成物の量)は、1.8〜10であり、かつtert−ブチルアルコールの質量割合は、炭化水素混合物に対して(イソブテンと場合により他の炭化水素の合計)、1番目の反応器の入り口で0.5〜3.5である。1番目の反応器から戻されない混合物を、水を中間で添加せずに、他の2個の反応器に単流で循環している。最後の反応器からの粗製生成物を蒸留により後処理する。場合により、得られたtert−ブタノールの一部を1番目の反応器に戻している。 これらの方法の欠点は、低い空時収率である。tert−ブタノールの生産速度は、1番目の反応器(生成物を戻しながら運転)で、例1〜6において、0.078〜0.085kg/時/触媒1リットル(入り口でのイソブテン濃度は、8.3〜16.2質量%の間、転化率60.2〜66.1%の間)である。 DE 3025262には、水/イソブテン/TBAの三成分混合物を使用するTBAの製法が記載されている。 この方法は、この系のミシビリティーギャップにおいて実施するのが有利であるが、しかし、ミシビリティーギャップの外の均一および不均一領域で実施することもできる。この方法の運転範囲は、三角形のダイアグラムにより記載され、その際、三成分の混合物ゆえに、不均一相でも均一相でも、混合物の組成物の多くの多様性が成り立つ。 この混合物の組成物は、均一の形、すなわち、単一相の領域では、最大の含水量を有する組成物で開始し(混合物中の水の溶解限度、水滴分離器により達成可能)、かつ僅かな水含分を有する混合物で終了する(溶解限度に対して約5%未満)。 不均一触媒tert−ブタノールの存在で、可能な限りの選択性および十分な反応速度でtert−ブタノールを製造するために、DE 3025262を利用して、炭化水素混合物中の変化するイソブテンの割合を有する三成分混合物であるイソブテン含有炭化水素/水/tert−ブタノールは、多くの組合せの可能性を開示している。しかし、高い反応速度と選択性を得るために、DE 3025262では、その含水量が溶解限度に近い含水量を有する有利な混合物が使用されている。欧州特許出願公開第0579153号明細書ドイツ国特許出願公開第3031702号明細書欧州特許出願公開第0010993号明細書米国特許第4327231号明細書WO 99/33775ドイツ国特許出願公開第3025262号明細書 確かに、酸性カチオン交換樹脂を触媒として使用する公知の方法は、簡単な後処理を提供しているが、しかし、空時収率および/または選択性に関しては満足できないため、できるだけ高いイソブテン転化率で、良好な空時収率および良好な選択性で、イソブテンまたはイソブテン含有混合物からtert−ブタノールを得る方法を提供することを課題とする。 意外にも、装入混合物が、三成分の混合物中の水溶解度により可能な水量よりも少ない量を含有する場合には、水、tert−ブタノールおよびイソブテンもしくはイソブテン含有炭化水素混合物から成る均一混合物を、酸性イオン交換樹脂上で反応させてtert−ブタノールにする際に、反応速度、選択性および空時収率が向上することが見出された。 従って、本発明の対象は、30〜120℃で、水、tert−ブタノールおよびイソブテン含有炭化水素混合物から成る均一反応混合物を酸性イオン交換樹脂上で反応させることによるtert−ブタノールの製法であり、その際、均一反応混合物は、反応の開始の際に、10質量%を上回るイソブテンの質量割合および反応混合物中の水の溶解性により可能な水量の30〜80%の水の割合を含有する。 反応混合物中の含水量は、低いのが有利であり、例えば、50〜80%、60〜30%または70〜80%である。これらのデータは、均一な反応混合物中の水の溶解性により定義される主要量の最大量にそれぞれ基づいている。 イソブテンと水を反応させてTBAを得る質量作用の法則により、方程式1が適用される: CB=K*CI*Cw (方程式1) CB:反応混合物中のtert−ブタノールのモル濃度 CI:反応混合物中のイソブテンのモル濃度 Cw:反応混合物中の水のモル濃度 K:平衡定数 均一なtert−ブタノール/水/イソブテン溶液を反応させる際のtert−ブタノール形成の反応速度には、以下の方程式が適用される(E. Velo, L. Pugjaner, F. Recasens, Inhibition by Product in the Liquid-Phase-Hydation of Isobutene to tert-Butyl Alcohol: Kinetic and Equilibrium Studies, Ind. Eng. Chem. Res. 1988, 27, 2224-2231): r=k(CI*Cw−CB/K):(1+c*CB)n n=1または2 (方程式2) r:反応速度 kおよびcは、所定の温度、触媒および触媒量での定数である。 この方程式により、tert−ブタノール形成の反応速度は、水の濃度の増大に伴って増大する。従って、WO 99/33775およびDE 03025262では、均一な溶液を使用する場合に、できるだけ最大の水量を有利に使用している。 同じイソブテン/tert−ブタノール比の場合に、tert−ブタノール形成の最大反応速度が、飽和水溶液を使用した場合ではなく、低い含水量を有する混合物の場合に達成されることが意外にも見出された。 イソブテン含有炭化水素混合物(例えば、ラフィネートI)、tert−ブタノールおよび水から成る均一混合物を酸性イオン交換樹脂上で反応させる際に、tert−ブタノールの形成に関する反応速度は、パラメーターが一定の場合に、時間に依存する。使用されるイオン交換樹脂の含水量に依存して、TBA形成の開始速度を低下または増大させることができる。低い含水量を有する樹脂を用いて開始するすると、tert−ブタノールの形成速度は、初めに減少し、2〜6日後に一定になる。水のバランスから簡単に測定できるように、同じ時間で、触媒は水を吸収する。触媒により吸収された水量は、反応混合物中の水の濃度と溶解限度からの水の濃度の距離に左右される。溶解限度に水の濃度が近いほど、触媒が吸収する水は多くなる。触媒により吸収される水が増大するほど、他の同じ条件下でtert−ブタノール形成の反応速度が低下する。この原因は、おそらく、特にイソブテンの水和および/または物質輸送の阻害により引き起こされるか、触媒の水含有膨潤相により引き起こされる活性中心の酸強度の減少であろう。従って、装入混合物中の含水量は、継続的運転に際に2つの点でtert−ブタノール形成の反応速度に影響を与える。すなわち、速度を増大する濃度効果により(方程式2参照)、および速度を減少させる触媒の水吸収により。 工業的に実施される方法の経済性は、初期速度によってではなく、一定状態の速度により、すなわち、プラントの長期運転において決定される。 本発明の方法のための均一混合物の組成は、状態図1により説明されている。図1は、三角形に配置された系にて、水、tert−ブタノールおよびイソブテン含有炭化水素混合物の状態図を示す(0〜100質量%に配置)。炭化水素混合物(ラフィネートI)は、イソブテン45%と飽和および単不飽和C4−炭化水素55%から成る。状態図は、20〜80℃の温度範囲および炭化水素混合物の飽和圧力を上回る圧力に適用される。この範囲で、実質的に圧力および温度の依存性はない。イソブテン含有炭化水素混合物の他の組成物では、この状態図は殆ど変化しないので、本発明を説明するのに適切である。三角形の1つの角から頂点Mを通って、もう一方の角Kへ行く曲線は、均一な領域と不均一な領域の間の境界線を示す。曲線の下が、混合物は不均一な溶液の領域であるのに対して、曲線の上は、均一な溶液の領域である。この曲線は、得るべき均一な溶液のための3成分系中の水の最大割合も示す。 本発明の方法では、反応器供給物は、有利に図1で、曲線部分KM、ラインMDおよびラインDKにより区切られる面積にある組成物を有する。反応開始時の混合物の詳細な組成は、本発明の低い水の割合のため、更にこの面積内にある。MDは、Mから基線KBへの垂線である。これは、点Mから出発して、一定の炭化水素/tert−ブタノール比で、水濃度が減少する場合の混合物の組成物を表す。 40〜90℃の温度範囲内では、3成分混合物(tert−ブタノール/水/イソブテン45%含有のラフィネートI)の最大の含水量(溶解度曲線)は、下記の経験的方程式により、関心のある領域(ラインKM)について計算することができる。これらの方程式は、イソブテン含有炭化水素混合物が他の組成物を有する場合にも適用される。 InXw=0.0570XB−0.8215 (方程式3a) または Xw=EXP[0.0570] XB−0.8215] (方程式3b)式中、Xw:含水量(質量%) XB:tert−ブタノール含量(質量%) 従って、本発明の方法では、均一反応器供給溶液の含水量は、可能であろう最大値よりも低い(ラインKM)。これは、tert−ブタノールとイソブテン含有炭化水素混合物の混合物中の水の溶解性により可能な水の量の30〜80%、特に50〜80%、60〜80%または70〜80%であり、かつ簡単な実験により算出するか、または等式3a/bにより計算により決定できる。 本発明によれば、反応器供給物中のイソブテン濃度は、10質量%を上回り、特に15質量%を上回る。従って、反応器供給物は、35℃〜70℃の有利な温度範囲で、その組成物が、イソブテン、水およびTBAの間の熱力学的平衡からはるかに離れている混合物である。 出発物質として、イソブテン含有炭化水素混合物または純水なイソブテンを使用することができる。イソブテン含有炭化水素混合物は、有利にはアセチレン誘導体、5000ppm未満のジエンを含有せず、かつオレフィン性二重結合に1個以上の分枝を有する他のオレフィンを含有しない。 イソブテンを含有する工業的混合物は、例えば、精油所からの軽ベンジンフラクション、FCC−またはスチームラッカーからのC4−フラクション、フィッシャー・トロプシュ合成からの混合物、ブタンの脱水素からの混合物、線状ブテンの骨格異性化からの混合物、オレフィンの熱処理または他の工業プロセスにより生じる混合物である。 これらの混合物は、不飽和化合物を場合により数回除去した後に、本発明の方法で使用される。例えば、スチームクラッカーのC4−フラクションからの適切なイソブテン混合物の獲得は、ブタジエンの抽出によるか、またはブタジエンを選択的に水素化して線状ブテンにすることにより行うことができる。これらの装入材料(ラフィネートIもしくは選択的水素化されたC4−クラッカー)は、n−ブタン、イソブタン、3種の線状ブテンおよびイソブテンから成り、かつ本発明の方法に有利な出発物質である。 場合により、ラフィネートI、水素化されたC4−クラッカーフラクションまたは類似した組成物を有する炭化水素混合物を反応カラム中で水素異性化する。このように、イソブテン、(場合により1−ブテン)およびイソブタンから成る混合物を得ることができる。 炭化水素混合物中でのイソブテンの濃度は、広い範囲で変化させることができる。しかし、方法の経済性ゆえに、30質量%を上回る、有利に40質量%を上回るイソブテン濃度を有する炭化水素混合物を使用するのが賢明である。 触媒として、装入材料混合物中にも、生成物混合物中にも溶解しない酸性イオン交換体を使用する。触媒は、反応条件下で、加水分解によっても、他の反応によっても、生成物混合物に酸性物質を導入してはならない。なぜならば、これは反応混合物を後処理する際に、収率損失を生じてしまうからである。 適切な触媒の活性に関しては、反応条件下でイソブテンの水和作用を引き起こすが、しかし、非分枝オレフィンの水和作用を引き起こさない触媒が該当する。さらに、これらはオレフィンのオリゴマー化を殆ど触媒してはならない。 触媒の適切なグループは、スルホン酸基を有する固体イオン交換樹脂である。特に適切なイオン交換樹脂は、例えば、フェノール/アルデヒド−縮合体または芳香族ビニル化合物のコオリゴマーのスルホン化により製造される樹脂である。コオリゴマーを製造するための芳香族ビニル化合物の例は、次のものである:スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルエチルベンゼン、メチルスチレン、ビニルクロロベンゼン、ビニルキシレンおよびジビニルベンゼンである。特に、スチレンとジビニルベンゼンとの反応により生じるコオリゴマーが、スルホン基を有するイオン交換樹脂を製造するための前駆体として使用される。樹脂は、ゲルの形、微孔質または海綿の形になるように製造することができる。スチレン−ジビニルベンゼンタイプの適切な樹脂は、特に、次の商品名で購入できる:Duolite C 20、Duolite C26、Amberlyst 15、Amberlyst 35、Amberlite IR-120、Amberlite 200、Dowex 50、Lewatit SPC 118、Lewatit SPC 108、Lewatit K2611(Bayer社)、Lewatit K2631、OC 1501(Bayer社)、Lewatit K2621、Lewatit K2629、Lewatit L2431。 これらの樹脂の経済性、特に比表面積、多孔度、安定性、膨潤性もしくは収縮性およびイオン交換容量は、使用される製法により変化させることができる。 本発明による方法において、イオン交換体をそのH−形で使用できる。イオン交換容量は、2〜7eq、特に3〜6eq/kg(市販されている湿潤樹脂に対して)である。 Lewatit SPC 118、Lewatit SPC 108またはLewatit K2631のような多孔性樹脂を使用するのが有利である。 工業用樹脂の粒度は、一般的には0.5〜2mmの間である。粒度分布は、狭くまたは広く選択できる。従って、極めて均一な粒度(単分散樹脂)を有するイオン交換樹脂を使用することができる。 複数の反応器を使用する際に、これらを、同じまたは異なる粒度(もしくは粒度分布)の樹脂で充填することができる。 場合により、イオン交換樹脂を例えば、シリンダー、リングまたは球体のような成形品として使用することができる。 高い線速度で還流する反応器中では、圧力降下を低下させるために大きな粒子を使用するのが有利であり、かつ低い線速度で還流する反応器中では、最適な転化率を達成するために小さな粒子を使用するのが有利である。 操作の際に樹脂から酸基が分離し、ひいては方法の後処理部分での障害の原因になることを回避し、かつ長期間にわたり高い触媒活性を維持するために、例えば、40〜120℃の温度範囲内で、水、TBAまたはTBA/水の混合物で洗浄することによりイオン交換樹脂を製造することができる。 イソブテンの水和により水が消費されるので、反応混合物中の含水量が低下する。できるだけ高い収率および反応速度を得るために、水を後供給すべきである。 1つだけの反応器を使用する際には、このことは、例えば、管状反応器に沿った種々の部位で水を供給することにより達成される。しかし、実際には、正確に必要な水量を供給し、かつすぐに均一な溶液の形成を得ることが難しい。複数の反応器を一列に連結し、かつ必要な水量を反応器の間で供給することが技術的に簡単で、かつ有利である。 反応によりtert−ブタノールの濃度が増大するので、反応器排出物での水溶解性が増大する。従って、それぞれの反応器の後で、直ぐ前の反応器中で反応した水よりも多くの水を添加することができる。本発明によれば、消費された水を交換し、さらに溶解限度を達成するために必要となるであろう水よりも少ない量が添加される。場合により、最後の反応器の場合に、このことは外され、かつこれは水で飽和された溶液と一緒に、または溶解度に相当するよりも幾分多い水を含有する混合物と一緒に供給することができる。これは、十分に大きな反応器容量の場合に、イソブテン濃度が低い場合に、イソブテン転化率が僅かに高くなるという利点を有するが、しかし、tert−ブタノール/水−の比が蒸留による後処理には望ましくなくなり、さらに水不含tert-ブタノールの高い含分を得るべき場合には特に望ましくない不利な点もある。 出発物質混合物中の水量は、開始相を除いて、炭化水素を分離除去した後にプロセス自体で得られるtert-ブタノール−水−溶液から、すなわち反応器排出物の一部を循環することにより生じる。この水量が不十分な場合には、付加的に水が供給される。反応器の間では、純粋な水またはtert−ブタノールとの混合物が供給される。反応により得られたTBAの一部を、水とのその均一な混合物およびイソブテン含有炭化水素混合物を製造するために循環させることができる。反応の平衡を変化させるために、反応器の間で水を供給することができる。 本発明によれば、均一な溶液だけが反応器に供給される。従って、水もしくは水−tert−ブタノール溶液を、装入炭化水素混合物または反応器排出物と混合すべきであり、その結果、1番目の反応器もしくは後続の反応器の入り口に達するまでに、均一な溶液が生じる。これは、例えば、スタティックミキサーの使用下に達成することができる。反応器の供給物での所望する水の濃度の調節は、含水量を測定した後に、個々の流れの量を調節することにより行われる。 本発明による方法は、通常の固体/液体接触反応に使用できる回分式または連続的に運転される反応器中で実施することができる。連続的に運転される流通反応装置(flow reactor)を使用する場合には、大抵は、専ら固定床だけを使用する。固定床流通反応装置を使用する場合には、液体を上方または下方へ流すことができる。大抵は、液体を下方へ流すのが有利である。 さらに、生成物を回収しながらまたは直線状の通路の形で反応器を運転させることができる。 管状反応器を使用する際に、反応器の幾何学的大きさまたはそれらの充填度により、触媒床の長さ対直径の比を変化させることができる。従って、同じ接触量および空間速度(LHSV)で、種々の空管速度(empty tube velocity)を達成することができる。反応混合物の一部が戻される反応器は、一般的に13〜26m/hの空管速度で運転することができる。直線状の通路を流れる(im geraden Durchgang durchstroemt)反応器中では、空管速度は、一般的には1〜13m/hの範囲内である。 これに相当して、生成物を循環させながら運転される反応器での触媒の空間速度(LHSV)は、0.3〜10h−1、特に1〜5h−1である。直線状の通路を流れる反応器では、空間速度は、0.1〜5.0h−1、特に0.4〜3h−1の範囲内である。 本発明による方法は、流れ方向で低い温度を有することができる1個の反応器または複数の、特に2、3または4個の直列に連結された反応器中で実施できる。 生成物を再循環させながら1番目の反応器または複数の反応器を運転する場合には、循環係数(循環でポンプされた量:新たな供給量の比)を0.1〜10に調節した。この場合に、1番目の反応器の循環係数は、有利に1〜4、特に2〜3.5である。 有利な変法では、1番目の反応器中で生成物を再循環させながら、かつ他の反応器では直線状の通路の形で運転する。使用される反応器の数は、所望する転化率に応じて一般的には2〜10個、特に2〜4個の間である。 それぞれの反応器は、断熱的かつ実質的に等温的に運転できる。すなわち、10℃未満の温度増大で運転される。高すぎる温度増大は、不所望な平衡の影響(逆の分解)ゆえに回避される。 本発明による方法を実施する温度は、30〜120℃である。低温では、反応速度が低すぎ、高温では、増大した副反応、例えば、オレフィンのオリゴマー化が生じる。反応器は、35〜70℃の温度範囲内で運転するのが有利である。種々の反応器中の温度は、所定の範囲内で同じまたは異なることができる。1変法では、流れ方向で反応器から反応器へ温度を下げる。温度が下がるにつれて、平衡状態の位置が望ましくなるので、より高い転化率が達成できる。しかし、35℃を下回る温度は賢明ではない。というのも、工業的方法には反応が遅くなりすぎるからである。 4つが直列に連結された反応器の場合には、1番目の反応器は67〜70℃、2番目の反応器は53〜56℃、3番目の反応器は42〜46℃および4番目の反応器は42〜38℃の平均温度で運転することができる。 本発明による反応は、装入−炭化水素混合物の蒸気圧と同じもしくは上回って、それぞれの反応温度で、有利には40バール未満の圧力で実施することができる。反応器中での水蒸気の問題を回避するために、反応混合物の蒸気圧よりも2〜4バール高い圧力にするのがよい。 イソブテンの全体の転化率は、使用触媒の種類と量、設定された反応条件および反応工程の数に依存する。経済的根拠から、イソブテン転化率は、50〜95%、有利に70〜90%の範囲内に保持される。さらに、高い空時収率を得るために、20%を下回らない、有利に40%を下回らないイソブテン含量を有する炭化水素を使用するのが賢明である。 最後の反応器を出る反応混合物は、最後の反応器の圧力で、またはそれを下回るが、しかし、少なくとも1バールの圧力で運転される蒸留カラムに戻される。蒸留の際に、塔頂生成物として、未反応のイソブテンおよび出発物質と一緒にもたらされる”不活性な”炭化水素から成る炭化水素混合物が生じる。塔底生成物として、tert−ブタノール水溶液が得られる。 分離された炭化水素混合物を後処理してさらなる目的生成物にすることができる。例えば、ラフィネートIまたは選択的に水素化されたC4−フラクションを出発物質として使用する結果、塔頂生成物には未反応のイソブテンの他に、線状ブテンならびにイソブタンおよびn−ブタンが含有される。これらの混合物から、残りのイソブテンをメタノールと反応させてメチル−tert−ブチルエーテルを分離することができる。残ったラフィネート中で、場合により1−ブテンを分離した後に、線状ブテンをジ−n−ブテンとそれらの高分子量オリゴマーに変換することができる。イソブテン不含混合物の他の使用は、純粋な1−ブテンに後処理することである。 得られたtert−ブタノール水溶液の一部は、方法に戻す(再生)ことができる。他の部分をこのまま使用するか、または後処理して純粋なtert−ブタノールならびに水とtert−ブタノールから成る共沸混合物にすることができる。さらに、粗製−tert−ブタノールの後処理の際に生じる水とtert−ブタノールから成る他の流れを1番目の反応器に戻すことができる。 この方法で再生されたtert−ブタノールの循環係数は、有利に0.1〜1.7の間である。 本発明による方法を連続的に実施できる4つの反応器を有する装置のブロック図は、図3に示されている。1番目の反応器3に、イソブテン含有炭化水素混合物1(例えば、ラフィネートI)、1番目の反応器3からの排出物20および戻り流(recycle stream)18および場合により水19から成るtert−ブタノール/水−混合物2が供給される。反応器排出物4は、部分的にさらに1番目の反応器3に戻され、その他の部分は水5と一緒に2番目の反応器6に通される。反応器排出物7は、水8と一緒に反応器9に供給される。反応溶液10を水11と一緒に反応器12中で反応させる。反応器排出物をカラム14中で分別する。塔頂生成物15として、反応条件下で不活性な炭化水素と少量の未反応のイソブテンから成る炭化水素混合物が生じる。塔底生成物16は、実質的に、tertーブタノールと水を含有する。その一部(18)は、1番目の反応器3に戻され、その他の部分(17)は、このまま使用されるか、または記載されていない蒸留で後処理してtert−ブタノール/水−共沸混合物および/またはtert−ブタノールにする。 以下の実施例により本発明を詳説するが、詳細な説明および特許請求項に記載されたその適用範囲に限定されるものではない。試験1〜6に使用されたラフィネート流は、以下の組成を有した:n−ブタン: 8.2%イソブタン: 2.3%1−ブテン: 30.3%2−ブテン(シス+トランス): 14.2%イソブテン: 45.0% ラフィネート中のイソブテン含量は、一般的には30〜60%の範囲内であった。 このラフィネート流を現存する製造装置中で、水および残りの−TBAを可溶化剤として反応させた。製造装置の反応器への供給物を、実験室試験用の供給物として使用した。図2は、実際の実験室装置を図式的に示している。供給物(1)は、所望の温度まで予備加熱され、かつ60℃の等温で運転される(55℃で運転される試験3および4を除いて)実験室反応器(2)に導入される。反応器は、直径1cmおよび長さ20cmを有する触媒床を含有し、試験3と4では、長さ25cmである点が異なる。触媒としてAmberlyst 35をH+の形で使用する。触媒量は、含水量の効果を正確に試験するために意識して少なく保持した。生成物流(3)をガスクロマトグラフィーにより分析した。成分n−ブタン、イソブタン、1−ブテン、2−ブテン(シス+トランス)を合わせて、残分−C4と称する。記載された組成物は、準定常的平衡での生成物排出物に対しており、これは20〜30時間の試験継続時間後に達成された。装置の圧力は、12バール(絶対)であった。1. 例(本発明による) 下表の流れ番号は、図2と同じであった。パーセントのデータは、質量%として読むことができる。供給物(1)は、イソブテン含量に関して、製造装置の1番目の反応器への供給物に相当した。供給量は、0.3kg/hであった。達成された転化率は、5.30%であった。反応器供給物中の水の割合は、ミシビリティーギャップでの水の質量割合と比較して、35.39%であった。例2(比較) 下表の流量は、図2の通りであった。%のデータは、質量%として読むことができる。供給物(1)は、生産装置の1番目の反応器への供給物に相当した。供給量は、0.3kg/hであった。 達成された転化率は、4.53%であった。反応器供給物中の水の割合は、ミシビリティーギャップでの水の質量割合と比較して、83.66%であった。例3(本発明による) 下表の流れの番号は、図2の通りであった。%のデータは、質量%として読むことができる。供給物(1)は、イソブテン含量に関して生産装置の2番目の反応器への供給物に相当した。供給量は、0.3kg/hであった。その他の例とは異なって、反応温度(生産装置と同様に)は55℃であった。同じく、直径1cmで長さ25cmの触媒床が、その他の例と異なる。 達成された転化率は、5.73%であった。反応器供給物中の水の割合は、ミシビリティーギャップでの水の質量割合と比較して、49.38%であった。例4(比較) 下表の流れの番号は、図2の通りであった。%のデータは、質量%として読むことができる。供給物(1)は、生産装置の2番目の反応器への供給物に相当した。供給量は、0.3kg/hであった。その他の例とは異なって、反応温度(生産装置と同様に)は、55℃であった。同じく、直径1cmで長さ25cmの触媒床が、その他の例と異なる。 達成された転化率は、5.47%であった。反応器供給物中の水の割合は、ミシビリティーギャップでの水の質量割合と比較して、84.07%であった。例5(本発明による) 下表の流れの番号は、図2の通りであった。%のデータは、質量%として読むことができる。供給量(1)は、イソブテン含量に関して、生産装置の1番目の反応器への供給物に相当していたが、しかし、ラフィネートI中、50%のイソブテン質量割合の場合であった。供給量は、0.3kg/hであった。 達成された転化率は、5.82%であった。反応器供給物中の水の割合は、ミシビリティーギャップでの水の質量割合と比較して、35.56%であった。例6(比較) 下表の流れの番号は、図2の通りであった。%のデータは、質量%として読むことができる。供給物(1)は、生産装置の1番目の反応器への供給物に相当した。しかし、ラフィネートI中、50%のイソブテン質量割合の場合であった。供給量は、0.3kg/hであった。 達成された転化率は、4.67%であった。反応器供給物中の水の割合は、ミシビリティーギャップでの水の質量割合と比較して、91.09%であった。例7(本発明による) 下表の流れの番号は、図2の通りであった。%のデータは、質量%として読むことができる。供給物(1)は、イソブテン含量に関して、生産装置の1番目の反応器への供給物に相当した。しかし、ラフィネートI中、60%のイソブテン質量割合の場合であった。供給量は、0.3kg/hであった。 達成された転化率は、6.58%であった。反応器供給物中の水の割合は、ミシビリティーギャップでの水の質量割合と比較して、42.88%であった。例8(本発明による) 下表の流れの番号は、図2の通りであった。%のデータは、質量%として読むことができる。供給物(1)は、生産装置の1番目の反応器への供給物に相当した。しかし、ラフィネートI中、60%のイソブテン質量割合の場合であった。供給量は、0.3kg/hであった。 達成された転化率は、5.28%であった。反応器供給物中の水の割合は、ミシビリティーギャップでの水の質量割合と比較して、79.72%であった。例9(比較) 下表の流れの番号は、図2の通りであった。%のデータは、質量%として読むことができる。供給物(1)は、生産装置の1番目の反応器の供給物に相当した。しかし、ラフィネートI中、60%のイソブテン質量割合の場合であった。供給量は、0.3kg/hであった。 達成された転化率は、4.87%であった。反応器供給物中の水の割合は、ミシビリティーギャップでの水の質量割合と比較して、98.83%であった。例10(比較) 下表の流れの番号は、図2の通りであった。%のデータは、質量%として読むことができる。供給物(1)は、生産装置の1番目の反応器の供給物に相当した。しかし、イソブテン−質量割合は、ラフィネートI中で、60%であった。供給量は、0.3kg/hであった。 達成された転化率は、5.06%であった。反応器供給物中の水の割合は、ミシビリティーギャップでの水の質量割合と比較して、24.79%であった。 例1と例2の比較、例3と例4の比較、例5と例6の比較および例7、8および9の比較は、それぞれ最も低い含水量を使用する個々の試験が、TBAへの最も高いイソブテン転化率を示した。 例7、8および10の比較は、ミシビリティーギャップでの水の質量割合に対して、請求された少なくとも30%の水の限界を下回ると、達成可能な転化率が再び下がることを示している。図1は、水、tert−ブタノールおよびイソブテン含有炭化水素混合物の状態図を示す図である。図2は、実際の実験室装置を図式的に示す図である。図3は、本発明による方法を連続的に実施できる4つの反応器を有する装置のブロック図を示す図である。 水、tert−ブタノールおよびイソブテン含有炭化水素混合物から成る均一な反応混合物を酸性イオン交換樹脂上で30〜120℃で反応させることによりtert−ブタノールを製造する方法において、均一な反応混合物が、反応の開始時に10質量%を上回るイソブテンの質量割合および反応混合物中の溶解度曲線上の含水量の30〜80%の水の割合を含有することを特徴とする、tert−ブタノールの製法。 反応により得られたtert−ブタノールの一部を均一な反応混合物を製造するために戻す、請求項1に記載の方法。 反応により得られたtert−ブタノールを循環するための循環係数は、0.1〜1.7である、請求項2に記載の方法。 反応を、直列に連結された複数の反応器中で実施する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。 反応の間で水を供給する、請求項4に記載の方法。 均一な反応混合物の水の割合が溶解度曲線上の含水量の50〜80%である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。 直列に連結された反応器が流れ方向で低下する温度を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。