タイトル: | 特許公報(B2)_ストレスによる色素沈着症状の防止、改善に有効な組成物 |
出願番号: | 2003420242 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 8/97,A61Q 19/02,A61K 36/18,A61P 5/38,A61P 17/00 |
山羽 宏行 田中 浩 松下 響 伊藤 三明 JP 4216173 特許公報(B2) 20081114 2003420242 20031218 ストレスによる色素沈着症状の防止、改善に有効な組成物 日本メナード化粧品株式会社 592262543 山羽 宏行 田中 浩 松下 響 伊藤 三明 20090128 A61K 8/97 20060101AFI20090108BHJP A61Q 19/02 20060101ALI20090108BHJP A61K 36/18 20060101ALI20090108BHJP A61P 5/38 20060101ALI20090108BHJP A61P 17/00 20060101ALI20090108BHJP JPA61K8/97A61Q19/02A61K35/78 CA61P5/38A61P17/00 A61K 8/97 A61K 36/18 A61P 5/38 A61P 17/00 A61Q 19/02 特開平08−175963(JP,A) 特開2001−106619(JP,A) 特開平10−298200(JP,A) 1 2005179221 20050707 6 20061101 小川 知宏 本発明は、エルカンプリの抽出物を含有し、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を介して促進されるメラノサイトのチロシナーゼ活性に対して、特異的に拮抗し得る阻害剤に関する。 従来、紫外線により生じる皮膚の色素沈着症状の防止、改善を目的として、メラニンの生成を触媒するチロシナーゼの活性を阻害するものや、生成したメラニン色素を還元する作用を有する物質が検討され、皮膚外用剤に応用されてきた。また、皮膚への紫外線照射量を軽減させる目的で、パラアミノ安息香酸化合物やベンゾフェノン誘導体などの紫外線吸収剤や酸化チタン、酸化亜鉛などの紫外線遮蔽効果を有する粉体を含有する皮膚外用剤が応用されてきた。さらに、紫外線によるメラノサイトの活性化に、α-メラノサイト刺激ホルモン(α-MSH)、エンドセリン、幹細胞成長因子(SCF)、ヒスタミンなどのサイトカインや活性酸素などが関与していることが明らかになり、これらの因子を制御することによる色素沈着症状の防止、改善が検討されてきた。 しかしながら、近年、紫外線だけでなく、ストレスによっても色素沈着症状が引き起こされることが明らかにされてきた(非特許文献1参照)。一般に、ストレスによるシミの悪化は、紫外線によって引き起こされるシミと異なり、下垂体前葉で産生される副腎皮質刺激ホルモン(AdrenocorticotropicHormone : ACTH)が関与すると考えられている。ACTHは副腎皮質でのステロイドホルモンの産生を促進するホルモンであるが、α−MSHの前駆体であるとともに、それ自体もメラニン色素の生成を促進する性質を有し、ストレスなどにより分泌量が増加する特徴がある。神永博子,四宮達郎,日皮会誌,107(5):615−622,1997. ストレスにより増加した血中のACTHは、表皮に点在するメラノサイトの細胞膜表面にあるメラノコルチンレセプター−1に結合することで、メラノサイトが活性化すると考えられている。活性化されたメラノサイト内では、チロシナーゼ合成が促進され、メラニンの生成が高まり、これが色素沈着に繋がると考えられる。また、全身性の色素沈着症状があるaddison病も、副腎機能が低下して過剰分泌した血中のACTHが原因であり、内因性のACTHが皮膚における色素沈着に関与している可能性が考えられる。このように、ストレスにより誘導されるメラノサイトの活性化は、ACTHを介するメラノサイトの活性化が主体であり、従来の紫外線による皮膚の色素沈着症状の防止、改善を目的とした皮膚外用剤では十分な効果が期待できない場合もある。したがって、ストレスによる色素沈着症状の防止、改善には、ACTHによるメラノサイトの活性化を防ぐことが重要であると考えられる。ACTHによるメラノサイトの活性化を防ぐ成分としては、corticostatinが報告されている(非特許文献2参照)が、不安定であるとともに、生体成分であり、精製が難しいなどの問題がある。Inoue K., J. Invest. Dermatol., 121:165−171, 2003. 本発明で使用するエルカンプリとは、リンドウ科(Gentianaceae)に属する植物で、学名をGentiana prostrata(Gentianaalboroseaとする説もある)という。南米アマゾン地帯に自生し、ペルーでは一般名でHercampuriと呼ばれている。強い苦味のある薬草で、その全草は胆汁排泄促進効果があり、痩せ薬や肝炎の治療薬等に用いられている。 なお、エルカンプリの抽出物については、チロシナーゼ阻害作用を有することおよびメラニン生成を抑制することが開示されている(特許文献1,2参照)。しかしながら、エルカンプリの抽出物にACTHに対する阻害作用があり、その作用を介して、ストレスにより活性化されるメラニン生成を抑制することについてはこれまで報告されていない。特開平08−175963号公報特開2001−106619号公報 本発明においては、ACTHを介して促進されるメラノサイトのチロシナーゼ活性を抑制し、その結果、ストレスにより生じる色素沈着に対して有効な防止、改善効果を有するチロシナーゼ活性阻害剤を提供することを目的とする。 この様な事情により、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、エルカンプリの抽出物が、ACTHにより促進されるメラノサイトのチロシナーゼ活性に対して優れた抑制効果を持つことを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明のエルカンプリの抽出物を含有する副腎皮質刺激ホルモンにより促進されるメラノサイトのチロシナーゼ活性阻害剤は、ストレスによって生じるACTHに対して特異的に拮抗して、ACTHを介して促進されるメラノサイトのチロシナーゼ活性を阻害することにより、ストレスによる色素沈着症状の防止、改善に有効である。 本発明で使用するエルカンプリの抽出物とは、エルカンプリの葉、茎、花、種子、果実、根茎、根等の植物体の一部または全草から抽出して得られるものである。好ましくは、葉もしくは茎の一方、もしくは両方の混合物から抽出して得られるものが良い。 また、本発明で使用するエルカンプリの抽出物は、エルカンプリを抽出溶媒と共に浸漬または加熱した後、濾過し、必要ならば濃縮して得られる。抽出溶媒としては、例えば、水、低級1価アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等)、炭化水素(ヘキサン、ペンタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)、アセトニトリル等があげられる。これらの溶媒は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、水あるいは水溶性溶媒(水と任意の割合で混合可能な溶媒。例えば、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等)のうち1種または2種以上の溶媒を用いるのがよい。抽出物はそのまま用いてもよいし、溶媒を一部、または全部留去して用いてもよい。 本発明に用いるエルカンプリの抽出物は、化粧品、医薬部外品及び医薬品のいずれにも用いることができ、その剤型としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、パップ剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、軟膏、シャンプー、リンス、トリートメント、トニック等が挙げられる。 本発明に用いるエルカンプリの抽出物の配合量は、乾燥物として0.0001〜0.001重量%含有することが好ましい。添加の方法については、予め加えておいても製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。 次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量は重量%を示す。製造例1 エルカンプリ熱水抽出物 エルカンプリの茎と葉20gに400mLの水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、不溶物を濾過し、その濾液を濃縮し、乾固してエルカンプリ熱水抽出物4.3gを得た。製造例2 エルカンプリエタノール抽出物 エルカンプリの葉100gに900mLの80%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、不溶物を濾過し、その濾液を濃縮乾固してエルカンプリエタノール抽出物33gを得た。製造例3 エルカンプリ1,3−ブチレングリコール抽出物 エルカンプリの全草の乾燥物30gに1000mLの1,3−ブチレングリコールと水の混合液(1:1)を加え、常温で10日間抽出した後、不溶物を濾過し、エルカンプリ1,3−ブチレングリコール抽出物950gを得た。 次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例をあげる。実験例1 ACTHによるメラノサイトの活性化に対する抑制試験 ACTHによるメラノサイトの活性化抑制効果を下記の条件にて測定した。つまり、メラノサイトとしてB−16マウスメラノーマ細胞を用い、ACTHを添加して促進されるメラノサイトの活性化を、メラノサイトのチロシナーゼ合成量を指標に測定した。この反応系に試料を加え、チロシナーゼ合成量の生成抑制率を算出して、ACTHによるメラノサイトの活性化抑制効果とした。 B−16マウスメラノーマ細胞を96well micro−plateに1wellあたり3.2×104個播種し、1%FCSを含むEagle‘s MEM培養液で37℃、5%CO2条件下、2日間培養した。次に、1または10μg/mLのエルカンプリ抽出物および40nM ACTHを添加した1%FCSを含むEagle’s MEM培養液に培地交換し、さらに2日間培養した。その後、細胞内に生成されたチロシナーゼの活性を比色定量した。すなわち、培地を除いた後、PBSで洗浄し、50μLの1%Triton X−100 PBS溶液を加え、30分間撹拌して細胞を溶解し、溶解液のチロシナーゼ活性およびタンパク量を測定した。チロシナーゼ活性は、25μLの1%Triton X−100 PBSの細胞溶解液に100μLの0.25%L−DOPA溶液を加え、37℃で3時間インキュベートし、450nmの吸光度を測定し、別途測定したタンパク量で補正した。得られたチロシナーゼ生成量について、コントロールに対する試料添加時のチロシナーゼ生成量の減少率から、メラノサイトの活性化抑制率を算出した。 これらの試験結果を表1に示した。その結果、エルカンプリ抽出物には優れたACTHによるメラノサイトの活性化に対する抑制効果が認められた。また、ACTHを加えずに同様の試験を行った結果、エルカンプリ抽出物は、試料濃度1及び10μg/mLにおいて、メラノサイトのチロシナーゼ合成量には影響を及ぼしていなかった。したがって、ACTHを介さずに直接エルカンプリ抽出物がメラノサイトに与える効果は非常に小さく、本試験は、エルカンプリ抽出物のACTHによるメラノサイトの活性化に対する阻害効果をみているといえる。 本発明の活用例として、化粧品、医薬部外品及び医薬品のいずれにも用いることができる。その剤型としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液などがあげられ、外用することにより、ストレスに由来する色素沈着症状の防止、改善効果が期待される。 エルカンプリの熱水抽出物又は80%エタノール抽出物を乾燥物として0.0001〜0.001重量%含有することを特徴とする副腎皮質刺激ホルモンを介して促進されるメラノサイトのチロシナーゼ活性阻害剤。