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タイトル:特許公報(B2)_医薬用吸着剤及びその製法
出願番号:2003411829
年次:2004
IPC分類:7,A61K33/44,A61P1/00,A61P39/02,C01B31/10


特許情報キャッシュ

梅川 智通 高阪 務 日比 圭太 稲垣 知巳 羽鳥 東一郎 JP 3585043 特許公報(B2) 20040813 2003411829 20031210 医薬用吸着剤及びその製法 メルク・ホエイ株式会社 398064316 二村化学工業株式会社 592184876 群栄化学工業株式会社 000165000 後藤 憲秋 100079050 梅川 智通 高阪 務 日比 圭太 稲垣 知巳 羽鳥 東一郎 JP 2003013668 20030122 20041104 7A61K33/44A61P1/00A61P39/02C01B31/10 JPA61K33/44A61P1/00A61P39/02C01B31/10 7 A61K 33/44 BIOSIS(DIALOG) CA(STN) MEDLINE(STN) WPI(DIALOG) 特開2002−308785(JP,A) 特開平6−135841(JP,A) 特開平64−56141(JP,A) 特開平64−56140(JP,A) 特開昭62−84019(JP,A) 6 2004244414 20040902 18 20040604 加藤 浩 球状フェノール樹脂を原料とした活性炭からなる経口投与型の医薬用吸着剤に関する。 従来、毒物・薬物急性中毒の治療及び胃腸疾患の治療には、日本薬局方記載の薬用炭が使用されている。前記薬用炭としては、通常、木質等を主原料とした粉末活性炭が使用されており、かかる薬用炭の治療効果は、薬用炭が消化器系内において有害物質を吸着し、有害物質を保持した状態で体外に排出されることによって発揮されていた。 ところで、前出の薬用炭として使用される粉末活性炭は、単に破砕したのみであるため個々の粒子の形状は不均一であり、服用したとしても腸内での流動性は悪く、便秘等の副作用が問題となっていた。また、活性炭は一般的に疎水性が高く、尿毒症の原因物質やその前駆物質に代表されるアルギニン、プトレシン等のイオン性有機化合物の吸着に適さないという不具合も生じている。 そこで、前記の問題点を解消すべく、原料物質として木質、石油系もしくは石炭系の各種ピッチ類等を使用し球状等の樹脂化合物を形成し、これらを原料とした活性炭からなる抗ネフローゼ症候群剤が報告されている(例えば、特許文献1)。前出の活性炭にあっては、石油系炭化水素(ピッチ)等を原料物質とし、比較的粒径が均一となるように調整し、炭化、賦活させたものである。また、活性炭自体の粒径を比較的均一化するとともに、当該活性炭における細孔容積等の分布について調整を試みた経口投与用吸着剤が報告されている(特許文献2参照)。このように、薬用活性炭は、比較的粒径を均一にすることに伴い、腸内の流動性の悪さを改善したものであり、またこれと同時に細孔を調整することにより当該活性炭の吸着性能の向上を図ったものであり、多くの軽度の慢性腎不全患者に服用されている。 薬用活性炭にあっては、尿毒症の原因物質やその前駆物質に対する迅速かつ効率的な吸着が要求される。しかしながら、既存の薬用活性炭では、形状を球形のまま粒径を小さくすることは難しい。また、従来の薬用活性炭における細孔の調整は良好とは言えず、吸着性能は必ずしも十分ではないので、一日当たりの服用量を多くしなければならない。特に、慢性腎不全患者は水分の摂取量を制限されているため、少量の水分により嚥下することは患者にとって大変な苦痛となっていた。 加えて、胃、小腸等の消化管においては、糖、タンパク質等の生理機能に不可欠な化合物及び腸壁より分泌される酵素等の種々物質の混在する環境である。そのため、生理的機能に不可欠な化合物の吸着を抑制しつつ、尿毒症の原因物質の吸着を行うという選択吸着性能を有する薬用活性炭が望まれていた。特開平6−135841号公報 (第2頁)特開2002―308785号公報 (第2−6頁) この発明は、前記の点に鑑みなされたもので、便秘等の副作用を引き起こしにくく、尿毒症等の原因物質であるイオン性有機化合物の吸着に優れ、少ない服用量で十分な吸着性能を発揮し、かつ生体に必要な酵素、多糖類等の高分子化合物の吸着を抑えた医薬用吸着剤及びその製法を提供する。 すなわち、請求項1に係る発明は、球状フェノール樹脂を炭化、賦活することにより得られた活性炭であって、比表面積800〜2000m2/g、細孔容積0.2〜1.0mL/g、充填密度0.5〜0.75g/mL、平均細孔直径1.7〜2.0nm、細孔直径1.0nm以下の細孔の総細孔容積が全細孔容積の55%以上、細孔直径20〜1000nmの細孔の総細孔容積が0.04mL/g以下、最大粒子径が425μm以下、平均粒子径が350μm以下である球状の活性炭からなることを特徴とする医薬用吸着剤に係る。 請求項2の発明は、前記球状活性炭は、表面酸化物量0.35meq/g以上である請求項1に記載の医薬用吸着剤に係る。 請求項3の発明は、前記球状活性炭の粉化の前後における103μm以下の粒子量割合の差が5%以下である請求項1又は2に記載の医薬用吸着剤に係る。 請求項4の発明は、球状フェノール樹脂を窒素雰囲気中において400〜1000℃の温度で炭化する工程と、炭化された球状フェノール樹脂を800〜1000℃の温度で賦活する工程と、賦活された球状フェノール樹脂を希塩酸で洗浄する工程と、賦活された球状フェノール樹脂を希塩酸で洗浄した後で酸素及び窒素からなる混合気体中において150〜1000℃の温度で加熱処理する工程と、前記加熱処理後の球状フェノール樹脂を篩別する工程とを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬用吸着剤の製法に係る。 請求項5の発明は、前記球状フェノール樹脂はフェノール類を原料とする請求項4に記載の医薬用吸着剤の製法に係る。 請求項6の発明は、前記球状フェノール樹脂はフェノール及びフェノール核に少なくとも1つ以上のメチル基が結合したフェノール類を原料とする請求項4に記載の医薬用吸着剤の製法に係る。 本発明の医薬用吸着剤は、球状フェノール樹脂を炭化、賦活することにより得られた活性炭であって、比表面積及び細孔容積、平均細孔直径、粒子径、表面酸化物量を調整した活性炭からなるため、従来品と比較して多糖類及び酵素等のような生体に必要な高分子の吸着を抑制しつつイオン性有機化合物を選択的に吸着することができる。 特に、本発明の医薬用吸着剤は、球状フェノール樹脂を原料物質とすることにより、粒子径が数μmから2〜3mmと幅の広いほぼ真球の球状活性炭を得ることができ、さらに、従来の石油ピッチやヤシ殻、木質からなる活性炭と比して、賦活により形成される細孔径が小さくなる。そのため、分子量が比較的小さい(分子量が数十〜数百である)イオン性有機化合物の吸着に適している。また、球状フェノール樹脂を原料とする活性炭は従来の薬用活性炭に比べて硬く、粉化しにくいといった特徴がある。 本発明の医薬用吸着剤は、後述の請求項4にて詳述する製法により、球状フェノール樹脂を炭化、賦活することにより得られる活性炭である。前記球状フェノール樹脂は、請求項5の発明として規定するようにフェノール類を原料とするものであり、以下の公知の製造方法により得られたものである。まず、耐圧性の反応容器中において、アルキルアミン化合物等の縮合反応触媒、グルコシド結合を有する高分子界面活性剤等の乳化分散剤の存在下、フェノール類とアルデヒド類は高温高圧下にて縮合反応される。前記高温高圧下にて縮合反応させるとは、水の存在下、100℃を越える温度のもと、大気圧を越える圧力下において、フェノール類とアルデヒド類とを縮合反応させることをいう。当該反応は、反応系中に30%以上の水を含む水性媒体中で行なわれ、撹拌しながら昇温し高温高圧下で所定時間反応させられる。所定時間縮合反応後、高分子界面活性剤洗浄用水が加えられ、反応系は50℃以下にされる。その後、例えばヌッチェ等を用いて樹脂は取り出され、洗浄、乾燥させることにより球状フェノール樹脂が得られる。この球状フェノール樹脂は、特に、水系での撹拌時に数μmから2〜3mmに細粒化されるため、ほぼ真球に近いものとなる。 前記フェノール類としては、フェノール、クレゾール、ビスフェノールA、スチレン化フェノール、アルキルフェノール(キシレノール)、フェニルフェノール、レゾルシノール、カテコール、ピロガロール等の公知のフェノール誘導体の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。この中でも、請求項6に規定するフェノールとフェノール核に少なくとも1つ以上のメチル基が結合したフェノール類とを原料としたものがイオン性有機化合物吸着性能を向上させる上で好ましい。例えば、前記フェノール核に少なくとも1つ以上のメチル基が結合したフェノール類として、3,5−キシレノールが挙げられる。フェノール及び3,5−キシレノールの配合割合は、実施例では、フェノール100重量部に対して3,5−キシレノール20重量部である。また、前記アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、フルフラール等の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。 本発明に用いられる球状フェノール樹脂としては、特開平11−60664号や、特開2001−114852号に記載の球状フェノール樹脂が好適な例として用いることができる。球状フェノール樹脂は、芳香族の構造を有しているため、炭化率を高くすることができ、さらに賦活により表面積の大きな活性炭が得られる。賦活された球状フェノール樹脂の活性炭は、従来の木質やヤシ殻、石油ピッチ等の活性炭と比較して、細孔径が小さく、充填密度が高い。そのため、分子量が比較的小さい(分子量が数十〜数百である)イオン性有機化合物の吸着に適している。また、これらの球状フェノール樹脂は上記の従来の木質等と比して窒素、リン、ナトリウム、マグネシウム等の灰分が少なく単位質量当たりの炭素の比率が高いため、不純物の少ない活性炭を得ることができる。さらに、本発明に規定するように、原料に球状フェノール樹脂を用い、球状を維持したまま活性炭とすると、形状的に強靱で、消化器内における活性炭の流動性が向上し、従来技術として述べた薬用炭のように便秘等の副作用を引き起こす可能性が極めて低くなると考えられるため好ましい。 続いて、請求項4に記載する本発明の医薬用吸着剤の製法について以下に述べる。本発明の医薬用吸着剤の製法は、前出の球状フェノール樹脂を炭化する工程と、賦活する工程と、希塩酸で洗浄する工程と、加熱処理する工程と、篩別する工程とを含むものである。 まず、球状フェノール樹脂を炭化する工程について説明する。前記球状フェノール樹脂の炭化は、当該球状フェノール樹脂を静置式電気炉等の焼成炉内に収容し、窒素雰囲気中において加熱することによって行われる。ここでいう窒素雰囲気とは、系内が窒素ガスで置換された状態をいう。また、加熱温度は400〜1000℃、好ましくは450〜700℃である。 炭化した球状フェノール樹脂は、ロータリー式外熱炉等の加熱炉等に収容され賦活される。賦活方法は、この実施例では、水蒸気,二酸化炭素等を用いたガス賦活方法によるものとするが、これに限定されるものではない。また、このときの加熱温度は800〜1000℃である。 賦活された球状フェノール樹脂は、希塩酸によって洗浄される。希塩酸洗浄後の活性炭のpHをJIS K 1474に記載の方法により測定したとき、pHは5〜7になるまで水で十分濯ぎが行なわれる。 希塩酸で洗浄後、球状フェノール樹脂を酸素及び窒素からなる混合気体中において加熱処理することにより、活性炭の表面酸化物量を増加させることができる。このときの酸素濃度は、0.1〜21vol%である。また、このときの加熱温度は150〜1000℃、好ましくは400〜800℃である。 加熱処理をした活性炭をふるい網等を使用して篩別し、当該球状フェノール樹脂の活性炭の粒子径を調整、分別することにより、本発明の医薬用吸着剤である活性炭が得られる。この篩別によって、吸着速度が遅く吸着力を十分に発揮できない粒子径の大きい活性炭が取り除かれる。以下、上記の製法によって得られた本発明の活性炭について説明する。 前述の製法によって得られた球状の活性炭は、比表面積500〜2000m2/g、細孔容積0.2〜1.0mL/g、充填密度0.5〜0.75g/mLの物性を有する。前記活性炭は、後述の実施例1〜3のアルギニン、プトレシン、プルラン及びトリプシン吸着性能から理解されるように、尿毒症等の原因物質であるイオン性有機化合物を吸着し、かつ生体に必要な酵素、多糖類等の高分子化合物を吸着しないこととする上で上記物性とすることが好ましい。活性炭の比表面積が500m2/g以下若しくは充填密度が0.75g/mL以上であると、活性炭の細孔容積が減少し吸着できるイオン性有機化合物の容量の減少が懸念される。一方、比表面積が2000m2/g以上若しくは充填密度が0.5g/mL以下であると、活性炭の細孔直径が大きくなり、トリプシン等のタンパク質(酵素)等、プルラン等の多糖類等の高分子化合物を吸着してしまうおそれがある。また、活性炭の充填密度が小さくなり、服用する容量が多くなってしまうため好ましくない。さらに、活性炭の細孔容積が0.2mL/g以下であると、上記のとおり細孔容積が減少してイオン性有機化合物を吸着するのに十分な吸着力が得られず、一方、細孔容積が1.0mL/g以上であると、細孔容積が大きすぎて活性炭の強度が低下し球形形状を維持し難くなり、服用時又は服用後に粉化することにより便秘等の副作用を引き起こす可能性が懸念される。 前記球状活性炭は、特には、比表面積が800〜2000m2/g、平均細孔直径が1.7〜2.0nmの物性を有する。活性炭の平均細孔直径をこの範囲内に調整することによって、分子量が数十〜数百と比較的低分子であるイオン性有機化合物の吸着に優れていると同時に、分子量が数千〜数万である酵素、多糖類等の生体に必要な高分子化合物を吸着しない活性炭を得ることができる。活性炭の平均細孔直径が2.0nm以上であると、生体に必要な酵素、多糖類等の高分子を吸着する細孔が多く存在してしまうため好ましくない。また、活性炭の平均細孔直径が1.7nm以下であると、細孔容積自体が減少し、吸着力を低下させるおそれがある。 また、前記球状活性炭は比表面積が800〜2000m2/gであって、細孔直径1.0nm以下の細孔の総細孔容積が全細孔容積の55%以上の物性を有する。尿素、グアニジン等をはじめとする尿毒症毒素等のイオン性有機化合物の分子量は、数十〜数百(MW)であるため、当該イオン性有機化合物の吸着に関与する細孔直径は1.0nm以下であると考えられる。したがって、細孔直径1.0nm以下の細孔の総細孔容積が全細孔容積の55%以下であると、細孔直径が大きい細孔の割合が増加し、イオン性有機化合物の吸着に関与しない細孔が多くなるだけでなく、生体に必要な酵素、多糖類等の高分子まで吸着してしまうことになる。 さらに、前記球状活性炭の表面酸化物量は0.35meq/g以上であることが好ましい。活性炭を後述のとおり熱処理して表面酸化物量を向上させること、すなわち、活性炭表面の官能基を増加させることにより、イオン性有機化合物の吸着性能を向上させることができる。活性炭の表面酸化物は、主にカルボキシル基、水酸基等の親水性の官能基である。そのため、表面酸化物量が0.35meq/g以下であると、活性炭の親水性が低くなり、親水性であるイオン性有機化合物の吸着力が低下するという問題がある。 前記球状活性炭の最大粒子径は425μm以下であり、平均粒子径を350μm以下とすることが、後述の実施例からも明らかなように、被吸着物質であるイオン性有機化合物との接触効率を上げ吸着性能を向上させる上で望ましい。最大粒子径が425μm以上もしくは平均粒子径が350μm以上であると、被吸着物質であるイオン性有機化合物との接触効率が減少し吸着速度が低下するため、イオン性有機化合物に対する十分な吸着性能が得られないおそれがある。 前記球状活性炭の粉化の前後における103μm以下の粒子量割合の差は5%以下であることが好ましい。前記粒子量割合の差が大きいと、服用後腸内流動時に粉化し球形を保てなくなるおそれがある。 細孔直径20〜1000nmの細孔の総細孔容積は0.04mL/g以下であることが望ましい。細孔直径が20〜1000nmの細孔は、目的とする分子量が数十〜数百の尿毒症毒素等のイオン性有機化合物の吸着に適していないだけでなく、酵素、多糖類等の高分子化合物を吸着すると考えられる。したがって、細孔直径20〜1000nmの細孔の総細孔容積が0.04mL/gより大きいと、イオン性有機化合物の吸着に関与しない細孔が多くなるだけでなく、生体に必要なタンパク質(酵素)等の高分子化合物を多く吸着することとなり、好ましくない。 次に、本発明の実施例1〜9の活性炭及び比較例1〜6の活性炭を用意し、比表面積(m2/g)、細孔容積(mL/g)、平均細孔直径(nm)、細孔直径1nm以下の容積(%)、充填密度(g/mL)、平均粒子径(μm)、表面酸化物量(meq/g)、粉化量(%)を測定した。 ・比表面積(m2/g):77Kにおける窒素吸着等温線を日本ベル(株)製BELSORP18PLUSにより測定し、BET法により求めた。 ・細孔容積(mL/g):細孔直径0.6〜20nmの範囲においては、Gurvitschの法則を適用し、日本ベル(株)製BELSORP18PLUSを使用し、相対圧0.953における液体窒素換算した窒素吸着量から求めた。また、細孔直径20〜1000nmの範囲においては、島津製作所(株)製オートポア9520形を使用し、水銀圧入法により測定した。 ・平均細孔直径(nm):細孔の形状を円筒形と仮定し、下記の数1の式により求めた。 ・細孔直径1nm以下の容積(%):細孔分布を求め、細孔直径1.0nm以下の細孔の総細孔容積の、全細孔容積に対する割合を算出することにより求めた。細孔分布は、日本ベル(株)製BELSORP18PLUSを使用し、細孔直径2nm以上の範囲については上記窒素吸着等温線よりD−H法(Dollimore−Heal法)によって解析し、細孔直径2nm以下の領域については、上記窒素吸着等温線に基づきtプロットによりMP(マイクロポア)法によって解析した。 ・充填密度(g/mL):JIS K 1474に記載の方法により求めた。 ・平均粒子径(μm):島津製作所(株)製SALD3000Sを使用し光散乱法により求めた。 ・表面酸化物量(meq/g):Boehmの方法を適用し、0.05N水酸化ナトリウム水溶液中において活性炭を振とうし、濾過し、その濾液を0.05N塩酸水溶液で滴定した値に基づいて測定した。 ・粉化量(%):球状活性炭の粉化の前後における103μm以下の粒子量割合の差を求め、これを粉化量とした。すなわち、活性炭0.5gを50mlの水に添加し、スターラーで3時間激しく撹拌し、撹拌後の活性炭の平均粒子径を島津製作所(株)製SALD3000Sを使用し光散乱法により求め、粒度分布の103μm以下の粒子量割合を読み取り、これを粉化後の103μm以下の粒子量割合(%)とし、下記の数2の式により粉化量(%)を求めた。 上記の実施例1〜9の活性炭及び比較例1〜6の活性炭について、イオン性有機化合物及び多糖類及び酵素に対する吸着性能を調べるべく、以下の方法により吸着性能試験を行った。なお、イオン性有機化合物吸着性能試験の被吸着物質としてアルギニン及びプトレシンを、多糖類吸着性能試験の被吸着物質としてプルランを、酵素吸着性能試験の被吸着物質としてトリプシンを使用した。 イオン性有機化合物吸着性能は、イオン性有機化合物としてアルギニン及びプトレシンを用いて以下の方法により求めた。まず、アルギニン吸着性能については、アルギニン溶液を用い、実施例及び比較例の活性炭を作用させ、当該溶液中のTOC(全有機体炭素)の濃度から吸着されたアルギニンの質量を算出して求めた。すなわち、被吸着物質としてアルギニンをpH7.4リン酸緩衝液に溶解し、アルギニンの濃度が0.1g/Lであるアルギニン標準溶液を作成し、前記アルギニン標準溶液50mLに実施例及び比較例の活性炭を0.5g及び0.25g添加し、それぞれを37℃の温度で3時間接触振とうした後、これらを濾過し、全有機体炭素計(島津製作所(株)製「TOC5000A」)により各濾液のTOC濃度(mg/L)を測定し、各濾液中のアルギニンの質量を算出した。各濾液について、アルギニン標準溶液中のアルギニンの質量から濾液中のアルギニンの質量を引いてアルギニン吸着量をそれぞれ求め、当該アルギニン吸着量を、使用した活性炭の質量(0.5g及び0.25g)でそれぞれ除して重量当たりのアルギニン吸着量とした。体積当たりのアルギニン吸着量は、重量当たりのアルギニン吸着量と充填密度との積とした。 次に、プトレシン吸着性能については、プトレシン溶液を用い、実施例及び比較例の活性炭を作用させ、当該溶液中のTOC(全有機体炭素)の濃度から吸着されたプトレシンの質量を算出して求めた。すなわち、被吸着物質としてプトレシンをpH7.4リン酸緩衝液に溶解し、プトレシンの濃度が0.1g/Lであるプトレシン標準溶液を作成し、前記アルギニン標準溶液の代わりにこのプトレシン標準溶液を使用した以外は前述のアルギニン吸着性能試験と同様の処理を行い、重量当たりのプトレシン吸着量及び体積当たりのプトレシン吸着量を求めた。 多糖類吸着性能については、多糖類としてプルラン(分子量約11800)溶液を用い、実施例及び比較例の活性炭を作用させ、当該溶液中のTOC(全有機体炭素)の濃度から吸着されたプルランの質量を算出して求めた。すなわち、被吸着物質としてプルランを蒸留水に溶解し、プルランの濃度が0.1g/Lであるプルラン標準溶液を作成し、前記アルギニン標準溶液の代わりにこのプルラン標準溶液を使用した以外は前述のアルギニン吸着性能試験と同様の処理を行い、重量当たりのプルラン吸着量及び体積当たりのプルラン吸着量を求めた。 酵素吸着性能については、酵素の一例としてトリプシン溶液に実施例及び比較例の活性炭を作用させ、当該溶液中のTOC(全有機体炭素)の濃度から吸着されたトリプシンの質量を算出して求めた。すなわち、被吸着物質としてトリプシンを蒸留水に溶解し、トリプシンの濃度が0.1g/Lであるトリプシン標準溶液を作成し、前記トリプシン標準溶液50mLに実施例及び比較例の活性炭を0.25g及び0.125g添加し、これを21℃の温度で3時間接触振とうした後、濾過し、前記全有機体炭素計により濾液のTOC濃度(mg/L)を測定し、濾液中のトリプシンの質量を算出した。トリプシン標準溶液中のトリプシンの質量から濾液中のトリプシンの質量を引いてトリプシン吸着量を求め、当該トリプシン吸着量を、使用した活性炭の質量(0.25g及び0.125g)で除して重量当たりのトリプシン吸着量とした。体積当たりのトリプシン吸着量は、重量当たりのトリプシン吸着量と充填密度の積とした。 (実施例1) 球状フェノール樹脂(群栄化学工業(株)製「マリリンHF―MDC」)800gを金属製レトルト容器(内容量1.5L)に収容し、静置式電気炉を用いて、窒素雰囲気中において600℃の温度で4時間加熱することによって炭化した。前記炭化した球状フェノール樹脂炭化物を、ロータリー式外熱炉を用いて、水蒸気中において950℃で1.5時間加熱することによって賦活した後、0.1%塩酸水溶液で洗浄した。洗浄後の活性炭について、pHをJIS K 1474に記載の方法で測定した際、活性炭のpHは5〜7となるように水で濯いだ。そして、水洗後の活性炭をロータリー式外熱炉により、酸素濃度を3vol%に調整した酸素―窒素混合気体中において600℃の温度で3時間加熱処理した。そして、これを目開き119−200mesh(75〜125μm)のJIS Z 8801に記載の篩を用いて篩別し、実施例1の活性炭を得た。 (実施例2) 実施例1における水蒸気賦活の時間を2時間とした以外は、実施例1と同様の処理を行い実施例2の活性炭を得た。 (実施例3) 実施例1における水蒸気賦活の時間を3時間とした以外は、実施例1と同様の処理を行い実施例3の活性炭を得た。 (比較例1) また、比較例1として、実施例1における水蒸気賦活を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の処理を行い比較例1の活性炭を得た。 (比較例2) 実施例1における水蒸気賦活の時間を5時間とした以外は、実施例1と同様の処理を行い比較例2の活性炭を得た。 実施例1〜3及び比較例1,2の活性炭について、前述の測定方法により、比表面積(m2/g)等の物理化学的性質と、アルギニン、プトレシン、プルラン及びトリプシンに対する吸着性能とを調べた。これらの結果は以下の表1及び表2のとおりである。 上記表1及び表2から明らかなように、実施例1〜3については、重量当たりのアルギニン及びプトレシン吸着性能、体積当たりのアルギニン及びプトレシン吸着性能ともに十分な吸着性能を発揮することが確認された。また、プルラン及びトリプシンの吸着量(重量当たりの吸着量、体積当たりの吸着量ともに)は比較例2に比べて吸着が抑制されていることがわかる。比較例1については、重量当たりのアルギニン及びプトレシン吸着性能が実施例と比較して減少している。これは、水蒸気賦活を行わなかったため活性炭表面に充分な細孔が発達しなかったことが原因であると考えられる。一方、比較例2については、体積当たりのアルギニン及びプトレシン吸着性能が実施例に比べて減少しているが、これは、比表面積を増加させたことにより活性炭の充填密度が減少したためであると考えられる。加えて、比較例2は、プルラン及びトリプシンの吸着量(重量当たりの吸着量、体積当たりの吸着量ともに)が実施例1〜3と比較して増加しているが、これは、比表面積及び細孔容積が大きくなると平均細孔直径も大きくなり、細孔直径1.0nm以下の細孔が減少し細孔直径1.0nm以上の細孔が増加することにより、分子量の大きい多糖類や酵素類が吸着されやすくなったためであると考えられる。 次に、活性炭の粒子径と吸着性能との関係を調べるべく、実施例4〜6として、使用する篩の目開きを変えることにより平均粒子径(μm)を変化させた活性炭を作成した。 (実施例4) 実施例2において篩別に使用した篩の代わりに目開き36−70mesh(425〜212μm)の篩を使用した以外は、実施例2と同様の処理を行い実施例4の活性炭を得た。 (実施例5) 実施例2において篩別に使用した篩の代わりに目開き70−119mesh(212〜125μm)の篩を使用した以外は、実施例2と同様の処理を行い実施例5の活性炭を得た。 (実施例6) 実施例2において篩別に使用した篩の代わりに目開き200mesh(75μm)の篩を使用した以外は、実施例2と同様の処理を行い実施例6の活性炭を得た。 実施例4〜6についても、前述の測定方法により、比表面積(m2/g)等の物理化学的性質と、アルギニン、プトレシン、プルラン及びトリプシンに対する吸着性能とを調べた。これらの結果は表3及び表4のとおりである。 表3及び表4の実施例2及び4〜6の結果が示すように、篩網を細かくし、得られる活性炭の平均粒子径(μm)を小さくするほど、アルギニン及びプトレシン吸着性能が向上することが分かる。 また、活性炭の表面酸化物量と吸着性能との関係を調べるために、比較例3,4及び実施例7として、表面酸化物量を変化させた活性炭を作成した。 (比較例3) 実施例3における酸素―窒素混合気体中での加熱処理を行わなかった以外は、実施例3と同様の処理を行い比較例3の活性炭を得た。 (比較例4) 実施例3における酸素―窒素混合気体中での加熱処理の時間を1時間とした以外は、実施例3と同様の処理を行い比較例4の活性炭を得た。 (実施例7) 実施例3における酸素―窒素混合気体中での加熱処理の時間を2時間とした以外は、実施例3と同様の処理を行い実施例7の活性炭を得た。 比較例3,4及び実施例7についても、前述の測定方法により、表面酸化物量(meq/g)と、アルギニン及びプトレシンに対する吸着性能とを調べた。これらの結果は表5及び表6のとおりである。 表5及び表6から分かるように、酸素―窒素混合気体中で加熱処理時間を延長することによって、表面酸化物量を増加させるほど、アルギニン及びプトレシンの吸着性能の向上が明らかになった。 次に、活性炭の原料となる球状フェノール樹脂を構成するフェノール類について、その種類を調整し、得られる活性炭の性能差を調べた。 (実施例8) これまでの実施例において用いた球状フェノール樹脂「マリリンHF―MDC」では、フェノール類としてフェノールのみを用いたものである。これに対して、フェノール100重量部に対してアルキルフェノールの中から3,5−キシレノール20重量部をさらに添加し、前出の「マリリンHF―MDC」と同様の条件下で他の球状フェノール樹脂を得た。前記他の球状フェノール樹脂を実施例2と同様の条件下にて処理を行い、実施例8の活性炭を得た。 (実施例9) 実施例8と同種のフェノール類を用い、実生産レベルにて活性炭を製造した。フェノール100重量部に対して3,5−キシレノール20重量部をさらに添加し、実施例8と同種の球状フェノール樹脂を得た。前記球状フェノール樹脂260kgをロータリー式外熱炉(内容量5kL)に収容し、窒素雰囲気中において600℃の温度で4時間加熱することによって炭化した。前記炭化した球状フェノール樹脂炭化物を、引き続き水蒸気中において850℃の温度で16時間加熱することによって賦活した後、0.1%塩酸水溶液で洗浄した。洗浄後の活性炭のpHをJIS K 1474に記載の方法で測定した際、活性炭のpHは5〜7となるように水で濯いだ。水洗後の活性炭を上記ロータリー式外熱炉により酸素濃度を3vol%に調整した酸素―窒素混合気体中において600℃の温度で3時間加熱処理した。そして、これを目開き119−200mesh(75〜125μm)のJIS Z 8801に記載の篩を用いて篩別し、実施例9の活性炭を得た。 実施例8及び実施例9についても同様に、前述の試験方法により、比表面積(m2/g)等の物理化学的性質と、アルギニン、プトレシン、プルラン及びトリプシンに対する吸着性能とを調べた。これらの結果は表7及び表8のとおりである。 上記の表7及び表8から明らかなように、実施例8及び実施例9の活性炭は、実施例2の活性炭と比較して、充填密度が大きく、アルギニン及びプトレシン吸着性能(重量当たりの吸着量、体積当たりの吸着量ともに)が向上することが分かった。 さらに、本発明品と従来の炭素吸着剤との吸着性能を比較するために、比較例5として慢性腎不全治療薬のクレメジン(呉羽化学工業株式会社製「クレメジン細粒」)を、比較例6として市販の日本薬局方記載の薬用炭(健栄製薬株式会社製「日局薬用炭」)を使用し、前述の測定方法により、比表面積(m2/g)等の物理化学的性質と、アルギニン、プトレシン、プルラン及びトリプシンに対する吸着性能とを調べた。これらの結果は下記の表9及び表10のとおりである。 表9及び表10の結果から明らかなように、本発明の医薬用吸着剤は、イオン性有機化合物を選択的に吸着することができる。 次に、実施例2、実施例4、実施例8、比較例5について、前述したとおり、活性炭0.5gを50mlの水に添加し、3時間撹拌し、撹拌後の活性炭の平均粒子径を求め、粒度分布の103μm以下の粒子量割合から粉化量を測定した。粉化量及び粉化試験前後の平均粒子径を測定した結果は表11のとおりである。 表11に示すように、実施例の活性炭は、比較例5と比べて粉化量が極めて低いことが分かる。また粉化試験後の平均粒子径についても粉化試験前とほぼ同等の数値を示した。よって、本発明の医薬用吸着剤は従来の薬用活性炭と比較して粉化しにくく、腸内においても粉化されにくいと考えられる。 以上の実施例を勘案すると、本発明の医薬用吸着剤は、活性炭の細孔の発達が十分であるため、従来の薬用活性炭と比較して少ない服用量で十分な吸着性能を発揮することが推定される。 球状フェノール樹脂を炭化、賦活することにより得られた活性炭であって、比表面積800〜2000m2/g、細孔容積0.2〜1.0mL/g、充填密度0.5〜0.75g/mL、平均細孔直径1.7〜2.0nm、細孔直径1.0nm以下の細孔の総細孔容積が全細孔容積の55%以上、細孔直径20〜1000nmの細孔の総細孔容積が0.04mL/g以下、最大粒子径が425μm以下、平均粒子径が350μm以下である球状の活性炭からなることを特徴とする医薬用吸着剤。 前記球状活性炭は、表面酸化物量0.35meq/g以上である請求項1に記載の医薬用吸着剤。 前記球状活性炭の粉化の前後における103μm以下の粒子量割合の差が5%以下である請求項1又は2に記載の医薬用吸着剤。 球状フェノール樹脂を窒素雰囲気中において400〜1000℃の温度で炭化する工程と、 炭化された球状フェノール樹脂を800〜1000℃の温度で賦活する工程と、 賦活された球状フェノール樹脂を希塩酸で洗浄する工程と、 賦活された球状フェノール樹脂を希塩酸で洗浄した後で酸素及び窒素からなる混合気体中において150〜1000℃の温度で加熱処理する工程と、 前記加熱処理後の球状フェノール樹脂を篩別する工程とを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬用吸着剤の製法。 前記球状フェノール樹脂はフェノール類を原料とする請求項4に記載の医薬用吸着剤の製法。 前記球状フェノール樹脂はフェノール及びフェノール核に少なくとも1つ以上のメチル基が結合したフェノール類を原料とする請求項4に記載の医薬用吸着剤の製法。


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