タイトル: | 特許公報(B2)_ストレプトコッカス・ピオゲネス菌に起因する感染症の診断用プローブ |
出願番号: | 2003409064 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C12Q 1/68,C12N 15/09,G01N 33/53,G01N 33/566,G01N 33/569 |
上山 浩 福田 加奈子 芥子 宏行 松久 明生 JP 3914914 特許公報(B2) 20070209 2003409064 20031208 ストレプトコッカス・ピオゲネス菌に起因する感染症の診断用プローブ 扶桑薬品工業株式会社 000238201 角田 嘉宏 100065868 古川 安航 100106242 上山 浩 福田 加奈子 芥子 宏行 松久 明生 20070516 C12Q 1/68 20060101AFI20070419BHJP C12N 15/09 20060101ALI20070419BHJP G01N 33/53 20060101ALN20070419BHJP G01N 33/566 20060101ALN20070419BHJP G01N 33/569 20060101ALN20070419BHJP JPC12Q1/68 AC12N15/00 AG01N33/53 MG01N33/566G01N33/569 F C12Q 1/00− 1/70 C12N 15/00−15/90 BIOSIS/WPI(DIALOG) GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq PubMed JSTPlus(JDream2) 国際公開第96/08582(WO,A1) 米国特許第5232831(US,A) J.Clin.Microbiol.,Vol.31,No.11(1993),p.2996-3000 1 1997071077 19970325 2004135677 20040513 11 20031208 三原 健治 本発明は、感染症疾患の原因菌、特に、咽頭炎、リウマチ熱、腎炎、丹毒、猩紅熱、敗血症などの起因菌であるストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)菌の検出および同定に有用なプローブに関する。 病原微生物の感染によって起こる疾患を総称して感染症というが、病理学的に、感染とは病原性の微生物(以下、「菌」と称する)が生体内に侵入し、増殖の足がかりを確立することを指し、生体内での菌の増殖に起因する発症は、宿主の抵抗力と菌の毒力との相互関係に依存するものである。 連鎖球菌(Streptococcus)は、連鎖状に配列する通性若しくは偏性嫌気性のグラム陽性球菌である。血液寒天培地上に発育したコロニーの周囲の溶血環の性状によりα・β・γの3型に分けられ、さらに菌体の保有するC多糖体の抗原性(Lancefieldの分類)によってA〜Vまでの20群(IとJを除く)に分類されている。 ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)菌は、β型の溶血(完全溶血)を示し、Lancefieldの分類でA群に属する連鎖球菌の1種であり、ヒトの咽頭炎、扁桃炎、猩紅熱、丹毒、産褥熱、敗血症などの起因菌として臨床上重要である。また、感染後にpoststreptococcal diseasesと呼ばれるアレルギー疾患であるリウマチ熱や腎炎などを続発することも知られている。さらに、近年はストレプトコッカス・ピオゲネス菌の感染により、筋炎を伴い、重篤な敗血症性ショックを呈する症例(劇症型A群連鎖球菌感染症)も報告されている。 ストレプトコッカス・ピオゲネス菌による咽頭炎は、著明な咽頭発赤や頸部リンパ節腫脹を伴う場合が多く、咽頭痛を訴える頻度も高いので、臨床症状から本疾患を疑うことは可能である。しかしながら、必ずしも明瞭な臨床症状を呈しない場合もあること、合併症の続発を防ぐためにも最適の化学療法を行う必要があると同時に、不必要な抗菌剤の投与を避けることが望ましいことなどから、細菌学的な迅速診断が必要である。 また、劇症型A群連鎖球菌感染症は、50%以上の症例で重症の壊死性筋膜炎を合併するとの報告もあり、急激に多臓器不全に進行し、死の転機を取ることも少なくない。 一般に、ストレプトコッカス・ピオゲネス菌は、アンピシリンやセファクロルなどのβ−ラクタム剤に高い感受性を示すことが知られているが、エリスロマイシンには高度耐性株が約30%存在し、オフロキサシンにも耐性株が出現しているとの報告もあることから、マクロライド系やニューキノロン系薬剤使用時には注意が必要である。 以上のように、ストレプトコッカス・ピオゲネス菌に由来する感染症においては、的確な早期診断を実施し、最適の抗菌剤を選択することが重要である。 通常の生物学的手法においては、(1)臨床症状の検討、(2)検体の培養、および(3)培養物からのストレプトコッカス・ピオゲネス菌の分離・同定が必須であり、これらの項目が確認されて初めて治療方針が決定される。 ストレプトコッカス・ピオゲネス菌の同定には、通例、ヒツジやウマなどの脱線維血液を5%添加した血液寒天平板培地に検体を直接塗抹培養し、培地上に発育したコロニー周囲の溶血環の性状を観察する。 しかしながら、実際には、起因菌の確定は困難を伴うのが通常である。すなわち、コロニーの形状は培養条件により大きく異なり、特定が困難な場合が多い。また、菌の培養に長時間を有する上に、薬剤感受性成績の結果を得るまでには、さらに3〜4日の培養が必要であり、迅速な診断が不可能である。加えて、感染症を疑われた時点で大量に抗生物質を投与されている場合には、たとえ検体中に菌が含まれていても、増菌・増殖が抑えられている場合があり、実際には、これらの検体からの菌を培養できる可能性は極めて低いものとなっている。 さらに、サブルーチンとしての方法に、菌体成分や菌の代謝産物の機器分析法(非特許文献1)、特異抗体を利用した方法(特許文献1) 、さらには、DNAの特異性を利用したハイブリダイゼーションによる方法(特許文献2) 等があるが、いずれも、菌の分離及び増菌培養が必須とされている。 一方、感染症における食細胞の機能に着目したものとして、血液試料中の白血球成分が集中しているバフィーコート(Buffy coat)の塗抹染色標本を検鏡する方法がある。一般にバフィーコート標本で菌が検出される頻度は、成人菌血症では耳朶血の頻度と同様に30%程度にとどまるが、新生児の場合、10例中7例(70%)で菌を検出している報告もあり、塗抹標本の検鏡により末梢血中菌の有無に関する情報は治療における大きな指針となっている。特開昭60−224068号公報特表昭61−502376号公報辨野義己、「ガスクロマトグラフィーによる細菌同定の迅速化」、臨床検査、vol.29, No.12, pp.1618-1623 、1985年11月、医学書院 上記従来技術においては、その前処理操作として、少なくとも検体からの菌の選択的分離に1〜2日、増菌に1日、固定操作に1日以上、合計で3〜4日は十分かかり、現実にはこの培養を菌が発育するまで続けることになるので、前処理操作に一週間以上要する場合が多く、さらに、菌の培養時に疾患の原因菌以外の菌が混入しても区別できない場合もある。 そして重要なことは、前述した事情から、培養すべき検体中の多くの菌は食細胞に取り込まれ、抗生物質投与のため死んでいるか静止状態にあるため、培養条件下でも増殖できる菌の数は少なく、臨床検体を用いた培養による実際の菌の検出率は10%前後と、非常に低い。換言すれば、臨床的にストレプトコッカス・ピオゲネス感染症の可能性が疑われた患者の血液をさらに一昼夜以上培養して検査しても結局、その90%は菌の存在すら判明しないのが現状である。 このような状況から、現在は起因菌の確定と、それに即した抗生物質の選択が要求されているにもかかわらず、臨床的にストレプトコッカス・ピオゲネス感染症の可能性が疑われた段階で、検出結果が出るのを待たずに治療、すなわち、起因菌不明のまま、最も広範囲な種類の菌に有効な抗生物質を投与し、1、2日間様子を見て、効果が現れないと別の抗生物質に切換えるという試行錯誤的な方法に頼っているのである。 そこで、最近、1)ラテックス凝集法、2)共同凝集法、3)酵素免疫測定法、4)金粒子測定法、5)リポソーム免疫測定法などの手法を用いて、ストレプトコッカス・ピオゲネス菌を免疫学的に検出する迅速診断法が開発されている。これらはいずれもストレプトコッカス・ピオゲネス菌体表層のC多糖体を亜硝酸若しくは酵素を用いて抽出し、これを抗原として検出するものである。 しかしながら、上記の免疫学的検査法は、測定結果が培養法による結果と一致しない、すなわち、偽陽性や偽陰性を示す場合があることや、手技が煩雑であるなどの問題点がある。 また、抗原抗体反応を利用する診断方法の特性上、ストレプトコッカス・ピオゲネス菌以外のA群抗原保有菌(例えば、ストレプトコッカス・アンジノーサス(Streptococcus anginosus)菌など)も検出してしまい、菌種の特異性に劣るという欠点がある。 一方、劇症型A群連鎖球菌感染症の臨床診断のために診断基準も提案されている(JAMA、第269巻、390〜391頁、1993年)が、これは早期診断には適していない。 このように、ストレプトコッカス・ピオゲネス感染症は、迅速・確実な診断が求められる疾患であるにもかかわらず、従来の診断方法では十分対応できていなかったのが実情である。 本発明は、上記当該技術分野が抱えている課題に鑑みて完成されたものであり、その要旨とするところは、感染症原因菌、特に、ストレプトコッカス・ピオゲネス菌が保有するDNAまたはRNAと特異的な反応性を有するプローブ、および、当該プローブに含まれるストレプトコッカス・ピオゲネス菌が本質的に保有している遺伝子部分の塩基配列を解明することにある。 すなわち、本発明のプローブにより、例えば、食細胞に取り込まれて破壊されつつある菌においてなお維持されている菌のDNAを、ハイブリダイゼーション法を用いて、その特異性に基づいて有為に検出でき、これにより、菌を培養・増殖せずに、感染症疾患の原因菌が迅速かつ確実に検出できる。また、これらのプローブの塩基配列情報を参照してプライマーをデザインすれば、ハイブリダイゼーションを行わなくとも、PCR法によるDNAの増幅により、感染症原因菌を同定することができる。 また、ハイブリダイゼーションに用いるプローブを非放射性のもの、例えば、ビオチン化したプローブを用いれば、放射性同位元素使用施設のない一般検査室でも光学顕微鏡を用いて検出でき、検出作業が迅速、簡便に行える。 本発明のプローブを用いれば、例えば、食細胞に取り込まれた感染症原因菌を、ハイブリダイゼーション法を用いて、増殖することなく直接検出し、かつ菌を迅速にしかも正確に同定できる。すなわち、本発明のプローブを用いた診断では、1回分の検体で菌の同定まで行え、診断に要する時間も従来法の3〜4日(検出される率は低い) から、約1〜2日と飛躍的に短縮でき、しかもその検出率は格段と高い。 それ故、ストレプトコッカス・ピオゲネス感染症の治療に対して画期的な指針を与えるばかりでなく、感染症患者に早期の内に有効な治療が実施でき、ひいては死亡率の低減も期待される。 また、感染症疾患起因菌の中でも、特に、ストレプトコッカス・ピオゲネス菌が保有するDNAに特異的に反応するプローブの塩基配列を明らかにしたことにより、これらプローブを人工的に調製することを可能とした。さらに、解析した塩基配列の情報の一部を利用して作製したプライマーを用いて、臨床検体に含まれる感染症原因菌のDNAを、PCR法によって増幅して、原因菌の迅速な診断に役立てることができる。 さらに、臨床検体に含まれるGenomic DNAの塩基配列と本発明によって解析された塩基配列とを比較参照することにより、感染症起因菌種の迅速な同定が行える。 以下に、感染症疾患起因菌であるストレプトコッカス・ピオゲネス菌に由来するプローブの実施例を示す。ストレプトコッカス・ピオゲネス菌由来DNAプローブ (1) ストレプトコッカス・ピオゲネス菌由来DNAプローブの調製 臨床菌株ストレプトコッカス・ピオゲネス菌をBHI (Brain Heart Infusion)培地で一晩培養し、培養菌体を集菌して、溶菌ステップでN-Acetylmuramidase SG を加えた、 Saito-Miura変法("Preparation of transforming deoxyribonucleicacid by phenol treatment", Biochem. Biophys. Acta vol. 72, pp.619-629 (1963))に準じて、Genomic DNAを抽出した。 抽出したDNAを、制限酵素HindIIIで完全消化し、ベクターpGEM-3Zにランダムクローニングし、得られたクローンからストレプトコッカス・ピオゲネス菌特有の、すなわち、天然のストレプトコッカス・ピオゲネス菌が保有するDNAとの特異反応性を示したDNA断片を含む6種のプローブを選抜した。 そして選抜された各プローブを、プローブSP-6-28、プローブSP-7-44、プローブSP-14-1、プローブSP-26-36、プローブSP-26-46、およびプローブSP-55-3と命名した。 (2) ストレプトコッカス・ピオゲネス菌由来DNAプローブの種特異性の検討 各プローブと各種感染症原因菌株のDNAとの反応性を、以下の方法により検討した。 まず、検討対象菌株として、下記表1に列挙した臨床単離株および寄託菌株を準備した。なお、表1中の、ヒト・ゲノミックDNAおよび対照試料の入手源として、4名の健康な成人男子から採取した白血球、ならびにプラスミド pGEM-3Zを含んだ Escherichia coli K-12, JM109形質転換体をそれぞれ準備した。 そして、各臨床菌株を実施例1(1) に記載の方法に従って、各菌株が保有するDNAを抽出し、この抽出したDNAの一定量(例えば、10〜100 ng)をナイロンフィルターにスポットし、アルカリ変性したものをドット・ブロット・ハイブリダイゼーションの試料とした。なお、ヒト・ゲノミックDNA試料は、前出のSaito-Miura変法に、先に入手した白血球を適用することで調製した。一方、対照試料は、後述する実施例2(1) に記載のプラスミドDNAの調製方法に、先に入手したプラスミド pGEM-3Zを含んだEscherichia coli K-12, JM109 形質転換体を適用することで調製した。次いで、Digoxigenin-11-dUTP (BRL社製) でラベルしたストレプトコッカス・ピオゲネス菌由来のDNAプローブで、マニアティスのマニュアル(T. Maniatis,et al., "Molecular Cloning (A Laboratory Manual Second Edition)", Cold Spring Harbour Laboratory (1989))に従い、45%ホルムアミド、5×SSC、42℃の条件下で、終夜ハイブリダイゼーションを実施した。 終夜ハイブリダイゼーションを終えた試料を、マニュアルに従い、55℃にて 0.1×SSC 、0.1%SDSによる20分間の洗浄を2回行った後に、 Anti-Dig-ALP conjugates(BRL社製) で検出・発色させ、ハイブリダイゼーションの状況を確認した。得られた結果は、図1に示すとおりである。図1(a)は、ドット・ブロット・ハイブリダイゼーションを行った各フィルターにスポットしておいたDNAの菌株の配置を示し、図1(b)は上記のそれぞれのプローブSP-6-28、SP-7-44、SP-14-1、SP-26-36、SP-26-46およびSP-55-3を用いてハイブリダイゼーションを行ない発色させた後の結果を示す。 各プローブと各臨床菌株のDNAとの反応性に関する実験結果を、下記表2に示した。 上記図1および表2から明らかなように、いずれのプローブもストレプトコッカス・ピオゲネス菌に由来するDNAに対してのみ反応性を示し、ストレプトコッカス属以外の菌種由来のDNAはもちろん、ストレプトコッカス属の他の菌種由来のDNAに対しても反応性(ハイブリッドの形成)が認められず、その種特異性が確認された。塩基配列の解析 実施例1にて種特異性が確認されたDNAプローブ(計6本)の塩基配列を下記の方法に従って決定した。 (1) プラスミドDNAの調製 サブクローン化された(塩基配列を決定すべき)挿入断片を pGEM-3Z(Promega)に含んだEscherichia coli K-12, JM109形質転換体を、5mlの Luria-BactaniMedium (bacto-tryptone, 10g/1L; bacto-yeast extract, 5g/1L; NaCl, 10g/1L; 5N NaOH でpH 7.0に調整)に植菌し、一晩培養した。 培養液を遠心分離(5,000rpm,5min.)して集菌した。沈澱物に2.5mg/mlの濃度でリゾチーム(Sigma) を含む 50mM グルコース/50mM Tris-HCl(pH8.0)/10mM EDTA 溶液を 100μl 加え、室温で5分間放置した。得られた懸濁液に1%の濃度でドデシル硫酸ナトリウム(Sigma)を含む 0.2M水酸化ナトリウム水溶液を加えて混合した。5M酢酸カリウム水溶液(pH4.8) 150μl をさらに加えて混合し、15分間氷冷した。 そして、遠心分離(15,000rpm, 15min.)して得た上清を、フェノール/CHCl3処理し、上清に2倍量のエタノールを加え、さらに遠心分離(12,000rpm, 5min.)して沈澱を得た。この沈澱物を、10mM Tris-HCl (pH7.5)/0.1mM EDTA溶液 100μl に溶解し、10mg/ml RNaseA(Sigma)溶液を加え、室温で15分間放置した。 この調製物に 0.1M 酢酸ナトリウム水溶液(pH4.8) を 300μl 加え、フェノール/CHCl3処理し、上清にエタノールを加えて沈澱を得た。この沈澱物を乾燥し、10μl の蒸留水に溶解したものをDNA試料とした。 (2) 塩基配列決定の前処理 塩基配列決定の前処理を AutoRead(登録商標) Sequencing Kit (Pharmacia)を用いて行った。 すなわち、鋳型となるDNAが32μl 溶液中に5〜10μg の濃度になるように調整した。1.5mlのミニチューブ(エッペンドルフ)に、鋳型DNA 32μl を移し、2M水酸化ナトリウム水溶液を8μl 加えて穏やかに混合した。そして、軽く遠心した後、室温で10分間放置した。 3M酢酸ナトリウム(pH4.8) 7μl と蒸留水4μl を加え、さらにエタノールを 120μl 加えて混合し、エタノール・ドライアイス上で15分間放置した。そして、15分間遠心分離して沈澱したDNAを集め、注意しながら上清を除去した。得られた沈澱物を70%エタノールで洗浄し、10分間遠心分離した。そして、注意しながら再度上清を除去し、減圧条件下で沈澱物を乾燥した。 沈澱物を蒸留水10μl に溶解し、螢光性のプライマー〔Fluorescent Primer, Universal Primer; 5'-Fluorescein-d[CGACGTTGTAAAACGACGGCCAGT(配列番号:7)]-3'(1.6pmol/μl; 0.42 A260 unit/ml); Reverse Primer, 5'-Fluorescein-d[CAGGAAACAGCTATGAC(配列番号:8)]-3'(2.1pmol/μl; 0.42 A260 unit/ml) 〕2μl (0.42 A260 unit/ml, 4〜6pmol)とアニーリング用緩衝液2μl を加え穏やかに混合した。 そして、軽く遠心した後、65℃で5分間熱処理を行い、素早く37℃条件下に置き、そこで10分間保温した。保温後10分以上室温で放置し、軽く遠心した。そして、延長用緩衝液1μl とジメチルスルホキシド3μl を加えたものを試料とした。 4本のミニチューブにA、C、GおよびTと記入し、それぞれのチューブにAMix (ddATPをdATP、dCTP、c7dGTPおよびdTTPと共に溶解したもの) 、C Mix (ddCTP をdATP、dCTP、c7dGTPおよびdTTPと共に溶解したもの) 、G Mix (ddGTP をdATP、dCTP、c7dGTPおよびdTTPと共に溶解したもの) およびT Mix(ddTTPをdATP、dCTP、c7dGTPおよびdTTPと共に溶解したもの) を 2.5μl ずつ分注した。なお、それぞれの溶液は使用時までは氷中で保存し、使用時には37℃で1分間以上保温してから使用した。 希釈したT7DNA ポリメラーゼ(Pharmacia;6〜8units/2μl)2μl をDNA試料に加え、ピペッティングもしくは穏やかな混合により、完全に混合した。混合後すぐに、この混合液を 4.5μl ずつ保温しておいた4種の溶液に分注した。なお、分注に際しては新しいチップを用いた。 37℃で5分間保温し、停止溶液を5μl ずつそれぞれの反応液に加えた。この分注においても、新しいチップを用いた。90℃で2〜3分間保温し、すぐに氷中で冷却した。電気泳動には1レーンあたり4〜6μl を泳動した。 (3) 塩基配列の決定 実施例1および2に開示した、ストレプトコッカス・ピオゲネス菌が保有するDNAに対して特異性を有するプローブそれぞれの塩基配列の決定を、泳動温度45℃、泳動時間6時間として、A.L.F.DNA Sequencer システム(Pharmacia) を用いて行った。各上流と下流から明らかになった配列から順次プライマーをデザインし、上記の操作を繰り返した。 その結果、プローブSP-6-28(配列番号:1)、プロープSP-7-44(配列番号:2)、プローブSP-14-1(配列番号:3)、プローブSP-26-36(配列番号:4)、プローブSP-26-46(配列番号:5)、およびプローブSP-55-3(配列番号:6)それぞれの塩基配列の全容が明らかになった。 上記したように、本発明は、所期の目的であった感染症診断用プローブを提供するのみならず、PCR用プライマー作製の指針として、また臨床検体に含まれるGenomic DNAとの比較参照用に適した標準配列として優れた有用性が期待され、さらには感染症疾患起因菌が保有するDNAに特異的に反応するプローブの今後の探究・開発における貴重な手がかりをもたらすなどの優れた効果を奏するものである。 また、本願出願にて開示した塩基配列は、臨床分離株のGenomic DNAをランダムにクローニングして得られたものであり、それ故、本発明の塩基配列の有用性はその相補鎖にまで及ぶものである。 さらに、野性株が保有するDNAに変異部分が存在することは当然考えられるが、上記実施例の開示から明らかなように、当該DNA変異部分が、感染症診断のためのハイブリダイゼーションへ利用する際の本発明プローブの特異性、あるいは本願出願にて開示した塩基配列情報を感染症の迅速診断を目的としたPCR法のプライマーをデザインするために利用できる等の、本発明が奏する有用性には何ら影響を与えるものではない。(a)は、ドット・ブロット・ハイブリダイゼーションの各フィルターにおけるDNAの菌株の配置を示し、(b)は各プローブを用いてハイブリダイゼーションを行ない発色させた後の結果を示す。 感染症疾患起因菌であるストレプトコッカス・ピオゲネス (Streptococcus pyogenes) 菌が保有するDNAを制限酵素HindIIIで処理して得ることができる配列番号:3の塩基配列を有するDNA断片を含み、かつストレプトコッカス・ピオゲネス菌が保有するDNAと特異的にハイブリッド形成することを特徴とする感染症診断用プローブ。配列表