生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_アジピン酸の製造方法
出願番号:2003399144
年次:2009
IPC分類:C07C 51/285,C07C 55/14,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

広田 将司 萩谷 弘寿 JP 4306430 特許公報(B2) 20090515 2003399144 20031128 アジピン酸の製造方法 住友化学株式会社 000002093 中山 亨 100113000 広田 将司 萩谷 弘寿 JP 2002374038 20021225 20090805 C07C 51/285 20060101AFI20090716BHJP C07C 55/14 20060101ALI20090716BHJP C07B 61/00 20060101ALN20090716BHJP JPC07C51/285C07C55/14C07B61/00 300 C07C 51/285 C07C 55/14 C07C 51/31 CAplus(STN) CASREACT(STN) REGISTRY(STN) 特開2000−103760(JP,A) 特開昭60−034928(JP,A) Bull. Chem. Soc. Jpn.,日本,1999年,Vol. 72, No. 10,2287-2306 7 2004217625 20040805 10 20060403 水島 英一郎 本発明は、アジピン酸の製造方法に関する。 シクロヘキサンを分子状酸素で液相酸化することにより、シクロヘキサノールとシクロヘキサノンの混合物が得られ、該混合物が、アジピン酸の製造原料として用いられることは知られている(例えば非特許文献1参照。)。 シクロヘキサンを液相酸化すると、目的とするシクロヘキサノールとシクロヘキサノン以外に、種々の酸化副生物が生成するため、工業的には、シクロヘキサンの転化率をあまり高めず、目的物であるシクロヘキサノールおよびシクロヘキサノンの選択率を高めるよう実施されるのが一般的であるが、それでもなお相当量の酸化副生物が生成するため、例えば酸化反応液を水やアルカリ水で洗浄処理して、シクロヘキサノール、シクロヘキサノンおよびシクロヘキサンを含む混合物と、酸化副生物を含む排水に分離することが行われている。 かかる洗浄処理で排出される排水中に含まれる酸化副生物の大部分は、アジピン酸やヒドロキシカプロン酸であり、このうちのアジピン酸は、前記排水を、例えば酸性条件下で晶析処理することにより、その一部もしくは全部を回収し、有効利用することが可能であるものの、ヒドロキシカプロン酸は、そのままでは需要が少ないこともあり、回収することなく、焼却等により廃棄処理することが一般的であった。 しかしながら、炭素資源をさらに有効に利用することおよび廃棄物を削減して、環境負荷を低減させることは、工業的な観点からは非常に重要であり、かかるヒドロキシカプロン酸を含む排水を有効利用する方法の開発が望まれていた。その方法として、パラジウム等の白金族金属触媒の存在下に、当該排水を酸素で酸化し、当該排水中に含まれるヒドロキシカプロン酸をアジピン酸に変換する方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)が、用いる触媒が比較的高価であり、さらなる改善が望まれていた。特開2000−103760号公報向山光昭監訳,「工業有機化学−主要原料と中間体−」,第1版, 株式会社東京化学同人,1978年12月,p.229−230 このような状況のもと、本発明者らは、シクロヘキサンを分子状酸素で液相酸化する工程から排出されるヒドロキシカプロン酸を含む排水をより有効に利用する方法について鋭意検討したところ、該排水と過酸化水素を、タングステン類またはタングステン類と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物の存在下に反応させることにより、アジピン酸を製造することができることを見出し、本発明に至った。 すなわち本発明は、シクロヘキサンを分子状酸素で液相酸化する工程から排出されるヒドロキシカプロン酸を含む排水と、過酸化水素とを、タングステン触媒の存在下に反応させることを特徴とするアジピン酸の製造方法を提供するものである。 本発明によれば、シクロヘキサンを液相酸化する工程から排出されるヒドロキシカプロン酸を含む排水を、入手が容易なタングステン金属、タングステン酸ナトリウム等のタングステン類または該タングステン類と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物等のタングステン触媒の存在下に、過酸化水素と反応させることにより、アジピン酸が得られるため、炭素資源の有効利用が図られ、しかも廃棄物を削減し、環境処理の負荷を低減することもできるため、工業的に有利である。 まず、シクロヘキサンを分子状酸素で液相酸化する工程から排出されるヒドロキシカプロン酸を含む排水(以下、排水と略記する。)について説明する。かかる排水は、シクロヘキサンを分子状酸素で液相酸化した後、得られる反応液を、水やアルカリ水で洗浄処理して、排出される排水である。 シクロヘキサンの液相酸化は、例えば特許第2841696号公報等の公知の方法に準じて実施され、一般に液状のシクロヘキサンに、分子状酸素を吹き込むことにより実施される。分子状酸素としては、酸素ガスでもよいし、空気でもよい。また酸素と不活性ガスの混合ガスを用いてもよい。分子状酸素の使用量は、特に制限はないが、通常は酸化副生物の生成をできる限り抑え、目的物の選択率を向上させるため、シクロヘキサンの転化率をあまり高めないよう分子状酸素の使用量が設定される。 酸化温度は、通常80〜200℃の範囲であり、反応圧力は、反応混合物を液相に保つ圧力であればよく、通常100〜3000kPa程度の範囲である。 シクロヘキサンの液相酸化は、無触媒で行ってもよいし、触媒の存在下に行ってもよい。触媒としては、例えばナフテン酸コバルト、オクタン酸コバルト等のコバルト塩、例えばナフテン酸マンガン、オクタン酸マンガン等のマンガン塩、例えばホウ酸等のホウ酸化合物等が挙げられる。触媒を用いる場合のその使用量は、シクロヘキサンに対して、通常0.001〜1重量%の範囲である。 シクロヘキサンを、分子状酸素で液相酸化して得られる反応液には、通常目的物であるシクロヘキサノールとシクロヘキサノンの他、未反応のシクロヘキサンや種々の酸化副生物、触媒を用いた場合には該触媒や触媒の分解物等が含まれている。酸化副生物としては、例えばギ酸、酢酸、カプロン酸、ヘキサン酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、ヒドロキシカプロン酸等のカルボン酸類、例えばε−カプロラクトン等のラクトン類、例えば前記カルボン酸類とヒドロキシカプロン酸とが縮合したエステル類、例えば前記カルボン酸類とシクロヘキサノールとが縮合したエステル類、二分子のヒドロキシカプロン酸が自己縮合したエステル類等が挙げられ、その種類や副生量は、反応条件によっても異なるが、通常アジピン酸とヒドロキシカプロン酸が多く副生する。 ヒドロキシカプロン酸に代表されるこれら酸化副生物は、水やアルカリ水に比較的溶けやすいため、通常酸化反応液を水やアルカリ水で洗浄処理し、酸化副生物を含む排水と目的とするシクロヘキサノール、シクロヘキサノン、未反応のシクロヘキサンを含む混合物とに分離されており、本発明には、かかる洗浄処理で排出されるヒドロキシカプロン酸を含む排水が用いられる。 かかる排水は、通常そのまま本反応に用いられるが、該排水中にはアジピン酸も含まれている場合が多いため、その場合には、該排水中に含まれるアジピン酸の一部もしくは全部を取り出した後の排水を、本発明に用いてもよい。前記排水からアジピン酸の一部もしくは全部を取り出す方法としては、例えば前記排水からアジピン酸を結晶化させ、結晶化したアジピン酸を分離する方法が挙げられる。前記排水からアジピン酸を結晶化させる方法としては、例えば該排水を冷却する方法、該排水を一部濃縮する方法等が挙げられる。 続いてかかる排水と過酸化水素とを、タングステン触媒の存在下に反応させて、アジピン酸を製造する方法について説明する。 タングステン触媒としては、例えばタングステン金属、ホウ化タングステン、炭化タングステン、硫化タングステン、酸化タングステン、タングステン酸、タングステン酸塩等のタングステン類、これらタングステン類と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。タングステン酸塩としては、例えばタングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム等のタングステン酸アルカリ金属塩、例えばタングステン酸カルシウム、タングステン酸マグネシウム等のタングステン酸アルカリ土類金属塩、タングステン酸アンモニウム等が挙げられる。タングステン類としては、通常市販されているものが用いられる。また、タングステン触媒として、タングステン酸を用いる場合は、例えばタングステン酸ナトリウム等のタングステン酸塩を硫酸等の酸で中和処理して調製されるタングステン酸を用いてもよい。また、タングステン触媒として、タングステン酸塩を用いる場合には、例えばタングステン酸と対応する塩基を反応させて調製されるタングステン酸塩を用いてもよい。かかるタングステン触媒のなかでも、タングステン酸、タングステン酸塩、タングステン酸塩を酸で中和処理して調製されるタングステン酸が好ましい。 タングステン類と過酸化水素を反応せしめてなるタングステン酸化物を調製する際に用いる過酸化水素としては、通常水溶液が用いられる。もちろん過酸化水素の有機溶媒溶液を用いてもよいが、取扱いが容易であるという点で、過酸化水素水を用いることが好ましい。過酸化水素水もしくは過酸化水素の有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%程度の範囲である。過酸化水素水は、通常市販のものをそのままもしくは必要に応じて、希釈、濃縮等により濃度調整を行なったものを用いればよい。また過酸化水素の有機溶媒溶液は、例えば過酸化水素水を有機溶媒で抽出処理する、もしくは有機溶媒の存在下に蒸留処理する等の手段により、調製したものを用いればよい。また、粒径の小さいタングステン類を用いることが、タングステン酸化物の調製をより容易にするという点で好ましい。 タングステン類と反応せしめる過酸化水素の使用量は、タングステン類に対して、通常3モル倍以上、好ましくは5モル倍以上であり、その上限は特にない。 かかるタングステン類と過酸化水素とを反応せしめることにより、タングステン酸化物が調製されるが、かかる反応は、通常水溶液中で実施される。もちろん例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒、酢酸エチル等のエステル溶媒、tert−ブタノール等の第三級アルコール溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒等の有機溶媒中または該有機溶媒と水との混合溶媒中で実施してもよい。 タングステン類と過酸化水素との反応は、通常その両者を混合することにより行われ、タングステン類と過酸化水素の接触効率を向上させるため、タングステン酸化物調製液中でタングステン類が十分分散するよう攪拌しながら反応を行うことが好ましい。またタングステン類と過酸化水素の接触効率を高め、タングステン酸化物調製時の制御をより容易にするという点で、例えば粉末等粒径の小さなタングステン類を用いることが好ましい。タングステン酸化物の調製時の調製温度は、通常−10〜100℃程度である。 タングステン類と過酸化水素とを水中もしくは有機溶媒中で反応させることにより、タングステン酸化物を含む均一溶液もしくは懸濁液を調製することができるが、該タングステン酸化物を、例えば濃縮処理等により調製液から取り出して、排水と過酸化水素との反応に用いてもよいし、該調製液をそのまま用いてもよい。 かかるタングステン触媒の存在下に、排水と過酸化水素とを反応させることにより、アジピン酸を製造することができる。過酸化水素としては、通常水溶液が用いられる。もちろん過酸化水素の有機溶媒溶液を用いてもよい。過酸化水素水溶液もしくは過酸化水素/有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%程度の範囲である。 排水中に含まれるヒドロキシカプロン酸以外の酸化副生物やシクロヘキサンの液相酸化に用いられた触媒等により過酸化水素が消費、分解される場合があるため、過酸化水素の使用量は、排水中に含まれるヒドロキシカプロン酸以外の酸化生成物や触媒等の量を考慮し、適宜決めればよいが、通常は、排水中に含まれるヒドロキシカプロン酸に対して、1.5モル倍以上、好ましくは2モル倍以上の過酸化水素が用いられる。過酸化水素の使用量の上限は特にないが、あまり多過ぎるとかえって経済的に不利になりやすいため、実用的には10モル倍以下、好ましくは5モル倍以下程度である。 タングステン触媒の使用量は、タングステン金属として、排水中に含まれるヒドロキシカプロン酸に対して、通常0.005〜50モル%、好ましくは0.01〜20モル%程度である。 本反応は、通常タングステン触媒、排水および過酸化水素を接触、混合させることにより行われる。タングステン触媒、排水および過酸化水素の混合順序は特に制限されないが、より収率よくアジピン酸を製造するという観点から、排水とタングステン触媒の混合物に、過酸化水素を加えることが好ましい。この場合、過酸化水素は、滴下することが好ましい。なお、タングステン触媒として、タングステン類と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物を用いる場合には、タングステン類、過酸化水素および排水を接触、混合させて、触媒であるタングステン酸化物の調製操作と、排水と過酸化水素との反応を、同時並行的に行ってもよい。 反応温度は、通常20〜130℃、好ましくは70〜110℃程度であり、通常常圧条件下で実施されるが、加圧あるいは減圧条件下で実施してもよい。 排水と過酸化水素との反応は、有機溶媒の存在下に行ってもよい。有機溶媒としては、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジグライム等のエーテル溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル溶媒、例えばtert−ブタノール等の第三級アルコール溶媒、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒等が挙げられ、その使用量は特に制限されない。 本反応は、反応速度等の面から、pH0〜6の範囲で実施することが好ましく、pH0〜4の範囲で実施することがより好ましく、pH0〜2の範囲で実施することがさらに好ましい。そのため、反応液のpHが、前記範囲内でない場合には、例えば硫酸、塩酸、硝酸等の酸や、例えば水酸化ナトリウム等のアルカリで反応液のpHを調整し、反応を実施することが好ましい。 反応終了後、反応液をそのままもしくは必要に応じて残存する過酸化水素を、例えば亜硫酸ナトリウム等の還元剤で分解した後、濃縮処理、晶析処理等することにより、アジピン酸を取り出すことができる。また、反応液に、水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理、晶析処理等することにより、アジピン酸を取り出すこともできる。 また、用いたタングステン触媒によっては、反応液中に該タングステン触媒が不溶物として存在している場合があり、その場合には、例えばアジピン酸が反応液中に溶解している状態で濾過処理することにより、用いたタングステン触媒とアジピン酸を含む濾液を容易に分離することができ、タングステン触媒を固体として回収することができる。得られたアジピン酸を含む濾液を、そのままもしくは必要に応じて残存する過酸化水素を、例えば亜硫酸ナトリウム等の還元剤で分解した後、濃縮処理、晶析処理等することにより、アジピン酸を取り出すことができる。また、該濾液に、水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理、晶析処理等することにより、アジピン酸を取り出すこともできる。 取り出したアジピン酸は、例えば再結晶等通常の精製方法によりさらに精製してもよい。また、アジピン酸を晶析処理により取り出した後の濾液や反応液を抽出処理し、有機層を取り出した後の水層は、本反応のタングステン触媒を含んでおり、そのままもしくは必要に応じて濃縮処理等を行った後、再度本反応に使用することができる。また、タングステン触媒を固体として取り出した場合には、取り出したタングステン触媒の固体をそのままもしくは必要に応じて水や有機溶媒等で洗浄処理した後、再度本反応に使用することができる。 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、分析には、高速液体クロマトグラフ装置を用いた。また、以下の実施例におけるアジピン酸収率は、反応液中に含まれるアジピン酸の量から原料として用いた排水中に含まれていたアジピン酸の量を差し引いた量を、本反応において生成したアジピン酸量とし、排水中のヒドロキシカプロン酸量基準で算出したものである。実施例1 シクロヘキサンを液相酸化し、水洗浄し、シクロヘキサノンとシクロヘキサノールの混合物を得るとともに、ヒドロキシカプロン酸を含む排水を得た。該排水を冷却し、結晶化したアジピン酸を濾取し、ヒドロキシカプロン酸含量が18.5重量%である排水を得た。該排水には、ヒドロキシカプロン酸以外に、アジピン酸、グルタル酸、ε−カプロラクトン、アジピン酸のエステル、ヒドロキシカプロン酸のエステル等が含まれていた。 還流冷却管を付した100mLシュレンク管に、室温で、タングステン酸ナトリウム0.07g、30重量%過酸化水素水9.61gおよび硫酸80mgを仕込み、室温で1分攪拌し、タングステン触媒懸濁液を調製した。これに、上記で得たヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:18.5重量%)14.3gを仕込み、内温90℃で4時間攪拌、反応させ、アジピン酸を含む反応液を得た。アジピン酸収率:26%。実施例2 還流冷却管を付した100mLシュレンク管に、室温で、タングステン酸ナトリウム0.07g、水1gおよび硫酸80mgを仕込み、室温で1分攪拌し、タングステン触媒懸濁液を調製した。該調製液に、前記実施例1で用いたと同じヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:18.5重量%)14.3gを仕込み、内温90℃に調整した後、30重量%過酸化水素水9.61gを7時間かけて滴下した。その後、同温度で2時間攪拌、反応させ、アジピン酸を含む反応液を得た。アジピン酸収率:52%。実施例3 還流冷却管を付した100mLシュレンク管に、室温で、タングステン酸ナトリウム0.04gおよび30重量%過酸化水素水1.1gを仕込み、内温50℃で15分攪拌し、タングステン酸化物を調製した。該調製液に、30重量%過酸化水素水8.5gおよび上記実施例1で用いたと同じヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:18.5重量%)14.3gを仕込み、内温90℃で4時間攪拌、反応させ、アジピン酸を含む反応液を得た。アジピン酸収率:26%。実施例4 還流冷却管を付した100mLシュレンク管に、タングステン酸ナトリウム0.33g、水1gおよび硫酸0.3gを仕込み、タングステン酸水溶液を調製した。これに、実施例1で用いたと同じヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:18.5重量%)14.3gを加え、内温90℃に調整した。同温度で、30重量%過酸化水素水9.6gを10時間かけて滴下した後、2時間攪拌、反応させ、アジピン酸を含む反応液を得た。アジピン酸収率:80%。実施例5 還流冷却管を付した100mLシュレンク管に、タングステン酸ナトリウム0.66g、水1gおよび硫酸0.6gを仕込み、タングステン触媒懸濁液を調製した。これに、実施例1で用いたと同じヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:18.5重量%)14.3gを仕込み、内温90℃に調整した。30重量%過酸化水素水9.6gを7時間かけて滴下した後、2時間攪拌、反応させ、アジピン酸を含む反応液を得た。アジピン酸収率:86%。実施例6 還流冷却管を付した100mLシュレンク管に、タングステン金属0.04gおよび30重量%過酸化水素水1.1gを仕込み、内温50℃で15分攪拌し、タングステン酸化物を調製した。これに、実施例1で用いたと同じヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:18.5重量%)14.3gを仕込み、内温90℃に調整した。同温度で、30重量%過酸化水素水8.5gを7時間かけて滴下した後、2時間攪拌、反応させ、アジピン酸を含む反応液を得た。アジピン酸収率:35%。実施例7 還流冷却管を付した100mLシュレンク管に、酸化タングステン0.23g、水1gおよび硫酸0.6gを仕込み、室温で1分攪拌した。これに、実施例1で用いたと同じヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:18.5重量%)14.3gを仕込み、内温90℃に調整した。同温度で、30重量%過酸化水素水9.61gを4時間かけて滴下した後、3時間攪拌、反応させ、アジピン酸を含む反応液を得た。アジピン酸収率:60%。実施例8 還流冷却管を付した100mLシュレンク管に、タングステン酸0.25g、水1gおよび硫酸0.6gを仕込み、室温で1分攪拌した。これに、実施例1で用いたと同じヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:18.5重量%)14.3gを仕込み、内温90℃に調整した。同温度で、30重量%過酸化水素水9.61gを4時間かけて滴下した後、3時間攪拌、反応させ、アジピン酸を含む反応液を得た。アジピン酸収率:62%。実施例9 還流冷却管を付した500mL四つ口フラスコに、タングステン酸ナトリウム4.95g、水15gおよび硫酸9gを仕込み、タングステン触媒懸濁液を調製した。これに、実施例1で用いたと同じヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:18.5重量%)214.3gを仕込み、内温100℃に調整した。同温度で、30重量%過酸化水素水123.6gを4時間かけて滴下した後、3時間攪拌、反応させ、アジピン酸を含む反応液を得た。該反応液を、内温70℃で濾過処理し、黄色固体を濾別した。得られた濾液を、12時間かけて内温10℃まで冷却し、析出したアジピン酸の結晶を濾取した。アジピン酸結晶の取得率:59%、結晶と濾液中に含まれるアジピン酸をあわせたアジピン酸収率:81%。なお、前記黄色固体を水、次いでアセトンで洗浄処理し、乾燥させた後、分析したところ、タングステン酸であることを確認した。タングステン酸含量:95重量%。実施例10 還流冷却管を付した500mL四つ口フラスコに、前記実施例9で取得したタングステン酸の黄色固体4.4g、タングステン酸ナトリウム0.5g、水15gおよび硫酸9gを加え、タングステン触媒懸濁液を調製した。これに、実施例1で用いたと同じヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:18.5重量%)214.3gを仕込み、内温100℃に調整した。同温度で、30重量%過酸化水素水123.6gを4時間かけて滴下した後、3時間攪拌、反応させ、アジピン酸を含む反応液を得た。該反応液を、内温70℃で濾過処理し、黄色固体を濾別した。得られた濾液を、12時間かけて内温10℃まで冷却し、析出したアジピン酸の結晶を濾取した。結晶と濾液中のアジピン酸をあわせたアジピン酸収率:68%。実施例11 シクロヘキサンを液相酸化し、水洗浄し、シクロヘキサノンとシクロヘキサノールの混合物を得るとともに、ヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:8.8重量%)を得た。該排水には、ヒドロキシカプロン酸以外に、アジピン酸、グルタル酸、ε−カプロラクトン、アジピン酸のエステル、ヒドロキシカプロン酸のエステル等が含まれていた。 還流冷却管を付した500mL四つ口フラスコに、室温で、タングステン酸ナトリウム2.47g、水7.5gおよび硫酸9.0gを仕込み、タングステン触媒懸濁液を調製した。これに上記、ヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:8.8重量%)226.6gを加え、内温100℃に調整した。同温度で、30重量%過酸化水素水72.1gを8時間かけて滴下したのち、3時間攪拌、反応させアジピン酸を含む反応液を得た。該反応液を、内温70℃で濾過処理し、黄色固体を濾別した。得られた濾液を、12時間かけて内温10℃まで冷却し、析出したアジピン酸の結晶を濾取した。結晶と濾液中のアジピン酸をあわせたアジピン酸収率:89%。実施例12 還流冷却管を付した500mL四つ口フラスコに、室温で、タングステン酸ナトリウム2.47g、水7.5gおよび硫酸9.0gを仕込み、タングステン触媒懸濁液を調製した。これに実施例11で用いたと同じヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:8.8重量%)を233.2g加え、内温100℃に調整した。同温度で、5重量%過酸化水素水432.4gを10時間かけて滴下したのち、3時間攪拌、反応させアジピン酸を含む反応液を得た。該反応液を、内温70℃で濾過処理し、黄色固体を濾別した。得られた濾液を、12時間かけて内温10℃まで冷却し、析出したアジピン酸の結晶を濾取した。結晶と濾液中のアジピン酸をあわせたアジピン酸収率:95%。実施例13 シクロヘキサンを液相酸化し、水洗浄し、シクロヘキサノンとシクロヘキサノールの混合物を得るとともに、ヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:7.5重量%)を得た。該排水には、ヒドロキシカプロン酸以外に、アジピン酸、グルタル酸、ε−カプロラクトン、アジピン酸のエステル、ヒドロキシカプロン酸のエステル等が含まれていた。 還流冷却管を付した300mL四つ口フラスコに、室温で、タングステン酸ナトリウム1.29g、水3.9gおよび60%硝酸6.8gを仕込み、タングステン触媒懸濁液を調製した。これに上記、ヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:7.5重量%)を120g加え、内温100℃に調整した。同温度で、30重量%過酸化水素水37.6gを6時間かけて滴下したのち、4時間攪拌、反応させアジピン酸を含む反応液を得た。アジピン酸収率:73%。実施例14 還流冷却管を付した300mL四つ口フラスコに、室温で、タングステン酸ナトリウム2.6g、水30gおよび60%硝酸6.8gを仕込み、タングステン触媒懸濁液を調製した。これに実施例13で用いたと同じヒドロキシカプロン酸を含む排水(ヒドロキシカプロン酸含量:7.5重量%)を120g加え、内温80℃に調整した。同温度で、30重量%過酸化水素水32.9gを6時間かけて滴下したのち、4時間攪拌、反応させアジピン酸を含む反応液を得た。アジピン酸収率:84%。シクロヘキサンを分子状酸素で液相酸化する工程から排出されるヒドロキシカプロン酸を含む排水と、過酸化水素とを、タングステン触媒の存在下に反応させることを特徴とするアジピン酸の製造方法。タングステン触媒が、タングステン金属、ホウ化タングステン、炭化タングステン、硫化タングステン、酸化タングステン、タングステン酸およびタングステン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種のタングステン類または該タングステン類と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物である請求項1に記載のアジピン酸の製造方法。タングステン触媒とヒドロキシカプロン酸を含む排水の混合物に、過酸化水素を加える請求項1に記載のアジピン酸の製造方法。過酸化水素を滴下する請求項3に記載のアジピン酸の製造方法。反応を、pH0〜6の範囲で実施する請求項1に記載のアジピン酸の製造方法。ヒドロキシカプロン酸を含む排水が、さらにアジピン酸も含む排水である請求項1に記載のアジピン酸の製造方法。ヒドロキシカプロン酸を含む排水が、さらにアジピン酸を含む排水であって、前記排水中に含まれるアジピン酸の一部または全部を取り出した後、過酸化水素と反応させる請求項1に記載のアジピン酸の製造方法。


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