タイトル: | 特許公報(B2)_蒸留酒の精製方法 |
出願番号: | 2003377234 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12H 1/04 |
門脇 利夫 仲原 貴生 JP 4077393 特許公報(B2) 20080208 2003377234 20031106 蒸留酒の精製方法 大塚食品株式会社 000206945 目次 誠 100095382 宮▲崎▼主税 100086597 門脇 利夫 仲原 貴生 20080416 C12H 1/04 20060101AFI20080327BHJP JPC12H1/04 C12H 1/00−1/22 JSTPlus(JDream2) 特開昭60−094081(JP,A) 特開昭61−289876(JP,A) 特開昭59−205975(JP,A) 特開昭63−137668(JP,A) 特開平08−322547(JP,A) 特開平10−337402(JP,A) 特開平11−253541(JP,A) 特開平03−042008(JP,A) 特開平03−187374(JP,A) 特開平02−174654(JP,A) 3 2005137264 20050602 8 20031112 田中 耕一郎 本発明は、蒸留酒に含まれる不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸と金属イオンの化合物、またはフーゼル油を除去する蒸留酒の精製方法に関するものである。 蒸留酒に含まれる不飽和脂肪酸のエチルエステルは、貯蔵中または直射日光にあたった場合に、酸化し油臭を発生する。油臭の前駆物質である不飽和脂肪酸は、常圧蒸留において特に多くなる。不飽和脂肪酸エチルエステル(特にリノール酸エチル)は、酸化分解されて油臭成分に変換されると、この成分の溶解度が分解前に比べ数千倍と大きいため、除去することは容易でない。 また、パルミチン酸エチル、リノール酸エチル等の高級脂肪酸エチルエステルは、蒸留酒の味に濃厚さや円やかさを与えるが、上記の油臭の原因となるだけでなく、オリを発生する原因ともなる。特に、高級脂肪酸エステルに金属イオンが反応すると、不飽和脂肪酸と金属イオンの化合物が生成し、これが綿状沈殿物となる。この金属イオンは、蒸留機の金属(銅など)に由来する。 このような綿状沈殿物の生成を低減するため、蒸留酒にいわゆる割り水として、水を添加し、一晩放置して濁りを発生させた後に濾過し、濁りを除去する方法が一般的に行われている。 しかしながら、この方法を用いても、オリの前駆物質を十分に除去することができない。このため、濾過後にタンク等で貯蔵した後、さらに濾過する際に、高級アルコールであるフーゼル油や不飽和脂肪酸の濁りが発生するという問題があった。この濁りは、濾過機中の水と蒸留酒が混ざり、蒸留酒のアルコール度数が低下した際、あるいは濾過の終わりに濾過機中のアルコールを水押しにより回収してアルコール度数が低下した際に発生する。特開平8−322547号公報米国特許第3007878号明細書特開平4−270107号公報 本発明の目的は、蒸留酒における油臭の発生の原因成分となる不飽和脂肪酸を低減することができ、綿状沈殿物及びフーゼル油や不飽和脂肪酸による濁りの発生を防止することができる蒸留酒の精製方法を提供することにある。 本発明の第1の局面に従う蒸留酒の精製方法は、焼酎甲類、焼酎乙類、焼酎甲乙混合品、及び泡盛から選ばれる少なくとも1種の蒸留酒にキトサン粉末またはキトサン被覆物を添加し、これを濾過機で濾過することにより、蒸留酒に含まれる不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸と金属イオンの化合物、またはフーゼル油による油臭及び/または濁りを除去することを特徴としている。 特許文献1には、清酒などにおける蛋白質を除去するため、シリカゾル及び/またはキトサンを用いることが開示されているが、蒸留酒に含まれる不飽和脂肪酸等を除去することについては何ら記載されていない。 本発明の第2の局面に従う蒸留酒の精製方法は、濾過面にキトサン粉末またはキトサン被覆物を貼り付けた濾過機を用いて、焼酎甲類、焼酎乙類、焼酎甲乙混合品、及び泡盛から選ばれる少なくとも1種の蒸留酒を濾過することにより、蒸留酒に含まれる不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸と金属イオンの化合物、またはフーゼル油による油臭及び/または濁りを除去することを特徴としている。 本発明の第3の局面に従う蒸留酒の精製方法は、蒸留酒にキトサン粉末またはキトサン被覆物と、正電荷のシリカゾルとを添加することにより、蒸留酒に含まれる不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸と金属イオンの化合物、またはフーゼル油による油臭及び/または濁りを除去することを特徴としている。 本発明の第4の局面に従う蒸留酒の精製方法は、蒸留酒に正電荷のシリカゾルを添加することにより、蒸留酒に含まれる不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸と金属イオンの化合物、またはフーゼル油による油臭及び/または濁りを除去することを特徴としている。 本発明の蒸留酒の精製方法によれば、蒸留酒の油臭発生を低減することができ、蒸留酒における濁りの除去を効率的に行うことができる。 本発明において用いるキトサンは、キチンの脱アセチル化物として知られているものであり、特に限定されるものではないが、脱アセチル化度としては70%以上が好ましく、さらに好ましくは85%以上である。また、形態としては、微粉状であることが好ましい。 本発明において用いるキトサン被覆物は、キトサンを、乳酸、酢酸、塩酸等の酸溶液中に溶解し、その中に活性炭、セルロース、ケイソウ土等の芯材を添加した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水溶液を添加することにより、芯材の表面にキトサンを析出させたものである。キトサン被覆物のキトサン被覆量としては、特に制限はないが、通常、芯材100重量部に対して5〜300重量部の割合で被覆したものが用いられる。 本発明の第1の局面において、蒸留酒に添加するキトサン粉末またはキトサン被覆物の量は、蒸留酒1トンに対し、10g〜5000g程度であることが好ましい。 本発明の第2の局面においては、濾過面にキトサン粉末またはキトサン被覆物を貼り付けた濾過機を用いて、蒸留酒を濾過する。濾過機の濾過面にキトサン粉末またはキトサン被覆物を貼り付ける方法としては、予め半切れ(200〜500リットル程度のたらい状の容器)に水及びキトサン粉末またはキトサン被覆物を混和し、これを濾過機で循環しながら濾過面に均一にキトサン粉末またはキトサン被覆物を貼り付ける。キトサン粉末及びキトサン被覆物を貼り付ける量としては、濾過面積1m2当り50〜400g程度が好ましい。 本発明の第3の局面においては、蒸留酒にキトサン粉末またはキトサン被覆物と、正電荷のシリカゾルとを添加する。 本発明の第3の局面において、蒸留酒にキトサン粉末またはキトサン被覆物を添加する量としては、蒸留酒1トンに対し、キトサン粉末またはキトサン被覆物を10g〜5000g添加することが好ましい。また、正電荷のシリカゾルの添加量としては、蒸留酒に対し、50ppm〜2000ppmの濃度となるように添加することが好ましい。これらの添加量とすることにより、効率良く不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸と金属イオンの化合物、及びフーゼル油を除去することができる。 本発明の第4の局面においては、蒸留酒に正電荷のシリカゾルを添加する。正電荷のシリカゾルの添加量としては、蒸留酒に対し、50ppm〜2000ppmの濃度となるように添加することが好ましい。このような濃度で添加することにより、効率的に不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸と金属イオンの化合物、及びフーゼル油を除去することができる。特に、蒸留酒に、いわゆる割り水と呼ばれる水を添加することにより生じた白濁を除去するのに、この第4の局面による方法が好ましく採用される。この濁りは、フーゼル油や不飽和脂肪酸による濁りであり、このような濁りを効率良く除去することができる。 本発明において用いる正電荷のシリカゾルは、粒子表面が正電荷を帯びているコロイダルシリカのゾルである。一般に、コロイダルシリカは酸性酸化物であるため、その粒子表面は負の電荷を帯びているが、この負電荷のコロイダルシリカの粒子表面を、例えば、正電荷を有する微細な金属化合物で被覆することによりコロイダルシリカに正電荷を付与することができる。このような正電荷を有する金属化合物としては、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化鉄、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、酸化チタンなどの塩基性金属酸化物が挙げられる。実用上及び経済的な面からは、アルミナが最も好ましい。 負電荷のコロイダルシリカの粒子表面を、正電荷を有する微細な金属化合物で被覆する方法としては、スプレー法、真空蒸着法、含浸加熱法、加水分解法などの方法を挙げることができるが、好ましい被覆方法としては、負電荷のシリカゾルと塩基性塩化金属塩の水溶液の一種または二種以上を混合し、酸及び/またはアルカリで適宜pHを調整することにより、負電荷シリカゾルの表面に塩基性塩化金属塩の加水分解物等を沈着させて被覆する方法が挙げられる。使用する塩基性塩化金属塩としては、アルミナの場合、塩基性塩化アルミニウムが用いられ、酸化鉄の場合、塩基性塩化鉄が用いられ、ジルコニアの場合、塩基性塩化ジルコニウムが用いられ、酸化チタンの場合、塩基性塩化チタニウムが用いられる。この加水分解による被覆の詳細については、例えば、特許文献2や特許文献3等に記載されている。なお、加水分解して析出する金属酸化物は、微細なアモルファスの水和物であることが好ましい。 上記正電荷を有する金属酸化物などの金属化合物によるコロイダルシリカの被覆量は、コロイダルシリカに対し2〜40重量%程度が好ましい。被覆量が2重量%未満であると、十分な正電荷を付与することができない場合があり、被覆量が40重量%を超えると塩基性金属酸化物等の一部がシリカゾル表面に付着しない場合があったり、あるいは経済的に不利な場合が生じる。 本発明において用いる正電荷シリカゾルの平均粒子径は3〜100nm程度が好ましく、さらに好ましくは5〜50nm程度である。また正電荷シリカゾル中のシリカ(SiO2)含有量は15〜45重量%程度であることが好ましく、さらに好ましくは15〜30重量%程度である。 本発明において用いる負電荷シリカゾルの平均粒子径は、3〜100nm程度であることが好ましく、さらに好ましくは5〜50nm程度である。また、負電荷シリカゾル中のシリカ含有量は10〜50重量%であることが好ましく、さらに好ましくは15〜45重量%程度である。 正電荷シリカゾルの市販品としては、商品名「コポロック200」(大塚食品株式会社製)等が挙げられる。また、負電荷シリカゾルの市販品としては、商品名「コポロック300」(大塚食品株式会社製)等を挙げることができる。 本発明の精製方法においては、本発明の効果を損なわない範囲でゼラチン、コラーゲン、フィシュゼラチン、乳由来蛋白、小麦蛋白、えんどう蛋白等の蛋白質、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、寒天等の多糖類、柿渋、タンニン酸等のタンニン物質、PVPP(ポリビニルポリピロリドン)、シリカゲル等の二酸化ケイ素、ケイソウ土、パーライト、セルロース等の濾過助剤、ベントナイト、活性炭、酸性白土、イオン交換樹脂等の吸着剤を併用することができる。これらは、1種または2種以上を用いてもよい。 本発明の対象となる蒸留酒には、焼酎甲類、焼酎乙類、焼酎甲乙混合品、泡盛、ブランデー、ウイスキー、バーボン、スコッチ等の蒸留酒の他に、これら蒸留酒を樫樽に貯蔵したもの、これら蒸留酒に梅、朝鮮人参、ハーブ等の植物を漬け込んだもの、これら蒸留酒にマムシ、ハブ等の動物を漬け込んだものも含まれる。 以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。 <実施例1> 油臭のする2年ものの米焼酎(アルコール度31%)200mlをビーカーに採り、キトサン粉末(粘度法による平均分子量:15万、メッシュサイズ:40メッシュパス)を1g添加し撹拌した。 <比較例1> 上記において、キトサン粉末を添加しないものを、比較例1とした。 実施例1及び比較例1の米焼酎をNo.5Cの濾紙で濾過した濾過液の濁度を濁度計(日本電色工業株式会社製:NDH−20D型)で測定し、油臭の有無を調べた結果を表1に示す。 表1に示すように、本発明の精製方法により、濁度を低減でき、油臭を除去できることがわかる。 <実施例2> 市販の米焼酎(アルコール度25%)200mlをビーカーに採り、キトサン粉末(粘度法による平均分子量:15万、メッシュサイズ:40メッシュパス)0.2g及びシリカゾル(大塚食品株式会社製、商品名「コポロック200」)800ppmを添加し撹拌した。 <比較例2> 上記において、キトサン粉末及びシリカゾルを添加しないものを比較例2とした。 実施例2及び比較例2の米焼酎を24時間静置し、沈降したオリの量及び上記濁度計による濁度の測定を行った。測定結果を表2に示す。 表2に示すように、本発明の精製方法により、濁度を低減できることがわかる。 <実施例3> アルコール度35%の米焼酎をアルコール度25%になるように割り水し、白濁を生じさせたもの200mlをビーカーに採り、正電荷のシリカゾル(大塚食品株式会社製、商品名「コポロック200」、シリカ含有量20重量%)1000ppmを添加し撹拌した。 <比較例3> 上記において、シリカゾルを添加しないものを比較例3とした。 実施例3及び比較例3の米焼酎を24時間静置し、沈降したオリの量及び上記濁度計による濁度の測定を行った。測定結果を表3に示す。 表3に示すように、本発明の精製方法により、濁度を低減できることがわかる。 <実施例4> アルコール度35%の米焼酎をアルコール度25%になるように割り水し、白濁を生じたものを、No.5Cの濾紙にケイソウ土(米国セライト社製、商品名:セライト・ハイフロ・スーパーセル)をプリコートしてヌッチェで濾過した。この濾過液に加水し、アルコール濃度を3%とし、濁度の上昇がみられたもの200mlに、キトサン粉末(粘度法による平均分子量:15万、メッシュサイズ:40メッシュパス)を1g添加し撹拌した。 <比較例4> 上記において、キトサン粉末を添加しないものを比較例4とした。 実施例4及び比較例4の米焼酎をNo.5Cの濾紙で濾過した濾過液の濁度を測定した結果を表4に示す。 表4に示すように、本発明の精製方法により、濁度を低減できることがわかる。 焼酎甲類、焼酎乙類、焼酎甲乙混合品、及び泡盛から選ばれる少なくとも1種の蒸留酒にキトサン粉末またはキトサン被覆物を添加し、これを濾過機で濾過することにより、蒸留酒に含まれる油臭及び/または濁りを除去することを特徴とする蒸留酒の精製方法。 濾過面にキトサン粉末またはキトサン被覆物を貼り付けた濾過機を用いて、焼酎甲類、焼酎乙類、焼酎甲乙混合品、及び泡盛から選ばれる少なくとも1種の蒸留酒を濾過することにより、蒸留酒に含まれる油臭及び/または濁りを除去することを特徴とする蒸留酒の精製方法。 蒸留酒にキトサン粉末またはキトサン被覆物と、正電荷のシリカゾルとを添加することにより、蒸留酒に含まれる油臭及び/または濁りを除去することを特徴とする蒸留酒の精製方法。