生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_皮膚常在菌の生態系バランス調整剤
出願番号:2003374199
年次:2011
IPC分類:A61K 33/06,A61K 8/00,A61K 33/14,A61K 36/00,A61P 17/00,A61P 31/04,A61Q 19/00


特許情報キャッシュ

高宮 ます美 森 辰実 JP 4608198 特許公報(B2) 20101015 2003374199 20031104 皮膚常在菌の生態系バランス調整剤 株式会社ノエビア 000135324 高宮 ます美 森 辰実 20110105 A61K 33/06 20060101AFI20101209BHJP A61K 8/00 20060101ALI20101209BHJP A61K 33/14 20060101ALI20101209BHJP A61K 36/00 20060101ALI20101209BHJP A61P 17/00 20060101ALI20101209BHJP A61P 31/04 20060101ALI20101209BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20101209BHJP JPA61K33/06A61K8/00A61K33/14A61K35/78 WA61P17/00A61P31/04A61Q19/00 A61K 33/06 A61K 8/00 A61K 33/14 A61K 36/00 A61P 17/00 A61P 31/04 A61Q 19/00 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2001−131018(JP,A) 2 2005139075 20050602 9 20061101 清野 千秋 この発明は、皮膚常在菌の生態系バランス調整剤、すなわち、有益菌である表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)に対しては殺菌作用を示さず、有害菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対しては殺菌若しくは増殖抑制作用を有する、皮膚常在菌の生態系バランス調整剤に関する。 健全な皮膚が有益な常在菌からなる生態系により保護されている。それら有益菌による作用は以下の通りである。(1)保湿成分を守り、乾燥肌を防ぐ。(2)紫外線吸収作用を有し、有害な紫外線から皮膚を守る。(3)活性酸素を分解し、老化を防ぐ。(4)有害菌の侵入を防ぎ、炎症を防ぐ。(5)線維芽細胞増殖作用を示し、シワを防ぐ。(6)表皮のpHを調整し、抵抗力を高める。 しかしながら、何らかの原因で有益な菌が減少,死滅してしまったり、バランスが崩れ有害菌の割合が多くなると、上記作用が発揮されなくなり、皮膚疾患を惹き起こすこともあった。そのためかかる有害菌を除去する目的で、抗菌剤や殺菌剤が皮膚に適用されてきた。 特に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、嘔吐を伴う食中毒や各種膿瘍の原因となるグラム陽性菌である。これにより産生されるエンテロトキシン(腸管毒)は食中毒の原因となる他、エンテロトキシンBや毒性ショック症候群毒素(toxic shock syndrome toxin-1,TSST-1)のようにスーパー抗原として、アトピー性皮膚炎の増悪などアレルギー性疾患に関与するものが知られている。エンテロトキシンBはスーパー抗原として、抗原提示細胞によるプロセッシングを受けることなく、抗原提示細胞上の主要組織適合遺伝子複合体のクラスII分子と、T細胞受容体のVβ領域とに直接結合する特性を有し、そのスーパー抗原と結合する特定のVβを表現するT細胞群を一気に活性化して大量のサイトカインの産生を促し、生体の免疫反応に顕著な影響を与えるものと考えられている。黄色ブドウ球菌のスーパー抗原であるエンテロトキシンBやTSST-1は、皮膚のランゲルハンス細胞やマクロファージを刺激して、インターロイキン-1,腫瘍壊死因子,インターロイキン-12を産生させ、インターロイキン-12は活性化されたT細胞に皮膚ホーミングレセプター(homing receptor)の皮膚リンパ球結合抗原(CLA)の発現を誘導する。 上記のように、黄色ブドウ球菌により産生されたエンテロトキシンが食中毒の他にアレルギー性疾患にも関与することが明らかになるにつれ、黄色ブドウ球菌に対し抗菌もしくは殺菌作用を有する薬剤のスクリーニングが活発に行われてきた。かかる薬剤として、最近ではマンネンタケ子実体傘部抽出物(特許文献1参照)、クローブ,オールスパイス,オレガノ等の抗菌性香辛料(特許文献2参照)、クジン抽出物(特許文献3参照)、ジャックフルーツ抽出物(特許文献4参照)、アルトカルピン及びソフォラフラバノンG(特許文献5参照)、キサントン誘導体(特許文献6参照)、カバノタケ抽出物(特許文献7参照)、キトサン誘導体(特許文献8参照)、光触媒活性を有する微粒子酸化チタン(特許文献9参照)、ステビア抽出物(特許文献10参照)、アルケニルイソチオシアナート化合物(特許文献11参照)、ホップ,レンギョウ,シナレンギョウ,チョウセンレンギョウ,トウキンセンカ,キンセンカ,スイカズラ,ウグイスカグラ,サルビア及びその変種,クチナシ及びその同属植物,クマザサ,イラクサ,ミヤマイラクサ,ヒキオコシ,クロバナヒキオコシより選択した1種又は2種以上の植物の抽出物(特許文献12参照)などが開示されている。 また、黄色ブドウ球菌の除去を目的とするN-アシルグルタミン酸塩を含有する洗浄剤(特許文献13参照)や、鉄結合型ラクトフェリンを含有する細菌性エンテロトキシン中和剤(特許文献14参照)も知られている。 しかしながら上記した技術は、ほとんどが黄色ブドウ球菌の静菌又は殺菌もしくは除去を図るもので、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis),バクテイオイズ属(Bacteroides属),エウバクテリウム属(Eubacterium属),連鎖状球菌(Streptococcus)属,ビフィズス属(Bifidobacterium属)といった皮膚や腸内における常在菌にも静菌,殺菌作用を及ぼしたり、これらを除去してしまうため、常在菌叢の変化をきたして、皮膚や腸のホメオスタシスに影響を及ぼし、日和見感染を招く危険性の生じることがあった。また、ラクトフェリンを主成分とするエンテロトキシン中和剤はタンパク質製剤であるため、安定な製剤を得る上で制約も多く、感作性の発現も危惧される。 そこで、健康な皮膚の常在細菌叢の代表菌である、表皮ブドウ球菌の生育よりも、病害菌として注目されている黄色ブドウ球菌の生育を選択的に阻害する物質のスクリーニングも行われており、例えば皮膚由来バクテリア、プロピオニバクテリウム・グラニュローサム菌から得られた抗菌性組成物(特許文献15参照)、ボタンピ、カンゾウ、ウーロン茶、ローズマリー、クララ、オオレン、オオバク、タイム、アロエ、ナンキンハゼ、マングーシ、冬虫夏草、センソウ、ミツガシワ、リョウブ、エンレイソウ、トウガラシから選ばれる植物抽出エキスの1種又は2種以上を配合することを特徴とする選択的抗菌組成物(特許文献16参照)などが開示されている。しかしながら、これらは天然物由来の成分であり、品質のばらつきが大きく商品化が困難であったり、有効量を得るには多量の適用が必要であるといった問題があった。 またニガリは、海水から食塩を製造するにあたり食塩を晶出させた後の液若しくはその乾燥物である。ニガリの組成は、製塩法(イオン交換膜法、天日法、塩田法若しくは蒸発法)の相違、食塩晶出時の温度、食塩晶出時の食塩濃度及び圧力その他の条件によって変わってくる。表1に製塩法が相違するニガリの組成の一例を示す(非特許文献1参照)。なお、表1の数値の単位はg/100gである。また、イオン交換膜法によるニガリについてみれば、イオン交換膜の特性等によっても変わってくる。 なお、ニガリを皮膚外用剤などに配合する試みは古くからなされており、最近では、ニガリを有効成分として含有する養毛剤(特許文献17参照)、マグネシウムイオンとカルシウムイオンを特定の比率で含有する化粧料の皮膚の保護能,バリヤ機能回復効果(特許文献18参照)といった特定の効果に関する発明や、尿素,グリセリン,ミョウバンと併用した皮膚用保湿,保護剤(特許文献19参照)、魚皮エラスチンと併用した保湿及び皮膚保護効果に優れた皮膚外用剤(特許文献20参照)、フィトンチッド,キトサンと併用した皮膚状態改善作用を有する組成物(特許文献21参照)等が開示されている。特開平6−116162号公報特開平7−267873号公報特開平8−73364号公報特開平8−73368号公報特開平8−73372号公報特開平9−110688号公報特開平10−120589号公報特開平10−158305号公報特開平11−5729号公報特開平11−43443号公報特開平11−137949号公報特開2001−226280特開平11−80781号公報特開平11−279076号公報特開平9−20638号公報特開2001−226213号公報特開平11−1414号公報特開2002−47119号公報特開2000−109421号公報特開2001−39826号公報特開2001−131018号公報「無機工業概論」(株)培風館、1995発行、p38〜39 本発明の目的は,健康な肌に常在する表皮ブドウ球菌と皮膚疾患を持つ皮膚常に存在する有害な黄色ブドウ球菌を区別し、常在する有益な表皮ブドウ球菌の生育には影響を与えず、有害な黄色ブドウ球菌のみに抗菌作用を有することによって,アトピー性皮膚炎等のひづ疾患の治療及び予防に充分な効果を発揮する皮膚常在菌の生態系バランス調整剤を提供することにある。 本発明で挙げられる有害菌の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)と、有益菌の表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)は、分類学上かなり類似した菌であり、一般的にこの両者を区別して殺菌又は発育抑制することは、極めて難しい。しかしながら、本発明者は、鋭意検討の結果、2000種以上の外用剤有効成分からニガリに、有害菌の黄色ブドウ球菌の生育だけを抑制して、有益な表皮ブドウ球菌の生育には影響を与えないことを見いだし、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明における皮膚常在菌の生態系バランス調整剤は、ニガリを有効成分として配合することを特徴とする。また、本発明の皮膚常在菌の生態系バランス調整剤においてはさらに、ローズマリー抽出物,カンゾウ抽出物から選択される1種又は2種の植物抽出物を併用することにより、その効果が相乗的に向上する。 本発明の皮膚常在菌の生態系バランス調整剤は、健康な肌に常在する表皮ブドウ球菌と皮膚疾患を有する肌に存在する黄色ブドウ球菌を区別し、有益な表皮ブドウ球菌の生育には影響を与えず、有害な黄色ブドウ球菌にのみ抗菌効果を有する。また本発明の皮膚常在菌の生態系バランス調整剤は、上記選択的な抗菌効果をもつもので、アトピー性皮膚炎等の皮膚疾患の治療及び予防に充分な効果を発揮することができる。 本発明において用いるニガリは、海水から食塩を製造するにあたり食塩を晶出させた後の液若しくはその乾燥物、若しくは人為的にミネラル分を混合したものを用いる。ニガリの組成は、産地、製塩法(イオン交換膜法、天日法、塩田法若しくは蒸発法)の相違、食塩晶出時の温度、食塩晶出時の食塩濃度及び圧力その他の条件によって変わってくるが、トカラ列島周辺海域、若しくは南大東島周辺海域で採取した海水を原料として調製したニガリは、海水中に含まれる有機リン酸化合物等の汚染物質の混入が無く、高い効果が得られる。 本発明において、ニガリと併用して用いるローズマリー抽出物及びカンゾウ抽出物について述べる。 ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)はシソ科(Labiatae)に属する常緑低木で、葉,枝,樹皮,花等の各部位及び全木を用いることができるが、葉を用いることが好ましい。カンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fisher,Glycyrrhiza glabra L.,Glycyrrhiza echinata L.,Glycyrrhiza glandulifera Reg. et Herd.,Glycyrrhiza glabra var. typica Regel et Herder,Glycyrrhiza glabra var. violacea Boiss.,Glycyrrhiza glabra var. pallida Boiss)は、マメ科(Leguminosae)に属する多年草で、生薬「カンゾウ」(Glycyrrhizae Radix)の基原植物である。抽出には、葉,茎,花,根等の各部位及び全草を用いることができるが、根を用いることが好ましい。 本発明において、ローズマリー抽出物又はカンゾウ抽出物を得るには,各植物を生のまま抽出に供してもよいが、抽出効率を考えると、細切,乾燥,粉砕等の処理を行った後に抽出を行うことが好ましい。抽出は、抽出溶媒に浸漬して行う。抽出効率を上げるため撹拌を行ったり、抽出溶媒中でホモジナイズしてもよい。抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の温度とするのが適切である。抽出時間は抽出溶媒の種類や抽出温度によっても異なるが、4時間〜14日間程度とするのが適切である。 抽出溶媒としては、水の他、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール等の低級アルコール、1,3-ブチレングリコール,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル,プロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル類、アセトン,エチルメチルケトン等のケトン類などの極性有機溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。また、生理食塩水,リン酸緩衝液,リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。 本発明において、ローズマリー又はカンゾウの上記溶媒による抽出物は、そのままでも本発明に係る皮膚外用剤に含有させることができるが、濃縮,乾固したものを水や極性溶媒に再度溶解したり、或いはそれらの皮膚生理機能向上作用を損なわない範囲で脱色,脱臭,脱塩等の精製処理を行ったり、カラムクロマトグラフィーによる分画処理を行った後に用いてもよい。また保存のため、精製処理の後凍結乾燥し、用時に溶媒に溶解して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。 本発明において、ニガリとローズマリー抽出物,カンゾウ抽出物から選択される1種又は2種の抽出物を併用する場合の配合比は特に限定されず1:100〜100:1程度の範囲で適宜することができる。 本発明における皮膚常在菌の生態系バランス調整剤は、そのまま皮膚に適用することができる。また必要に応じてデンプン,乳糖,微結晶セルロース,メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の賦形剤、ステアリン酸マグネシウム,タルク等の滑沢剤、ゼラチン,セラック,ポリビニルピロリドン,メチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース等の結合剤、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤、ソルビトール,グリセリン等の保湿剤、ジブチルヒドロキシトルエン,ブチルヒドロキシアニソール,トコフェロール等の抗酸化剤、吸収促進剤、界面活性剤、等張化剤等とともに公知の方法によって、軟カプセル剤,硬カプセル剤,錠剤,丸剤,顆粒剤,散剤,懸濁剤,液剤,シロップ剤,乳濁剤,エリキシル剤等の経口剤、注射剤、坐剤、ペッサリー又は外用剤として提供され得る。 本発明に係る皮膚常在菌の生態系バランス調整剤は、低刺激性で毒性及び感作性を示さないため、特に経口的に服用したり、又は皮膚において局所的に外用するのに適しており、アトピー性皮膚炎の増悪など、スーパー抗原の関与するアレルギー性疾患の増悪防止又は症状緩和や、食中毒の予防を目的とした経口剤又は食品添加物として有用で、さらに安定性にも優れるものである。[実施例1] トカラニガリ トカラ列島周辺海域で採取した海水を、ポリアミド系複合逆浸透膜を用いてかん水を調製した。得られたかん水を、110℃で加熱しニガリと塩に分離することにより、トカラニガリを得た。[実施例2] 南大東島ニガリ 南大東島周辺海域で採取した海水を、ポリアミド系複合逆浸透膜を用いてかん水を調製した。得られたかん水を、113℃で加熱しニガリと塩に分離することにより、南大東島ニガリを得た。[実施例3] ドーバー海峡ニガリ ドーバー海峡周辺海域で採取した海水を、ポリアミド系複合逆浸透膜を用いてかん水を調製した。得られたかん水を、112℃で加熱しニガリと塩に分離することにより、ドーバー海峡ニガリを得た。[実施例4] 合成ニガリ 塩化ナトリウム(試薬特級)5.0g、塩化カリウム(試薬特級)3.0g、塩化マグネシウム6水和塩(試薬特級)15.0g、塩化カルシウム(試薬特級)5.0gを混合し、合成ニガリを得た。 上記の実施例1〜実施例4について、表皮ブドウ球菌及び黄色ブドウ球菌に対する抗菌作用を評価した。評価は、実施例を水で希釈した試料液1mLと、表皮ブドウ球菌分散液0.5mL、黄色ブドウ球菌分散液0.mLを混合し,37℃にて7時間培養する。栄養培地に移植し37℃にて48時間培養した後、生菌数をカウントすることにより行った。なお、ニガリ水溶液を精製水に代替して同様の評価を行い、コントロールとした。結果を接種菌数を1とした場合の相対値にて表2に示す。 表2に示したとおり、本願発明のニガリは、有益菌である表皮ブドウ球菌に対しては、殺菌効果を示さず、植菌した状態での生菌数が維持もしくは微増傾向にあった。これに対し黄色ブドウ球菌に対しては殺菌作用を示し、植菌した数より生菌数が減少していた。これに対しコントロールでは、表皮ブドウ球菌,黄色ブドウ球菌ともに大幅な生菌数の増加が認められた。 続いて本発明の他の実施例を示す。 表3に示した処方にて本発明の実施例5〜実施例7に係るゲル剤を調製した。ローション剤は全成分を混合,溶解,均一化することにより調製した。 [実施例8] 内服液剤 実施例1、150mgに単シロップ200mLを加え、次いで精製水を加えて1.0Lとし、内服液剤を得た。 本発明の上記実施例5〜実施例8について臨床試験を行った。掻痒感及び皮疹等の皮膚症状を呈するアトピー性皮膚炎患者20名を1群とし、各群に実施例及び比較例をブラインドにて、実施例5及び実施例7については1日2回、3日間患部に塗布させ、実施例8については1日3回、3日間内服させて、掻痒感及び皮膚症状の改善状況を評価した。比較例としては、実施例5及び実施例8において、本発明に係るニガリ,ローズマリー抽出物,カンゾウ抽出物をグルコン酸クロルヘキシジン液に代替したものを比較例1、実施例8において、本発明に係るニガリをブドウ糖液に代替したものを比較例2とした。掻痒感及び皮膚症状の改善状況は、使用開始前の状態に比べて、それぞれ「改善」,「やや改善」,「変化なし」,「悪化」の4段階にて評価し、各評価を得たパネラー数にて表3に示した。 さらに上記臨床試験に際し、皮膚及び腸内の細菌叢の調査を行い、その変動の程度について、「○;ほとんど変動を認めない」,「△;若干の変動を認める」,「×;顕著な変動を認める」として、表4に併せて示した。 表4より明らかなように、本発明の実施例5〜実施例7使用群においては、全群で掻痒感及び皮膚症状の悪化を示したパネラーは存在せず、これら症状の改善傾向も見られていた。また、皮膚細菌叢において変化は認められていなかった。さらに、経口製剤である実施例8服用群においても、掻痒感及び皮膚症状の悪化を示したパネラーは存在せず、掻痒感,皮膚症状ともに両群で65%以上のパネラーにおいて改善傾向が認められていた。腸内細菌叢の変化も認められていなかった。 これに対し、比較例1使用群では、掻痒感及び皮膚症状の改善傾向を示すパネラーも相当数認められたが、症状の悪化したパネラーも少数存在していた。さらに、皮膚細菌叢の変化は顕著に認められていた。また、比較例2服用群では、皮膚細菌叢の変化は認められないものの、掻痒感及び皮膚症状の改善傾向はほとんど認められず、60%以上のパネラーにおいて症状の悪化を認めていた。 なお、上記実施例5〜実施例7については、皮膚一次刺激性及び皮膚感作性は全く認められず、実施例8についても、経口毒性,感作性及び催奇形性は認められなかった。また、本発明の実施例1〜実施例8は、25℃で6カ月間保存した場合においても製剤の状態変化は認められず、抗菌作用の低下も認められなかった。ニガリを有効成分とする、健康な肌に常在する表皮ブドウ球菌と皮膚疾患を持つ皮膚上に存在する有害な黄色ブドウ球菌を区別し、常在する有益な表皮ブドウ球菌の生育には影響を与えず、有害な黄色ブドウ球菌のみに抗菌作用を有することによる皮膚常在菌の生態系バランス調整剤。ローズマリー抽出物,カンゾウ抽出物から選択される1種又は2種の植物抽出物を併用した、請求項1に記載の皮膚常在菌の生態系バランス調整剤。


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