生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_白子からデオキシリボ核酸を得る方法
出願番号:2003372336
年次:2005
IPC分類:7,C12N15/09,C12P19/34


特許情報キャッシュ

穂苅 勝利 長谷川 栄治 梅原 泰男 関 陽平 横山 進之介 JP 2005130802 公開特許公報(A) 20050526 2003372336 20031031 白子からデオキシリボ核酸を得る方法 日本化学飼料株式会社 594072993 松井 光夫 100085545 穂苅 勝利 長谷川 栄治 梅原 泰男 関 陽平 横山 進之介 7C12N15/09C12P19/34C12P19/34C12R1:125C12P19/34C12R1:91 JPC12N15/00 AC12P19/34 ZC12P19/34 ZC12R1:125C12P19/34 ZC12R1:91 23 OL 22 4B024 4B064 4B024AA01 4B024AA05 4B024CA01 4B024HA03 4B064AF23 4B064BA18 4B064CA21 4B064CB06 4B064CD02 4B064CE04 4B064CE08 4B064DA01 4B064DA10 本発明は、白子、特にサケ、タラ、ニシンの白子からデオキシリボ核酸を得る方法に関する。 サケの白子から生産したデオキシリボ核酸(DNA)は、主に化粧品、食品添加物および医薬品原料として販売されている。他方、近年、光デバイス等の研究分野において二重らせん構造を有するDNAが、様々な物質と結合及び相互作用を発揮しながら機能性を発現する特性を利用し、光学素子、イオン伝導性膜、分離膜、難燃剤、エレクトロニクス素子などの材料として活用する研究が盛んに行われ、注目を浴びている。これら新規用途向けのDNAの品質適合条件としては、1)高純度であること、2)高分子量であること、3)二本鎖DNA含有量が高いこと、4)水に溶解したとき、濁りがないこと等の条件を満たす必要がある。従来、これらの品質適合条件を満たすための製造技術として、プロテアーゼを使用した酵素処理法が知られている(非特許文献1参照)。非特許文献1では、プロテアーゼを使用して、サケの白子中のタンパク質をアミノ酸レベルにまで酵素分解すること、次にプロテアーゼを加熱失活し、ろ過した溶液について、酸処理により主にDNAだけを沈殿させ、上澄み液を除去し水洗すること、次に沈殿をアルカリで溶解しセライト等のろ過助剤を用いてろ過し、クリアーな溶液とすること、そしてアルコールによってDNAを沈殿させ、乾燥してDNAを取る手法が記載されている。「サケのDNAの大量分離精製技術の研究開発」、海洋生物由来DNAの新機能材料化に関する研究 研究成果報告書、財団法人 北海道科学技術総合振興センター、第57〜第70頁、平成14年3月。 非特許文献1では、サケの白子からDNAを精製するためにプロテアーゼを使用すること、該方法によってサケの白子から高分子DNA(STS-DNA% 91.29%、蛋白質 1.74%、分子量分布中心 約10kbp(MW:約660万))を得ることが記載されている。しかし、非特許文献1では、プロテアーゼの種類は開示されていず、且つ実施の詳細についても記載されていない。 第1の発明は、白子を破砕して、水中懸濁液とすること、該懸濁液のpHを8.0〜9.5とすること、該懸濁液にトリプシンを加えて白子中のタンパク質を分解することを含む工程と、該タンパク質を分解した懸濁液に水溶性溶媒を加えて白子のデオキシリボ核酸(DNA)を沈殿させる工程と、そして沈殿したデオキシリボ核酸を含む画分を回収する工程とを含み、回収した画分中のデオキシリボ核酸純度が、回収した画分の乾燥重量当たり78重量%以上である、白子からデオキシリボ核酸を得る方法である。該方法では、懸濁液を得る際に、水中に塩化ナトリウムを存在させることが好ましい。該方法は、タンパク質を分解することを含む前記工程の直後に、該懸濁液にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加えて攪拌する工程をさらに含んでもよい。該方法は、前記回収した画分に水並びに塩化ナトリウム及び/又はドデシル硫酸ナトリウムを加えて懸濁液とし、得た懸濁液に水溶性溶媒を加えて白子のデオキシリボ核酸を沈殿させ、そして沈殿したデオキシリボ核酸を含む画分を回収する工程を1回以上繰り返すことを含んでもよい。また、デオキシリボ核酸を回収する前記工程が、回収した画分を乾燥することを含んでもよい。 第2の発明は、白子を破砕して、水中懸濁液とすること、該懸濁液のpHを6.0〜8.5とすること、該懸濁液に枯草菌由来のプロテアーゼを加えて白子中のタンパク質を分解することを含む工程と、該タンパク質を分解した懸濁液に水溶性溶媒を加えて白子のデオキシリボ核酸を沈殿させる工程と、そして沈殿したデオキシリボ核酸を含む画分を回収する工程とを含み、回収した画分中のデオキシリボ核酸純度が、回収した画分の乾燥重量当たり76重量%以上である、白子からデオキシリボ核酸を得る方法である。該方法では、懸濁液を得る際に、水中に塩化ナトリウムを存在させてもよい。該方法は、タンパク質を分解することを含む前記工程の直後に、該懸濁液にドデシル硫酸ナトリウムを加えて攪拌する工程をさらに含んでもよい。該方法は、前記回収した画分に水並びに塩化ナトリウム及び/又はドデシル硫酸ナトリウムを加えて懸濁液とし、得た懸濁液に水溶性溶媒を加えて白子のデオキシリボ核酸を沈殿させ、そして沈殿したデオキシリボ核酸を含む画分を回収する工程を1回以上繰り返すことを含んでもよい。また、デオキシリボ核酸を回収する前記工程が、回収した画分を乾燥することを含んでもよい。 白子を破砕して、水中懸濁液としたものにトリプシン又は枯草菌由来のプロテアーゼを加えて白子中のタンパク質を分解することによって、他のプロテアーゼを使用した場合に比べて、回収した画分中のDNA純度を高くし、さらにタンパク質の量を低減することが可能である。回収した画分のDNAの分子量分布中心は、300万以上又は600万以上である。 また、回収した該画分をさらに精製する場合、回収した画分に、塩化ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、又はそれらの組み合わせを加えて二次精製をおこなうことによって、回収した画分中のDNA純度をさらに高くし、さらにタンパク質の量を低減することが可能である。[トリプシンを使用した精製] 第1の発明は、白子を破砕して、水中懸濁液とすること、該懸濁液のpHを8.0〜9.5とすること、該懸濁液にトリプシンを加えて白子中のタンパク質を分解することを含む工程と、該タンパク質を分解した懸濁液に水溶性溶媒を加えて白子のデオキシリボ核酸を沈殿させる工程と、そして沈殿したデオキシリボ核酸を含む画分を回収する工程とを含み(以下、「一次精製」とよぶことがある)、回収した画分中のデオキシリボ核酸純度が、回収した画分の乾燥重量当たり78重量%以上である、白子からデオキシリボ核酸を得る方法である。 本発明において、「白子」とは、サケ(鮭)、タラ、ニシンなど(以下、「サケ等」という)より採れた精巣をいう。特にサケが好ましい。白子は、サケ等から採った直後のもの、又はマイナス20℃で凍結保存したものをそのまま、あるいは室温で解凍したものを任意に使用することができる。好ましくは、白子由来のDNA分解酵素が働くのを抑えるために冷凍庫から出した直後の白子を用いる。 白子を破砕する方法としては、白子を細かく破砕出来るものであればその種類を問わないが、例えばミキサー、チョッパー(肉をミンチするもの)、ハンマーミルを使用することができる。なお、一次精製を開始する直前に白子を破砕することが、白子に含まれるヌクレアーゼによってDNAが分解されて低分子化することを防ぐ点から好ましい。破砕された白子を冷凍したものを用いてもよい。 破砕された白子100重量部に対して、水400〜6,000重量部、好ましくは水400〜1,000重量部を加えて水中懸濁液とする。次に、塩化ナトリウムを該懸濁液100重量部に対して約2〜10重量%を必要に応じて加えることが好ましい。或いは、前記破砕された白子100重量部に8〜25重量%食塩水を加え、最終塩化ナトリウム濃度を5〜12重量%にしてもよい。 破砕された白子懸濁液に塩化ナトリウムを加えた場合、0.5時間〜2.0時間、40℃〜60℃の環境下で、攪拌する。このことによって、白子中のDNAが水中に溶解しやすくなると考えられる。 引き続き、上記懸濁液のpHをトリプシンの至適pH8.0〜9.5、好ましくはpH8.0〜8.5に調整する。トリプシンがウシ又はブタ由来であるとき、pHを8.0〜8.5に調整することが好ましい。 本発明において、「トリプシン」とは、すい臓から分泌されるプロテアーゼの中の1つであり、例えばブタ、ウシ由来のトリプシンを使用することができる。本発明では、市販品であるトリプシン例えばPTN(ノボザイムズジャパン株式会社)、トリプシンV(日本バイオコン株式会社)を任意に使用することが出来る。 pHを調整した懸濁液100重量部に対して、トリプシン(30,000ユニットの場合)0.05重量部〜0.5重量部を加えて白子中のタンパク質を分解する。例えば温度30℃〜55℃で、3〜8時間十分に攪拌しながらおこなうのがよい。攪拌中は、pHを一定時間間隔で監視し、トリプシンの至適pHの範囲外にならないように適宜pH調整をすることが好ましい。 引き続き、タンパク質を分解した後の懸濁液100重量部に対してSDS 0.5重量部〜2重量部を必要に応じて加える。トリプシンで反応させた後にSDSを加えて攪拌することによって、DNA純度をさらに上げ、且つタンパク質の量を低減することが可能である(下記実施例1および2、実施例3を参照)。攪拌条件は、例えば温度40℃〜55℃、1〜6時間で十分に攪拌しながらおこなうのがよい。SDSを上記懸濁液に加えることによって、トリプシンは失活すると考えられる。或いは、SDSを懸濁液に加えない場合、下記の水溶性溶媒を上記懸濁液に加えることによって、トリプシンは失活すると考えられる。なお、トリプシンを加えてDNAを得る方法の場合、トリプシンを加えて白子中のタンパク質を分解する工程の前にSDSを加えるとタンパク質の分解が進まない(データは示さず)。 トリプシンを加えて白子中のタンパク質を分解した後、又は更にSDSを加えて攪拌した後に、該液に水溶性溶媒を加える。水溶性溶媒は、水に可溶であるものであれば良く、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びアセトン並びにそれらの混合物のいずれかである。 好ましくは、前記メタノールが70体積%以上99.9体積%以下のメタノール及び残部の水から成る混合物の形態で加えられ、前記エタノールが60体積%以上99.9体積%以下のエタノール及び残部の水から成る混合物の形態で加えられ、前記イソプロパノールが60体積%以上99.9体積%以下のイソプロパノール及び残部の水から成る混合物の形態で加えられ、或いは前記アセトンが60体積%以上99.9体積%以下のアセトン及び残部の水から成る混合物の形態で加えられる。さらに好ましくは、前記メタノールが80体積%以上99.5体積%以下のメタノール及び残部の水から成る混合物の形態で加えられ、前記エタノールが70体積%以上99.5体積%以下のエタノール及び残部の水から成る混合物の形態で加えられ、前記イソプロパノールが70体積%以上99.5体積%以下のイソプロパノール及び残部の水から成る混合物の形態で加えられ、或いは前記アセトンが70体積%以上99.5体積%以下のアセトン及び残部の水から成る混合物の形態で加えられる。 水溶性溶媒は、タンパク質を分解した後の懸濁液又はSDSを加えて攪拌した後の懸濁液100重量部に対して、90〜99体積%のメタノール及び水を含むメタノール/水混合溶媒の場合300重量部〜900重量部、85〜93体積%のエタノール及び水を含むエタノール/水混合溶媒の場合150重量部〜200重量部、85〜95体積%のイソプロピルアルコール及び水を含むイソプロピルアルコール/水混合溶媒の場合150重量部〜200重量部、または90〜98体積%のアセトン及び水を含むアセトン/水混合溶媒の場合150重量部〜200重量部を加えることが好ましい。なお、アセトンでDNAを沈殿させた場合と、メタノール、エタノール又はイソプロピルアルコールでDNAを沈殿させた場合では、DNA純度、タンパク質の量、分子量分布中心の面で特に差は見られない。しかし、アセトンおよびイソプロピルアルコールで処理した場合、回収した画分は硬いのに対して、エタノールで処理した場合、回収した画分はやわらかい点で異なる。 水溶性溶媒を加えることによって、白子のDNAが沈殿する。沈殿したDNAは、濾過、上澄みのデカンテーション若しく容器の下部より沈殿物以外の溶液を抜き取ることにより、又は沈殿物を棒を使用して引き上げることにより回収することができる。 回収した画分は、減圧下(例えば20mmHg)、45〜60℃、水溶性溶媒を留去して乾燥してもよい。例えば、減圧釜、エバポレーターを使用してもよい。エバポレータの後に、真空乾燥機又は凍結乾燥機を使用することができる。水分が約10重量%以下0.1重量%以上、好ましくは5重量%以下0.1重量%以下になるまで、回収した画分を乾燥させる。 使用した水溶性溶媒を常法により精密蒸留することによって、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等を回収して再使用することが可能である。 トリプシンを加えて白子中のタンパク質を分解した場合、下記の枯草菌由来のプロテアーゼを除く他のプロテアーゼで処理した場合に比べて、回収した画分中のDNA純度を約10〜15%上げることができる。すなわち、下記比較例1−1(Bacillus licheniformis 由来のプロテアーゼ)、比較例2−1(Rhizopus niveus 由来のプロテアーゼ)、比較例3−1(ブタ由来のペプシン)において、DNA純度は、回収した画分の乾燥重量当たり約70%であるのに対して、トリプシンでは78%を超える。第1の発明において、回収した画分中のDNA純度は、回収した画分の乾燥重量当たり78重量%以上95重量%以下である。好ましくは、SDSをプロテアーゼ処理直後に使用することによって、DNA純度は、回収した画分の乾燥重量当たり80重量%以上90重量%以下である。 トリプシンでタンパク質を分解した場合、回収した画分中のタンパク質の量は、他のプロテアーゼで処理した場合(下記、比較例1−1、2−1、3−1を参照)よりも少なく、好ましくは約半分以下(約3.5重量%)にすることができる。すなわち、下記比較例1−1(Bacillus licheniformis 由来のプロテアーゼ)、比較例2−1(Rhizopus niveus 由来のプロテアーゼ)、比較例3−1(ブタ由来のペプシン)において、タンパク質の量は約7〜8重量%であるのに対して、トリプシンで処理した場合、回収した画分の乾燥重量当たり5重量%以下である(実施例1〜3を参照)。第1の発明において、回収した画分中のタンパク質の量は、好ましくは回収した画分の乾燥重量当たり6重量%以下、0.1重量%以上である。好ましくは、SDSをプロテアーゼ処理直後に使用することによって、回収した画分中のタンパク質の量は、回収した画分の乾燥重量当たり4重量%以下0.1重量%以上である。 従って、トリプシンで処理して回収した画分は、他のプロテアーゼ(下記の枯草菌由来のプロテアーゼを除く)で処理して回収した画分に比べて、DNA高純度であり且つタンパク質の量が少ない点で優れている。 回収した画分は、さらにDNA純度をあげ、且つタンパク質の量を減らすために、以下に示す精製に付すことができる(以下、「二次精製」とよぶことがある)。すなわち、二次精製は、前記回収した画分に水並びに塩化ナトリウム及び/又はドデシル硫酸ナトリウムを加えて懸濁液とし、得た懸濁液に水溶性溶媒を加えて白子のデオキシリボ核酸を沈殿させ、そして沈殿したデオキシリボ核酸を含む画分を回収する工程を1回以上繰り返しておこなう。なお、水溶性溶媒を加える直前に、脱臭効果を目的として、カーボンを加えてろ過しもよい。カーボンとしては、例えばカルボラフィン(武田薬品工業株式会社製)を使用することができる。カーボンは、懸濁液100重量部に対して、2重量部〜10重量部を加えることが出来る。 二次精製において好ましくは、塩化ナトリウムのみを用いる場合、懸濁液100重量部に対して1重量部〜5重量部を加える。SDSのみを用いる場合、懸濁液100重量部に対して1重量部〜5重量部を加える。塩化ナトリウムとSDSを併用する場合、懸濁液100重量部に対して塩化ナトリウム1重量部〜3重量部、SDS 1重量部〜2重量部を加える。 塩化ナトリウム及び/又はSDSを加えた場合、0.5時間〜2時間、30℃〜60℃の環境下で、攪拌する。 この操作を1回行った場合のDNA純度は、回収した画分の乾燥重量当たり80重量%以上、好ましくは82重量%、さらに好ましくは86重量%以上95重量%以下である。さらに好ましくは、二次精製を2回以上繰り返した場合のDNA純度は、回収した画分の乾燥重量当たり88重量%以上95重量%以下である。また、タンパク質の量は、好ましくは回収した画分の乾燥重量当たり4重量%以下、0.1重量%以上、さらに好ましくは1.5重量%以下、0.1重量%以上である。 本発明による二次精製方法は、塩化ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム又はそれらの組み合わせを使用すること、及びフェノール又はクロロホルムを使用したりすることがないことから効率的且つ経済的である。さらに、作業の安全性及び環境汚染の面からも有利である。 トリプシン処理の場合の回収した画分中のDNAの分子量分布中心は、電気泳動法で測定した場合、通常600万以上である。二次精製においてドデシル硫酸ナトリウムのみを加えた場合、回収した画分のDNAの分子量分布中心が300万以上となる場合がある。それに比べて、下記に示す比較例2、3のプロテアーゼ、すなわちRhizopus niveus 由来のプロテアーゼ、ブタ由来のペプシンでは、精製が進むにつれてDNAが分解する。 従って、高分子のDNAを得ることを目的とし、且つDNA純度が高く、タンパク質の量が少ない画分を得たい場合、トリプシンは他のプロテアーゼ(下記の枯草菌由来のプロテアーゼを除く)に比べて有利である。 なお、沈殿する前に常法に従い酸処理をおこなうことによって、低分子のDNAを含む画分とすることも可能である。或いは、回収した高分子DNAを再溶解して、常法に従い酸処理をおこなうことによって、低分子のDNAを含む画分を得ても良い。 白子に含まれるヌクレアーゼはDNAを低分子化すると考えられ。しかし、トリプシンの至適pHでは、ヌクレアーゼの活性が阻害されている。従って、ヌクレアーゼの活性が阻害されないpH領域すなわちpH8以下にすることによって、回収した画分を低分子化し、低分子のDNAを含む画分を得てもよい。[枯草菌由来のプロテアーゼを使用した精製] 第2の発明は、白子を破砕して、水中懸濁液とすること、該懸濁液のpHを6.0〜8.5とすること、該懸濁液に枯草菌由来のプロテアーゼを加えて白子中のタンパク質を分解することを含む工程と、該タンパク質を分解した懸濁液に水溶性溶媒を加えて白子のデオキシリボ核酸を沈殿させる工程と、そして沈殿したデオキシリボ核酸を含む画分を回収する工程とを含み(以下、「一次精製」とよぶことがある)、回収した画分中のデオキシリボ核酸純度が、回収した画分の乾燥重量当たり76重量%以上である、白子からデオキシリボ核酸を得る方法である。 以下に、第2の発明について、第1の発明と異なる点について主に述べる 枯草菌由来のプロテアーゼを白子の懸濁液に加える前に、懸濁液のpHを枯草菌由来のプロテアーゼの至適pH6.0〜8.5、好ましくはpH6〜7に調整する。 本発明において、「枯草菌由来のプロテアーゼ」として、市販品であるプロチンPC−10(大和化成株式会社社製)、プロテアーゼN「アマノ」(天野エンザイム株式会社製)、ビオブラーゼ(長瀬産業株式会社製)などを使用することができる。 pHを調整した懸濁液100重量部に対して、枯草菌由来のプロテアーゼ(100,000ユニットの場合)0.1重量部〜1.0重量部を加えて白子中のタンパク質を分解する。条件は、例えば温度30℃〜55℃で、3〜8時間十分に攪拌しながらおこなうのがよい。攪拌中は、pHを一定時間間隔で監視し、枯草菌由来のプロテアーゼの至適pHから外れないようにpH調整をすることが好ましい。 引き続き、タンパク質を分解した後の懸濁液100重量部に対してSDS0.5重量部〜2重量部を必要に応じて加える。枯草菌由来のプロテアーゼで反応させた後にSDSを加えて攪拌することによって、DNA純度をさらに上げ、且つタンパク質の量を低減することが可能である(下記実施例4、5を参照)。攪拌条件は、例えば温度40℃〜55℃で、1〜6時間十分に攪拌しながらおこなうのがよい。なお、SDSを上記懸濁液に加えることによって、枯草菌由来のプロテアーゼは失活すると考えられる。或いは、SDSを懸濁液に加えない場合、下記の水溶性溶媒を上記懸濁液に加えることによって、枯草菌由来のプロテアーゼは失活すると考えられる。 タンパク質を分解した後、又は更にSDSを加えて攪拌した後に、該液に水溶性溶媒を加える。水溶性溶媒の添加する量は、前記した通りである。また、沈殿したDNAを含む画分を回収する方法も、前記した通りである。 枯草菌由来のプロテアーゼを使用した場合、トリプシン以外の他のプロテアーゼで処理した場合に比べて、回収した画分中のDNA純度を約10〜13%上げることができる。すなわち、下記比較例1−1(Bacillus licheniformis 由来のプロテアーゼ)、比較例2−1(Rhizopus niveus 由来のプロテアーゼ)、比較例3−1(ブタ由来のペプシン)において、DNA純度は、回収した画分の乾燥重量当たり約70重量%であるのに対して、枯草菌由来のプロテアーゼでは76重量%を超える。第2の発明において、回収した画分中のDNA純度は、回収した画分の乾燥重量当たり76重量%以上95重量%以下である。好ましくは、SDSを枯草菌由来のプロテアーゼ処理後に使用することによって、DNA純度は、回収した画分の乾燥重量当たり78重量%以上95重量%以下、更に好ましくは80重量%以上90重量%以下である。 枯草菌由来のプロテアーゼを使用した場合、回収した画分中のタンパク質の量は、約6重量%以下である。一方、他のプロテアーゼ(トリプシンを除く)で処理した場合(下記、比較例1−1、2−1、3−1を参照)のタンパク質の量は、回収した画分の乾燥重量当たり約7〜8%である。この第2の発明において、回収した画分中のタンパク質の量は、好ましくは回収した画分の乾燥重量当たり6重量%以下、0.1重量%以上である。好ましくは、前記した塩化ナトリウム、SDS又はそれらの組み合わせを使用することによって、回収した画分中のタンパク質の量は、回収した画分の乾燥重量当たり4重量%以上0.1重量%以下である。 下記実施例12において枯草菌由来のプロテアーゼで処理後、1回二次精製をした場合、DNA純度92.1%、タンパク質の量は1.7%である。このDNA純度は、下記実施例6においてトリプシンで処理後、1回二次精製をした場合(91.9重量%)の値とほぼ同じであり、タンパク質の量(0.9%)はさらに低減されている。従って、トリプシンで処理した場合、1回二次精製をすればDNA純度が高く且つタンパク質の量の少ないDNAが得られ、枯草菌由来のプロテアーゼで処理した場合は、2回二次精製することによってトリプシンで処理した場合とほぼ同等又はそれ以上のDNA純度及びタンパク質の画分を得ることができる。枯草菌由来のプロテアーゼの場合、2回二次精製を行わなければならないのに対して、トリプシンで処理した場合、1回二次精製をすればよい点で枯草菌のプロテアーゼは劣る。しかし、トリプシンは、枯草菌由来のプロテアーゼよりも高価であることから、枯草菌由来のプロテアーゼを用い、2回二次精製をした方が経済性を考えた場合好ましい。なお、他のプロテアーゼで処理し、2回二次精製をしたとしても、そのDNA純度は約75〜80(重量%)、タンパク質の量は、約4.5〜6.5(重量%)である(下記、比較例1−2、1−3、2−2、2−3、3−2、3−3を参照)。従って、枯草菌由来のプロテアーゼで処理し、その後二次精製を1回以上繰り返すことは、トリプシンを除く他のプロテアーゼに比べて有利である。 一次精製においてSDSを用い、かつ二次精製をした後に回収した画分のDNA純度は、回収した画分の乾燥重量当たり86重量%以上95重量%以下である。また、一次精製においてSDSを用い、かつ二次精製を2回以上繰り返して回収した画分のDNA純度は、回収した画分の乾燥重量当たり88重量%以上95重量%以下である。 枯草菌由来のプロテアーゼを用いた場合の回収した画分中のDNAの分子量分布中心は、電気泳動法で測定した場合、600万以上である。従って、第2の発明に従い回収した画分中のDNAは、高分子量である。それに比べて、下記に示す比較例2、3のプロテアーゼ、すなわちRhizopus niveus 由来のプロテアーゼ、ブタ由来のペプシンの場合には、精製が進むにつれてDNAが分解する。 以上より、プロテアーゼの中でも、トリプシン、枯草菌由来のプロテアーゼが、他のプロテアーゼを使用した場合よりも、DNA純度を上げ且つタンパク質の量を減らす上で非常に有利である。トリプシン又は枯草菌由来のプロテアーゼを用いた場合には、二次精製を行っても分子量分布中心を低減することがない点でも他のプロテアーゼに比べて優れている。[実施例] 下記実施例では、北海道東部で漁獲されたサケから採取したサケ白子を用いた。採取したサケ白子を、ただちにマイナス20℃で凍結保存し、試験直前に解凍した。解凍した白子を、ミキサー(ハミルトン社製パワーブレンダー)で、11,000rpm、20℃で、1分間破砕した。破砕された白子の水分、粗脂肪、タンパク質、灰分を表1に示す。 なお、水分(重量%)は、105℃で、2時間乾燥後の重量を測定することにより求めた。粗脂肪(重量%)は、ソックスレー抽出法により測定した。タンパク質(重量%)はローリーフォーリン法により測定した。灰分(重量%)は、マッフル炉中580℃で4時間硫酸灰化して測定した。 下記実施例において、回収した画分の絶乾重量は、回収した画分を105℃で2時間乾燥後の重量を測定することにより求めた。 回収した画分のDNA純度は、以下に従い求めた。まず、画分のDNAを酸で熱分解してモノヌクレオチドとし、STS法(Schmidt-Thanhauser-Schneider法、「食品分析法」、日本食品工業学会編、光琳株式会社、563頁〜565頁を参照)を使用して260nmの吸光度を測定し、DNAの重量へと換算した。これを、画分の絶乾重量で除してDNA純度(重量%)を得た。 回収した画分のタンパク質の量(重量%)は、以下に従い求めた。まず、ローリーフォーリン法を使用してタンパク質の重量を得た。これを画分の絶乾重量で除して重量%値を得た。 DNAの分子量分布中心は、0.7%濃度のアガロースゲル電気泳動法を使用して得たバンドの最も濃く見えるバンドを中心として採用し、その中心値(kbp)を60万倍して分子量分布中心とした。標準マーカーとして、HyperLadder I(BIOLINE社製)を使用した。 また、下記実施例において99%エタノールは、99度以上一級発酵エチルアルコール(合同溶剤株式会社製)、99%アセトンは、アセトン(キシダ化学株式会社製)を使用した。(ブタ由来のトリプシン、塩化ナトリウム無添加、SDSの添加) 破砕したサケ白子1kgに10リットルの水を加え、水酸化ナトリウムでpH8.0に調整した。該溶液に、ブタ由来のトリプシン(カタログNo. 205-09892、2000U/g、和光純薬株式会社製)10gを加えて、50℃で5時間攪拌した。引き続き、100gのSDSを加えて、50℃で5時間攪拌した。次に、この溶液を濾紙濾過した。濾過した溶液に99%エタノール12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、濾紙上から回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、83g(収率8.3%白子換算)であった。その一般的性状を表2に示す。(ブタ由来のトリプシン、塩化ナトリウムとSDSの添加) 破砕したサケ白子1kgに10リットルの水及び600gの塩化ナトリウムを加え、50℃で1時間攪拌した。次に、水酸化ナトリウムでpH8.0に調整した。該溶液に、実施例1と同じトリプシン10gを加えて、50℃で5時間攪拌した。引き続き、100gのSDSを加えて、50℃で5時間攪拌した。次に、この溶液を濾紙濾過した。濾過した溶液に99%エタノール12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、81g(収率8.1%白子換算)であった。その一般的性状を表3に示す。 実施例2で回収した画分を実施例1で回収した画分(DNA純度82.3%、タンパク質の量3.5%)と比較すると、DNA純度は約2%高いが、タンパク質の量に大きな差はない。従って、DNA純度を高めることを目的に塩化ナトリウムを加えることは効果がある。(ブタ由来のトリプシン、塩化ナトリウムの添加、SDS無添加) 破砕したサケ白子1kgに10リットルの水及び600gの塩化ナトリウムを加え、50℃で1時間攪拌した。次に、水酸化ナトリウムでpH8.0に調整した。該溶液に、実施例1と同じトリプシン10gを加えて、50℃で5時間攪拌した。次に、この溶液を濾紙濾過した。濾過した溶液に99%エタノール12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、80g(収率8.0%白子換算)であった。その一般的性状を表4に示す。 実施例3で回収した画分のDNA純度、タンパク質の量を実施例1または実施例2で回収した画分のそれらと比べると、精製度は良くない。しかし、実施例3で回収した画分のDNA純度、タンパク質の量は、下記比較例1−1、2−1、3−1で回収した画分のそれらと比べると、優れている。(枯草菌由来のプロテアーゼ、塩化ナトリウムとSDSの添加) 破砕したサケ白子1kgに10リットルの水及び600gの塩化ナトリウムを加え、50℃で1時間攪拌した。次に、水酸化ナトリウムでpH7.5に調整した。該溶液に、枯草菌由来のプロテアーゼ(商品名:プロチンPC−10、100,000PU/g、大和化成株式会社社製)20gを加えて、50℃で5時間攪拌した。引き続き、100gのSDSを加え、50℃で5時間攪拌した。次に、この溶液を濾紙濾過した。濾過した溶液に99%エタノールを12リットル加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、85g(収率8.5%白子換算)であった。その一般的性状を表5に示す。(枯草菌由来のプロテアーゼ、塩化ナトリウムの添加、SDS無添加) 破砕したサケ白子1kgに10リットルの水及び600gの塩化ナトリウムを加え、50℃で1時間攪拌した。次に、水酸化ナトリウムでpH7.5に調整した。該溶液に、実施例3と同じ枯草菌由来のプロテアーゼ(商品名:プロチンPC−10)20gを加えて、50℃で5時間攪拌した。この溶液に99%エタノールを12リットル加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、85g(収率8.5%白子換算)であった。その一般的性状を表6に示す。 実施例5で回収した画分は、実施例4で回収した画分(DNA純度81.4%、タンパク質の量5.6%)と比べて精製度が低い。しかし、実施例5で回収した画分のDNA純度、タンパク質の量は、下記比較例1−1、2−1、3−1で回収した画分のそれらと比べると、優れている。(ブタ由来のトリプシン、二次精製(塩化ナトリウムとSDS)) 実施例2と同様にして回収した画分すべてを10リットルの水に溶解した。引き続き、200gの塩化ナトリウム及び100gのSDSを加えて、50℃で1時間攪拌した。次に、この溶液を濾紙濾過した。濾過した溶液に99%エタノール12リットルを加えて、DNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、77g(収率7.7%白子換算)であった。その一般的性状を表7に示す。 実施例2で回収した画分(DNA純度84.4%、タンパク質の量3.3%)に塩化ナトリウム及びSDSを加えて反応させることによって、DNA純度は7.5%上昇し、タンパク質の量は3.3%から0.9%に減少した。(ブタ由来のトリプシン、二次精製(SDSのみ)) 実施例2と同様にして回収した画分すべてを10リットルの水に溶解した。引き続き、100gのSDSを加えて、50℃で1時間攪拌した。次に、この溶液を濾紙濾過した。濾過した溶液に99%エタノール12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、78g(収率7.8%白子換算)であった。その一般的性状を表8に示す。 実施例2で回収した画分(DNA純度84.4%、タンパク質の量3.3%)にSDSを加えて反応させることによって、DNA純度は2.3%上昇し、タンパク質の量は3.3%から2.5%に減少した。(ブタ由来のトリプシン、三次精製(SDSで2回)) 実施例7と同様にして回収した画分すべてを10リットルの水に溶解した。引き続き、100gのSDSを加えて、50℃で1時間攪拌した。この溶液に99%エタノール12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、74g(収率7.4%白子換算)であった。その一般的性状を表9に示す。 実施例7で回収した画分(DNA純度86.7%、タンパク質の量2.5%)にSDSを加えてさらに反応させることによって、DNA純度は3.6%上昇し、タンパク質の量は2.5%から1.8%に減少した。また、実施例8で回収した画分を実施例2で回収した画分(DNA純度84.4%、タンパク質の量3.3%)と比較すると、DNA純度は5.9%上昇し、タンパク質の量は3.3%から1.8%に減少した。なお、実施例7で回収した画分のDNAの分子量分布中心は600万であるのに対して、実施例8で回収した画分のDNAの分子量分布中心は360万であり、低分子量化されていた。すなわち、実施例8では、2回目の二次精製でDNAが分解された。これは、DNAを再溶解した場合の物理的要因であると考えられる。(ブタ由来のトリプシン、二次精製(塩化ナトリウムのみ)) 実施例2と同様にして回収した画分すべてを10リットルの水に溶解した。引き続き、200gの塩化ナトリウムを加えて、50℃で1時間攪拌した。次に、この溶液を濾紙濾過した。濾過した溶液に99%エタノール12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、79g(収率7.9%白子換算)であった。その一般的性状を表10に示す。 実施例2で回収した画分(DNA純度84.4%、タンパク質の量3.3%)に塩化ナトリウムを加えて反応させることによって、DNA純度は1.7%上昇し、タンパク質の量は3.3%から3.0%に減少した。 実施例9で回収した画分を実施例7で回収した画分(DNA純度86.7%、タンパク質の量2.5%)と比較すると、DNA純度はほぼ同じである。しかし、塩化ナトリウムに比べてSDSで二次精製した場合、タンパク質の量は減ると考えられる。(ブタ由来のトリプシン、三次精製(塩化ナトリウムで2回)) 実施例9と同様にして回収した画分すべてを10リットルの水に溶解した。引き続き、200gの塩化ナトリウムを加えて、50℃で1時間攪拌した。この溶液に99%エタノール12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、77g(収率7.7%白子換算)であった。その一般的性状を表11に示す。 実施例9と同様にして回収した画分(DNA純度86.1%、タンパク質の量3.0%)に塩化ナトリウムを加えてさらに反応させることによって、DNA純度は3.8%上昇し、タンパク質の量は3.0%から2.0%に減少した。 また、実施例10で回収した画分を実施例2で回収した画分(DNA純度84.4%、タンパク質の量3.3%)と比較すると、DNA純度は5.5%上昇し、タンパク質の量は3.3%から2.0%に減少した。 実施例10で回収した画分を実施例8で回収した画分(DNA純度90.3%、タンパク質の量1.8%)とを比較すると、DNA純度及びタンパク質の量の面でほぼ変わらない。しかし、実施例8で回収した画分のDNAの分子量分布中心は360万であるのに対して、実施例10で回収した画分のDNAの分子量分布中心は600万である。従って、SDSで二次精製を2回以上繰り返した場合、分子量分布中心の低下が起こったのに対して、SDSとともに塩化ナトリウムで処理した場合、分子量分布中心の低下を防ぐことができた。(枯草菌由来のプロテアーゼ、二次精製(塩化ナトリウムとSDS)) 実施例4と同様にして回収した画分すべてを10リットルの水に溶解した。引き続き、200gの塩化ナトリウム及び100gのSDSを加えて、50℃で1時間攪拌した。この溶液に99%アセトンを12リットル加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、80g(収率8.0%白子換算)であった。その一般的性状を表12に示す。 実施例4で回収した画分(DNA純度81.4%、タンパク質の量5.6%)に塩化ナトリウム及びSDSを加えて反応させることによって、DNA純度は6.1%上昇し、タンパク質の量は5.6%から3.1%に減少した。(枯草菌由来のプロテアーゼ、三次精製(塩化ナトリウムとSDSで2回)) 実施例11と同様にして回収した画分すべてを10リットルの水に溶解した。引き続き、200gの塩化ナトリウム及び100gのSDSを加え、50℃で1時間攪拌した。この溶液に99%エタノール12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、75g(収率7.5%白子換算)であった。その一般的性状を表13に示す。 実施例11で回収した画分(DNA純度87.5%、タンパク質の量3.1%)に塩化ナトリウム及びSDSを加えて反応させることによって、DNA純度は4.6%上昇し、タンパク質の量は3.1%から1.7%に減少した。(ニシンの白子)(ブタ由来のトリプシン)(一次精製) ニシン白子1kgをミキサー(ハミルトン社製パワーブレンダー)で、11,000rpm、20℃で、1分間破砕し、破砕したものに10リットルの水および600gの塩化ナトリウムを加え、50℃で1時間攪拌した。次に、水酸化ナトリウムでpH8.0に調整した。該溶液に、実施例1と同じブタ由来のトリプシン10gを加えて、50℃で5時間攪拌した。引き続き、100gのSDSを加えて、50℃で5時間攪拌した。引き続き、100gのSDSを加え、50℃で5時間攪拌した。次に、この溶液を濾紙濾過した。濾過した溶液に99%エタノール12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。(二次精製) 回収した画分すべてを10リットルの水に溶解した。引き続き、200gの塩化ナトリウム及び100gのSDSを加えて、50℃で1時間攪拌した。次に、この溶液を濾紙濾過した。濾過した溶液に99%エタノール12リットルを加えて、DNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。 二次精製をさらにもう1回繰り返し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、51g(収率5.1%白子換算)であった。その一般的性状を表14に示す。[比較例1](Bacillus licheniformis 由来のプロテアーゼ)(比較例1−1) 破砕したサケ白子1kgに10リットルの水および600gの塩化ナトリウムを加え、50℃で1時間攪拌した。次に、水酸化ナトリウムでpH8.0に調整した。該溶液に、Bacillus licheniformis 由来のプロテアーゼ(商品名:PAL440、440DAPU/g、DEERLAND ENZYMES製)20gを加えて、50℃で5時間攪拌した。引き続き、100gのSDSを加え、50℃で5時間攪拌した。次に、この溶液を濾紙濾過した。濾過した溶液に99%エタノール12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、82g(収率8.2%白子換算)であった。その一般的性状を表15に示す。 比較例1−1で回収した画分は、実施例1〜5で回収した画分と比べて、DNA純度が低く、かつタンパク質が十分に除去されていない。(比較例1−2)(二次精製) 比較例1−1と同様にして回収した画分すべてを10リットルの水に溶解した。引き続き、200gの塩化ナトリウム及び100gのSDSを加え、50℃で1時間攪拌した。この溶液に99%アセトン12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、78g(収率7.8%白子換算)であった。その一般的性状を表16に示す。 比較例1−1で回収した画分(DNA純度70.4%、タンパク質の量7.7%)に塩化ナトリウム及びSDSを加えて反応させることによって、DNA純度は2.1%上昇し、タンパク質の量は7.7%から6.5%に減少した。(比較例1−3)(三次精製) 比較例1−2と同様にして回収した画分すべてを10リットルの水に溶解した。引き続き、200gの塩化ナトリウム及び100gのSDSを加え、50℃で1時間攪拌した。この溶液に99%エタノール12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は75g(収率7.5%白子換算)であった。その一般的性状を表17に示す。 比較例1−2で回収した画分(DNA純度72.5%、タンパク質の量6.5%)に塩化ナトリウム及びSDSを加えて反応させることによって、DNA純度は2.6%上昇し、タンパク質の量は6.5%から4.8%に減少した。[比較例2](Rhizopus niveus 由来のプロテアーゼ)(比較例2−1) 破砕したサケ白子1kgに10リットルの水および600gの塩化ナトリウムを加え、50℃で1時間攪拌した。次に、酢酸で最適pH5.0に調整した。該溶液に、Rhizopus niveus 由来のプロテアーゼ(商品名:ニューラーゼF、7000U/g、天野エンザイム株式会社製)20gを加えて、50℃で5時間攪拌した。引き続き、100gのSDSを加え、50℃で5時間攪拌した。次に、この溶液を濾紙濾過した。濾過した溶液に99%エタノール12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、81g(収率8.1%白子換算)であった。その一般的性状を表18に示す。 従って、比較例2−1で回収した画分は、実施例1〜5で回収した画分と比べて、DNA純度が低く、かつタンパク質が十分に除去されていない。また、DNAが分解され、DNAの分子量分布中心は300万以上であった。(比較例2−2)(二次精製) 比較例2−1と同様にして回収した画分すべてを10リットルの水に溶解した。引き続き、200gの塩化ナトリウム及び100gのSDSを加え、50℃で1時間攪拌した。この溶液に99%アセトン12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)60℃で、7時間乾燥した。その重量は、78g(収率7.8%白子換算)であった。その一般的性状を表19に示す。 比較例2−1で回収した画分(DNA純度70.5%、タンパク質の量6.8%)に塩化ナトリウム及びSDSを加えて反応させることによって、DNA純度は7.3%上昇し、タンパク質の量は6.8%から5.7%に減少した。また、比較例2−1のDNAの分子量分布中心は300万以上であるのに対して、比較例2−2のDNAの分子量分布中心は150万以上である。従って、1回目の二次精製でもDNAがさらに分解されたが、これは溶液のpHによるものと考えられる。(比較例2−3)(三次精製) 比較例2−2と同様にして回収した画分すべてを10リットルの水に溶解した。引き続き、200gの塩化ナトリウム及び100gのSDSを加え、50℃で1時間攪拌した。この溶液にカーボン50gを加え、ろ過した。この溶液に99%エタノール12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、74g(収率7.4%白子換算)であった。その一般的性状を表20に示す。 比較例2−2で回収した画分(DNA純度77.8%、タンパク質の量5.7%)に塩化ナトリウム及びSDSを加えて反応させることによって、DNA純度は1.5%上昇し、タンパク質の量は5.7%から5.2%に減少した。また、比較例2−1、比較例2−2のDNAの分子量分布中心はそれぞれ300万以上、150万以上であるのに対して、比較例2−3のDNAの分子量分布中心は、120万以上であり、三次精製でもDNAがさらに分解された。[比較例3](ブタ由来のペプシン)(比較例3−1) 破砕したサケ白子1kgに10リットルの水および600gの塩化ナトリウムを加え、50℃で1時間攪拌した。次に、酢酸で最適pH2.0に調整した。該溶液に、ブタ由来のペプシン(カタログNo. 160-18722、和光純薬株式会社製)20gを加えて、50℃で5時間攪拌した。引き続き、100gのSDSを加え、50℃で5時間攪拌した。次に、この溶液を濾紙濾過した。濾過した溶液に99%エタノール12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、84g(収率8.4%白子換算)であった。その一般的性状を表21に示す。 比較例3−1で回収した画分は、実施例1〜5で回収した画分と比べて、DNA純度も低く、かつタンパク質が十分に除去されていない。また、DNAが分解され、DNAの分子量分布中心は120万以上であった。(比較例3−2)(二次精製) 比較例3−1と同様にして回収した画分すべてを10リットルの水に溶解した。引き続き、200gの塩化ナトリウム及び100gのSDSを加えて、50℃で1時間攪拌した。この溶液に99%アセトン12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、80g(収率8.0%白子換算)であった。その一般的性状を表22に示す。 比較例3−1で回収した画分(DNA純度71.0%、タンパク質の量7.9%)に塩化ナトリウム及びSDSを加えて反応させることによって、DNA純度は4.9%上昇し、タンパク質の量は7.9%から7.4%に減少した。なお、比較例3−1のDNAの分子量分布中心は120万であるのに対して、比較例3−2のDNAの分子量分布中心は60万である。従って、1回目の二次精製でもDNAがさらに分解されたが、これは溶液のpHによるものと考えられる。(比較例3−3)(三次精製) 比較例3−2と同様にして回収した画分すべてを10リットルの水に溶解した。引き続き、200gの塩化ナトリウム及び100gのSDSを加え、50℃で1時間攪拌した。この溶液に99%エタノール12リットルを加えてDNAを沈殿させた。該溶液を濾過し、回収した画分を減圧下(20mmHg)、60℃で、7時間乾燥した。その重量は、78g(収率7.8%白子換算)であった。その一般的性状を表23に示す。 比較例3−2で回収した画分(DNA純度75.9%、タンパク質の量7.4%)に塩化ナトリウム及びSDSを加えて反応させることによって、DNA純度は3.6%上昇し、タンパク質の量は7.4%から6.3%に減少した。なお、比較例3−1、比較例3−2のDNAの分子量分布中心はそれぞれ120万以上、60万以上であるのに対して、比較例3−3のDNAの分子量分布中心は20万以上であり、三次精製でもDNAがさらに分解された。 白子を破砕して、水中懸濁液とすること、該懸濁液のpHを8.0〜9.5とすること、該懸濁液にトリプシンを加えて白子中のタンパク質を分解することを含む工程と、該タンパク質を分解した懸濁液に水溶性溶媒を加えて白子のデオキシリボ核酸を沈殿させる工程と、そして沈殿したデオキシリボ核酸を含む画分を回収する工程とを含み、回収した画分中のデオキシリボ核酸純度が、回収した画分の乾燥重量当たり78重量%以上である、白子からデオキシリボ核酸を得る方法。 白子を破砕して、水中懸濁液とすること、該懸濁液のpHを6.0〜8.5とすること、該懸濁液に枯草菌由来のプロテアーゼを加えて白子中のタンパク質を分解することを含む工程と、該タンパク質を分解した懸濁液に水溶性溶媒を加えて白子のデオキシリボ核酸を沈殿させる工程と、そして沈殿したデオキシリボ核酸を含む画分を回収する工程とを含み、回収した画分中のデオキシリボ核酸純度が、回収した画分の乾燥重量当たり76重量%以上である、白子からデオキシリボ核酸を得る方法。 前記トリプシンが、ウシ又はブタ由来である、請求項1に記載の方法。 pHの調整において、pHを8.0〜8.5に調整する、請求項3に記載の方法。 懸濁液を得る際に、水中に塩化ナトリウムを存在させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 タンパク質を分解することを含む前記工程の直後に、該懸濁液にドデシル硫酸ナトリウムを加えて攪拌する工程をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。 前記回収した画分に水並びに塩化ナトリウム及び/又はドデシル硫酸ナトリウムを加えて懸濁液とし、得た懸濁液に水溶性溶媒を加えて白子のデオキシリボ核酸を沈殿させ、そして沈殿したデオキシリボ核酸を含む画分を回収する工程を1回以上繰り返す、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。 デオキシリボ核酸を回収する前記工程が、回収した画分を乾燥することを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。 前記水溶性溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びアセトン並びにそれらの混合物のいずれかである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。 前記メタノールが、70体積%以上99.9体積%以下のメタノール及び残部の水から成る混合物の形態で加えられる、請求項9に記載の方法。 前記エタノールが、60体積%以上99.9体積%以下のエタノール及び残部の水から成る混合物の形態で加えられる、請求項9に記載の方法。 前記イソプロパノールが、60体積%以上99.9体積%以下のイソプロパノール及び残部の水から成る混合物の形態で加えられる、請求項9に記載の方法。 前記アセトンが、60体積%以上99.9体積%以下のアセトン及び残部の水から成る混合物の形態で加えられる、請求項9に記載の方法。 回収した画分のデオキシリボ核酸純度が、回収した画分の乾燥重量当たり80重量%以上である、請求項6及び7のいずれか一項に記載の方法。 請求項7に記載の工程を1回繰り返して回収した画分のデオキシリボ核酸純度が、回収した画分の乾燥重量当たり82重量%以上である、請求項7〜13のいずれか一項に記載の方法。 請求項6の工程を行い、かつ請求項7に記載の工程を行った後に回収した画分のデオキシリボ核酸純度が、回収した画分の乾燥重量当たり86重量%以上である、請求項7〜13のいずれか一項に記載の方法。 請求項6の工程を行い、かつ請求項7に記載の工程を2回以上繰り返して回収した画分のデオキシリボ核酸純度が、回収した画分の乾燥重量当たり88重量%以上である、請求項7〜13のいずれか一項に記載の方法。 回収した画分のタンパク質含量が、回収した画分の乾燥重量当たり6重量%以下である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。 請求項7に記載の工程を1回繰り返して回収した画分のタンパク質含量が、回収した画分の乾燥重量当たり4重量%以下である、請求項7に記載の方法。 請求項7に記載の工程を2回以上繰り返して回収した画分のタンパク質含量が、回収した画分の乾燥重量当たり2重量%以下である、請求項7に記載の方法。 請求項7においてドデシル硫酸ナトリウムを加え、回収した画分のデオキシリボ核酸の分子量分布中心が300万以上である、請求項7に記載の方法。 請求項7において塩化ナトリウム及びドデシル硫酸ナトリウムを加え、回収した画分のデオキシリボ核酸の分子量分布中心が600万以上である、請求項7に記載の方法。 前記白子が、サケ、タラ、ニシンのいずれかの白子である、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。 【課題】白子からDNAを得る方法において、回収した画分中のDNA純度を高くし、さらにタンパク質の量を少なくする、効率よくかつ経済的な方法を提供する。【解決手段】 白子を破砕して、水中懸濁液とし、該懸濁液にトリプシン又は枯草菌由来のプロテアーゼを加えて白子中のタンパク質を分解することによって、他のプロテアーゼに比べて、回収した画分中のDNA純度を高くし、さらにタンパク質の量を低減することが可能である。また、回収した該画分をさらに精製する場合、回収した画分に、塩化ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、又はそれらの組み合わせを加えて二次精製をおこなうことによって、回収した画分中のDNA純度をさらに高くし、さらにタンパク質の量を低減することが可能である。【選択図】なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る