タイトル: | 公開特許公報(A)_高分子ポリマーの分子量分布の測定方法 |
出願番号: | 2003357737 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,G01N30/88,C08F8/14,G01N30/06,G01N30/48,G01N30/26,G01N30/74 |
加川 邦博 JP 2005121519 公開特許公報(A) 20050512 2003357737 20031017 高分子ポリマーの分子量分布の測定方法 日本油脂BASFコーティングス株式会社 599076424 加川 邦博 7G01N30/88C08F8/14G01N30/06G01N30/48G01N30/26G01N30/74 JPG01N30/88 PC08F8/14G01N30/06 EG01N30/48 MG01N30/26 AG01N30/74 Z 4 OL 7 4J100 4J100AU39 4J100BA16 4J100BA20 4J100CA31 4J100FA01 4J100HA11 4J100HA61 4J100HC01 4J100HC13 本発明は、ポリスチレン系GPCカラムによる高分子ポリマーの分子量分布測定方法に関し、特に樹脂酸価が20以上である分子内にカルボキシル基を含有する高分子ポリマーの分子量分布測定方法に関する。 従来、ポリスチレン系GPCカラムを用いて高分子ポリマーの分子量分布測定を行うに際して、溶離液としてテトラヒドロフラン、クロロホルム、o−ジクロロベンゼンなどが用いられてきた。しかしながら、酸価の高い親水性の高分子ポリマーは、これらの溶離液に溶解しにくいばかりか、GPCカラムに吸着しやすい性質があり、正確な分子量分布の測定ができなかった。また、一度、カラムに吸着した高分子ポリマーは、通常の洗浄では除去が難しく、カラムを取替るなどの不都合があった。 分子内に解離基を有する高分子ポリマーの分子量分布をポリスチレン系GPCカラムで測定する場合には、N,N−ジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルホルムアミドに塩類やリン酸を添加した溶離液に換えて、(1)塩類、および(2)塩基化合物または酸性化合物が添加されたN−アルキルピロリドン溶液、あるいはこのようなN−アルキルピロリドン溶液と疎水性有機溶媒との混合溶液を溶離液として用いて、分子内に解離基を有する高分子ポリマーをポリスチレン系GPCカラムで測定する方法が知られている。(特許文献1など) この特許においては、陰イオン性の解離基を有する高分子ポリマーは、強酸性の解離基を有していてもよく、また弱酸性の解離基を有していてもよく、具体的には、主鎖、主鎖末端あるいは分岐鎖末端などに、スルホニル基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基などの陰イオン性官能基あるいはこれらの官能基の結合を1個以上有する高分子ポリマーを挙げている。 しかしながら、この方法では、1)溶離液のコストがテトラヒドロフランに比べて高い、2)既知分子量のポリマーの検量線からの分子量が「ポリエチレングリコール−ポリエチレンオキサイド換算」であって、「ポリスチレン換算」ではないために、他の疎水性高分子ポリマーとの分子量分布の正確な比較ができない、3)溶離液が異なるため、溶液中での分子サイズがテトラヒドロフランの場合とは異なる、などの欠点があった。特開平6−317575号 本発明の目的は、ポリスチレン系GPCカラム用として通常用いられている安価なテトラヒドロフランなどの溶離液を用いて、酸価の高い親水性の高分子ポリマーの分子量分布を正確に測定することである。 本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を進めた結果、樹脂酸価の高い親水性の高分子ポリマーを、予め、ビニルエーテルにてブロックすることによって前記問題点を解決し得ることを見出した。 すなわち、本発明は、樹脂酸価が20以上である分子内にカルボキシル基を含有する高分子ポリマーの分子量分布を、ポリスチレン系GPCカラムにより行うに際して、ビニルエーテルにてブロックする前処理を行うことを特徴とする高分子ポリマーの分子量分布の測定方法を提供する。 また、前処理工程が、樹脂酸価が20以上である分子内にカルボキシル基を含有する高分子ポリマーとビニルエーテルを20〜50℃で攪拌することである高分子ポリマーの分子量分布の測定方法を提供する。 また、前処理工程が、ビニルエーテルにてブロックされることによって、分子内にカルボキシル基を含有する高分子ポリマーの樹脂酸価が10以下になることである高分子ポリマーの分子量分布の測定方法を提供する。 また、ビニルエーテルが、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルである高分子ポリマーの分子量分布の測定方法を提供する。 本発明は、ビニルエーテルにてブロックする前処理を行うことにより、高い酸価を有する親水性の高分子ポリマーの分子量分布をポリスチレン系GPCカラムにて、正確に測定ができることになったため、疎水性の高分子ポリマーとの正確な比較検討が可能になった。また、安価な溶離液を用いることができ、測定に要するコストも引き下げることができた。 本発明は、樹脂酸価が20以上である分子内にカルボキシル基を含有する高分子ポリマーについての分子量測定方法であるが、樹脂酸価が20未満の高分子ポリマーで用いても一向に差し支えない。 樹脂酸価が、樹脂酸価が20未満であって親水性とはいえない高分子ポリマーの場合、ビニルエーテルにてブロックしなくとも、高分子ポリマーをテトラヒドロフランなどの溶離液に直接溶解して測定が可能なので、前処理工程が無駄になるだけである。 本発明は、樹脂酸価が20以上である分子内にカルボキシル基を含有する高分子ポリマーであれば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン変性樹脂、弗素樹脂など樹脂の種類は問わない。また、樹脂酸価は、20以上であれば、効果が得られるが、、樹脂酸価が30以上の場合に用いるのが好ましく、樹脂酸価が40以上の場合に用いるのが特に好ましい。 本発明に用いるGPCカラムとしては、従来公知のGPCカラムを広く用いることができる。また、溶離液としては、従来公知のテトラヒドロフラン、クロロホルム、o−ジクロロベンゼンなどを用いることができるが、安価なテトラヒドロフランを用いることが好ましい。 本発明の前処理工程において、高分子ポリマーが含有するカルボキシル基のブロック剤として用いるビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどの脂肪族ビニルエーテル化合物及びこれらに対応する脂肪族ビニルチオエーテル化合物、さらには2,3−ジヒドロフラン、3,4−ジヒドロフラン、2,3−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−4,4−ジメチル−2H−ピラン−2−オン、3,4−ジヒドロ−2−エトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2−カルボン酸ナトリウムなどの環状ビニルエーテル化合物及びこれらに対応する環状ビニルチオエーテル化合物などを用いることができる。 なかでも、価格や入手の容易さにおいて、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどの脂肪族ビニルエーテル化合物を用いることが好ましい。また、ブロック剤の分子量分布への影響を考えた場合、分子量が小さく、引火性がメチルビニルエーテルほどではない、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテルを用いることが、特に好ましい。 本発明の前処理工程とは、樹脂酸価が20以上である分子内にカルボキシル基を含有する高分子ポリマーをビニルエーテルでブロックする工程であるが、高分子ポリマーの樹脂酸価が、0〜10になるようにモル比で計算した量のビニルエーテルを高分子ポリマー加え、20〜50℃の温度条件下で攪拌すればよい。ビニルエーテルのカルボキシル基への付加反応は、樹脂酸価が10以下になった時点をもって終点とする。ビニルエーテルをカルボキシル基に対して過剰に加える必要がない理由は、高分子ポリマーの樹脂酸価を10以下にすれば、高分子ポリマーは親水性ではなくなり、それ故、親水性高分子ポリマーの欠点であった、テトラヒドロフランへの溶解性の問題や、高分子ポリマーのGPCカラムへの吸着の問題が解消され、通常の疎水性高分子ポリマーと同様に取り扱うことができるからである。 以下に、本発明について代表的な例を示し、さらに具体的に説明する。なお、これらは説明のための単なる例示であって、本発明はこれらに何ら制限されるものでないことはいうまでもない。なお、以下に記載する「部」は、「質量部」のことである。樹脂酸価が20以上である分子内にカルボキシル基を含有する高分子ポリマーの試料として、アクリル樹脂 LB−5400 (日本油脂BASFコーティングス(株)製、固形分50質量%、樹脂酸価55、水酸基価80)を用いた。 温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、アクリル樹脂 LB−5400 200部、キシレン 25部、ブチルセロソルブ 25部、エチルビニルエーテル 6.4部を仕込み、50℃を保ちながら撹拌した。混合物の酸価が10以下となったところで反応を終了し、放冷した。次に、得られた混合物の固形分が 0.5質量%となるように、テトラヒドロフランにて希釈を行い、GPCによる分子量分布測定用の試料とした。 なお、GPC測定条件は次のとおりである。GPCカラム: TSK GEL 5000HXL、TSK GEL 4000HXL、TSK GEL 3000HXL、TSK GEL 2000HXL (東ソー(株)製;商品名) の合計4本 カラムの温度: 40℃ 溶離液テトラヒドロフランの流速: 1ml/min 検出器: 示差屈折率検出器(東ソー(株)製) 試料の注入量: 100μl上記の条件で測定して得られたチャートを第1図に示した。得られたチャートから、ポリマーを示すピーク1における数平均分子量は 3,739であり、重量平均分子量は 7,814であった。なお、ピーク2は溶離液(THF)に含まれる安定剤(BHTなど)と思われるため、平均分子量の計算からは除外した。<比較例1> 実施例1に用いたアクリル樹脂 LB−5400を固形分が 0.5質量%となるように、テトラヒドロフランにて希釈を行い、GPCによる分子量分布測定用の試料とした。GPC測定条件は、実施例1と同じ条件で行った。測定後、カラムに多量の樹脂が吸着し、カラムが茶褐色に汚れており、正確な分子量分布測定ができていないことが判明した。 この結果から、本発明の方法によって、ポリスチレン系GPCカラム用として通常用いられている安価なテトラヒドロフランなどの溶離液を用いて、酸価の高い親水性の高分子ポリマーの分子量分布を正確に測定できることがわかった。第1図は、親水性高分子ポリマーをエチルビニルエーテルにてブロックする前処理工程を行った後に、テトラヒドロフランにて希釈を行い、GPCによる分子量分布を測定した本発明の実施例である。樹脂酸価が20以上である分子内にカルボキシル基を含有する高分子ポリマーの分子量分布を、ポリスチレン系GPCカラムにより行うに際して、ビニルエーテルにてブロックする前処理工程を行うことを特徴とする高分子ポリマーの分子量分布の測定方法。前処理工程が、樹脂酸価が20以上である分子内にカルボキシル基を含有する高分子ポリマーとビニルエーテルを20〜50℃で攪拌することである請求項1記載の高分子ポリマーの分子量分布の測定方法。前処理工程が、ビニルエーテルにてブロックされることによって、分子内にカルボキシル基を含有する高分子ポリマーの樹脂酸価が10以下になることである請求項1〜2記載の高分子ポリマーの分子量分布の測定方法。ビニルエーテルが、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルである請求項1〜3記載の高分子ポリマーの分子量分布の測定方法。 【課題】ポリスチレン系GPCカラムを用いて高分子ポリマーの分子量分布測定を行うに際して、溶離液としてテトラヒドロフラン、クロロホルム、o−ジクロロベンゼンなどが用いられてきた。しかしながら、酸価の高い親水性の高分子ポリマーは、これらの溶離液に溶解しにくいばかりか、GPCカラムに吸着しやすい性質があり、正確な分子量分布の測定ができなかったので、高分子ポリスチレン系GPCカラムを用いて、樹脂酸価の高い親水性高分子ポリマーの分子量分布を正確に測定することを目的とした。【解決手段】樹脂酸価の高い親水性の高分子ポリマーを、予め、ビニルエーテルにてブロックすることで、高分子ポリスチレン系GPCカラムを用いて、従来の疎水性高分子ポリマーと同様に取り扱うことが可能になった。【選択図】なし