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タイトル:公開特許公報(A)_微生物の検出方法および微生物検出用試薬
出願番号:2003352329
年次:2005
IPC分類:7,C12Q1/04,G01N21/76,G01N21/77,G01N21/78


特許情報キャッシュ

岩田 建 牛山 正志 JP 2005110638 公開特許公報(A) 20050428 2003352329 20031010 微生物の検出方法および微生物検出用試薬 ユニチカ株式会社 000004503 チッソ株式会社 000002071 小栗 昌平 100105647 本多 弘徳 100105474 市川 利光 100108589 高松 猛 100115107 濱田 百合子 100090343 岩田 建 牛山 正志 7C12Q1/04G01N21/76G01N21/77G01N21/78 JPC12Q1/04G01N21/76G01N21/77 DG01N21/78 C 11 OL 18 2G054 4B063 2G054BA04 2G054BB01 2G054BB13 2G054CA16 2G054CA20 2G054CE02 2G054EA03 2G054EA06 2G054EB01 2G054GB04 2G054GE01 2G054GE06 2G054GE07 2G054JA02 4B063QA01 4B063QA18 4B063QQ05 4B063QQ16 4B063QQ18 4B063QR04 4B063QR57 4B063QR58 4B063QR90 4B063QS26 4B063QS36 4B063QX02 本発明は微生物の検出方法および微生物検出用試薬に関するものであり、さらに詳しくは、例えば食品、化粧品、環境中の微生物汚染を、迅速にかつ安価に検出することのできる微生物の検出方法および微生物検出用試薬に関するものである。 従来の微生物検査方法について、食品検査における一般生菌数の測定を例として説明する。まず、粉末寒天培地を溶解、滅菌した後、約45℃程度に保っておく。その寒天培地の一定量を、予め食品の懸濁液などの検査試料一定量を入れた滅菌ペトリ皿などに分注して混釈する。混釈後の寒天を固化し、35℃で通常24〜48時間培養後、生じた微生物のコロニー数を計数する。このように従来の一般生菌検査方法は、前もって培地を調製、滅菌した後、培地が固化しない温度に保っておく必要があるなど、非常に手間と時間がかかる方法である。 また、培地調製の手間を省いたスタンプタイプ(例えば、特許文献1参照。)、フィルタータイプ、フィルム(シート)タイプ(例えば、特許文献2および3参照。)、試験紙タイプなど、それぞれの目的にあわせ使いやすいように作られた簡易培地が生産されているが、検査時間は上記の寒天培地を用いた場合と変わらず、24〜48時間、またはそれ以上を要するものである。 一方、検査時間を短縮した方法の例として、濾過膜上に捕集した菌を短時間培養した後、界面活性剤や有機溶媒などで菌由来のアデノシン−三リン酸を細胞より抽出し、ルシフェラーゼの存在下にルシフェリンと反応させて発光させ、その発光輝点をイメージアナライザーで検出して生菌数を測定する方法がある(例えば、特許文献4参照。)。また、上記以外にも、捕集した微生物を所定の時間培養した後、発光色素で処理して、これから放射される蛍光を自動検出する方法、微小な光点を検出するために光学スキャナーを使用する方法、捕集した微生物を所定の時間培養するか培養なしに蛍光染色した後落射蛍光顕微鏡を使用して生菌数を測定する方法等が提案されている。しかし、これらの方法は高額な機器を必要とし、通常は固形物を含まない液体試料の検査にしか適用できない。 高額な機器を必要としない方法として、微生物を合成高分子製多孔質濾過膜上に捕集し、寒天培地上で短時間培養して形成された該微生物由来のコロニーに塩基性染料の有機溶媒溶液を添加して染色させた後、該有機溶媒を揮散させて顕微鏡下で染色された微小コロニーの数を計測する方法が記載されている(例えば、特許文献5参照。)。このような方法では、陽荷電を有する塩基性染料の色素部分が、陰荷電を有する微生物を染色することを利用して、微生物の検出を行う。そのため、微生物以外にも陰荷電を有するものが試料中に含まれていると、これに対しても染色するので、微生物が存在しない試料であっても、陽性反応を示すことになる場合がある。また、陰荷電を有する固体物の上に、微生物由来のコロニーが存在している場合には、陽性反応が微生物によるものなのか、それとも固体物によるものなのか判断がつかない場合もある。したがって、このような方法は液体試料には有効な方法であるが、固体試料(特に、陰荷電を有する固体を含む試料)の検査には必ずしも有効な方法ではない。特開平4−117299号公報特公平2−49705号公報特開平3−15379号公報特開平4−30798号公報特開平9−37794号公報 本発明は、高価な機器や顕微鏡を必要とすることなく、かつ、液体試料だけでなく固体試料にも適用でき、迅速かつ安価な微生物の検出方法および微生物検出用試薬を提供することを目的とする。 本発明は、以下のとおりである。(1) 微生物を含む検体を所定時間培養する工程と、前記培養工程後、前記微生物と色素原とを接触させる工程と、前記接触工程後、前記色素原の発色または蛍光シグナルにより微生物の存在を確認する工程とを有し、前記接触工程において、酵素的サイクリング反応により前記色素原の発色または蛍光シグナルを増感させることを特徴とする微生物の検出方法。(2) 前記色素原が、還元系発色試薬または還元系蛍光試薬であることを特徴とする前記(1)に記載の微生物の検出方法。(3) 前記還元系発色試薬または還元系蛍光試薬がテトラゾリウム塩であることを特徴とする前記(2)に記載の微生物の検出方法。(4) 前記酵素的サイクリング反応による発色または蛍光シグナルの増感が、脱水素酵素、脱水素酵素の基質、およびジアホラーゼを加えることにより行われることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の微生物の検出方法。(5) 前記接触工程において、微生物の細胞壁を変性させる細胞壁変性剤または微生物の細胞壁を溶解する細胞壁溶解剤を添加することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の微生物の検出方法。(6) 前記培養工程において、微生物を含む検体を固体培地で培養することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の微生物の検出方法。(7) 脱水素酵素、脱水素酵素の基質、ジアホラーゼおよびテトラゾリウム塩を含むことを特徴とする微生物検出用試薬。(8) 微生物の細胞壁を変性させる細胞壁変性剤または微生物の細胞壁を溶解する細胞壁溶解剤をさらに含むことを特徴とする前記(7)に記載の微生物検出用試薬。(9) 前記細胞壁変性剤または細胞壁溶解剤が、アルコール、ケトン、キレート剤、抗生物質および界面活性剤から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする前記(8)に記載の微生物検出用試薬。(10) 前記脱水素酵素、脱水素酵素の基質、ジアホラーゼおよびテトラゾリウム塩が、それぞれ溶液または乾燥物の形態で個別に保存されていることを特徴とする前記(7)に記載の微生物検出用試薬。(11) 前記脱水素酵素及びジアホラーゼを含有する酵素溶液と、脱水素酵素の基質及びテトラゾリウム塩を含有する基質液とからなり、酵素溶液と基質液とが個別に保存されていることを特徴とする前記(7)に記載の微生物検出用試薬。 本発明によれば、高価な機器や顕微鏡を必要とすることなく、かつ、液体試料だけでなく、固体試料または固体を含む試料にも適用できる迅速かつ安価な微生物の検出方法および微生物検出用試薬が提供される。本発明では、例えば食品、化粧品、環境中の微生物汚染を迅速かつ安価に検出することができる。 本発明は、微生物を含む検体を所定時間培養する工程と、前記培養工程後、前記微生物と色素原とを接触させる工程と、前記接触工程後、前記色素原の発色または蛍光シグナルにより微生物の存在を確認する工程とを有し、前記接触工程において、酵素的サイクリング反応により前記色素原の発色または蛍光シグナルを増感させる微生物の検出方法を提供するものである。以下、本発明に係る微生物の検出方法の実施形態について説明する。 前記培養工程において、所定時間とは、培養により生じる微生物のコロニー等が、肉眼で観察できない位の小さいものにしかならないけれども、これにテトラゾリウム塩を加えることでコロニー等を色素産生させることで肉眼でも観察できるようになる程度の短い時間である。なお、この場合の「肉眼での観察」にはルーペを用いての観察も含まれる。前記所定時間としては、好ましくは2時間から10時間の範囲、より好ましくは3時間から9時間の範囲、更に好ましくは4時間から8時間の範囲である。なお培養温度は、検出対象となる微生物に応じて適宜決定できる。 本発明の微生物の検査方法に適用できる検体としては、特に限定されず、食品、化粧品、実験用器具等が挙げられる。また、検出可能な微生物も特に限定されない。 培地は、液状培地でも固体培地でもよく、固体培地がより好ましい。固体培地としては、例えば、シート状(フィルム状)培地、シャーレ状乾式培地、寒天培地、試験紙等を挙げることができる。中でも、培養液や試薬が全体に迅速に浸透して検出時間をより短縮できることから、シート状(フィルム状)培地が好ましい。 また、シート状(フィルム状)培地としては、特開2001−245693号公報に記載の一般生菌検出用シート状培地が好ましい。この一般生菌検出用シート状培地は、多孔質マトリックス層と2または3層の水溶性高分子化合物層とを含み、多孔質マトリックス層から最も離れた側の水溶性高分子化合物層に接して台紙を含んでもよい積層物が、その積層物より大きな粘着シートの中心部に多孔質マトリックス層が上になるように接着されている。その上に前記積層物より大きな透明フィルムが多孔質マトリックス層に接しかつ前記積層物と中心部を合わせるように被せられ、この透明フィルムの前記積層物からはみ出している部分が粘着シートの前記積層物が接着されていない部分と接着されている。 多孔質マトリックス層に接する水溶性高分子化合物層は、ペプトン、肉エキスおよび任意成分としての酵母エキスからなる栄養成分、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上の塩、および発色剤を含む水溶性高分子化合物層であることが好ましい。また、多孔質マトリックス層に接する層の次の水溶性高分子化合物層がペプトン、肉エキス、グルコースおよび任意成分としての酵母エキスからなる栄養成分、およびリン酸カリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上の塩を含むことが好ましい。 このようなシート状培地としては、市販品が知られており、具体的には「サニ太くん」(チッソ(株)社製)が知られている。 前記接触工程において、前記色素原は還元系発色試薬または還元系蛍光試薬であることが好ましく、さらに還元系発色試薬または還元系蛍光試薬はテトラゾリウム塩であることが好ましい。 テトラゾリウム系色素であるテトラゾリウム塩は、培養された微生物の細胞内代謝系反応により還元されて、ホルマザンを生じ発色または蛍光色素産生する。これにより、微生物を検出することが可能となるが、この色素産生は細胞内代謝系反応によるため、通常、発色または蛍光箇所は細胞の集落以上の大きさにはならない。しかし、本発明では、色素原との接触工程において酵素的サイクリング反応を行うことにより、微生物の細胞に存在する色素の量を増量することができ、細胞の集落自体を増量させなくても肉眼で十分検出できるようになる。したがって、前記培養工程における培養時間を短縮でき、しかも肉眼で微生物の存在を確認することができる。 また、テトラゾリウム塩を用いた場合、前記特許文献5等に記載の塩基性染料を用いる方法とは異なり、微生物の細胞内代謝系反応を利用しているため、固体試料または固体を含有する液体試料であっても微生物の検出を行うことが可能である。 テトラゾリウム塩としては、前述のように、微生物の細胞内代謝系反応により還元されて、ホルマザンを生じ発色または蛍光色素産生するものであればとくに制限されないが、還元反応により目視可能な色調で発色シグナルを生じる(つまり、300nmから800nmの範囲の波長領域で、その一部または全部で光吸収を有するは)ものであるか、または目視可能な蛍光を呈するものであるのがよい。 例えば、p−ヨードニトロテトラゾリウム・バイオレット[ケミカルアブストラクト登録番号146−68−9]、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H テトラゾリウムブロミド(以下「MTT」と略す。)[ケミカルアブストラクト登録番号298−93−1]、ネオテトラゾリウム[ケミカルアブストラクト登録番号298−95−3]、ニトロ・ブルー・テトラゾリウム[ケミカルアブストラクト登録番号298−83−9]、テトラニトロ・ブルー・テトラゾリウム[ケミカルアブストラクト登録番号42798−98−1]、テトラゾリウム・ブルー[ケミカルアブストラクト登録番号1871−22−3]、テトラゾリウム・レッド(トリフェニル・テトラゾリウム)[ケミカルアブストラクト登録番号298−96−4]、テトラゾリウム・バイオレット[ケミカルアブストラクト登録番号1719−71−7]、チオカルバミル・ニトロ・ブルー・テトラゾリウム[ケミカルアブストラクト登録番号36889−43−7]、2,3−ビス[2−メソキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル]−2H−テトラゾリウム−5−カルボキサニリド(以下「XTT」と略す。)[ケミカルアブストラクト登録番号111072−31−2]、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルフォフェニル)−2H−テトラゾリウムモノソディウム塩(2-(4-Iodophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-(2,4-disulfophenyl)-2H-tetrazolium, monosodium salt)(以下「WST−1」と略す)[ケミカルアブストラクト登録番号150849−52−8]、2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルフォフェニル)−2H−テトラゾリウムモノソディウム塩(2-(4-Iodophenyl)-3-(2,4-dinitrophenyl)-5-(2,4-disulfophenyl)-2H-tetrazolium ,monosodium salt)(以下「WST−3」と略す。)[ケミカルアブストラクト未登録]、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウムクロライド(以下、「INT」と略す。)またはこれらの塩が挙げられる。これらの中でも、特に好ましくはp−ヨードニトロテトラゾリウム・バイオレット、MTT、ニトロ・ブルー・テトラゾリウム、テトラゾリウム・レッドである。 なお、MTT、XTT、WST−1、WST−3、およびINTの化学構造式を以下に示す。 テトラゾリウム塩以外の色素原としては、例えば2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(以下、「DCPIP」と略す。)[ケミカルアブストラクト登録番号620−45−1]、メチレン・ブルー[ケミカルアブストラクト登録番号61−73−4]、レザズリン[ケミカルアブストラクト登録番号62758−13−8]等が挙げられる。 前記接触工程において用いられる色素原の使用量は、微生物の検出反応を充分に実施できる量であれば特に限定されるものではない。例えば、寒天培地、シート培地その他の固形培地では培地1ml中、1μg以上が、液体培地では培地1ml中、0.1μg以上が好ましい。この数値以上の濃度であれば、微生物の存在をより確認しやすくなる。 微生物には、微生物に由来する遺伝子、たんぱく質、脂肪酸、酵素、ATPあるいはNAD等の補酵素、微生物の代謝により増加する酸素、二酸化炭素、過酸化水素等の成分が含まれている。 本発明では、これらの成分から選ばれる少なくとも一つを、酵素的サイクリング反応を構成する要素の一部として利用し、色素原を目視可能な色素または蛍光色素へと導くことにより、微生物を検出することができる。 なお、酵素的サイクリング反応においては、微生物内に比較的多く存在する成分を利用するのが好ましい。例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの酸化型(以下「NAD」と略す。)およびその還元型(以下「NADH」と略す。)並びにニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の酸化型(以下「NADP」と略す。)およびその還元型(以下「NADPH」と略す。)は生体含量の最も多い補酵素であり、水素原子の授受を介して可逆的に変化することによって多くの脱水素酵素の酸化還元反応に関与している。したがって、NAD、NADH、NADPまたはNADPHの酸化反応または還元反応に伴って生じる色素原の発色または蛍光シグナルを、酵素的サイクリング反応によって増感させ、NAD、NADH、NADPまたはNADPHの存在を高感度に検出するのが好ましい。この観点から、色素原は、還元系発色試薬または還元系蛍光試薬、とくにテトラゾリウム塩であるのが好ましい。この場合、酵素的サイクリング反応による増感は、脱水素酵素、脱水素酵素の基質、およびジアホラーゼを加えることにより行われることが好ましい。 NAD、NADH、NADPまたはNADPHを利用し、かつ色素原としてテトラゾリウム塩を用いた場合の酵素的サイクリング反応を、下記スキームにより具体的に説明する。 NADまたはNADPは、脱水素酵素とその基質(還元型)の存在下で、脱水素酵素による基質(還元型)の酸化反応に補酵素として作用し、NADHまたはNADPHへと還元される。さらにこのNADHまたはNADPHは、色素原、例えばテトラゾリウム系色素とその還元酵素であるジアホラーゼ存在下で再びNADまたはNADPへと酸化される。このとき、同時にテトラゾリウム系色素が還元されてホルマザンとなり、発色または蛍光シグナルが得られる。NADまたはNADPは、このような条件下で酸化還元を繰り返すため、シグナル強度は徐々に大きくなる。すなわち、酵素的サイクリング反応によってシグナル強度は徐々に大きくなる。 本発明においては、培養後の微生物に含まれる比較的多く存在する成分、例えばNAD、NADH、NADPまたはNADPHを酵素的サイクリング反応させることにより、色素原に由来する発色または蛍光シグナルを増感させるものであるから、酵素的サイクリング反応を維持させている限り、発色または蛍光シグナルは増感し続ける。したがって、発色または蛍光シグナルが目視可能なまでに増感するまで酵素的サイクリング反応を維持するのに必要量の基質および色素原を添加すれば、短時間の微生物培養でも確実に目視で微生物の検出が可能となる。 また、前記接触工程において、微生物の細胞壁を変性させる細胞壁変性剤または微生物の細胞壁を溶解する細胞壁溶解剤を添加することが好ましい。 微生物の細胞壁を変性または溶解させて、微生物の成分を漏出させ、漏出した成分を酵素的サイクリング反応させることにより、着色箇所をより見やすくすることができる。微生物の細胞壁を変性または溶解させる際には、微生物の全体またはすべての微生物を変性または溶菌させてもよいし、微生物の一部または培地もしくは集落表層部分に存在する微生物のみを変性または溶菌させてもよい。 微生物の細胞壁を変性または溶解させるには、後述の細胞壁変性剤または細胞壁溶解剤を使用することができる。また、脱水素酵素、脱水素酵素の基質、ジアホラーゼについても、後述のものを使用することができる。また、本発明の検出方法に係る酵素的サイクリング反応における各成分の使用量についても後述の使用量を適用することができる。 また、本発明に係る微生物検出用試薬は、脱水素酵素、脱水素酵素の基質、ジアホラーゼおよびテトラゾリウム塩を含むことを特徴とする。本発明の微生物検出用試薬は、前記スキームに基づく酵素的サイクリング反応に適用され、微生物の検出に適用されるのが好ましい。以下、本発明に係る微生物検出用試薬に含まれる各成分について説明する。 〔脱水素酵素および脱水素酵素の基質〕 本発明の試薬に用いられる脱水素酵素は、NADまたはNADPの共存下でその基質の酸化反応を触媒するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、一般的に酵素番号が[EC1.X.1.Y]で表される、NADまたはNADP共存下でその基質の酸化反応を触媒する酵素が挙げられる。例えば、[EC1.1.1.Y]、[EC1.2.1.Y]、[EC1.3.1.Y]および[EC1.1.4.Y]が挙げられる。また、このような脱水素酵素は、供給源となる生物種等によって特に限定されるものではない。 代表的な脱水素酵素およびその基質の組み合わせとしては、アルコール脱水素酵素[EC1.1.1.1]とメタノール、エタノールまたはプロパノール、グリセロール脱水素酵素[EC1.1.1.6]とグリセリン、グリセロール3−リン酸脱水素酵素[EC1.1.1.8]とグリセロール3−リン酸、アルデヒド脱水素酵素[EC1.1.1.21]とアセトアルデヒド、乳酸脱水素酵素[EC1.1.1.27]と乳酸、リンゴ酸脱水素酵素[EC1.1.1.37]とリンゴ酸、グルコース脱水素酵素[EC1.1.1.47]とグルコース、グルコース6−リン酸脱水素酵素[EC1.1.1.49]とグルコース6−リン酸、(ホルマリンを加えると微生物に影響が大きいと思われるので削除します)、蟻酸脱水素酵素[EC1.2.1.2]と蟻酸、アルデヒド脱水素酵素[EC1.2.1.3]とアセトアルデヒド、コレステロール脱水素酵素[EC1.3.1.22]とコレステロール、酵素番号が[EC1.4.1.1から20]で表される各種アミノ酸脱水素酵素と各種アミノ酸が挙げられる。 これらの脱水素酵素と基質の組み合わせの中でも、アルコール脱水素酵素とエタノール、グリセロール脱水素酵素とグリセリン、乳酸脱水素酵素と乳酸、リンゴ酸脱水素酵素とリンゴ酸、グルコース脱水素酵素とグルコース、グルコース6−リン酸脱水素酵素とグルコース6−リン酸、アラニン脱水素酵素とアラニン、グルタミン酸脱水素酵素とグルタミン酸、フェニルアラニン脱水素酵素とフェニルアラニンの組み合わせが好ましい。特に好ましくは、アルコール脱水素酵素とエタノール、グルコース脱水素酵素とグルコース、グルコース6−リン酸脱水素酵素とグルコース6−リン酸、アラニン脱水素酵素とアラニンである。 本発明の試薬に用いられる脱水素酵素およびその基質の使用量は、微生物の検出反応を充分に実施できる量であれば特に限定されるものではない。脱水素酵素の使用量は、微生物の検出判定を実施する際に、微生物に由来するNAD、NADH、NADPおよびNADPHから選ばれる少なくとも一つ、基質(還元型)、脱水素酵素、ジアホラーゼ並びにテトラゾリウム塩が同時に存在する状態で、0.01u/mLから1000u/mLの範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.1/mLから200u/mLの範囲内である。一方、脱水素酵素の基質の使用量は、該状態で1μg/mL以上であることが好ましい。 ここで、上記単位u(ユニット)とは、脱水素酵素については、30℃で1μMのNADH又はNADPHを生成する量を示す。 〔ジアホラーゼ〕 本発明の試薬に用いられるジアホラーゼは、NADHまたはNADPHの共存下でテトラゾリウム塩の還元反応を触媒するものであれば特に限定されるものではない。また、その供給源となる生物種等によって特に限定されるものではない。例えば、バチルス・ステアロサーモフィルス、クロストリジウム・クルイベリその他の微生物由来のものや、ブタ心臓由来のものが挙げられる。中でも、微生物由来の酵素は生産性が良く入手も容易であることから好ましい。さらに、保存安定性に優れていることから、バチルス・ステアロサーモフィルス由来のジアホラーゼI[EC1.6.4.3]およびジアホラーゼII[EC1.6.99.−]が特に好ましい。 また、ジアホラーゼの代わりにフェナジンメトサルフェート(PMS)やメルドラーブルーなどの電子伝達物質を用いても、本発明の効果を奏する。 本発明の試薬に用いられるジアホラーゼの使用量は、微生物の検出反応を充分に実施できる量であれば特に限定されるものではない。ジアホラーゼの使用量は、微生物の検出判定を実施する際に、微生物に由来するNAD、NADH、NADPおよびNADPHから選ばれる少なくとも一つ、基質(還元型)、脱水素酵素、ジアホラーゼ並びにテトラゾリウム塩が同時に存在する状態で、0.01u/mLから1000u/mLの範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.1u/mLから200u/mLの範囲内である。 ここで、上記単位u(ユニット)とは、ジアホラーゼについては、30℃で1μMのDCIP(Dichlorophenolindophenol)を1分間に還元する量を示す。 本発明の試薬におけるテトラゾリウム塩の使用量は、微生物の検出反応を充分に実施できる量であれば特に限定されるものではない。テトラゾリウム塩の使用量は、微生物の検出判定を実施する際に、微生物に由来するNAD、NADH、NADPおよびNADPHから選ばれる少なくとも一つ、基質(還元型)、脱水素酵素、ジアホラーゼ並びにテトラゾリウム塩が同時に存在する状態で、寒天培地、シート培地その他の固形培地では50μg/mL以上、液体培地では5μg/mL以上が好ましい。この数値以上の濃度であれば、確認しやすい程度にまで発色するからである。 本発明の試薬は、細胞壁変性剤および細胞壁溶解剤から選ばれる少なくとも一つを含有するのが好ましい。細胞壁変性剤および細胞壁溶解剤から選ばれる少なくとも一つを含むことで、微生物に由来するNAD、NADH、NADPおよびNADPHから選ばれる少なくとも一つを、より効率的に酵素的サイクリング反応に供することができる。 前記細胞壁変性剤および細胞壁溶解剤としては、アルコール、ケトン、キレート剤、抗生物質、界面活性剤を挙げることができる。 微生物を培養した微生物試料、培地または試験紙に、予め細胞壁変性剤または細胞壁溶解剤を作用させて微生物の細胞壁を変性させまたは細胞を破壊させておく方法や、微生物検出用試薬に細胞壁変性剤または細胞壁溶解剤を共存させておく方法を用いることで、微生物に由来するNAD、NADH、NADPおよびNADPHから選ばれる少なくとも一つを、より効率的に酵素的サイクリング反応に供することができる。細胞壁変性剤または細胞壁溶解剤の種類および使用量は、微生物検出反応を阻害しないものおよび量であれば特に限定されるものではない。 また、本発明の試薬に粘性を持たせるために、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールやポリビニリドンなどの水溶性高分子を試薬中に予め添加しておいてもよい。本発明の試薬に粘性を持たせることで、試薬と微生物試料との接触が容易になる。その結果、より確実に微生物の検出判定をすることができるようになる。 本発明の試薬の使用する時には、生理食塩水などに、基質(還元型)、脱水素酵素、ジアホラーゼおよびテトラゾリウム塩が同時に含まれている緩衝液の形態とすることができる。この緩衝液に試料を混合し、呈色するか否かを観察することで試料中の微生物を検出判定することができる。緩衝液の種類や濃度に関しては反応を阻害しない限り特に限定はない。 また、検出判定を実施するまでは、本発明における試薬の形態は特に限定されることはない。すなわち、基質(還元型)、脱水素酵素、ジアホラーゼおよびテトラゾリウム系色素がそれぞれ個別の状態、またはこれらを幾つかに組合せた状態若しくはこれらのすべてを一緒にした状態で保存しておいてもよい。但し、使用(すなわち検出判定を実施)する際には、これらが同時に存在している状態であることが必要である。 また、これらの状態は、溶液状態、粉末状態、試験紙若しくは不織布に含浸された状態、または試験紙若しくは不織布上で乾燥された状態であってもよい。 本発明の試薬を用いて微生物を検出するには、より具体的には以下のように行うのが好ましい。まず、微生物を肉眼では観察できない程度の時間、より具体的には2時間から10時間、液状培地、シート状培地、フィルム状培地、シャーレ状乾式培地、寒天培地または試験紙上で培養する。この培養後の微生物試料、培地または試験紙に、微生物検出用試薬を滴下、混合または表面を覆い被せる。その際、微生物の脱水素反応と共役してテトラゾリウム塩を発色若しくは発光させるか、微生物に由来するNAD、NADH、NADPおよびNADPHから選ばれる少なくとも一つを起点として酵素的サイクリング反応を継続せしめ発色若しくは発光させるか、またはこの両者の反応による発色若しくは蛍光シグナルを目視により確認することで、微生物を検出することができる。 以下、本発明の微生物の検出方法及び本発明の微生物検出用試薬のより具体的な実施形態について説明する。(1)液状培地を用いる場合 試料に滅菌生理食塩水などを加えて、ストマッカーなどの懸濁装置により懸濁する。この懸濁液若しくはこれを適宜希釈した希釈懸濁液または試料そのものを、予め作製しておいた液体培地に加えて、5〜10時間培養する。 次に、下記1又は2の微生物検出用試薬に液体培地の一部を加える。 1.脱水素酵素、脱水素酵素の基質、ジアホラーゼ並びにテトラゾリウム塩を含む微生物検出用試薬。 2.細胞壁変性剤および細胞壁溶解剤から選ばれる少なくとも一つ、脱水素酵素、脱水素酵素の基質、ジアホラーゼ並びにテトラゾリウム塩を含む微生物検出用試薬。 その後、一定時間放置して、目視で発色または蛍光を確認して微生物の有無を判断する。(2)シート状(フィルム状)培地を用いる場合 試料に滅菌生理食塩水などを加えて、ストマッカーなどの懸濁装置により懸濁する。この懸濁液若しくはこれを適宜希釈した希釈懸濁液または試料そのものを透明カバー付シート状(フィルム状)培地に加えて、5〜10時間培養する。次に、下記1〜4のいずれかの微生物検出用試薬を、カバーを開いたシート状(フィルム状)培地に滴下し、カバーを閉じながら溶液を培地上に拡げて、一定時間放置する。放置後に現れた発色または発光スポットを数える。 1.脱水素酵素、脱水素酵素の基質、ジアホラーゼ並びにテトラゾリウム塩を含む微生物検出用試薬。 2.脱水素酵素及びジアホラーゼを含有する酵素溶液と、脱水素酵素の基質及びテトラゾリウム塩を含有する基質液と、からなる微生物検出用試薬。 3.細胞壁変性剤および細胞壁溶解剤から選ばれる少なくとも一つ、脱水素酵素、脱水素酵素の基質、ジアホラーゼ並びにテトラゾリウム塩を含む微生物検出用試薬。 4.脱水素酵素及びジアホラーゼを含有する酵素溶液と、細胞壁変性剤および細胞壁溶解剤から選ばれる少なくとも一つ、脱水素酵素の基質、及びテトラゾリウム塩を含有する基質液と、からなる微生物検出用試薬。(3)寒天培地を用いる場合 試料に滅菌生理食塩水などを加えて、ストマッカーなどの懸濁装置により懸濁する。この懸濁液若しくはこれを適宜希釈した希釈懸濁液または試料そのものの一定量を滅菌ペトリ皿に入れ、そこに予め溶解滅菌し、45℃に保っておいた培地を分注し、撹拌する。これを固化させるか、予め作製しておいた寒天培地にその一定量を塗布させた後、5〜10時間培養する。次に、前記1〜4のいずれかの微生物検出用試薬を寒天培地に加える。この加えた溶液を寒天培地上に拡げて、一定時間放置する。放置後に現れた発色または発光スポットを数える。(4)試験紙を培地として用いる場合 試料に滅菌生理食塩水などを加えて、ストマッカーなどの懸濁装置により懸濁する。この懸濁液またはこれを適宜希釈した希釈懸濁液に試験紙を浸した後、試験紙を袋に入れて、5〜10時間培養する。次に、前記1〜4のいずれかの微生物検出用試薬を試験紙の入った袋に加え、一定時間放置する。放置後に現れた発色または発光スポットを数える。 次に実施例および比較例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。各例に用いた酵素のユニットは入手した酵素の仕様書または容器に記載のユニット数をそのまま用いた。実施例1 溶解後の濃度が、ジアホラーゼI(ユニチカ(株)製)は30ユニット/mL、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ(ユニチカ(株)製)は30ユニット/mL、完全鹸化重合度500のポリビニルアルコールは5%(w/w)、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルは2%(w/v)となるように0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8)に溶解させて、酵素溶液を調製した。 溶解後の濃度が、グルコース6リン酸2ナトリウム塩は5mM、MTTは0.05mg/mL、ドデシル硫酸ナトリウムは1%(w/v)、EDTAは100mM、ポリミキシンBは100μg/mL、完全鹸化重合度500のポリビニルアルコールは5%(w/w)となるように0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8)に溶解させて、基質液を調製した。このようにして、酵素溶液および基質液が分離している態様の微生物検出用試薬を調製した。 滅菌生理食塩水で10〜1000cfu/mLとなるように希釈した枯草菌(Bacillus subtilis IFO3134)、エンテロバクターエロゲネス(Enterobacter aerogenes IFO12534)、クレブシエラニューモニアエ(Klebsiella pneumoniae JCM1662)、シトロバクターフレンディー(Citrobacter freundii IFO12681)および食品分離株の懸濁液1mLずつを別々のフィルム状培地(サニ太くん一般生菌用、チッソ(株)製)に加えてカバーを被せ、35℃で6時間培養した。 フィルム状培地のカバーを開き、上記で調製した基質液2滴、続いて酵素溶液2滴を滴下した。二液を混合させ、フィルム状培地の不織布上に拡がるようにして、カバーを被せた。35℃に保温すると5分経過時点から、MTTによる青から青紫色の斑点が肉眼で確認できた。実施例2 溶解後の濃度が、ジアホラーゼI(ユニチカ(株)製)は30ユニット/mL、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ(ユニチカ(株)製)は30ユニット/mL、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートは2%(w/w)となるように0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8)に溶解させて、酵素溶液を調製した。 溶解後の濃度が、グルコース6リン酸グルコース6リン酸2ナトリウム塩は5mM、MTTは0.05mg/mL、塩化ベンザルコニウムは0.5%(w/w)、EDTAは100mM、アセトンは10%(w/w)となるように0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8)に溶解させて、基質液を調製した。このようにして、酵素溶液および基質液が分離している態様の微生物検出用試薬を調製した。 滅菌生理食塩水で10〜1000cfu/mLとなるように希釈した枯草菌(Bacillus subtilis IFO3134)、エンテロバクターエロゲネス(Enterobacter aerogenes IFO12534)、クレブシエラニューモニアエ(Klebsiella pneumoniae JCM1662)、シトロバクターフレンディー(Citrobacter freundii IFO12681)および食品分離株の懸濁液1mLずつを径90mmのプラスチックシャーレに分注した。ここに、予めオートクレーブ滅菌し、45℃に保っておいた普通寒天培地10mLを加え混釈した。寒天が固化後、35℃で6時間培養した。 上記で調製した基質液5滴、続いて酵素溶液5滴を滴下し、コーンラージ棒で二液を混合し寒天培地上に拡げた。35℃に保温すると10分経過した時点から、寒天培地上に青から青紫色の斑点が確認できた。実施例3 溶解後の濃度が、ジアホラーゼI(ユニチカ(株)製)は30ユニット/mL、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ(ユニチカ(株)製)は30ユニット/mL、グリセリンは0.2Mとなるように0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8)に溶解させて、酵素溶液を調製した。 溶解後の濃度が、グルコース6リン酸2ナトリウム塩は5mM、MTTは0.05mg/mL、ポリミキシンBは20μg/mL、エタノールは20%となるように0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8)に溶解させて、基質液を調製した。このようにして、酵素溶液および基質液が分離している態様の微生物検出用試薬を調製した。 滅菌生理食塩水で10〜100cfu/mLとなるように希釈した枯草菌(Bacillus subtilis IFO3134)、エンテロバクターエロゲネス(Enterobacter aerogenes IFO12534)、クレブシエラニューモニアエ(Klebsiella pneumoniae JCM1662)、シトロバクターフレンディー(Citrobacter freundii IFO12681)および食品分離株の懸濁液1mLずつを、4枚のフィルム状培地(サニ太くん一般生菌用、チッソ(株)製)にそれぞれ加えた。そのうち2枚を35℃で6時間30分培養した後、フィルム状培地のカバーを開き、上記で調製した基質液2滴、続いて酵素溶液2滴を滴下して、二液を混合させフィルム状培地の不織布上に拡がるように、カバーを被せた。35℃に1時間保温し、ルーペ下で観察される青から青紫色のスポットを数え平均した。 一方、比較として、残りの2枚には微生物検出用試薬を添加せず、35℃で24時間保温したところ、菌の生育による赤色のスポットが観察された。この赤色のスポットを数え平均した。 この結果を下記表1に示す。実施例4 溶解後の濃度が、ジアホラーゼI(ユニチカ(株)製)は60ユニット/mL、グリセロリン酸デヒドロゲナーゼは60ユニット/mLとなるように0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8)に溶解させて、酵素溶液を調製した。 溶解後の濃度が、グリセロリン酸2ナトリウム塩は0.1M、MTTは1mg/mL、コリスチンは20μg/mLとなるように0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8)に溶解させて、基質液を調製した。このようにして、酵素溶液および基質液が分離している態様の微生物検出用試薬を調製した。 滅菌生理食塩水で100〜1000cfu/mLとなるように希釈した枯草菌(Bacillus subtilis IFO3134)、エンテロバクターエロゲネス(Enterobacter aerogenes IFO12534)、クレブシエラニューモニアエ(Klebsiella pneumoniae JCM1662)、シトロバクターフレンディー(Citrobacter freundii IFO12681)および食品分離株の懸濁液0.1mLずつを、予め調製した別々の標準寒天培地に塗布し、35℃で6時間培養した。上記で調製した基質液および酵素液を等量混合し、その1mLをそれぞれの標準寒天培地に滴下し、培地上に拡げた。35℃で1時間保温し、ルーペ下で観察すると、すべての標準寒天培地において青から青紫色のスポットが認められた。実施例5 実施例3のグルコース6−リン酸脱水素酵素およびグルコース6−リン酸を、アルコール脱水素酵素(ユニチカ製)およびエタノール、グリセロール脱水素酵素(東洋紡製)およびグリセリン、乳酸脱水素酵素(ロッシュ製)および乳酸、リンゴ酸脱水素酵素(ロッシュ製)およびリンゴ酸、グルコース脱水素酵素(ユニチカ製)およびブドウ糖、ホルムアルデヒド脱水素酵素(シグマ製)およびホルマリン、アラニン脱水素酵素(ユニチカ製)およびアラニン、グルタミン酸脱水素酵素(東洋紡製)およびグルタミン酸、フェニルアラニン脱水素酵素(ユニチカ製)およびフェニルアラニンの組み合わせに代えて、基質液および酵素溶液を調製したこと以外は、実施例3と同様の操作を行った。すべての組み合わせにおいて実施例3と同様の結果が得られた。実施例6 実施例4におけるMTTの代わりに、INT、DCPIP、p−ヨードニトロテトラゾリウム・バイオレット、ネオテトラゾリウム、ニトロ・ブルー・テトラゾリウム、テトラニトロ・ブルー・テトラゾリウム、テトラゾリウム・ブルー、テトラゾリウム・バイオレット、チオカルバミル・ニトロ・ブルー・テトラゾリウム、XTT、WST−1またはWST−3を用いて、基質液を調製したこと以外は、実施例4と同様の操作を行った。化合物の種類により目視で確認できるまでの時間に違いはあったものの、すべての標準寒天培地において実施例4と同様の結果が得られた。実施例7 溶解後の濃度が、ジアホラーゼI(ユニチカ(株)製)は60ユニット/mL、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ(ユニチカ(株)製)は60ユニット/mL、グリセリンは0.1%(w/w)となるように0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8)に溶解させて、酵素溶液を調製した。 溶解後の濃度が、グルコース6リン酸2ナトリウム塩は10mM、MTTは1mg/mL、ポリミキシンBは20μg/mL、エタノールは20%となるように0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8)に溶解させて、基質液を調製した。このようにして、酵素溶液および基質液が分離している態様の微生物検出用試薬を調製した。 食品10gに滅菌生理食塩水90mLを加え、30秒間ストマッカー処理した。懸濁液1mLを9mLの滅菌生理食塩水で希釈して、10倍段階希釈液を調製した。懸濁液または10倍段階希釈液1mLを、フィルム状培地(サニ太くん一般生菌用、チッソ(株)製)に加え、35℃で培養した。6.5時間後、上記で作製した基質液2滴続いて酵素溶液2滴を滴下して、二液を混合させ、フィルム状培地の不織布上に拡がるように、カバーを被せた。35℃に1時間保温し、ルーペ下で観察される青から青紫色のスポットを数え平均し、35℃で24時間培養後の赤色スポット数と比較した。6.5時間培養して観察されたスポット数は24時間培養して観察されたスポット数に対して平均約60%であった。実施例8 SCD濃縮液体培地「ダイゴ」(日本製薬製)一缶を精製水で500Lに希釈したもの9mLに、滅菌生理食塩水で10〜100cfu/mLの範囲に入るように希釈した枯草菌(Bacillus subtilis IFO3134)の懸濁液1mLを加え、35℃で6時間培養して、微生物を含む試料を調製した。 溶解後の濃度が、アルコール脱水素酵素(ユニチカ製)は20ユニット/mL、エタノール(脱水素酵素用基質)は5mM、ジアホラーゼI(ユニチカ(株)製)は10ユニット/mL、INT(テトラゾリウム塩)は0.02mg/mL、ラウリル硫酸ナトリウムは1%(w/v)となるように0.1Mトリエチルアミン緩衝液(pH7.5)に溶解させて、微生物検出用試薬を調製した。 微生物を含む試料0.5mLと、微生物検出用試薬2.5mLとを混合し、室温で30分間放置した。液全体にINTが反応することによる薄い赤色の着色を確認した。実施例9 実施例8におけるアルコール脱水素酵素(ユニチカ製)およびエタノール(脱水素酵素用基質)の代わりに、グリセロール脱水素酵素(東洋紡製)およびグリセリン(脱水素酵素用基質)、乳酸脱水素酵素(ロッシュ製)および乳酸(脱水素酵素用基質)、リンゴ酸脱水素酵素(ロッシュ製)およびリンゴ酸(脱水素酵素用基質)、グルコース脱水素酵素(ユニチカ製)およびグルコース(脱水素酵素用基質)、グルコース6−リン酸脱水素酵素(ユニチカ製)およびグルコース6−リン酸(脱水素酵素用基質)、ホルムアルデヒド脱水素酵素(シグマ製)およびホルマリン(脱水素酵素用基質)、アラニン脱水素酵素(ユニチカ製)およびアラニン(脱水素酵素用基質)、グルタミン酸脱水素酵素(東洋紡製)およびグルタミン酸(脱水素酵素用基質)並びにフェニルアラニン脱水素酵素(ユニチカ製)およびフェニルアラニン(脱水素酵素用基質)を用いても、すべての組合せにおいて同様に赤色の着色が起こることを確認した。比較例1 実施例8において、エタノール(脱水素酵素用基質)のみ取り除いたブランク試薬を調製した。 実施例8で調製した微生物を含む試料0.5mLと、このブランク試薬2.5mLとを混合し、室温で30分間放置してINTが反応することによる赤色の着色が起こらないことを確認した。比較例2 実施例8において、アルコール脱水素酵素(ユニチカ製)をグリセロール脱水素酵素(東洋紡製)、乳酸脱水素酵素(ロッシュ製)、リンゴ酸脱水素酵素(ロッシュ製)、グルコース脱水素酵素(ユニチカ製)、グルコース6−リン酸脱水素酵素(ユニチカ製)、ホルムアルデヒド脱水素酵素(シグマ製)、アラニン脱水素酵素(ユニチカ製)、グルタミン酸脱水素酵素(東洋紡製)またはフェニルアラニン脱水素酵素(ユニチカ製)に変更したこと以外は、実施例8を繰り返した。すべての組合せにおいて同様に赤色の着色が起こらないことを確認した。 本発明によれば、高価な機器や顕微鏡を必要とすることなく、かつ、液体試料だけでなく、固体または固体を含む試料にも適用できる迅速かつ安価な微生物の検出方法および微生物検出用試薬が提供される。本発明では、例えば食品、化粧品、環境中の微生物汚染を迅速かつ安価に検出することができる。 微生物を含む検体を所定時間培養する工程と、前記培養工程後、前記微生物と色素原とを接触させる工程と、前記接触工程後、前記色素原の発色または蛍光シグナルにより微生物の存在を確認する工程とを有し、前記接触工程において、酵素的サイクリング反応により前記色素原の発色または蛍光シグナルを増感させることを特徴とする微生物の検出方法。 前記色素原が、還元系発色試薬または還元系蛍光試薬であることを特徴とする請求項1に記載の微生物の検出方法。 前記還元系発色試薬または還元系蛍光試薬がテトラゾリウム塩であることを特徴とする請求項2に記載の微生物の検出方法。 前記酵素的サイクリング反応による発色または蛍光シグナルの増感が、脱水素酵素、脱水素酵素の基質、およびジアホラーゼを加えることにより行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微生物の検出方法。 前記接触工程において、微生物の細胞壁を変性させる細胞壁変性剤または微生物の細胞壁を溶解する細胞壁溶解剤を添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微生物の検出方法。 前記培養工程において、微生物を含む検体を固体培地で培養することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の微生物の検出方法。 脱水素酵素、脱水素酵素の基質、ジアホラーゼおよびテトラゾリウム塩を含むことを特徴とする微生物検出用試薬。 微生物の細胞壁を変性させる細胞壁変性剤または微生物の細胞壁を溶解する細胞壁溶解剤をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の微生物検出用試薬。 前記細胞壁変性剤または細胞壁溶解剤が、アルコール、ケトン、キレート剤、抗生物質および界面活性剤から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項8に記載の微生物検出用試薬。 前記脱水素酵素、脱水素酵素の基質、ジアホラーゼおよびテトラゾリウム塩が、それぞれ溶液または乾燥物の形態で個別に保存されていることを特徴とする請求項7に記載の微生物検出用試薬。 前記脱水素酵素及びジアホラーゼを含有する酵素溶液と、脱水素酵素の基質及びテトラゾリウム塩を含有する基質液とからなり、酵素溶液と基質液とが個別に保存されていることを特徴とする請求項7に記載の微生物検出用試薬。 【課題】 高価な機器や顕微鏡を必要とすることなく、かつ、液体試料だけでなく、固体または固体を含む試料にも適用できる迅速かつ安価な微生物の検出方法および微生物検出用試薬を提供すること。【解決手段】 微生物とテトラゾリウム塩とを接触させる工程を有することを特徴とする微生物の検出方法。微生物と色素原とを接触させる色素原接触工程と、前記色素原接触工程後、酵素的サイクリング反応により前記色素原の発色または蛍光シグナルを増感させる増感工程とを有することを特徴とする微生物の検出方法。脱水素酵素、脱水素酵素の基質、ジアホラーゼおよびテトラゾリウム塩を含むことを特徴とする微生物検出用試薬。【選択図】 なし


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