タイトル: | 公開特許公報(A)_触媒組成物 |
出願番号: | 2003344760 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,B01J31/22,C07D487/22 |
福住 俊一 今堀 博 JP 2005111297 公開特許公報(A) 20050428 2003344760 20031002 触媒組成物 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 細田 芳徳 100095832 福住 俊一 今堀 博 7B01J31/22C07D487/22 JPB01J31/22 MC07D487/22 5 OL 11 4C050 4G069 4G169 4C050AA02 4C050BB04 4C050EE04 4C050FF05 4C050GG01 4C050HH01 4C050PA01 4G069AA06 4G069AA08 4G069BA21A 4G069BA21B 4G069BA27A 4G069BA27B 4G069BC35A 4G069BC35B 4G069BE13A 4G069BE13B 4G069CC31 4G169AA06 4G169AA08 4G169BA21A 4G169BA21B 4G169BA27A 4G169BA27B 4G169BC35A 4G169BC35B 4G169BE13A 4G169BE13B 4G169CC31 本発明は、触媒組成物に関する。さらに詳しくは、光エネルギー変換触媒として、また太陽電池に用いられるエネルギー変換の部品分子などに好適に使用しうる触媒組成物に関する。 近年、効率のよい生物学的電子移動系を模倣して、電子供与体と電子受容体との連結分子を構築する単純でかつ簡便な手段として、金属の配位子による配位、静電気的相互作用、水素結合、ロタキサンの生成などの非配位結合を利用することに、着目されている(例えば、非特許文献1参照)。 非配位性の溶媒を用いた場合、超分子の電子供与体−電子受容体の錯体に、効率的な電荷の分離が生じるが、電荷分離(以下、CSという)状態の寿命が非常に短くなる。これに対して、配位性の溶媒を用いた場合、電化分離状態を長寿命化させることができるが、電子供与体と電子受容体との超分子錯体の形成は、通常、溶媒の配位によって妨げられる。 ベンゾニトリルなどの極性を有する配位性の溶媒においては、逆電子移動反応において分子間電子移動が優先し、光誘起電子移動によって生成するラジカルイオンが二次速度式に従って減衰する。 これは、超分子電子供与体−電子受容体の錯体において、電荷分離の長寿命を図るうえで、大きな技術的課題となっている。レーン(Lehn), J.-M. 「スプラモレキュラー・ケミストリー(Supramolecular Chemistry), VCH, ワインハイム(Weinheim), 1995 本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、長寿命の電荷分離状態を有し、光エネルギー変換触媒として、また太陽電池に用いられるエネルギー変換の部品分子などに好適に使用しうる触媒組成物を提供することを目的とする。 本発明は、金属ポルフィリンと、ピリジルナフタレンジイミドとを混合してなる触媒組成物に関する。 本発明の触媒組成物は、長寿命の電荷分離状態を有するので、光エネルギー変換触媒として、また太陽電池に用いられるエネルギー変換の部品分子などに好適に使用しうるものである。 本発明の触媒組成物は、金属ポルフィリンと、ピリジルナフタレンジイミドとを混合したものである。 本発明の触媒組成物は、例えば、ベンゾニトリルなどの極性有機溶媒に溶解させたときに、金属ポルフィリンと、ピリジルナフタレンジイミドとが超分子錯体を形成し、この超分子錯体を光励起すると、光電子移動の結果、電荷分離状態を生成する。この電荷分離状態は、電子供与体−電子受容体の2分子の触媒組成物のなかで従来になく、例えば、5℃の温度において、880 マイクロ秒(以下、μsという)という、長寿命を有する。 このように、本発明の触媒組成物は、非常に長い寿命の電荷分離状態を有するので、光エネルギー変換触媒などとしての応用が期待されるものである。 金属ポルフィリンとしては、例えば、式: (式中、Phはフェニル基を示す)で表される亜鉛(II)テトラフェニルポルフィリン(以下、ZnTPP という)などの亜鉛ポルフィリン、マグネシウムポルフィリンなどが挙げられる。これらの中では、ZnTPP が好ましい。 ピリジルナフタレンジイミドは、式: で表される化合物である。その正式名称は、2-ヘキシル-7- ピリジン-4- イル- ベンゾ[lmn][3,8]フェナンスロリン-1,3,6,8- テトラオンである。ピリジルナフタレンジイミドは、例えば、ナフタレン-1,4,5,8- テトラカルボン酸二無水物と、4-アミノピリジンおよびヘキシルアミンとを縮合させることによって調製することができる。 金属ポルフィリンの量は、ピリジルナフタレンジイミドと錯体を生成させる観点から、ピリジルナフタレンジイミド1モルあたり、好ましくは0.001 〜1モル、より好ましくは0.001 〜0.01モルである。 本発明の触媒組成物は、金属ポルフィリンとピリジルナフタレンジイミドとを混合したものである。本発明の触媒組成物は、極性有機溶媒に溶解させたものであってもよく、あるいはあらかじめ極性有機溶媒に溶解させておかずに使用時に極性有機溶媒に溶解させるものであってもよい。 極性有機溶媒としては、例えば、ベンゾニトリル、アセトニトリルなどが挙げられる。これらの極性有機溶媒のなかでは、ベンゾニトリルが好ましい。 極性有機溶媒の量は、金属ポルフィリンとピリジルナフタレンジイミドとが配位するのに充分な量とするために、金属ポルフィリンとピリジルナフタレンジイミドとの合計量1gあたり、10〜1000mL、好ましくは50〜500mL とすることが望ましい。 なお、前記極性有機溶媒溶液は、例えば、金属ポルフィリンを極性有機溶媒に溶解させた後、その溶液にピリジルナフタレンジイミドを溶解させることによって調製してもよく、あるいは金属ポルフィリンおよびピリジルナフタレンジイミドを同時に極性有機溶媒に溶解させることによって調製してもよい。 かくして得られる本発明の触媒組成物が得られるが、金属ポルフィリンとして、例えば、ZnTPP を用い、ZnTPP およびピリジルナフタレンジイミド(以下、PyNIm という)をベンゾニトリルなどの極性有機溶媒に溶解させたときには、スキーム(1):(式中、Phはフェニル基を示す)で表されるように、超分子錯体(ZnTPP-PyNIm) が生成し、この生成した超分子錯体は、5℃において、CS状態の寿命が880 μs と非常に長いという特徴を有する。 次に、本発明の触媒組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。製造例1 ナフタレン-1,4,5,8- テトラカルボン酸二無水物10mmol(10mmol)、4-アミノピリジン1.88g(20mmol) およびヘキシルアミン1.01g(10mmol) を乾燥させたN,N-ジメチルホルムアミド400mL に25℃で溶解させた後、攪拌下、窒素ガス雰囲気中で90℃の温度で12時間加熱した。 次に、得られた反応混合物を水1Lで沈殿させ、濾過することにより、紫色の固形物を得た。得られた固形物をトリクロロメタン中に分散させた後、濾過した。 得られた濾液を、溶離液としてトリクロロメタンを用い、シリカゲル上でフラッシュカラムクロマトグラフィにより精製し、ひきつづいてトリクロロメタン−ヘキサンで再結晶させることにより、白色結晶1.63g(3.81mmol) を得た(収率38%)。 得られた白色結晶は、以下の物性を有することから、2-ヘキシル-7- ピリジン-4- イル- ベンゾ[lmn][3,8]フェナンスロリン-1,3,6,8- テトラオン(ピリジルナフタレンジイミド)であることを確認した。 1H-NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.82(s, 2H), 8.81(s, 2H), 8.61(dd, J=1.6 Hzおよび4.9 Hz, 2H), 8.61(ddd, J=0.5 Hz, 1.6 Hzおよび4.6 Hz, 2H), 4.22(t, J=7.5 Hz, 2H), 1.76(m, 2H), 1.31-1.50(m, 6H), 0.91(t, J =7.0 Hz, 3H) FABMS m/z 428 (M+ H+ ) MALDI-TOF MS m/z 428(M+ H+ ) 実施例1 25℃のベンゾニトリルにZnTPP (2.7×10-6M)を溶解させ、得られた溶液に種々の濃度のPyNIm(0〜8.6 ×10-3M)を添加した後、その溶液の紫外−可視光スペクトルを調べた。その結果を図1(a) に示す。なお、図1(a) において、矢印は、PyNIm の濃度が増大する方向を意味する。 図1(a) に示された結果から、PyNIm の添加により、紫外−可視光スペクトルが変化し、等吸収点でソーレーおよびQ−バンドが赤色にシフトすることがわかる。また、吸光度の変化から、PyNIm の濃度の増大とともに飽和の挙動が呈されていることがわかる。このことから、PyNIm がZnTPP と1:1 錯体を生成することがわかる。 前記スキーム(1) によれば、吸光度の変化は、式(2): [ZnTPP]0/(A0-A) =1/(εc −εp )+(K[PyNIm](εc - εp ))-1 (2) (式中、A0およびA は、それぞれ、PyNIm の非存在下または存在下における波長431nm でのZnTPP の吸光度、εp およびεc は、それぞれ、PyNIm の非存在下または存在下における波長431nm でのモル吸光係数を示す)で与えられ、[ZnTPP]0/(A0-A) と[PyNIm] -1とが直線関係にあることが予測される。 そこで、前記結果に基づいて、波長423nm において、[PyNIm] -1に対して[ZnTPP]0/(A0-A) をプロットした。その結果を図1(b) に示す。 図1(b) に示された結果より、[PyNIm] -1に対して[ZnTPP]0/(A0-A) が直線状にプロットされることから、ZnTPP-PyNIm 錯体の生成定数(K) が、ベンゾニトリルにおいて5.2 ×102M-1であると決定された。実施例2 2.7 ×10-6M のZnTPP ベンゾニトリル溶液に、PyNIm を0〜4.3 ×10-3M の範囲内の種々の濃度となるように添加し、波長600 〜700nm における蛍光強度を測定した。その結果を図2に示す。図2において、矢印は、PyNIm の濃度の増大とともに蛍光強度が変化する方向を示す。 図2に示された結果から、PyNIm をZnTPP のベンゾニトリル溶液に添加することにより、ZnTPP の蛍光スペクトルに著しい変化が生じることがわかる。また、波長560nm でのZnTPP のQ帯の光励起により、最大波長λmax が605nm および654nm である蛍光が認められることがわかる。 また、前記結果に基づいて、波長650nm において、[PyNIm] の濃度に対する蛍光強度を調べた。その結果を図2の上部に記載する。その結果から、ZnTPP の蛍光スペクトルの強度は、PyNIm の濃度の増大とともに低下し、ZnTPP-PyNIm 錯体が生成されたときに、一定値に到達することがわかる。PyNIm の濃度変化における蛍光強度の変化から、ZnTPP-PyNIm 錯体におけるZnTPP とPyNIm との結合定数(K) は、6.0 ×102M-1であると決定された。実施例3 ZnTPP 1.0 ×10-4M およびPyNIm 8.6 ×10-3M のベンゾニトリル溶液の還元電位をサイクリック・ボルタモメトリーにより、測定した。 その結果、ベンゾニトリル中での1ZnTPPからPyNIm への光誘起電子移動の自由エネルギーの変化(ΔG0 ET) は、一電子酸化電位、ZnTPP の励起エネルギー(S1 =2.05eV) およびベンゾニトリル中でのPyNIm の一電子還元電子から、-0.71eV であると測定された。 発熱の光誘起電子移動過程から判断すれば、その超分子錯体(ZnTPP-PyNIm錯体)において、1ZnTPPからPyNIm への光誘起電子移動により、蛍光が消失するものと思われる。実施例4 ZnTPP (5.4×10-6M)およびPyNIm (8.6×10-3M)の脱気されたベンゾニトリル溶液に波長431nm のレーザーで励起させて20μs 経過した後、25℃でその溶液について過渡吸収スペクトルをナノセカンドレーザー光分解により調べた。その結果を図3に示す。また、図3の上部には、波長620nm における吸光度の減衰に対する一次プロットを示す。 図3に示された結果から、ZnTPP-PyNIm 錯体の過渡吸収スペクトルにより、超分子錯体において光誘起電子移動が生じていることが確認された。 図4に、ZnTPP (3.4×10-5M)およびRu(bpy)33+(式中、bpy は2,2'- ビピリジルを示す。以下同じ)(3.4×10-5M)のベンゾニトリル溶液の電子移動酸化の際に測定された ZnTPP+ の差吸収スペクトルを示す。 図3における過渡吸収帯は、図4に示される、Ru(bpy)33+によるZnTPP の一電子酸化によって生成した ZnTPP+ (λmax =618nm)の吸光帯の過渡吸収帯と一致した。 また、テトラメチルセミキノンラジカルアニオン(2.0×10-5M)を含むPyNIm(2.0 ×10-5M)の脱気されたベンゾニトリル溶液を用いて、 PyNIm- の差吸収スペクトルを調べた。その結果を図5に示す。 図3における過渡吸収帯は、図5に示される、ベンゾニトリル中でテトラメチルセミキノンラジカルアニオンによるPyNIm の一電子還元によって生成するPyNIm ラジカルアニオン(λmax =480, 608, 702 および779nm)の過渡吸収帯と一致した。 以上のことから、図3に示される過渡吸収スペクトルは、明らかに、その超分子錯体において、ZnTPP からPyNIm への光誘起電子移動により、CS状態[ZnTPP+ -PyNIm- ] が生成していることがわかる。 次に、ベンゾニトリルの代わりに、ベンゾニトリルよりも非常に極性が小さいベンゼンを用いた。その結果、CS状態が観測されず、その代わりにZnTPP の三重項励起状態のみが過渡吸収スペクトルで測定された。 図3に示されるCS状態は、明確な一次速度式にしたがって減衰する(図3に挿入された一次プロットを参照)。したがって、その減衰の過程は、分子内光誘起電子移動によって生成する ZnTPP+ と PyNIm- との分子間逆電子移動というよりも、むしろ超分子錯体([ZnTPP]-[PyNIm]錯体)内における逆電子移動に帰属することになる。実施例5 25℃における超分子錯体([ZnTPP]-[PyNIm]錯体)のCS状態の寿命を620nm における吸光度変化を測定することによって決定した。その結果、そのCS状態の寿命は、25℃において、630 μs であった。これよりも長い寿命(880μs)は、5℃で得られた。この寿命は、共有結合的または非共有結合的に結合している電子供与体−電子受容体系の化合物の溶液において、これまでに報告されているCS状態のなかでもっとも寿命が長い。 また、電荷分離の量子収率は、ZnTPP 溶液(ε=74000M-1cm-1) におけるポルフィリン三重項−三重項吸収の吸光度とCS状態(ε650 =12000M-1cm-1) の吸光度とを比較することにより、0.27であると決定された。実施例6 ZnTPP(5.4 ×10-6M)および PyNIm(7.8×10-3M)の脱気されたベンゾニトリル溶液のESR スペクトルを、-100℃で高圧水銀灯を用いて光励起下で測定した。その結果を図6(a) に示す。 また、ZnTPP(1.1 ×10-4M)によるRu(bpy)33+(8.2×10-5M)の電子移動酸化によって生成した ZnTPP+ のアセトニトリル溶液のESR スペクトルを、-100℃で測定した。その結果を図6(b) に示す。 また、テトラメチルセミキノンラジカルアニオン(5.8×10-5M)によるPyNIm(1.2 ×10-3M)の電子移動還元によって生成したPyNImP- のベンゾニトリル溶液のESR スペクトルを、-100℃で測定した。その結果を図6(c) に示す。 図6(a) に示されるように、-100℃で凍結されたベンゾニトリルにおけるZnTPP-PyNIm 錯体のESR の測定結果から、CS状態の生成が確認された。 図6(a) に示されるg=2.0042で測定されたESR シグナルは、Ru(bpy)33+によるZnTPP の一電子酸化によって生成した ZnTPP+ (g=2.0030) のESR シグナル(図6(b))と、テトラメチルセミキノンのラジカルアニオンによりPyNIm の一電子還元によって生成した PyNIm- (g=2.0044) のESR シグナル(図6(c))とから構成されていることがわかる。 以上の結果から、極性溶媒(例えば、ベンゾニトリルなど) とともに軸配位子(PyNIm) を選択することにより、ZnTPP とPyNIm とによって生成する超分子錯体の長寿命の電荷分離が効率よく十分に高められることがわかる。 本発明の触媒組成物は、長寿命の電荷分離状態を有するので、光エネルギー変換触媒として、また太陽電池に用いられるエネルギー変換の部品分子などに好適に使用することができる。(a)は、実施例1で得られたZnTPP およびPyNIm を溶解させたベンゾニトリル溶液の紫外−可視スペクトルを示す図、(b) は、実施例1において、 [PyNIm]-1に対して[ZnTPP]0/(A0-A) をプロットした図を示す。実施例2で得られた種々の濃度のPyNIm の存在下におけるZnTTP の蛍光強度を示す図である。実施例4で得られたZnTPP-PyNIm 錯体の過渡吸収スペクトルを示す図である。実施例4で得られた ZnTPP+ の差吸収スペクトルを示す図である。実施例4における PyNIm- の差吸収スペクトルを示す図である。(a)は実施例6で得られたZnTPP およびPyNIm のベンゾニトリル溶液のESR スペクトル、(b) は実施例6で得られた ZnTPP+ のアセトニトリル溶液のESR スペクトル、(c) は実施例6で得られた PyNIm- のベンゾニトリル溶液のESR スペクトルを示す図である。 金属ポルフィリンと、ピリジルナフタレンジイミドとを混合してなる触媒組成物。 金属ポルフィリンが、亜鉛ポルフィリンである請求項1記載の触媒組成物。 金属ポルフィリンの量が、ピリジルナフタレンジイミド1モルあたり0.001 〜1モルである請求項1または2記載の触媒組成物。 金属ポルフィリンおよびピリジルナフタレンジイミドを極性有機溶媒に溶解してなる請求項1〜3いずれか記載の触媒組成物。 極性有機溶媒が、ベンゾニトリルである請求項4記載の触媒組成物。 【課題】長寿命の電荷分離状態を有し、光エネルギー変換触媒として、また太陽電池に用いられるエネルギー変換の部品分子などに好適に使用しうる触媒組成物を提供すること。【解決手段】金属ポルフィリンと、ピリジルナフタレンジイミドとを混合してなる触媒組成物。【選択図】なし