タイトル: | 公開特許公報(A)_口腔内のミュータンス連鎖球菌数の測定方法 |
出願番号: | 2003339234 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,G01N33/48,G01N33/50,G01N33/543,G01N33/569 |
鱒沢 諭美子 藤田 聖 岡田 淳一 JP 2005106570 公開特許公報(A) 20050421 2003339234 20030930 口腔内のミュータンス連鎖球菌数の測定方法 株式会社ジーシー 000181217 鱒沢 諭美子 藤田 聖 岡田 淳一 7G01N33/48G01N33/50G01N33/543G01N33/569 JPG01N33/48 MG01N33/50 GG01N33/543 501AG01N33/543 521G01N33/569 F 3 OL 9 2G045 2G045AA28 2G045BA13 2G045BB04 2G045BB10 2G045BB14 2G045BB18 2G045BB20 2G045BB21 2G045BB29 2G045BB41 2G045BB50 2G045BB51 2G045CB07 2G045CB21 2G045FA18 2G045FB03 2G045FB04 2G045FB06 2G045FB07 2G045FB15 2G045GC22 本発明は、口腔内のミュータンス連鎖球菌数を正確且つ簡単に測定することが可能な唾液中や歯垢中のミュータンス連鎖球菌数の測定方法に関するものである。 ヒトの口腔内におけるミュータンス連鎖球菌の存在と齲蝕の発生との間には密接な関係があることが知られており、ヒトの口腔内のミュータンス連鎖球菌の有無や量を簡便に検査できれば齲蝕に対する罹患リスクや現在の罹患状況の把握ができ、極めて多くの人々に恩恵をもたらすことが可能である。 細菌数(細菌濃度)の一般的な測定方法は、必要により染色した細菌を含む一定量の液(例えば10μl)を細胞計測盤を用いて顕微鏡(400倍率程度)で計測に必要とされる菌の数を算定し、その数に計測盤に指定されている倍数(例えば100倍)を乗じ単位量(例えば1ml)中の細菌数を算出する。また、顕微鏡による細菌数の測定が困難な場合には最初の液を水等で希釈し、その希釈倍数を最終数値に乗じることにより細菌数を測定したり、フィルタをかけてから細菌を各種センサー等により機械的に測定する方法が一般的である(例えば、特許文献1〜3参照。)。しかし、試料として唾液や特に歯垢を用いた場合には、唾液や歯垢に多く含まれる不純物により顕微鏡等で細菌を選択して数えることは困難であり、特に特定の細菌を選択して数えることは不可能であった。 そのため、ミュータンス連鎖球菌が発育できるための栄養素(例えばペプトン, 肉エキス,植物エキス,酵母エキス,ビタミン類,糖類,血液成分等)を含めた寒天培地に唾液や歯垢等を検体として塗布し細菌を増殖させてコロニーを形成させ、そのコロニー数から細菌数(細菌濃度:単位 CFU/ml;Colony Forming Unit)を求める方法が行われており、この方法を用いると唾液や歯垢中の細菌でも精度良く計測することができる。しかし、寒天培地はミュータンス連鎖球菌は勿論検体中の殆どの細菌を増殖させてしまうため、測定した全細菌数から求めようとするミュータンス連鎖球菌の割合を導く必要があった。 寒天培地上の任意のコロニーがミュータンス連鎖球菌であるか否かを判断する方法は、コロニーの形状や色等から測定者が判断する方法が一般的であるが、この方法は計測者の経験と感覚に大きく依存するために正確なミュータンス連鎖球菌数を求めることができなかった。また、ミュータンス連鎖球菌を選択的に培養できる培地を用いてその培地に培養されたコロニー数を計測する方法も考えられが(例えば、特許文献4,5参照。)、実際には選択培養されたコロニーはミュータンス連鎖球菌でない細菌が繁殖していることも多くミュータンス連鎖球菌数を正確に測定できているとは言えなかった。また、この方法ではミュータンス連鎖球菌の種類(例えばストレプトコッカス・ミュータンスとストレプトコッカス・ソブリヌス)を同時に選択して細菌数を測定することも更に難しかった。 前述の顕微鏡等による形態学分析よりも正確にミュータンス連鎖球菌であるかどうかを確認するためには、例えば発酵試験等の生化学的な試験や、酵素抗体法やミュータンス連鎖球菌に特異的な配列をもつ合成DNAをプライマーとしてPCR反応(ポリメラーゼ連鎖反応)を行い、増幅された遺伝子断片をアガロースゲルで電気泳動を行うことにより菌株の確認を行う分子生物学的検査等がある(例えば、非特許文献1参照。)。しかし、いずれにしても大掛かりで高価な設備と高度な技術、更に日数が必要となり一般的ではなかった。特開平5−215666号公報特開平5−328995号公報特開平6−209790号公報特開2002−27975号公報特開2003−38167号公報松本優子、他4名、”モノクロナール抗体を応用したS.mutansの迅速検出キットにおける検出力の評価、口腔衛生学会雑誌、2001年;51:604-605 本発明は、従来の唾液や歯垢等の検体中の細菌を増殖させてコロニーを形成させ、そのコロニー数から細菌数を求める方法に於いて、検体中のミュータンス連鎖球菌数を正確且つ簡単に測定することが可能な口腔内のミュータンス連鎖球菌数の測定方法を提供することを課題とする。 本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、コロニーを形成している細菌の種類がミュータンス連鎖球菌であるか否かを確認する手段として、抗原抗体反応を利用すれば簡単に且つ非常に正確に口腔内のミュータンス連鎖球菌を同定できることを見いだして本発明を完成した。 即ち本発明は、被験者の口腔内から採取した検体を寒天培地上に塗布し、寒天培地ごと必要な条件下で検体中の細菌を培養してコロニー群を形成させ、該コロニー群中から任意に選出した複数のコロニーに対して抗原抗体反応を利用してコロニーを形成する細菌がミュータンス連鎖球菌であることを同定し、寒天培地上のコロニー数と任意に選出した複数のコロニー数とミュータンス連鎖球菌であると同定されたコロニー数とから検体中のミュータンス連鎖球菌数を求める口腔内のミュータンス連鎖球菌数の測定方法である。 特に抗原抗体反応の利用方法が、特定のミュータンス連鎖球菌とのみ結合しうる抗体が担持された担体と、先の担体に担持されたものとは別の先のミュータンス連鎖球菌とのみ結合しうる抗体に識別物質を結合させた標識抗体を含む液体とを用いるクロマトグラフィー法であること、更にはミュータンス連鎖球菌が、ストレプトコッカス・ミュータンス及び/またはストレプトコッカス・ソブリヌスであることが好ましい。 本発明に係る口腔内のミュータンス連鎖球菌数の測定方法によれば、従来では高価な設備や高度な技術が必要不可欠であった口腔内のミュータンス連鎖球菌数を正確且つ短期間に簡単に測定することが可能である。特に同じミュータンス連鎖球菌であるストレプトコッカス・ミュータンスの菌数とストレプトコッカス・ソブリヌスの菌数とを同一の培地上で測定することも可能となる。 本発明に係る口腔内のミュータンス連鎖球菌数の測定方法は、先ず被験者から採取した唾液や歯垢等の検体を寒天培地上に塗布する。この場合の塗布とは、従来からコロニーを形成させるために用いられている手段を示すものであり、唾液や歯垢を希釈してから又は直接の塗布,塗抹,滴下,噴霧等の手段を含む。寒天培地は、MSB培地,BHI培地,MS培地等、従来から用いられている寒天培地を特に限定することなく使用できる。その後、通法に従い寒天培地ごと必要な条件下で培養してコロニーを1シャーレにつき100〜1000個程度形成させ、この時のコロニー数を計測しておく。このときの培養の条件は、その菌数を求めるミュータンス連鎖球菌やコロニーの形成状態によって定められるが、一般的にはMSB培地で48時間,嫌気培養等の条件で培養をおこなう。 形成されたコロニー群の中から複数のコロニーを選出するが、選出方法はコロニーの形態的な特徴に影響されずに任意に選出する必要がある。選出する数は全コロニー数であることが最も好ましいが、シャーレ内のコロニー数が多い場合にはコロニー群の一部の選出となる。実際には選出するコロニー数が10〜150個であることが好ましく、10個以下であると求める細菌数の精度が得られ難い傾向がある。また、150個を超えて選出するのは労力的に好ましくなく、約150個を選出する場合も培地上の選択の対象となるコロニー数の40〜100%であることが測定精度の点から好ましい。より現実的な選出数の範囲は20〜100個である。 選出した複数のコロニーの全てに対してそのコロニーを形成している細菌がミュータンス連鎖球菌であるか否か、または、どのようなミュータンス連鎖球菌であるかを抗原抗体反応を利用して同定する。抗原抗体反応を利用した同定方法は従来から用いられている方法を特に限定することなく利用でき、例えば酵素を用いた発色濃度で同定、定量を行う酵素抗体法,抗体を蛍光色素で標識し抗体と反応した抗原を特異的に染色しそれを蛍光顕微鏡で測定する蛍光抗体法等がある。 またその他にも、近年、抗原抗体反応を簡便に利用する方法が数多く提案されており、例えば、米国特許第5,591,645号、米国特許第4,855,240号、米国特許第4,435,504号、米国特許第4,980,298号、特開昭61-145459号、特開平6-160388号等に開示されているクロマトグラフィーを利用した測定方法は、採取したコロニーの一部を同定を目的とする抗原を含んだ試験溶液に混入して検査器具に染み込ませるだけで、抗原の有無を知ることができる簡便性に優れた方法である。このような方法は一般に免疫クロマトグラフィー法と呼ばれており、その同定の原理はSe-Hwan Paekらの報告(Se-Hwan Paek, Seung-Hwa Lee, Joung-Hawan Cho, and Young-Sang KiM, DevelopMent of Rapid One-Step IMMunochroMatographic Assay, Methods, 22, 53-60, 2000)に詳細に記述されている。 選出したコロニーの同定が終了した後に、寒天培地上のコロニー数と任意に選出した複数のコロニー数とミュータンス連鎖球菌であると同定されたコロニー数とから口腔内のミュータンス連鎖球菌数を求める。更に詳細には、寒天培地上のコロニー数と任意に選出した複数のコロニー数とミュータンス連鎖球菌であると同定されたコロニー数とによって、従来から行われているコロニー数から細菌濃度を求める方法を用いて口腔内のミュータンス連鎖球菌数を求める。 具体的には、例えば、寒天培地上のコロニー数から検体中の全細菌濃度を求め、任意に選出した複数のコロニー数に対するミュータンス連鎖球菌であると同定されたコロニー数の割合を先の全細菌濃度に掛け合わせて口腔内のミュータンス連鎖球菌数(細菌濃度)を算出する。 本発明に係る口腔内のミュータンス連鎖球菌数の測定方法は、前述した算出順序に限定されることはなく、例えば、任意に選出した複数のコロニー数に対するミュータンス連鎖球菌であると同定されたコロニー数の割合を全コロニー数に掛け合わせた後に、そのコロニー数から検体中の細菌濃度、即ち、この場合には求めようとする口腔内のミュータンス連鎖球菌数を算出しても良い。 以下に実施例を示し本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例のみに制限されるものではない。実施例1 抗原抗体反応に以下に説明するクロマトグラフィー法を利用した。 ミュータンス連鎖球菌としてストレプトコッカス・ミュータンス菌(ATCC25175菌株、以下S・ミュータンスと記することがある。)をBHI培地(Brain Heart Infusion培地,DIFCO社製)を用いて、37℃で一晩培養を行い、培養液から遠心分離によって菌体を回収した後、PBS(10mmolリン酸緩衝化生理食塩水)にて2回洗浄後、ホルムアルデヒド水溶液により生育を停止させた。この菌の分散液をそのままマウスに免疫し、KohlerとMilsteinによる細胞融合を用いたハイブリドーマの樹立法によって以下に示す精製抗体を得た。 「SM1抗体」…ストレプトコッカス・ミュータンス菌に対する特異抗体 「SM2抗体」…ストレプトコッカス・ミュータンス菌に対する特異抗体 粒径40nmの金コロイドをSM2抗体に標識した。金コロイドは市販品(British Biocell,International社製)のものを使用し、ウシ血清アルブミン(商品名:BSA、SIGMA社製)1%、非イオン性界面活性剤(商品名:Tween20,SIGMA社製)1%を添加したPBSで抗体濃度0.1μg/mlとなるように希釈した。金コロイドで標識した特異抗体液をSM2標識抗体と称する。 多孔質膜としてプラスティックフィルムで裏打ちをしたニトロセルロースメンブレン(商品名:SXHF、日本ミリポア社製)を用いた。この膜を5mm×40mmの長方形に切り出し、SM1抗体を1%ウシ血清アルブミン含有50mmolリン酸緩衝液に1mg/mlの濃度となるように希釈し、この抗体希釈液を切り出したニトロセルロースメンブレンの中央部、長手方向と直角にマイクロピペットで凡そ1μl/cmとなるように塗布した。この膜の一方の端に15mm四方の濾紙を密着するようにクリップで固定し吸水体とした。また、吸水体と反対側の端に標識抗体の保持体(以下、標識抗体保持体と称する)として5mm×20mmのポリプロピレン製マトリクス(商品名:クイックリリース コンジュゲートパッド,日本ミリポア社製)をクリップで固定し、そこにSM2標識抗体液を30μl滴下した。この器具を37℃で2時間乾燥し、使用直前までデシケーター中に保管した。 ミュータンス連鎖球菌と特異抗体固定化ストリップ上に固定化された抗体との反応性は以下の原理で検出される。唾液が特異抗体固定化ストリップの標識抗体保持体を通過する際、唾液中のミュータンス連鎖球菌に特異的な標識抗体が結合し赤色に発色する。更にミュータンス連鎖球菌と標識抗体との複合体は特異抗体固定化ストリップ中を移動していき、特異抗体固定化ストリップに例えば帯状に固定化された特異抗体(捕捉抗体)に捕捉され帯状の染みが確認される。帯状の染みが確認された場合には陽性,されなかった場合が陰性となる。 検体を唾液として、被験者に唾液採取用ガムを5分間咀嚼させ唾液を試験管に採取した。採取した唾液の一部をPBSにて10倍,100倍,1000倍に希釈し試料とした。各試料50μlをMSB培地に塗布した。2日間、37℃で嫌気培養を行った後、コロニーを観測したところ、100倍希釈の試料を用いたMSB培地におおよそ100個前後のコロニーが確認されたため、この試料のコロニー数を測定したところ131個であった。 寒天培地上のコロニー数の約31%に当たる40個のコロニーを任意に選 出した。全ての任意に選出した複数のコロニーの各1個をそれぞれPBS 100μLが入ったテストチューブに入れ混和し、超音波ホモジナイザー(商品名:Digital Sonifier ,Branson社製)で5分処理したものをサンプルとした。サンプルを、作製しておいた ストレプトコッカス・ミュータンス検出用特異抗体固定化ストリップに流し、15分後に陽性・陰性の判断をした。ストレプトコッカス・ミュータンス菌であると同定された(陽性だった)コロニー数を求めたところ、18個であった。 最終的に、寒天培地上のコロニー数と任意に選出した複数のコロニー数とストレプトコッカス・ミュータンス菌であると同定されたコロニー数とから唾液中のストレプトコッカス・ミュータンス菌数を求めた。 寒天培地上のコロニー数=131個 任意に選出した複数のコロニー数=40個 S・ミュータンス菌であると同定されたコロニー数=18個 唾液中の菌数=100(希釈率)×131個×1000μl/50μl(ml換算)=2.6×105 CFU/ml唾液中のS・ミュータンス菌数=2.6×105 CFU/ml×18個/40個=1.2×105 CFU/ml 即ち、この被験者の唾液中(口腔内)の菌の中でミュータンス連鎖球菌の数は、ストレプトコッカス・ミュータンス菌の数が2.6×105 CFU/mlであることが分かった。 本実施例に於いて、寒天培地上のコロニー数と任意に選出した複数のコロニー数とストレプトコッカス・ミュータンス菌であると同定されたコロニー数と唾液中の菌濃度求める計算は、下記のように順序を変更しても良いのは勿論である。唾液中のS・ミュータンス菌の数=100(希釈率)×18個×131個/40個×1000μl/50μl(ml換算)=1.2×105 CFU/ml実施例2 実施例1のクロマトグラフィー法を用いた測定に於いて、のストレプトコッカス・ミュータンス菌(ATCC25175菌株)を用いた特異抗体固定化ストリップに加えてストレプトコッカス・ソブリヌス菌(ATCC33478菌株、以下S・ソブリヌスと記することがある。)を用いた特異抗体固定化ストリップを準備した以外は実施例1と同様の方法によりミュータンス連鎖球菌、即ち本実施例の場合にはストレプトコッカス・ミュータンス菌とストレプトコッカス・ソブリヌス菌の菌濃度を測定した。 被験者に唾液採取用ガムを5分間咀嚼させ唾液を試験管に採取した。採取した唾液の一部をPBSにて10倍,100倍,1000倍に希釈し試料とした。各試料50μlをMSB培地に塗布した。2日間、37℃で嫌気培養を行った後、コロニーを観測したところ、100倍希釈の試料を用いたMSB培地におおよそ100個前後のコロニーが確認されたため、この試料のコロニー数を測定したところ115個であった。 寒天培地上のコロニー数の約61%に当たる70個のコロニーを任意に選出した。全ての任意に選出した複数のコロニーの各1個をそれぞれPBS 100μLが入ったテストチューブに入れ混和し、超音波ホモジナイザー(商品名:Digital Sonifer ,Branson社製)で5分処理したものをサンプルとした。サンプルを、作製しておいた S.mutans検出用特異抗体固定化ストリップ及びストレプトコッカス・ソブリヌス検出用特異抗体固定化ストリップに流し、15分後に陽性・陰性の判断をした。ストレプトコッカス・ミュータンス菌であると同定された(陽性だった)コロニー数は24個であった。また、ストレプトコッカス・ソブリヌス菌であると同定された(陽性だった)コロニー数は9個であった。 寒天培地上のコロニー数=115個 任意に選出した複数のコロニー数=70個 S・ミュータンス菌であると同定されたコロニー数=24個 S・ソブリヌス菌であると同定されたコロニー数=9個 唾液中の菌数=100(希釈率)×115個×1000μl/50μl(ml換算)=2.3×105 CFU/ml 唾液中のS・ミュータンス菌数=2.3×105 CFU/ml×24個/70個=7.8×104 CFU/ml 唾液中のS・ソブリヌス菌数=2.3×105 CFU/ml×9個/70個=2.9×104 CFU/ml 即ち、この被験者の唾液中(口腔内)の菌の中でミュータンス連鎖球菌の数は、ストレプトコッカス・ミュータンス菌が7.8×104 CFU/ml、ストレプトコッカス・ソブリヌス菌が2.9×104 CFU/mlであることが分かった。実施例3 実施例1または2と同様の方法によりストレプトコッカス・ミュータンス菌に対する特異抗体及びストレプトコッカス・ソブリヌス菌に対する特異抗体(以後、SM1及びSS1抗体と称することがある)を作製した。 検体を唾液とし、被験者に唾液採取用ガムを5分間咀嚼させ唾液を試験管に採取した。採取した唾液の一部をPBSにて10倍,100倍,1000倍に希釈し試料とした。各試料50μlをMSB培地に塗布した。2日間、37℃で嫌気培養を行った後、コロニーを観測したところ、100倍希釈の試料を用いたMSB培地におおよそ100個前後のコロニーが確認されたため、この試料のコロニー数を測定したところ98個であった。 寒天培地上のコロニー数の約20%に当たる20個のコロニーを任意に選出した。全ての任意に選出した複数のコロニーの各1個をそれぞれPBS 20μLが入ったテストチューブに入れ混和し、超音波ホモジナイザー(商品名:Digital Sonifer ,Branson社製)で5分処理したものを10μlに分けて2つのテストチューブに入れサンプルとした。各々のサンプルの一方にSM1抗体を、残りの片方にSS1抗体を1μl添加し室温で30分間放置した。 全てのサンプルにFITC(フルオロセインイソチオシアネート)で標識されたマウス抗体(商品名 Anti-mouse IgG FITC cinjugate,シグマ社製)を1μl添加し、遮光して室温に30分間放置した。その後、各々のサンプルを蛍光顕微鏡(オリンパス社製)にて観察し、抗体の反応の有無を確認した。その結果、ストレプトコッカス・ミュータンス菌であると同定されたサンプル(コロニー数)は4個であった。また、ストレプトコッカス・ソブリヌス菌であると同定された(陽性だった)コロニー数は0個であった。 寒天培地上のコロニー数=98個 任意に選出した複数のコロニー数=20個 S・ミュータンス菌であると同定されたコロニー数=8個 S・ソブリヌス菌であると同定されたコロニー数=0個 唾液中の菌数=100(希釈率)×98個×1000μl/50μl(ml換算)=2.0×105 CFU/ml 唾液中のS・ミュータンス菌数=2.0×105 CFU/ml×4個/20個=4.0×104 CFU/ml 唾液中のS・ソブリヌス菌数=2.0×105 CFU/ml×0個/70個=0 CFU/ml 即ち、この被験者の唾液中(口腔内)の菌の中でミュータンス連鎖球菌の数は、ストレプトコッカス・ミュータンス菌が4.0×104 CFU/ml、ストレプトコッカス・ソブリヌス菌は0であることが分かった。 被験者の口腔内から採取した検体を寒天培地上に塗布し、寒天培地ごと必要な条件下で検体中の細菌を培養してコロニー群を形成させ、該コロニー群中から任意に選出した複数のコロニーに対して抗原抗体反応を利用してコロニーを形成する細菌がミュータンス連鎖球菌であることを同定し、寒天培地上のコロニー数と任意に選出した複数のコロニー数とミュータンス連鎖球菌であると同定されたコロニー数とから検体中のミュータンス連鎖球菌数を求める口腔内のミュータンス連鎖球菌数の測定方法。 抗原抗体反応の利用方法が、特定のミュータンス連鎖球菌とのみ結合しうる抗体が担持された担体と、先の担体に担持されたものとは別の先のミュータンス連鎖球菌とのみ結合しうる抗体に識別物質を結合させた標識抗体を含む液体とを用いるクロマトグラフィー法である請求項1に記載の口腔内のミュータンス連鎖球菌数の測定方法。 ミュータンス連鎖球菌が、ストレプトコッカス・ミュータンス及び/またはストレプトコッカス・ソブリヌスである請求項1または2に記載の口腔内のミュータンス連鎖球菌数の測定方法。 【課題】 従来の唾液や歯垢等の検体中の細菌を増殖させてコロニーを形成させ、そのコロニー数から細菌数を求める方法に於いて、検体中のミュータンス連鎖球菌数を正確且つ簡単に測定することが可能な口腔内のミュータンス連鎖球菌数の測定方法を提供する。【解決手段】 被験者の口腔内から採取した検体を寒天培地上に塗布し、寒天培地ごと必要な条件下で検体中の細菌を培養してコロニー群を形成させ、該コロニー群中から任意に選出した複数のコロニーに対して抗原抗体反応を利用してコロニーを形成する細菌がミュータンス連鎖球菌であることを同定し、寒天培地上のコロニー数と任意に選出した複数のコロニー数とミュータンス連鎖球菌であると同定されたコロニー数とから検体中のミュータンス連鎖球菌数を求める口腔内のミュータンス連鎖球菌数の測定方法とする。【選択図】 なし