生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_外生菌根菌の培養方法および外生菌根菌培養装置
出願番号:2003337722
年次:2007
IPC分類:A01G 1/04,C12N 1/14


特許情報キャッシュ

大政 正武 畠山 朋之 JP 3956139 特許公報(B2) 20070518 2003337722 20030929 外生菌根菌の培養方法および外生菌根菌培養装置 大政 正武 399051124 綿貫 隆夫 100077621 堀米 和春 100092819 大政 正武 畠山 朋之 20070808 A01G 1/04 20060101AFI20070723BHJP C12N 1/14 20060101ALI20070723BHJP JPA01G1/04 AA01G1/04 101C12N1/14 H A01G 1/04 C12N 1/14 米国特許第05554530(US,A) 特開平03−183416(JP,A) 7 2005102536 20050421 10 20040929 吉田 佳代子 本発明は、外生菌根菌の培養方法および外生菌根菌培養装置に関する。 ハナイグチ、アミタケなどのイグチ類、マツタケ、ホンシメジなど外生菌根菌には優秀な食用菌が多く、荒廃地の植林などに菌根菌の利用が期待されている。しかし、菌根菌は一般に純粋人工培養では生育が悪く大量の菌糸体の調整が困難であり、そのため技術開発が要望されている。 天然では、菌根菌は栄養分の低い土壌中においても高い菌糸密度を保っているが、純粋人工培養では糖源などの濃度の低い培地では低い菌糸密度にしかならず、菌根菌の培養をすすめる上でこれを克服する技術開発が必要である。特開2001−169659 本発明は上記要望に応えるべくなされたものであり、その目的とするところは、純粋人工培養において、高収量をあげることのできる外生菌根菌の培養方法および外生菌根菌培養装置を提供するにある。 本発明に係る外生菌根菌の培養方法は、高濃度の糖源をもつ培地と、これよりも低濃度の糖源をもつ培地とを隣接して、または一部接触して配置し、外生菌根菌を該両培地に跨るように接種して培養を行い、前記高濃度側の培地の菌糸を通して栄養分を伝達することによって前記低濃度培地側にも外生菌根菌の菌糸体を繁殖させることを特徴とする。 前記両培地を、切り欠き部における境界部で接触するように切り欠き部を有する仕切壁で仕切るようにすると好適である。 前記高濃度側の培地の糖濃度を33.3g/l以上とすると好適である。 前記高濃度側の培地にリン酸塩を含むようにすると好適である。 前記高濃度側の培地の糖に、グルコースもしくはフルクトース、またはグルコースとフルクトースの混合物を用いるようにすることができる。 前記低濃度側の培地に、土もしくはバーミキュライトを用いることができる。 また、本発明に係る外生菌根菌培養装置では、培養容器内に、高濃度の糖源をもつ培地と、これよりも低濃度の糖源をもつ培地とを隣接して、または一部接触して配置し、前記両培地を、切り欠き部における境界部で接触するように切り欠き部を有する仕切壁で仕切ったことを特徴とする。 本発明によれば、低濃度培地側にも旺盛に外生菌根菌の菌糸体を繁殖させることができ、外生菌根菌の菌糸体の収量を増加できる。 以下添付図面を参照し、本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。 図1は、菌根菌培養装置10の一例を示す説明平面図、図2はその説明断面図、図3は仕切壁の説明図である。 12はシャーレ状の培養容器、14は蓋体である。 培養容器12内は、切り欠き部16を有する仕切壁18によって2つの部位に仕切られている。 培養容器12の、仕切壁18で仕切られた一方の部位内には、高濃度の糖源をもつ培地Aが収容され、他方の部位内には、培地Aよりも低濃度の糖源をもつ培地Bが収容され、両培地A、Bは、切り欠き部16における境界部で接触するように隣接して培養容器12内に収容されている。なお、両培地A、Bは、若干の間隔をおいて、例えば、仕切壁18の厚み分を隔てて隣接、配置してもよい。 また、固体培地の場合には仕切壁18は必ずしも設けるを要しない。要は培地Aと培地Bとを隣接して配置すればよい。 培地Bを、培地Aの周りを取り囲むようにリング状に設けてもよい。 あるいは培地Aと培地Bとを重ね合わせるようにして配置してもよい。 培地の種類は特に限定されるものではないが、少なくとも高濃度の糖源をもつ培地Aに寒天培地からなる太田培地を用いると好適である。 培地Aの糖源の濃度は25g/l以上とするのがよい。 培地Bは寒天培地でなく、土やバーミキュライトを用いることもできる。 一般的な太田培地(寒天培地)を下記に示す。 組成 濃度( /1000ml) グルコース 10g クエン酸 1g 酒石酸アンモニウム 1g KH2PO4 1g MgSO4・7H2O 1g CaCl2・2H2O 50mg HEPES 7g ミネラル液 10ml ビタミン液 10ml pH 約5.1 なお、HEPES:N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N´-エタンスルホン酸、ミネラル液(/1000ml):FeCl3 5mg、MnSO4・4-6H2O 50mg、 ZnSO4・7H2O 300mg、CoSO4・7H2O 50mg、CuSO4・7H2O 100mg、 NiSO4・6H2O 200mg、アセチルアセトン 3mlビタミン液(/1000ml):塩酸チアミン 300mg、ニコチン酸 5mg、葉酸 3mg、ビオチン 5mg、ピリドキシン塩酸 0.5mg、Carnitine chloride 1mg、Adenine・H2SO4・2H2O 3mg、Choline chloride 3mg 本実施の形態では、この太田培地をベースに、糖源がリッチな培地Aと、糖源がプアーな培地Bとを調整し、両培地A、Bを培養容器12内に隣接配置して、菌根菌を接種するのである。なお、糖源は、グルコースもしくはフルクトース、またはグルコースとフルクトースの混合物を好適に用いることができる。 菌根菌20は、図1に示すように両培地A、Bに跨るように接種し、以後無菌状態で所要条件で培養を行うのである。 培養条件は菌根菌の種類にもよるが、温度は10℃〜30℃、湿度は65%以上(好ましくは90%程度の高湿度条件がよい)、培養期間は20日〜3ヶ月程度である。ハナイグチの場合には、15℃程度の比較的低温条件下の方がよかった。 菌根菌を両培地A、Bに跨るように接種することにより、図1に示すように、高濃度培地Aばかりでなく、低濃度培地B上にも菌根菌が生育し、コロニーを形成することがわかった。 このように低濃度培地B上にも菌根菌が生育する理由は、高濃度側から菌糸を通して順次栄養分が伝達され、菌糸は低濃度培地Bを足場として生育するからと考えられる。 天然の場合において、外生菌根菌は一般にセルロースなどの多糖を利用できず、糖源を宿主である樹木に依存している。樹木の篩部液は糖を多く含み、共生下にある菌糸体の糖利用性は植物生体内における糖濃度の影響を強く受けていると考えられる。この天然の場合において、菌根菌は、糖を多く含む篩部液等から栄養分を受け取り、その周囲の土中にまで菌糸が生育蔓延し、子実体として成長する。 本実施の形態では、接種した菌根菌の一部が高濃度培地Aに接するのであり、天然に近い状態の生育環境が形成され、低濃度培地B側にも菌糸が生育していくものと想定されるのである。このように、一方の側が低濃度培地でよい(上記のように場合によっては土、バーミキュライト等でよい)ことは、培養の容易化、コストの低減化が図れることになる。天然のものでは土の上に子実体を形成する。子実体の形成には低栄養の培地に菌糸を良く繁殖させることが肝要と考えられ、子実体の形成が期待される。しかし、今回は、子実体の形成をみるまでには至らなかったが、菌糸体を収量よく得ることができた。 なお、高濃度培地の糖濃度を高くすればするほど、低濃度培地側への生長が相対的にも絶対的にもよくなることがわかっている。 菌根菌は、チチアワタケ、シロヌメリイグチ、ヌメリイグチ、ハナイグチ、アミハナイグチ、カラマツベニハナイグチ、アミタケ、マツタケ、ホンシメジなどの菌根菌の培養が行える。これらは自然界で自生し、いずれの菌も容易に採取できる。以下に示す実施例でも、自然界より採取した菌根菌を用いた。もちろん、マツタケなどは市販しているので、市販菌を用いてもよい。 太田培地を基本培地として液体培養を行った。低濃度培地Bはいずれもグルコース濃度1g/l、酒石酸アンモニウム濃度1g/lとした。 培養はいずれも無菌下、常温で行った。 培養日数は40日、いずれも低濃度培地Bにおける収量で比較した。実施例1: ヌメリイグチの一菌株は、高濃度培地Aが、グルコース濃度100g/l、酒石酸アンモニウム(窒素源)濃度5g/lで最もよい生長を示し、普通の太田培地での単なる培養に比較して約3倍(乾燥重量)の菌糸体の収量を得た。実施例2: 図4、図5はハナイグチの培養例であり、横軸に高濃度培地Aの糖源(G:グルコース)と窒素源(AT)の濃度、縦軸に低濃度培地B側での菌糸体の収量(gDW:乾燥重量g)を示す。 高糖濃培地Aの糖濃度が高くなるにつれて飛躍的に収量が増加した。すなわち、糖濃度が10g/l、33.3g/l、100g/lの場合、糖濃度が1g/lのものに比して、それぞれ約4培、8倍、12倍の収量を得た。一方、窒素源の濃度にはそれほど影響されていないことがわかる(図4、図5)。実施例3: 図6、図7はチチアワタケの培養例であり、横軸に高濃度培地Aの糖源(G:グルコース)と窒素源(AT)の濃度、縦軸に低濃度培地B側での菌糸体の収量(gDW:乾燥重量g)を示す。 高糖濃培地Aの糖濃度が高くなるにつれて飛躍的に収量が増加した。すなわち、糖濃度が10g/l、33.3g/l、100g/lの場合、糖濃度が1g/lのものに比して、それぞれ約2培、4倍、12倍の収量を得た。一方、窒素源の濃度にはそれほど影響されていないことがわかる(図6、図7)。実施例4: 図8、図9はアミタケの培養例であり、横軸に高濃度培地Aの糖源(G:グルコース)と窒素源(AT)の濃度、縦軸に低濃度培地B側での菌糸体の収量(gDW:乾燥重量g)を示す。 高糖濃培地Aの糖濃度が高くなるにつれて飛躍的に収量が増加した。すなわち、糖濃度が10g/l、33.3g/l、100g/lの場合、糖濃度が1g/lのものに比して、それぞれ約2培、4倍、12倍の収量を得た。一方、窒素源の濃度にはそれほど影響されていないことがわかる(図8、図9)。実施例5: 図10は、Aサイドのグルコース濃度を1g/l、Bサイドのグルコース濃度を1g/lとし、図11は、Aサイドのグルコース濃度を100g/l、Bサイドのグルコース濃度を1g/lとして、それぞれアミタケ(Suillus bovinus)を接種し、25℃暗黒下で40日間培養した結果を示す。図11に明らかなように、Aサイドのグルコース濃度を高くした培地において、低濃度側にも菌糸が旺盛に繁殖していることがわかる。実施例6: 図12は、高濃度培地A、低濃度培地Bにそれぞれリン酸塩(リン酸2水素カリウム)を添加して、ハナイグチを培養した場合の低濃度側における菌糸体の収量を示す。 基本培地(コントロール)は、低濃度培地Bが、やはりグルコース濃度1g/l、酒石酸アンモニウム濃度1g/lであり、高濃度側培地Aが、グルコース濃度33.3g/l、酒石酸アンモニウム濃度5g/lである。 P50mM−Aは、培地A側にリン酸塩を50mM添加した意味であり、P50mM−Bは、培地B側にリン酸塩を50mM添加した意味である。 図から明らかなように、高濃度培地A側にリン酸塩を添加した場合、収量が増加している。実施例7: 図13は、高濃度培地Aの糖源の種類を変えて、ヌメリイグチを培養した場合の低濃度側における菌糸体の収量を示す。 基本培地(コントロール)は、低濃度培地Bが、やはりグルコース濃度1g/l、酒石酸アンモニウム濃度1g/lであり、高濃度側培地Aが、グルコース濃度33.3g/l、酒石酸アンモニウム濃度5g/lである。 いずれも糖源の濃度を33.3g/l、酒石酸アンモニウム濃度5g/lとした。なお2種類混在するものはいずれも等量で、トータルが33.3g/lである。 低濃度培地Bは、いずれもやはりグルコース濃度1g/l、酒石酸アンモニウム濃度1g/lとしている。 図13から明らかなように、糖源としては、グルコース、フルクトース、もしくはグルコースとフルクトースの混合物が有効である。実施例8: 次に、菌の接種方法を検討した。菌根菌を両培地A、Bに跨るように接種した場合には、片側のみ、あるいは両培地A、Bに独立して(跨らずに)接種した場合に比較してはるかに安定して両側に菌叢を伸長させることができた。 高濃度培地Aがグルコース濃度33g/l、酒石酸アンモニウム(窒素源)濃度1g/lであった場合、ハナイグチの一菌株にあっては、両培地A、Bに跨るように(独立でなく連続するように)接種した場合、片側(高濃度側)のみに接種した場合に比して、低濃度培地側での菌糸体の生育が旺盛になり、約2倍重量の菌糸体を得ることができた。培養装置の説明平面図である。培養装置の説明断面図である。仕切壁の説明図である。ハナイグチの培養結果を示すグラフである。高濃度側培地組成を変えた場合のハナイグチの培養結果を示すグラフである。チチアワタケの培養結果を示すグラフである。高濃度側培地組成を変えた場合のチチアワタケの培養結果を示すグラフである。アミタケの培養結果を示すグラフである。高濃度側培地組成を変えた場合のアミタケの培養結果を示すグラフである。A、B両サイド共に低糖濃度培地でアミタケを培養した結果を示す写真図である。Aサイドを高糖濃度培地、Bサイドを低糖濃度培地とした培地でアミタケを培養した結果を示す写真図である。培地にリン酸塩を添加した場合の収量への影響を示すグラフである。培地の糖濃度、糖組成を変えた場合の収量への影響を示すグラフである。符号の説明 10 培養装置 12 培養容器 14 蓋体 16 切り欠き 18 仕切壁 20 菌根菌 高濃度の糖源をもつ培地と、これよりも低濃度の糖源をもつ培地とを隣接して、または一部接触して配置し、外生菌根菌を該両培地に跨るように接種して培養を行い、前記高濃度側の培地の菌糸を通して栄養分を伝達することによって前記低濃度培地側にも外生菌根菌の菌糸体を繁殖させることを特徴とする外生菌根菌の培養方法。 前記両培地を、切り欠き部における境界部で接触するように切り欠き部を有する仕切壁で仕切ることを特徴とする請求項1記載の外生菌根菌の培養方法。 前記高濃度側の培地の糖濃度を33.3g/l以上とすることを特徴とする請求項1または2記載の外生菌根菌の培養方法。 前記高濃度側の培地にリン酸塩を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の外生菌根菌の培養方法。 前記高濃度側の培地の糖に、グルコースもしくはフルクトース、またはグルコースとフルクトースの混合物を用いることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の外生菌根菌の培養方法。 前記低濃度側の培地が、土もしくはバーミキュライトであることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の外生菌根菌の培養方法。 培養容器内に、高濃度の糖源をもつ培地と、これよりも低濃度の糖源をもつ培地とを隣接して、または一部接触して配置し、前記両培地を、切り欠き部における境界部で接触するように切り欠き部を有する仕切壁で仕切ったことを特徴とする外生菌根菌培養装置。


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