タイトル: | 公開特許公報(A)_穴広げ性の簡易評価方法 |
出願番号: | 2003329713 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,G01N3/08 |
飯塚 栄治 比良 隆明 冨永 陽一 小澤 満 JP 2005098720 公開特許公報(A) 20050414 2003329713 20030922 穴広げ性の簡易評価方法 JFEスチール株式会社 000001258 小林 英一 100099531 飯塚 栄治 比良 隆明 冨永 陽一 小澤 満 7G01N3/08 JPG01N3/08 1 1 OL 7 2G061 2G061AA01 2G061AB01 2G061BA07 2G061BA20 2G061CA01 2G061CB01 2G061EA01 2G061EA02 2G061EC02 本発明は、自動車部品等の薄鋼板プレス成形に関わり、特に、高強度鋼板での成形不良事例が多い伸びフランジ割れについて、その成形性評価を有利に行うための穴広げ性の簡易評価方法に関する。 自動車部品等の薄鋼板プレス成形について、特に高強度鋼板での成形不良問題の一つに伸びフランジ割れがある。鋼板の伸びフランジ性については、従来から、円筒あるいは円錐ポンチでの穴広げ率で評価されてきた(例えば非特許文献1)。穴広げ試験で使用するポンチの形状は、対象とする実部品のポンチ形状に応じて選択されている。 ところが、これら従来の穴広げ試験では、1回の試験に必要なサイズが約100×100(mm)であること、試験結果のばらつきが大きいため精度の高い評価をするには5回以上のn数が必要であることなどから、大量のサンプルと工数が必要であった。そこで、穴広げ性の簡便な評価方法として、切り欠き引張試験が広く行われている(例えば非特許文献2)。プレス成形難易ハンドブック第2版(日刊工業)P.470プレス成形難易ハンドブック第2版(日刊工業)P.462 しかし、上記の切り欠き引張試験では、試験片の端面は切削加工されるため、穴広げ率の支配因子である打抜き加工時のクリアランスの影響を評価することができない欠点がある。ここで、打抜き加工時のクリアランスとは、ポンチ(または例えば上刃)とダイス孔(または例えば下刃)との間の隙を被打抜き材の板厚に対する百分率で表したものである。したがって、少量のサンプルと工数で鋼板の穴広げ性や穴広げ率とクリアランスの関係を簡便に精度良く評価しうる試験方法の確立が課題となっている。本発明はこの課題を解決しようとするものである。 上記の課題を解決するためには、評価用のサンプルが小さいこと、試験結果のばらつきが小さいこと、試験片加工時のクリアランスの影響を考慮することが可能であることが求められている。そこで、本発明者らは、評価用サンプルサイズが小さく、試験結果のばらつきが小さいと思われる長方形の一部を打抜き加工した試験片を、一般的な引張試験機で破断させた際の全伸びで、穴広げ率が評価できるかどうかを鋭意検討した。 その結果、図1に示すような幅Wの長方形試験片を、長手方向中央部(打抜き部2)の幅CがC/Wで0.6以下となる円状ポンチで所定のクリアランスにて両側から打抜き加工した試験片1において、ゲージ長10mm以下での伸びを評価パラメータとすると、同じクリアランスで打抜き加工した円筒ポンチでの穴広げ率と非常に良い相関を示すことを突き止めた。さらに、本発明者らは種々のクリアランスで打抜き加工した試験片の伸びは、打抜きクリアランスを変えた円筒ポンチでの穴広げ率と良い相関を示すことを突き止めた。 すなわち、本発明は、幅Wの長方形試験片を、長手方向中央部の幅CがC/Wで0.6以下となる円状ポンチで所定のクリアランスにて両側から打抜き加工した試験片を引張試験し、ゲージ長10mm以下で測定した伸びを穴広げ性の評価パラメータとして用いることを特徴とする穴広げ性の簡易評価方法である。 本発明によれば、薄鋼板の穴広げ率を打抜き引張試験で簡便かつ精度良く評価できるようになる。 本発明の方法は、試験片形状と伸び測定時のゲージ長を規定する。 一般的に、伸びフランジ割れする部位のひずみ比は−0.5近傍である。また、穴広げ試験での破断部のひずみ比も−0.5近傍となる。従って、簡易評価試験での破断部のひずみ比は−0.5に近いことが好ましいと思われる。 また、一般的に、穴広げ性は、打抜き加工時のクリアランスはさることながら、鋼板の特性値としては局部延性に依存することが知られている。従って、打抜き加工した試験片の伸びで穴広げ性の評価を試みる場合、ゲージ長は小さい方が好ましいと思われる。 本発明者らは上記の事柄を踏まえた検討を行い、幅Wの長方形試験片を、長手方向中央部の幅(:打抜き部幅)CがC/Wで0.6以下となる円状ポンチで所定のクリアランスにて両側から打抜き加工した試験片を引張試験し、ゲージ長10mm以下で測定した伸びを穴広げ性の評価パラメータとして用いると、円筒ポンチでの穴広げ率を精度良く評価でき、かつ、同一条件下での試験結果のばらつきも小さいことを見出した。 以下、本発明に用いる諸条件の限定理由について説明する。 打抜き部幅(C)/試験片幅(W):0.6以下 打抜き部幅と試験片幅の割合(比)は破断部のひずみ比に影響する因子であり、破断部のひずみ比は打抜き部幅/試験片幅が小さいほど小さくなる。打抜き部幅/試験片幅が0.6より大きいと、ひずみ比が0に近づくため、円筒ポンチでの穴広げ試験での破断部ひずみ比との相違が大きくなり、本発明で目的とする円筒ポンチでの穴広げ率との相関が悪くなる。より好ましくは0.3〜0.5の範囲である。 ゲージ長:10mm以下 ゲージ長は、局部延性能を評価するかトータル延性能を評価するかに関わる因子であり、ゲージ長が短いほど、より局部の延性を評価することになる。鋼板の穴広げ性に関しては、一般的に局部延性能が支配因子であることが知られている。ゲージ長が10mmより大きいと、円筒ポンチでの穴広げ率との相関が悪くなる。従って、ゲージ長は10mm以下とする。ただし、ゲージ長が小さすぎると、高い測定精度が要求される。従って、好ましくは3〜7mmの範囲である。 なお、打抜き加工時のクリアランスについては特に限定しない。このクリアランスについては、実際の部品で加工されている値を選択することになる。実際の部品で加工されているクリアランスは、通常、5〜30%の範囲である。 表1に示す板厚、および、同表に示す降伏強度(YP)、引張強度(TS)、全伸び(El)、局部伸び(L-El)といった機械的性質を有する熱延鋼板を供試材とし、これらの鋼板から表2,3に示す条件で図1に示した形状の打抜き引張試験片を作製し、引張試験を行って伸び測定し、円筒ポンチでの穴広げ率との相関を調べた。なお、表1のYP,TS,Elは圧延直角方向の特性値で、JIS5号引張試験片により求めた。 図2、図3に示す結果から明らかなように、本発明に適合する条件では、円筒ポンチでの穴広げ率と良い相関を示した。 本発明は、薄鋼板プレス成形での伸びフランジ割れが問題になるあらゆる産業に利用することができる。本発明で用いる打抜き引張試験片形状の1例を示す平面図である。打抜き引張試験での伸び測定値と穴広げ率との相関係数のC/W依存性を示す特性図である。打抜き引張試験での伸び測定値と穴広げ率との相関係数のゲージ長依存性を示す特性図である。符号の説明 1 試験片(打抜き引張試験片) 2 打抜き部 幅Wの長方形試験片を、長手方向中央部の幅CがC/Wで0.6以下となる円状ポンチで所定のクリアランスにて両側から打抜き加工した試験片を引張試験し、ゲージ長10mm以下で測定した伸びを穴広げ性の評価パラメータとして用いることを特徴とする穴広げ性の簡易評価方法。 【要 約】【課 題】 少量のサンプルと工数で鋼板の穴広げ性や穴広げ率とクリアランスの関係を簡便に精度良く評価しうる試験方法を確立する。【解決手段】 幅Wの長方形試験片を、長手方向中央部(打抜き部2)の幅CがC/Wで0.6以下となる円状ポンチで所定のクリアランスにて両側から打抜き加工した試験片1を引張試験し、ゲージ長10mm以下で測定した伸びを穴広げ性の評価パラメータとして用いる。【選択図】 図1