タイトル: | 公開特許公報(A)_退色抑制剤 |
出願番号: | 2003327423 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A23L1/272,A61K7/00,A61K47/46 |
安藤 精二 田中 久志 嶋林 博 横溝 敦志 JP 2005087147 公開特許公報(A) 20050407 2003327423 20030919 退色抑制剤 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 000175283 三枝 英二 100065215 掛樋 悠路 100076510 小原 健志 100086427 斎藤 健治 100099988 藤井 淳 100105821 関 仁士 100099911 中野 睦子 100108084 安藤 精二 田中 久志 嶋林 博 横溝 敦志 7A23L1/272A61K7/00A61K47/46 JPA23L1/272A61K7/00 KA61K47/46 9 OL 21 4B018 4C076 4C083 4B018MB05 4B018MC04 4B018MD48 4B018MF01 4C076EE58 4C076FF70 4C083AA111 4C083BB60 4C083EE01 4C083EE03 本発明は退色抑制剤及び退色抑制方法に関する。より詳細には本発明は天然色素を含む製品、特に色素製剤及び飲食物の、特に光による退色を防止するのに有用な退色抑制剤及び退色抑制方法に関する。 従来から、飲食物の着色には広く合成色素並びに天然色素が用いられており、特に近年ではその安全で健康なイメージからことさら天然色素が多く用いられるようになっている。 しかしながら、天然色素は、一般に合成色素に比較すると不安定であり、例えば光、酸素または熱などの影響を受けて比較的容易に退色又は変色する傾向がある。このためこれらの天然色素を含む飲食物、化粧品、医薬部外品並びに医薬品等の各種製品は、製造、流通及び保存などの各段階で熱や光の影響を受けて徐々に退色又は変色し、商品価値が著しく低下するという問題を含んでいる。特に近年のペットボトルなどの透明容器入り飲料の普及並びに商品の低着色化指向に伴って、商品陳列における蛍光灯照射や野外における太陽光照射によっても退色しにくい色素(耐光性色素)が求められている。 このため、従来から、不安定な色素の変色や退色を防止する方法に関して多くの提案がなされている。例えば、ルチン(例えば、特許文献1参照のこと)、ローズマリーやセージの抽出物(例えば、特許文献2参照のこと)、モリン(例えば、特許文献3参照のこと)、カフェー酸やクロロゲン酸(例えば、特許文献4参照のこと)などが色素の退色抑制剤として提案されている。 しかしながら、上記のような従来提案されている退色抑制剤には種々の問題も指摘されている。例えばルチン等のフラボノール類は水に対する溶解性が低いため使いづらく、またそれを改善するためには煩雑な配糖体調整操作が必要である。また、その他の退色抑制剤についても、原料に起因して特有の色または香りを有するために、添加量や用途などに制約が生じるなど、従来の退色防止技術はそれなりの成果を挙げてはいるものの、必ずしも満足できるものではなかった。 一方、最近、羅布麻(キョウチクトウ科、学名:Apocynum venetum L)の生理活性が注目されており、その葉抽出中のフラボノイド(イソクエルシトリン、エピカテキン、ヒペロシドなど)に、抗欝作用があること(例えば、非特許文献1および特許文献5参照のこと)、ルチン、カテキン、グルタミン酸やフラボノイドにα−グルコシダーゼ阻害活性があること(例えば、特許文献6参照のこと)、フラボノイド(エピカテキン、イソクエルシトリン等を含む15種類)にD−ガラクトサミン/リポ多糖類誘起肝機能障害保護作用(例えば、非特許文献2参照のこと)またはフェニルプロパノイド置換フラバン-3-オール類にD−ガラクトサミン/腫瘍壊死因子α誘起細胞死に対して肝臓保護作用があること(例えば、非特許文献3参照のこと)、フラボノイド(イソクエルシトリン、クエルシトリン、アポシニン類)にラジカル消去作用(例えば、非特許文献4参照のこと)、及びフラボノイド(ヒペロシド、イソクエルシトリン)に脂質過酸化阻害作用(例えば、非特許文献5参照のこと)があること、さらに、羅布麻茶(水抽出物)にコレステロール低下作用(例えば、特許文献7参照のこと)、及び高コレステロール血症・動脈硬化改善作用(例えば、非特許文献4参照のこと)があることが報告されている。また、羅布麻抽出物中には、抗酸化作用(ペルオキシナイトライト消去作用)を最も強く示す成分としてエピカテキン-(4β-8)-エピカテキンが含まれていることが報告されている(例えば、非特許文献6参照のこと) しかしながら、従来、羅布麻抽出物について優れた退色抑制作用があることについては知られていなかった。上記文献の中には羅布麻抽出物には抗酸化作用成分が含まれていることを記載する文献があるものの、食品業界において、酸化防止作用と退色抑制作用とが一義的に関連する性質ではないことは周知の事実である。例えば、酸化防止剤として周知なビタミンCが、逆にアントシアニン系の天然色素の退色を促進することはよく知られている事実である(例えば、特許文献9及び非特許文献7参照のこと)。また、ハマメリタンニンは、全く酸化防止作用がないにも関わらず退色防止作用を有することが知られている(例えば、特許文献10参照のこと)。特開平3-77880号公報特開昭57-102955号公報特開昭54-52740号公報特開昭58-065761号公報特開2002-201139号公報特開2002-163795号公報特開平9-224623号公報特開2002-163795号公報特開昭62-003775号公報特開平06−207172号公報Veronika Butterweck, Sansei Nishibe,; Biol Pharm Bull., 24(2001), p.848-851Quangbo Xiong , Wenzhe Fan; Plant Med., 66(2000) p.127-133Wenzhe Fan, Yasuhiro Tezuka,; Chem Pharm Bull, 47 (1999), p.1049-1050服部征雄、Food Style 21, 6(2002), pp.81-86Sansei Nishibe, Michiko Murai, Nat Med., 48(1994), pp.322-323Takao Yokozawa, Yoshiki Kashiwada, Biol Pharm Bull., 25(2002), p.748-752「天然着色料ハンドブック」、(株)光琳、(1979)pp.277,288-289,299 本発明の目的は、色素、特に天然色素の退色を有意に抑制することのできる退色抑制剤を提供することである。具体的には、本発明は第1に、安全性が高く水溶性で食品等に好適に使用できる退色抑制剤を提供することを目的とする。第2に、特に光の影響を受けて生じる退色現象に対して有効な退色抑制剤を提供することを目的とする。 また本発明は、色素、特に天然色素の退色が有意に抑制された着色製品、特に色素製剤及び飲食物を提供することを目的とする。さらに本発明は色素、特に天然色素の退色を有意に抑制することのできる退色抑制方法を提供する。 本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねていたところ、羅布麻抽出物が、アントシアニン系色素やカロチノイド系色素などの天然色素の退色を抑制できることを見いだし、さらにその優れた退色抑制効果は、羅布麻抽出物に含まれる各種フラボノイドの各々に依存するのではなく、それらと他の微量成分とを併せて含む抽出物をそのまま使用することによって得られる特有の効果であることを確認した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。 すなわち、本発明は、下記(1)〜(4)に掲げる、羅布麻抽出物を有効成分として含有することを特徴とする退色抑制剤である。(1)羅布麻抽出物を有効成分として含有する色素の退色抑制剤。(2)退色抑制の対象色素が、天然色素である(1)に記載の色素の退色抑制剤。(3)退色抑制の対象色素が、アントシアニン系色素、フラボノイド系色素またはカロチノイド系色素である(1)または(2)に記載の色素の退色抑制剤。(4)光照射に対する退色抑制剤である、(1)乃至(3)のいずれかに記載の色素の退色抑制剤。 さらに本発明は、下記に掲げる、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載する退色抑制剤を含有する着色製品である。(5)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載する退色抑制剤を含有する色素製剤。(6)天然色素の製剤である上記(5)に記載する色素製剤。(7)アントシアニン系色素、フラボノイド系色素またはカロチノイド系色素の色素製剤である上記(5)または(6)に記載する色素製剤。(8)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載する退色抑制剤を含有する、退色が抑制された着色飲食物。(9)天然色素で着色されてなる上記(8)に記載する退色が抑制された着色飲食物。(10)アントシアニン系色素、フラボノイド系色素またはカロチノイド系色素で着色されてなる上記(9)に記載する退色が抑制された着色飲食物。 さらにまた本発明は、下記に掲げる退色抑制方法である。(11) 色素または色素を含む組成物を、羅布麻抽出物と共存させることを特徴とする、当該色素または色素を含む組成物の退色抑制方法。(12) 退色抑制の対象とする色素が天然色素である(11)に記載の退色抑制方法。(13) 退色抑制の対象とする色素がアントシアニン系色素、フラボノイド系色素またはカロチノイド系色素である(11)または(12)に記載の退色抑制方法。(14) 光照射に対する退色抑制方法である、(11)乃至(13)のいずれかに記載の色素の退色抑制方法。 以下に、本発明を詳細に説明する。(I)退色抑制剤 本発明の退色抑制剤は、有効成分として羅布麻の抽出物を含有することを特徴とする。 ここで羅布麻(学名:Apocynum venetum L)とは、キョウチクトウ科に属する多年生宿草木である。バシクルモン、紅麻、沢漆麻とも呼ばれ、葉を茶としたものは、燕龍茶とか老喜茶と呼ばれ飲用されている。羅布麻は植物体全体であっても、また葉、花、茎、種子及び根等の植物体の一部であってもよいが、葉または葉を含む部分であることが好ましい。 抽出に用いる羅布麻(好ましくは葉)は、採取したての新鮮なもの、それを乾燥させたもの、または更に焙煎したもののいずれでもよいが、好ましくは乾燥させたものである。 これらの羅布麻の抽出に使用される溶媒は、特に制限されず、水、極性有機溶媒または非極性有機溶媒のいずれであってもよいが、好ましくは水、極性有機溶媒またはこれらの混合物(含水極性有機溶媒)である。ここで極性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3の低級アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール;またはアセトン、酢酸エチル、酢酸メチルなどを例示することができる。抽出溶媒として、好ましくは水、低級アルコール及びこれらの混合物(含水アルコール)であり、より好ましくは水、エタノール及びこれらの混合物(含水エタノール)である。なお、含水アルコール、特に含水エタノールを使用する場合の、当該溶液中のアルコール(エタノール)の含有割合としては、制限されないが、好ましくは10〜90容量%、好ましくは10〜60容量%、より好ましくは20〜40容量%の範囲を例示することができる。 抽出方法としては、一般に用いられる方法を広く採用することができる。制限はされないが、例えば上記の羅布麻を抽出溶媒の中に浸漬する方法(浸漬法)又は抽出溶媒に羅布麻を入れて加温しながら還流する方法(加熱還流法)等を挙げることができる。なお、浸漬法による場合は加熱(加温、高温)、室温又は冷却(低温)条件下のいずれであってもよく、また静置した状態の浸漬または攪拌しながらの浸漬のいずれであってもよい。 かかる抽出操作により得られた抽出物は、各種の固液分離手段に供され、溶媒に不溶な残渣(不溶性固形分)が除去される。ここで固液分離手段としてはデカンテーション、濾過、遠心分離または圧搾などの各種の固液分離手段を用いることができる。かくして得られる抽出液(濾液、上清、圧搾液)はそのままの状態で、またはさらに水、エタノール等の極性有機溶媒またはこれらの混合液で希釈して使用することができる。また、抽出溶媒を留去して一部濃縮または乾燥(減圧乾燥、凍結乾燥、スプレードライなどを含む)して、ペースト状(またはエキス粘稠物)または粉末状態(またはエキス乾燥物)の状態で用いることもできる。また抽出液を濃縮若しくは乾燥した後、該濃縮物若しくは乾燥物をさらに非溶解性溶媒で洗浄して精製して用いても、またこれを更に適当な溶媒(好ましくは、水やエタノール等の極性有機溶媒またはこれらの混合液)に溶解もしくは懸濁して用いてもよい。 また、抽出液は、必要に応じて濃縮若しくは乾燥した後に、脱臭または脱色等を目的として精製処理を行ってもよい。かかる精製方法は、特に制限されず、慣用されている精製法を任意に組み合わせて実施することができ、具体的には各種の樹脂処理法(吸着法、イオン交換法、ゲルろ過法など)、超臨界抽出法、膜処理法(限外濾過膜処理法、逆浸透膜処理法、イオン交換膜処理法など)、溶媒分画法および活性炭処理法等を例示することができる。 本発明の退色抑制剤は、前述した羅布麻の抽出物、好ましくは羅布麻の葉の抽出物(抽出液そのもの、その濃縮物、乾固物または精製物の別を問わない)を含有するものであればよく、これらの抽出物だけからなるものであってよいが、当該抽出物以外の成分として、希釈剤、担体またはその他の添加剤を含有していてもよい。 希釈剤または担体としては、本発明の効果を妨げないものであれば特に制限されず、例えばシュクロース、グルコース、デキストリン、澱粉類、サイクロデキストリン、トレハロース、乳糖、マルトース、水飴、液糖などの糖類;エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール等の糖アルコール;アラビアガム、キサンタンガム、カラギーナン、グァーガム、ジェランガム等の多糖類;または水を挙げることができる。また添加剤としては、抗酸化剤、キレート剤等の助剤、香料、香辛料抽出物、防腐剤などを挙げることができる。 使用上の利便等から、これらの希釈剤、担体または添加剤を用いて退色抑制剤を調製する場合は、羅布麻の抽出物(乾固物として換算)が、退色抑制剤100重量%中に固形換算で0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%の割合で含まれるように調製することが望ましい。 なおここで添加剤として用いられる抗酸化剤としては、食品添加物として用いられるものを広く例示することができる。例えば、制限はされないが、L−アスコルビン酸及びその塩等のアスコルビン酸類;アスコルビン酸ステアリン酸エステルまたはアスコルビン酸パルミチン酸エステルなどのアスコルビン酸エステル類;エリソルビン酸及びその塩(例えばエリソルビン酸ナトリウム)等のエリソルビン酸類;亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムまたはピロ亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩類;α−トコフェロールやミックストコフェロール等のトコフェロール類;ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やブチルヒドロキシアニソール(BHA)等;エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウムやエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等のエチレンジアミン四酢酸類;没食子酸や没食子酸プロピル等の没食子酸類;アオイ花抽出物、アスペルギルステレウス抽出物、カンゾウ油性抽出物、食用カンナ抽出物、グローブ抽出物、精油除去ウイキョウ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、セージ抽出物、セリ抽出物、チャ抽出物、テンペ抽出物、ドクダミ抽出物、生コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子抽出物、ピメンタ抽出物、ブドウ種子抽出物、ブルーベリー葉抽出物、プロポリス抽出物、ヘゴ・イチョウ抽出物、ペパー抽出物、ホウセンカ抽出物、ヤマモモ抽出物、ユーカリ葉抽出物、リンドウ根抽出物、ルチン(抽出物) (小豆全草,エンジュ,ソバ全草抽出物)、ローズマリー抽出物、チョウジ抽出物、リンゴ抽出物等の各種植物の抽出物;その他、酵素処理ルチン、クエルセチン、ルチン酵素分解物(イソクエルシトリン)、酵素処理イソクエルシトリン、酵素分解リンゴ抽出物、ごま油抽出物、菜種油抽出物、コメヌカ油抽出物、コメヌカ酵素分解物、没食子酸及びそのエステル類等を挙げることができる。好ましくは、ヤマモモ抽出物、ルチン(抽出物) 、生コーヒー豆抽出物、ローズマリー抽出物等の植物抽出物;酵素処理ルチン、ルチン酵素分解物(イソクエルシトリン)、酵素処理イソクエルシトリン等を挙げることができる。なお、退色抑制する対象の色素がアントシアニン系色素の場合は、上記抗酸化剤のうち、アスコルビン酸類以外のものを用いることが好ましい。 抗酸化剤を用いる場合、退色抑制剤100重量%中に配合される当該抗酸化剤の割合としては、制限されないが、例えば、酵素処理イソクエルシトリンを用いる場合、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%を挙げることができる。他の抗酸化剤もこれに準じて用いることができる。 本発明の退色抑制剤はその形態を特に制限するものではなく、例えば粉末状、顆粒状、錠剤状などの固体状;液状、乳液状等の溶液状;またはペースト状等の半固体状などの、任意の形態に調製することができる。 本発明の退色抑制剤が対象とする色素には、合成色素及び天然色素の別を問わず、広範囲の色素が含まれる。 合成色素には、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、青色1号、青色2号、緑色3号等のタール色素;ノルビキシンNa・K、銅クロロフィル、銅クロロフィリンNa及び鉄クロロフィリンNa等の天然色素誘導体;並びにβ−カロチン、リボフラビン、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビン5'−リン酸エステルNa、及びオレンジB、シトラスレッドNo.2、キノリンイエロー、レッド2G、パテントブルーV、グリーンS、ブリリアントブラックBN、ブラックPN、ブラウンFK、ブラウンHT、リソールルビンBK、リボフラビン5'−リン酸エステル、銅クロロフィリン等の合成天然色素などの合成着色料が含まれる。 天然色素には、アナトー色素、クチナシ黄色素、デュナリエラカロチン、ニンジンカロチン、パーム油カロチン、トマト色素及びパプリカ色素等のカロチノイド系色素;赤キャベツ色素、赤ダイコン色素、シソ色素、ハイビスカス色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、紫イモ色素、紫コーン色素、エルダーベリー色素及びボイセンベリー色素等のアントシアニン系色素;カカオ色素、コウリャン色素、シタン色素、タマネギ色素、タマリンド色素、カキ色素、カロブ色素、カンゾウ色素、スオウ色素、ベニバナ赤色素及びベニバナ黄色素等のフラボノイド系色素;アカネ色素、コチニール色素、シコン色素及びラック色素等のキノン系色素;クロロフィリン、クロロフィル及びスピルリナ色素等のポルフィリン系色素;ウコン色素等のジケトン系色素;赤ビート色素等のベタシアニン系色素;紅麹色素等のアザフィロン系色素;その他、リボフラビン、紅麹黄色素、カラメル、クチナシ青色素、クチナシ赤色素が含まれる。 本発明の退色抑制剤は、各種の色素、好ましくは上に掲げる各種の色素、特に天然色素を含有するものに広く適用することができ、これらの色素の退色を抑制若しくは防止するのに有用である。 天然色素の中でも、カロチノイド系色素、アントシアニン系色素、及びフラボノイド系に属する各種の色素を好適に挙げることができる。好ましくはカロチノイド系色素に属するデュナリエラカロチン,ニンジンカロチン及びパーム油カロチン等のカロチン色素、クチナシ黄色素、及びパプリカ色素;アントシアニン系色素に属する赤キャベツ色素、紫イモ色素、紫コーン色素、エルダーベリー色素、ブドウ果汁色素、及びブドウ果皮色素;並びにフラボノイド系色素に属するベニバナ黄色素を挙げることができる。 特に実験例に示すように、本発明の退色抑制剤は、カロチノイド系色素、アントシアニン系色素またはフラボノイド系色素の光照射による退色現象を抑制する効果(耐光性)に優れている。 本発明の退色抑制剤が適用される具体的な製品(着色製品)としては、上記色素を含有するものであれば特に制限されないが、例えば色素製剤、飲食物(食品)、化粧品、医薬品、医薬部外品、飼料等を挙げることができる。好ましくは色素製剤及び飲食物(食品)である。これらの製品(着色製品)に対する発明の退色抑制剤の用法については、下記(II)において詳述する。 (II)退色抑制剤を含む着色製品 本発明は、前述した羅布麻、好ましくは羅布麻の葉の抽出物を退色抑制剤として利用した着色製品を提供する。当該着色製品は、羅布麻の抽出物を含有することによって中に含まれる色素の退色現象、特に光に晒されることにより生じる退色現象が有意に抑制されるという効果を得ることができる。 なお、ここで「着色」とは、製品に人為的に色素を添加して着色した意味のみならず、例えば果汁や野菜汁等のように飲食物等の製品材料に本来含まれる色素に由来して着色しているものまでも広く包含する趣旨で用いられる。また、ここでいう「着色製品」には色素、特に前述した天然色素により着色している各種の製品、具体的には色素製剤、色素を含む着色飲食物、色素を含む着色化粧品、色素を含む着色医薬品、色素を含む着色医薬部外品及び色素を含む着色飼料が包含される。 本発明が対象とする色素製剤としては、前述した合成色素または天然色素を1種又は2種以上を含むものを挙げることができる。好ましくは、上記に掲げた天然色素を1種又は2種以上含む色素製剤である。好ましくはアントシアニン系色素、カロチノイド系色素、及びフラボノイド系色素に属する各種の色素よりなる群から選択される少なくとも1種の天然色素を含む色素製剤である。さらに好ましくはカロチノイド系色素に属するデュナリエラカロチン,ニンジンカロチン及びパーム油カロチン等のカロチン色素、クチナシ黄色素、及びパプリカ色素;アントシアニン系色素に属する赤キャベツ色素、紫イモ色素、紫コーン色素、エルダーベリー色素、ブドウ果汁色素、及びブドウ果皮色素;並びにフラボノイド系色素に属するベニバナ黄色素よりなる群から選択される少なくとも1種の天然色素を含む色素製剤である。 当該色素製剤に配合される退色抑制剤の割合は、本発明の効果を奏する限り特に制限されないが、色素製剤を、退色抑制対象とする色素の極大吸収波長における吸光度が0.05〜1(色価(E10%1cm)=0.005〜0.1)となるように調整した場合に、該色素製剤に羅布麻の抽出物(乾固物)が少なくとも1ppm(0.0001重量%)、好ましくは1〜1000ppm(0.0001〜0.1重量%)程度、より好ましくは1〜500ppm(0.0001〜0.05重量%)程度の割合で含まれるような割合を挙げることができる。好ましくは上記色価となるように調整した場合の色素製剤に、羅布麻の抽出物(乾固物)が、少なくとも10ppm(0.001重量%)、好ましくは10〜500ppm(0.001〜0.05重量%)程度の割合で含まれるような割合を挙げることができる。 なお、色価とは着色物(着色料溶液)中の色素濃度を意味し、通例、該着色物(着色料溶液)の可視部での極大吸収波長における吸光度を測定し、10w/v%溶液の吸光度に換算した数値(E10%1cm)で表される。具体的には、当該色価(E10%1cm)は、まず測定対象とする着色物(着色料溶液)の濃度を吸光度が0.3〜0.7の範囲に入るように調整し、次いでそれを層長1cmのセルを用いて極大吸収波長で吸光度を測定し、得られた吸光度を、着色物(着色料溶液)の濃度が10w/v%のときの吸光度に換算することにより得ることができる(食品添加物公定書:「17.色価測定法」参照)。 本発明の色素製剤には、少なくとも色素及び前述した羅布麻の抽出物または本発明の退色抑制剤が含まれていればよいが、必要に応じてさらに抗酸化剤、キレート剤、香料又は香辛料抽出物を含んでいても良い。抗酸化剤としては、前述したものを同様に例示することができる。 本発明の色素製剤は、製造の任意の工程で羅布麻の抽出物または本発明の退色抑制剤を配合することを除けば、各種色素製剤の慣用方法に従って製造することができる。羅布麻の抽出物または本発明の退色抑制剤の配合方法やその順番に特に制限はないが、色素が熱や光の影響を少なからず受けることを鑑みれば、色素製剤の製造工程の初期、好ましくは熱処理工程前または光に晒す前に各種の材料とともに配合することが望ましい。 本発明が対象とする飲食物としては着色したもの、好ましくは前述した天然色素に基づいて色を有するものであれば特に制限されず、例えば乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、アルコール飲料、粉末飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料などの飲料類;カスタードプリン、ミルクプリン、スフレプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、ミルクアイスクリーム、果汁入りアイスクリーム及びソフトクリーム、アイスキャンディー、シャーベット、氷菓等の冷菓類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等のキャラメル類;ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子類(以上、菓子類);コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類;浅漬け、醤油漬け、塩漬け、味噌漬け、粕漬け、麹漬け、糠漬け、酢漬け、芥子漬、もろみ漬け、梅漬け、福神漬、しば漬、生姜漬、梅酢漬け等の漬物類;セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、ケチャップ、たれ、ソースなどのソース類;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ等のジャム類;赤ワイン等の果実酒;シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ、桃等の加工用果実;ハム、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、魚肉すり身、蒲鉾、竹輪、はんぺん、薩摩揚げ、伊達巻き、鯨ベーコン等の水産練り製品;バター、マーガリン、チーズ、ホイップクリーム等の酪農・油脂製品類;うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ及びワンタン等の麺類;その他、各種総菜及び麩、田麩等の種々の加工食品を挙げることができる。好ましくは飲料及び菓子類である。 本発明の飲食物は、製造の任意の工程で羅布麻の抽出物または本発明の退色抑制剤を配合することを除けば、各種飲食物の慣用の製造方法に従って製造することができる。羅布麻の抽出物または退色抑制剤の配合方法やその順番に特に制限はないが、色素が熱や光の影響を少なからず受けることを鑑みれば、これらの羅布麻の抽出物または退色抑制剤を製造工程の初期、好ましくは熱処理工程または光に晒される前に配合することが好ましい。 例えば、冷菓類の場合は、まず主原料としての牛乳、クリーム、練乳、粉乳、糖類、果実または餡等に羅布麻の抽出物または本発明の退色抑制剤、酸類、乳化剤及び安定剤を加え、次いで香料を加えて冷菓ミックス液を調製し、このミックス液に色素を添加混合し、殺菌、冷却後フリージングして容器に充填し、冷却または凍結して最終製品を調製する方法を挙げることができる。 また、ガム類の場合は、加熱し柔らかくしたガムベースに砂糖、ブドウ糖、羅布麻の抽出物または退色抑制剤、及びクエン酸等を加え、次いでその中に香料及び色素を加え練合し、次に圧延ローラーで適当な厚さにして、室温まで冷却後、切断して最終製品を調製する方法を挙げることができる。 また、デザート類の場合は、主原料の砂糖、水飴、羅布麻の抽出物または退色抑制剤、クエン酸及び凝固剤(ペクチン、寒天、ゼラチン、カラギナンなど)を適当な割合で混合し、その中に香料並びに色素を加え、加熱溶解した後、容器に充填し、冷却して最終製品であるゼリーを調製する方法を挙げることができる。キャンディー類の場合は、例えば砂糖、水飴等の主原料に水を加え加熱し溶解した後放冷し、羅布麻の抽出物または退色抑制剤を添加し、次いで香料及び色素を加え、成型し、室温まで冷却して最終キャンディーを調製する方法を挙げることができる。 また飲料の場合は、主原料としての糖類、果汁または酸類等に羅布麻の抽出物または本発明の退色抑制剤や安定剤等を加え、次いでこの飲料に香料及び必要に応じて色素を添加混合した後、殺菌、冷却して容器に充填する方法を挙げることができる。 漬物類の場合は、漬物とする野菜、海藻、キノコまたは果物等の主原料に、食塩や糖類等の各種調味料、保存料、及び羅布麻の抽出物または退色抑制剤等の副原料を加えて漬物を調製し、この漬物に香料及び必要に応じて色素を添加混合した後、容器に充填し、殺菌、冷却し最終製品を調製する方法を挙げることができる。タレ類やドレッシング類の場合は、植物油、醤油、果汁、糖類、果汁、醸造酢または食塩等を主原料とし、これに羅布麻の抽出物または退色抑制剤及び安定剤または乳化剤等を加え、このドレッシング液に香料及び必要により色素を添加混合した後、殺菌、冷却後容器に充填して最終製品を調製する方法を挙げることができる。 本発明が対象とする化粧品としては、色素、特に前述した天然色素を含むスキン化粧料(ローション、乳液、クリームなど)、口紅、日焼け止め化粧品、メークアップ化粧品等を;医薬品としては色素、特に前述した天然色素を含む各種錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ剤、うがい薬等を;医薬部外品としては色素、特に前述した天然色素を含む歯磨き剤、口中清涼剤、口臭予防剤等を;また飼料としては色素、特に前述した天然色素を含むキャットフードやドッグフード等の各種ペットフード、観賞魚若しくは養殖魚の餌等を一例として挙げることができるが、これらに制限されるものではない。 これらの化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料などの各種製品は、それら製造の任意の工程で退色抑制作用を有する羅布麻の抽出物または本発明の退色抑制剤を配合することを除けば、各種製品の慣用方法に従って製造することができる。化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料に対する羅布麻の抽出物または退色抑制剤の配合時期は特に制限されないが、色素が熱や光の影響を少なからず受けることを鑑みれば、製造工程の初期、好ましくは熱処理工程前または光に晒す前に各種材料とともに配合することが望ましい。 飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の各種着色製品に対する本発明の退色抑制剤の添加量は、それらに含まれる色素の退色現象が防止できる量であれば特に制限されない。着色製品に含まれる色素の種類及びその含量、対象物の種類・用途及びそれに含まれる成分などを考慮して適宜選択、決定することができる。例えば上記着色製品を、退色抑制対象とする色素の極大吸収波長における吸光度が0.05〜1(色価(E10%1cm)=0.005〜0.1)となるように調整した場合に、該着色製品に少なくとも1ppmとなるように、例えば1〜1000ppmの範囲、好ましくは1〜500ppmの範囲で含まれるように、退色抑制剤(羅布麻の抽出物)を配合することができる。より好ましくは、上記色価(E10%1cm)を有する着色製品に対する配合割合が、少なくとも10ppm、例えば10〜500ppmの範囲となるように、退色抑制剤を配合することが望ましい。 なお、後述する実施例に示すように、退色抑制剤(羅布麻の抽出物)の添加配合量に依存して退色抑制効果が向上する。従って、前述した着色製品に対する退色抑制剤の配合割合の上限は退色抑制効果以外の他の観点(例えば味並びに粘度等の対象物の物性等)から一応の目安として設定されたものであり、本発明の効果からいえば退色抑制剤の対象物(着色製品、例えば色素製剤や飲食物等)への配合割合の上限は上記の記載に何ら制限されるものではない。 (III)退色抑制方法 また本発明は、色素または色素を含む各種の組成物の退色抑制方法を提供する。 本発明が対象とする色素は、前述した合成色素及び天然色素である。好ましくは前述した各種の天然色素であり、より好ましくはアントシアニン系色素、カロチノイド系色素、及びフラボノイド系に属する各種の色素であり、より好ましくはカロチノイド系色素に属するデュナリエラカロチン,ニンジンカロチン及びパーム油カロチン等のカロチン色素、クチナシ黄色素、及びパプリカ色素;アントシアニン系色素に属する赤キャベツ色素、紫イモ色素、紫コーン色素、エルダーベリー色素、ブドウ果汁色素、及びブドウ果皮色素;並びにフラボノイド系色素に属するベニバナ黄色素である。特に実験例に示すように、本発明の退色抑制方法は、アントシアニン系色素、カロチノイド系色素及びフラボノイド系色素の光照射による退色現象を抑制する効果(耐光性)に優れている。 また、ここでいう色素を含む各種の組成物(色素含有組成物)とは、上記色素、好ましくは天然色素を含む組成物を広く意味するものであり、具体的には、前述した色素製剤、飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の各種着色製品を挙げることができる。 本発明は、これらの色素または該色素含有組成物を前述した羅布麻の抽出物、または本発明の退色抑制剤と共存させることにより実施することができる。ここで共存の態様としては、両者が接触した状態で存在する状態が形成されるものであれば特に制限されない。例えば、かかる共存状態は色素またはこれを含む組成物に退色抑制作用を有する羅布麻の抽出物または上記本発明の退色抑制剤を配合して両者を混合することによって形成することができる。例えば、色素を含む組成物が色素製剤または飲食物である場合は、羅布麻の抽出物または本発明の退色抑制剤を色素製剤または飲食品の製造時に材料成分の一つとして配合することによって上記共存状態を形成することができる。化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の他の着色製品についても同様である。 色素または色素含有組成物に対する羅布麻の抽出物または本発明の退色抑制剤の使用割合としては、本発明の効果を発揮する範囲であれば特に制限されず、対象とする色素の種類に応じて適宜調節することができる。また色素含有組成物に対する羅布麻の抽出物または本発明の退色抑制剤の使用割合は、特に制限されないが、該色素含有組成物を、退色抑制の対象色素の極大吸収波長における吸光度が0.05〜1(色価(E10%1cm)=0.005〜0.1)となるように調整した場合に、その中に羅布麻の抽出物(乾固物)が少なくとも1ppm、好ましくは1〜1000ppm、より好ましくは1〜500ppmの割合で含まれるような割合、さらに好ましくは上記中に羅布麻の抽出物(乾固物)が少なくとも10ppm、好ましくは10〜500ppmの割合で含まれるような配合割合を挙げることができる。 当該本発明の退色抑制方法によれば、色素又は色素含有組成物の退色を有意に抑制することができる。本発明の退色抑制方法は、特にアントシアニン系色素、カロチノイド系色素、フラボノイド系色素、又はこれらの色素を含有する組成物の光照射によって生じる退色を抑制する効果に優れており、当該色素又は色素含有組成物に光退色耐性(耐光性)を付与することができる。 ここで光退色耐性とは、太陽光または人工光(蛍光灯など)の影響を受けても退色しにくい性質をいう。具体的には、色素または色素含有組成物が、通常の保存状態で受け得る光(太陽光、蛍光灯など)条件下におかれた場合に、退色抑制剤を配合しない色素または色素含有組成物に比して、退色が有意の抑制される性質をいう。例えば、上記条件としては、色素または色素含有組成物が、太陽光に5分から数時間晒される、あるいは、蛍光灯照射を1日から6ヶ月晒されるような条件を例示することができる。 本発明によれば、天然色素の退色、特に光照射によって生じる退色を有意に抑制することのできる退色抑制剤並びに退色抑制方法を提供することができる。このため本発明の退色抑制剤並びに退色抑制方法を着色方法に適用することにより、製造、流通、保存期間の各段階で徐々に進行する退色現象を有意に抑制することができ、長期間安定して着色製品の品質を維持することができる。 以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 実施例1 羅布麻:キョウチクトウ科(学名 :Apocynum venetum L. )の葉の乾燥物(乾燥重量500g)を粉砕し、30〜40容量%エタノール水溶液に浸漬して、5〜10時間にわたり、約70℃で抽出した。その抽出液をろ過し、得られた濾液を濃縮し、水にて希釈して合成吸着樹脂(セパビーズSP207:三菱化学(株)社製、1L)に通液して吸着させた。その後、樹脂を水洗し、40容量%エタノール水溶液3Lで通液し、脱着して得られた溶出液を濃縮した。この濃縮物を上記抽出に使用した原料(羅布麻葉の乾燥物)の5倍重量の30容量%アルコール水溶液に溶解して、エタノール水溶液製剤として調製した。以下、これを羅布麻抽出物として用いて実験を行った。 参考例1 実施例1で調製した羅布麻抽出物(30容量%エタノール水溶液)を下記条件のHPLCにかけて、クロロゲン酸、イソクエルシトリン(ケルセチンの配糖体:糖部グルコース)、ハイペロシド(ケルセチンの配糖体:糖部ガラクトース)およびカテキンの含量を測定した。 <HPLC条件>カラム : Inertsil ODS-3(5μm、4.6mmI.D.×150mm;ジーエルサイエンス(株)製)カラム温度: 30℃展開溶媒 : アセトニトリル/0.1%リン酸水溶液(2:8)流 速 : 0.8ml/min検出波長 : 330nm。 結果を表1に示す。 最終溶液中の濃度が上記濃度となるように、別途市販のクロロゲン酸、イソクエルシトリン、ハイペロシドおよびカテキンを60容量%エタノール水溶液に添加し、溶解して、これら各成分の混合溶液を調製した(溶液A)。 実験例1 羅布麻抽出物の退色抑制作用 実施例1で調製した羅布麻抽出物を用いて、羅布麻抽出物の退色抑制作用を調べた。具体的には、実施例1の羅布麻抽出物を、最終濃度が0.1重量%となるように、色素酸糖液(果糖ブドウ糖液糖13重量%及びクエン酸0.2重量%含有水溶液をクエン酸三ナトリウムにてpH3に調整した酸糖液に、各色素を下記表1〜10に記載する割合で配合して調製したもの)に添加し、羅布麻抽出物配合色素酸糖液を調製し、これに紫外線ロングライフフェードメーター(スガ試験機株式会社製FAL−3型)にて紫外線照射を3〜4時間行った。光照射する前後で、各色素の極大波長における吸光度を測定し、その差異から、色素の残存率を求め、その残存率から羅布麻抽出物の退色抑制効果を評価した。なお、退色抑制効果の評価対象とする色素として、赤キャベツ色素〔サンレッドRCFU:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製〕、紫イモ色素〔サンレッドYMF:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製〕、紫コーン色素〔サンレッドNo.5F:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製〕、エルダーベリー色素〔サンレッドELF:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製〕、ブドウ果汁色素〔サンレッドG:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製〕、ブドウ果皮色素〔サンレッドNo.2F:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製〕、ベニバナ黄色素〔サンエローNo.2SFU:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製〕、クチナシ黄色素〔サンエローNo.3:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製〕、パプリカ色素〔パプリカベースNB:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製〕、カロテン色素〔カロチンベースNo.33044:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製〕を用いた。 対照試験として、羅布麻抽出物を配合しない色素酸糖液そのもの(無添加)について、同様にして色素の残存率を求めた。また比較試験として、羅布麻抽出物に代えて、(1)酵素処理イソクエルシトリン製剤であるサンメリンAO-1007(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)、または(2)参考例1で調製した溶液A(クロロゲン酸、イソクエルシトリン、ハイペロシドおよびカテキンの混合液)を、それぞれ色素酸糖液に配合した溶液について、同様にして色素の残存率を求めた。なお、上記比較試験で使用する(1)酵素処理イソクエルシトリン製剤(サンメリンAO-1007)は、その優れた退色抑制効果に基づいて、従来より退色抑制を目的の一つとして食品等に使用されている食品添加物である(New Food Industry Vol.30, No.12 (1988) p.42;日清研「第5回公講演集」第77頁;ビバリッジ ジャパン No.204 (1998然12月号)p.43など)。酵素処理イソクエルシトリン製剤(サンメリンAO-1007)は、羅布麻抽出物(0.1重量%)中のフラボノイド含有量と一致するように、フラボノイド類の吸光度である350nmにおける吸光度を指標として、0.005重量%に調製した。しかしながら、酵素処理イソクエルシトリン製剤(サンメリンAO-1007)は、通常0.01〜0.1重量%濃度で使用される。このため、参考のため、上記0.005重量%の10倍量(0.05重量%)のものについても併せて試験を行った。結果を下記の表2〜11に示す。 なお、パプリカ色素は乳化剤により水分散型となっている。この状態にて色素が退色した場合、乳化剤のみが残り、この乳化剤の吸収によってパプリカ色素の適正な色素残存率が算出できない。そこで、乳化剤による吸収の影響が少なくパプリカ色素の吸収が比較的大きい480nmの吸光度を測定した。さらに無添加のものは目視にて色素がほとんど退色していることより、この値を色素0として残存率を算出した。 カロテン色素もパプリカ色素と同様に、乳化剤により水分散型となっている。この状態にて色素が退色した場合乳化剤のみが残り、この乳化剤の吸収によってカロテン色素の適正な色素残存率が算出できない。そこで、乳化剤による吸収の影響が少なくカロテン色素の吸収が比較的大きい501nmの吸光度を測定した。さらに無添加のものは目視にて色素がほとんど退色していることより、この値を色素0として残存率を算出した。 以上の結果からわかるように、羅布麻抽出物の添加によって、アントシアニン系色素(赤キャベツ色素、紫イモ色素、紫コーン色素、エルダーベリー色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素)、フラボノイド系色素(ベニバナ黄色素)、カロチノイド系色素(パプリカ色素、カロテン色素、クチナシ黄色素)の光による色素退色が有意に抑制されることが確認された。その効果は、フラボノイド類を同量程度含むように調整した公知の退色防止剤(酵素処理イソクエルシトリン製剤:0.005%)よりも有意に高いものであった。また、実際に使用される量の退色防止剤(酵素処理イソクエルシトリン製剤:0.05%)の退色抑制効果と比較しても、同等もしくはそれ以上の効果を発揮することが確認された。さらに、上記結果からわかるように、羅布麻抽出物の退色抑制効果は、羅布麻抽出物に含まれる主な成分混合液(溶液A)よりも有意に高いものであった。このことは、羅布麻抽出物の優れた退色抑制効果が、それに含まれるクロロゲン酸、イソクエルシトリン、ハイペロシドおよびカテキン以外の微量成分によるものか、若しくはこれらの微量成分を上記フラボノイド成分等と併せて含むことによる相乗的な効果によってもたらされている可能性を示唆するものである。いずれにせよ、上記結果から、羅布麻抽出物そのものが優れた退色抑制効果を有することが明らかになった。 実施例2 羅布麻の葉の乾燥物(乾燥重量1kg)を粉砕し、7Lの35容量%エタノール水溶液に浸漬して、6時間にわたり、加熱(70〜80℃)抽出した。その抽出液をろ過し、得られた濾液を濃縮し、水にて希釈して合成吸着樹脂(セパビーズSP207:三菱化学(株)社製、2L)に通液して吸着させた。その後、樹脂を水洗し、40容量%エタノール水溶液6Lで通液し、脱着して得られた溶出液を濃縮した。この濃縮物に30gエタノール(30重量%)、20gグリセリン(20重量%)を添加して、イオン交換水にて100gに調製し撹拌溶解した。これを退色抑制剤1とした。 実施例3 羅布麻の葉の乾燥物(乾燥重量 500g)を粉砕し、3.5Lの35容量%エタノール水溶液に浸漬して、6時間にわたり、加熱(70〜80℃)抽出した。その抽出液をろ過し、得られた濾液を濃縮し、水にて希釈して合成吸着樹脂(セパビーズSP207:三菱化学(株)社製、1L)に通液して吸着させた。その後、樹脂を水洗し、40容量%エタノール水溶液3Lで通液し、脱着して得られた溶出液を濃縮した。この濃縮物に150gエタノール(30重量%)、100gグリセリン(20重量%)を添加して、イオン交換水にて500gに調製し撹拌溶解した。これを退色抑制剤2とした。 実施例4 赤キャベツ色素製剤 色価60の赤キャベツ色素(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製、サンレッドRCFU)を90重量部、退色抑制剤1(実施例2)を10重量部の割合で混合し、撹拌溶解して退色しにくい赤キャベツ色素製剤を調製した。 実施例5 紫コーン色素製剤 色価60の紫コーン色素(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製、サンレッドNo.5F)を90重量部、退色抑制剤1(実施例2)を10部の割合で混合し、撹拌溶解して退色しにくい紫コーン色素製剤を調製した。 実施例6 β-カロテン色素製剤 β-カロテン色素製剤(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製、カロチンベースNO.33044)を95重量部、退色抑制剤1(実施例2)を5重量部の割合で混合し、撹拌溶解して退色しにくいβ-カロテン色素製剤を調製した。 実施例7 パプリカ色素製剤 パプリカ色素製剤(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製、パプリカベースNB)を97重量部、退色抑制剤1(実施例2)を3重量部の割合で混合し、撹拌溶解して退色しにくいパプリカ色素製剤を調製した。 実施例8 ベニバナ黄色素製剤 色価120のベニバナ黄色素(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製、サンエローNO.2SFU)を95部、退色抑制剤1(実施例2)を5重量部の割合で混合し、撹拌溶解して退色しにくいベニバナ黄色素製剤を調製した。 実施例9 赤キャベツ色素着色飲料(紫外線照射) 果糖ブドウ糖液糖 13.00(%) クエン酸 0.09 クエン酸3ナトリウム 0.01 赤キャベツ色素(色価60) 0.05 退色抑制剤2 0.05 水 残 部 全 量 100.00 %。 200ml無色透明ガラス瓶に、上記全成分を混合して調製した溶液をいれ、85℃で15分間殺菌した後、冷却し赤キャベツ色素着色飲料(実施例9)を調製した。これを試験対象品として、紫外線ロングライフフェードメーター(スガ試験機株式会社製FAL−3型)にて紫外線照射を5時間行った。一方、比較のため、上記処方成分のうち退色抑制剤2以外の成分を全て混合して調製した溶液を、上記と同様に85℃で15分間殺菌した後、冷却し赤キャベツ色素着色飲料(比較例1)を調製し、上記同条件で紫外線照射を行った。 その結果、退色抑制剤2を配合しなかった赤キャベツ色素着色飲料(比較例1)は、一見して著しい退色が認められた。それに対して、退色抑制剤2を添加した本発明の赤キャベツ色素着色飲料(実施例9)は僅かの退色は見られるものの、紫外線を照射する前の赤キャベツ色素着色飲料に近い色調を残していた。 実施例10 ベニバナ黄色素着色レモン飲料(蛍光灯照射) 果糖ブドウ糖液糖 10.00(%) 5倍濃縮レモン透明果汁 1.00 レモン香料 0.15 クエン酸 0.09 クエン酸3ナトリウム 0.01 ベニバナ黄色素(色価120) 0.03 退色抑制剤2 0.03 水 残 部 全量 100.00 %。 上記全成分を混合して調製した溶液を、93℃達温殺菌して200ml無色透明ガラス瓶にホットパックした後、冷却してベニバナ黄色素着色レモン飲料(実施例10)を調製した。これを試験対象品として、人工気象器(株式会社日本医化器機製作所社製LH-300-RDSCT型)を用いて、10℃、2万ルクス照度の条件下で白色蛍光灯による照射を85時間実施した。一方、比較のため、上記処方成分のうち退色抑制剤2以外の成分を全て混合して調製した溶液を、上記と同様に処理してベニバナ黄色素着色レモン飲料(比較例2)を調製し、また上記同条件で白色蛍光灯照射を実施した。 その結果、退色抑制剤2を配合しなかったベニバナ黄色素着色レモン飲料(比較例2)は、一見して著しい退色が認められた。それに対して、退色抑制剤2を添加した本発明のベニバナ黄色素着色レモン飲料(実施例10)は僅かの退色は見られるものの、紫外線未照射の色素着色飲料に近い色調を残していた。 実施例11 着色ゼリー(蛍光灯照射) <原料A> 砂糖 5.0(%) 果糖ブドウ糖液糖 10.0 ゲル化剤(増粘多糖類) 0.8 <原料B> 5倍濃縮柑橘混合混濁果汁 2.0(%) オレンジ香料 0.2 カロテン色素 0.3 退色抑制剤2 0.05。 <原料A>の成分を全て水に分散して80℃に加熱して10分間撹拌溶解し、それをクエン酸にてpH4に調製した後、<原料B>を加えて半透明ポリエチレン容器に充填した。これを85℃で20分間加熱殺菌した後、冷却して着色ゼリー(実施例11)を調製した。これを試験対象品として、10℃で2万ルクスの照度条件下で白色蛍光灯による照射を80時間行った。一方、比較のため、上記<原料B>成分のうち退色抑制剤2以外の成分を全て混合して調製した溶液を、上記の<原料B>に代えて、上記<原料A>に加えて、上記と同様に処理して着色ゼリー(比較例3)を調製し、また上記同条件で白色蛍光灯照射を実施した。その結果、蛍光灯照射を行ったゼリーを目視で観察すると、退色抑制剤2を配合しなかった着色ゼリー(比較例3)は、一見して著しい退色が認められた。それに対して、退色抑制剤2を添加した本発明の着色ゼリー(実施例11)は僅かの退色は見られるものの、紫外線未照射の着色ゼリーと殆ど同等の色調であった。 本発明の退色抑制剤は、天然色素、特にカロチノイド系色素、アントシアニン系色素及びフラボノイド系色素の退色現象、特に光照射によって生じる退色現象を有意に抑制することができる。近年、特に飲料等はPETボトルなどの透明容器に包装され販売される場合が多い。本発明は、こうした着色製品に対して光耐性を付与して、陳列棚の蛍光灯の影響による商品(着色製品)の退色を抑制することで、長期間安定して品質のよい製品を提供することができる。羅布麻抽出物を有効成分として含有する色素の退色抑制剤。退色抑制の対象色素が、天然色素である請求項1に記載の色素の退色抑制剤。退色抑制の対象色素が、アントシアニン系色素、フラボノイド系色素またはカロチノイド系色素である請求項1または2に記載の色素の退色抑制剤。光照射に対する退色抑制剤である、請求項1乃至3のいずれかに記載の色素の退色抑制剤。請求項1乃至4のいずれかの退色抑制剤を含有する色素製剤。天然色素である請求項5に記載の色素製剤。アントシアニン系色素、フラボノイド系色素またはカロチノイド系色素の色素製剤ある請求項5または6に記載の色素製剤。請求項1乃至4のいずれかの退色抑制剤を含有する、退色が抑制された着色飲食物。色素または色素を含む組成物を、羅布麻抽出物と共存させることを特徴とする、当該色素または色素を含む組成物の退色抑制方法。 【課題】 人体に安全な退色抑制剤を提供する。 【解決手段】 羅布麻抽出物を退色抑制剤の有効成分として用いる。また色素または色素を含む組成物を、羅布麻抽出物と共存させることによって、当該色素または色素を含む組成物の退色を抑制する。 【選択図】なし