生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_液体クロマトグラフ質量分析装置
出願番号:2003317802
年次:2005
IPC分類:7,G01N30/72,G01N27/62,G01N30/86


特許情報キャッシュ

向畑 和男 JP 2005083952 公開特許公報(A) 20050331 2003317802 20030910 液体クロマトグラフ質量分析装置 株式会社島津製作所 000001993 小林 良平 100095670 向畑 和男 7G01N30/72G01N27/62G01N30/86 JPG01N30/72 CG01N27/62 DG01N27/62 XG01N30/86 G 1 2 OL 8 本発明は液体クロマトグラフ質量分析装置に関し、更に詳しくは、液体クロマトグラフ質量分析により取得された未知物質のマススペクトルについて、ライブラリ検索を行うことでその未知物質を同定(定性分析)するためのデータ処理装置に関する。 ガスクロマトグラフ質量分析装置(以下、GC/MSと略す)や液体クロマトグラフ質量分析装置(以下、LC/MSと略す)では、測定によって、横軸を質量数(質量m/電荷z)、縦軸を相対強度(イオン強度)とするマススペクトルを作成することができる。例えば未知物質を測定することによって得られたマススペクトルからその未知物質を同定するためには、多数の既知の化合物のマススペクトルがデータベース化されたライブラリを検索し、スペクトルのパターンが類似しているものを選び出すような処理が行われる(例えば特許文献1など参照)。 こうしたマススペクトルの検索用ライブラリとしてよく知られているものとして、例えば米国国立標準技術局(NIST)が纏めたNIST/EPA/NIH マス・スペクトラル・データベース(例えば非特許文献1など参照)や出版社ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)が纏めたもの(Wiley's Registry of Mass Spectral Database)などがある。これらは主としてGC/MSで広く使用されている電子衝撃イオン化法(EI法)に対応したものであって、従来、GC/MSのデータ処理装置には、こうした標準的なライブラリと検索のためのソフトウエアとが搭載されている場合が多い。それによって、GC/MSでは、未知物質の同定作業を効率的に進めることができる。 一方、LC/MSでは、GC/MSとは異なるイオン化法(代表的なものとして大気圧化学イオン化法(APCI)やエレクトロスプレイイオン化法(ESI)など)が使用されており、イオン化の過程で生成されるイオンの種類が大きく異なる。例えばEI法ではイオンの開裂が生じ易く、開裂によって生じたフラグメントイオンによる多数のピークがマススペクトルに現れる。これに対し、一般にLC/MSで使用されるイオン化法はよりソフトなものであり、プロトン(H+)やLCの溶媒に由来する物質が元の分子に付加したり、或いは逆にプロトンや水などが元の分子から脱離したイオンが多く発生し、こうしたイオンによるピークがマススペクトルに現れる。 以上のようなことから、たとえ同一の化合物を分析したとしてもLC/MSとGC/MSとではマススペクトルに現れるピークの様相(つまりピークのパターン)がかなり相違し、LC/MSにおける定性分析では上述したようなGC/MS用の標準的なライブラリを使用することができない。そのために、従来、LC/MSでは、多くの場合、ユーザが自ら分析対象とする可能性のある既知物質を分析してマススペクトルを求め、それをデータベース化してライブラリを作成するようにしている。こうしたライブラリの作成作業は非常に手間が掛かる作業であって、ユーザにとっては大きな負担である。 また、こうしたユーザの負担を軽減するために、装置メーカーが独自に既知の標準試料を分析した結果に基づいてライブラリを作成し、ユーザに提供することも行われている。しかしながら、こうしたライブラリでは物質の種類がかなり限定されているため、必ずしもユーザが分析対象とする物質が含まれているとは限らず、同定処理を行っても同定不能となることが多かった。特開2001-050345号公報“NIST/EPA/NIH マス・スペクトラル・ライブラリ(Mass Spectral Library) NIST'02 ASCII Version”,[Online],NIST,[平成15年9月3日検索],インターネット <http://www.nist.gov/srd/nist1.htm> 上述したようにGC/MS用に用意されている標準的なライブラリは膨大なものであり、これをLC/MSの同定処理に利用することが可能であれば非常に有益である。本発明はこうした点に鑑みて成されたものであり、液体クロマトグラフ質量分析装置において、GC/MS用に用意されている標準的なライブラリを利用して未知物質の同定を行えるようにすることを目的としている。 上記課題を解決するために成された本発明は、未知物質をLC/MS分析して取得されたマススペクトルから前記未知物質を推定するためのデータ処理装置を具備する液体クロマトグラフ質量分析装置において、該データ処理装置は、 a)GC/MS分析によって取得されたマススペクトルから化合物を検索するための標準的なマススペクトルのライブラリを含む検索用データベースと、 b)前記未知物質のマススペクトル中の主ピークに関して、該ピークの質量数とイオン化モード等に由来する所定の条件とに基づいて推定した分子量を基準に前記ライブラリの中から候補となる物質を選択する候補物質検索手段と、 c)選択された候補物質について、その分子構造から同位体存在比に関する同位体情報を算出する同位体情報取得手段と、 d)前記同位体情報と前記未知物質のマススペクトル中のピーク情報とに基づいて、その候補物質が前記未知物質であることの可能性を評価する候補物質評価手段と、 を備えることを特徴としている。発明の実施の形態、及び効果 本発明に係る液体クロマトグラフ質量分析装置において、上記ライブラリとは、例えば上記のようなNIST又はWileyなどによるライブラリである。LC/MS分析によって未知物質のマススペクトルが与えられると、候補物質検索手段は、まずそのマススペクトル中の主ピークを抽出する。通常は最大強度を示すピークを1個選択すればよいが、必ずしも1個のみでなく複数選択してもよい。次に、この主ピークの質量数とイオン化モード等の所定の条件とに基づいて未知物質の分子量を推定する。 ここで「所定の条件」とは、主ピークとなるイオンがどのような種類のイオンであるのかを推測するための情報であり、例えばイオン化モードが正イオン検出モードである場合には元の分子Mに1個のプロトンが付加した[M+H]+が、イオン化モードが負イオン検出モードである場合には元の分子Mから1個のプロトンが脱離した[M−H]-が上記条件に相当する。また、それ以外の、例えば溶媒に由来するNH4、Na、K等の物質が付加したり、逆にH2Oが脱離したりする可能性がある場合には、これらを条件として加えればよい。すなわち、ここで所定の条件とは必ずしも1種類とは限らない。さらに、この条件はユーザ(分析オペレータ)により外部から設定される場合と、そのときの分析条件から自動的に設定される場合とが考えられる。すなわち、イオン化モードは分析条件としてLC/MS分析を行う際に既に決まっているものであるから、[M+H]+又は[M−H]-といった条件の設定は自動的に行うことができる。 主ピークが1個であっても条件が複数であれば複数の分子量が推定されることになる。そして候補物質検索手段は、この推定された分子量に相当する物質をライブラリの中から検索する。通常、同一分子量を有する物質は複数存在するから、たとえ推定分子量が1つであっても複数の候補物質が挙げられる。同位体情報取得手段は、その各候補物質について、その分子構造(通常、ライブラリの中に記述されている)から同位体存在比に関する同位体情報を算出する。候補物質評価手段は、その同位体情報を受けて、未知物質のマススペクトル中のピーク情報、具体的には同位体に対応する2つ以上のピークのイオン強度比に基づいて、その候補物質が未知物質であることの可能性を評価する。実際には、同位体に対応する2つ以上のピークのイオン強度比が同位体存在比に近いほど、未知物質がその候補物質である可能性が高いと評価することができる。各候補物質に対してこうした評価を行うことにより、候補物質の中でいずれが未知物質に相当する物質である可能性が最も高いのかを決めることができる。こうした結果を例えば表示手段を通して分析オペレータに知らせることにより、分析オペレータによる最終的な同定の判断に供することができる。 以上のように本発明に係る液体クロマトグラフ質量分析装置によれば、従来、同定処理に利用することができなかった、膨大な情報を含むGC/MSの検索用ライブラリを活用することができるようになるので、同定作業が大幅に効率化できるとともに、類似物質が見つからずに同定不能となる可能性も低くなり同定精度も向上する。 以下、本発明の一実施例によるLC/MSについて図面を参照して説明する。 図1は本実施例によるLC/MSの要部のブロック構成図である。このLC/MSは、分析対象である試料に対してLC/MS分析を実行して検出信号を取得するLC/MS分析部10と、この検出信号を受けて所定のデータ処理を実行するデータ処理部11とを備える。データ処理部11の実体は汎用のパーソナルコンピュータであり、このコンピュータにインストールされた所定の制御プログラムを実行することでデータ処理部11としての機能が達成される。このデータ処理部11にはキーボードやマウスなどのポインティングデバイス等である入力部17と、液晶ディスプレイなどの表示部16とが接続されている。 データ処理部11は機能として、検出信号に基づいてマススペクトルを作成するマススペクトル作成部12と、このマススペクトルに現われるピークの様相から分析対象の未知物質を同定する同定処理部13と、その同定処理に際して使用される標準的なマススペクトルをデータベース化した検索用データベース(DB)14と、を含む。検索用DB14としては、一般的にLC/MSにおいて自動的な同定処理には使用できないGC/MS用ライブラリ15を含む。具体的には、上述したようなNISTやWileyによるスペクトルデータのライブラリを利用することができる。 次に、本実施例のLC/MSの特徴である同定処理の手順について図2のフローチャートを参照し、具体例を挙げつつ説明する。 まず、同定処理部13に対し後述する分子量検索時の条件が設定される(ステップS1)。これは分析オペレータが入力部17から入力することによって与える場合と、分析に際して設定される各種の分析条件から自動的に設定される場合とがある。例えば、LC/MSでは、一般的に、正イオン検出モードでは分子に1個のプロトンH+が付加したプロトン付加分子イオン[M+H]+が発生し易く、負イオン検出モードでは分子から1個のプロトンH+が脱離したプロトン脱離分子イオン[M−H]-が発生し易い。また、LCでの溶媒の種類によって、NH4+、Na、K等の各種物質が付加したイオンが発生する場合もある。正イオン/負イオン検出モードは分析条件の1つとして設定されるから、そのいずれかに応じて[M+H]+又は[M−H]-の一方を少なくとも自動的に設定することができる。それ以外の各種の付加イオンについては、多くの場合、使用する溶媒の種類等に応じて分析オペレータが適宜設定する。 具体例として、ここでは分析対象である未知物質がカフェインであるものとする。カフェインを正イオン検出モードによるLC/MS分析したことで得られるマススペクトルの一例を図3に示す。また、NISTのライブラリに登録されているカフェインのマススペクトルを図4に示す。カフェインは分子量が194であるが、LC/MSの正イオン検出モードではプロトン付加分子イオン[M+H]+となるため、図3に示すように質量数195に高いピークが現れている。一方、図4に示すNISTのマススペクトルでは、分子イオン(質量数194)に対するピークが最大強度となっているが、EI法ではイオンの開裂が生じ易いため、フラグメントイオンに基づくピークが多数現れている。この例では、分子イオンのピークが最大強度を示しているが、GC/MSでは化合物によっては分子イオンのピークが殆ど現れない場合もあり、多くの場合、分子イオンのピークは最大強度を示さない。このように、LC/MSで得られたマススペクトル(図3)とNISTのマススペクトル(図4)とではピークパターンが大きく異なり、そのままライブラリ検索しても目的とする物質に行き当たらない。 この実施例による同定処理では、実質的に処理が開始されると、同定処理部13はまずLC/MSで取得されたマススペクトルに現れている複数のピークの中で主ピークを見つける(ステップS2)。通常、最大強度を示すピークを主ピークとする。例えば図3のマススペクトルでは質量数195に現れているピークを主ピークとする。正イオン検出モードであることは分析条件として既知であるから、分子量推定の条件としてプロトン付加イオン[M+H]+が設定されているものとする。 同定処理部13は上記主ピークの質量数195を有するイオンがプロトン付加イオン[M+H]+であるものと推定し、分子量が194であると推定する。そして、この推定分子量である194を分子量として持つ物質をGC/MS用ライブラリ15において検索する。膨大な数の物質が登録されているライブラリ15の中では分子量が194となる物質は複数存在する筈であるから、その物質全てを候補物質としてリストアップする。また、上記以外の条件が設定されていれば、他の分子量を有する物質も候補物質としてリストアップする(ステップS3)。これにより、図4に示すようなマススペクトルを持つカフェインも候補物質の1つとして選択される。 図4に示すように、ライブラリ15に含まれる情報では、マススペクトルと分子構造を表す化学式とは対となっている。そこで、同定処理部13は、上記のように選択した各候補物質について、それぞれの分子構造から疑似的な分子イオン(例えば上記プロトン付加イオン[M+H]+)の同位体存在比を計算する(ステップS4)。例えば、分子量194のカフェインについてプロトン付加イオン[M+H]+の同位体存在比を計算した結果は図6に示すようになり、質量数195に対し質量数196である同位体が10%程度の比率で存在することが分かる。この同位体存在比に近い比率でピークが現れていれば、分析した未知物質がこの候補物質である可能性が高いと推測することができる。そこで、同定処理部13は、未知物質のマススペクトルにおいて質量数195に対するピークのイオン強度と質量数196に対するピークのイオン強度との比を計算し、これを先に求めた同位体存在比と比べ、そのマッチング度を算出する(ステップS5)。 このマッチング度は、例えば未知物質のマススペクトルにおける同位体のピーク強度の比が分子構造から計算される同位体存在比と完全に一致する場合に100%とし、ずれが大きくなるほどその%比率が下がるように適宜に算出式を決めればよい。複数の候補物質が存在する場合に、各候補物質についてそれぞれ上述したようにしてマッチング度を求める。このマッチング度が大きいほど、その候補物質が未知物質である可能性が高いことになるから、全ての候補物質についてマッチング度を求めたならば、マッチング度の大きな順に候補物質に優先順位を付す。そして、その優先順位に応じて各候補物質を並べ替えて表示部16の画面上に表示する(ステップS6)。例えば、表示部16の画面上には、図5に示すように複数の候補物質の中で優先順位の最も高いカフェインが最上位に表示される。分析オペレータはこうした検索結果を見て、最終的にその未知物質がカフェインであると断定する。 次いで、他の分析例について示す。図7は除草剤の一種であるメコプロップ(Mecoprop)を負イオン検出モードで分析した結果のマススペクトルであり、図8はNISTのライブラリに登録されているメコプロップのマススペクトルである。メコプロップの分子量は214である。図7のマススペクトルでは、プロトン脱離イオン[M−H]-である質量数213とそのフラグメントイオンである質量数141に大きなピークが現れている。一方、NISTのライブラリに登録されているマススペクトルでは、質量数142、214にピークが存在する。したがって、両者のマススペクトルは分子イオンのみならずフラグメントイオンについても相関があることが分かる。通常、LC/MSではこのように比較的大きなフラグメントイオンのピークが見られるケースはあまり多くないが、こうした場合であっても、上記のような同定処理によりGC/MS用の標準的なライブラリを利用して未知物質の同定が可能である。 なお、上記実施例は本発明の単に一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正を行えることは明らかである。本発明の一実施例によるLC/MSの要部のブロック構成図。本実施例のLC/MSにおける同定処理の手順を示すフローチャート。カフェインを正イオン検出モードで分析したときのマススペクトル。NISTのライブラリに登録されているカフェインのマススペクトル。カフェインを未知物質として同定したときの結果を示す図。カフェインについて[M+H]+の同位体存在比を計算した結果を示す図。メコプロップを負イオン検出モードで分析したときのマススペクトル。NISTのライブラリに登録されているメコプロップのマススペクトル。符号の説明10…LC/MS分析部11…データ処理部12…マススペクトル作成部13…同定処理部14…検索用DB15…GC/MS用ライブラリ16…表示部17…入力部 未知物質をLC/MS分析して取得されたマススペクトルから前記未知物質を推定するためのデータ処理装置を具備する液体クロマトグラフ質量分析装置において、該データ処理装置は、 a)GC/MS分析によって取得されたマススペクトルから化合物を検索するための標準的なマススペクトルのライブラリを含む検索用データベースと、 b)前記未知物質のマススペクトル中の主ピークに関して、該ピークの質量数とイオン化モード等に由来する所定の条件とに基づいて推定した分子量を基準に前記ライブラリの中から候補となる物質を選択する候補物質検索手段と、 c)選択された候補物質について、その分子構造から同位体存在比に関する同位体情報を算出する同位体情報取得手段と、 d)前記同位体情報と前記未知物質のマススペクトル中のピーク情報とに基づいて、その候補物質が前記未知物質であることの可能性を評価する候補物質評価手段と、 を備えることを特徴とする液体クロマトグラフ質量分析装置。 【課題】 LC/MS分析で取得したマススペクトルから未知物質を同定する際に、GC/MS用の膨大な標準ライブラリを利用することにより同定効率を向上させる。 【解決手段】 まずLC/MS分析により取得された未知物質のマススペクトル中の主ピークを見つけ(S2)、イオン化モードなどに由来する擬分子イオンの条件に基づき主ピークの質量数から分子量を推定し、その分子量に該当する物質をGC/MS用ライブラリから候補物質としてリストアップする(S3)。各候補物質について分子構造から同位体存在比を計算し(S4)、その同位体存在比と未知物質のマススペクトルのピーク強度比との対応関係から、その候補物質と未知物質とのマッチング度を算出する(S5)。全候補物質についてマッチング度を求めたならば、マッチング度の高い順に候補物質を並べ替えて表示部の画面上に表示する(S6)。【選択図】 図2


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