タイトル: | 公開特許公報(A)_電子メディエーター、電子メディエーター固定化電極およびこれを用いた生物燃料電池 |
出願番号: | 2003309946 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,H01M8/16,C12M1/34 |
西澤 松彦 末永 智一 小菅 順一 深作 昇 JP 2005079001 公開特許公報(A) 20050324 2003309946 20030902 電子メディエーター、電子メディエーター固定化電極およびこれを用いた生物燃料電池 第一化学薬品株式会社 390037327 藤野 清也 100090941 藤野 清規 100076244 吉見 京子 100113837 後藤 さなえ 100127421 西澤 松彦 末永 智一 小菅 順一 深作 昇 7H01M8/16C12M1/34 JPH01M8/16C12M1/34 E 21 1 OL 22 特許法第30条第1項適用申請有り 4B029 4B029AA07 4B029BB16 4B029CC03 4B029CC10 4B029FA12 4B029FA15 本発明は、生体酵素を触媒として利用した生物燃料電池やバイオセンサーに用いる電子メディエーター(以下単にメディエーターという)、このメディエーターを固定化した電極およびこれを用いた生物燃料電池に関するものである。 燃料電池材料の安全面やコスト面への配慮から、微生物や酵素などの生体触媒を使用し、水素やメタノールの他、取り扱いが大変容易であり人間の栄養源として豊富に存在するグルコースなどのバイオマスをアノード燃料に用いる生物電気化学的な燃料電池(以下、生物燃料電池という)に対する関心が高まっている。生物燃料電池は生体触媒を用いているために、生理的環境の室温、中性、大気圧という温和な条件下で作動できるという特徴を持つ。グルコース/O2型生物燃料電池の理論起電力は、アノード燃料であるグルコースの酸化還元電位とカソード燃料であるO2の酸化還元電位との差によって与えられ、1.25Vとなる。実際には電極によるグルコースの酸化還元反応は極めて遅く、酵素を電極触媒に用いる必要がある。しかし、酵素の酸化還元反応活性中心は高分子タンパク質に覆われているために、酵素−電極間の電子移動を行うメディエーターを用いてグルコースの電解酸化がはじめて可能となる。 このような生物燃料電池は小型化への可能性が期待されることから、医療分野などにおいてナノロボット、マイクロポンプ、ペースメーカまたは小型グルコースセンサーなどのそれ自身で動作可能な体内埋め込み型生物デバイスへの応用も考えられる。 従来、このような生物デバイスのメディエーターとしては、生物燃料電池ではオスミウム錯体、グルコースセンサでは鉄シアン錯体を使用したものなどが見られたが、これらは安全性およびコストの点で問題があった。 また、特許文献1には、チオニン骨格および2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン骨格を有する化合物からなる生物燃料電池用のメディエーターが開示されている。これは、電極溶液中でのメディエーターの拡散が律速にならないように、メディエーターの使用量を低減するという目的で該化合物を電極上に固定化している。 メディエーターの電極への固定化は、電極をまずプラズマ処理し、更に3−アミノプロピルトリエトキシシランで処理し、アミノ基が表面に導入された電極を作成する。次に、炭素電極表面に長鎖アルコールを脱水縮合により固定化し、固定化された長鎖アルコールと2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを脱水縮合させて固定化させている。 このような固定化はその操作が複雑であり、また、単分子層修飾による固定化であるためにメディエーターの固定化量が小さくなり、そのため酵素の固定化量も限定され、その結果として反応量が限定されたものとなってしまうという実用上の問題があった。 また、非特許文献1には、メディエーターとして2-methyl-1,4-naphtoquinone(VK3)が開示されている。メディエーターとNAD+は電極を構成するカーボンペーストに混合されて、その表面にジアフォラーゼとデヒドロゲナーゼが注入される。そして電極表面はナイロンフイルムでカバーされて生物触媒電極として用いられる。 これは、メディエーターを物理的にペーストに封じ込めているだけであり、長時間の使用によりメディエーター分子は電極表面より溶出し、電極としての性能が劣化してしまうという実用上の問題があった。特開2000−133297号公報ANALYTICAL SCIENCES JUNE 1989,VOL.5 p269 本発明は、前記従来技術の問題点を解決し、次のようなメディエーター、電極および生物燃料電池を提供することを目的とする。すなわち、安全性とコストに優れるということを前提とし、電極と生物触媒との間の電子移動を円滑に進行させる高機能メディエーターを提供することを目的とする。さらに、このようなメディエーター分子を十分量、効率的かつ強固に固定化した電極および電池を提供することを目的とする。(1)酵素−電極間で電子移動を媒介するメディエーターがキノン系分子の誘導体からなることを特徴とするメディエーター。(2)キノン系分子の誘導体はナフトキノン系分子の誘導体である前記(1)に記載のメディエーター。(3)ナフトキノン系分子の誘導体はsodium anthraquinone-2-sulfonate(AQS)の誘導体または2-methyl-1,4-naphtoquinone(VK3)の誘導体からえらばれる1種以上のナフトキノン系分子である前記(2)に記載のメディエーター。(4)ナフトキノン系分子の誘導体は2-methyl-1,4-naphtoquinone(VK3)の誘導体である前記(2)に記載のメディエーター。(5)2-methyl-1,4-naphtoquinone(VK3)の誘導体は2-methyl -1,4-naphtoquinone(VK3)がアミノ基、カルボキシル基、クロロホルミル基、スクシンイミドオキシカルボニル基、アルキル金属スルホスクシンイミドオキシカルボニル基、ペンタフルオロフェニルオキシカルボニル基、p−ニトロフェニルオキシカルボニル基、水酸基、ホルミル基、ハロゲン基、マレイミド基、イソチオシアナート基、およびオキシラニル基から選ばれる1種以上を有する官能基により修飾されてなる前記(4)に記載のメディエーター。(6)2-methyl-1,4-naphtoquinone(VK3)誘導体は、下記式(1)で表される2-(3-Carboxypropyl)-3-methyl-1,4-naphtoquinone(CPVK3)、下記式(2)で表される2-{3-[N-(2-Aminoethyl)aminocarbonyl] propyl} -3-methyl-1,4-naphtoquinone(AEACPVK3)、下記式(3)で表される2-(3- Aminopropyl}-3-methyl-1,4-naphtoquinone(APVK3)から選ばれる1種以上のキノン系分子である前記(5)に記載のメディエーター。(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載のメディエーターが固定化されてなる電極。(8)酵素がさらに固定化されてなる前記(7)に記載の電極。(9)酵素がジアフォラーゼを含む前記(8)に記載の電極。(10)酵素がジアフォラーゼとデヒドロゲナーゼを含む前記(8)に記載の電極。(11)デヒドロゲナーゼはグルコースデヒドロゲナーゼである前記(10)に記載の電極。(12)さらにNADHが固定化されている前記(10)または(11)に記載の電極。(13)メディエーターと酵素がポリマーと架橋剤により電極に固定化されてなる前記(8)〜(12)のいずれかに記載の電極。(14)ポリマーはポリビニルイミダゾールである前記(13)に記載の電極。(15)架橋剤がポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)である前記(13)または(14)に記載の電極。(16)メディエーターの近傍に酸素除去膜をさらに配置した前記(7)〜(15)のいずれかに記載の電極。(17)電極は生物燃料電池またはバイオセンサーに用いられる電極である前記(7)〜(16)のいずれかに記載の電極。(18)酵素と基質(燃料)と電極とを有し、これらの間での電子移動が発電に利用される電池であって、電極は、カソードと前記(7)〜(17)のいずれかに記載のアノードとからなることを特徴とする生物燃料電池。(19)基質(燃料)がグルコースである前記(18)に記載の生物燃料電池。(20)カソードにはポリジメチルシロキサンが固定化されている前記(18)または(19)のいずれかに記載の生物燃料電池。(21)下記式(2)で表される、 2-{3-[N-(2-Aminoethyl)aminocarbonyl] propyl} -3-methyl-1,4-naphtoquinone(AEACPVK3)。 本発明によれば、酵素−電極間で電子移動を行う電極にメディエーターとしてキノン系分子の誘導体を用いることで、メディエーターとしての機能性を失うことなく、電極に十分量のメディエーターを簡易かつ強固に固定化することができる。従って、燃料利用率の高い電極が得られ、これを使用すれば高効率で小型化の生物燃料電池が得られる。また、安全性が高く、体内埋め込み型の生物デバイスとしても利用できる。 メディエーターを用いて基質(燃料)が電解酸化される際の電子の移動を基質(燃料)がグルコースの場合を例に図1により説明する。 図1は生物燃料電池であり、アノードではグルコースの酸化反応、カソードでは酸素の還元反応が進行する。アノードにはグルコースの酸化に必要な酵素(この場合はグルコースデヒドロゲナーゼ、GDH)、補酵素(NADH)、ジアフォラーゼ(Dp)、メディエーター(VK3誘導体)が作用し、グルコースの酸化反応により放出された電子を系外に取り出す。 ここで、電子を系外に取り出した場合は生物燃料電池となり、この電子を測定すればグルコース濃度を測定するグルコースセンサーとなる(図2)。 ここではグルコースを燃料または測定対象としているが、燃料または測定対象を他のものに換え、それに反応する各種デヒドロゲナーゼ酵素を用いることもできる。このような燃料または測定対象とデヒドロゲナーゼ酵素の組み合わせとして、例えば、乳酸と乳酸デヒドロゲナーゼ、アルコールとアルコールデヒドロゲナーゼなどを使用できる。 また、前記組み合わせの2種類以上を混合あるいは併用することで電池燃料の多様性に対応することも可能である。 本明細書において、「キノン系分子」、「ナフトキノン系分子」の語はそれぞれ、「キノン骨格を有する分子」、「ナフトキノン骨格を有する分子」を意味する。例えば、「ナフトキノン系分子」にはナフトキノンやアントラキノンが含まれる。 メディエーターとしてはキノン系分子の誘導体が用いられる。そのうちでもナフトキノン系分子の誘導体が好ましい。さらには、sodium anthraquinone-2-sulfonate(AQS)の誘導体または2-methyl-1,4-naphtoquinone(VK3)の誘導体からなるメディエーターが好ましく、VK3の誘導体からなるメディエーターがもっとも好ましい。 ここで誘導体は、その目的からキノン系骨格を有し、さらにポリマーまたは酵素と結合可能な官能基により修飾されていることを必要とする。 官能基としては、ポリビニルイミダゾール、ポリリジン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、ポリピロール、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリプロピレンと無水マレイン酸のグラフト共重合体、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのアミノ基、カルボキシル基、ホルミル基、水酸基、ハロゲン基、ジヒドロ−2,5−フランジオン−1−イル基、グリシジル基から選ばれる官能基を2つ以上有するポリマー、または酵素などの生体高分子と結合可能な官能基であれば良く、アミノ基、カルボキシル基、クロロホルミル基、スクシンイミドオキシカルボニル基、アルキル金属スルホスクシンイミドオキシカルボニル基、ペンタフルオロフェニルオキシカルボニル基、p−ニトロフェニルオキシカルボニル基、水酸基、ホルミル基、ハロゲン基、マレイミド基、イソチオシアナート基、およびオキシラニル基から選ばれる1種以上を有する官能基により修飾されているものが好ましい。 また、官能基とキノン系骨格との間には、両者にとって適度な距離をもつスペーサ分子を介することもできる。スペーサ分子はメディエーターとしての機能を損なわない範囲で、メディエーター分子が結合するポリマーまたは酵素の種類によりその長さや構成分子を適宜変更することが可能である。例えば、炭化水素直鎖、ポリオキシエチレン直鎖、ポリエチレングリコール鎖、またはポリプロピレングリコール鎖などがあげられ、鎖内部にアミド基等を有する場合もある。その長さは、炭素原子が直列した場合炭素数3〜50の範囲が好ましく用いられる。 このような官能基による修飾およびスペーサ分子により、メディエーター分子全体として適度な親水性と疎水性を備えることが可能となり、一層その機能が発揮されやすくなる。 メディエーターたるキノン系分子の誘導体として、より具体的には、Sodium aminoanthraquinone-2-sulfonate(AAQS)、2-(3-Carboxypropyl)-3-methyl-1,4-naphtoquinone(CPVK3)、2-{3-[N-(2-Aminoethyl)aminocarbonyl] propyl} -3-methyl-1,4-naphtoquinone(AEACPVK3)、2-(3- Aminopropyl}-3-methyl-1,4-naphtoquinone(APVK3)があげられる。 メディエーターは本発明の効果を損なわない範囲内でその2種以上を組み合わせて用いることもできる。 なお、メディエーター分子の評価はサイクリックボルタンメトリー(CV)を行い、酸化還元電位及び酵素反応速度論解析の検討により行った。[メディエーター分子のサイクリックボルタンメトリー(CV)、酸化還元電位] CVは、電極の電位を一定速度で変化させながら電流を記録する方法で、どの電位で反応がどの程度起こるかを示している。得られるボルタモグラムは、横軸が電位で、縦軸に電流を表す。実験が比較的容易で、酸化還元電位などの平衡論的パラメータや拡散情報のみならず、電極反応や溶液内化学反応の速度論的パラメータも鋭敏に反映するため、電極反応を直感的に把握できる電気化学的測定法の1つである。[メディエーター分子の反応速度論的解析] CVを用いる酵素−メディエーター分子間の反応速度論的解析の手法を文献を参考に説明する。以下の式(4)のように適切なメディエーター(Mox)の存在下、DpはNADHの酸化反応を触媒する。 Mox:酸化型メディエーター Mred:還元型メディエーター この酵素反応がピンポン機構に従うと仮定すると、NADH酸化速度(νE、ox)は以下のように表される。 Κcat、ox:触媒定数 KNA,ox:NADHのミカエリス定数 KM,ox:Moxのミカエリス定数 メディエーター分子を用いた生物電気触媒において、Mredは各々適した電極電位で電気化学的にMoxに再酸化される。このようにMoxは酸化型メディエーター分子として、還元されたDp(Dpred)から電極への電子移動に働く。 電極表面近傍においてNADHの濃度分極がKNA,oxに比べて無視できるほどNADH濃度が大きいとき(〔NADH〕>>KNA,ox)、酵素反応は定常特性を示し、さらに電極表面近傍において無視できるほどMox濃度が小さいとき(〔Mox〕<<KM,ox、式2のVE、oxを以下のように近似できる。これによりΚcat、ox/KM,oxが、Dpred−Mox間の反応速度定数を表していることが分かる。さらに、メディエーター分子の酸化還元電位よりも正の電位において観測される定常状態限界触媒電流(Is,ox)は、下記式により表すことが出来る。 F:ファラデー定数 A:電極表面積 DM :メディエーター分子の拡散係数 n:メディエーター分子の反応電子数 上記式(7)を用いて、測定された限界電流値から反応速度定数kcat,ox/KM,oxの値を見積もることができる。参考文献:Kazuyoshi Takagi,Kenji Kano,Tokuji Ikeda,J.Electroanal.Chem.,1998,445,221-219 以下、各電極の反応を基質(燃料)としてグルコースを用いた場合を図3に基づいて説明する。 燃料溶液は燃料溶液インレット1から破線で囲まれた槽内に導入される。槽内にはアノード3およびカソード4が配置されている。アノードにはその表面にメディエーターと必要に応じて各種酵素が固定化されている。また、カソードは本図のように保護のため酸素透過膜6により覆われている場合もある。電子はアノードに固定化されたメディエーターを介して燃料から取り出され、アノードから負端子7へと引き出され、外部負荷8を通って正端子9からカソード4へと伝達される。 アノード反応は、グルコース、グルコース酸化還元酵素(グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ)、補酵素、ジアフォラーゼを介したメディエーターとの酸化還元サイクルにより行われる。アノード表面には前記メディエーターが固定化されており、メディエーターを固定化することで、メディエーターの溶液中での拡散が無くなるためにアノード及びカソード間のセパレータ破損による電池の短絡を考慮する必要が無くなり、小型化や簡便化のためのセパレータフリー型生物燃料電池にも応用が可能となる。 酵素はNADHを基質として酸化型メディエーター(Mox)との間で電子移動を触媒するものと、NAD+を補酵素とするデヒドロゲナーゼの両者を含むことが好ましく、前者にはさらにジアフォラーゼ(diaphorase)またはフェレドキシン−NADP+リダクターゼ(ferredoxin-NADP+reductase:FNR)があげられる。そのうちでもジアフォラーゼが最も好ましい。 当該酵素もアノード表面に固定化されていることが望ましい。 後者には各種デヒドロゲナーゼがあげられるが、基質(燃料)としてグルコースを用いた場合にはGDHが望ましい。 さらに、当該酵素もアノード表面に固定化されていることが望ましい。 また、メディエーターおよび酵素がポリマーおよび架橋剤により電極に固定化されることがより一層望ましい。 ポリマーには、ポリビニルイミダゾール(PVI)、ポリアリルアミン、ポリアミノ酸(例えばポリリジンなど)、ポリピロール、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリプロピレンと無水マレイン酸のグラフト共重合体、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸の共重合体、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが用いられる。 また、架橋剤としては、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)、グルタルアルデヒド、スベリン酸ジスクシミジル、スクシミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチレートなどが用いられる。この他、Perbio Science UK社の2001−2002カタログ中のPIERCE社の架橋剤の欄などを参照して選択することもできる。 メディエーターとしてアミノ基修飾されたVK3誘導体を、ポリマーとしてのPVI、架橋剤としてのPEGDGEを用いて固定化する反応機構は、次の通りである。PVIのイミダゾール基がPEGDGEの片方のエポキシ基と結合し、もう片方のエポキシ基がメディエーター分子及び酵素中のアミノ基と結合することにより、分子量の増大が起こり、不溶性ゲルとなる。これを電極上に固定化する。 キノン系分子は酸素により自動酸化されやすいという問題を含んでいる。そのため、燃料液中の溶存酸素がアノード上に作用した場合、電圧の低下を招いてしまう。従って、この酸素がアノードの電極表面に到達しないように、酸素を消費する手段を施しておくとよい。例えば、酸素を消費する酵素を燃料溶液中に溶解させておくことが考えられる。 酸素を消費する酵素としては、いわゆるオキシダーゼがあげられる。グルコースオキシダーゼ(GOD)を用いた場合には、GODは燃料のグルコースを酸化し、その際、酸素を還元して消費する。これらオキシダーゼ酵素の働きにより、溶液中の酸素濃度を低下させ、アノード電位の上昇すなわち電池電圧の低下を回避することができる。 しかし、酸素はカソード反応物質であるため、カソード表面では高濃度に存在してほしい。従って、上記オキシダーゼによる酸素消費反応はアノード近傍でのみ進行することが望ましく、例えばオキシダーゼをアノード表面やアノード近傍に配置すると有効である。このためには、酸素を消費する酵素を単に溶液中に溶解させるのではなく、担体に固定化させたり、酵素を付加した酸素除去膜をアノードの表面または近傍に配置するなどの方法が考えられる。 また、オキシダーゼは、グルコースセンサーに使用する場合、測定対象がグルコースであるから、グルコースを酸素の消費に使ってしまうGODよりもアスコルビン酸オキシダーゼなど他の酵素を用いることが望ましい。 また、この他に電池構成を図4のように構成することにより、燃料溶液中の酸素を除去することもできる。すなわち、燃料溶液を燃料溶液インレット1から系内に導入する。燃料溶液はまずカソード4に接触するが、このときカソード4を網状または多孔板などの液体が通過できる形にするとカソード4を通過する際にここで酸素が消費される。このような構成にすることで前述のような酸素除去膜を特に配置しなくてもメディエーターに悪影響を及ぼす酸素の除去が可能となる。 カソードには、酸素の還元反応に有効な白金等の貴金属電極、あるいは白金等の触媒能を有する微粒子を表面に担持したグラファイトのような導電性電極を用いることができる。 また、不純物等によるカソード特性への影響を低減するために酸素選択性の膜(図3の酸素透過膜6など)をカソード表面に修飾することも好ましい。そのような膜として例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる多孔性および疎水性を有する膜があげられる。これにより、電気化学的妨害物質の電極への侵入を防ぎ、電極としての性能を維持できる。 電解質溶液は中性の水溶液を用いる。pHの変動を小さくできる中性のバッファー水溶液が良い。例えば、りん酸バッファーやTrisバッファー溶液である。 メディエーター評価のためのCVでは、上記バッファーに各種メディエーター、ジアフォラーゼおよびNADHを添加した電解質溶液中で測定した。 また、電極(アノード)としての評価のためのCVは、各種メディエーターと各種酵素を固定化した電極を用い、上記バッファーにNADHおよび燃料のグルコースを添加して用いた。〔アノードの評価 〜クロノポテンシオメトリー〜〕 クロノポテンシオメトリーとは、一定の電流により定電流電解を行いながら、作用電極の電極電位を測定し、電位と時間の関係を得ることにより電池用電極の特性評価を行う方法である。 本願の電池は、カソードについては特に限定されず幅広く使用できるため、主にアノードの評価を中心にクロノポテンシオメトリーおよびCVにより、電池としての評価に代えた。 本発明のキノン系誘導体のうち、AAQS、VK3、AEACPVK3、APVK3の合成は以下の方法により得た。〔AAQSの合成〕 AAQSは後述する反応式(8)および(9)により合成される。 アントラキノン-2-スルホン酸ナトリウムを濃硫酸に溶解し、50℃で過熱攪拌した。これに発煙硝酸を加え、120℃に昇温し、そのまま3時間攪拌した。反応液を室温に戻し、氷水中に注ぎ入れた。氷水で冷却し、50%水酸化ナトリウム水溶液をアルカリ性(pH10以上)になるまで加え、析出してきた個体を濾取した。固体を冷却した2%硫酸ナトリウム水溶液で十分洗浄し、減圧乾燥後、ピンク色がかった褐色の固体を得た。本固体は、TLCで原料のアントラキノン-2-スルホン酸ナトリウムが検出されないこと、また、1HNMRでアントラキノン-2-スルホン酸ナトリウムに特有のシグナルが検出されないこと、アントラキノン-2-スルホン酸ナトリウムに比べ水溶性が大変高いことから、ニトロ化されたアントラキノン-2-スルホン酸ナトリウムであると考えられ、次の還元反応に用いた。 ニトロ化されたアントラキノン-2-スルホン酸ナトリウムを水に溶解し、硫化ナトリウム・9水和物を加え、室温で1時間攪拌した。反応が進行すると反応液が濃い赤色となった。反応液を塩化ナトリウムで飽和させ、2−プロパノールで抽出した。2−プロパノール層を減圧下濃縮後、水で希釈して、HPLC分取を行い、2種類の赤色粉末のアミノアントラキノンスルホン酸ナトリウム(AAQS1、AAQS2とする)を得た。AAQS1の1HNMR(D2O):8.08−8.00(m、1H)、7.95−7.88(m、1H)、7.86−7.78(m、1H)、6.98−6.8(m、2H)、6.56−6.47(m、1H)AAQS2の1HNMR(D2O):8.09−7.99(m、1H)、7.88−7.75(m、2H)、6.97−6.85(m、2H)、6.54−6.46(m、1H)〔CPVK3の合成〕 CPVK3は上記反応式(10)により合成される。 合成は下記文献を参考に行った。2−メチル−1,4−ナフトキノン、グルタル酸およびAgNO3を30%CH3CN水溶液に懸濁後、加熱攪拌すると完全に溶解した。次いで、(NH4)2S2O8の30%CH3CN水溶液を60分かけて滴下し、滴下終了後、65℃でそのまま5分間攪拌した。反応液を室温まで冷却すると黄褐色固体が析出し、反応液に水と酢酸エチルを加え、分液ロートで有機層を水洗した。さらに、水で有機層を水洗した。有機層に2N炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、目的化合物のナトリウム塩を水層に抽出した。次いで、水相を37%塩酸にてpH2以下とし、析出してきた固体を濾取した。固体を冷水で十分に洗浄後、減圧乾燥し、黄褐色粉末の2−(3−カルボキシプロピル)−3−メチル−1,4−ナフトキノンを得た。参考にした文献:Salmon-Chemin L.,buisine E.,Yardley V.,Kohler S.,Debreu M.A.,Landry V.,Sergheraert C.,Croft S.L.,Krauth-Siegel R.L.,Davioud-CharvetE.,J.Med.Chem.,2001,44,548-565〔AEACPVK3の合成〕 AEACPVK3は上記反応式(11)により合成される。 2−(3−カルボキシプロピル)−3−メチル−1,4−ナフトキノン(1.00g、3.9mmol)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(534mg、4.64mmol)をジクロロエタン(80mL)に溶解し、WSC(EDC)(890mg、4.64mmol)を加えて4時間攪拌した。エチレンジアミン2.59mL(2.33g、38.7mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶解し、ここに上記反応液を15分間かけて滴下し、そのまま室温で2晩攪拌した。反応液にジクロロメタン(300mL)を加え、水洗(500mL×1)し、硫酸ナトリウムで有機層を乾燥した。溶媒を減圧下除去後、シリカゲルクロマトグラフィー(シリカゲル:富士シリシアNH−DM1020;ジクロロメタン:メタノール=96:4)で精製後、再結晶化(ジクロロメタン:ヘキサン)し、黄褐色粉末の2-{3-[N-(2-Aminoethyl)aminocarbonyl] propyl} -3-methyl-1,4-naphtoquinone(収量686mg、2.29mmol、収率58.9%)を得た。1HNMR(CDCL3):8.09−8.05(m、2H)、7.73−7.65(m、2H)、6.33(br、1H)、3.37(q、J=5.6Hz、2H)、2.90(t、J=5.6Hz、2H)、2.68(t、J=8.0Hz、2H)、2.32(t、J=7.2Hz、2H)、2.22(s、3H)、1.83(m、2H)〔APVK3の合成〕 APVK3は上記反応式(12)(13)により合成される。 2−メチル−1,4−ナフトキノン、N-tert-BOC-γーアミノ酪酸、および AgNO3を30%CH3CN水溶液に懸濁し、65℃で加熱攪拌すると完全に溶解した。65℃にて加熱攪拌中、(NH4)2S208の30%CH3CN水溶液を2時間かけて滴下し、滴下終了後そのまま10分間攪拌した。反応液を室温に戻し、酢酸エチルを加え、有機層を水洗した。次いで、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去後、シリカゲルクロマトグラフィーで精製し、黄褐色オイルの2-〔3-(N-tert-BOC-γーアミノ)プロピル〕-3-メチルー1,4-ナフトキノンを得た。これをTHFと37%塩酸の混合溶媒に溶解し、室温で一晩攪拌した。減圧下THFを除去し、水を加え、水層をジクロロメタンで洗浄した。水層に炭酸水素ナトリウムを加え反応液をアルカリ性にし、酢酸エチルで目的化合物を有機層に抽出、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去し、茶褐色粉末の2-(3-アミノプロピル)-3-メチル-1,4-ナフトキノンを得た。 CVと反応速度論的解析により、各種メディエーターの評価を行った。(1)サイクリックボルタンメトリー(CV) 北斗電工Hz3000のポテンシオンスタットモードを使用した。グラッシーカーボン電極(GDE、電極面積ca.0.083cm2)を作用極として用いた。GDEは測定前に毎回0.05μmのアルミナパウダーで研磨し、脱イオン水中で超音波洗浄した。測定は三極式で行い、対極としてPt電極、参照極としてAg|AgCl(KCl飽和)電極を用いた。電位を変化させる速度は5mV/sとした。測定前にN2ガスで十分にバブリングを行って溶存O2を除去し、測定中はN2ガスをオーバーフローさせた。すべての測定は開回路電位から始めた。 各種メディエーターで得られたサイクリックボルタモグラムを図5に示す。それぞれ、VK3(図5A)、CPVK3(図5B)、AEACPVK3(図5C)、APVK3(図5D)、アントラキノンスルホン酸(AQS, 図5E)、フェロセンメタノール(FMA, 図5F)で得られた結果である。 図5A〜5Fの中で(a)を付したCVは、Trisバッファー溶液(pH8.5)を用いて調製した各種メディエーターの0.09mM溶液で計測されたものである。すべてのCVが還元および酸化反応に対応する明瞭な電流ピーク対を有し、ここに挙げたすべての分子が可逆に電極反応できることが分かる。また、酸化ピークと還元ピークの中間点で近似できる酸化還元式量電位(E0M’)は、各々、VK3が−0.28V、CPVK3が−0.32V、AEACPVK3が−0.32V、APVK3が−0.32V、AQSが−0.49V、FMAが0.23Vである。 一方、図5A〜5Fの中で(b)を付したCVは、上述のメディエーター溶液にDp(DIAPHORASE I、EC 1.6.99.−、Bacillus stearothermophilus 由来、ユニチカ製)を0.11μM、NADHを4.8mMとなるように添加してサイクリックボルタンメトリーを行った結果である。酸化電流が増加しているのは、電極で酸化されたメディエータがDpとNADHによって還元されて再度電極反応に供されるためであり、NADHからメディエーターへの電子移動がDpを介して進行したことを示す。すなわち、ここに挙げた総ての分子が、Dpの活性中心(FAD)と電子授受を行い、メディエーターとして機能し得ることが示されている。 なお、メディエーターを電極に固定化しても同様の結果が得られた。(2)反応速度論的解析 図5A〜5Fからえられる定常状態限界触媒電流(Is,ox)の値を用いて、前記式(7)からDpred−Mox間の反応速度定数を見積もった。反応電子数(n)はキノン系分子では2,FMAでは1である。拡散係数(DM)にはヒドロキノンの値を用いた。得られた反応速度定数(kcat、ox/KM,ox)をメディエータ分子それぞれのE0M’に対して対数プロットすると図6が得られる。 まず、FMA、VK3、AQSに注目してメディエータとしての特徴を比較すると、速度論的にもっとも有利なのはFMAでありAQSよりも一桁以上速いことが分かる。VK3の速度定数はFMAには及ばないが同程度の大きな値である。一方、酸化還元電位E0M’も重要な物性値であり、カソード電位との差が電池電圧を一義的に規定する。たとえば、E0M’がカソード反応(O2還元)の電位(0.3V前後)に近いFMAは、アノードのメディエータには相応しくないと言える。「反応速度定数が大きくE0M’がより負側にある」ということが高出力電池のためのメディエータとしての条件であり、この点においてVK3の優位性が確認できた。VK3の誘導体であるAEACPVK3 、CPVK3、APVK3は、酸化還元電位E0M’に関してVK3とほぼ同じであった。また、速度論に関して、log (kcat、ox/KM,ox)は約7.0であり、VK3の7.5よりも低い値となったが、AQSに対する優位性は十分に保たれており、以上からこれらVK3の誘導体がメディエータとしての条件を備えていることが確認できた。 アノードに酵素およびメディエーター(AEACPVK3)を固定化し、これを用いてCVとクロノポテンシオメトリーを行った。(1)アノードへの酵素およびメディエーターの固定化 AEACPVK3とDpとGDHとを架橋剤としてのPEGDGEを用いてポリマーと共に電極上へ固定化した。Dp(DIAPHORASE I、EC 1.6.99−、Bacillus stearothermophilus 由来、ユニチカ製) 27units、AEACPVK3 13μg、GDH 20units、PVI 75μg、PEGDGE 595μgを含む7.5μlの緩衝溶液を直径3mmのグラッシーカーボン電極上に塗布し、4℃のデシケータ内で50時間反応させて硬化させた。硬化後、脱イオン水でゆっくりと丁寧に洗浄し、固定化電極を作成した。(2)CV 北斗電工Hz3000のポテンシオンスタットモードを使用した。(1)で調製した、酵素およびメディエーターが固定化された電極を作用極とし、Pt板を対極、Ag|AgCl(KCl飽和)を参照極に用いる三極式で測定した。電位を変化させる速度は5mV/sとした。測定前にN2ガスで十分にバブリングを行って溶存O2を除去し、測定中はN2ガスをオーバーフローさせた。すべての測定は開回路電位から始めた。Trisバッファー溶液(pH8.5)中で測定した。NADHは0.5mMとなるように添加し、グルコースは2.0mMとなるように添加した。 このようにして測定したサイクリックボルタモグラムを図7に示す。図7の(a)はNADHおよびグルコースが存在しない状態で得られたCVであり、固定化されたメディエータの酸化還元挙動である。酵素とともに固定化した状態でも、遊離した状態(図5C(a))と同様の電位で酸化還元反応することが分かる。 図7の(b)は、測定溶液にNADHを添加して得られたCVである。酸化電流が増加しており、AEACPVK3とDpが両方とも固定された状態であってもメディエーション機能が発現することが示されている。 図7の(c)は、さらにグルコースを添加して測定したCVである。酸化電流が大きく増大し、グルコースが(間接的に)電解酸化されたことを示す。すなわち、図1で示したアノード反応が実際に進行したことを裏付ける結果である。(3)クロノポテンシオメトリー 上記CVと同一の電極を用い、同一の電解質溶液中で、一定の酸化電流(5μA/cm2)を強制的に流してクロノポテンシオメトリーを行った。得られた分極挙動を図8に示す。図中の(a),(b)および(c)は、上記CV中の表記と同意である。NADHの添加(b)およびグルコースの添加(c)によって電極電位が−0.15V vs. Ag|AgCl付近に停滞するようになり、要求された酸化反応量(5μA/cm2相当)をこの電位で継続しうることが示された。たとえば、O2の還元反応によるカソード極が0.3V vs. Ag|AgClである場合、これらを組み合わせて構成される生物燃料電池の出力密度は2.25μW/cm2(5μA/cm2 × 0.45V)であると推定できる。 本発明により、メディエーターとしての機能性を失うことなく、電極に十分量のメディエーターを簡易かつ強固に固定化することができ、燃料利用率の高い電極が得られる。従って、高効率で小型化の生物燃料電池への適用、体内埋め込み型の生物デバイスとしての応用が可能となる。本発明の電池の反応を示す構成図である。本発明のセンサーの反応を示す構成図である。本発明の電池の模式図である。本発明の電池の模式図である(インレットをカソード近くに配置した場合)。各メディエーターのサイクリックボルタモグラムである。各メディエーターのE0M’に対する速度定数の対数プロットを表す図である。酵素修飾電極を用いた場合のサイクリックボルタモグラムである。定電流通電時における酵素修飾電極の分極挙動を表す図である。符号の説明 1燃料溶液インレット 2燃料溶液アウトレット 3アノード 4カソード 5酵素などの複合体 6酸素透過膜 7負端子 8外部負荷 9正端子 酵素−電極間で電子移動を媒介するメディエーターがキノン系分子の誘導体からなることを特徴とするメディエーター。 キノン系分子の誘導体はナフトキノン系分子の誘導体である請求項1に記載のメディエーター。 ナフトキノン系分子の誘導体はsodium anthraquinone-2-sulfonate(AQS)の誘導体または2-methyl-1,4-naphtoquinone(VK3)の誘導体から選ばれる1種以上のナフトキノン系分子である請求項2に記載のメディエーター。 ナフトキノン系分子の誘導体は2-methyl-1,4-naphtoquinone(VK3)の誘導体である請求項2に記載のメディエーター。 2-methyl-1,4-naphtoquinone(VK3)の誘導体は2-methyl -1,4-naphtoquinone(VK3)がアミノ基、カルボキシル基、クロロホルミル基、スクシンイミドオキシカルボニル基、アルキル金属スルホスクシンイミドオキシカルボニル基、ペンタフルオロフェニルオキシカルボニル基、p−ニトロフェニルオキシカルボニル基、水酸基、ホルミル基、ハロゲン基、マレイミド基、イソチオシアナート基、およびオキシラニル基から選ばれる1種以上を有する官能基により修飾されてなる請求項4に記載のメディエーター。 2-methyl-1,4-naphtoquinone(VK3)誘導体は、下記式(1)で表される2-(3-Carboxypropyl)-3-methyl-1,4-naphtoquinone(CPVK3)、下記式(2)で表される2-{3-[N-(2-Aminoethyl)aminocarbonyl] propyl} -3-methyl-1,4-naphtoquinone(AEACPVK3)、下記式(3)で表される2-(3- Aminopropyl}-3-methyl-1,4-naphtoquinone(APVK3)から選ばれる1種以上のキノン系分子である請求項5に記載のメディエーター。 請求項1〜6のいずれかに記載のメディエーターが固定化されてなる電極。 酵素がさらに固定化されてなる請求項7に記載の電極。 酵素がジアフォラーゼを含む請求項8に記載の電極。 酵素がジアフォラーゼとデヒドロゲナーゼを含む請求項8に記載の電極。 デヒドロゲナーゼはグルコースデヒドロゲナーゼである請求項10に記載の電極。 さらにNADHが固定化されている請求項10または11に記載の電極。 メディエーターと酵素がポリマーと架橋剤により電極に固定化されてなる請求項8〜12のいずれかに記載の電極。 ポリマーはポリビニルイミダゾールである請求項13に記載の電極。 架橋剤がポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)である請求項13または14に記載の電極。 メディエーターの近傍に酸素除去膜をさらに配置した請求項7〜15のいずれかに記載の電極。 電極は生物燃料電池またはバイオセンサーに用いられる電極である請求項7〜16のいずれかに記載の電極。 酵素と基質(燃料)と電極とを有し、これらの間での電子移動が発電に利用される電池であって、電極は、カソードと請求項7〜17のいずれかに記載のアノードとからなることを特徴とする生物燃料電池。 基質(燃料)がグルコースである請求項18に記載の生物燃料電池。 カソードにはポリジメチルシロキサンが固定化されている請求項18または19に記載の生物燃料電池。 下記式(2)で表される、 2-{3-[N-(2-Aminoethyl)aminocarbonyl] propyl} -3-methyl-1,4-naphtoquinone(AEACPVK3)。 【課題】安全性とコストに優れることを前提とし、電極と生物触媒との間の電子移動を円滑に進行させる高機能メディエーターの提供、および、このようなメディエーター分子を十分量、効率的かつ強固に固定化した電極および電池の提供を課題とする。【課題を解決するための手段】酵素−電極間で電子移動を媒介するメディエーターがキノン系分子の誘導体からなるメディエーター、特にVK3誘導体からなるメディエーターを提供する。また、これらのメディエーターを適用した電極および生物燃料電池を提供する。【選択図】図1