生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_シランカップリング剤水溶液の分析方法及びそれを用いた湿度センサ素子の製造方法
出願番号:2003307501
年次:2005
IPC分類:7,G01N30/88,G01N27/62,G01N30/06,G01N30/26,G01N30/48,G01N30/72,G01N30/74,G01N30/78,G01N27/68


特許情報キャッシュ

加藤 秀雄 島村 淳一 田中 弘次 北村 洋貴 JP 2005077233 公開特許公報(A) 20050324 2003307501 20030829 シランカップリング剤水溶液の分析方法及びそれを用いた湿度センサ素子の製造方法 TDK株式会社 000003067 長谷川 芳樹 100088155 寺崎 史朗 100092657 阿部 豊隆 100108213 加藤 秀雄 島村 淳一 田中 弘次 北村 洋貴 7G01N30/88G01N27/62G01N30/06G01N30/26G01N30/48G01N30/72G01N30/74G01N30/78G01N27/68 JPG01N30/88 CG01N27/62 VG01N27/62 XG01N30/06 AG01N30/26 AG01N30/48 GG01N30/72 CG01N30/74 EG01N30/78G01N27/68 10 OL 21 本発明は、シランカップリング剤水溶液の分析方法及びそれを用いた湿度センサ素子の製造方法に関するものである。 従来、たとえば湿度センサのような電子部品に用いられる無機層と有機層との接着性を強化させるために、シランカップリング剤が広く用いられている。このシランカップリング剤は、一般的には、ケイ素原子と、加水分解可能なアルコキシ基と、有機化合物と結合可能なアミノ基、ビニル基もしくはエポキシ基等と、を有する化合物である。上記アルコキシ基の加水分解により生成した水酸基が、無機層との結合に関与するので、該シランカップリング剤は、無機層と有機層との接着性を強化する役割を果たすこととなる。 例えば、特許文献1に記載のように、湿度センサにシランカップリング剤を用いる場合は、無機層であるアルミナ基板上の金属電極層と、有機層である感湿薄膜(例えば、アイオネンポリマー構造を有するもの)との間に該カップリング剤の水溶液を塗布しておくことにより、上記電極層と上記感湿薄膜との間の接着性が強化され、より耐久性を有する湿度センサを形成することが可能となる。 しかしながら、このシランカップリング剤を電子部品の製造に用いる前に、酸水溶液などの処理液中で長期間保存すると、その接着能が徐々に低下する傾向にある。また、さらに長期間保存すると、そのシランカップリング剤の水溶液が白濁もしくは沈殿を生ずる場合がある。このようなシランカップリング剤を電子部品材料の接着に用いても、カップリング剤としての本来の機能を果たさないばかりか、場合によっては、該シランカップリング剤を塗布した部分に新たな凹凸が生じ、さらには接合状態にムラが生ずることもある。その結果、該シランカップリング剤を用いて得られた電子部品は、その各種性能が低下してしまい、歩留まりも低下する傾向にある。 長期間の保存によりシランカップリング剤の接着能が低下する要因の一つとしては、その脱水縮合反応による高分子化が挙げられる。つまり、シランカップリング剤の加水分解により生成した水酸基が無機層との結合に用いられるのではなく、近傍に存在する他のシランカップリング剤の加水分解生成物(以下、場合によって「加水分解生成物」という。)もしくはその加水分解生成物の縮合体(以下、場合によって「加水分解縮合物」という。)との縮合に用いられるため、接着能が低下するものと考えられる。したがって、このようなシランカップリング剤の処理液中における加水分解生成物もしくはその縮合体、特に二量体などの初期縮合生成物を定性および定量することは、シランカップリング剤処理液の品質管理を行い、高品質の電子部品を歩留まりよく製造する上で極めて重要である。特開2001−221764号公報 しかしながら、これまでに、シランカップリング剤の処理液中における加水分解生成物もしくはその縮合体を定性および定量できるような分析方法は、提案されていない。 そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、シランカップリング剤の加水分解生成物およびその縮合体を定性および定量できるシランカップリング剤水溶液の分析方法を提供することを目的とする。 また、そのような分析方法を用いることにより、シランカップリング剤処理液の品質管理を行い、高品質の湿度センサ素子を歩留まりよく製造できる湿度センサ素子の製造方法を提供することを目的とする。 本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の分析方法を用いることにより、シランカップリング剤の加水分解生成物およびその縮合体(以下、場合によって「加水分解生成物等」という。)の各々を定性および定量可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明のシランカップリング剤水溶液の分析方法は、シランカップリング剤を酸水溶液中に溶解させて得られた試料を、水溶液を移動相に用いて、不活性多孔質固体が充填されたカラムに通過させるカラム通過工程と、そのカラムを通過した試料を順次紫外可視吸収スペクトル分析法により分析する紫外可視吸収分析工程とを含むことを特徴とする。この際、移動層の水溶液として、−10〜250℃の温度で析出物が生じない水溶液を用いてもよい。 ここで、本明細書において「移動相」とは、クロマトグラフィーに用いられる移動相のことをいう。また、本明細書において「不活性多孔質固体」は、クロマトグラフィーに用いられる固定相の機能を果たすものである。 また、本発明のシランカップリング剤水溶液の分析方法は、シランカップリング剤を酸水溶液に溶解させて得られた試料を、−10〜250℃の温度で析出物が生じない水溶液を移動相に用いて、不活性多孔質固体が充填されたカラムに通過させるカラム通過工程と、そのカラムを通過した試料を順次質量分析法により分析する質量分析工程とを含むことを特徴とする。 上記シランカップリング剤水溶液の分析方法は、シランカップリング剤の加水分解生成物および加水分解縮合物、特に二量体もしくは三量体などの比較的低分子の加水分解縮合物を十分に定性および/または定量することができる。したがって、電子部品の製造に用いるシランカップリング剤水溶液を保存する際に、該水溶液中の加水分解生成物等の濃度についての情報を適宜得ることができる。シランカップリング剤水溶液中の上記化合物のうち、比較的高分子の加水分解縮合物が増加すると、シランカップリング剤水溶液の接着性が低下する傾向にある。以上のことから、該シランカップリング剤水溶液の分析方法を用いることにより、そのシランカップリング剤水溶液を電子部品の接合に用いることが可能か否かについての判断材料を得ることができる。 本発明のシランカップリング剤水溶液の分析方法が、上記課題を解決できる理由の一つとして、カラム通過工程において、各々の加水分解生成物等を明確に分離できることが挙げられる。その要因は詳細には明らかにされていないが、本発明者は、現在のところ、その要因の一つを以下のように考えている。ただし、要因はこれに限られない。 すなわち、シランカップリング剤水溶液中の加水分解生成物等を定性・定量するためには、その各々の加水分解生成物等を明確に分離する必要がある。しかし、特に低分子の加水分解生成物等は、水酸基を比較的多く有することにも起因して非常に反応性が高いため、通常のガスクロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーに用いられる固定相に対して、強く化学吸着または結合してしまうため、それらを分離することは非常に困難であると考えられる。しかし、本発明のシランカップリング剤水溶液の分析方法では、固定相に相当するものとして、不活性多孔質固体を用いているため、加水分解生成物等はその固定相に化学吸着および結合し難い傾向にあると考えられる。 また、シランカップリング剤水溶液中の加水分解生成物等は、一種類のシランカップリング剤の加水分解および脱水縮合により生成するものであり、それらの接着性は縮合の程度(縮合度)に依存するものであると考えられる。本発明のシランカップリング剤水溶液の分析方法は、各加水分解生成物等をいわゆるサイズ排除クロマトグラフィーの原理を用いて分離するものであり、分離された各々の加水分解生成物等は分子量が異なる。したがって、それらの加水分解生成物等は縮合度により分離されていると考えられるので、これらを定量化することにより、そのシランカップリング剤水溶液の接着性を推定することができる。 さらに、本発明のシランカップリング剤水溶液の分析方法は、減少したシランカップリング剤を定量するのではなく、生成、増加した加水分解生成物等を定性・定量するので、加水分解反応の初期段階におけるシランカップリング剤水溶液の組成変化を測定できる。したがって、この分析方法は、該シランカップリング剤水溶液のより厳密な品質管理をすることができる。 また、移動相として、−10〜250℃の温度で析出物が生じない水溶液を用いると、さらに好ましい。このような水溶液を用いて系内の析出物の発生を十分に抑制すると、カラムや分析機器などの本発明の分析方法に用いる各装置が、詰まりや腐食により損傷を受けることが減少する傾向にある。また、系内に導入した試料の各装置への吸着等を減少させることにより、定量分析精度が向上する傾向にある。 さらに、上述したカラム通過工程を経て得られた試料が、まず、紫外可視吸収分析工程を経て、次に質量分析工程を経ると、好ましい。本発明のシランカップリング剤水溶液の分析方法が上述した両方の分析工程をも含むことにより、より厳密な定性・定量を行うことが可能となる。 また、移動層に用いる水溶液が電解質水溶液であると、試料中の加水分解生成物等の不活性多孔質固体への化学的吸着もしくは結合が抑制される傾向にあるので、カラムの閉塞もしくは劣化をより抑制することができ、また、分析を迅速に行える傾向にある。 したがって、酢酸とトリエチルアミンを添加してなる水溶液を移動相として用いると、中和塩の析出をさらに一層抑制することができ、しかも、該水溶液は電解質水溶液であるので、カラムの閉塞もしくは劣化を、極めて有効に防ぐこともでき、上述した装置の損傷の抑制および定量分析精度の向上にも寄与できる傾向にあるので、特に好ましい。 さらに、移動相に用いる水溶液が、有機溶媒をも含有すると好ましく、その有機溶媒として、アセトニトリルを用いると、さらに好ましい。このような化合物を添加することにより、加水分解生成物等の不活性多孔質固体への化学吸着および結合がさらに抑制される傾向にあるので、カラムの各加水分解生成物等についての分離能が一層向上する。 本発明の湿度センサ素子の製造方法は、湿度センサ素子の無機層と有機層とを接合すべきシランカップリング剤を酸水溶液に溶解させて得られた組成物の試料を、水溶液を移動相に用いて、不活性多孔質固体を充填したカラムに通過させるカラム通過工程と、カラムを通過した試料を順次紫外可視吸収スペクトル分析法により分析する紫外可視吸収分析工程と、紫外可視吸収分析工程により得られた試料の分析結果に基づき、上記組成物を湿度センサ素子の形成に用いるか否かを決定する判断工程と、判断工程において組成物を湿度センサ素子の形成に用いると決定した場合に、その組成物を、上記湿度センサ素子を構成する無機層の有機層側の表面および/または有機層の無機層側の表面に塗布する塗布工程と、無機層と有機層とを上記組成物を用いて接合する接合工程とを含むことを特徴とする。 また、本発明の湿度センサ素子の製造方法は、湿度センサ素子の無機層と有機層とを接合すべきシランカップリング剤を酸水溶液に溶解させて得られた組成物の試料を、−10〜250℃の温度で析出物が生じない水溶液を移動相に用いて、不活性多孔質固体を充填したカラムに通過させるカラム通過工程と、カラムを通過した試料を順次質量分析法により分析する質量分析工程と、質量分析工程により得られた試料の分析結果に基づき、上記組成物を湿度センサ素子の形成に用いるか否かを決定する判断工程と、判断工程において組成物を湿度センサ素子の形成に用いると決定した場合に、その組成物を、上記湿度センサ素子を構成する無機層の有機層側の表面および/または有機層の無機層側の表面に塗布する塗布工程と、無機層と有機層とを上記組成物を用いて接合する接合工程とを含むことを特徴とする。 これらの湿度センサ素子の製造方法を採用することにより、得られた湿度センサ素子は、無機層である電極もしくは絶縁基板などと有機層である感湿薄膜などとの間の界面が強化される、すなわち、それらの接着性が向上する。さらに、該製造方法においては、析出(沈殿)した加水分解縮合物を含まないシランカップリング剤水溶液を常に用いることができる傾向にあるので、得られた湿度センサ素子の上記界面における新たな凹凸の発生を十分に抑制でき、接合状態にムラが生じ難い。 本発明のシランカップリング剤水溶液の分析方法によれば、シランカップリング剤の加水分解生成物およびその縮合体を定性および定量することができる。また、本発明の湿度センサ素子の製造方法によれば、高品質の湿度センサ素子を歩留まりよく製造できる。 以下、本発明の好適な実施形態について、必要に応じて図を参照しつつ、詳細に説明する。本実施形態のシランカップリング剤水溶液の分析方法(以下、場合に応じて、「分析方法」という。)は、図1に示すような分離分析装置100を用いて行われる。すなわち、移動相貯槽1に貯蔵された水溶液を移動相(溶離液)として用いて、該移動相を送液ポンプ2により系内に流通させる。そして、シランカップリング剤を酸水溶液中に溶解させて得られた一定量の試料を試料注入孔3から系内に一度に導入し、不活性多孔質固体が充填されたカラム4に通過させる(カラム通過工程)。次いで、そのカラム通過工程を経て得られた試料を、まず紫外可視吸収装置12に流通させ、そこで紫外可視吸収スペクトル分析法により分析する(紫外可視吸収分析工程)。次に、紫外可視吸収分析装置12を通過した試料を質量分析装置15に送出し、そこで質量分析法により分析する(質量分析工程)。 上述したように、本実施形態においては、シランカップリング剤を酸水溶液に溶解して調製されたシランカップリング剤水溶液が試料として用いられる。 シランカップリング剤としては、通常の電子部品の無機層−有機層間の界面強化に用いられるものであれば、特に限定されることなく用いることができる。それらのなかでも、二重結合を有する脂肪族系のシランカップリング剤であれば、それから調製されるシランカップリング剤水溶液中の加水分解生成物等が、本実施形態の分析方法により、より有効に定性・定量されるので好ましい。 具体的には、例えば、ビニルトリクロルシラン(Cl3SiCH=CH2)、ビニルトリメトキシシラン((CH3O)3SiCH=CH2)もしくはビニルトリエトキシシラン((C2H5O)3SiCH=CH2)などのビニル系シランカップリング剤、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン((CH3O)2Si(CH3)C3H6OCOC(CH3)=CH2)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン((CH3O)3SiC3H6OCOC(CH3)=CH2)もしくは3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン((C2H5O)2Si(CH3)C3H6OCOC(CH3)=CH2)などのメタクリロキシ系シランカップリング剤、または、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系シランカップリング剤等を挙げることができる。 これらのなかで、本実施形態の分析方法により、より効果的且つ適切に分析できる観点から、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン((CH3O)3SiC3H6OCOC(CH3)=CH2)もしくはN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いるとより好ましい。 上記シランカップリング剤を溶解する酸水溶液に用いる酸は、通常の電子部品の無機層−有機層間の界面強化用のシランカップリング剤水溶液に含有されるものであれば、特に限定されることなく用いることができる。 シランカップリング剤水溶液に添加するシランカップリング剤の添加割合は、実際に電子部品の接着(接合)に用いられるものとの整合性の観点から、0.5〜5質量%であることが好ましい。シランカップリング剤の添加割合がこの下限値より低いと、無機層と有機層とを強固に接着し難くなる傾向にある。また、該添加割合がこの上限値より高いと、シランカップリング剤の加水分解が急速に進行する傾向にあるので、電子部分の接着用のシランカップリング剤水溶液として機能し難くなる傾向にある。 また、上述した酸の添加割合は、実際に電子部品の接着(接合)に用いられるものとの整合性の観点から、0.5〜5質量%であることが好ましい。この酸の添加割合が上記下限値より低くても、あるいは上記上限値より高くても、脱水縮合が進行する傾向にあり、加水分解生成物(単量体)の該水溶液中での安定性が低下する傾向にある。 本実施形態のカラム通過工程は、いわゆるゲルろ過クロマトグラフィー(Gel Filtration Chromatography;以下、「GFC」という。)の原理に基づいて行われるものであり、試料中に2種以上の加水分解生成物等が含有されている場合に、それらを分離するために設けられているものである。 GFCにおいては、試料中の各成分(本実施形態においては各加水分解生成物等)が、移動相と共にカラムに導入されると、分子サイズの比較的小さな成分は固定相の孔内に捕捉され易い一方、分子サイズの比較的大きな成分は固定相の孔内に捕捉され難い。その結果、分子サイズの比較的大きな成分がカラムを速やかに通過し、分子サイズの比較的小さな成分はカラムの通過速度が遅くなる。したがって、GFCでは、試料中の各成分は、その分子サイズの差異によって分離されることになる。 本実施形態にかかる各加水分解生成物等は、一種類のシランカップリング剤から生成するものであるので、分子サイズの差異は分子量の差異に依存することになる。したがって、本実施形態の分析方法によると、縮合の程度の異なる各加水分解生成物等を定性・定量することができる。 なお、GFCは移動相として水溶液を用いるが、移動相として有機溶媒を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permission Chromatography;以下「GPC」という。)と分離原理が同様であることから、水系GPCとも呼ばれる。 本実施形態においては、GFCの移動相として、従来のGFCの移動相に用いられる水溶液であれば、特に限定されることなく採用することができる。それらのなかでも、試料中の加水分解生成物等の不活性多孔質固体への化学的吸着もしくは結合を抑制する観点から、電解質水溶液を用いると好ましい。これにより、カラムの閉塞もしくは劣化を十分に抑制する傾向にあり、また、分析を迅速に行える傾向にある。 該電解質水溶液としては、たとえば固体の塩を水溶液に添加して得られるものであってもよいが、液体の酸および塩基を添加して得られるものであると、析出物が発生し難い傾向にあるので、より好ましい。 酸および塩基の組み合わせとしては、それらの中和反応により生成する塩が、分離分析装置100の系内の温度(−10〜250℃)および移動相中のそれらの濃度などの条件下で、容易に析出しないような組み合わせを採用することが好ましい。このような組み合わせを選択することにより、各装置の損傷、特に後述する質量分析装置の損傷を防ぐことができる傾向にある。 その水溶液に添加する酸および塩基の組み合わせとしては、上述したように析出し難いという観点、後述する質量分析工程におけるイオン化(揮発)のし易さの観点および固定相と試料との相互作用(化学吸着、結合など)を十分に抑制する観点などから、酢酸およびトリエチルアミン(TEA)の組み合わせが、より好ましい。また、移動相に用いる水溶液中の中和塩すなわち電解質の濃度変化は、加水分解生成物のイオン性相互作用に影響を与え、その分子サイズを変化させることから、その濃度を一定に維持することが好ましいところ、この酢酸及びトリエチルアミンは、いずれも室温で液体の状態にあるので、比較的容易にそれらの濃度を一定にした水溶液を調製することが可能である。 移動相を調製するための酸および塩基の添加割合は、該水溶液のpHが7付近すなわち中性付近になるように調整することが好ましく、具体的にはpHで3〜7になるように調整することが好ましい。そのpHが3〜7の範囲外になると、シランカップリング剤の加水分解生成物等の縮合がより進行する傾向にある。 移動相には、さらに有機溶媒を添加すると好ましい。有機溶媒を添加することにより、加水分解生成物等の不活性多孔質固体への化学吸着および結合がさらに抑制される傾向にあるので、GFCによる分離をより迅速に行える傾向にある。そのような観点から、該有機溶媒がアセトニトリルもしくはメタノールであるとより好ましい。さらに、上述したGFC迅速化の観点および後述するカラム圧力を比較的低下させる観点から、アセトニトリルを有機溶媒として用いると、特に好ましい。 この有機溶媒の移動相中における濃度は、各加水分解生成物等を十分に分離できるように適宜調整することができる。たとえば、アセトニトリルを用いた場合は、5〜50体積%の範囲になるように調整すると好ましい。アセトニトリルの濃度がこの範囲外になると、後述する各加水分解生成物等のピークが正規分布を示さなくなり、その(相対)分子量を特定することが困難になる傾向にある。 また、移動相に含まれる各成分は、後述する質量分析工程において揮発するもの、すなわち霧化部もしくは脱溶媒部での加熱温度より低い沸点を有するものであることが好ましい。霧化部で揮発できない成分が含まれていると、その成分は質量分析装置15を損傷させる原因となってしまう。したがって、そのような成分を含む場合は、試料を質量分析装置15に送出することはできなくなる傾向にある。 カラム通過工程において用いられるカラム4は、固定相として不活性多孔質固体が充填されたものである。この不活性多孔質固体としては、GFCに従来用いられているものであれば、特に限定されることなく用いることができる。それらのなかで、シリカ系充填剤あるいはポリマー系充填剤を用いると好ましく、シランカップリング剤の加水分解生成物等が化学吸着もしくは結合し難い観点から、ポリマー系充填剤を用いるとより好ましい。 該ポリマー系充填剤としては、具体的には、昭和電工株式会社製、製品名:Asahipak GF−310 HQなどが挙げられる。これらのなかで、シランカップリング剤の加水分解生成物等を有効に分離できる観点から、ポリビニルアルコール系充填剤を用いると好ましい。 なお、カラム通過工程により分離された各加水分解生成物等の分子量をより正確に把握するために、カラム4に既知の分子量を有する化合物(分子マーカー)を通過させ、その保持時間を確認して、分子量と保持時間との相関性を示す検量線を作成することが好ましい。 上述したカラム通過工程により分離された各加水分解生成物等は、次に紫外可視吸収分析工程において定性的および/または定量的に分析される。紫外可視吸収分析工程において用いられる紫外可視吸収分析装置12は、従来の紫外可視吸収スペクトル分析法を採用した紫外可視吸収分析装置であれば、特に限定されることなく用いることができる。 この紫外可視吸収分析工程において、各加水分解生成物等の分析は、例えば、以下の手順により行われる。まず、カラム4により各保持時間ごとに分離されて、紫外可視吸収分析装置12に送られてくる各加水分解生成物等の紫外可視吸収を、フォトダイオードアレイ検出器などを用いて、比較的広い紫外可視線波長範囲(例えば200nm〜950nm)で定性的に測定する。これにより、分離された各加水分解生成物の保持時間を知ると共に、各加水分解生成物等に特定の紫外可視吸収波長を把握することができる。保持時間の最も短いピークが単量体、すなわち三つの水酸基を有する加水分解生成物に起因するものであり、保持時間が長くなるにつれて、二量体、三量体、とその縮合度が増加することが容易に推定される。 次に、上記の定性的な測定により判明した各加水分解生成物等の紫外可視吸収波長に測定波長を固定して、その波長において観測される吸収スペクトル強度の経時変化(図2を参照)により得られたピーク面積から、その紫外可視吸収波長を有する加水分解生成物等の相対的な定量を行うことができる。この定量分析においては、試料中における各加水分解生成物等の濃度が比較的高い場合に、より正確にその濃度を把握することができる傾向にある。 そして、紫外可視吸収分析工程を経た各加水分解生成物等は、質量分析工程において定性的および/または定量的に分析される。質量分析工程において用いられる質量分析装置15は、従来の質量分析法を採用した質量分析装置であれば、特に限定されることなく用いることができる。それらのなかで、加水分解生成物等をイオン化しやすい観点から、イオン化法として大気圧化学イオン化法(Atomospheric Pressure Chemical Ionization;以下「APCI」という。)を採用したものが好ましい。 この質量分析工程においては、まず、移動相および加水分解生成物等を180℃前後に加熱した霧化部(図1の符号5)により霧化する。次いで、400℃に加熱した脱溶媒部に移動相および加水分解生成物等を通過させることにより、それらが揮発し、中性分子及びイオンが液相から気相へと移る。そして、コロナ放電電極(図1の符号6)を用いたコロナ放電により溶媒分子がイオン化され、逐次起こるイオン−分子反応により加水分解生成物等がイオン化され、生成したイオンが電場で加速された後、所定の径をもつ細孔(図1の符号7)から真空中にサンプリングされ、質量分析部(図1の符号8)へ導かれる。 APCIは、大気圧下においてイオン化を行う方法なので、加水分解生成物等のイオン化効率が、エレクトロスプレーイオン化法などの他のイオン化法よりも高い。したがって、極微量の加水分解生成物等をイオン化し、特定イオンを選択的に検出することにより高感度な定量分析が行える。また、このような原理を応用した分析法であるため、ガスクロマトグラフィーでは分析不可能な極性基を多くもつような加水分解生成物等の分析が可能である。 この質量分析工程における各加水分解生成物等の分析は、例えば、以下の手順により行われる。まず、質量分析装置15に送られてくる各加水分解生成物等を上述のようにしてイオン化させる。次いでイオン化された各加水分解生成物等を、四重極質量分析器などを用いて、例えばm/z(原子量単位/イオンの価数)110〜1200の範囲で走査させて定性的に測定する。これにより、各保持時間ごとに分離された各加水分解生成物等に特定のm/zを把握することができる(図3を参照)。各加水分解生成物等は、分子構造が既知であるシランカップリング剤の加水分解および/または脱水縮合により生成したものなので、このm/zが判明することにより、その分子構造を容易に推定することができ、保持時間ごとの分子を特定することができる傾向にある。したがって、上述した紫外可視吸収分析工程との組み合わせにより、保持時間と紫外可視吸収波長と分子構造との関係を十分に明らかにできる。 次に、上記の定性的な測定により判明した各加水分解生成物等の特定のm/zを、SIM(Selected Ion Monitoring)モードによりモニターして、それぞれのm/zにおいて観測される質量スペクトル強度の経時変化により得られたピーク面積から、それぞれのm/zを有する加水分解生成物等の相対的な定量を行うことができる。この定量においては、試料中における各加水分解生成物等の濃度が比較的低い場合に、より正確にその濃度を把握することができる傾向にある。例えば、シランカップリング剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いた場合、その加水分解生成物(単量体;m/z=265)の試料中濃度とSIMピーク面積との関係は、比較的試料濃度が低い領域では図4に示すように良好なものとなる。したがって、上述した紫外可視吸収分析工程との組み合わせにより、十分に広範な濃度範囲での加水分解生成物等の濃度を定量することが可能となる。 以上、本実施形態のシランカップリング剤水溶液の分析方法について説明したが、本発明のシランカップリング剤水溶液の分析方法はこれに限定されるものではない。 例えば、別の実施形態において、移動相に上述した霧化部もしくは脱溶媒部の加熱温度より高い沸点を有する成分を含む場合などは、この質量分析工程を省略することもできる。質量分析工程を省略するためには、質量分析装置15を設けなくてもよく、または、図示していないが、紫外可視吸収分析装置12と質量分析装置15との間に設けられるベントラインから、移動相および試料を排出することにより、質量分析装置15を通さなくてもよい。 また、さらに別の実施形態において、上述した紫外可視吸収分析工程を省略することができ、その場合は、紫外可視吸収分析装置12を設けなくてもよく、あるいは、紫外可視吸収分析装置12をバイパスするためのラインを設けてもよい。 上述した実施形態のシランカップリング剤水溶液の分析方法は、シランカップリング剤の加水分解生成物等、特に加水分解生成物(単量体)、その二量体もしくは三量体などの比較的低分子の加水分解縮合物を十分に定性および/または定量することができる。したがって、電子部品の製造に用いるシランカップリング剤水溶液を保存する際に、該水溶液中の加水分解生成物等の濃度についての情報を適宜得ることができる。 シランカップリング剤水溶液中の上記化合物のうち、比較的高分子の加水分解縮合物が増加すると、シランカップリング剤水溶液の接着性が低下する傾向にある。したがって、該シランカップリング剤水溶液の分析方法を用いて、該水溶液中の加水分解生成物等の濃度についての情報を得ることにより、そのシランカップリング剤水溶液を電子部品の界面強化に用いるのに適したものか否かについての知見を得ることができる。 上述したように、上記実施形態のシランカップリング剤水溶液の分析方法は、カラム通過工程において、各々の加水分解生成物等を明確に分離できる。その要因は詳細には明らかにされていないが、本発明者は、現在のところ、その要因の一つを以下のように考えている。ただし、要因はこれに限られない。 すなわち、シランカップリング剤水溶液中の加水分解生成物等を定性・定量するためには、その各々の加水分解生成物等を明確に分離する必要がある。しかし、特に低分子の加水分解生成物等は、水酸基を比較的多く有することにも起因して非常に反応性が高いため、通常のガスクロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーに用いられる固定相に対して、強く化学吸着または結合してしまうため、それらを分離することは非常に困難であると考えられる。しかし、本発明のシランカップリング剤水溶液の分析方法では、固定相に相当するものとして、不活性多孔質固体を用いているため、加水分解生成物等はその固定相に化学吸着および結合し難い傾向にあると考えられる。 また、シランカップリング剤水溶液中の加水分解生成物等は、一種類のシランカップリング剤の加水分解および脱水縮合により生成するものであり、それらの接着性は縮合度に依存するものであると考えられる。シランカップリング剤水溶液は分子量モードではなく吸着分配モードにしたがって送出されるため、分子サイズの小さいものから順にカラムから送出される。その分子サイズは縮合度に依存するので、分離された各々を定量することにより、そのシランカップリング剤水溶液の接着性を推定することができる。 さらに、上記実施形態のシランカップリング剤水溶液の分析方法は、減少したシランカップリング剤を定量するのではなく、生成、増加した加水分解生成物等を定性・定量するので、加水分解反応の初期段階におけるシランカップリング剤水溶液の組成変化を測定できる。したがって、該シランカップリング剤水溶液のより厳密な品質管理をすることができる。 次に、本実施形態のシランカップリング剤水溶液の分析方法を用いた湿度センサ素子の製造方法について説明する。図5は、本実施形態の湿度センサ素子の製造方法により製造される湿度センサ素子20の構成を示す平面図である。この湿度センサ素子20は、絶縁基板22上に一対の櫛形電極24を有し、一対の櫛形電極24は、一定距離のギャップ25を介し、かつ噛み合うようにして絶縁基板22上に配置されている。絶縁基板22および櫛形電極24上には図示したように感湿薄膜23が設けられている。そして、図示していないが、上述したシランカップリング剤の加水分解生成物等が、それらの間の接着(界面強化)のために用いられている。また、櫛形電極24の各々の一端には電極端子26が取り付けられており、電極端子26の各々にはリード線27が半田28を用いて接続されている。また、図示のように、電極材料の拡散防止のためのレジスト膜29が設けられている。 このような湿度センサ素子20は、以下のようにして製造されるものである。まず、絶縁基板22が用意され、必要に応じて従来方法により洗浄および乾燥される。この絶縁基板22の構成材料としては、感湿薄膜23との接着性が良好で、かつ電気絶縁性を有するものであればどのようなものでもよく、例えばガラス、プラスチック、セラミックまたは絶縁被覆した金属等が用いられる。 次に、該絶縁基板22上に、一対の櫛形電極24が形成される。櫛形電極24の構成材料としては、例えばAuないしはRuO2等よりなる低抵抗ペースト等が使用できる。また電極端子26は半田との相溶性のあるものであればどのようなものでもよく、例えばAg−Pd合金等を用い、これらを通常の方法で印刷して高温焼結すればよい。 さらに、例えば櫛形電極24にAuを用いる場合は、半田付け処理時のAu拡散防止のためにレジストまたはガラスよりなるレジスト膜29を設けることが好ましい。このレジスト膜29の厚さおよび形状には制限はなく、半田付け処理時のAu拡散防止の効果を有すればよい。 上述した工程に前後して、絶縁基板22および櫛形電極24と、その上を覆うようにして形成される感湿薄膜24と、の間の接着性を強化するために用いられるシランカップリング剤水溶液である組成物が、調製される。その調製は、上述したシランカップリング剤水溶液の試料と同様の方法で行うことができる。そして、調製された該組成物は、貯蔵容器内で適当な期間保存される(保存工程)。 続いて、上記保存工程を開始した直後に、該組成物の少なくとも一部を試料として採取して(サンプリング工程)、上述したような分析方法により該試料を分析することができる(カラム通過工程、並びに、紫外可視吸収分析工程および/または質量分析工程)。これにより、調製直後の組成物に含有される加水分解生成物等の種類およびそれらの濃度についての情報を得ることができる。このような情報は、その後の保存工程において、絶縁基板22および櫛形電極24と感湿薄膜24との間の接着性を強化するのに有効な保存期間を推定する有用な情報となり得る。 上記サンプリング工程、カラム通過工程、並びに、紫外可視吸収分析工程および/または質量分析工程は、保存工程中に随時行われてもよい。そして、その分析結果に基づき、該組成物の接着性強化作用が有効であると判明した場合は、その組成物を湿度センサ素子20の形成に用いると決定し、後述する塗布工程において絶縁基板22および櫛形電極24の表面上に塗布することができる。また、その分析結果に基づき、該組成物の接着性強化作用が有効ではないと判明した場合は、その組成物を湿度センサ素子20にそのまま用いることなく、廃棄または別の用途に用いる等の決定をしてもよい。 なお、上記決定の具体的な判断基準、言い換えると接着性強化作用の有効性についての判断基準は、シランカップリング剤の種類、絶縁基板および櫛形電極ならびに感湿薄膜の構成材料などにより適宜定めることができる。具体的には、組成物中の各加水分解生成物等の濃度、それらの間の含有比率、又は、より縮合度の高い加水分解縮合物の検出などを判断基準として用いることができる。さらに、上記濃度もしくは含有比率の具体的な数値範囲については、経験則などに基づいて適宜定めることができる。 次いで、無機層としての櫛形電極24および絶縁基板22の露出した表面上に、上述したシランカップリング剤を酸水溶液に溶解させて得られた組成物を塗布する。その塗布方法は、従来用いられているものならば、特に限定されることなく採用することができ、例えば、スピンコート法もしくはスプレー法等を挙げることができる。 その後、該塗布された組成物を乾燥し、必要に応じて、従来方法により乾燥および/または加熱処理を施す。 次に、その上に感湿薄膜24を形成する。感湿薄膜24の構成材料としては、上記組成物の接着性強化の機能を有効に発揮できる有機化合物であって、従来用いられているものならば、特に限定されることなく用いることができる。耐水性を向上させる観点および感度を高める観点などから、有機高分子化合物であるとより好ましく、有機高分子電解質であるとさらに好ましく、第四級アミンポリマーであって対イオンにハロゲン化物イオンを有するポリマーであるアイオネンポリマーであると、特に好ましい。 この感湿薄膜24の形成方法としては、それぞれの構成材料によって適した従来の形成方法を採用することができる。例えば、アイオネンポリマーを用いた感湿薄膜の場合、以下のようにして形成される。 まず、アイオネンポリマーおよび架橋剤を含有する塗布液を調製する。塗布液は、アイオネンポリマーの1〜10質量%の水溶液またはアルコールなどの有機溶剤溶液もしくは混合溶剤の溶液とする。このとき、後に上記アイオネンポリマーを放射線、好ましくは紫外線照射により架橋させる場合には、重合開始剤(例えば水溶性のベンゾフェノン系の化合物)を0.03〜0.7質量%程度添加することが好ましい。 上記の塗布液を用いて、櫛形電極24が設けられた絶縁基板22上に感湿薄膜24を形成するが、塗布により形成することが好ましい。塗布方法としては、例えば浸漬(ディッピング)法、刷毛塗り法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スピナー塗布法、ディスペンス法、インクジェット法等種々の方法が使用でき、工程や製品の用途・種類等により選択すればよい。 このように塗膜を形成したのち、15〜100℃程度の温度で3〜15分程度乾燥し、架橋剤を予め塗布液に混合してある場合は60〜120℃の温度で10分〜3時間程度熱的に架橋し、さらに、その後に放射線架橋させる。放射線照射による架橋は、特に、紫外線照射によると好ましい。 紫外線照射による架橋方法は、公知の方法に従って行えばよい。通常、照射する紫外線強度は、50mW/cm2程度以上、照射量は200〜2500mJ/cm2程度とすればよい。また、紫外線源としては、水銀灯などの通常のものを用いればよい。 架橋剤としては、水酸基と反応し得る2官能性以上の置換基を有する化合物であればよく、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。具体的には、グリオキザール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどのジアルデヒド化合物、へキサメチロールメラミンなどのメチロール化合物、メラミン、ベンゾグアナミンなどのメラミン化合物、メラミン樹脂や尿素樹脂などのアミノ樹脂、リン酸ジクロリド化合物やN−エチルビス(2−クロロエチル)アミンなどのジハロゲン化合物、フタル酸、マロン酸、マレイン酸などのジカルボン酸およびその誘導体(酸塩化物や低級アルコールエステル)、エチル−1,2−ジイソシアナート、フェニルイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナートなどのイソシアナート化合物またはジイソシアナート化合物、キシリレンジイソシアナートプレポリマーやリジニソシアナートプレポリマーなどのポリイソシアナート類、ジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシド、クロロビスフェノリックエポキシ化合物などのジエポキシ化合物、テトラプロピルチタネートやトリプロポキシアルミニウムなどのTi、ZrやAlのアルコキシド化合物、イソプロポキシチタニウムステアレートなどの金属アシレート化合物、ジ−i−プロポキシ−ビス−(アセチルアセトン)チタネートやアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などの金属キレート化合物を挙げることができる。このほか、架橋剤としてはホルマリンを用いることができる。 このような架橋剤とアイオネンポリマーとの反応により、脱水または脱アルコールが起きて架橋が進行する。 また、このような架橋剤は、アイオネンポリマー中の水酸基に対し、0.1〜10倍モルの範囲の量で用いることが好ましく、塗布液に予め混合するか、1〜10質量%程度の溶液として用いられることが好ましい。このような溶液は、アイオネンポリマーの塗膜を浸漬するか、アイオネンポリマーの塗膜に塗布して用いられることから、アイオネンポリマーの貧溶媒(重合体の溶解度5質量%以下)を溶媒とすることが好ましい。例えば、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン等のケトン系溶剤等の溶媒である。 上記アイオネンポリマーの塗膜に架橋剤の溶液を塗布し、乾燥し、60〜120℃の温度で、10分〜3時間程度架橋反応させた後に紫外線照射することができる。 そして、各々の櫛形電極24の一端に電極端子26を従来の方法により取り付け、その電極端子26の各々に、半田28を用いてリード線27を接続し、電極材料の拡散防止のためのレジスト膜29を形成することにより、湿度センサ素子20が完成する。 以上、本実施形態の湿度センサ素子の製造方法について説明したが、本発明の湿度センサ素子の製造方法はこれに限定されるものではない。たとえば、上述したような分析方法を用いて分析された組成物を用いる以外は、従来の湿度センサ素子の製造方法と同様にして、湿度センサ素子を製造することができる。 また、たとえば、感湿薄膜を剥離可能なように薄膜形成用基板に塗布・乾燥した後、その感湿薄膜上に上述した組成物を塗布し、さらにその上に櫛形電極および絶縁基板をこの順番に積層し、薄膜形成用基板から剥離することによって、湿度センサ素子を製造することもできる。 これらの湿度センサ素子の製造方法を採用することにより、得られた湿度センサ素子は、無機層である電極もしくは絶縁基板などと有機層である感湿薄膜などとの間の界面が強化される、すなわち、それらの接着性が向上する。さらに、該製造方法においては、析出(沈殿)した加水分解縮合物を含まないシランカップリング剤水溶液を常に用いることができるので、得られた湿度センサ素子の上記界面に新たな凹凸が生じることを十分に抑制でき、接合状態にムラが生じ難い。 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。(実施例1)[加水分解生成物等の定性実験] まず、1.2体積%の酢酸と、1.0体積%の下記式(1)で表される3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503、信越化学工業株式会社製、商品名、以下化合物(1)という。)と、をイオン交換水に溶解してなる水溶液(A)を調製した。また、0.5体積%の酢酸と0.5体積%のTEAとをイオン交換水に溶解してなる水溶液70体積%と、アセトニトリル30体積%と、を混合することにより、混合液(B)を調製した。次いで、上記混合液(B)中に、水溶液(A)を10体積%となるように溶解して、試料(C)(pH=4.6)を得た。この試料(C)は、しばらくの間、室温で静置して、次の分離および分析に備えた。 次いで、GFCによる試料(C)の分離、紫外可視吸収分析および質量分析を、HP 1100シリーズLC/MSD(ヒューレット・パッカード社製、商品名)を用いて行った。まず、GFCにより水溶液(A)中の各加水分解生成物等を分離した。移動相には上述した混合液(B)と同じ組成を有する混合液(pH=4.6)を用い、その流速は1.0mL/分とした。カラムには、ポリビニルアルコール系の充填剤を採用しているGF−310−HQ(昭和電工株式会社製、商品名、直径7.6mm×長さ300mm)を用いた。またカラム温度は40℃に設定した。試料(C)の一回の注入量は25μLに設定した。 次いで、分離した各成分を、紫外可視吸収スペクトル分析法により検出した。検出器はダイオードアレイ検出器を用い、吸収波長を254nmに固定して、紫外可視吸収スペクトルの経時変化を観測した。その結果、保持時間9.9分後に第一ピーク、13.2分後に第二ピーク、および19.5分後に第三ピークが検出された。 次に、質量分析法により、各成分の定性分析を行った。イオン化法としてはAPCIを用い、イオン化モードをネガティブモードに設定し、フラグメンター電圧を50Vとし、m/zを110〜1200に走査させることにより、紫外可視吸収分析後の各成分の質量分析を行った。その結果、保持時間10.1分後に、m/z=265の強いフラグメントピークが観測された。また保持時間13.6分後に、m/z=453の強いフラグメントピークが、さらに、20.9分後に、m/z=623の強いフラグメントピークが認められた。 本実施例における質量分析法により得られるフラグメントピークは、陰イオン化された分子に帰するものであり、また、イオン化されることにより、周囲にある他の分子と配位的に結合したものとして現れることもある。 以上のことから、保持時間10分付近の成分は、化合物(1)の加水分解生成物(単量体)であり、保持時間13分付近の成分は、化合物(1)の加水分解縮合物(二量体)であり、保持時間20分付近の成分は、化合物(1)の加水分解縮合物(三量体)であることが明らかになった。これらの単量体、二量体および三量体は、下記式(2)〜(4)により表されるものと考えられる。[シランカップリング剤水溶液の経時変化試験] 続いて、上記と同じ組成を有する、すなわち化合物(1)を添加して得られたシランカップリング剤水溶液の試料(試料(D);調製後すぐに分析)、50℃で3時間保存したもの(試料(E))、80℃で3時間保存したもの(試料(F))、80℃で15時間保持したもの(試料(G))および室温で4日間保持したもの(試料(H))をそれぞれ、紫外可視吸収スペクトル分析および質量分析を行い、それらの経時変化を観測した。なお、紫外可視吸収スペクトル分析においては、254nmの紫外可視吸収波長について観測し、質量分析においては、SCANモードによる観測を行った。その観測結果を表1に示す。(実施例2) 上記水溶液(A)(pH=3.0)を50℃で1時間保存したもの、50℃で3時間保存したものおよび80℃で3時間保持したものをそれぞれ、上記混合液(B)中に10体積%となるように溶解して、試料(I)、(J)および(K)を得た。これらの試料について、実施例1と同様にして紫外可視吸収スペクトル分析および質量分析を行い、それらの経時変化を観測した。その結果を上記試料(D)の結果と併せて表2に示す。 なお、試料(K)については、試料中に白色の油状物が確認された。 これらの結果より、より長い時間またはより高い温度で保存すると、より分子量の小さい(より縮合度の小さい)加水分解生成物等が減少し、より分子量の大きい(より縮合度の大きい)加水分解生成物等が増加することが、明らかに確認された。(実施例3) 水溶液A中の化合物(1)に代えて、下記式(5)で表されるN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−573、信越化学工業株式会社製、商品名、以下化合物(5)という。)を用いて試料を調製した以外は、実施例2と同様にして、加水分解生成物等の定性実験を行った。その結果、保持時間12.5分付近のものが単量体であり、保持時間29分付近のものが二量体であることが分かった。 次いで、上記試料を用いて、実施例2と同様にしてシランカップリング剤水溶液の経時変化試験を行った。ここで、化合物(5)を添加して得られたシランカップリング剤水溶液の試料を試料(L)(pH=3.0;調製後すぐに分析)、50℃で1時間保存したものを試料(M)、50℃で3時間保存したものを試料(N)、および80℃で15時間保持したものを試料(O)とした。その結果を表2に示す。 この結果より、化合物(5)を用いたシランカップリング剤水溶液についても、より長い時間またはより高い温度で保存すると、より分子量の小さい(より縮合度の小さい)加水分解生成物等が減少し、より分子量の大きい(より縮合度の大きい)加水分解生成物等が増加することが、明らかに確認された。なお、試料(L)は保存後、白濁が確認され、高分子が析出していると考えられたので、分析を行わなかった。本発明のシランカップリング剤水溶液の分析方法に用いられる分離分析装置の概略模式図である。本発明のシランカップリング剤水溶液の分析方法にかかる紫外可視吸収スペクトル強度の経時変化を示す図である。本発明のシランカップリング剤水溶液の分析方法にかかる質量スペクトル強度の経時変化を示す図である。本発明にかかるシランカップリング剤水溶液中の試料濃度とSIMピーク面積との関係を示す図である。本発明の湿度センサ素子の製造方法により製造される湿度センサ素子の概略平面図である。符号の説明 1…移動相貯槽、2…送液ポンプ、3…試料注入孔、4…カラム、5…霧化部、6…コロナ放電電極、8…質量分析部、12…紫外可視吸収分析装置、15…質量分析装置、100…分離分析装置。 シランカップリング剤を酸水溶液中に溶解させて得られた試料を、水溶液を移動相に用いて、不活性多孔質固体が充填されたカラムに通過させるカラム通過工程と、 前記カラムを通過した試料を順次紫外可視吸収スペクトル分析法により分析する紫外可視吸収分析工程と、を含むことを特徴とするシランカップリング剤水溶液の分析方法。 前記移動相の前記水溶液として、−10〜250℃の温度で析出物が生じない水溶液を用いることを特徴とする請求項1記載のシランカップリング剤水溶液の分析方法。 シランカップリング剤を酸水溶液に溶解させて得られた試料を、−10〜250℃の温度で析出物が生じない水溶液を移動相に用いて、不活性多孔質固体が充填されたカラムに通過させるカラム通過工程と、 前記カラムを通過した試料を順次質量分析法により分析する質量分析工程と、を含むことを特徴とするシランカップリング剤水溶液の分析方法。 前記質量分析工程より前に、前記カラム通過工程を経て得られた試料を紫外可視吸収スペクトル分析法により分析する紫外可視吸収分析工程、をさらに含むことを特徴とする請求項3記載のシランカップリング剤水溶液の分析方法。 前記移動相の前記水溶液として、電解質水溶液を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のシランカップリング剤水溶液の分析方法。 前記電解質水溶液として、酢酸とトリエチルアミンとを添加してなる水溶液をを用いることを特徴とする請求項5記載のシランカップリング剤水溶液の分析方法。 前記移動層の前記水溶液として、有機溶媒をさらに含有する水溶液を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のシランカップリング剤水溶液の分析方法。 前記有機溶媒として、アセトニトリルを用いることを特徴とする請求項7記載のシランカップリング剤水溶液の分析方法。 湿度センサ素子の無機層と有機層とを接合すべきシランカップリング剤を酸水溶液に溶解させて得られた組成物の試料を、水溶液を移動相に用いて、不活性多孔質固体を充填したカラムに通過させるカラム通過工程と、 前記カラムを通過した試料を順次紫外可視吸収スペクトル分析法により分析する紫外可視吸収分析工程と、 前記紫外可視吸収分析工程により得られた前記試料の分析結果に基づき、前記組成物を湿度センサ素子の形成に用いるか否かを決定する判断工程と、 前記判断工程において、前記組成物を前記湿度センサ素子の形成に用いると決定した場合に、前記組成物を、前記湿度センサ素子を構成する無機層の有機層側の表面および/または前記有機層の前記無機層側の表面に塗布する塗布工程と、 前記無機層と前記有機層とを前記組成物を用いて接合する接合工程と、を含むことを特徴とする湿度センサ素子の製造方法。 湿度センサ素子の無機層と有機層とを接合すべきシランカップリング剤を酸水溶液に溶解させて得られた組成物の試料を、−10〜250℃の温度で析出物が生じない水溶液を移動相に用いて、不活性多孔質固体を充填したカラムに通過させるカラム通過工程と、 前記カラムを通過した試料を順次質量分析法により分析する質量分析工程と、 前記質量分析工程により得られた前記試料の分析結果に基づき、前記組成物を湿度センサ素子の形成に用いるか否かを決定する判断工程と、 前記判断工程において、前記組成物を前記湿度センサ素子の形成に用いると決定した場合に、前記組成物を、前記湿度センサ素子を構成する無機層の有機層側の表面および/または前記有機層の前記無機層側の表面に塗布する塗布工程と、 前記無機層と前記有機層とを前記組成物を用いて接合する接合工程と、を含むことを特徴とする湿度センサ素子の製造方法。 【課題】 シランカップリング剤の加水分解生成物およびその縮合体を定性および定量できるシランカップリング剤水溶液の分析方法を提供することを目的とする。【解決手段】 上記課題を解決するシランカップリング剤水溶液の分析方法は、シランカップリング剤を酸水溶液中に溶解させて得られた試料を、水溶液を移動相に用いて、不活性多孔質固体が充填されたカラムに通過させるカラム通過工程と、カラムを通過した試料を順次紫外可視吸収スペクトル分析法により分析する紫外可視吸収分析工程と、質量分析工程とを含むものである。【選択図】 なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る