タイトル: | 公開特許公報(A)_血液適合性評価方法 |
出願番号: | 2003302773 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,G01N33/49 |
島垣 昌明 山田 智子 JP 2005069966 公開特許公報(A) 20050317 2003302773 20030827 血液適合性評価方法 東レ株式会社 000003159 島垣 昌明 山田 智子 7G01N33/49 JPG01N33/49 A 3 1 OL 6 2G045 2G045AA02 2G045AA13 2G045BB14 2G045BB22 2G045BB34 2G045BB46 2G045BB48 2G045BB51 2G045CA02 2G045CA11 2G045CA24 2G045CA25 2G045CB17 2G045DA36 2G045FA16 2G045FB03 本発明は、医療用途に用いられる材料の血液適合性評価方法に関する。医療用途としては、血液透析、血漿分離、吸着、血液濾過、また、カテーテル類、血液回路、人工肺、人工心臓などが挙げられる。 従来、医療用途に用いられる材料の血液適合性評価方法には、ヒトの血液や、動物(犬、牛、馬、豚などの大型動物、ウサギ、モルモットの中型動物、マウス、ラットの小型動物など)の新鮮血液を用い、クエン酸やEDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)を添加後、血小板多血漿(PRP)を調製したり(例えば非特許文献1参照)、1から5U程度のヘパリンを混合して血液凝固活性を落とした状態で新鮮血液を被験材料に接触させて行っていた(例えば非特許文献2参照)。 しかしかかる方法では、血小板の付着性を見てもin vivoでの結果と大きく異なる場合が多く、また実験誤差が大きく安定的に評価できなかった。 また、抗凝固剤を全く含まない新鮮血を用いての解析が不可欠であろうとも言われていた(例えば非特許文献3参照)。高山崇ら 糖側鎖を有するポリスチレン誘導体の抗血小板粘着作用、生体材料、日本、1990年3月 VOL.8、3号 122頁田中 賢、新しい生体適合性材料の分子設計と人工臓器への応用[ online]、〔2002年9月5日検索〕http://www.es.hokudai.ac.jp/pdf/h12/tanaka02#49341.pdf片岡 一則、他2名、血小板血栓系の評価法、第15回医用高分子研究会・第6回医用材料研究会 講演要旨集、日本、1982年6月25日、P31-34、 本発明は、in vivoでの結果を好適に反映し、実験誤差が少なくしかも再現性良く結果を得ることができる、全血を用いた簡便な血液適合性評価方法を提供することを課題とする。 上記課題を解決するため、本発明は、下記の構成を有する。すなわち、 (1)10U/ml以上、100U/ml以下の濃度でヘパリンを混合した血液を、医療材料と接触させ、医療材料に血液成分の定量を行うことを特徴とする血液適合性評価方法。 (2)血液がヒト由来のものであることを特徴とする(1)記載の評価方法。 (3)血液成分が、血小板、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、vwf、白血球、赤血球およびコラーゲン(タイプ1および3)から選ばれた少なくとも一つであることを特徴とする(1)ないし(2)のいずれかに記載の評価方法。 本発明により、in vitroでの結果を好適に反映できる全血を用いた血液適合性評価方法を提供することができた。 以下本発明についてさらに詳細に説明する。 本発明は、使用時に血液と接触する医療用材料表面の血液適合性評価方法である。ここでは人工透析膜を例に説明するが、これに限定されるものではない。 本発明においては、10U/ml以上、100U/ml以下の濃度でヘパリンを混合した血液を用いる。この範囲の濃度とすることで、血液中血小板の活性化の程度を安定に保つことができ、in vitro実験でin vivoにおける結果を好適に反映した血液適合性評価を行うことが可能となるのである。 本発明に用いられる血液としては、ヒト由来のもの、犬や豚、馬、牛などの大型動物、ウサギなどの中型動物、ラットやマウスなどの小型動物の血液などが用いられるが、中でも、よりヒト臨床での結果を好適に反映するという点でヒト由来のものが好ましく用いられる。ペット用の医療用具材料については同様に、同じ種の動物から採取した血液を用いることが望ましい。 医療材料に付着した血液成分を定量等することにより評価するが、かかる血液成分としては、例えば、血小板、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、フォンウィルブラント因子(以下、vwfという)、白血球、赤血球およびコラーゲン(タイプ1および3)から選ばれた少なくとも一つを用いることが、血液凝固や血球の付着亢進による血液ラインの閉塞による医療事故を未然に防止できるという観点から好ましい。 フィブリノーゲン、フィブロネクチン、vwf、コラーゲンに対する抗体は市販のものを用いることができるし、白血球や赤血球、血小板については走査型電子顕微鏡(SEM)観察ことによって定量ができる。 また、上記タンパク質の定量方法として、例えば、凝固関連蛋白質の付着の程度は、検出したい蛋白質に対する抗体を用いてEIA法(酵素抗体法)により定量することができる。また、ラジオアイソトープ標識の物を用いたRIA法によることも可能である。そのほか、これらタンパク質を定量する方法、方式においてもヘパリン添加量が10U/ml以上100U/ml以下であれば採用することができる。 医療材料としては、例えば、人工腎臓に用いられる血液透析膜、血液濾過膜や、血漿分離膜、カテーテル類、血液回路等、また、人工肺、人工心臓、人工皮膚など血液に触れる場所で使用される物が挙げられる。これら医療材料を構成する材料としては、特に限定されず、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルスルホン、セルロース、酢酸セルロース、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアルキレングリコール、ポリシリコン、ポリビニルピロリドンなどのポリマーやその誘導体、混合物などが用いられる。 以下、具体的な評価方法について、例を挙げて説明する。 人工腎臓に用いられる中空糸膜を10cm長程度に切り、両面接着テープ等で、平らなフィルム上に貼り付ける。フィルムの材質は問わないが、ポリエチレンテレフタレート、ウレタン等の容易に手に入るものが好ましい。まずフィルムに両面接着テープを貼り、その上に中空糸膜数本を長さ方向をそろえ、貼り付ける。この中空糸膜の直径の約半分の厚みの隙間ゲージを中空糸膜の両側に置き、片歯カミソリまたは、ミクロトーム用の刃を用いて2枚にそぐように切り、中空糸膜の内表面を露出させる。このサンプルを例えば直径2cmの円形に打ち抜いて資料サンプルとする。直径2cm程度のチューブを用意し、その底に、上記で得られた資料サンプルを貼り付け、内側に血液を保持できるように加工する。中空糸膜状のものであれば上記手法によって加工可能であり、その他の形状のものでも、上記に倣って、血液接触面が上になるようにフィルム上に貼り付ければよい。 次に、シリンジにヘパリンの所定量をとり、ヘパリン濃度が10から100U/mlの濃度になるようヒトの血液を吸引する。シリンジに用いる針は20G以下の太いものを用い、20ml/min程度のゆっくりした速度で吸引することが、血液の活性化を起こしにくくより好ましい。ヘパリンと混和させ、室温に保ったまま、前述のチューブ内に1ml入れ、37℃で60min振盪させる。振盪速度はなるべく遅く、液が攪拌され、赤血球の沈降が起こらない程度に設定する。60min経過後、血液をデカンテーションで除き、イオン強度が生理条件と同じであるPBS(リン酸緩衝液)でリンスする。このとき、サンプルの中空糸膜内表面に直接液がかからないように縁から慎重に流し込む。3度洗い、2.5%グルタルアルデヒドPBS溶液をチューブ内に注入し、固定作業を行う。室温で、10時間以上行うことが好ましい。この後、水で洗浄し、凍結乾燥後、走査型電子顕微鏡で血小板や赤血球などの血球の付着状態や、フィブリンなどの凝固関連蛋白質の付着状態を観察する。 以下、実施例によってさらに詳細に説明する。 以下の方法により、モジュールを作成した。 ポリスルホン(アモコ社 Udel/P3500)16部、ポリビニルピロリドン(インターナショナルスペシャルプロダクツ社;以下ISP社と略す) K30 4部、ポリビニルピロリドン(ISP社K90)2部をジメチルアセトアミド77部、水1部を加熱溶解し、製膜原液とした。 原液粘度は50℃で1.4Pa・secであった。この原液を温度50℃の紡糸口金部へ送り、外径0.35mm、内径0.25mmの2重スリット管から芯液としてジメチルアセトアミド70部、水30部からなる溶液を吐出させ、中空糸状に形成させた後、温度30℃、露点28℃で調湿し、10ミクロン以下のドライミストを加えた250mmのドライゾーン雰囲気を経て、ジメチルアセトアミド20重量%、水80重量%からなる温度40℃の凝固浴を通過させ、80℃15分の水洗工程を通過させ、グリセリン40wt%を付着させ乾燥した後、巻き取り束とした。中空糸内径は200μm、膜厚40μmであった。膜面積が1.6m2になるように、ケースに充填し、ポッティングし、端部を両面開口させて、モジュールとした。モジュールを15分間水洗し、モジュール1を得た。 このモジュール1に水を充填した状態で、γ線照射(25KGy)を行ない滅菌した後、その中空糸膜を取り出して、以下の方法によりサンプルを作成した。 0.1mm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに両面接着テープを貼り、その上に中空糸膜5本を長さ方向をそろえ、貼り付けた。この中空糸膜の直径の約半分の厚みの隙間ゲージを中空糸膜の両側に置き、ミクロトーム用の刃を用いて2枚にそぐように切り、中空糸膜の内表面を露出させた。このフィルムを直径2cmの円形に打ち抜いて資料サンプルとした。18mmφのポリスチレンチューブの底に資料サンプルを貼り付け、内側に血液を保持できるように加工した。 このサンプルについて、以下の方法により、血液適合性を評価した。 シリンジ内にヘパリンを2500U入れ、次いで、ヒト血液50mlを吸引した(ヘパリン濃度50U/ml)。ヒト血液の吸引には、20Gの針を用い、20ml/minの速度で吸引した。ヘパリンと混和させ、室温に保ったまま、サンプルチューブ内に1ml入れ、37℃60min振盪速度120回/minで浸漬した。そのあと、血液をデカンテーションで除き、等張であるPBS(リン酸緩衝液)でリンスした。このとき、サンプルの中空糸膜内表面に直接液がかからないように注意して3度洗い、2.5%グルタルアルデヒドPBS溶液に浸漬し、室温で、24時間固定作業をおこなった。 次いで、水で洗浄し、凍結乾燥後、スパッタリングにより、Pt/Pdの薄膜をサンプルに形成させた。走査型電子顕微鏡(日立社製S800)にてサンプル表面を観察し(フィルムと円筒管の接着部は血液が溜まりやすいので、主としてフィルム中央部を3000倍で観察した)、1.12×104μm2の面積中の付着血小板数を10視野について数え、その平均値から103μm2あたりの血小板付着数を計算した。 その結果、血小板数は15(個/103μm2)であった。 このモジュールについて臨床使用した結果、76(個/103μm2)の血小板付着が見られた。 実施例1と同様にして得られたモジュールに、0.5wt%グリセリン水を充填し、γ線照射(25KGy)を行ない滅菌し、得られた膜を切り出し、サンプル調製した以外は、実施例1と同様にして、血液適合性の評価を行ったところ、血小板付着数は32(個/103μm2)であった。 このモジュールについて臨床使用した結果、135(個/103μm2)の血小板付着が見られた。 実施例1と同様にして得られたモジュールに、0.1wt%ポリビニルピロリドン(インターナショナルスペシャルプロダクツ社;以下ISP社と略す) K90、0.1%エタノール水溶液を充填し、γ線照射(25KGy)を行ない滅菌し、得られた膜を切り出し、サンプル調製した以外は実施例1と同様にして血液適合性評価を行ったところ、血小板数は0.8(個/103μm2)であった。 このモジュールを臨床使用した結果、3(個/103μm2)の血小板付着が見られた。 実施例1から3の結果について、血液適合性評価と臨床結果との相関を図1に示した。図中の数式は相関式であり、R2は相関係数である。1に近くきわめて良い相関を示した。 いずれも相関係数が高く、臨床での結果を非常に良く反映することがわかった。本発明実施例1における血液適合性評価での血小板付着数と、臨床使用した場合における血小板付着数との相関図を示す。10U/ml以上、100U/ml以下の濃度でヘパリンを混合した血液を、医療材料と接触させ、医療材料に付着した、血液成分の定量を行うことを特徴とする血液適合性評価方法。血液がヒト由来のものであることを特徴とする請求項1記載の血液適合性評価方法。血液成分が、血小板、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、フォンウィルブラント因子、白血球、赤血球およびコラーゲン(タイプ1および3)から選ばれた少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の血液適合性評価方法。 【課題】in vitroでの結果を好適に反映できる全血を用いた血液適合性評価方法を提供する。【解決手段】10U/ml以上100U/ml以下の濃度でヘパリンを混合した血液を医療材料に接触させ、医療材料に付着した、血液成分の定量を行うことを特徴とする血液適合性評価方法。【選択図】図1