| タイトル: | 公開特許公報(A)_被膜密着性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法 |
| 出願番号: | 2003301272 |
| 年次: | 2005 |
| IPC分類: | 7,G01N21/35,C21D9/46,C23C22/00,G01N21/67 |
藤村 亨 渡辺 誠 村木 峰男 JP 2005069930 公開特許公報(A) 20050317 2003301272 20030826 被膜密着性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法 JFEスチール株式会社 000001258 渡辺 望稔 100080159 三和 晴子 100090217 藤村 亨 渡辺 誠 村木 峰男 7G01N21/35C21D9/46C23C22/00G01N21/67 JPG01N21/35 ZC21D9/46 501BC23C22/00 AG01N21/67 C 5 OL 11 2G043 2G059 4K026 4K033 2G043AA03 2G043BA02 2G043CA07 2G043EA09 2G043EA13 2G043FA01 2G043HA01 2G043JA04 2G043KA01 2G043KA03 2G043LA02 2G043NA01 2G059AA01 2G059BB10 2G059CC01 2G059EE01 2G059EE12 2G059HH01 2G059JJ03 2G059MM01 4K026AA03 4K026BA08 4K026BB05 4K033RA04 4K033SA02 本発明は、方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、鋼板表面をrf−GDSにおいて地鉄までのスパッタ時間を測定し、かつ、鋼板表面をFT−IRで測定し、最終製品段階での被膜密着性を事前に評価し、最終製品の品質の向上または歩留まりの向上を図る評価方法およびこれを用いた被膜密着性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法に関する。 方向性電磁鋼板は脱炭焼純の過程において、SiO2を主成分とする酸化被膜が生成される。この後、フォルステライト(Mg2SiO4)被膜(グラス被膜)を作製し、さらに張力被膜をコーティングする。しかし、張力被膜の密着性には、SiO2を主成分とする酸化被膜の生成状態が影響を与えることが知られている。 従来、鋼板に塗布する前の焼純分離剤をKBr粉末と混ぜて錠剤とし、KBr錠剤の赤外線吸収スペクトルを測定し、3700cm−1の吸収ピークの面積あるいは高さから水和度(焼鈍分離剤の加熱前後の重さの変化)を求めることにより、その焼鈍分離剤で被膜形成して得られる方向性電磁鋼板の被膜密着性を評価していた(特許文献1参照)。しかし、試料の前処理に時間がかかり、分析結果を得るのに、時間がかかるという問題があった。また、赤外分光測定において、995cm−1の反射率ピーク強度比から、鋼板表面の酸化被膜の生成量を推定した例がある(特許文献2参照)が、被膜密着性は評価していない。さらに、グロー放電発光分光分析法において、鋼板表面の酸化層をSi強度/Mn強度比の積算強度により磁気特性を評価した例がある(特許文献3参照)が、被膜密着性は評価していないし、絶縁性被膜が帯電し、正常な測定ができていないという問題があった。特開2002−90300号公報特開平3−108639号公報特開平11−269543号公報 本発明は、前記の従来技術における問題点に鑑み、方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼純後の酸化被膜をrf−GDSとFT−IRで測定し、スパッタ時間と吸光度比の値を基に、鋼板上に被膜を形成する以前に被膜密着性の評価を行なうと共に、該評価に応じて脱炭焼鈍板の製造条件を制御して被膜密着性に優れた方向性電磁鋼板を製造することを目的とする。 すなわち、本発明は以下の各発明を提供する。(1)方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、鋼板表面を高周波グロー放電発光分光分析法(rf−GDS)で、地鉄までのスパッタ時間を測定し、かつ、フーリエ変換赤外線吸収スペクトル法(FT−IR)で、鋼板表面のFe2SiO4、SiO2およびFeSiO3の赤外線透過率のピークを測定して、各化合物の吸光度を算出し、各化合物の吸光度の合計に対するFe2SiO4の吸光度の比を算出し、得られるスパッタ時間とFe2SiO4の吸光度の比から、方向性電磁鋼板の最終製品の被膜密着性を評価する方向性電磁鋼板の評価方法。(2)上記(1)で得られるスパッタ時間およびFe2SiO4の吸光度の比と、脱炭焼鈍処理工程またはそれ以前の処理条件とを比較し、少なくとも1つの処理条件を制御して鋼板を処理して方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍板を製造し、その後表面被覆をして被膜密着性に優れた方向性電磁鋼板を製造する方向性電磁鋼板の製造方法。(3)上記(1)に記載の評価方法で測定したスパッタ時間とFe2SiO4の吸光度比とが、吸光度比が30%でスパッタ時間が66秒、吸光度比が65%でスパッタ時間が72秒である2点を結ぶ直線を含み該直線よりも下で、かつ、吸光度比が41%でスパッタ時間が55秒、吸光度比が65%でスパッタ時間が68秒である2点を結ぶ直線を含み該直線より上の領域に含まれることを特徴とする方向性電磁鋼板用脱炭焼鈍板。(4)上記(3)に記載の方向性電磁鋼板用脱炭焼鈍板を用いて得られる被膜密着性に優れた方向性電磁鋼板。(5)方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、鋼板表面を高周波グロー放電発光分光分析法(rf−GDS)で地鉄までのスパッタ時間を測定するスパッタ時間測定機と;鋼板表面に赤外線を照射する赤外線源と;鋼板からの反射赤外線を検出する分光器および検出器と;フーリエ変換赤外線吸収スペクトル法(FT−IR)で得られたFe2SiO4,SiO2,FeSiO3の赤外線透過率の各ピークから、各吸光度を算出し、各吸光度の合計に対するFe2SiO4の吸光度の比を算出し、該算出値と、スパッタ時間とから方向性電磁鋼板の最終製品の被膜密着性を評価するデータ処理装置とを有する方向性電磁鋼板の被膜密着性の評価装置。 本発明の評価方法は、方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、鋼板表面の絶縁性被膜を帯電なしに測定できるrf−GDSにおいて地鉄までのスパッタ時間を測定し、かつ、鋼板表面の酸化被膜中Fe2SiO4,SiO2,FeSiO3をFT−IRにおいて測定し、各吸光度の合計に対するFe2SiO4の吸光度の比を求め、最終製品の被膜密着性との相関を求めることにより、最終製品の良否を鋼板上に被膜を形成する以前に判定することができるので、最終製品の歩留まり向上に好適である。また、この方法を用いて、脱炭焼純処理条件を制御し、被膜密着性に優れた方向性電磁鋼板を製造することが可能である。 以下、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。[1]本発明の評価方法は、方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、鋼板表面の絶縁性被膜を帯電なしに測定できるrf−GDSにおいて地鉄までのスパッタ時間を測定し、かつ、鋼板表面に形成されるFe2SiO4,SiO2,FeSiO3の赤外光の透過率をFT−IRにより測定し、各吸光度を算出し、各吸光度の合計に対するFe2SiO4の吸光度の比を算出する。得られたスパッタ時間とFe2SiO4の吸光度の比から、方向性電磁鋼板の最終製品の被膜密着性を評価する方法である。ここで、測定のタイミングは脱炭焼鈍が終了し常温に冷却された後であっても良いし、脱炭焼鈍の所定の工程が実質的に終了しているとみなせる脱炭焼鈍中の任意の段階であっても良い。 一般に、方向性電磁鋼板の製造工程は、Si:2.5〜4.0質量%を含むスラブを熱延し、焼鈍と1回または中間焼鈍を含む2回以上の冷延により、最終板厚とされる。次いで、連続焼鈍炉において、水素ガス、または水素ガスと窒素ガスの混合雰囲気中で脱炭焼鈍を行ない、脱炭とともに、一次再結晶およびSiO2を主成分とする酸化被膜が生成される。その後、MgOなどからなる焼鈍分離剤を水に懸濁させスラリー状として、それを鋼板上に塗布し、乾燥後、コイル状に巻き取り、最終仕上げ焼鈍を行ない、フォルステライト(Mg2SiO4)被膜(グラス被膜)を作製し、さらにリン酸塩系を主体とする張力被膜をコーティングして、平坦化焼鈍されて最終製品とされる。 本発明者らは脱炭焼鈍後の鋼板表面の絶縁性被膜を帯電なしに測定できるrf−GDSにおいて地鉄までのスパッタ時間を測定し、かつ、鋼板表面からのFe2SiO4,SiO2,FeSiO3のFT−IRピーク(赤外透過率を示すピーク)から、各吸光度を算出し、各吸光度の合計に対するFe2SiO4の吸光度の比を算出し、該スパッタ時間と吸光度比で、方向性電磁鋼板の最終製品の被膜密着性を評価できることを発明した。 この相関関係を用いれば被膜形成以前の脱炭焼鈍板の段階で最終製品の被膜密着性の良・不良または製造条件の適否を評価できる。 評価に用いるスパッタ時間および吸光度比は、以下に例示する方法で求めることができるがこの方法には限定されない。例えば、脱炭焼鈍後の鋼板表面の組成が既知の標準物質や、純物質を用いて他の測定法で測定された値を比較に用いて各種補正を行なったスパッタ時間および吸光度比を算出してもよい。FT−IRピーク(赤外線透過率)の測定波長は、吸光度比には直接影響しないので、特に限定されないが、450〜1400cmの範囲から選択できる。FT−IRピークの測定は、鋼板表面の数点で測定し平均値を算出しても良い。スパッタ時間と吸光度比は鋼板表面の同じ場所で測定されても良いが、各測定は別々に所定の範囲から数点測定して平均しても良い。 図1はrf−GDS測定におけるFeのプロファイルを示す図である。図1において、鋼板表面から地鉄側のプロファイルの最高値と最小値の半価値をとるところまでの時間を地鉄までのスパッタ時間とする。 一方、図2は、FT−IR測定における透過率のピークを示す図である。図2において、特定の1つのピークの底辺同士を結ぶ基準線deをひいて、ピークbをとおる垂線と基準線deとの交点をaとし、横軸の交点をcとする。このとき、縦軸の透過率(%)の値をacおよびbcとすると、吸光度Aは、 A=log(ac/bc)−−−(1)と表される。そこで、Fe2SiO4,SiO2,FeSiO3それぞれの吸光度をAl,A2,A3とすると、Fe2SiO4の各吸光度の合計に対する吸光度比B(%)は、 B=Al×l00/(Al+A2+A3)−−−(2)と表される。 方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階での鋼板の断面を図3に示す。酸化被膜は、SiO2が主で、その他にFe2SiO4,FeSiO3を含んだものである。この3つの化合物の赤外線透過率を求め、上記のようにして算出される各化合物の吸光度から、全吸光度に対するFe2SiO4の吸光度の比を求めること、および、rf−GDSにより地鉄までのスパッタ時間を測定することにより、最終製品の被膜密着性の良、不良の評価をする方法が好ましい。評価方法の1例を挙げれば、スパッタ時間と吸光度比の組をX−Y軸としてプロットし、その後被膜を形成して被膜密着性を評価して、評価が良・優の場合を○で、評価が不良・劣の場合を×で表せば、X−Y平面上にある範囲で評価が○の区域と×の区域とが分かれるので、次に脱炭焼鈍後で評価したい鋼板表面のスパッタ時間と吸光度比とを得て、同じX−Y平面にプロットすれば、その点が位置する区域で評価が○か×であるかを判定することができる。[2]本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上述のようにして得られるスパッタ時間および吸光度比と、脱炭焼鈍処理工程またはそれ以前の処理条件とを比較し、少なくとも1つの処理条件を制御して鋼板を処理し被膜密着性に優れた方向性電磁鋼板を製造する方法である。 脱炭焼鈍処理条件としては、ガス流入以前の真空度、水素ガス、または水素ガスと窒素ガスの混合雰囲気の流量、比率、露点または脱炭処理の温度、時間等の処理条件を制御することができる。 その他の処理条件は、スラブ中のSi量またはその他の添加元素や不純物元素の量、スラブの熱延、焼鈍の条件や回数、冷間圧延条件や回数、最終板厚等の条件が挙げられる。 また、予め各種の処理条件を変化させた場合について、各スパッタ時間と各吸光度比の評価幅の変化を調査しておくことにより、処理条件の変動因子を把握することができる。 本発明の製造方法を用いれば、脱炭焼鈍処理等種々の製造条件を、最終製品を得る以前に評価でき各種の製造条件を制御することにより、被膜密着性に優れた方向性電磁鋼板の製造が可能となる。 本発明の製造方法は、製品の種類、品番、ロット毎に、本発明の評価方法を用いて評価して、少なくとも1つの処理条件を制御する方法でも良いが、試作品等で評価し、それによって処理条件を決定した後は決定した処理条件で製造し、評価しない製造方法も含まれる。 また、脱炭焼鈍後のFe2SiO4の吸光度比の値が30%のときスパッタ時間が66秒、65%のとき72秒である2点を結ぶ直線を含み該直線よりも下で、かつ、41%のときスパッタ時間が55秒、65%のとき68秒である2点を結ぶ直線を含み該直線よりも上の領域であれば、後述する実施例で示されるように、最終製品の張力被膜の被膜密着性に優れる方向性電磁鋼板が得られる。 したがって、このような領域のFe2SiO4の吸光度比とスパッタ時間を示す脱炭焼鈍板は、被膜密着性に優れる方向性電磁鋼板を製造するための中間体として有用である。本発明の評価方法を用いれば、脱炭焼鈍後の鋼板表面を本発明の評価方法で測定して、スパッタ時間と吸光度比が所定の領域内の数値を示すものだけを選択して、その後に鋼板上に被膜を形成すれば、最終製品の歩留まりを飛躍的に上げることができる。 上記の範囲の本発明のスパッタ時間と吸光度比を示す脱炭焼鈍板を用いて焼鈍分離剤の塗布以降の工程を行なって最終製品とすれば被膜密着性に優れた方向性電磁鋼板が得られる。[3]次に、本発明の方向性電磁鋼板の評価装置を説明する。 図4,5は本発明の方向性電磁鋼板の被膜密着性の評価装置の1実施例を示すが、本発明の評価装置はこれに限定されない。 図4において、1は脱炭焼鈍後の鋼板試料、2はグロー放電源で、これらはレンズ4と共にグロー放電管10を形成し、鋼板試料1は陰極となる。グロー放電管10は、グロー放電制御系13により制御される。一方グロー放電は、冷却系、ガス圧制御RF電源、DC電源を備えたグロー放電部15によって行なわれる。3は試料に当たったイオンスパッタリングによって表面原子の一部がプラズマ中に放出され、他の原子との衝突を繰り返して励起され、それが脱励起された際に放出される光である。光3はレンズ4を通って真空紫外域測定用真空容器11内の分光器12中に入る。分光器12中に入った光は回折格子6により回折されて分光され、それぞれ出口スリット7から光電子増倍管8等の検出器で検出される。検出された光の信号は、電気導線9により光強度測定回路16に入り測定される。測定されたデータは、少なくとも1つの元素量の該鋼板中の深さ方向の変化量として、データ処理装置17により処理され、スパッタ時間が算出される。データ処理装置は、制御回路、ローカルコンビュータ、パーソナルコンピュータを備えていて、グロー放電系13、グロー放電部15、真空制御系18の制御を行なっても良い。 また、図5において、21は赤外線源、22は赤外線、23、24,27はミラー、25は試料、26は反射赤外線、28は分光器と検出器、29はデータ処理装置である。 赤外線源21から発生した赤外線22は、ミラー23,24で反射して脱炭焼純後の鋼板表面25に入射して、反射し、反射赤外線26がミラー27で反射して分光器と検出器28に入り、そのデータが汎用コンピュータや計算チップ等のデータ処理装置29で処理され吸光度が、算出され、特定物質の全体の吸光度に対する比が求められる。この2つのデータから被膜密着性の良否を評価する。 測定試料1〜21は次のように作製した。脱炭焼鈍前処理として、中間焼鈍で表面に生成したSi濃度の低い部分を酸洗により0.05μm以上除去し、中間焼純時に生成した酸化物を0.01〜0.5g/m2残留させ、表面粗度を0.1〜0.7μmの範囲内に制御し、Si化合物を付着させることを適宜変化させた。その後、脱炭焼鈍処理条件として、水素雰囲気中で、露点を30〜70℃、均熱保持温度を820〜880℃、均熱保持時間を80〜130秒、加熱時、均熱保持および還元処理の雰囲気酸化性(pH20/pH2)を0.09〜0.70、650℃から均熱保持温度の10℃低いところまでの昇温速度を1〜30℃/秒、還元処理時間を5〜150秒と適宜変化させた。 この試料を用い、図4、5に示した評価装置を用いて、脱炭焼鈍後の鋼板表面を測定した。rf−GDS測定は、理学電機工業社製System3860型rf−GDSにおいて、高周波電力40W、Arガス流量250cc/min、スパッタ速度38nm/s(Fe換算)の条件で測定した。また、FT−IR測定は、Perkin Elmer社製1600型FT−IRにおいて、赤外線入射角70°の条件で、大気中で16回積算測定し、測定後CO2のピーク除去処理を行なった。 赤外線透過率を測定した結果の、450〜1400cm−1までの透過率の測定結果の1例を図6に示す。図中xyを基準線としてFe2SiO4とSiO2の吸光度を求めた。また、uvを基準線としてFeSiO3の吸光度を求めた。なお、xとyはそれぞれ1300cm−1,850cm−1近傍の透過率の一番高い位置とする。これは、測定において変動の小さい位置であることが明らかとなったので、基準位置とした。測定試料1〜21の結果を表1に示す。 その後、1)MgO:100質量部に対してTiO2を2質量部添加した焼鈍分離剤を水に懸濁させスラリー状として、それを鋼板上に10g/m2(両面)塗布し、乾燥後、コイル状に巻き取り、2)880℃で50時間の保定焼鈍を行なったのちに、引き続き1200℃で10時間の純化焼鈍を行ない、フォルステライト(Mg2SiO4)被膜(グラス被膜)を作製した。3)リン酸マグネシウム50質量部、コロイド状シリカ45質量部、無水クロム酸4.5質量部、アルミナ粉末0.5質量部の組成の張力被膜を10g/m2(両面)コーティングした。4)800℃で3分間、窒素雰囲気の条件で平坦化焼鈍して最終製品とした。5)得られた方向性電磁鋼板の表面の被膜不良発生率を目視により測定し、先に得られていたスパッタ時間と吸光度比Bの値と比較した。結果を表1に示す。なお、判定では、被膜不良発生率が0.02%未満の場合を良として○とし、0.02%以上の場合を不良として×で示した。図7にBを横軸、スパッタ時間を縦軸とした図を示す。 なお、目視により測定した被膜不良発生率とは、方向性電磁鋼板のコイルの幅方向に10分割、長手方向に1m毎に分割し、それぞれのメッシュでの被膜の点状被膜欠陥、色ムラ、はがれ等の欠陥を面積率で評価した値である。 図7より、Fe2SiO4の吸光度比B(%)の値が30%のときスパッタ時間が66秒、65%のとき72秒である2点を結ぶ直線を含み該直線よりも下で、かつ、41%のときスパッタ時間が55秒、65%のとき68秒である2点を結ぶ直線を含み該直線より上の領域において、判定が良である。したがって、脱炭焼鈍後の鋼板表面のrf−GDSにおける地鉄までのスパッタ時間を測定し、かつ、鋼板表面のFe2SiO4の吸光度比を所定の範囲とすれば、最終製品の被膜不良発生率を良とできることが予測され、最終製品が不良となるものと識別することが可能であった。 得られた最適な方向性電磁鋼板の処理条件は、以下に示すものであった。 脱炭焼純前処理条件としては、中間焼鈍で表面に生成したSi濃度の低い部分を酸洗により0.1μm以上除去し、中間焼鈍時に生成した酸化物を0.01〜0.3g/m2残留させ、表面粗度を0.1〜0.5μmの範囲内で制御し、Si化合物を付着させる。その後の脱炭焼鈍処理条件としては、水素雰囲気中で、露点59〜61℃、均熱保持温度820〜840℃、均熱保持時間92〜120秒、加熱時の雰囲気酸化性(分圧比pH20/pH2)を0.27〜0.50、均熱保持での雰囲気酸化性を加熱時よりも0.04〜0.20高くし、650℃から均熱温度の10℃低いところまでの昇温速度を1.4〜26℃/秒、還元処理を雰囲気酸化性0.2以下で、5〜100秒実施する製造方法であった。これにより、被膜密着性に優れた方向性電磁鋼板が製造できた。rf−GDS測定法による地鉄までの電解時間を測定プロファイルから求める1例を説明する概略図である。FT−IR測定法による赤外線透過率の測定ピークから吸光度の求め方の1例を説明する概略図である。方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼純後の段階での断面を示す模式的断面図である。本発明の評価方法のrf−GDS測定法に用いる測定装置を説明する図である。本発明の評価方法のFT−IR測定法に用いる測定装置を説明する図である。実施例の赤外線の波数450〜1400cm−1でのFT−IR測定法による赤外線の透過率を示すチャートである。表1のBとスパッタ時間との関係を示す図である。符号の説明1:鋼板試料2:グロー放電源3:光4:レンズ5:スリット6:回折格子7:出口スリット8:光電子増倍管9:電気導線10:グロー放電管11:真空紫外域測定用真空容器12:分光器13:グロー放電制御系15:グロー放電部16:光強度測定回路17:データ処理装置、18:真空制御系21:赤外線源22:赤外線23,24:ミラー25:試料26:反射赤外線27:ミラー28:分光器・検出器29:データ処理装置B:Fe2SiO4の吸光度比 方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、鋼板表面を高周波グロー放電発光分光分析法(rf−GDS)で、地鉄までのスパッタ時間を測定し、かつ、フーリエ変換赤外線吸収スペクトル法(FT−IR)で、鋼板表面のFe2SiO4、SiO2およびFeSiO3の赤外線透過率のピークを測定して、各化合物の吸光度を算出し、各化合物の吸光度の合計に対するFe2SiO4の吸光度の比を算出し、得られるスパッタ時間とFe2SiO4の吸光度の比から、方向性電磁鋼板の最終製品の被膜密着性を評価する方向性電磁鋼板の評価方法。 請求項1で得られるスパッタ時間およびFe2SiO4の吸光度の比と、脱炭焼鈍処理工程またはそれ以前の処理条件とを比較し、少なくとも1つの処理条件を制御して鋼板を処理して方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍板を製造し、その後表面被覆をして被膜密着性に優れた方向性電磁鋼板を製造する方向性電磁鋼板の製造方法。 請求項1に記載の評価方法で測定したスパッタ時間とFe2SiO4の吸光度比とが、吸光度比が30%でスパッタ時間が66秒、吸光度比が65%でスパッタ時間が72秒である2点を結ぶ直線を含み該直線よりも下で、かつ、吸光度比が41%でスパッタ時間が55秒、吸光度比が65%でスパッタ時間が68秒である2点を結ぶ直線を含み該直線より上の領域に含まれることを特徴とする方向性電磁鋼板用脱炭焼鈍板。 請求項3に記載の方向性電磁鋼板用脱炭焼鈍板を用いて得られる被膜密着性に優れた方向性電磁鋼板。 方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、鋼板表面を高周波グロー放電発光分光分析法(rf−GDS)で地鉄までのスパッタ時間を測定するスパッタ時間測定機と;鋼板表面に赤外線を照射する赤外線源と;鋼板からの反射赤外線を検出する分光器および検出器と;フーリエ変換赤外線吸収スペクトル法(FT−IR)で得られたFe2SiO4,SiO2,FeSiO3の赤外線透過率の各ピークから、各吸光度を算出し、各吸光度の合計に対するFe2SiO3の吸光度の比を算出し、該算出値と、スパッタ時間とから方向性電磁鋼板の最終製品の被膜密着性を評価するデータ処理装置とを有する方向性電磁鋼板の被膜密着性の評価装置。 【課題】方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍後の段階で、鋼板表面のrf−GDSでの地鉄までのスパッタ時間、かつ、FT−IRで吸光度を測定し、最終製品段階での被膜密着性を事前に評価し、最終製品の品質の向上または歩留まりの向上を図る評価方法およびこれを用いた被膜密着性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法を提供する。 【解決手段】方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍後の段階で、鋼板表面を高周波グロー放電発光分光分析法(rf−GDS)で、地鉄までのスパッタ時間を測定し、かつ、フーリエ変換赤外線吸収スペクトル法(FT−IR)で、鋼板表面のFe2SiO4、SiO2およびFeSiO3の赤外線透過率のピークを測定して、各化合物の吸光度を算出し、各化合物の吸光度の合計に対するFe2SiO4の吸光度の比を算出し、得られるスパッタ時間とFe2SiO4の吸光度の比から、方向性電磁鋼板の最終製品の被膜密着性を評価する方向性電磁鋼板の評価方法。【選択図】なし