タイトル: | 公開特許公報(A)_電子顕微鏡吸収電流像観察装置 |
出願番号: | 2003299477 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,H01J37/28,G01N23/225,H01J37/04,H01J37/244 |
大嶋 卓 牧野 浩士 遠山 博 品田 博之 JP 2005071775 公開特許公報(A) 20050317 2003299477 20030825 電子顕微鏡吸収電流像観察装置 株式会社日立製作所 000005108 株式会社日立ハイテクノロジーズ 501387839 作田 康夫 100075096 大嶋 卓 牧野 浩士 遠山 博 品田 博之 7H01J37/28G01N23/225H01J37/04H01J37/244 JPH01J37/28 BG01N23/225H01J37/04 AH01J37/244 13 1 OL 14 2G001 5C030 5C033 2G001AA03 2G001BA07 2G001BA11 2G001BA28 2G001CA03 2G001DA02 2G001EA05 2G001GA06 2G001GA09 2G001GA11 2G001HA13 2G001JA01 2G001KA03 2G001KA04 2G001LA11 2G001MA05 5C030AA02 5C030AB02 5C033NN10 5C033NP08 5C033UU01 5C033UU03 5C033UU04 5C033UU05 本発明は電子線応用装置に係わり、特に、電子顕微鏡を用いた試料の測定検査に好適な吸収電子像観察装置に関する。 電子線を用いたSEMによる半導体プロセスでの検査では、主に試料からの二次電子を計測する。しかしながら、幅が狭くて深い穴や溝など、あるいは表面の帯電が不均一な試料においては、プローブ電子を照射した表面からの二次電子が十分に計測できないという問題があった。これを解決するための従来の手段として、例えば、IEDMテクニカルダイジェスト(1999年)p483(K. Yamada, et al., IEDM Technical Digest, 1999, p483-486) 記載の吸収電流による試料計測法がある。この場合、図2のように連続した電子線1を試料4の表面に照射し、試料基板とアース電極0との間に電流電圧変換回路を挿入して吸収電流を測定していた。 試料のインピーダンスを正確に決定するためには、吸収電流の周波数特性を正確に測定する必要がある。しかし、正確な吸収電流値を求めるためには、絶縁膜などを介さずに直流信号を計測する必要があり、絶縁体基板や裏面酸化膜基板では正確な吸収電流の周波数特性が測定できないなど、従来の吸収電流測定の方法では、測定できる試料の構造に制限があった。 また、従来例では、試料と電流測定系が直接接続されているため、基板に高電圧を印加して入射電子線を減速するリターディング法が使えず、低加速で高分解能観察ができないという問題があった。これは、低加速領域では対物レンズにおける色収差が大きくなり解像度を劣化させる要因となるためである。リターディング法では、対物レンズ中は電子線の加速電圧を増加して色収差を低減し、試料入射直前で減速して所望の加速電圧とするので、低加速でかつ高分解能を実現するには必須の技術となっている。 更にまた、連続電子線1と電流電圧変換回路による電流測定では、構成するアンプのノイズを低減するために、測定された電流値を積分する必要があり、画像取得のための電子線スキャン速度を遅くする必要があった。このため、測定の高速化が困難であるという問題があった。 上記問題を解決するために、電子線を試料に照射して顕微鏡観察する電子顕微鏡装置において、電子線を変調する手段と、試料に吸収される電流の変調周波数成分を測定する手段とを設ける。 以上実施例を用いて説明して来たように、本発明を用いることによって、高速で高精度の吸収電流測定が行えるので、半導体の検査装置に用いるときわめて有用となる。 また、試料内部の情報が得られるために、従来の方法では非破壊で観察不可能であった内部構造や内部欠陥が非破壊で観察できるという効果がある。 また、水分を含んだ試料や電子衝撃に弱い試料でも低真空雰囲気で高分解能観察が可能となる。 図1に第1の実施例の概略を示す。走査型電子顕微鏡(SEM)の装置の中で、連続的な電子線1が発生しており、途中においたブランキング電極2とブランキングスリット21によりパルス電子線3に変換される。ブランキング電極2は並行平板形状であり、ブランキングアンプ7により発生したパルス状の電圧を印加し、片方をアース電位とし、もう一方に電圧印加、もしくは両方に別極性の電圧を印加する。このときの電圧は、電子線1が電圧印加で軌道を曲げ、スリット21を通過できなくなる条件であり、加速電圧とブランキング電極2の間にできる電界により決定される。パルスの周期は、パルス発生器7により決められ、ここから発生するパルス電圧をブランキングアンプ7により電圧増幅してブランキング電極2に印加する。試料4は試料ステージ5上に置かれる。 電子線が試料4へ入射すると、電子線の影響により試料には吸収電流が励起される。 試料と電気接続した配線は二つの経路に分流される。ここで、試料ステージ5が、絶縁が不十分な状態で接地されている場合、試料4に流れ込む吸収電流信号の経路ができてしまい、計測される信号強度が低下するので、試料ステージ5はアース端子から十分絶縁された状態にしておく必要がある。図1の場合は、リターディング電源13を介して接地されているので、試料4へ流れ込む電流経路ができる恐れはない。 負荷抵抗RLの役割は、プリアンプ8と試料4とを結ぶ電流経路に対して低周波電流用の電流パスを形成することである。従って、負荷抵抗RLは、プリアンプ8と試料4とを結ぶ電流経路に対して並列に配置され、一端が接地される。この結果、電子ビーム入射により試料に吸収された電流Iaは、負荷抵抗15により電圧−IaRLに変換される。図1の場合、接地端子と負荷抵抗RLとの間には特にリターディング電源13が配置されている。 もう一方は高周波信号取り出し手段14として、カップリングコンデンサCmを介してプリアンプ8に直列に接続される。この結果、負荷抵抗15に発生した電圧のうち周波数fBの高周波成分がプリアンプ8から取り出される。カップリングコンデンサの替わりに、電子線の変調周波数を含む電流成分を通過するハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタを配置しても良い。ハイパスフィルタを用いる場合には、カットオフ周波数が、電子線の変調周波数よりも小さなフィルタを用いる。 プリアンプ8の出力はバンドパスフィルタ9を経由し、SEMの画像入力へと導かれ、SEM装置のディスプレーに吸収電流像が表示される。なお、プリアンプ8の入力インピーダンスZinは負荷抵抗15の抵抗値RLより大きいことが望ましい。通常のSEM像観察を行う場合は、二次電子検出器11により二次電子強度を計測している。 図3(a)および図3(b)は、従来例と本実施例における信号強度とノイズ信号強度の関係を表したものである。図2のような従来の電流測定方法では、図3(a)の様に、測定系のノイズ信号が広い周波数分布を持つのに対して、吸収電流信号はスキャン速度とプローブ径で決まるカットオフ周波数fC付近から低周波域に分布している。ここで、電子ビームが試料に入射するところでの直径をプローブ径といい、試料上の1点から見ると、プローブ径/スキャン速度 に等しい幅の電子線パルスが入射したことになる。ノイズの中から吸収電流を選択的に測定するためには、fCを低くするように、ゆっくりスキャンし、ノイズ信号の高周波成分をカットするように、ローパスフィルタを入れる必要があった。たとえば、ローパスフィルタの時定数を10m秒で、512x512画素の画面のスキャンに約4分かけていた。ここでいう画素は、1画面を横と縦にそれぞれ細かく分けた最小単位であり、512x512の場合には、縦横ともに512個で、合計262144個の画素から成り立つ事を意味する。 さらに、絶縁体基板や直流の導通が取れない試料の場合、図3(a)中の点線のように、信号の低周波成分が欠落するので、感度はさらに悪く、しかもfCを低くすると信号強度がとれないため、S/N比の改善は期待できず、試料によっては観測不能となるという問題があった。これに対して、図1の本実施例を用いると、吸収電流信号は図3(b)の様に電子線のブランキング周波数fBを中心としており、中心周波数をfBに合わせたバンドパスフィルタを用いることで、効果的にノイズを低減でき、S/N比の高い信号が得られる。さらに直流成分は必要ないために、高速に測定できるという利点がある。 バンドパスフィルタとしては、多重帰還型、二段増幅型、バイカッド型等のQ値の高いものが良く、特にS/N比、高周波特性、Q値の点では二段増幅型が適している。一例を図12に示す。ここでは、中心周波数は1/(2πC(Rb Rc)1/2)であり、Q値はRa/(Rb Rc)1/2で決まる。例えば、Q値を100から300の間で選択するには、Raを可変にすればよい。また、中心周波数はC、Rb,Rc、により可変である。 また、バンドパスフィルタ9の出力をSEMで信号処理しているが、間に、検波回路、ピーク検出回路等の信号の振幅情報のみを取り出してSEMの画像信号として入力しても良い。 図4(a)、(b)、(c)は本実施例による観察例である。試料の断面構造は図4(a)のように、酸化物多結晶体が絶縁体基板に乗っているものである。部分的にAで示すような深い穴が開いている。これを通常の二次電子を検出するSEMで観察すると、酸化物表面がチャージアップしこれによる電界のため、穴の底で発生する二次電子は二次電子検出器で検出されにくくなるため、内部構造の情報は得られない。 図4(b)中の破線は、加速エネルギー3kV、プローブ電流10nAの電子照射の場合の、二次電子信号の分布を表している。一方、本実施例により高速で吸収電流増を計測した場合は、図4(b)の実線のように、穴底A点の微細構造を反映した信号のコントラストが得られている。なお、従来法による吸収電流像では絶縁体試料からの吸収電流信号のS/N比が低いので本測定時間では十分な画像は得られない。この場合の1画面測定は約30万画素で、1秒で行っている。吸収電流は、入射電子のプローブ電子から、放出された二次電子と反射電子を引いたものである。このことから、吸収電流像において微細構造が観察されたのは、二次電子検出器に到達しなかった二次電子や、反射電子の情報を持っていたことが原因とされる。また、図4(c)は、絶縁膜上のAl配線の吸収電流像観察結果の図解で、全体的に明るいコントラストのAl配線は、コンタクト領域を介して基板と導通が取れている状態を示している。一方、途中で断線し、酸化膜上に浮いているAl配線は暗いコントラストとして観察された。この場合、二次電子像には明瞭な違いは現れていない。主な原因としては、吸収電流の流れやすさの違いが吸収電流のコントラストとして観測されたものと説明される。この計測は、時間をかけて、例えば10倍の時間で観察すると、二次電子像と吸収電流像の差は小さくなることから、検出に必要な時定数を適宜選択する必要があることがわかった。本実施例を用いれば高速に吸収電流を検出できるので最適条件で測定できるという利点がある。この場合、表面の配線だったが、膜内部の配線が、ボイド等の欠陥により断線している場合でも、配線の表面に出ている部分を観察することで、断線箇所を見出すことができる。 高速な測定のためには、プリアンプ8と試料3の間の浮遊容量を低減すればよい。たとえば、検出モジュールを図5に示すように真空容器32内の試料3の近くに配置するとよい。このとき、外部への引き出し線は、リターディング電源、アンプ電源、信号線の3系統必要となる。図5(b)は検出モジュールの回路図を示す。プリアンプは、IC(AD 8001)と、ゲインを決めるフィードバック抵抗、電源ラインのバイパスコンデンサで構成されている。なお、動作が不安定になる場合は、位相補償用のコンデンサCPCを適宜挿入する。なお、CPCは高周波域での発信を防ぐために、ゲインを下げる位置にあれば良く、オペアンプに位相補償用の端子があればそこにつないでも良い。 ゲインは、10から10000倍の間で選ばれ、通常100から1000倍の間で用いる。なお、検出モジュール全体は真空雰囲気に入れて使うため、樹脂中に封入されている。ここで、プリアンプの特性は、入力換算ノイズ: 2nV/√Hz、入力抵抗:10MΩ、入力容量CinはICの入力容量と浮遊容量を含めて2.5pF程度となっている。 カップリングコンデンサCmの値は、測定系の容量以上で、プリアンプの入力インピーダンスZinより低いインピーダンスであればよいので、数pF以上、から選ばれ、100pFから10nFで用いる。負荷抵抗値RLは、感度と速度に効いてくるため必要に応じて値を選ぶ必要があり、より広い条件が必要な場合は、複数本設置しセレクタで抵抗値を変更するとよい。あるいは可変抵抗器を用いて、制御手段により可変抵抗器の値を制御しても良い。 次に負荷抵抗値RLを選ぶ条件について説明する。先に、図3(b)を用いて説明したように、測定感度は測定系のS/N比と発生電圧で決定される。発生電圧は、電子線のプローブ電流IPとすると、連続電子線の場合はプリアンプに入る信号強度はIPRLに比例する。しかし、周波数fBで変調されているため、RLの値を、浮遊容量を含めたプリアンプ8の入力容量Cinによるインピーダンス 1/(2πCinfB)より大きくしても感度は上がらない。従って、RLの上限はおよそ1/(2πCinfB)である。例えば、この系で、fB1MHzのときは、RLの最適値は約64kΩとなる。また、電子銃として大電流のプローブが得られるものを使うと信号強度は大きくなる。この場合、プローブ電流IPに対してプリアンプの入力電圧の最適範囲からRLの上限が決まり、例えばIp=100nAの場合、10MΩ以下が望ましい。一方、高速に測定しようとする場合、負荷抵抗値RL の最適値とそのときの測定速度をプローブ電流IPごとに記載したものを表1に示す。 測定の高速限界は、負荷抵抗値RLと入力容量Cinによる時定数で決まり、f=1/(2πCinRL)となる。従って、負荷抵抗RLが小さいほど高周波特性は良くなる。しかし、感度が下がるため、負荷抵抗RLを最適化して測定系のノイズの10倍程度の信号量を確保する必要がある。ノイズ電圧vnoiseは、式1で決まる。ここで、プリアンプの入力換算ノイズvpre=2nV/√Hz、バンドパスフィルタ9のQ値は100程度である。測定信号がこのノイズより10倍以上あればよいので、次の条件が得られる。ここで、信号とノイズの比、すなわちS/N比を10倍としたが、これは測定の精度の目安を10%程度としたためであり、より高精度が要求される場合はより大きい値をもちいればよい。IPRL ≧ 2x10−9√fB この条件と、先述のRLの上限1/(2πCinfB)から導かれた最適負荷抵抗、および、このときの上限周波数、および、上限周波数で512x512画素を1画面測定する時間が表1に示されている。プローブ電流を大きくするときわめて高速の測定が可能となることがわかる。なお、この最適値は、必要なS/N比、系の浮遊容量、プリアンプ特性により異なるので、適応する系毎に上述のように最適値を決めて用いれば最も効果が得られる。 なお、ここでは高速化を狙ってバンドパスフィルタを用いたが、図7に示すようにロックインアンプを用い、パルス発生器7からの周波数fBを参照信号としてプリアンプ出力を位相敏感検波すると、バンドパスフィルタのQ値が100以上、最大で10の7乗程度得られるので、きわめてS/N比が良くかつ精度の高い吸収電流測定が行える。ただし、Q値を大きくするためには、ロックインアンプのローパスフィルタの時定数を大きくとることがかぎとなるので、測定速度は遅い方が効果的である。 本実施例では、負荷抵抗15として抵抗RLを用いたが、高周波電流が入ったときに所望の電圧が発生すれば良く、例えば図10のようにコイルを用いてもあるいはコイルと抵抗を直列もしくは並列に組み合わせても同様の効果がある。このときには、先述の抵抗値の代わりに、抵抗とコイルの合成インピーダンスを用いる。また、本実施例では、プリアンプ8として非反転型の電圧増幅回路を用いたが、信号の高周波成分を増幅する作用のものがあれば良く、例えば、図10中にあるように、反転型で電流電圧変換回路を用いても同様の効果がある。ここで反転型とは、入力電圧信号の極性に対して出力信号の極性が逆の場合を言う。 この場合、アンプの入力インピーダンスが低いので、試料が大きい場合などに、浮遊容量の影響を低減できるという利点がある。また、本実施例では試料にリターディング電圧を印加する系を用いたが、リターディング電圧をかけない場合には、負荷抵抗15から直接接地して用いれば良く、本実施例と同様の効果がある。またこの場合、カップリングコンデンサは省略しても良い。 また、本実施例ではパルス電子ビーム3を取り扱ったが、電子線による電流の基本周波数成分が同じであれば、必ずしもon-offのパルスである必要は無く、プローブ電流量を周波数fBで変調したものでも同様の効果がある。例えば、電子源としてWフィラメント、LaB6加熱電子源を用い、電子銃の内部の電極電圧を変調しても良い。例えば、コンデンサレンズの電流値を変調しても良く、この場合、試料表面上に電子ビームが小さいスポットを形成しているときがonで、ビームの電流密度が下がり、スポットも広がった状態がoffに相当する。あるいは、電子源として光入射で電子を発生する光励起電子源の場合は、光強度により電子線を変調することができるので、電子光学系でブランキングするための装置が不要となる。 図6に第2の実施例の概略を示す。 半導体ウェハを試料として、低損傷で測定するために加速電圧を1kV程度と低加速化した走査型電子顕微鏡である。電子源22はZr/O/Wを用いた拡散補給型電子源であり、引き出し電極23との間に引き出し電圧V1を印加し、電子エネルギーV0で連続電子線1を発生している。この制御は電子源制御電源24により行われ、SEMコントローラ25と情報通信を行っている。連続電子線1はコンデンサレンズ27によりレンズ作用を受けブランキングスリット21付近に焦点を結ぶ。ブランキング電極2にはパルス発生器7で発生するパルスを元にブランキングアンプ6により所望の電圧に変換されブランキング電圧が印加される。ブランキングする周波数fB、電圧値、等の情報はSEMコントローラ25と通信によりやり取りされている。なお、画像取得時の電子線スキャンと次のスキャンとの間のブランキング信号もSEMコントローラ25から発せられる。ここで発生したパルス電子線3は、偏向器28によりスキャン信号に応じて曲げられ、対物レンズ31により収束されて試料4に入射する。試料4にはリターディング電源13によりリターディング電圧Vrが印加されているので、試料に入射するときの電子線のエネルギーは、V0−Vrとなり、−50Vから、−3kVの範囲で用いられ、特に−800Vから−1.2kVの範囲が良好である。また、対物レンズ中の色収差低減のためにブースタ電極34が設けられている。 試料4から発生した二次電子10はリターディング電圧による電界のために対物レンズ31中を追加し、ExBフィルタ33により曲げられ、二次電子検出器11に到達する。二次電子検出器11の入り口にはエネルギーフィルタ12が設けられ、必要があれば二次電子のエネルギー分布を測定したり、一定エネルギー以上の電子のみを測定できるようになっている。また、試料から発生した反射電子30は二次電子よりもエネルギーが高いので、より上方に導かれ、反射電子検出器29により検出される。また、試料4で吸収された電子は、吸収電流として負荷抵抗15を介してリターディング電源13に流れ込む成分と、カップリングコンデンサを介してプリアンプ8で検出される成分に分かれる。プリアンプからの出力の周波数fB成分がバンドパスフィルタ9により分離され、画像信号としてSEMコントローラ25で処理される。バンドパスフィルタの中心周波数はブランキング周波数fBと一致するようにSEMコントローラ25により設定される。この装置で得られる二次電子信号、反射電子信号、吸収電流信号はそれぞれ単独で、あるいは適宜演算されて、顕微鏡像、検査結果像、検出値等としてディスプレー26で表示される。 この場合、試料4として直径300mmのSiウェハを観察し、吸収電流測定により、深い穴底の電気的不良や、配線の断線、ボイドなどの観察が可能となる。特に、反射電子信号で区別が付きやすい試料の場合は、吸収電流による信号と、反射電子検出器で検出した信号を比較することで新たな情報が得られる。この比較は、SEMコントローラ25内で行なうが、別に信号処理装置を設けても良く、その場合、より高速化に適した構成が得られる。例えば、側壁の角度などの情報が得られるという利点がある。側壁の角度により良品と不良品の判定が分かれる場合に極めて有用となるばかりでなく、レジストやエッチングのプロセス条件に対するフィードバックがすばやくなる。従来は、側壁の角度情報を得るにはサンプルを切り出し、断面形状を観察する必要があったため、数時間以上の時間と多くの手間を要していたためである。なお、試料4の大きさは、試料ステージ5、試料移動機構35、真空容器32の形状を適したものにすることであらゆるサイズに適応可能である。 なおこの構成では試料3は、対物レンズ31、真空容器32、試料ステージ5との間の浮遊容量が数百pF以上と大きい。このため、図8に示すように、試料ステージ5の乗っている試料移動機構35との間に、ガイシを入れ、さらに試料ステージ5の下面の金属電極を抵抗RRを介して接地すると容量低減に有効である。この場合、図5に示すものと同じ検出回路を用い、512x512画素の画面を測定する時間は、プローブ電流IP=1nAの場合10秒、IP=10nAの場合1秒、IP=100nAの場合0.1秒であった。 また、試料の浮遊容量の大きな系に対して図10(a)に示す検出回路を用いると、プリアンプの入力インピーダンスが低くとも感度があるので浮遊容量の影響を低減し、測定の高速化が可能となる。センス抵抗RSは、100Ωから1GΩ程度の範囲で、プローブ電流量から選択すればよい。また、この場合速度の上限は構成するアンプの特性とセンス抵抗RSで決まり、この抵抗が小さいほど高速となる。しかし、信号強度が下がるため、アンプのノイズとの強度比でセンス抵抗RSの最小値が決まる。この関係は実施例1で述べたものと同様の方法で、最適値を見つけて適用される。好適には、100Ωから、100kΩが用いられる。なお、プリアンプ8は、センス抵抗RSを小さくしたために出力電圧が小さくなる場合には、図10(b)のように、2段目に電圧増幅器を追加すると外部からのノイズの影響を低減できて効果的である。 図9には本実施例による測定の一例を示す。断面構造が図9(a)の半導体試料を本実施例により測定すると、図9(b)に示す等価回路となる。信号源は、入射電子による高周波低電流源であり、この強さは、プローブ電流から二次電子と反射電子を引いた値となる。電流計は、本実施例による電流測定方法である。ここでの電圧計は、二次電子検出器11とエネルギーフィルタ12との組み合わせにより、二次電子発生表面の電位を計測することで可能となる。各コンデンサおよび抵抗は、図9(a)中のコンタクト領域の残膜の容量C1とリーク抵抗R1、およびp-n接合の容量C2と抵抗R2である。ここでは、接合容量C2は十分大きいため、等価回路のインピーダンスで支配的なファクターは、C1とR1である。特に、コンタクト面積:0.2μm2の試料では不良部の残膜厚さが1nm〜20nmと分布していた。残膜の比誘電率=3から、特定の周波数で測定した吸収電流量と電位からインピーダンスを求め、図9(c)実線に示す関係に当てはめることで、残った膜厚を非破壊で知ることができた。なお、インピーダンスの実測値は電位の高周波成分を吸収電流で割って得られる。一方、図9(c)のインピーダンスと周波数fの関係は、R (1+4π2f2C12R12)1/2/(1+4π2f2C12R12)と表わされ、特に高周波側の単調減少する直線領域は1/(2πf C1 R1)で近似されるので、周波数fと測定インピーダンスとR1からC1の値を求めることができる。また、C1=残膜の比誘電率×真空中の誘電率×コンタクト面積/残膜の厚さ の関係から測定結果より残膜の厚さを知ることができる。また、別のコンタクト領域では、周波数を2点以上変えてインピーダンスを測定し、図9(c)の破線の特性を得た。この結果から、接合のリーク抵抗R2が低下し100MΩ程度となっているが、コンタクトの残膜が20nmあることがわかる。このような演算は、図6に示したSEMの場合は、SEMコントローラ25により実行される。SEMコントローラ25にはメモリが内蔵されており、メモリ内には、図9(c)のような関係を記述するデータテーブルが格納されている。データテーブルが大規模になる場合には、専用のデータベースをSEM本体とは別に設けて、データテーブルを読み出すようにしても良い。 以上のことから、本発明を適用することにより内部の電気的情報が非破壊で検査できるという利点がある。また、本発明を適用することにより、絶縁体膜や絶縁体基板などが間にあっても高周波信号は容量結合により伝播するので、吸収電流の測定が可能である。 図11は、第3の実施例の概略図である。本実施例の吸収電流観測装置は、低い真空度で試料を観測するための装置であり、水分を含んだ生体やたんぱく質等の有機物、ないしは絶縁体試料を観測するのに好適である。本実施例では、真空試料室の圧力が270Paから大気圧までの圧力を低真空と称するものとする。加速電圧は1kVから30kVである。 吸収電流測定は従来の方法でも真空度の影響を受けないが、感度が低く時間がかかったので実用的ではなく、生体などの観察にはもっぱら反射電子を計測していた。この場合、反射電子が試料室のガスと衝突して失われてゆくので、実用的に計測できるガス圧は270Pa程度が上限であった。これに対して、本発明を適用すれば、吸収電流の測定が高感度で高速に行えるため、270Pa以上で実用的な観察が可能となった。 なお、試料室の圧力は270Paから大気圧付近で用いると効果的であるが、このために、対物レンズ31の穴を細くかつ長くし、SEM鏡筒下部に真空排気路を設け、パルス電子線のガスによる散乱を極力抑えた構造としている。また、不活性ガスボンベを備え、不活性ガスを試料室に導入して電子線による電離などの起こりにくい雰囲気を作ることは有効である。SEM鏡筒は図1と同じ構成であり、パルス電子ビーム3を収束させて試料4に入射する。試料ステージ5上面の導電体層から信号を引き出し、負荷抵抗15と、カップリングコンデンサ、プリアンプ8により吸収電流信号を計測している。 従来までは、水を含んだ試料観察には、DMSOなどによる置換や、試料冷却が必要であったが、本発明を使えば、試料室の圧力を高くできるのでこれらを不要とし、より自然の状態に近い試料観察が可能となる。また、前述のように、試料にリターディング電圧を印加しても測定可能であるため、電子線衝撃に弱い試料でも、1kV程度の低加速電子を用いて高分解能観察が可能となるので、たんぱく質や、有機物の構造の観察に有用である。本発明の実施例1の説明図。従来例の説明図。本発明の実施例1の説明図。本発明の実施例1の説明図。本発明の実施例1の説明図。本発明の実施例2の説明図。本発明の実施例2の説明図。本発明の実施例2の説明図。本発明の実施例2の説明図。本発明の実施例2の説明図。本発明の実施例3の説明図。バンドパスフィルタの例。符号の説明1 電子線、2ブランキング電極、3パルス電子線、4試料、5試料ステージ、6ブランキングアンプ、7パルス発生回路、8プリアンプ、9バンドパスフィルタ、10二次電子、11二次電子検出器、12エネルギーフィルタ、13リターディング電源、14高周波信号取り出し手段、15負荷抵抗、21ブランキングスリット、22電子源、23引出し電圧、24電子源制御電源、25SEMコントローラ、26ディスプレー、27コンデンサレンズ、28偏向器、29反射電子検出器、30反射電子、31対物レンズ、32真空容器、33E×Bフィルタ、34ブースタ電極、35移動機構。 電子線を試料に照射して顕微鏡観察する電子顕微鏡装置において、 前記電子線を所定の周波数により変調する手段と、 該変調された電子線を前記試料に照射する手段と、 前記照射された電子線により試料に励起された電流の変調周波数成分を測定する手段とを設けたことを特徴とする電子顕微鏡吸収電流像観察装置。 請求項1に記載の電子顕微鏡吸収電流像観察装置において、 前記試料と前記変調周波数成分を測定する手段との間に設けられた、前記励起電流を前記変調周波数を含む高周波成分と、該高周波成分よりも周波数の低い低周波成分とに分流する分流手段とを備えることを特徴とする電子顕微鏡吸収電流像観察装置。 請求項2に記載の電子顕微鏡吸収電流像観察装置において、前記低周波成分がDC成分を含むことを特徴とする電子顕微鏡電流像観察装置。 請求項2に記載の電子顕微鏡吸収電流像観察装置において、 前記分流手段と、変調周波数成分を測定する手段との間に設けられたプリアンプとを有し、 前記分流手段として、該プリアンプの入力端子と前記試料とを結ぶ電流経路上に挿入されたコンデンサと、該コンデンサと前記試料とを結ぶ電流経路に対し並列に挿入された抵抗とを有することを特徴とする電子顕微鏡電流像観察装置。 請求項2に記載の電子顕微鏡吸収電流像観察装置において、 前記分流手段と、変調周波数成分を測定する手段との間に設けられたプリアンプとを有し、 前記分流手段として、該プリアンプの入力端子と前記試料とを結ぶ電流経路上に挿入されたコンデンサと、該コンデンサと前記試料とを結ぶ電流経路に対し並列に挿入されたコイルとを有することを特徴とする電子顕微鏡電流像観察装置。 請求項5に記載の電子顕微鏡電流像観察装置において、前記抵抗が可変抵抗器または異なる抵抗値を有する複数の抵抗器であり、更に該可変抵抗器の抵抗値または該複数の抵抗器を選択する選択手段を備えることを特徴とする電子顕微鏡電流像観察装置。 請求項1に記載の電子顕微鏡吸収電流像観察装置において、前記電子線を変調する手段は、 パルス発生装置と、パルスアンプとブランキング電極と、ブランキングスリットとを含むことを特徴とする電子顕微鏡吸収電流像観察装置。 請求項1に記載の電子顕微鏡吸収電流像観察装置において、前記試料に励起された電流の変調周波数成分を測定する手段は、 試料とアースもしくはリターディング電源との間に直列に挿入された負荷抵抗と、試料に接続された高周波信号取り出し手段と、該高周波信号取り出し手段の出力端子に接続されたプリアンプと、該プリアンプ出力から前記変調周波数成分を取り出すバンドパスフィルタとを含むことを特徴とする電子顕微鏡吸収電流像観察装置。 請求項1に記載の電子顕微鏡吸収電流像観察装置において、前記変調周波数を変える手段を備えることを特徴とする電子顕微鏡吸収電流像観察装置。 請求項8に記載の電子顕微鏡吸収電流像観察装置において、前記負荷抵抗は、抵抗もしくは、直列もしくは並列接続された抵抗及びコイルからなることを特徴とする電子顕微鏡吸収電流像観察装置。 請求項8に記載の電子顕微鏡吸収電流像観察装置において、前記高周波信号取り出し手段と、カップリングコンデンサであることを特徴とする電子顕微鏡吸収電流像観察装置。 請求項1に記載の電子顕微鏡吸収電流像観察装置を用いた吸収電流観察方法において、前記試料270Pa以上の圧力で観察することを特徴とする吸収電流観察方法。 請求項1に記載の電子顕微鏡吸収電流像観察装置を用いた吸収電流観察方法において、前記電子線のプローブ電流は10nA以上であることを特徴とする、吸収電流観察方法。 【課題】 従来のSEMでは、連続電子線を用いていたので、高速測定や絶縁体を介しての正確な測定は困難だった。また、電流測定時に試料に電圧を印加できなかった。【解決手段】 電子線をパルス変調化し、試料からの信号の高周波成分を取り出すことにより、試料に吸収される電子を高速で精度良く検出する。【効果】 精度良く、高速の吸収電流測定が可能となる。高機能の検査装置が得られる。【選択図】 図1