生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_2,6−ジイソプロピルアニリンの精製方法
出願番号:2003299427
年次:2005
IPC分類:7,C07C209/84,C07C211/45


特許情報キャッシュ

長井 弘行 山口 均 JP 2005068066 公開特許公報(A) 20050317 2003299427 20030825 2,6−ジイソプロピルアニリンの精製方法 エア・ウォーター・ケミカル株式会社 398037527 中嶋 重光 100075524 山口 和 100070493 長井 弘行 山口 均 7C07C209/84C07C211/45 JPC07C209/84C07C211/45 4 1 OL 9 4H006 4H006AA02 4H006AD15 4H006BB14 4H006BB25 本発明は、2,6−ジイソプロピルアニリンの精製方法に関する。さらに詳しくは、2−イソプロピル−6−n−プロピルアニリンを不純物として含有する2,6−ジイソプロピルアニリンから、2−イソプロピル−6−n−プロピルアニリン含量の少ない純度の高められた2,6−ジイソプロピルアニリンを取得するのに好適な2,6−ジイソプロピルアニリンの精製方法に関する。 2,6−ジイソプロピルアニリンは、種々の医薬品の中間原料として有用な化合物であることが知られている。例えば、2,6−ジイソプロピルアニリンを用いてACAT阻害剤、脂質代謝作用剤、抗腫瘍剤などの医薬品を合成した例が報告されている。 一方、2,6−ジイソプロピルアニリンは市場で入手することは可能であるが、市販品は無視できない量の2−イソプロピル−6−n−プロピルアニリンを不純物として含んでいるため、高純度品が必要な上記のような医薬品原料として使用するには、これら不純物含量を低減させることが求められていた。ところが2−イソプロピル−6−n−プロピルアニリンと2,6−ジイソプロピルアニリンの沸点差は小さく、蒸留精製することは困難であった。 2,6−ジイソプロピルアニリンの精製方法に関しては、鉱酸で処理して塩とし、これを有機溶媒中で再結晶することによって精製する方法はすでに知られている(特許文献1参照)。この文献によれば、鉱酸として各種のものが使用できることが記載されているが、具体的には硫酸を用いた精製例のみが報告されている。このような鉱酸を使用する方法に代えて、アルキル又はアリールスルホン酸を使用する方法も知られている(特許文献2参照)。 ところが本発明者らの検討によれば、これら文献に記載されている硫酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸などを使用し、有機溶媒中で再結晶する方法においては、2−イソプロピル−6−n−プロピルアニリンの除去率と単位容積当りの処理量を勘案した総合的な精製効率が、未だ充分であるとは言えないものであった。特開平7−316129号公報特開2000−103766号公報 そこで本発明者らは、2−イソプロピル−6−n−プロピルアニリンを不純物として含有する2,6−ジイソプロピルアニリンから、2−イソプロピル−6−n−プロピルアニリンの含有率を効率よく低減せしめ、工業的に有利に2,6−ジイソプロピルアニリンを精製することができる方法について検討を行なった。その結果、2−イソプロピル−6−n−プロピルアニリンの除去率が高く、しかも塩形成操作において基質濃度を高めることが可能であり、また晶出段階においては結晶の分離操作が容易となるような精製方法を見出すに至った。したがって本発明の目的は、改善された2,6−ジイソプロピルアニリンの精製方法を提供することにある。 すなわち本発明は、2,6−ジイソプロピルアニリンを、少なくとも5重量%の水の共存下、水溶性有機溶媒中で塩酸塩として結晶化させることを特徴とする2,6−ジイソプロピルアニリンの精製方法である。 本発明によれば、安価な塩酸を用いて2−イソプロピル−6−n−プロピルアニリンを含有する2,6−ジイソプロピルアニリンから、効率よく2−イソプロピル−6−n−プロピルアニリン含量が低減された2,6−ジイソプロピルアニリンを容易に得ることができる。 本発明において適用することが好ましい原料2,6−ジイソプロピルアニリンは、2−イソプロピル−6−n−プロピルアニリンや2,4−ジイソプロピルアニリンなどの異性体不純物を含有するものであって、どのような方法で製造されたものであってもよい。とくに2−イソプロピル−6−n−プロピルアニリンを不純物として含有するものに適用するのが好ましい。例えば2−イソプロピル−6−n−プロピルアニリンを1〜10重量%含有する2,6−ジイソプロピルアニリンに適用するのが好ましく、現在市販の2,6−ジイソプロピルアニリンの多くがこれに該当する。 本発明においては、このような不純物含有の2,6−ジイソプロピルアニリンを含水有機溶媒中、塩酸塩の形で結晶化させるものである。使用可能な有機溶媒は、水と混和性のあるものが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどの低級脂肪族アルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテルなどを好適例としてあげることができる。常圧での操作性や加熱温度、経済性などを考慮すると、安価でかつ水との混合溶媒としての溶解特性に優れたイソプロパノールの使用が最も好ましい。 また水は、結晶系全体の5重量%以上となるような割合で共存させるが、あまり多量に使用すると、後述するような結晶分離温度における2,6−ジイソプロピルアニリン塩酸塩の溶解度が高くなりすぎて回収率が低下することになるので、生産効率及びコスト面から結晶系全体の50重量%以下程度とするのが好ましい。このように水を適量使用することにより、加温時の2,6−ジイソプロピルアニリン塩酸塩の溶解度を高めることができ、したがって容積当りの処理量を高めることができる。尚、水を使用せずに塩化水素ガスで塩酸塩を形成する場合には、アルコール溶媒を使用する場合においてこれを塩素化することがあり、また反応条件によってはジフェニルアミン類が副生することがあるので、いずれにしても好ましくない。このような目的に使用される水は、塩酸塩生成に使用される塩酸の濃度及びその使用量を調節することにより充当することができるが、勿論別途添加して調節することもできる。 2,6−ジイソプロピルアニリン塩酸塩は、2、6−ジイソプロピルアニリンと塩酸を混合することによって容易に調製することができる。この際塩酸の使用量が2、6−ジイソプロピルアニリンに対して等モルより少ないと、結晶回収操作において2、6−ジイソプロピルアニリンのロスが大きくなるので、少なくとも等モル以上の塩酸を使用することが望ましいが、過剰に用いると廃液処理の負荷が増すので、2,6−ジイソプロピルアニリンに対し、理論量の1〜1.1倍程度の使用量とするのが好ましい。また塩酸の濃度は、多くの場合35%濃塩酸の使用で充分であるが、これより濃度の低い塩酸を使用してもよい。また部分的に塩化水素ガスを使用することもできる。 塩酸塩形成及び結晶化操作は、以下の方法によって行なうことができる。例えば反応槽兼用の結晶槽に水溶性有機溶媒及び原料2,6−ジイソプロピルアニリンを仕込み、そこに塩酸を滴下した後加温し、2,6−ジイソプロピルアニリン塩酸塩の生成及びその溶液の調製を行なう。この場合、2,6−ジイソプロピルアニリン塩酸塩は完全に溶解している必要はなく、例えば全体の10重量%以上が溶解するようにすればよい。水溶性有機溶媒の使用量は、2,6−ジイソプロピルアニリンの濃度が20〜50重量%、とくに30〜45重量%となるような割合で使用するのがよい。また水に対し、0.5〜50重量倍、とくに2〜20重量倍となるような割合で使用するのがよい。水溶性有機溶媒と水の混合割合を適当な範囲に調整することにより、加温時において2,6−ジイソプロピルアニリン塩酸塩を多量に溶解させることができ、また冷却時において純度の高められた嵩密度の大きい粒状の2,6−ジイソプロピルアニリン塩酸塩を収率よく生成させることができる。この場合の加熱温度としては、有機溶媒が還流する温度であることが好ましく、例えば有機溶媒がイソプロピルアルコールの場合は85℃近辺である。勿論、反応釜を密閉してさらに温度を上げても差し支えない。また冷却温度としては、経済性、精製効果及び回収率を考慮すると、0〜10℃程度とするのが好ましい。 このような粒状の2,6−ジイソプロピルアニリン塩酸塩の形成を可能にすることにより、結晶化系における基質濃度を高めても高粘度にならずに操作が可能であり、冷却時において釜壁に結晶が付着する現象(スケーリング)が回避でき、また結晶分離操作も容易となるので結晶回収操作の生産性を著しく高めることができる。 このような結晶回収操作により得られる粒状2,6−ジイソプロピルアニリン塩酸塩は、原料に比して2−イソプロピル−6−n−プロピルアニリン分が顕著に低減されており、そのままアルカリ処理することにより高純度2,6−ジイソプロピルアニリンとして回収することができるが、さらに2−イソプロピル−6−n−プロピルアニリン含量を低減させるためには再結晶を行なってもよい。この場合の再結晶は、回収率を重視する場合には、非水系で行なうのが好ましく、例えば上述したアルコールや環状エーテル溶媒中で行なうのが好ましい。非水系有機溶媒中における再結晶の場合には、加温下における2,6−ジイソプロピルアニリン塩酸塩の溶解度もそれほど大きくはないので、常圧の操作においては基質濃度を高めることは難しい。溶媒の種類にもよるが、例えば溶媒としてイソプロピルアルコールを使用する場合には、再結晶系において10重量%程度の濃度となるような量の粒状2,6−ジイソプロピルアニリン塩酸塩を使用してその沸点近辺まで加温して溶解させ、しかる後0〜10℃程度に冷却して該塩酸塩を析出させて分離すればよい。アルコール系溶媒による再結晶時には、溶媒の塩素化等の副反応を伴うので、加圧条件で温度を100℃以上にするのは好ましくない。 最終的には、得られる高純度の2,6−ジイソプロピルアニリン塩酸塩に、化学量論量のアルカリを作用させることにより、高純度の2,6−ジイソプロピルアニリンを回収することができる。アルカリ処理に際しては、必要に応じ非水溶性有機溶媒で抽出操作を行ない、該有機溶媒を蒸留除去することにより、2,6−ジイソプロピルアニリン中の水分を効率よく減らすことができる。 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。 [実施例1] 2−イソプロピル−6−n−プロピルアニリン(以下、INPAという)含量6.57重量%、その他不純物含量1.85重量%である純度91.58重量%の2,6−ジイソプロピルアニリン(以下、DIPAという)300g(全体の38.6重量%)及びイソプロピルアルコール(以下、IPAという)300gの混合物に35%塩酸176.27g(HClとして粗DIPAと等モル、水として14,67重量%)を1時間かけて滴下した後83℃に加熱し、粗DIPA塩酸塩の一部懸濁溶液を形成させた。これを放冷し、さらに0〜5℃まで冷却してDIPA塩酸塩を析出させた。濾過によりDIPA塩酸塩を採取し、IPA200gで洗浄した後乾燥させ、294.04gの粒状結晶を得た。DIPA塩酸塩のスラリーは粘調ではなく、粒状結晶の濾別は容易であった。 DIPA基準の回収率は87.86%、DIPA塩酸塩の純度は98.98重量%、INPA塩酸塩の含量は0.84重量%であり、INPAの除去率は87.2%であった。この結晶の顕微鏡写真を図1に示す。 上記DIPA塩酸塩の粒状結晶20gをIPA180gに加え、82.5℃で溶解した後0〜5℃に冷却て得られたDIPA塩酸塩をIPA20gで洗浄した後乾燥させ、16.38gの精製DIPAを得た。この精製操作における回収率は81.9%、精製DIPA塩酸塩の純度は99.54重量%、INPA塩酸塩の含量は0.34重量%であり、その除去率は67.6%であった。 [実施例2] 実施例1において、35%塩酸の使用量を193.92g(HClとして粗DIPAの1.1倍モル、水として15.88重量%)に変更した以外は、実施例1と同様に行ない、295.68gの粒状結晶を得た。DIPA基準の回収率は88.43%、DIPA塩酸塩の純度は99.06重量%、INPA塩酸塩の含量は0.78重量%であり、INPAの除去率は88.1%であった。 [実施例3] INPA含量9.82重量%、その他不純物2.03重量%の純度88.15重量%のDIPA255g(全体の38.65重量%)及びイソプロピルアルコール(以下、IPAという)255gの混合物に35%塩酸149.7g(HClとして粗DIPAと等モル、水として14,67重量%)を1時間かけて滴下した後83℃に加熱し、粗DIPA塩酸塩の一部懸濁溶液を形成させた。これを放冷し、さらに0〜5℃まで冷却してDIPA塩酸塩を析出させた。濾過によりDIPA塩酸塩を採取し、IPA255gで洗浄した後乾燥させ、231gの粒状結晶を得た。DIPA基準の回収率は85.24%、DIPA塩酸塩の純度は98.28重量%、INPA塩酸塩の含量は1.12重量%であり、INPAの除去率は88.59%であった。 [比較例1] INPA含量5.05重量%、その他不純物含量1.40重量%である純度93.55重量%のDIPA50g(全体の5.9%)及びIPA786gの混合物に98%硫酸14.1g(粗DIPAの0.9当量)を1時間かけて滴下した後還流保持し、0〜5℃まで5℃/時間の冷却速度で冷却させてDIPA硫酸塩を析出させた。濾過によりDIPA硫酸塩を採取し、IPA40gで洗浄した後乾燥させ、48.0gの針状結晶を得た。DIPA基準の回収率は75.2%、INPA硫酸塩の含量は1.58%であり、INPAの除去率は68.7%であった。この結晶の顕微鏡写真を図2に示す。 上記DIPA硫酸塩の針状結晶のうち20gをIPA180gに加え、還流下溶解した後、5℃/時間の冷却速度で0〜5℃に冷却して得られたDIPA硫酸塩をIPA20gで洗浄した後乾燥させ、17,3gの精製DIPA硫酸塩を得た。この精製操作における回収率は86.6%、精製DIPA硫酸塩の純度は98.97%、INPA硫酸塩の含量は0.98%であり、その除去率は38.0%であった。 上記DIPA硫酸塩の針状結晶のうち20gにつき、冷却を氷冷とした以外は、上記同様の精製を試みたところ、フラスコの壁に結晶が付着し、回収できなかった。 [比較例2] DIPAの重量を100g(全体の11.0%)、硫酸重量を11.0gにした以外は、比較例1と同様の操作を試みたところ、スラリーが粘性を帯び、攪拌できなかった。 [比較例3] INPA含量6.57重量%、その他不純物含量1.85重量%である純度91.58重量%のDIPA17.7g(全体の14.3%)及び酢酸エチル90.2gの混合物にメタンスルホン酸15.8g(粗DIPAと当モル)を10分かけて滴下した後還流保持し、0〜5℃まで冷却させてDIPAメタンスルホン酸塩を析出させた。濾過によりDIPAメタンスルホン酸塩を採取し、酢酸エチル15gで洗浄した後乾燥させ、24.2gの粉状結晶を得た。DIPA基準の回収率は88.5%、INPAメタンスルホン酸塩の含量は3.61%であり、INPAの除去率は45.1%であった。この結晶の顕微鏡写真を図3に示す。 [比較例4] 酢酸エチル量を37.3gにした以外は、比較例3と全く同じ操作(DIPAが全体の25重量%)を行なったところ、スラリーが固まり、攪拌できなかった。 [比較例5] INPA含量6.57重量%、その他不純物含量1.85重量%である純度91.58重量%のDIPA17.7g(全体の14.0%)を、酢酸エチル90.2gとp−トルエンスルホン酸無水物19.0g(粗DIPAと当モル)の混合物に10分かけて滴下した後還流保持し、0〜5℃まで冷却させてDIPAp−トルエンスルホン酸塩を析出させた。濾過によりDIPAp−トルエンスルホン酸塩を採取し、酢酸エチル15gで洗浄した後乾燥させ、33.6gの針状結晶を得た。DIPA基準の回収率は96.3%、INPAp−トルエンスルホン酸塩の含量は5.36%であり、INPAの除去率は18.4%であった。この結晶の顕微鏡写真を図4に示す。 [比較例6] 酢酸エチル量を51.8gにした以外は、比較例5と全く同じ操作(DIPAが全体の20重量%)を行なったところ、スラリーが固まり、攪拌できなかった。実施例で得られた2,6−ジイソプロピルアニリン塩酸塩の粒状結晶の顕微鏡写真である。比較例で得られた2,6−ジイソプロピルアニリン硫酸塩の針状結晶の顕微鏡写真である。比較例で得られた2,6−ジイソプロピルアニリンメタンスルホン酸塩の粉末状結晶の顕微鏡写真である。比較例で得られた2,6−ジイソプロピルアニリンp−トルエンスルホン酸塩の針状結晶の顕微鏡写真である。 2,6−ジイソプロピルアニリンを、少なくとも5重量%の水の共存下、水溶性有機溶媒中で塩酸塩として結晶化させることを特徴とする2,6−ジイソプロピルアニリンの精製方法。 2,6−ジイソプロピルアニリン塩酸塩を、粒状結晶として晶出させることを特徴とする請求項1記載の2,6−ジイソプロピルアニリンの精製方法。 有機溶媒が、低級脂肪族アルコール及び環状エーテルから選ばれるものである請求項1又は2記載の2,6−ジイソプロピルアニリンの精製方法。 結晶系における2,6−ジイソプロピルアニリンの濃度が、20〜50重量%である請求項1〜3記載の2,6−ジイソプロピルアニリンの精製方法。 【課題】 2−イソプロピル−6−n−プロピルアニリン(INPA)を不純物として含有する2,6−ジイソプロピルアニリン(DIPA)から、INPA含量の少ない純度の高められたDIPAを取得するのに好適なDIPAの精製方法に関する。【解決手段】 INPA含有のDIPAを、少なくとも5重量%の水の共存下、イソプロピルアルコールのような有機溶媒中、塩酸塩結晶として回収する。粒状結晶として析出させることにより、高基質濃度での結晶回収操作が可能となる。【選択図】 図1


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