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タイトル:公開特許公報(A)_歯科用成形体及び歯科用樹脂材料
出願番号:2003296111
年次:2005
IPC分類:7,A61K6/00,A61K6/087


特許情報キャッシュ

明田 喜仁 北川 和男 仙波 健 JP 2005060353 公開特許公報(A) 20050310 2003296111 20030820 歯科用成形体及び歯科用樹脂材料 株式会社ニッシン 391011490 北川 和男 394024411 仙波 健 502085053 京都市 596053068 武石 靖彦 100068032 村田 紀子 100080333 明田 喜仁 北川 和男 仙波 健 7A61K6/00A61K6/087 JPA61K6/00 DA61K6/087 3 OL 8 4C089 4C089AA02 4C089AA03 4C089AA09 4C089BE07 4C089CA04 本発明は、ビスフェノールAの溶出の恐れがなく、安全性に優れ、しかも暫間被覆冠、義歯床、人工歯などに要求される種々の必要物性をも満たすことが可能な歯科用成形体に関するものである。又、本発明は、ビスフェノールAの問題が無いポリカーボネート代替原料として利用でき、義歯床、暫間被覆冠、人工歯、歯科矯正具などの製造に適した歯科用樹脂材料に関するものでもある。 これまで歯科の分野では、義歯床、暫間被覆冠、人工歯等を製造するための原料としてポリカーボネートが使用されてきている。ポリカーボネートは、芳香族ポリ炭酸エステル結合を有した熱可塑性プラスチックであり、その理工学特性(機械的特性、耐熱性、耐寒性など)が優れている。そして最近では、比較的低い溶融粘度でありながら高い機械的強度を有した義歯用及び義歯床用材料として、ポリカーボネートに溶融液晶性ポリエステルが繊維状に一体化した樹脂も提案されている(特許文献1参照)。特開2002−173408号公報 ところが、近年、環境ホルモン問題としてビスフェノールA等による内分泌攪乱作用が指摘され、歯科分野にて広く使用されているポリカーボネートが、i)ビスフェノールAを出発物質として合成されること、ii)加水分解によりビスフェノールAを生じること等の理由から問題視されるようになっており、義歯床、暫間被覆冠、人工歯としての性能を満たし、かつビスフェノールAの問題が無いポリカーボネート代替原料が要望されている。 内分泌攪乱作用についての問題が一切ない代替材料の1つとして、一般工業分野において塩化ビニルの代替品として建材やフィルム等に使用されつつあり、医療分野では透析装置のハウジングやコネクター等に使用されているグリコール変性PET(テレフタル酸、エチレングリコール、1,4‐シクロヘキサンジメタノール(CHDM)の共重合ポリエステル樹脂で、PET−Gと呼ばれるもの)が挙げられるが、PET−Gを義歯床として使用する場合、耐熱性の改善と機械的物性の向上が望まれる。すなわち、PET−Gのガラス転移点は80℃であり、義歯床裏装時には100℃の沸騰水中で義歯を作製するために100℃の環境下で使用しても外観に変化のないことが要求されるが、この温度で使用した場合に義歯床が白濁する恐れがある。また、PET−Gにより作製された義歯床はアクリル樹脂製の義歯床相当の機械的物性を有しているが、ポリカーボネート製義歯床並みのさらに高い機械的物性が望まれている。 本発明は、上述の問題点を解決し、内分泌攪乱作用を引き起こす可能性のあるビスフェノールAの溶出が一切なく、安全性に優れ、しかも義歯床、暫間被覆冠、人工歯などに要求される種々の必要物性を充分に満たすことが可能な歯科用成形体並びに歯科用樹脂材料を提供することを課題とする。 本発明者は、内分泌攪乱作用についての問題が一切ない種々の代替材料について詳細な検討を行った結果、PET−GにPEN(ポリエチレンナフタレート)を特定割合でブレンドすることにより、義歯床などの歯科用成形体として必要とされる各種物性(安全性、機械的強度、耐熱性、接着性、調色性等)を充分に満たし、実際の使用においても問題のない義歯床が得られることを見出して、本発明を完成した。 前記課題を解決可能な本発明の歯科用成形体は、口腔内において使用される所定形状を有した成形物で、当該成形物が、ポリエチレンテレフタレート(PET)構成単位とポリ‐1,4‐ジメチレンシクロヘキサンテレフタレート(PCT)構成単位とから成る共重合ポリエステル樹脂とポリエチレンナフタレートとを20〜90:80〜10の重量比率にて含むポリエステル樹脂材料を主成分とするものであることを特徴とする。 又、本発明は、上記の特徴を有した歯科用成形体において、前記歯科用成形体が、義歯床、暫間被覆冠、人工歯及び歯科矯正具からなる群より選ばれた形態を有するものであることを特徴とするものでもある。 更に本発明の歯科用樹脂材料は、口腔内において使用される義歯床等の歯科用成形物を製造する際に使用されるものであって、当該樹脂材料の主成分が、ポリエチレンテレフタレート(PET)構成単位とポリ‐1,4‐ジメチレンシクロヘキサンテレフタレート(PCT)構成単位とから成る共重合ポリエステル樹脂と、ポリエチレンナフタレート(PEN)とを20〜90:80〜10の重量比率にて含むポリエステル樹脂組成物であることを特徴とするものであり、この樹脂材料はペレット状のものが一般的であるがこれに限定されるものではなく、シート状体等であっても良い。 本発明の歯科用成形体及び歯科用樹脂材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)構成単位とポリ‐1,4‐ジメチレンシクロヘキサンテレフタレート(PCT)構成単位とから成る共重合ポリエステル樹脂(PET−G)とポリエチレンナフタレートとから構成されているために、従来のポリカーボネートのような使用時におけるビスフェノールAの溶出や発生の恐れについての問題が一切なく、安全性の点で非常に優れている。しかも、PET−GへのPENのブレンドによって耐熱性が改良されており、100℃での使用も可能であり、機械的物性の点においても強度(曲げ強度)がPET−Gの約1.5倍にまで向上している。又、本発明の歯科用成形体及び歯科用樹脂材料は、透明性を損なうことなく、義歯床として望まれる色調に調色可能であり、アクリル樹脂との接着性も良好である。その上、成形性も良好であり、汎用成形機を用いて暫間被覆冠、義歯床、人工歯、歯科用矯正具などの種々の形態の成形品に容易に加工できるという利点もある。 以下、本発明の歯科用成形体並びに歯科用樹脂材料について説明する。 本発明の歯科用成形体を構成する樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)構成単位とポリ‐1,4‐ジメチレンシクロヘキサンテレフタレート(PCT)構成単位とから成る共重合ポリエステル樹脂(PET−G)とポリエチレンナフタレート(PEN)とを混合して得られたものであり、PET−Gは、テレフタル酸とエチレングリコールと1,4‐シクロヘキサンジメタノール(CHDM)との共重合体で、約80℃のガラス転移点を有しており、PENは、エチレングリコールとナフタレンジカルボン酸(NDCA)との共重合体で、約125℃のガラス転移点を有している。前者の共重合ポリエステル樹脂(コポリエステル)は、これまでの一般的なPETとは異なり、CHDMにより非晶質に改質されているために、各種の成形方法において高い透明性及び機械的物性が得られるという特性を有している。一方、後者の共重合ポリエステル樹脂は、NDCAにより耐熱性、機械的強度、透明性が優れるという特性を有している。 本発明の歯科用成形体並びに歯科用樹脂材料におけるPET−G:PENの重量比率は20〜90:80〜10であり、好ましくは30〜70:70〜30であり、PET−Gの重量比率が上記割合よりも小さい場合(PENの重量比率が上記割合よりも大きい場合)には耐熱性は良好であるがアクリル樹脂との接着性が悪くなり、逆に、PET−Gの重量比率が上記割合よりも大きい場合(PENの重量比率が上記割合よりも小さい場合)にはアクリル樹脂との接着性は良好であるが耐熱性が悪くなる。 本発明では、PET−GとPENとの特定配合により接着性と耐熱性の両方の性能が発揮されるが、PETとPENとの配合においては配合比率を変化させてもアクリル樹脂への良好な接着性は得られない。 本発明の歯科用成形体並びに歯科用樹脂材料には、PET−GとPEN以外の第三成分として、各種ポリエステル樹脂が添加可能であり、その種類が特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリエチレンナフタレート(PEN)の共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが好ましい。 本発明の歯科用成形体を製造するのに使用される本発明の歯科用樹脂材料中に含まれるPET−G及びPENとしては、ペレット等の形態で市販されている製品が利用でき、これらの樹脂を用いて暫間被覆冠を成形する際には、インジェクション成形法、コンプレッション成形法及び真空成形法のいずれもが使用できる。一方、義歯床や人工歯を成形する際には、インジェクション成形法又はコンプレッション成形法が適している。上記の組成より成るポリエステル樹脂混合物は成形性も良いので、各成形方法における成形条件は一般的な条件で良く、汎用の成形機を用いて容易に加工可能である。 射出成形法により本発明品の歯科用成形体を製造する場合、まず、ペレット状原料をメーカー指示に従って乾燥させた後、汎用型射出成形機のバレル温度を200〜310℃に設定し、原料を軟化、溶融させ射出成形を行う。上記温度設定範囲の如何なる条件においても良好な成型体が得られる。 又、圧縮成形法を用いる場合には、ペレット状原料を必要に応じてメーカー指示に従って乾燥させた後、汎用型遠赤外線電気炉にて130〜310℃の範囲で軟化、溶融させ、その後、汎用型圧縮成型機により圧縮成型を行う。上記温度設定範囲の如何なる条件においても良好な成型体が得られる。 本発明の歯科用樹脂材料は、ペレット状PET−Gとペレット状PENの混合物であっても、PET−GのペレットとPENのペレットとを予め溶融混合・ペレット化して得られたペレット状体であっても良く、これらのペレットを用いてシート状などの形態に成形されたものであっても良い。 PET−GとPEN(必要に応じてPETやPBTなど)が混合されてなるポリエステル樹脂原料を成形して得られた本発明の歯科用成形体の場合、ビスフェノールAを出発物質として合成されたものでないために、使用時にビスフェノールAの溶出や発生の問題が一切なく医療用具として安心して使用することができ、食品衛生法やFDAでの承認が受けられる安全性を有している。その上、この歯科用成形体は、義歯床として要求される各種必要条件を全て満たしており、原料の材質自体が透明無色の色調であるので成形品を歯肉色(ピンク色)に着色することが可能で、優れた機械的物性を有し、接着性も良好であり義歯床として使用した場合には裏装などの補修も容易に行える。また、耐熱性が向上したことで義歯補修後の白濁も見られず、審美性を損なわない義歯が作製できる。 このように、本発明の歯科用成形体を構成する共重合ポリエステル樹脂(本発明の歯科用樹脂材料)は、歯科分野でのポリカーボネート代替原料として非常に有用であり、特に義歯床、暫間被覆冠、人工歯、歯科矯正具(特に歯科矯正装置のプラスチック成形体部分)等に適しており、義歯床の場合には、成形体中に人間の口腔内の血管を模した色に着色された繊維体が埋設されても良い。 尚、本発明では、歯科用成形体の性状、機械的物性を向上させる必要がある場合にはガラスファイバー,カーボンファイバー,ウィスカ等の繊維状強化材または無機質フィラー,天然鉱物等を混合、充填することも可能であり、本発明の歯科用樹脂材料は、これらの充填物を含んでいても良い。 以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。1.機械的物性試験方法 図1及び図2に記載されている組成を有し、幅10mm×厚さ3mmの細長板状の各種試験体を成型した後、オートグラフAG−50B(島津製作所製)を使用し、支点間距離50mm、テストスピード5mm/minにて曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。 このようにして得られた実験結果が図1(曲げ強度)及び図2(曲げ弾性率)に示されている。 図1の実験結果に示されるように、繊維状強化材を添加しない場合には、PEN成分の割合が50重量%を超えた組成(PET−Gの割合が50重量%よりも小さい組成)においてアクリル樹脂と同等以上の曲げ強度が得られ、繊維状強化材の添加(PET−G+PEN100重量部に対してガラスファイバー15重量部添加)によって約15〜55%の曲げ強度の向上が確認された。但し、PEN成分の割合が50重量%以下の組成(PET−Gの割合が50重量%よりも大きい組成)であっても、暫間被覆冠や義歯床等の用途の使用に耐え得る十分な曲げ強度を有していた。 一方、図2の実験結果に示されるように、曲げ弾性率の点では、繊維状強化材を含まないPET−GとPENの混合物は、ポリカーボネートの約1/2程度の曲げ弾性率(約1700〜2200Mpa)しか有しないが、暫間被覆冠や義歯床等の用途に実用上問題のない範囲であり、繊維状強化材の添加によってアクリル樹脂以上で、しかもポリカーボネートに匹敵する曲げ弾性率となることがわかった。2.耐熱性試験試験方法 20×20×3mmのサイズに調整した以下の組成よりなる各種成形体について、沸騰水中に1時間浸漬し、成形体の外観を確認した。尚、判定基準は以下の通りである。◎:面荒れ、白濁が見られない○:面荒れ、白濁がほとんど生じない×:面荒れ、白濁が生じる試験結果・ 煮沸試験・ PET−G(100%) ×・ PEN(10%)、PET−G(90%) ○・ PEN(50%)、PET−G(50%) ○・ PEN(80%)、PET−G(20%) ◎・ PEN(100%) ◎3.接着試験試験方法 20×20×3mmのサイズに調整した各種成型体について、φ5mm開孔のマスキングテープを貼り、接着面積を規定した。次に、義歯床用補修レジンのリバース(商品名,(株)ニッシン社製)によりφ5mmのアクリル棒を植立した。試験体を3時間以上静置させた後、オートグラフAG−50B(島津製作所社製)を使用し、テストスピード2mm/minにて引っ張り試験を行い、接着強度を評価した。尚、判定基準は以下の通りである。◎:凝集破壊○:混合破壊×:界面剥離試験結果・ 接着試験・ PET−G(100%) ◎・ PEN(10%)、PET−G(90%) ◎・ PEN(80%)、PET−G(20%) ○・ PEN(100%) ×4.義歯床の製造例 あらかじめ義歯床の形になるように石膏で陰型を作製し、PET−Gと、PENが重量比1:1でブレンドされたペレットもしくは馬蹄型に成型されたプレートを軟化、溶融させ圧縮成形もしくは射出成形により義歯床を作製した。 上記で得られた本発明の義歯床は、ビスフェノールAの溶出の問題が一切なく、100℃の沸騰水中で義歯を作製する際にも白濁が起こらず、実際の装着使用時にも問題のない製品であることが確認された。PET−GとPENの配合比率を変化させて得た各種成形体の曲げ強度を示すグラフであり、横軸はマトリックス中のPEN成分の割合を示している。PET−GとPENの配合比率を変化させて得た各種成形体の曲げ弾性率を示すグラフであり、横軸はマトリックス中のPEN成分の割合を示している。口腔内において使用される所定形状を有した歯科用の成形物であって、当該成形物が、ポリエチレンテレフタレート(PET)構成単位とポリ‐1,4‐ジメチレンシクロヘキサンテレフタレート(PCT)構成単位とから成る共重合ポリエステル樹脂とポリエチレンナフタレートとを20〜90:80〜10の重量比率にて含むポリエステル樹脂材料を主成分とするものであることを特徴とする歯科用成形体。前記歯科用成形体が、義歯床、暫間被覆冠、人工歯及び歯科矯正具からなる群より選ばれた形態を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の歯科用成形体。口腔内において使用される歯科用成形物を製造する際に使用される樹脂材料であって、当該樹脂材料の主成分が、ポリエチレンテレフタレート(PET)構成単位とポリ‐1,4‐ジメチレンシクロヘキサンテレフタレート(PCT)構成単位とから成る共重合ポリエステル樹脂とポリエチレンナフタレートとを20〜90:80〜10の重量比率にて含むポリエステル樹脂組成物であることを特徴とする歯科用樹脂材料。 【目的】 ビスフェノールAの溶出の恐れがなく安全性に優れ、義歯床、暫間被覆冠、人工歯等に要求される必要物性を満たす歯科用成形体及び歯科用樹脂材料を提供する。【解決手段】 本発明の歯科用成形体は、ポリエチレンテレフタレート(PET)構成単位とポリ‐1,4‐ジメチレンシクロヘキサンテレフタレート(PCT)構成単位とから成る共重合ポリエステル樹脂(PET−G)とポリエチレンナフタレート(PEN)とを20〜90:80〜10の重量比率にて含むポリエステル樹脂材料を主成分とする。上記のPET−GとPENを含む本発明の歯科用樹脂材料は耐熱性に優れ、100℃での使用も可能で、PET−Gの約1.5倍の曲げ強度を有し、透明性を損なうことなく義歯床として望まれる色調に調色可能で、アクリル樹脂との接着性も良好である。この樹脂材料中には繊維状強化剤や他のポリエステル樹脂が添加されても良い。【選択図】 なし


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