生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_4−アルキルフェノール類の製造方法
出願番号:2003295176
年次:2010
IPC分類:C07C 37/16,C07C 39/06,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

辻 嘉久 山中 雅義 岩崎 秀治 JP 4435518 特許公報(B2) 20100108 2003295176 20030819 4−アルキルフェノール類の製造方法 株式会社クラレ 000001085 辻 嘉久 山中 雅義 岩崎 秀治 JP 2002266310 20020912 20100317 C07C 37/16 20060101AFI20100225BHJP C07C 39/06 20060101ALI20100225BHJP C07B 61/00 20060101ALN20100225BHJP JPC07C37/16C07C39/06C07B61/00 300 C07C 37/16 C07C 39/06 特開昭57−067529(JP,A) 特開昭56−057727(JP,A) 特開平05−329374(JP,A) 特公昭49−000823(JP,B1) 4 2004123723 20040422 13 20060323 野口 勝彦 本発明は4−アルキルフェノール類の製造方法に関する。本発明により製造される4−アルキルフェノール類は、各種の合成原料として用いられ、特に4−tert−ブチルフェノール(以下、これを4−TBPと略称する)はポリカーボネート樹脂の分子量調節剤やフェノール樹脂、界面活性剤などの原料として有用である。 従来、4−アルキルフェノール類を製造する方法として、フェノール類とオレフィン、アルコールまたはエーテルを触媒の存在下に反応させて、フェノール類をアルキル化する方法が知られている。フェノール類とオレフィンから4−アルキルフェノール類を製造する方法として、フェノール類にオレフィンを酸触媒の存在下に付加反応させた後、不均化反応させる方法が知られている(特許文献1参照)。この方法の場合、原料のオレフィンに由来する副生成物の生成を抑制するために、高純度のオレフィンを使用する必要がある。特に、低沸点のオレフィンを使用する場合には、蒸留などの操作により高純度のオレフィンを得ることが難しいため、原料となるアルコール類またはエーテル類を精製し、それらの脱水反応または脱アルコール反応を高選択率で行い、かつ得られたオレフィンを蒸留などの精製手段を用いて所望の純度まで高める必要があり、コスト高になり経済的ではない。一方、アルコールまたはエーテルを原料とする場合には、高純度のオレフィンを使用する場合に比べ、その調製コストが安く、取扱いが容易であるなどの利点がある。その反面、アルコールを原料とする場合に生成する水またはエーテルを原料とする場合に生成するアルコールが触媒活性を低下させる場合には、それぞれ該生成する水またはアルコールを系外に除去する必要がある。 フェノール類とアルコールを触媒の存在下に反応させて4−アルキルフェノール類を製造する方法として、例えば、(1)フェノールを二級アルコールまたは三級アルコールと4気圧以下の圧力下(実際には大気圧下近辺、約135〜180℃)、活性白土、硫酸などの脱水縮合触媒の存在下に水を蒸発させながら反応させる方法(特許文献2参照)、(2)含水率約12〜30重量%のtert−ブタノール(以下、これをTBAと略称する)とフェノールを合成シリカ・アルミナ系触媒の存在下に220〜300℃の温度で反応させる方法(特許文献3参照)、(3)陽イオン交換樹脂の存在下にフェノールをTBAでアルキル化する方法(非特許文献1参照)などが知られている。 上記の方法(1)〜(3)はいずれも一段で4−アルキルフェノール類を製造する方法である。上記の方法(1)で用いる活性白土は、その産地、採掘場所などによって性質が異なるため、触媒活性の再現性に乏しく、また層間に生成水が吸着され、酸性度が低下し易く、触媒活性が低下する。硫酸を使用する場合、生成水の量により硫酸のプロトン酸性が著しく変化し、触媒活性が大きく左右される。したがって、方法(1)では、反応系から水を蒸発留去する必要があるが、特に、アルコールとしてTBAを使用する場合、TBAは水と共沸するため、必然的にTBAの使用量は多くなり、経済的に不利である。上記の方法(2)では、220℃未満の温度ではオルト異性体の割合が急激に増加するため、高温下で反応を行う必要があり、また液相状態を保つために加圧下で行われることから、特殊な圧力装置を必要とする。上記の方法(3)では、TBAの脱水反応を促進する温度で長期間反応を連続的に実施するには陽イオン交換樹脂の耐久性が低く、また陽イオン交換樹脂は徐々に分解してスルホン酸などの酸性成分が徐々に反応液中に混入するため、製品を得るための蒸留工程以前に中和が必要であるなど操作が煩雑になるという問題がある。 近年、合成ゼオライトが、芳香族化合物のアルキル化活性や選択性に優れるだけでなく、腐食性がなく、環境への汚染も少なく、かつ耐久性に優れた触媒として注目されている。フェノールをTBAでアルキル化するに際し、合成ゼオライトを用いる方法として、例えば、(4)ゼオライト触媒を用いて気相アルキル化する方法(特許文献4、特許文献5および特許文献6参照)、(5)金属含有Y型ゼオライトの存在下に液相で、好ましくは200〜320℃の温度でフェノール類をアルコールまたは/およびエーテルでアルキル化する方法(特許文献7および特許文献8参照)、(6)合成ゼオライトを用いてフェノールをTBAでアルキル化する方法として、HY型ゼオライトの存在下、四塩化炭素中で反応させる方法(非特許文献2参照)、HY型、Hβ型などの大口径ゼオライトを用いる方法(非特許文献3および非特許文献4参照)などが報告されている。 上記の方法(4)は、気相で反応を行うため、熱量を多く必要とするだけでなく、反応温度が4−TBPの分解点に近いため、必然的に選択率が低くなること、さらにフェノールによるカーボンデポジットのため触媒活性の劣化が大きい。上記の方法(5)では、生成する4−アルキルフェノール類の選択性が低く、分離困難な2−アルキルフェノール類が副生するという問題がある。上記の方法(6)を記載する文献の内容は、いずれも合成ゼオライトの細孔構造、酸性度などの性状、温度、原料のフィード速度、原料比などの反応条件が触媒活性や反応選択性に及ぼす影響を調べたものであり、反応例ではC4炭化水素のオリゴマーが生成するために、4−TBPの選択率は低く、4−TBPを収率よく製造し得る工業的に有利な方法を検討したものではない。特開平8−12610号公報(第2頁)米国特許第2,140,782号明細書(第1〜3頁)特開昭56−57727号公報(第1頁)米国特許第4,391,998号明細書(第2頁)米国特許第4,532,368号明細書(第2頁)特公昭52−12181号公報(第1頁)特開昭62−240637号公報(第1頁および第4頁)特開昭62−246532号公報(第1頁および第4頁)キャタリシス レターズ(Catalysis Letters)、第19巻(1993年)、第316頁(テーブル6)ジャーナル オブ ケミカル リサーチ(エス)(J.Chem.Research(S))、1988年、第41頁(テーブル2)アプライド キャタリシス エイ:ジェネラル(Applied Catalysis A:General)、第166巻(1998年)、第91頁(テーブル1)アプライド キャタリシス エイ:ジェネラル(Applied Catalysis A:General)、第207巻(2001年)、第187頁(テーブル3) 本発明の目的は、4−アルキルフェノール類を高選択率および高収率で製造し得る工業的に有利な方法を提供することにある。本発明は、合成ゼオライトの存在下、4位未置換フェノール類とアルキルアルコールを50〜110℃の温度で反応させ(第一工程)、得られた反応混合物において液相中に含まれる生成した水を除去し(第二工程)、次いで、生成した水の除去後の反応混合物において90〜150℃の温度で、酸触媒の存在下に転位反応を行う(第三工程)ことを特徴とする4−アルキルフェノール類の製造方法であって、該4位未置換フェノール類が、フェノール、2−クレゾール、3−クレゾール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノールから選ばれる4−アルキルフェノール類の製造方法である。 本発明の好ましい実施形態においては、第三工程において、反応混合物の液相中の水濃度を0.5重量%以下に調整し、さらに4位未置換フェノール類の量を、第一工程でアルキル化反応に消費されたアルキルアルコールに対して、1〜10倍モルの範囲に調整して転位反応を行う。さらに、4位未置換フェノール類としてフェノールを用い、かつアルキルアルコールとしてTBAを用いて4−TBPを製造する。 本発明の特徴は、合成ゼオライトの存在下、50〜110℃の範囲の温度で4位未置換フェノール類のアルキル化反応を行い(第一工程)、得られた反応混合物において液相中に含まれるアルキル化反応で生じた水を除去し(第二工程)、次いで、水の除去後の反応混合物に含まれる2−アルキル化フェノール類、3−アルキル化フェノール類、2,4−ジアルキル化フェノール類、2,6−ジアルキル化フェノール類、2,4,6−トリアルキル化フェノール類などの副生成物を90〜150℃の範囲の温度で、酸触媒の存在下に、4−アルキルフェノール類へ効率的に変換させる(第三工程)ことができるところにある。 上記の特徴により、上記の方法(1)で見られるような、生成する水による触媒活性の著しい低下はなく、しかも含水率約12〜30重量%のTBAを原料に使用することもできる。上記の方法(3)で見られるような触媒の劣化を抑制することができると共に、酸性成分が反応液中に含まれることがないため、中和操作などの煩雑な操作を回避することができる。また、上記の特徴により、4−アルキルフェノール類の選択性が高く、上記の方法(5)で見られるような分離困難な2−アルキルフェノール類の副生を抑制することができる。上記の方法(6)で見られるようなC4炭化水素のオリゴマーの生成を抑制することができる。さらに、上記の温度範囲では、反応形態は液相であり、上記の方法(4)で見られるようなカーボンデポジットによる触媒の劣化を抑制することができる。さらにまた、第二工程で生成した水を除去することにより、第三工程における酸触媒の活性低下が抑制され、2,4−ジアルキル化フェノール類、2,6−ジアルキル化フェノール類、2,4,6−トリアルキル化フェノール類などから4−アルキルフェノール類へのアルキル基の転位反応が選択性よく短時間で進行する。そして、酸触媒として酸性陽イオン交換樹脂を用いた場合でも、選択性よく4−アルキルフェノール類を製造することができ、しかも、この場合には転位反応の温度を90℃まで下げることができ、生成した水が存在しないため、酸性成分の流出、イオン交換樹脂の劣化を抑制することができる。 まず、第一工程について説明する。 第一工程では、合成ゼオライトの存在下、4位未置換フェノール類とアルキルアルコールを50〜110℃の温度で反応させて、4位未置換フェノール類のアルキル化を行う。 4位未置換フェノール類としては、例えばフェノール、2−クレゾール、3−クレゾール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノールなどが挙げられる。 アルキルアルコールとしては、導入するアルキル基に合わせたアルキルアルコールが使用され、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、TBA、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。アルキルアルコールの使用量は、4位未置換フェノール類1モルに対して0.1〜2モルの範囲であるのが好ましく、0.2〜1モルの範囲であるのがより好ましい。 合成ゼオライトとしては、例えばX型、Y型、β型、L型、モルデナイトなどの大口径ゼオライト、ZSM、SAPOなどに代表される中口径ゼオライト、MCMなどに代表されるメソポーラスシリケートなどが挙げられる。これらの中でも、Y型、β型、L型およびモルデナイトが好ましい。通常、合成ゼオライトはゼオライト中にアルカリ金属、アルカリ土類金属などをイオン形態として有しており、本発明においては、これらの少なくとも一部を、遷移金属イオン、アルミニウムイオンおよびプロトンからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンと交換したものが用いられる。 合成ゼオライトとしては、反応効率を高めるために、ゼオライトが有する酸性度、すなわちシリカ/アルミナ比率が小さく、しかもゼオライトが有するアルカリ金属、アルカリ土類金属などが水素原子に置換されたものが好ましい。また、4−アルキルフェノール類の選択性を向上させるために、該4−アルキルフェノール類の分子サイズにあった細孔を有するゼオライトを使用するのが好ましい。例えば、4−TBPを製造する場合には、ゼオライト種として、モルデナイト、β型ゼオライトを使用するのが好ましく、シリカ/アルミナ比率が1〜200の範囲であるものが好ましく、5〜150の範囲であるものがより好ましく、5〜50の範囲であるものが特に好ましい。 合成ゼオライトの形状は、特に制限されるものではなく、粉末状、顆粒状、塊状などのものを使用することができる。また、粉末状、顆粒状のものを成形して用いてもよく、成形品の形状としては、例えば球状、円筒状、リング状、星型状などが挙げられる。また、合成ゼオライトの粒子の大きさは特に限定されるものではなく、粒子が小さいほど表面積は大きくなり、反応活性が高くなることは言うまでも無いが、通常操作に影響を与えない範囲、1〜800ミクロンの粒子を使用する。 合成ゼオライトの使用量は、反応方式により異なり、例えばバッチ式の場合、4位未置換フェノール類に対して1〜100重量%の範囲であるのが好ましく、反応効率を考慮すれば、5〜25重量%の範囲であるのがより好ましい。合成ゼオライトの使用量が少ない場合には、反応速度が遅くなる傾向となり、多い場合には、経済的に不利であり、いずれの場合も好ましくない。 アルキル化反応は溶媒の存在下または不存在下で行う。溶媒としては、反応に不活性であれば特に制限はなく、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素などが使用される。これらの中でも、トルエンを使用するのが好ましい。溶媒を存在させる場合、その使用量は特に限定されないが、反応効率、操作性、経済性などの観点より、4位未置換フェノール類に対して1〜20倍重量の範囲であるのが好ましい。 アルキル化反応は、50〜110℃の範囲の比較的低い温度で実施する。反応温度が50℃未満の場合には、反応の進行が極めて遅くなり、反応効率が悪くなる。また、反応温度が110℃を超える場合には、目的とする4−アルキルフェノール類の選択率が低下するだけでなく、原料のアルキルアルコールや4位未置換フェノール類が高分子量化して、高沸点を有する化合物の副生が増大する。 アルキル化反応は常圧、減圧、加圧のいずれの圧力下でも実施できる。反応様式はバッチ式でも連続式でもよい。合成ゼオライトを充填した層に、4位未置換フェノール類およびアルキルアルコールを通過させる固定床方式でも、また流動床方式、移動床方式でも実施することができる。 アルキル化反応時間は、1〜30時間の範囲であるのが好ましく、5〜10時間の範囲であるのがより好ましい。反応時間が1時間未満の場合には、反応が十分に進行せず、反応効率が低くなる傾向にあり、また30時間を超える場合には、高沸点を有する化合物の副生が増大する傾向にあり、いずれの場合も好ましくない。 アルキル化反応により得られた反応混合物は、必要に応じて該反応混合物より合成ゼオライトが除去された後に、第二工程に付される。 次に、第二工程について説明する。 第二工程では、第一工程で得られた反応混合物の液相中から生成した水を除去する。 水を除去する方法としては、蒸留により脱水する方法、反応混合物中に窒素、アルゴンなどの不活性ガスを吹き込む方法、水分吸着剤、例えばモレキュラーシーブ、ゼオライト、アルミナ、活性炭などにより脱水する方法などが挙げられる。後述する第三工程において使用する酸触媒の活性を有意に保持するためには、転位反応に付される反応混合物の液相中に残留する水の濃度を0.5重量%以下に調整するのが好ましい。0.5重量%を越える場合には、酸触媒の活性が十分に発揮されず、第三工程における転位反応速度が著しく低下する。 次に、第三工程について説明する。 第三工程では、第一工程で生成した2−アルキル化フェノール類、3−アルキル化フェノール類、2,4−ジアルキル化フェノール類、2,6−ジアルキル化フェノール類、2,4,6−トリアルキル化フェノール類などからアルキル基が脱離し、4位未置換フェノール類の4位に付加する「アルキル基の転位反応」を生起させ、4−アルキルフェノール類を得る。 酸触媒としては、例えば、合成ゼオライト、酸性陽イオン交換樹脂などが挙げられる。 合成ゼオライトとしては、4位未置換フェノール類の4位にアルキル基を導入するために、目的とする4−アルキルフェノール類の分子サイズにあった細孔を有するゼオライトを使用するのが好ましい。また、ゼオライトが有する酸性度(シリカ/アルミナ比率)が小さく、しかもゼオライトが有するアルカリ金属、アルカリ土類金属などが水素原子に置換されたものが好ましい。合成ゼオライトの酸性度が高すぎる場合、目的とする4−アルキルフェノール類の分解反応を促進し、4−アルキルフェノール類の選択率が低くなる傾向にあるので好ましくない。例えば、4−TBPを製造する場合には、ゼオライト種として、β型またはY型ゼオライトを使用するのが好ましく、シリカ/アルミナ比率が1〜200の範囲であるものが好ましく、5〜150の範囲であるものがより好ましく、5〜50の範囲であるものが特に好ましい。 合成ゼオライトは、水分を吸着しているため、予め脱水処理して使用するのが好ましい。脱水処理は、例えば、100〜300℃の温度で数時間加熱することにより行われる。脱水処理は、窒素や空気などの気流下に実施してもよい。また、合成ゼオライトは、アルキル化反応に用いたものと同じでもよいし、異なっていてもよい。転位反応を行うに際しては、アルキル化反応で用いた合成ゼオライトを除去してもよいし、除去することなく転位反応を行ってもよい。 合成ゼオライトの使用量は、反応方式により異なり、例えばバッチ式の場合、原料である4位未置換フェノール類および生成物である4−アルキルフェノール類の合計重量に対して、1〜100重量%の範囲であるのが好ましく、反応効率を考慮すれば、5〜25重量%の範囲であるのがより好ましい。合成ゼオライトの使用量が少ない場合には、反応速度が遅く、多い場合には、経済的に不利であり、いずれの場合も好ましくない。 酸性陽イオン交換樹脂としては、酸性を示す陽イオン交換樹脂であればよく、例えばスチレン系スルホン酸型樹脂などが挙げられる。 酸性陽イオン交換樹脂の形状は、触媒としての機能が発揮できる形状であれば、特に制限されるものではなく、通常は平均粒子径0.01〜10mmの微粒子または球形、円柱形などの粒子を用いることができる。 酸性陽イオン交換樹脂の使用量は、反応方式により異なり、例えばバッチ式の場合、原料である4位未置換フェノール類および生成物である4−アルキルフェノール類の合計重量に対して、1〜100重量%の範囲であるのが好ましく、反応効率を考慮すれば、5〜25重量%の範囲であるのがより好ましい。酸性陽イオン交換樹脂の使用量が少ない場合には、反応速度が遅く、多い場合には、経済的に不利であり、いずれの場合も好ましくない。 転位反応は溶媒の存在下または不存在下で行う。溶媒としては、反応に不活性であれば特に制限はなく、例えば、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素などが使用される。これらの中でも、トルエンを使用するのが好ましい。溶媒を存在させる場合、その使用量は特に限定されないが、反応効率、操作性、経済性などを考慮すれば、原料である4位未置換フェノール類および生成物である4−アルキルフェノール類の合計重量に対して、1〜20倍重量の範囲であるのが好ましい。 転位反応は、90〜150℃の範囲の温度で実施する。反応温度が高すぎる場合には、導入されたアルキル基が分解して原料に戻るため、アルキル化フェノール類の転化率が低下し、4−アルキルフェノール類の選択率が低下する。また、反応温度が低すぎる場合には、転位反応の速度が著しく遅く、経済的に不利となる。 転位反応は常圧、減圧、加圧のいずれの圧力下でも実施できる。反応様式はバッチ式でも連続式でもよい。酸触媒に第二工程で得られた反応混合物を通過させる固定床方式でも、また流動床方式、移動床方式でも実施することができる。 転位反応時間は、反応における副生物の生成を抑制し、目的とする4−アルキルフェノール類の選択率を高める観点から、1〜20時間の範囲であるのが好ましい。 転位反応を行うに際し、4位未置換フェノール類を反応液に加える等の操作により、反応混合物中の4位未置換フェノール類の比率を特定の範囲に調整し、4−アルキルフェノール類の選択性を向上させ、反応速度を高めることができる。反応混合物中の4位未置換フェノール類の量は、第一工程で導入されたアルキル基量、すなわち、第一工程でアルキル化反応に消費されたアルキルアルコールに対して、1〜10倍モルの範囲であるのが好ましい。その量が1倍モル未満の場合には、2,4−ジアルキル化フェノール類、2,6−ジアルキル化フェノール類、2,4,6−トリアルキル化フェノール類などからのアルキル基の転位反応を生起させることが困難となり、10倍モルを越える場合には、4位未置換フェノール類の転化率が低くなる傾向となる。 第一工程から第三工程の反応および操作は、同一の反応器内で行うことも可能であり、また連続する反応器内で行うこともできる。 本発明により製造される4−アルキルフェノール類は、通常の有機化合物の単離・精製に用いられる方法により単離・精製することができる。例えば、反応混合物より必要に応じて酸触媒を濾別し、濾液を蒸留、再結晶、クロマトグラフィーなどの操作に付して4−アルキルフェノール類を単離・精製する。 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。表中、2−TBPは2−tert−ブチルフェノールを表し、2,4−DTBPは2,4−ジ−tert−ブチルフェノールを表す。反応後の組成(%)は、ガスクロマトグラフィー分析[カラム:G−100(財団法人化学物質評価研究機構)、検出器:FID(水素炎イオン化検出器)、検出器・気化室温度:270℃、昇温パターン:80℃で3分間保持→10℃/分で250℃に昇温→250℃で15分間保持]で得られた各成分の面積を百分率で表したものである。4−TBPの選択率(%)はフェノール基準で表し、4−TBPの収率(%)はTBA基準で表す。参考例1 (第一工程) 攪拌器、冷却管および温度計を装着した内容積100mLの四ツ口フラスコに、フェノール50.0g(531mmol)およびプロトンで置換されたβ型ゼオライト(エヌ・イー・ケムキャット社製、H−β)12.5gを仕込み、攪拌した。温度を100℃に昇温し、シリンジより含水率13重量%のTBA22.6g(266mmol)を3時間かけて滴下した。同温度で3時間撹拌し、アルキル化反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、反応液の組成は、フェノール(42.0%)、4−TBP(50.1%)、2−TBP(4.7%)、2,4−DTBP(3.1%)であり、フェノールの転化率は46.2%、4−TBPの選択率は81.9%、4−TBPの収率は75.9%であった。実施例1 (第一工程) 攪拌器、冷却管および温度計を装着した内容積100mLの四ツ口フラスコに、フェノール50.0g(531mmol)およびプロトンで置換されたβ型ゼオライト(ズード・ケミー社製、H−BEA−25)12.5gを仕込み、攪拌した。温度を90℃に昇温し、シリンジより含水率13重量%のTBA22.6g(266mmol)を3時間かけて滴下した。同温度で5時間撹拌、アルキル化反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、各化合物の生成比、フェノールの転化率と4−TBPの選択率および収率を求めた。結果を表1に示す。 (第二工程) 第一工程で得られた反応混合物より、β型ゼオライトを濾過により除去した。得られた濾液を減圧蒸留[26.7〜4.7kPa(200〜35mmHg)、内温90−120℃]することにより、水を除去した。水分除去後の混合物の水分濃度を測定したところ、0.1重量%であった。また、フェノールの量は、第一工程でアルキル化反応に消費されたTBAに対してモル比で1.1であった。 (第三工程) 攪拌器、冷却管および温度計を装着した内容積100mLの四ツ口フラスコに、第二工程で得られた脱水後の混合物およびプロトンで置換されたY型ゼオライト(東ソー株式会社製、HSZ−360HUA)12.5gを仕込み、120℃まで昇温し、1時間撹拌して転位反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、各化合物の生成比と4−TBPの選択率および収率を求めた。結果を表1に示す。実施例2 (第二工程) 実施例1の第一工程で得られた反応混合物より、β型ゼオライトを濾過により除去した。得られた濾液を減圧蒸留[26.7〜4.7kPa(200〜35mmHg)、内温90〜120℃]することにより水を除去した。水分除去後の混合物の水分濃度を測定したところ、0.1重量%であった。また、フェノールの量は、第一工程でアルキル化反応に消費されたTBAに対してモル比で1.1であった。 (第三工程) 攪拌器、冷却管および温度計を装着した内容積200mLの四ツ口フラスコに、第二工程で得られた脱水後の混合物およびフェノール100gを添加した。これにより、フェノールの量を、第一工程でアルキル化反応に消費されたTBAに対してモル比で6に調整した。そこに、プロトンで置換されたY型ゼオライト(前記のとおり)12.5gを仕込み、120℃まで昇温した後、1時間撹拌して転位反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、各化合物の生成比と4−TBPの選択率および収率を求めた。結果を表2に示す。実施例3 (第二工程) 実施例1の第一工程で得られた反応混合物より、β型ゼオライトを濾過により除去した。得られた濾液を減圧蒸留[26.7〜4.7kPa(200〜35mmHg)、内温90〜120℃]することにより水を除去した。水分除去後の混合物の水分濃度を測定したところ、0.1重量%であった。また、フェノールの量は、第一工程でアルキル化反応に消費されたTBAに対してモル比で1.1であった。 (第三工程) 攪拌器、冷却管および温度計を装着した内容積100mLの四ツ口フラスコに、第二工程で得られた脱水後の混合物および酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバーリスト15E)12.5gを仕込み、90℃まで昇温し、1時間撹拌して転位反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、各化合物の生成比と4−TBPの選択率および収率を求めた。結果を表3に示す。実施例4 (第一工程) 攪拌器、冷却管および温度計を装着した内容積200mLの四ツ口フラスコに、フェノール125.0g(1.33mol)およびプロトンで置換されたβ型ゼオライト(ズード・ケミー社製、H−BEA−25)12.5gを仕込み、攪拌した。温度を100℃に昇温し、シリンジより含水率13重量%のTBA22.6g(266mmol)を3時間かけて滴下した。同温度で3時間撹拌、アルキル化反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、各化合物の生成比、フェノールの転化率と4−TBPの選択率および収率を求めた。結果を表4に示す。 (第二工程) 第一工程で得られた反応混合物より、β型ゼオライトを濾過により除去した。得られた濾液を減圧蒸留[26.7〜4.7kPa(200〜35mmHg)、内温90〜120℃]することにより水を除去した。水分除去後の混合物の水分濃度を測定したところ、0.15重量%であった。 (第三工程) 攪拌器、冷却管および温度計を装着した内容積100mLの四ツ口フラスコに、第二工程で得られた脱水後の混合物およびプロトンで置換されたY型ゼオライト(前記のとおり)12.5gを仕込み、120℃まで昇温し、1時間撹拌して転位反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、各化合物の生成比と4−TBPの選択率および収率を求めた。結果を表4に示す。比較例1 攪拌器、冷却管および温度計を装着した内容積100mLの四ツ口フラスコに、フェノール50.0g(531mmol)およびプロトンで置換されたβ型ゼオライト(ズード・ケミー社製、H−BEA−25)12.5gを仕込み、攪拌した。温度を100℃に昇温し、シリンジより含水率13重量%のTBA22.6g(266mmol)を3時間かけて滴下した。同温度で2時間撹拌し、アルキル化反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、反応液の組成は、フェノール(39.0%)、4−TBP(54.0%)、2−TBP(4.0%)、2,4−DTBP(3.0%)であり、フェノールの転化率は44.5%、4−TBPの選択率は88.8%、4−TBPの収率は79.0%であった。反応液の水分濃度を測定したところ、5.0重量%であった。その後、β型ゼオライトを濾過により除去した。 攪拌器、冷却管および温度計を装着した内容積100mLの四ツ口フラスコに、上記で得られた濾液およびプロトンで置換されたY型ゼオライト(前記のとおり)12.5gを仕込み、120℃まで昇温し、5時間撹拌したが、転位反応は進行しなかった。比較例2 攪拌器、冷却管および温度計を装着した内容積100mLの四ツ口フラスコに、フェノール50.0g(531mmol)およびプロトンで置換されたβ型ゼオライト(ズード・ケミー社製、H−BEA−25)12.5gを仕込み、攪拌した。温度を90℃に昇温し、シリンジよりTBA19.7g(266mmol)を3時間かけて滴下した。同温度で5時間撹拌し、アルキル化反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、各化合物の生成比、フェノールの転化率と4−TBPの選択率および収率を求めた。結果を表5に示す。反応液の水分濃度を測定したところ、1.0重量%であった。その後、β型ゼオライトを濾過により除去した。 攪拌器、冷却管および温度計を装着した内容積100mLの四ツ口フラスコに、上記で得られた濾液およびプロトンで置換されたY型ゼオライト(前記のとおり)12.5gを仕込み、120℃まで昇温し、撹拌下に転位反応を行った。反応開始1時間後および5時間後に得られた反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、各化合物の生成比、フェノールの転化率と4−TBPの選択率および収率を求めた。結果を表5に示す。 本発明によれば、4−アルキルフェノール類を高選択率および高収率で工業的に有利に製造することができる。その結果、高純度の4−アルキルフェノール類を製造することができる。合成ゼオライトの存在下、4位未置換フェノール類とアルキルアルコールを50〜110℃の温度で反応させ(第一工程)、得られた反応混合物において液相中に含まれる生成した水を除去し(第二工程)、次いで、生成した水の除去後の反応混合物において90〜150℃の温度で、酸触媒の存在下に転位反応を行う(第三工程)ことを特徴とする4−アルキルフェノール類の製造方法であって、該4位未置換フェノール類が、フェノール、2−クレゾール、3−クレゾール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノールから選ばれる4−アルキルフェノール類の製造方法。 第三工程において、反応混合物の液相中の水濃度を0.5重量%以下に調整して転位反応を行う請求項1に記載の4−アルキルフェノール類の製造方法。 第三工程において、反応混合物中の4位未置換フェノール類の量を、第一工程でアルキル化反応に消費されたアルキルアルコールに対して、1〜10倍モルの範囲に調整して転位反応を行う請求項1または2に記載の4−アルキルフェノール類の製造方法。 4位未置換フェノール類がフェノールであり、かつアルキルアルコールがtert−ブタノールである請求項1〜3のいずれか1項に記載の4−アルキルフェノール類の製造方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る