タイトル: | 公開特許公報(A)_不死化子宮内膜腺上皮細胞株及びその作製方法 |
出願番号: | 2003283911 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12N15/09,C12N5/10 |
京 哲 清野 透 井上 正樹 JP 2005046117 公開特許公報(A) 20050224 2003283911 20030731 不死化子宮内膜腺上皮細胞株及びその作製方法 有限会社金沢大学ティ・エル・オー 803000023 木森 有平 100105809 浅野 典子 100126398 国立がんセンター総長 590001452 木森 有平 100105809 京 哲 清野 透 井上 正樹 7C12N15/09C12N5/10 JPC12N15/00 AC12N5/00 A 14 1 OL 22 特許法第30条第1項適用申請有り 4B024 4B065 4B024AA20 4B024CA04 4B024DA03 4B024EA02 4B024FA10 4B024GA18 4B065AA93X 4B065AA93Y 4B065AA95Y 4B065AB01 4B065AC20 4B065BA02 4B065BA25 4B065BD44 4B065BD45 4B065BD50 4B065CA60 本発明は、正常形質を保持しつつも不死化形質を獲得し半永久的に継代培養が可能な子宮内膜腺上皮細胞株に関し、さらには、その作製方法に関する。 子宮内膜はヒトの生殖に深く関与する組織であり、性成熟期を通じ、月経周期ごとに増殖、分泌、剥離(月経)を周期的に繰り返す。この周期的な変化は性ステロイドであるエストロゲンやプロゲステロンの働きにより引き起こされている。また、子宮内膜は妊娠時に受精卵の着床が起こる場所であり、胎盤形成を通じて胎児の発育及び成熟に関わる臓器でもある。 一方、子宮内膜は癌の発生母地でもある。子宮内膜は腺上皮細胞と間質細胞からなるが、いわゆる内膜の腺分泌機能に重要なのは腺上皮細胞であり、また内膜癌の大部分は腺上皮から発生する腺癌である。子宮内膜癌の発生機構は明らかになっていないが、エストロゲンの長期持続刺激によりPTEN等のいくつかの遺伝子変異の集積により起こることがわかっている。 子宮内膜の生殖に関わる多彩な機能や子宮内膜癌化過程における遺伝子異常を研究するには、先ず内膜腺上皮細胞を培養、継代する必要がある。ところが、子宮内膜腺上皮細胞は、通常の培養を試みてもわずか1〜2週間で増殖を停止し、継代が不可能となる。このため、培養系での実験は不可能で、内膜の機能や癌化のメカニズムを明らかにする実験が著しく立ち遅れていた。したがって、これらの実験を進めるためには、子宮内膜腺上皮細胞を不死化する技術が必要不可欠である。 正常体細胞を半永久的に培養継代可能にする(不死化)ために従来より広く用いられてきたのは、SV40−LT(Simian virus 40 large T-antigen)遺伝子である。このSV40−LT遺伝子を用いて正常体細胞の不死化を行う手法が、種々の細胞において提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2等を参照)。特許文献1には、SV40−LT遺伝子を用いてヒト水晶体細胞を不死化する手法が、また、特許文献2には、ヒト肝臓細胞を不死化する手法が開示されている。特開平10−52272号公報特開2000−14390号公報 しかしながら、子宮内膜腺上皮細胞の場合、SV40−LT遺伝子を用いて不死化を行うと、高度の染色体異常を伴う現象が多く観察され、その結果、本来の細胞の形質を失ってしまうという大きな問題がある。 さらに、子宮内膜腺上皮細胞の場合、これを単離することが難しく、純化した子宮内膜腺上皮細胞に対して不死化技術を適用するに至らないという問題もある。子宮内膜組織には、間質細胞が豊富に存在し、腺上皮細胞を回収したとしても間質細胞の混入が避けられず、培養後は間質細胞が優位に増殖し、培養後2〜3週間でほとんど全てが間質細胞により占められてしまう。このような状態で遺伝子導入を行っても間質細胞優位に遺伝子が導入されるため、内膜腺上皮細胞の不死化細胞の回収は困難である。子宮内膜腺上皮細胞の不死化を成功させるには、遺伝子導入前に内膜腺上皮細胞を高度に純化することが肝要となる。 このような状況から、これまで子宮内膜腺上皮細胞の不死化に成功した例がないばかりでなく、これまで前記子宮内膜腺上皮細胞の単離の困難性から本細胞の不死化を試みた報告もほとんどなく、実際に正常形質を有する不死化成功例は皆無である。このことは、子宮内膜の機能解析、生殖機構や正常細胞の癌化機構の解明、さらには子宮内膜再生の研究等を進める上で、非常に大きな障害となっている。 本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、本発明は、正常形質を保持しつつも不死化形質を獲得し半永久的に継代培養が可能な不死化子宮内膜腺上皮細胞株を提供することを目的とし、さらにはその作製方法を提供することを目的とする。 本発明者は、子宮内膜腺上皮細胞の不死化について、種々の研究を重ねてきた。その結果、(1)テロメアを伸長させるテロメレースを活性化すれば細胞分裂ごとにテロメアを喪失することなく、テロメア依存性の細胞老化を免れること、(2)テロメア依存性の細胞老化とは別個にテロメア非依存性の早期細胞老化の機構が存在すること、(3)子宮内膜腺上皮細胞の場合、早期細胞老化を回避するには、ヒトパピローマウイルス16型のE7遺伝子及びE6遺伝子による細胞周期調節因子の不活化が最適であり、SV40−LT遺伝子を用いた場合のように染色体異常を伴うこともなく、本来の細胞の形質が維持されること、等を知見するに至った。本発明者は、これら知見に加えて、子宮内膜組織から子宮内膜腺上皮細胞を単離する技術を確立し、不死化した子宮内膜腺上皮細胞株を初めて樹立するに至った。 本発明の不死化子宮内膜腺上皮細胞株は、これら技術の積み重ね、及び長期に亘る鋭意研究の末に完成されたものである。すなわち、本発明の不死化子宮内膜腺上皮細胞株は、外因性の不死化遺伝子が導入されるとともに、非癌細胞としての形質及び典型的な子宮内膜腺上皮細胞としての形質が保持されていることを特徴とする。 本発明の不死化子宮内膜腺上皮細胞株は、外因性の不死化遺伝子の導入により、半永久的に培養継代可能とされている。ここで重要なのは、外因性の不死化遺伝子の導入により、テロメア依存性の細胞老化とテロメア非依存性の早期細胞老化を免れることであり、そのために、本発明では、外因性の不死化遺伝子として、テロメレース活性を誘導する遺伝子(例えばヒトテロメレース触媒サブユニット)、及び細胞周期調節因子を不活化する遺伝子(例えば、ヒトパピローマウイルス16型のE7遺伝子及びE6遺伝子)が重複導入されている。特に、細胞周期調節因子を不活化する遺伝子としてのヒトパピローマウイルス16型のE7遺伝子及びE6遺伝子は、SV40−LT遺伝子のように作用が強すぎず、その導入によって染色体異常を伴うこともなく、不死化された子宮内膜腺上皮細胞において本来の細胞の形質が維持される。 本発明の不死化子宮内膜腺上皮細胞株は、上記外因性の不死化遺伝子の導入により不死化されているが、それとともに、非癌細胞としての形質及び典型的な子宮内膜腺上皮細胞としての形質が保持されている。ここで、非癌細胞の形質とは、培養時に足場依存性を保持し、ヌードマウス皮下で腫瘍塊を形成せず、染色体異常が見られないこと等である。また、典型的な子宮内膜腺上皮細胞の形質とは、細胞がほぼ円形で、細胞間結合の強い上皮細胞形態を有し、腺状構造を構築する能力を有し、サイトケラチン陽性及びビメンチン陽性であり、エストロゲンレセプター及びプロゲステロンレセプターを発現し、且つステロイドホルモン応答性を有していること等である。これら非癌細胞としての形質及び典型的な子宮内膜腺上皮細胞としての形質が保持されていることで、子宮内膜の機能解析、生殖機構又は正常細胞の癌化機構の解明、及び子宮内膜再生等の研究を進める上で、極めて有用な実験材料となり得る。 一方、本発明の不死化子宮内膜腺上皮細胞株の作製方法は、ヒト子宮内膜組織より子宮内膜腺上皮細胞を分離回収し、初代培養を行った後に、培養細胞に外因性の不死化遺伝子を導入することを特徴とするものである。 本発明の不死化子宮内膜腺上皮細胞株の作製方法は、子宮内膜腺上皮細胞の分離回収と、不死化のための遺伝子導入とを基本とするものである。これら技術の組み合わせにより、半永久的に継代培養が可能な不死化子宮内膜腺上皮細胞株が樹立される。 ここで重要なのは、子宮内膜組織から子宮内膜腺上皮細胞を単離する技術の確立である。本発明者は、試行錯誤を繰り返し、その結果、間質細胞が混入することなく子宮内膜腺上皮細胞を効率的に単離し得る方法を確立するに至った。すなわち、上記不死化子宮内膜腺上皮細胞株の作製方法において、子宮内膜腺上皮細胞は、ヒト子宮内膜組織を細切した後、DNA分解酵素タイプ1及びコラーゲン分解酵素タイプ3による処理を行い、顕微鏡下に内膜腺細胞塊を回収することにより分離回収する。この単離技術により、純化した子宮内膜腺上皮細胞への不死化技術の適用が可能になり、効率的に不死化子宮内膜腺上皮細胞株が作製される。 本発明によれば、半永久的に継代培養が可能な不死化子宮内膜腺上皮細胞株を樹立することが可能である。また、本発明の不死化子宮内膜腺上皮細胞株は、正常体細胞の形質及び子宮内膜腺上皮細胞の形質を保持していることから、様々な分野において利用価値があり、特に、子宮内膜の機能や癌化のメカニズムを明らかにする実験を進める上で極めて有用な実験材料を提供することが可能である。 また、本発明の作製方法によれば、子宮内膜腺上皮細胞を単離して不死化遺伝子を導入することができるので、不死化子宮内膜腺上皮細胞株を非常に効率的に樹立することができる。特に、内膜腺上皮細胞を高度に純化するために、内膜組織を細切し酵素処理した後、顕微鏡下に内膜腺1個1個を回収する方法は、本発明者らが開発したものであり、極めて高い純度の内膜腺細胞塊の回収が可能である。 以下、本発明を適用した不死化子宮内膜腺上皮細胞株及びその作製方法について、モデル図等を参照しながら詳細に説明する。 一般に、正常体細胞は、試験管内での培養でも無限に増殖、分裂できるわけではなく、一定の分裂回数の後、増殖を停止する。これは染色体末端の構造であるテロメアとよばれる繰り返し配列が、細胞分裂ごとに徐々に短縮し、限界まで短縮するとDNAダメージシグナルが働いて細胞が増殖を停止するためと考えられている。図1は、このテロメアの短縮による細胞増殖停止の機構を示すモデル図である。染色体末端には、テロメアと称される1本鎖領域があり、正常体細胞では、染色体はループ構造(図中、左方に示す構造)をとっている。テロメアは、前述の通り細胞分裂ごとに徐々に短縮し、限界まで短縮すると染色体は図中右方に示すようにループ構造をとれなくなる。すると、DNAダメージシグナルが出され、細胞増殖が停止する。テロメアの長さは細胞の寿命を決定する分裂時計と考えられ、正常細胞では分裂ごとに徐々に短縮してゆくために、最終的には必ず増殖停止を迎える。これをテロメア依存性の細胞老化と呼ぶ。 一方、多くの癌細胞は細胞老化を迎えることなく、永久的に増殖を続ける。また、ほとんどすべての癌細胞ではテロメアを伸長させるテロメレースが活性化されている。したがって細胞分裂ごとにテロメアを喪失することなく、テロメア依存性の細胞老化を免れている。テロメレースを構成する構成成分が相次いでクローニングされ、なかでもヒトテロメレース触媒サブユニット(以下、hTERTと称する。)が酵素活性を担う最重要分子であることがわかっている。 テロメレース活性を持たない正常細胞にhTERTを遺伝子導入するとテロメレース活性が誘導され、ある種の正常細胞を不死化できる。当初はhTERT導入によりほとんどの正常細胞は不死化できるのではないかと考えられていたが、これは細胞種に依存し、上皮系の細胞ではむしろこの方法で不死化できる細胞は稀で、テロメレースの活性化だけでは不死化を誘導できないことがわかってきた。上皮系の細胞の老化過程を観察すると、テロメアが短縮する以前に早期に細胞増殖が停止する。この際、細胞周期を負に調節するp16やRb蛋白等の細胞周期調節因子の活性化が起こり、増殖が停止することが明らかになった。すなわち、テロメア依存性の細胞老化とは別個にテロメア非依存性の早期細胞老化の機構が存在する。 図2は、細胞周期調節因子の活性化による細胞増殖停止のモデル図である。細胞増殖においては、Rb蛋白と結合したE2Fを遊離する必要があり、CDKによるRb蛋白のリン酸化によりE2Fの遊離が行われる。これに対し、DNAが傷ついたと認識され、DNAダメージシグナルが出されると、p21やp16等が増加し、CDKをブロックしてE2Fの遊離を阻害し、細胞周期が停止する。 上皮細胞はこのように2段階の老化機構を有すると考えられる。このため、上皮細胞を不死化させるためには、先ず、p16やRbの機能を停止させる必要がある。p16の作用経路はRb経路の上流にあり、その作用は最終的にはRbを介するものであるので、上皮細胞の早期の細胞老化の防止にはRbを不活化することが肝要であると考えられる。Rbの機能を不活化する方法として有望なのは、ヒトパピローマウイルス(以下、HPVと称する。)の癌遺伝子の導入である。子宮頚癌を誘発する悪性型のHPVは、癌遺伝子E6及びE7をゲノムに含んでいる。図3に示すように、E7蛋白はRb蛋白と結合し、この機能を不活化する。またE6蛋白は、癌抑制遺伝子産物p53と結合しこれを不活化する。E6蛋白にはこれ以外にも造腫瘍性などに関わる様々な機能があり、総体的にはE7蛋白の機能を補足し、協調的に働く。 したがってHPVE6およびE7の遺伝子導入によりRb蛋白を不活化すれば、培養早期の増殖停止を乗り越えられる可能性がある。さらにこれを乗り越えることが出来た場合にも、その後にテロメア短縮による細胞老化が訪れる可能性が高い。これをhTERT遺伝子導入により乗り越えられるのではないかという仮説を立てた。すなわち、図4に示すように、第1のシネッセンス(老化)をRb蛋白とHPV16E7との結合、及び癌抑制遺伝子産物p53とHPV16E6の結合によって乗り越え、第2のシネッセンスをhTERT遺伝子の導入によって乗り越えるというものである。 本発明者は、このような仮説に基づいて実際に子宮内膜腺上皮細胞への遺伝子導入を行った。その結果、前記増殖停止を乗り越え、半永久的に継代培養が可能な不死化子宮内膜腺上皮細胞株を得ることに成功した。 本発明の不死化子宮内膜腺上皮細胞株は、外因性の不死化遺伝子が導入されるとともに、非癌細胞としての形質及び典型的な子宮内膜腺上皮細胞としての形質が保持されていることを特徴とするものである。ここで、外因性の不死化遺伝子は、先の第2のシネッセンスを回避するためテロメレース活性を誘導する遺伝子、及び第1のシネッセンスを回避するための細胞周期調節因子を不活化する遺伝子である。 具体的には、例えば、上記テロメレース活性を誘導する遺伝子としては、配列番号1記載のヒトテロメレース触媒サブユニットである。また、上記細胞周期調節因子を不活化する遺伝子としては、配列番号2記載のヒトパピローマウイルス16型E7遺伝子、及び配列番号3記載のヒトパピローマウイルス16型E6遺伝子である。なお、ヒトパピローマウイルス16型E6遺伝子には多彩な機能があるが、正常型E6遺伝子に代わり、p53結合能のみを保持し、その他の機能を廃絶させた配列番号4記載のヒトパピローマウイルス16型E6Δ151変異遺伝子を導入することも可能である。 次に、上述の不死化子宮内膜腺上皮細胞株の作製方法について説明する。本発明の不死化子宮内膜腺上皮細胞株は、ヒト子宮内膜組織由来の細胞株である。したがって、同細胞株は、例えば、以下のように樹立することが出来る。例えば、子宮内膜に異常のない良性疾患(例えば、子宮筋腫)により摘出した子宮より患者の同意を得て子宮内膜組織を採取後、これを細切し、腺上皮細胞と間質細胞とを分離するための酵素処理を行う。ここで、分離のために用いる酵素としては、DNA分解酵素タイプ1(DNase I)およびコラーゲン分解酵素タイプ3(collagenase type 3)を組み合わせて用いることが望ましい。この処理により内膜腺上皮細胞は内膜間質細胞と分離する。 内膜腺上皮細胞は、上記の処理後に、図5に示すように、ブドウの房状の腺細胞塊として腺構造を保持しているのに対して、間質細胞は細胞間の結合が弱く単一細胞となっているため、顕微鏡下に一個一個の内膜腺塊を容易に回収できる。約500〜1000個程度の内膜腺を回収し、血清を含む培養液中において培養を行う。望ましい実施の形態においては、上記培養液は10%FBSを添加したDMEM/F12(1:1)培養液である。通常この培養状態で約2週間は培養可能である。また、本明細書中においては、この培養状態を初代培養と呼称する。 前記初代培養状態の内膜上皮細胞への、ヒトパピローマウイルス(HPV)16E6遺伝子、同E7遺伝子及びヒトテロメレース触媒サブユニット(hTERT)遺伝子の導入は常法に従って行うことができ、具体的にはエレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、レトロウイルスベクターの使用等が挙げられる。また、この際、不死化のための最初のステップとして、まずテロメア非依存性の細胞老化を乗り越える必要があるため、先ずE6およびE7遺伝子を導入し、その後にhTERT遺伝子を導入することが望ましい。 次いで、ゲノムDNAへの遺伝子導入が行われ同遺伝子を保持発現することにより細胞老化を乗り越えた細胞を選択し回収する。また、ここで行う選択をより確実にするため、例えば、導入した発現ベクター内に存在する選択マーカーを利用した、薬剤に対する感受性の差による薬剤セレクション等の手段を併せ行うことができる。 また、前述した回収細胞におけるE6,E7又はhTERT遺伝子の発現は、RT−PCR法を用いて確認することができる。さらに、hTERT遺伝子を導入し同遺伝子が発現することに基づくテロメレース活性はTRAP法により測定し確認することができる。 これらの回収した細胞は、免疫組織学的染色の手法及びRT−PCR法による遺伝子発現解析方法を用いて子宮内膜腺上皮細胞由来であることを確認することができる。先ず、上記免疫組織学的染色のマーカーとしては、例えば、腺上皮に特異的に発現するサイトケラチン、間質細胞と上皮細胞の双方で発現するビメンチン、及び血管内皮細胞において発現するCD34等の分子を挙げることができ、これらの染色結果を組み合わせて確認することができる。一般的には、内膜腺上皮細胞であればサイトケラチン陽性、ビメンチン陽性、CD34陰性を呈する可能性が高い。さらに、これらの細胞は、子宮内膜腺上皮細胞の特徴であるエストロゲンレセプター(ERα)、及びプロゲステロンレセプター(PR)の発現をRT−PCR法を用いて確認することができる。 また、これらの回収した細胞は、形態的及び機能的にも子宮内膜腺上皮細胞の形質を保持していることを確認する。子宮内膜腺上皮細胞の形態的形質の確認として、具体的には、例えばマトリゲル(Becton Dickinson社製)等を用いた三次元培養を行うことにより腺構造を形成しつつ増殖することを確認する。また、機能的形質の確認としては、例えば、通常の培養時におけるステロイドホルモンに対する応答性を確認する。 さらに、これらの回収した細胞は、癌化形質を獲得していないことについて確認を行う。具体的には、まず足場依存性を保持していることを証明する目的で軟寒天培地を用いたコロニー形成試験を行った場合にコロニー形成が認められないこと、及びヌードマウス皮下に細胞を移植しても腫瘍塊を形成しないことの確認を行う。また、染色体異常についても確認を行う。 以上に記述した方法により作製し選択した細胞は、半永久的に継代培養を行うことが可能であり、且つ非癌性の子宮内膜腺上皮細胞の形質を維持しているため、様々な利用方法が考えられる。特に生殖研究の分野において幅広い応用が考えられる。受精卵が子宮内膜に着床する際、先ず卵と内膜上皮の間に接着が起こるが、これまで内膜上皮細胞の培養が不可能であったため、試験管内でこれらの現象を解析することが不可能であった。ここで、本発明の不死化子宮内膜腺上皮細胞株を用いることにより、着床における受精卵の接着、さらには浸潤などの解析が可能になる。 また、再生医学の分野でも本発明の細胞株を利用した発展が期待される。これまで他臓器では幹細胞を用いた臓器再生の研究が進みつつあるが、生殖臓器では全く行われていない。この点において、子宮内膜に関しては本発明の細胞株が内膜の再生に応用できる可能性がある。特に内膜間質細胞は培養が容易で、長期にわたり増殖可能であるため、本発明の細胞株との共培養を行うことで内膜再生を実現できる可能性がある。 一方、子宮内膜上皮はステロイドホルモン感受性の高い組織である。これは子宮内膜の月経周期ごとのダイナミックな変化がステロイドホルモンの作用によって引き起こされていることを考えれば明らかである。本発明の細胞株はステロイドホルモン応答性が保持されている。したがって、ステロイドホルモンの作用、シグナル伝達の解析などにも有用な材料である。 また、本発明の細胞株は癌化形質を獲得していない。子宮内膜癌化過程においてテロメレースの活性化は重要なステップであるが、本発明者らの解析ではテロメレースの活性化は細胞の不死化には関与するものの、悪性形質の獲得には直接的には関与していないものと考えられる。また早期の細胞老化にかかわるRbの機能を不活化することも、直接癌化形質の獲得には賦与しなかった。これらのことより不死化の条件として上記の因子は重要であるが、癌化形質の獲得にはさらに別のステップが必要であることがわかる。したがって、これらの細胞は、今後、PTENなどの遺伝子不活化などの遺伝子操作を加えることで、癌化するか否かを確認する等、内膜の多段階癌化ステップの解析に有用である。内膜癌の癌化過程においては、これまで培養実験系自体が存在せず、試験管内の発癌実験が不可能であったので、本発明の細胞株は内膜癌化のメカニズムの解析に道を開く可能性がある。 次に、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。 子宮内膜腺上皮細胞株は、具体的には以下に述べるような方法で作製することができる。実験1 初代培養 子宮内膜組織を細切し350 unit/mlのDnase I(宝酒造社製)および180 unit/mlのcollagenase type 3(Washington Biochemical Corporation社製)にてDMEM培養液(Invitorogen社製)中で37℃において40分間処理した。この酵素処理により内膜腺上皮細胞は内膜間質細胞と分離した。顕微鏡下において約500〜1000個の内膜腺を回収し、10%FBS(Sigma社製)を添加したDMEM/F12(1:1)培養液[ただしITS(BD Bioscience社製)を含む。]で培養した。この培養状態を初代培養と呼称する。図5に、ヒト子宮内膜組織より回収され、ブドウの房状の細胞塊を形成している内膜腺上皮細胞の顕微鏡写真を示す。実験2 遺伝子導入 HPV16E6及びHPV16E7遺伝子とhTERT遺伝子はレトロウイルス発現ベクターにて各々単独、または互いの組み合わせにより前記初代培養状態の内膜上皮細胞に導入した。導入に用いるレトロウイルス発現ベクターの構築は以下の如く行った。すなわち、HPV16E6又はHPV16E7遺伝子発現ベクターは、配列番号3記載のHPV16E6遺伝子配列又は配列番号2記載のHPV16E7遺伝子配列をLRシステム(invitrogen社製)を用いてレトロウイルスベクターに組み込んだ。またE6には多彩な機能があるため、機能解析を容易にするために、E6のp53結合能のみを保持しその他の機能を廃絶させた変異遺伝子E6Δ151(配列番号4)をも導入した。同E6Δ151はE6遺伝子よりKiyonoらの報告(Kiyono T et al, Proc Natl Acad Sci U S A.1997, 94:11612-11616)に従い欠失させて作成した。なおこれらの発現ベクターにはネオマイシン耐性遺伝子が組み込んであり、G418にて選択が可能である。 hTERT遺伝子発現ベクターは、配列番号1記載のhTERT遺伝子(cDNA)を前述した方法によりレトロウイルスベクターに組み込み、Kiyonoらの報告(Kiyono T et al, Nature 1998, 396: 84-88)に従い作成したものを用いた。なおこのベクターにはピューロマイシン耐性遺伝子を組み込んであるため、遺伝子導入細胞はピューロマイシンにより選択可能である。 前述した方法により組み換えを行ったレトロウイルスベクターのパッケージング細胞への導入と産生及び内膜上皮細胞への感染(導入)はNaviauxらの報告(Naviaux RK et al, J Virol. 1996, 70:5701-5705)に従って行った。また、この際、まずHPV16E6およびHPV16E7遺伝子を導入し、その後にhTERT遺伝子を導入した。実験3 遺伝子導入細胞の選択及び回収 前述した遺伝子導入後に、ベクター内に存在する選択マーカーを利用した薬剤セレクションにより、これらの遺伝子を保持発現しコロニーを形成している細胞を回収した。具体的には、まず、E6遺伝子又はE7遺伝子発現ベクターを単独あるいは同時に導入し、G418(Sigma社製)により薬剤選択を行う。これにより増殖してきた細胞にhTERT遺伝子発現ベクターを導入し、ピューロマイシン(Sigma社製)により薬剤選択を行い、増えてきた細胞を回収した。上述したセレクションの結果、図6に示す如く、計5種類の細胞株を回収した。その内訳は、HPV16E6遺伝子、E7遺伝子及びhTERT遺伝子を保持する3種の細胞株(EM−E6/E7/hTERT−1,EM−E6/E7/hTERT−2,及びEM−E6/E7/hTERT−3)、E6遺伝子及びE7遺伝子のみを保持する細胞(EM−E6/E7)、及び変異遺伝子E6Δ151とE7遺伝子及びhTERTを保持する細胞(EM−E6Δ151/E7/hTERT)であった。HPV16E6遺伝子、E7遺伝子又はhTERT遺伝子の単独導入を行った細胞は回収できなかった。実験4 遺伝子導入細胞における発現遺伝子 前述したセレクションの結果回収された5種類の細胞におけるE6遺伝子、E7遺伝子、及びhTERT遺伝子の発現はRT−PCR法にて確認した。RT−PCR法を行うに先立ち、各遺伝子に特異的なプライマー対を作製した。すなわち、E6遺伝子に特異的なforwardプライマー (配列番号5)及びreverseプライマー (配列番号6)、E7遺伝子に特異的なforwardプライマー (配列番号7)及びreverseプライマー(配列番号8)、そして、hTERT遺伝子に特異的なforwardプライマー(配列番号9)及びreverseプライマー(配列番号10)である。一方、上記回収された5種類の細胞株からIsogen(ニッポンジーン社製)を用いて精製したtotal RNAを材料として、oligo (dT) セルロースカラムを用いてpoly (A)+ RNAを精製した。cDNA作製はRNA PCR kit version 2 (宝酒造社製)により、ランダムプライマーを用いて行った。 引き続くPCR反応は、以下の如く行った。各細胞から調整したcDNA2μlに対して、10mM Tris−HCl(pH8.3)、2.5mM MgCl2、50mM KCl、各1mMのdATP、dCTP、dGTP及びdTTP、2.5unitsのGene Taq(ニッポンジーン社製)、及び各0.2μM のforward及びreverseプライマーを含む緩衝液50μlを加えた。各試料液に対して、変性反応94℃、30秒間、アニーリング反応55oC(HPV16E6又はE7プライマーを用いた場合)又は60oC(hTERTプライマーを用いた場合)、30 秒間、伸長72℃、45秒間を1サイクルとして28サイクルの反応を行った。なお、遺伝子発現の陽性対照として、Nakayamaらの報告(Nakayama J. et al, Nat Genet.1998, 18: 65-68)に従い、GAPDHに特異的なプライマーを用いて同様にPCR反応を行った。図7にPCR産物の7%ポリアクリルアミド電気泳動を行った結果を示す。EM−E6/E7細胞ではhTERT遺伝子の発現は認められていないが、hTERT遺伝子導入細胞ではその発現が確認できた。実験5 遺伝子導入細胞における性状解析 各細胞におけるテロメレース活性をTelomeric Repeat Amplification Protocol (TRAP)法によりTRAPEZEテロメレース検出キット (Intergen社製)を用いて測定した。図8にその結果を示す。hTERT遺伝子の発現がないEM−E6/E7細胞ではテロメレース活性は認められないものの、hTERT遺伝子を導入した細胞では明らかにテロメレース活性が認められた。またこれらの細胞の内膜上皮細胞由来を証明するために、免疫組織学的方法により、サイトケラチン、ビメンチン、CD34を染色した。5種類の細胞全てにおいてサイトケラチン陽性、ビメンチン陽性、CD34陰性を呈した。図9(a)にEM−E6/E7/TERT−3細胞におけるサイトケラチン染色結果(陽性)、図9(b)にビメンチン染色結果(陽性)、図9(c)にCD34染色結果(陰性)、及び図9(d)に抗体を作成した動物の血清をコントロールとして反応させた結果(陰性コントロール)を示す。上皮細胞は一般にサイトケラチン陽性、ビメンチン陰性(まれに陽性)であるが、正常内膜組織を染色した過去の成績ではサイトケラチン陽性、ビメンチン陽性であることが確認されており、上述した結果はこれに合致する。CD34は血管内皮マーカーであり、CD34陰性であることは血管内皮由来を否定するものである。さらに、前述したRT−PCR法に従い、内膜上皮細胞の特徴であるエストロゲンレセプター(ERα、使用したプライマーは配列番号11で示されるforwardプライマー及び配列番号12で示されるreverseプライマー)及びプロゲステロンレセプター(PR、使用したプライマーは配列番号13で示されるforwardプライマー及び配列番号14で示されるreverseプライマー)の発現を解析したところ、両者の発現が確認された(図7)。なお、ここでのPCR反応は、変性反応94℃、30秒間、アニーリング反応62oC、30 秒間、伸長72℃、45秒間を1サイクルとして行った。以上の解析よりこれら5種類の細胞が内膜腺上皮細胞由来である可能性が強く示唆された。実験6 細胞増殖パターンの解析 これら5種類の細胞は円形で、細胞間結合が強く、上皮細胞に典型的な形態を示す(図10)。安定的に培養が可能であり、遺伝子導入後約40回の分裂までは上記5種類の細胞はほぼ同様の増殖パターンを示した(図11)。ところがhTERTを導入していないEM−E6/E7は、約40回の分裂後、増殖が停止し、細胞は扁平、巨大化し、細胞老化を思わせる形態を示した[図12(a)及び(b)]。実際、老化細胞に特有のβ−gal染色陽性細胞が高率に出現してきた[図13(a)]。一方、EM−E6/E7/hTERT−1,2,3及びEM−E6Δ151/E7/hTERTでは増殖も停止することなく、また形態的にも扁平、巨大化することなく正常形態を保持し、β−gal染色陽性細胞の出現も認めなかった[図14及び図13(b)]。すなわち、hTERTを導入されていないEM−E6/E7では約40回の分裂時点で細胞老化が誘導されるが、hTERT導入細胞はこの障害を乗り越えていることが示された。実験7 テロメア長の解析 さらにこれら5種類の細胞のテロメア長をTRF length 法に従いTeloTTAGGG Telomere Length Assay Kit (Rosche社製)を用いて試験し、サザンブロット法により解析した結果を図15に示す。EM−E6/E7/hTERT−1,2,3及びEM−E6Δ151/E7/hTERTのhTERT導入細胞は分裂回数の増加に伴うテロメアの短縮は認められず、約10kbを保持していた。むしろEM−E6Δ151/E7/hTERTのようにテロメア長が逆に延長している細胞もみられた。これに対し、hTERTを導入されていないEM−E6/E7はテロメアが著しく短縮し、遺伝子導入後約40回の分裂時点では約5kbにまで短縮していた。これらの結果から、テロメレース活性を持たないEM−E6/E7細胞ではテロメア短縮により細胞老化を来すものの、その他の細胞はテロメレースによりテロメアが維持され、細胞老化を免れていると考えられた。実験8 細胞の三次元培養による形態解析 以上に述べた解析において、不死化形質を獲得していることが確認された4種類の細胞株、すなわちEM−E6/E7/hTERT−1,2,3及びEM−E6Δ151/E7/hTERTが正常内膜上皮細胞の形質をどの程度保持しているかを確認するために以下の実験を行った。先ず、マトリゲル(Becton Dickinson社製)を用いた三次元培養を行い、腺構造をとり得るかどうかを確認した。その結果、腺管状の立体構造を取ることが確認された[図16及び図17(a)〜(c)]。この腺管様構造のパラフィン包埋切片を作成し、断面を観察すると、内腔を形成する環状に並んだ細胞が確認され、腺管としての形態に類似する構造が確認された[図18(a)及び(b)]。実験9 細胞のステロイドホルモン応答性 さらにEM−E6/E7/hTERT−1,2,3及びEM−E6Δ151/E7/hTERT細胞のステロイドホルモンに対する反応性を確認した。エストロゲンである17β−estradiol(E2)を培養液中に加え、WST−1 assay(Boehringer Mannheim社製)を用いて増殖活性を測定したところ、1nM以上の濃度で48時間をピークに増殖促進効果が確認された[図19(a)及び(b)]。さらにプロゲステロンの一種であるmedroxy-progesterone acetate (MPA)を作用させたところ、一過性の増殖促進とそれに引き続いて起こる増殖抑制効果が確認された[図19(c)及び(d)]。なお、図19各図において、#はp<0.01を示し、*はp<0.001を示す。以上のことより、EM−E6/E7/hTERT−1,2,3及びEM−E6Δ151/E7/hTERT細胞は形態的にも機能的にも子宮内膜腺上皮細胞の形質を保持していることが確認された。実験10 細胞の癌化性質の解析 また、EM−E6/E7/hTERT−1,2,3及びEM−E6Δ151/E7/hTERT細胞の癌化形質についても解析した。これらの細胞を軟寒天培地上で培養しても全くコロニーを形成されなかった[図20(b)]。一方、コロニー形成の陽性対照として子宮内膜癌由来の癌細胞であるHEC−1細胞を用いた場合、高率にコロニー形成が認められた[図20(a)]。またヌードマウスにEM−E6/E7/hTERT−1,2,3又はEM−E6Δ151/E7/hTERT細胞を移植しても腫瘍を形成しなかった[図21(b)]。これに対して陽性対照として用いた子宮内膜癌由来の癌細胞であるIshikawa細胞では腫瘍形成が高率に認められた[図21(a)]。これらの結果より、EM−E6/E7/hTERT−1,2,3およびEM−E6Δ151/E7/hTERT細胞は癌化形質は獲得していないと思われた。また、染色体検査を行った結果を表1に示す。 表1に示す如く、EM−E6/E7/hTERT−1,3及びEM−E6Δ151/E7/hTERTにおいては染色体は正常であった。EM−E6/E7/hTERT−2ではnon−clonalな染色体転座を認めたものの軽微なものであった。なお、本実施例において樹立した不死化子宮内膜腺上皮細胞であるEM−E6/E7/hTERT−1, 2,3及びEM−E6Δ151/E7/hTERT細胞はその後も安定的に分裂を繰り返し、現在までに100回以上の分裂後も増殖を続け、また培養に伴う形態変化も認められていない。 本発明の不死化子宮内膜腺上皮細胞株は、正常体細胞の形質及び子宮内膜腺上皮細胞の形質を保持していることから、様々な分野において利用価値がある。特に生殖研究の分野において、本発明の不死化子宮内膜腺上皮細胞株を用いることにより、着床における受精卵の接着、さらには浸潤などの解析が可能になる。また、再生医学の分野でも、本発明の細胞株を利用することにより、内膜再生を実現できる可能性がある。さらに、本発明の細胞株はステロイドホルモン応答性が保持されている。したがって、ステロイドホルモンの作用、シグナル伝達の解析などにも有用な材料である。また、本発明の細胞株は癌化形質を獲得していないため、例えば新たな遺伝子操作を加えることにより内膜の多段階癌化ステップの解析を行うモデルとして極めて有用である。内膜癌の癌化過程においてはこれまで培養実験系自体が存在せず、試験管内の発癌実験が不可能であったので、本発明の細胞株は内膜癌化のメカニズムの解析に新たな道を開く可能性がある。テロメアの短縮による細胞増殖停止の機構を示すモデル図である。細胞周期調節因子の活性化による細胞増殖停止のモデル図である。E7及びE6による不活化を示すモデル図である。2段階のシネッセンスの回避のモデル図である。ヒト子宮内膜組織より回収され、ブドウの房状の細胞塊を形成している内膜腺上皮細胞の顕微鏡写真である。初代培養状態の子宮内膜腺上皮細胞に対してHPV16E6遺伝子、同E7遺伝子及びhTERT遺伝子を導入することにより長期培養が可能になり、回収された細胞のリストである。HPV16E6遺伝子、同E7遺伝子及びhTERT遺伝子を導入した細胞内におけるエストロゲンリセプター(ERα)、プロゲステロンリセプター(PR)、HPV16E6遺伝子、同E7遺伝子、hTERT遺伝子、及び遺伝子発現の陽性対象としてGAPDH遺伝子の各遺伝子発現をRT−PCR法及び電気泳動により解析した写真である。HPV16E6遺伝子、同E7遺伝子及びhTERT遺伝子を導入した細胞内におけるテロメレース活性をTRAP法及び電気泳動により解析した写真である。(a)はEM-E6/E7/TERT-3細胞におけるサイトケラチン染色結果、(b)は同細胞におけるビメンチン染色結果、(c)は同細胞におけるCD34染色結果、(d)は抗体を作成した動物の血清をコントロールとして反応させた結果(陰性コントロール)である。試験管内で培養中のEM−E6/E7/TERT−2細胞の顕微鏡写真である。EM−E6/E7/TERT−1、2細胞、及びEM−E6/E7細胞の増殖曲線である。(a)及び(b)はEM−E6/E7細胞(分裂回数40回)の試験管内培養状態の顕微鏡写真である。(a)はEM−E6/E7細胞(分裂回数40回)におけるβ−gal染色結果であり、(b)はEM−E6/E7/TERT−2細胞(分裂回数51回)におけるβ−gal染色結果である。EM−E6/E7/TERT−2細胞(分裂回数51回)の試験管内培養状態の顕微鏡写真である。EM−E6/E7/TERT−1細胞(分裂回数19回又は69回)、EM−E6/E7/TERT−2細胞(分裂回数22回又は51回)、EM−E6/E7/TERT−3細胞(分裂回数22回又は57回)、EM−E6Δ151/E7/hTERT細胞(分裂回数19回又は69回)、及びEM−E6/E7細胞(分裂回数22回又は40回)におけるテロメア長をTRFlength法及びサザンブロット法により解析した結果を示す図である。EM−E6/E7/TERT−2細胞をMatrigel上で三次元培養した状態の顕微鏡写真である。(a)〜(c)はEM−E6/E7/TERT−2細胞がMatrigel上で腺状構造を取っている状態の顕微鏡写真である。(a)及び(b)はEM−E6/E7/TERT−2細胞の腺状構造をHE染色した結果を示す顕微鏡写真である。EM−E6/E7/TERT−2細胞のステロイドホルモン応答性を解析した結果であり、(a)は培養液中にE2を1、10又は100nM添加し48時間後の増殖活性を測定した結果、(b)は培養液中にE2を100nM添加し経時的に増殖活性を測定した結果、(c)は培養液中にMPAを1、10又は100nM添加し48時間後の増殖活性を測定した結果、(d)培養液中にMPAを100nM添加し経時的に増殖活性を測定した結果を示す。(a)はHEC−1細胞の軟寒天培地上でのコロニー形成試験結果を示し、(b)はEM−E6/E7/TERT−1細胞の軟寒天培地上でのコロニー形成試験結果を示す。(a)はIshikawa 細胞のヌードマウス皮下での腫瘍塊形成試験結果であり、(b)はEM−E6/E7/TERT−1細胞のヌードマウス皮下での腫瘍塊形成試験結果である。 外因性の不死化遺伝子が導入されるとともに、非癌細胞としての形質及び典型的な子宮内膜腺上皮細胞としての形質が保持されていることを特徴とする不死化子宮内膜腺上皮細胞株。 上記外因性の不死化遺伝子は、テロメレース活性を誘導する遺伝子、及び細胞周期調節因子を不活化する遺伝子であることを特徴とする請求項1記載の不死化子宮内膜腺上皮細胞株。 上記テロメレース活性を誘導する遺伝子は、配列番号1記載のヒトテロメレース触媒サブユニットであることを特徴とする請求項1記載の不死化子宮内膜腺上皮細胞株。 上記細胞周期調節因子を不活化する遺伝子は、配列番号2記載のヒトパピローマウイルス16型E7遺伝子、及び配列番号3記載のヒトパピローマウイルス16型E6遺伝子であることを特徴とする請求項2又は3記載の不死化子宮内膜腺上皮細胞株。 上記細胞周期調節因子を不活化する遺伝子は、配列番号2記載のヒトパピローマウイルス16型E7遺伝子、及び配列番号4記載のヒトパピローマウイルス16型E6Δ151変異遺伝子であることを特徴とする請求項2又は3記載の不死化子宮内膜腺上皮細胞株。 ヒト子宮内膜組織由来であることを特徴とする請求項1記載の不死化子宮内膜腺上皮細胞株。 上記非癌細胞としての形質は、 培養時に足場依存性を有すること、 ヌードマウスに腫瘍を形成しないこと、 及び染色体異常が見られないこと、 であることを特徴とする請求項1記載の不死化子宮内膜腺上皮細胞株。 上記典型的な子宮内膜腺上皮細胞としての形質は、 細胞形状がほぼ円形で、細胞間結合の強い上皮細胞形態を有すること、 腺状構造を構築する能力を有すること、 サイトケラチン陽性及びビメンチン陽性であること、 エストロゲンレセプター及びプロゲステロンレセプターを発現すること、 及びステロイドホルモン応答性を有すること、 であることを特徴とする請求項1記載の不死化子宮内膜腺上皮細胞株。 ヒト子宮内膜組織より子宮内膜腺上皮細胞を分離回収し、初代培養を行った後に、培養細胞に外因性の不死化遺伝子を導入することを特徴とする不死化子宮内膜腺上皮細胞株の作製方法。 上記外因性の不死化遺伝子として、テロメレース活性を誘導する遺伝子、及び細胞周期調節因子を不活化する遺伝子を重複導入することを特徴とする請求項9記載の不死化子宮内膜腺上皮細胞株の作製方法。 上記テロメレース活性を誘導する遺伝子は、配列番号1記載のヒトテロメレース触媒サブユニットであることを特徴とする請求項10記載の不死化子宮内膜腺上皮細胞株の作製方法。 上記細胞周期調節因子を不活化する遺伝子は、配列番号2記載のヒトパピローマウイルス16型E7遺伝子、及び配列番号3記載のヒトパピローマウイルス16型E6遺伝子であることを特徴とする請求項10又は11記載の不死化子宮内膜腺上皮細胞株の作製方法。 上記細胞周期調節因子を不活化する遺伝子は、配列番号2記載のヒトパピローマウイルス16型E7遺伝子、及び配列番号4記載のヒトパピローマウイルス16型E6Δ151変異遺伝子であることを特徴とする請求項10又は11記載の不死化子宮内膜腺上皮細胞株の作製方法。 上記内膜腺上皮細胞は、ヒト子宮内膜組織を細切した後、DNA分解酵素タイプ1及びコラーゲン分解酵素タイプ3による処理を行い、顕微鏡下に内膜腺細胞塊を回収することにより分離回収することを特徴とする請求項9記載の不死化子宮内膜腺上皮細胞株の作製方法。 【課題】 不死化により半永久的に継代培養が可能で、しかも正常形質を有する子宮内膜腺上皮細胞株を提供する。【解決手段】 外因性の不死化遺伝子が導入され不死化された不死化子宮内膜腺上皮細胞株である。非癌細胞としての形質及び典型的な子宮内膜腺上皮細胞としての形質が保持されている。外因性の不死化遺伝子としては、テロメレース活性を誘導する遺伝子、及び細胞周期調節因子を不活化する遺伝子を重複導入する。テロメレース活性を誘導する遺伝子は、ヒトテロメレース触媒サブユニットであり、細胞周期調節因子を不活化する遺伝子は、ヒトパピローマウイルス16型E7遺伝子及びヒトパピローマウイルス16型E6遺伝子である。ヒトパピローマウイルス16型E6遺伝子の代わりにヒトパピローマウイルス16型E6Δ151変異遺伝子を導入してもよい。【選択図】 図1配列表