タイトル: | 公開特許公報(A)_歯科用蛍光体ガラスフィラー、歯科材料、及び歯科情報の記録読取方法 |
出願番号: | 2003278660 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A61K6/00,A61C5/00,A61C8/00,A61K6/02 |
新谷 昭 宇尾 基弘 亘理 文夫 谷 和俊 森田 学 JP 2005041825 公開特許公報(A) 20050217 2003278660 20030723 歯科用蛍光体ガラスフィラー、歯科材料、及び歯科情報の記録読取方法 豊田合成株式会社 000241463 平田 忠雄 100071526 新谷 昭 宇尾 基弘 亘理 文夫 谷 和俊 森田 学 7A61K6/00A61C5/00A61C8/00A61K6/02 JPA61K6/00 ZA61C5/00A61C8/00 ZA61K6/02 11 6 OL 14 4C052 4C059 4C089 4C052AA06 4C052AA17 4C059AA12 4C089AA06 4C089AA20 4C089BA01 本発明は、歯科用蛍光体ガラスフィラー、歯科材料、及び歯科情報の記録読取方法に関し、特に、紫外線によって励起する蛍光体の含有により特定の情報を記録できる歯科用蛍光体ガラスフィラー、歯科材料、及び歯科情報の記録読取方法に関する。 図8は、齲蝕(うしょく:虫歯)の治療後の状態を示し、図9及び図10は審美治療前と後の一例を示す。 虫歯治療の場合、図8に示すように、歯101,102の治療部分に歯科用プラスチック材料による充填材103(歯科材料)が充填される(104は顎)。また、図9に示すように、歯並びの悪い歯105(上顎104A側),106,107(下顎104B側)等を図10に示す歯108(上顎104A側),109,110(下顎104B側)等のように綺麗にするといった審美治療がある。図10のような治療は、隙間の大きい歯、傾きのある歯、隙間の大きい歯などに、部分的に充填材103を付加して形や隙間を修復することにより達成される。 審美性の高い歯科材料として、コンポジットレジンとグラスアイオノマーセメントがある。コンポジットレジンは、メタクリル酸樹脂(PMMA)やその類似物のポリマーをマトリックスとし、耐摩耗性や強度を高めるためアルミノシリケート系ガラスフィラーを最大で70〜80%添加したものである。また、グラスアイオノマーセメントは、ガラス粉末とポリアクリル酸を使用時に混和して使用するもので、小さな欠損部の充填や金属・セラミックス修復物の接着に用いられている。 このコンポジットレジンとグラスアイオノマーセメントは、いずれも乳白色の色調を呈し、やや透明感を持ち天然歯に類似した外観を持っている。特に、コンポジットレジンは多様な色調が用意されていることもあり、適切に使用すれば治療部と天然歯部分との見分けがつかない程度に周囲と調和させることが可能である。この様な理由から、近年ではコンポジットレジンが広く利用されている。 上記したコンポジットレジンとして、加工及び治療を容易にするため、光硬化性を有する樹脂材を用いたものがある。このコンポジットレジンは、治療対象の歯の治療箇所に適量を充填又は付加した後、充填又は付加した部分に紫外線を照射して硬化させる。 従来、虫歯等の欠損部には金属材を充填していたため、治療部位が明らかに周囲の天然歯と異なり、特に、前歯部では治療跡が患者(特に女性)に精神的な負担を強いていた。しかし、コンポジットレジンは、天然歯に近似した色調及び光沢を持つため、患者に治療したことを意識させることがない。また、コンポジットレジンは光硬化型のため、加工が容易で、樹脂硬化に要する時間を短くでき、治療に要する時間を短縮できるので、患者及び医師等の負担が軽減される。 また、コンポジットレジンに、強靭性、接着耐久性、透明性等の特性を持たせるものとして、硬質レジン歯表面の補修必要個所に光重合型歯科用接着組成物を塗布することが提案されている。光重合型歯科用接着組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートが均質に混合している硬化性組成物、4−アクリロキシエチルトリメリット酸、及び重合開始剤、重合促進剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、顔料、不透明化剤から選択される少なくとも1種の添加成分を含んだものとし、硬質レジン前装冠材料或いはコンポジットレジンに塗布し、コンポジットレジンを接着させることができるようにしている(例えば、特許文献1参照)。特開2000−7517号公報 しかし、従来のコンポジットレジンによると、天然歯に近似した色調及び光沢が得られるため、治療後は天然歯との違いを見分け難いという利点がある反面、専門家でも注意して観察しなければ過去の治療部位を特定できず、集団検診(学校検診)など、短時間に多くの対象者を観察する必要がある場合、治療状況を正確に把握することが困難になるという問題がある。 また、一度、治療して歯科材料を充填した部位でも、内部で再度齲蝕が発生することがあり(二次齲蝕)、治療部位を正確に把握することが重要であるものの、このような見分けを正確に行うことが難しくなっている。 また、特許文献1の歯科用接着組成物によると、コンポジットレジン自体の特性は不変であるため、天然歯に近似した色調及び光沢が維持され、やはり、治療後の天然歯との違いを見分けることが困難であるという事情は変わらない。 従って、本発明の目的は、歯科検診等において、天然歯との識別を容易に行うことのできる歯科用蛍光体ガラスフィラー及び歯科材料を提供することにある。 本発明の他の目的は、歯科の治療又は診療に関する情報を歯科材料に記録し、これを読み取ることのできる歯科情報の記録読取方法を提供することにある。 本発明は、上記の目的を達成するため、第1の特徴として、歯の治療箇所への充填、歯の審美治療等に用いられる歯科材料に混入されるガラスフィラーにおいて、紫外光又は可視光によって蛍光を発する希土類酸化物を含有することを特徴とする歯科用蛍光体ガラスフィラーを提供する。 この構成によれば、紫外光又は短波長の可視光によって蛍光を発する希土類酸化物がガラスフィラーに添加されていることにより、治療を行った後、天然歯との違いが目視により見分け難い状態にあっても、紫外光又は短波長の可視光の照射に伴って蛍光が発生したか否かにより、容易に天然歯と歯科材料を識別できるようになる。 本発明は、上記の目的を達成するため、第2の特徴として、歯の治療箇所への充填、審美治療等に用いられる歯科材料において、コンポジットレジン又はグラスアイオノマーセメントと、紫外光又は可視光によって蛍光を発する希土類酸化物を含有し、前記コンポジットレジン又は前記グラスアイオノマーセメントに添加されるガラスフィラーとを含むことを特徴とする歯科材料を提供する。 この構成によれば、紫外光又は短波長の可視光によって蛍光を発する希土類酸化物が添加されたガラスフィラーがコンポジットレジン又はグラスアイオノマーセメントに混合された歯科材料としたことにより、歯科材料を治療に用いた後、天然歯との違いが目視により見分け難い状態であっても、紫外光又は短波長の可視光の照射に伴って蛍光が発生したか否かにより、容易に天然歯と歯科材料を識別できるようになる。 本発明は、上記の目的を達成するため、第3の特徴として、紫外光又は短波長の可視光によって蛍光を発する希土類酸化物の種類及び濃度を、記録させるデータに応じて選択し、歯の治療、審美治療等に用いられる歯科材料に前記希土類酸化物を添加し、前記希土類酸化物が添加された前記歯科材料を前記治療に使用し、前記治療に供した前記歯科材料に前記紫外光又は前記可視光を照射し、前記紫外光又は前記可視光によって前記歯科材料に励起された蛍光を検出し、前記検出した蛍光のスペクトルに基づいて前記歯科材料に記録されている情報に基づく信号を生成することを特徴とする歯科情報の記録読取方法を提供する。 この方法によれば、記録させたいデータに応じて種類及び濃度を選択した希土類酸化物を含む歯科材料を歯科治療等に用いることにより、治療後に歯科材料に紫外光又は短波長の可視光を照射すれば、その際に発生する蛍光のスペクトルの発生状態から情報を読み取ることができる。従って、天然歯と歯科材料の識別が可能であると同時に、情報の記録及び読み取りが可能になる。 本発明の歯科用蛍光体ガラスフィラー及び歯科材料によれば、紫外光によって蛍光を発する希土類酸化物がガラスフィラー又はコンポジットレジン又はグラスアイオノマーセメントに混合された歯科材料としたことにより、治療に用いた後、天然歯との違いが見分け難い状態であっても、紫外光又は可視光の照射に伴って蛍光が発生したか否かにより、容易に天然歯と歯科材料を識別できるため、歯科検査、歯科治療等が容易になる。 更に、本発明の歯科情報の記録読取方法によれば、記録したいデータに応じて種類及び濃度を選択した希土類酸化物を含む歯科材料を歯科治療等に用い、治療後に前記歯科材料に前記紫外光又は前記可視光を照射することにより、励起されて発生する蛍光のスペクトルの発生状態から情報を読み取るようにしたので、天然歯と歯科材料の識別が可能であると同時に、情報の記録及び読み取りが可能になる。 以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。 本発明は、ガラスフィラーに蛍光物質を添加して蛍光体ガラスフィラーとし、この蛍光体ガラスフィラーをコンポジットレジン又はグラスアイオノマーセメントに混合することにより歯科材料を得るものである。 歯科材料を歯に充填したり部分的に付加した場合、治療後に充填又は付加部分に白色光等を当てた場合でも、当該部分が天然歯の部分と異なる色に見えるため、歯科材料部分と天然歯部分とを見分けることができる。歯科材料、例えば、コンポジットレジンに蛍光物質が含まれていると、紫外光の照射によって蛍光を発することから、可視光による励起に比べ、用いた歯科材料の視認性が高められる。 次に、本発明の実施の形態に係る蛍光体ガラスフィラー及びこれを用いた歯科材料の製造方法について説明する。(1)希土類酸化物として、Eu2O3、Dy2O3、Tb4O7、Ho2O3、Er2O3、Sm2O3(いずれも純度99.9%以上)を用いた。(2)ガラスマトリックスとして、10Na2O・49B2O3・1Al2O3・40SiO2の組成となるように、Na2B4O7、B2O3、Al2O3、SiO2(いずれも試薬特級)の少量を混合した。なお、ここに示す組成は、ガラス溶融を容易にする都合上、便宜的に低融点の組成を選んだものであり、他の組成でも不都合はない。(3)上記ガラスマトリックスに重量でそれぞれ2,5,7,10wt%となるように各種希土類酸化物を混合し、アルミナ坩堝中で1100℃×2時間の溶融後、黄銅板上に流し出し、他の黄銅板で挟んで急冷し、ガラス化させた。なお、希土類濃度が高い場合、急冷しないと結晶化するため、ガラスにならない。こうして得られたガラスは粉砕し、これを325メッシュの篩いによって微粉を採取した。更に、微粉ガラスをメノウ乳鉢で粉砕し、ガラスフィラーを作成した。(4)最後に、コンポジットレジンを作成した。レジンマトリックスには、UDMA(ウレタンジメタクリレート)樹脂に光重合開始剤としてカンファーキノンを添加したものを用いた。それで、上記(3)で作成したガラス粉末と、レジンとが重量比で1:1,2:1,3:1(ガラス/レジン比)となるように秤量し、乳鉢で混合した後、直径6mm、厚さ2mmのプラスチック型に填入し、表面を平滑にするため、カバーガラスで圧接した。(5)上記(4)により得られた充填物(コンポジットレジン)に歯科用光重合器(中心波長が500nm前後)で光を照射して重合させ、固化物を作成した。この固形物に励起源によって紫外光を照射し、目視による観察及びデジタルカメラによる撮影を行って識別性を確認した。更に、蛍光測定は蛍光分光光度計を用いて行った。 励起源として、構成の簡素化の観点から分光の必要のない紫外光LED(例えば、中心波長が383nmのもの)が適している。中心波長が383nmの紫外光LEDに対しては、希土類酸化物として、Euが上記波長(383nm)で良く励起され、可視域において蛍光を得ることができた。 次に、蛍光体ガラスフィラーを用いた歯科材料として、Eu含有コンポジットレジンを例に、その励起、蛍光スペクトルの測定結果を説明する。 図1は、10wt%Eu2O3を含有したガラスフィラーを3:1の重量比でレジンと混合・重合した試料を励起したときの蛍光スペクトルを示す。図1より明らかなように、395nmの波長において、7F0→5L6遷移による強い励起が見られ、更に382nm付近にも励起が見られた。また、蛍光スペクトルでは、613nmを中心とする強い蛍光が観察された。この結果から、Euは、紫外LEDによる励起が可能であることがわかる。 図2は、ガラス中のEu2O3濃度とEu含有ガラス/レジンの重量比による蛍光強度(396nm励起)の変化を示す。Eu2O3濃度とレジンに対するEu含有ガラスの比が高くなるにつれて蛍光強度がやや増加しているが、濃度が高くなるにつれて増加率は減少している。この結果から、Eu2O3が5wt%、対レジン比2:1以上で十分な蛍光強度が得られることがわかる。以上より、Eu2O3含有ガラスフィラーを用いたコンポジットレジンは近紫外及び短波長の可視光励起により十分な蛍光性を示すことがわかる。 また、本発明者らは、10wt%Eu2O3ガラスフィラーを各種重量比でコンポジット化したものを、紫外LED照射下で撮影して比較検討した。図1に示されるように、Euは613nmを中心とする強い蛍光が生じている。そこで、560nmのシャープカットフィルターを通して撮影し、560nmにおける蛍光発生の影響を観察した。更に、比較のため、在来コンポジットレジン(「Vita・shade・A4」スリーエム株式会社登録商標)も同時に撮影した。その結果、在来コンポジットレジンは全く蛍光を発せず、一方、Eu含有レジンはレジンに対するガラス含有量を高めると、蛍光性も高くなっていることを観察できた。そして、目視では、写真よりも更に蛍光を明瞭に視認できた。 図3は、天然歯の歯質とEu含有コンポジットレジンの蛍光スペクトル(396nm励起)を示す。天然歯は、外部が硬く無機質(水酸アパタイト)の多いエナメル質、内部が柔らかく有機質の多い象牙質から成る二重構造になっており、更に、健全な歯の表面はエナメル質で覆われている。 図3の蛍光スペクトルから明らかなように、Eu含有コンポジットレジンはエナメル質に比べて高い蛍光強度を示しており、蛍光により天然歯と識別できる可能性が考えられる。また、象牙質は短波長側ではコンポジットレジンよりも強い蛍光を示すが、長波長側(560nm以上)でEu含有コンポジットレジンが強い蛍光を発している。従って、象牙質が露出していた場合でも、シャープカットフィルター(HOYA株式会社製、O56等)を用いれば、蛍光を検知することが可能になる。 図4は、ヒト抜去歯(大臼歯)の咬合面に窩洞を形成し、Eu含有コンポジットレジン(10wt%Eu2O3,ガラス/レジン比=2:1)と、比較のために在来コンポジットレジンとをそれぞれの歯101および102に充填し、白色光照射下(a)及び紫外LED照射下(b)で撮影した写真を示す。図4(a)及び(b)において、左側の歯101は、在来のコンポジットレジン103Aを充填した歯であり、右側の歯102は、Eu含有コンポジットレジン103Bを充填している。 図4の(a)を参照すると、白色光下では、コンポジットレジン103A、Eu含有コンポジットレジン103B共に歯質に類似した色調を呈している。Eu含有コンポジットレジン103Bはコンポジットレジン103Aに比べ、やや歯質との違いが大きいが、これは、コンポジットレジン103Aと同様にガラス粉末の粒度や形状を工夫することにより解決可能である。図4の(b)を参照すると、紫外LED照射下では、コンポジットレジン103Aは全く紫外照射に反応を示さないのに対し、Eu含有コンポジットレジン103Bは明瞭な蛍光(ドット状に示す部分)を呈し、良好な視認性が得られることがわかる。 図5は、含有蛍光物質の相違によるコンポジットレジンの蛍光スペクトル(396nmによる励起)を示す。本発明者らは、Euのほか、Dy(ジスプロシウム)、Tb(テルビウム)が良好な蛍光性を示すことに着目し、Eu2O3、Dy2O3、Tb4O7をそれぞれ5wt%含有した蛍光体ガラスフィラーを作成した。そして、それぞれの蛍光体ガラスフィラーについてコンポジットレジンを作成し、その蛍光スペクトルを測定した。その結果が図5である。 図6は、2種類の蛍光体を含有するコンポジットレジン(Eu+Dy、及びEu+Tb)による蛍光スペクトルを示す。Eu、Dy、Tbは、Eu2O3、Dy2O3、Tb4O7をそれぞれ5wt%含有した蛍光体ガラスフィラーを用いたコンポジットレジンによる蛍光スペクトル(396nm励起)を示す。 図5から明らかな様に、Eu、Dy、Tbのそれぞれは、蛍光スペクトル上で波長が顕著に表れることから、Eu、Dy、Tbの何れを用いても図4に示したように、歯質と充填物とを識別できるので、良好な視認性が得ることができる。図5のように、Eu、Dy、Tbは、蛍光スペクトル上でピーク波長が得られることから、EuにDyやTbを混合した場合でも、図6に示すように、個々の蛍光を識別することができる。この特徴から、複数の蛍光物質を濃度を変化させてガラスに含有させれば、種類や濃度の組み合わせに応じた情報記録が可能になる。これについて、以下に説明する。 図7は、歯に本発明に係る歯科材料を施した後、その歯科材料に記録された情報を読み取り、本発明に係る歯科情報の記録読取方法を実現する情報読取システムの構成を示す。 下顎1に存在する歯2には、治療の結果、歯科材料としての蛍光体含有コンポジットレジン3が虫歯治療の部分に充填されている。蛍光体含有コンポジットレジン3は、図5及び図6で説明したように、Eu、Tb、Dy等より選択した1又は複数の希土類酸化物(蛍光体)を用いる。これにより、後述する様に情報を記録することが可能になる。 情報読取システム10は、紫外光17を発生する紫外光LED11と、歯2の蛍光体含有コンポジットレジン3からの蛍光を検出して紫外光−電気変換を行う検出器12と、検出器12からの信号を処理する蛍光分光光度計13と、蛍光分光光度計13による測定結果を処理して数値やグラフ等によりプリントアウトし或いはデータとして保存する処理を実行する処理装置14と、処理装置14の処理結果や入力結果を表示するディスプレイ15と、処理装置14による処理結果をプリントアウトするプリンタ16とを備えて構成されている。 紫外光LED11には、図示しない電源装置から電源供給が行われる。紫外光LED11と検出器12は、一体化されていても、分離されていてもよい。また、コンポジットレジン硬化用の既存の歯科治療器具がコンポジットレジンの励起発光用光源として共用できる。 検出器12は、光検出素子を用いて構成されている。蛍光分光光度計13は、測定器メーカー等から市販されているものであり、蛍光体含有コンポジットレジン3からの蛍光を測定する。紫外線や波長の短い可視光線を物質に照射したとき、その物質を構成している分子又は原子の種類や状態により固有のエネルギー(特定波長範囲の光)を吸収し、或るエネルギーを持った励起状態の分子(又は原子)となり、これが元の状態に戻る際に蛍光と呼ばれる光を発するが、この蛍光を測定し、定量分析や構造分析を行うために用いられるのが蛍光分光光度計である。 処理装置14はパーソナルコンピュータを利用することができるほか、蛍光分光光度計13に処理装置14の機能が含まれた構成であってもよい。或いは、処理装置14が蛍光分光光度計13の機能を備える構成でもよいし、他の歯科治療用の機器に蛍光分光光度計13と処理装置14の機能を内蔵させてもよい。 但し、入出力のインターフェースは、広く普及しているUSB(Universal Serial Bus)、RS−232C(Recommended Standard 232C )等を用いることにより、パーソナルコンピュータ用の周辺機器を流用できるので、システムを組みやすくなる。ディスプレイ15は、CRT(陰極線管)表示装置、液晶表示装置(LCD)等を用いることができる。プリンタ16は、レーザープリンタ、インクジェットプリンタ等の汎用品を用いることができる。 図7において、歯2に充填された蛍光体含有コンポジットレジン3には、紫外光15が照射光として紫外光LED11により所定の角度から照射される。紫外光15の照射に応じて発生した蛍光18は、検出器12によって検出され、所定の電気信号に変換され、蛍光分光光度計13に送られる。蛍光分光光度計13では、図6に示した様な蛍光スペクトルに対応したデータを生成する。このデータは処理装置14に送られる。処理装置14は、蛍光スペクトルの各ピークの波長が或るレベル以上にあるとき、その信号をデジタルの“1”として出力する。 例えば、図5の様な蛍光スペクトルが測定された場合、蛍光体がDyであれば、480nmと575nmにピークがある。また、蛍光体がTbであれば、490nm、545nm、及び585nmにピークがある。更に、蛍光体がEuであれば、578nm、590nm、及び613nmにピークがある。このピークと、大、中、小の3つの強度レベルから以下の3種類の信号が得られる。 Dy=小レベル1、小レベル2 Tb=中レベル、大レベル Eu=小レベル、中レベル、大レベル また、デジタル化も可能である。すなわち、上記3種類の蛍光体の全てで得られる蛍光波長(480nm、490nm、545nm、575nm、585nm、590nm、613nmの7波長)を基に符号化を行えば、次の3つが得られる。(i)Dy=480nm、(490nm)、(545nm)、575nm、(585nm)、(590nm)、(613nm)=1,0,0,1,0,0,0=「1001000」(ii)Tb=(480nm)、490nm、545nm、(575nm)、585nm、(590nm)、(613nm)=0,1,1,0,1,0,0=「110100」(iii)Eu=(480nm)、(490nm)、(545nm)、(575nm)、585nm、590nm、613nm=0,0,0,0,1,1,1=「111」 上記の様な処理により3つの信号が得られたが、更に多くするには、蛍光体の種類を増やすか、図6のように、複数の蛍光体を混合すればよい。図6の場合、蛍光体が「EU+Tb」であれば、488nm、542nm、578nm、590nm、613nmにピークがある。また、蛍光体が「Eu+Dy」であれば、480nm、578nm、590nm、613nmにピークがある。従って、下記の様に、5又は4つの波長に対応した信号が得られる。更に、上記したEuのみ、Dyのみ、及びTbのみを加えると、5種類の信号が得られる。(1)Eu+Tb=(480nm)、488nm、542nm、578nm、590nm、613nm=0,1,1,0,1,1=「11011」(2)Eu+Dy=480nm、(488nm)、(542nm)、578nm、590nm、613nm=1,0,0,1,1,1=「100111」(3)Euのみ=「111」(4)Dyのみ=「1001000」(5)Tbのみ=「110100」 このように、蛍光体の種類を選択し、更に複数の蛍光体を組み合わせ(混合)ることにより、情報を記録することができる。逆に、波長と蛍光18の受光の有無を把握することにより情報を読み取ることができる。なお、以上は1本の歯についての情報であるので、同時に複数の歯に記録することができれば、全体の情報量は2倍以上になる。また、1本の歯に、Euのみの充填、Tbのみの充填等を部分的に分けて施すことによっても、情報量を増やすことができる。 上記記録の使用例としては、例えば、担当医の識別がある。A医師はTbを使用、B医師はDyを使用等と決めておき、治療時に添加する蛍光体を選択するのみで、カルテを調べなくとも即座に担当医を知ることができる。このほか、治療年度の記録に用いることもできる。この場合、上記したように記録データが5種類程度であれば、以下の様に1つの情報に2〜3年を割りふればよい。 Euのみ=「111」=1990〜1992 Dyのみ=「1001000」=1994〜1996 Tbのみ=「1101100」=1998〜2000 Eu+Tb=「11011」=2002〜2004 Eu+Dy=「100111」=2006〜2008 Euのみ=「111」=2010〜2012 ・ = ・ = ・ 〜 ・ ・ = ・ = ・ 〜 ・ ・ = ・ = ・ 〜 ・ なお、上記実施の形態においては、歯科材料としてコンポジットレジンについて説明したが、本発明はコンポジットレジンに限定されるものではなく、グラスアイオノマーセメントに適用することもできる。 蛍光体としての希土類酸化物についても、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)についてのみ示したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、ほかに使用できるものとして、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、サマリウム(Sm)等がある。10wt%Eu2O3を含有したガラスフィラーを3:1の重量比でレジンと混合・重合した試料を励起したときの蛍光スペクトル特性図である。ガラス中のEu2O3濃度とEu含有ガラス/レジンの重量比による蛍光強度の変化を示す説明図である。天然歯の歯質とEu含有コンポジットレジンの蛍光スペクトルを示す特性図である。ヒト抜去歯(大臼歯)の咬合面に窩洞を形成し、Eu含有コンポジットレジンを充填し、また比較のために在来コンポジットレジンを充填し、それぞれを白色光照射下(a)及び紫外LED照射下(b)で撮影した写真である。含有蛍光物質の相違によるコンポジットレジンの蛍光スペクトル(396nmによる励起)を示す特性図である。2種類の蛍光体を含有するコンポジットレジン(Eu+Dy、及びEu+Tb)による蛍光スペクトルを示す特性図である。歯に施した歯科材料に記録された情報を読み取る情報読取システムの構成を示すブロック図である。齲蝕(虫歯)の治療後の状態を示す模式的平面図である。審美治療前の歯の状態を示す外観図である。審美治療後の歯の状態を示す外観図である。符号の説明1、下顎2、歯3、蛍光体含有コンポジットレジン10、情報読取システム11、紫外光LED12、検出器13、蛍光分光光度計14、処理装置15、ディスプレイ16、プリンタ101,102,108,109,110、歯103、充填材(歯科材料)103A、充填材(Eu含まず)103B、充填材(Eu含有)104A、上顎104B、下顎105,106,107、歯並びの悪い歯歯の治療箇所への充填、歯の審美治療等に用いられる歯科材料に混入されるガラスフィラーにおいて、 紫外光又は可視光によって蛍光を発する希土類酸化物を含有することを特徴とする歯科用蛍光体ガラスフィラー。前記希土類酸化物は、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、サマリウム(Sm)のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の歯科用蛍光体ガラスフィラー。前記紫外光又は可視光は、380nmから400nmであることを特徴とする請求項1記載の歯科用蛍光体ガラスフィラー。歯の治療箇所への充填、審美治療等に用いられる歯科材料において、 コンポジットレジン又はグラスアイオノマーセメントと、 紫外光又は可視光によって蛍光を発する希土類酸化物を含有し、前記コンポジットレジン又は前記グラスアイオノマーセメントに添加されるガラスフィラーとを含むことを特徴とする歯科材料。前記希土類酸化物は、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、サマリウム(Sm)のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項4記載の歯科材料。前記希土類酸化物は、前記歯科材料に記録させるデータの内容に応じて種類及び濃度が選択されることを特徴とする請求項4又は5記載の歯科材料。前記ユウロピウム(Eu)は、含有量が5wt%であることを特徴とする請求項5記載の歯科材料。前記紫外光又は可視光は、380nmから400nmであることを特徴とする請求項4記載の歯科材料。紫外光又は可視光によって蛍光を発する希土類酸化物の種類及び濃度を、記録させるデータの内容に応じて選択し、 歯の治療、審美治療等に用いられる歯科材料に前記希土類酸化物を添加し、 前記希土類酸化物が添加された前記歯科材料を前記治療に使用し、 前記治療に供した前記歯科材料に前記紫外光又は前記可視光を照射し、 前記紫外光又は前記可視光によって前記歯科材料に励起された蛍光を検出し、 前記検出した蛍光のスペクトルに基づいて前記歯科材料に記録されている情報に基づく信号を生成することを特徴とする歯科情報の記録読取方法。前記希土類酸化物は、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、サマリウム(Sm)のうちの1又は複数を含むことを特徴とする請求項9記載の歯科情報の記録読取方法。前記紫外光又は可視光は、380nmから400nmであることを特徴とする請求項9記載の歯科情報の記録読取方法。 【課題】 天然歯との識別が容易に行えるようにする歯科用蛍光体ガラスフィラー及び歯科材料を提供する。【解決手段】 歯の治療箇所への充填、歯の審美治療等に用いられる歯科材料に混入されるガラスフィラーに、紫外光によって蛍光を発するEu、Dy,Tb等の1種又は複数種の希土類酸化物を含有して構成される歯科用蛍光体ガラスフィラー、或いは、この歯科用蛍光体ガラスフィラーをコンポジットレジン又はグラスアイオノマーセメントに添加して構成される歯科材料は、天然歯と歯科材料の違いが見分け難い状態であっても、紫外光又は可視光の照射に伴って蛍光が発生するか否かにより、容易に天然歯と歯科材料を識別できるようになる。【選択図】 図6