タイトル: | 公開特許公報(A)_醗酵タンク(ジャー・ファーメンター) |
出願番号: | 2003277960 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12M1/00 |
竹内 聰 JP 2005040061 公開特許公報(A) 20050217 2003277960 20030723 醗酵タンク(ジャー・ファーメンター) 竹内 聰 303032546 竹内 聰 7C12M1/00 JPC12M1/00 D 3 4 OL 10 4B029 4B029AA02 4B029BB01 4B029CC01 4B029DA04 4B029DB01 4B029DB19 4B029DD02 4B029DF01 4B029DG10 本発明は、自然科学分野において、微生物の増殖を目的とする小型の汎用型醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)に関するものである。 従来の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)は、外界と遮断する手段は、金属製の密閉タンクで、接種口、pH調節用酸溶液の容器とその取付口、アルカリ溶液の容器とその取付口、消泡剤用の容器とその取付口、泡検出センサー取付口、圧力計装着口及び排気口などはタンクの上部に、pH検出センサーの取付口、溶存酸素検出センサーの取付口、温度検出センサーの取付口及び邪魔板は、タンクの胴体に、無菌空気の供給部、モーターで回転させる撹拌子はタンクの底に設けていた。 このような金属性醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)の滅菌方法は高圧蒸気法である。醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)を定位置に固定し、高圧に耐えるタンクは勿論のこと、配管及びバルブを設けて高圧蒸気発生装置より、高圧蒸気をタンク本体へ、タンク容量以上の高圧蒸気量を送らなければならない。その結果付帯設備として高圧蒸気発生装置が必要であり、タンク自体の自重は重く、pH調節用酸溶液の容器とその取付口、アルカリ溶液の容器とその取付口、消泡剤用の容器とその取付口、泡検出センサー取付口、接種口、圧力計装着口、排気口を初め、pH検出センサー取付口、温度検出センサー取付口、溶存酸素検出センサー取付口、無菌空気投入口及び撹拌子のメカニカルシール部を、タンク本体に取り付ける加工は容易でない。また使用者にとってもタンクの清掃は困難であり、バルブの数も多く、運転操作も複雑である。 一方通気方法は、タンク底部より無菌空気を送り込む方法が主流であり、撹拌により無菌空気の培養液に滞留する効果及び邪魔板の効果はあるものの、十分なガス交換は得られず、発泡の原因となり消泡翼を設けたり、消泡剤の添加が必要となる。 また現行の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)では、無菌空気の代わりに、無菌の窒素ガスと炭酸ガスの混合ガスを供給したとしても、嫌気性菌の培養は不可能に近く、現在のところ皆無である。富金原 孝:醗協誌,33,198(1975) 本発明が解決しようとする問題点は、ボイラーなどの付帯設備がいらず、少ない蒸気量で滅菌が出来、バルブを無くし、操作が簡単な醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)であること。 微生物または代謝生産物の収量を多くするために、培養液中の微生物が要求する溶存酸素濃度の維持を満たす通気方法で、従来に比べて少ない量の無菌空気でも可能な醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)であること。 消泡剤が不要または少量ですむ醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)であること。 嫌気性菌が培養可能な醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)であること。 これらの課題を解決するためには、醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)の容器自体をフレキシブルの膜で円柱形の容器を作る。例えばビニール膜またはシリコンゴム膜で作製し、折り畳んで前者の場合はエチレンオキサイドガス(EOG)滅菌器で、後者は高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)で滅菌すればよい。 従来のものに比べ供給する無菌の空気量を少なくしても、微生物の要求する溶存酸素濃度を満たすために、バイパスを設けて培養液を循環させ、上部に取り付けた強制分散装置を通して表面積を多くして、タンク内を落下させることにより、効果的なガス交換を行い、培養液面に落下し衝突する際に、タンク内の気体を液中に巻き込み、溶存酸素の増加が期待できる。 また強制分散装置を通過して培養液の表面積が多くなり、粒状となり培養液面に落下し衝突する際、泡を消す消泡効果があるので、培地組成の炭素源が2%程度ならば、培養過程の消泡剤は不要である。 さらに折り畳んで滅菌したタンクを、フィルターなどで濾過滅菌した窒素ガスと炭酸ガスの混合ガスで膨らませれば、従来の金属製醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)では不可能であった嫌気性菌の培養が可能である。 タンク自体を折りたたむことにより、実験室レベルの小さな高圧蒸気滅菌器とEOG滅菌器またはEOGガスボンベとヒーター装備減圧弁及びEOGガス処理機さえあれば滅菌可能で、従来の金属製タンク(ジャー・ファーメンター)には必要なボイラー及び配管などは不要である。すなわち設備投資が少なくて済む経済的な効果は大きい。 従来の金属製醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)の培地滅菌方法は、全体を高圧蒸気滅菌法で、培養至適温度まで冷却する必要があるのに対し、本発明の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)では、有機物の培地成分は出来るだけ少ない精製水で溶かしたものを、実験室レベルの小型の高圧蒸気滅菌器で滅菌し、精製水はメンブランフィルターで濾過滅菌し、予め滅菌した本発明の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)に無菌的に注入すればよいので、エネルギーの節約になることは勿論のこと、培地成分の易熱性栄養分の破壊は最小限度にとどめることができ、培地成分及び無菌水を培養至適温度に保って醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)に注入すれば、すぐ接種できるので時間の節約は勿論のこと、エネルギーの節約にもなり、培養のランニングコストは少なくて済む。 折りたたんでタンクを滅菌した後、懸架装置に取り付けて組み立てる時、好気性菌を培養する時は無菌空気を、また嫌氣性菌を培養する時は、無菌の窒素ガスと炭酸ガスの混合ガスで本醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)を膨らませれば良い。従来の金属製醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)では不可能であった嫌氣性菌を効率よく、容易に培養出来ることは嫌氣性菌の分野における学問の進歩に寄与することが出来る。 本体自体は軽量であり、汚染源となる排水溝への配管は不必要であり、電源さえあれば密閉された無菌室に移動させて培養することが出来る。その結果雑菌に汚染される危険率は低くなる一方、遺伝子操作による人工的に作られた菌を外界に出さない、封じ込めが容易に出来る利点がある。 本発明の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)には、汚染源となる配管や現在用いられているバルブ類がないので、培養液を取り出した後、高圧蒸気滅菌した培地成分及び濾過滅菌した精製水を、予め培養至適温度に保ち無菌室内で補給すれば、二回目の培養が可能であり、種菌の準備もいらず連続培養が可能である。 従来の金属製醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)、ボイラー及び配管からの鉄イオンが、悪影響を及ぼす場合がある。例えばジフテリア毒素の調製を目標とした時、毒素産生量は鉄イオンの濃度に左右されるが、培養液が金属に接することを最小限に止めた本醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)は最適である。 pHを一定にして培養したい場合、pH調製剤として、塩酸及び水酸化ナトリウムの使用が望ましい。アルカリ性に傾いた時、従来のステンレス製の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)では、塩酸によりステンレスが腐食されるので使用されないが、本醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)では、塩酸の使用が可能であり好都合である。 強制分散装置より培養液を分散落下させることにより、培養液の表面積が多くなり、タンク内の気体に接する面積が多くなり、効果的なガス交換が行われること、また分散落下することにより、培養液表面に落ちる際にタンク内の気体の巻き込み効果のため、少ない通気量で済む。 本発明の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)の強制分散装置より培養液が分散落下することにより、泡は物理的な衝突により消える。従って培地の炭素源の成分が通常の2%以内ならば、消泡剤は不要である。 本発明の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)は、電源さえあれば密閉された無菌室に移動させて培養することが出来る。その結果接種菌を一度氷水に5分間浸けて少量接種すれば、遅滞期は長くなるものの、対数増殖期の勾配が大きくなり、静止期のOD値は、従来の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)に比較して高くなり、培地当たりの菌量(代謝生産物)が多く取ることが出来る。またOD値が大きいことの相乗効果として、比較的早い時期での静止期に於いて培養菌の自己融解が効率よく起こり、遺伝子操作により菌体内に目的物を作らせた場合、培養液中に出てくるので、培養菌を壊す作業が省け、容易に目的物を取り出すことが出来る利点がある。いずれにせよ収量が多い理由は、バイパスを設けて強制分散装置から培養液を分散落下させる循環方法による、新しい通気方法によることが大きな要因である。 同じ規模の本発明の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)を、2台並列に並べて培養すると、1カ所条件を変えた成績が、接種菌の状態が全く同じ条件で実験が出来るので、解析の際は接種菌のことは考慮しなくてもよいので実験結果の解析がしやすい。 本発明の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)の本体は滅菌時に、出来るだけ容積を小さくするために、従来のステンレス金属の代わりに、膜例えば塩化ビニール膜またはシリコンゴム膜1を使用して、円柱形の容器を作る。この円柱形容器の上下の中心から一部を円形に切り、そこに合成樹脂またはステンレス金属で出来たボルト2付きフラットのリング3を内側から装着し、パッキング4、上部円形板5、座金、ナット6を用いて取り付け、外界と完全に遮断する。上部の円形板には、従来の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)には無い強制分散装置(スプレイノズル)7、その周りに従来からある消泡剤添加口8、泡検出センサー取付口9、圧力スイッチ10付き圧力計装着口11、排気口12及びフィルター13付き無菌空気投入口14を取り付ける。タンク底部も同様にして底部円形板15を取り付け、底部円形板には、従来からある無菌空気拡散装置16、従来とは方式が異なる撹拌装置17とその撹拌子18を取り付ける。上部の無菌空気投入口から底部の無菌空気拡散装置はシリコンゴム管19で繋ぐ。また撹拌装置の培養液出口から上部の強制分散装置に向かってシリコンゴム管を用いてバイパス 20を設け、このバイパスにメカニカルシールフリーの、マグネットポンプ回転子部分21、温度検出センサー取付口22、pH検出センサー取付口23、溶存酸素検出センサー取付口24、pH調節用酸溶液送入口25、pH調節用アルカリ溶液送入口26、OD測定用サンプル取出口27とOD測定用サンプル戻口28及び培養液注入口兼接種口29を取り付ける。 微生物を培養する際は、マグネットポンプの回転子部分をマグネットポンプ駆動モーター部分30に装着して、回転子を回転させてバイパス内に培養液を流し、強制分散装置を出た培養液は、分散して表面積が増加しながら落下し衝突することにより、発泡した大きな泡を消す効果があると同時に、タンク内の気体を液中に巻き込み、溶存酸素の増加が期待でき、且つタンク内の気体に接する表面積が多くなり、ガス交換が効率よく行われる結果、少ない通気量で済む。 この撹拌装置は、従来のモーターで撹拌子を回転させる方式と異なり、培養液を循環させるポンプの吸入の水流を利用して、撹拌装置の回転子を回転運動に変えて撹拌子を回転させる。 溶存酸素を多くしたい場合は、通気量を多くすることは勿論のこと、培養液を循環させるポンプの回転数を若干上げればコントロール可能である。もっと多くしたい場合は、もう一本バイバスを設けて、ポンプと強制分散装置から培養液を循環落下させれば良い。 pHのコントロールはセットしたpHよりかけ離れた場合に、ペリスタポンプ31が回転して酸又はアルカリ溶液が、酸貯留瓶32又は塩基貯留瓶33から送入口に送れるようにすれば良い。 消泡剤は、タンク内の端につけたフレキシブルな消泡センサー34の先端に培養液が触れている時、自動的にペリスタポンプが回転して消泡剤貯留瓶35から消泡剤がタンク内に入るように泡計測装置36によりコントロールすれば良い。 次にこのフレキシブルな醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)を自立させるために、高さが可変な懸架装置37に、タンクの上下の円形板を取り付けてから、タンク内に無菌空気を送り込めばよい。無菌空気を送り込むことにより、タンクが膨らみ初める。この時懸架装置のタンク上部は、重り38により徐々に上昇するのを助けるようにしておけば、フレキシブルなタンクは容易に自立する。 無菌空気はコンプレッサー39により作られた圧搾空気を、プレフィルター40及びフィルターを通過させれば容易に作れる。嫌氣性菌の場合は窒素ガスと炭酸ガスの混合ガスボンベ41のガスを、同様にしてプレフィルター及びフィルターを通過させて調製すればよい。 培養液を培養液注入口兼接種口よりタンクに入れた時、膜が破れないように、タンクを保護するための二重構造をした保護カバー42を設け、そこに温度が制御された液体を循環させて、培養液の温度を制御すれば良い。特に醗酵により生じる反応熱の除去が迅速に行わなければならない時は、冷水を流すようにコントロールすれば良い。 この二重構造をした保護カバーの下半分は固定式で、上半分は支柱43を設け、蝶番状の金具44でカバーが左右に開くようにすると、本醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)の組立て操作がし易いようにする。 またタンク内圧が一定以上の陽圧になった場合は、圧力スイッチが働いて、排気処理装置45の殺菌液を循環させるポンプ46が作動して、殺菌液がアスピレーター47を通過した時、吸引するようにして、タンク内圧を平衡に保つようにする。途中のラインにフィルターを設けておけば、培養する微生物が外界に出るのを防ぐ。万が一フィルターが破れた時でも、殺菌液中に分散し、微生物が殺菌されるように配慮する。 この懸架装置に、キャスター48を取り付け、pH計測装置49・溶存酸素計測装置50・OD計測装置51・排気処理装置・コンプレッサー及び培養液の至適温度制御に必要な温水発生装置52・冷水発生装置53を設けて移動を可能にすれば、高圧滅菌装置及びガス滅菌器の設備さえあれば、場所を選ばす培養が可能である。 ここで従来の金属醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)の培養工程は、所定の培地成分及び精製水をタンクに入れ、外釜に高圧蒸気を送り込み、培養液を滅菌すると同時に、pH調整用酸溶液の容器、アルカリ溶液の容器、消泡剤溶液の容器などを滅菌していた。滅菌終了後、外釜に水道水を循環させ、至適培養温度まで冷やしてから、種菌を接種して培養を開始し、滅菌したpH調整用酸溶液、pH調整用アルカリ溶液、消泡剤溶液を無菌分注するのが常法であるのに対して、本発明のフレキシブルな醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)の培養操作の工程は異なり、下記のように実施すれば良い。 本醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)本体、バイパス及び各種センサー類などを高圧滅菌器又はEOGガス滅菌器などで別々に滅菌しておく。これらを無菌操作で組み立てる。本醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)の上部及び下部を、懸架装置に固定し、バイパスを連結し、マグネットポンプ回転子を駆動部に固定した後、無菌空気を、無菌空気投入口から送り込み、本醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)を膨らませる。嫌気性菌培養の時は、無菌の窒素ガスと炭酸ガスの混合ガスで、本醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)を膨らませる。 または泡検出センサー、圧力計、無菌空気投入口から無菌空気拡散装置へのシリコン管での連結及び各種センサーを装着したバイパスの連結など、予めタンクを組み立てておき、排気処理装置のポンプを作動させて、タンク内の空気を排出後、無菌空気投入口・排気口及び培養液注入口兼接種口からEOGガスを注入し、タンクを膨らませた後、数時間閉鎖状態にして、滅菌と同時に容器のリークテストを行う。次に排気処理装置のポンプを作動させて、陰圧にしてEOGを排気口より抜き、圧搾空気を無菌空気投入口から送り込み、タンクを膨らませた後に、排気口よりタンク内の無菌空気を抜く。この無菌空気の出し入れを数回繰り返し、残留しているEOGを出来るだけ除去する。 また懸架装置の下半分の保護カバーをセットし、タンクの直径よりも小さな直径の円柱状のアダプターを取り付け、タンク自体を凹状にしてガス滅菌をすれば、EOG量又は無菌空気量は少なくてすむ。 排出するEOGガスは、300℃下で白金触媒を使用したEOGガス処理装置54で処理すればよい。 本タンク(ジャー・ファーメンター)を滅菌後、培養量の1/10〜1/5量の精製水に培地成分を溶かし、高圧滅菌後、サイフォン又はポンプを使用して、培養液注入口兼接種口よりタンク内に入れた後、濾過滅菌しながら、9/10〜4/5量の精製水を、タンク内に入れる。温度制御された温水を、二重構造のカバー内に循環させる。 準備した種菌を滅菌注射器に採り、培養液注入口兼接種口のゴム栓をアルコール綿で拭き、注射する要領で種菌を接種した後、ポンプのスイッチを入れ、培養液を循環させ培養を開始する。 培養終了後、培養液注入兼接種口のゴム栓部分を取り外し、シリコンゴム管に取り付け変えてポンプを作動させて、培養液を取り出す。連続培養したい場合は、培地を注入すれば残っていた培養液が、種菌となって培養が可能であり、種菌の準備も不要である。 緑膿菌N―10株を合成培地(グルタミン酸ソーダ2%、グルコース0.5%、硫酸マグネシュウム7水和物0.01%、硝酸カルシュウム0.0001%硫酸鉄7水和物0.000005%、燐酸二水素カリウム0.0252%、燐酸水素二ナトリウム12水和物0.563%、pH7.6)で従来の金属性醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)と本発明の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)で培養した時の菌量をOD値で比較した結果、従来の金属性タンク(ジャー・ファーメンター)に比較して本発明のタンク(ジャー・ファーメンター)は、静止期のOD値は2.5で、従来の金属製醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)の1.8〜2.0に比較して高く、遅滞期は長いものの、対数増殖期の立ち上が大きく、最終精製物は培地リッターあたり2倍前後で、最終精製物の蛋白含有量は金属製醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)では70%であったのに対して、90%と優れていた。これは対数増殖期に増殖が顕著であったために、培地が有効に使われ、その後の自己融解が良好に行われたと考えられ、このことは遺伝子操作により、目的物を微生物に作らせ取り出す精製工程が、容易になることが期待される。また本菌を培養中に従来の金属製タンク(ジャー・ファーメンター)は、消泡剤が必要であったのに対し、本発明のタンク(ジャー・ファーメンター)では、消泡剤の消費量はゼロであった。 緑膿菌IFO3080株を半合成培地(グルコース7%、燐酸水素二ナトリウム12水和物0.05%、燐酸水素二アンモニウム1%、酵母エキス0.2%)で蛋白分解酵素を産生させる目的で、従来の金属製醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)と本発明の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)で培養した。従来の金属製醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)の場合、pH調製剤として、沈降性炭酸カルシュウム2.5%になるように無菌的に添加して培養を実施した。培養後24時間目から発熱が始まり、30時間目には泡立ちが更に激しくなり培養を中止せざるを得なかった。この時の酵素力価は0.4mPUであった。これに対し本発明の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)では、1規定の水酸化ナトリュウム溶液を用いて自動的にpH5.5に調製しながら60時間培養した。その結果気泡と気泡の間に培養液があるような感じで、消泡剤の自動添加でタンクから培養液が溢れることがなかった。酵素力価は2.0mPUであった。 培養操作工程で本醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)を組み立てなければならないものの、視点を変えて現行の金属製醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)と比較して考えてみると、本醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)の通気方法は高率的に目的とする微生物が容易に培養することが出来、少ない運転経費で済み、閉鎖的環境下で、好気性菌は勿論のこと、嫌氣性菌も大量に容易に培養可能なことを考慮すると、本醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)の利用可能性は大きく、社会に本醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)が受け入れられると考えられる。本醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)の上部平面図である。本醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)の膜(塩化ビニール膜又はシリコンゴム膜)から構成するタンク胴体部分の斜視図である。本醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)の内部より視た底部平面図である。本醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)で培養中の断面図法により各種センサー取付口などをゴム栓に置き換えて描いた説明図である。本醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)のフローシートによる説明図である。符号の説明 1 膜 2 ボルト 3 リング 4 パッキング 5 上部円形板 6 ナット 7 強制分散装置(スプレイノズル) 8 消泡剤添加口 9 泡検出センサー取付口10 圧力スイッチ11 圧力計取付口12 排気口13 フィルター14 無菌空気投入口15 底部円形板16 無菌空気拡散装置17 撹拌装置18 撹拌子19 シリコンゴム管20 バイパス21 マグナットポンプ回転子部分22 温度検出センサー取付口23 pH検出センサー取付口24 溶存酸素検出センサー取付口25 pH調節用酸溶液送入口26 pH調節用アルカリ溶液送入口27 OD測定用サンプル取出口28 OD測定用サンプル戻口29 培養液注入口兼接種口30 マグネットポンプ駆動モーター部分31 ペリスタポンプ32 酸貯留瓶33 塩基貯留瓶34 消泡センサー35 消泡剤貯留瓶36 泡計測装置37 懸架装置36 泡計測装置37 懸架装置38 重り39 コンプレッサー40 プレフィルター41 窒素ガスと炭酸ガス混合ガスボンベ42 保護カバー43 支柱44 蝶番状金具45 排気処理装置46 ポンプ47 アスピレーター48 キャスター49 pH計測装置50 溶存酸素計測装置51 OD計測装置52 温水発生装置53 冷水発生装置54 EOGガス処理装置 外界と完全に遮断する手段として、柔軟な膜(例えば塩化ビニール膜またはシリコンゴム膜)を使用して、折りたたんで滅菌することが可能な小型の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)。 タンクの底から上部に向かってバイパスを設けて、このバイパスに各種のセンサー取付口、培養液注入口兼接種口及びマグネットポンプを取り付けて、培養液を循環させてタンク内へ出来るだけ表面積を多くして落下させるために、タンク上部に強制分散装置を付けた特許請求の範囲第1項記載の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)。 タンクの上層部と基底部を、高さ可変な懸架装置に取り付けて、フレキシブルなタンクを自立させ、タンクを保護するための二重構造をしたカバー中に、タンクの温度を制禦するための液体を流すことが可能な、保護カバー装置を設けた特許請求の範囲第1項記載の醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)。 【課題】 膜でタンクを作り、培養液を循環させ、強制分散落下させることで、収量をあげて培養コストの安い醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)を提供する。【解決手段】 膜のタンクの下部撹拌装置から上部強制分散装置へポンプ、各種センサー、接種口を設けたバイパスを取り付ける。折りたたんで滅菌後、懸架装置に装着し、無菌空気又は窒素と炭酸ガスの混合ガスでタンクを膨らませ、滅菌した培養液を入れ、接種後培養液を循環させ強制分散させながら、好気性菌又は嫌氣性菌の培養可能な、ランニングコストが安い省エネルギー型を特徴とする醗酵タンク(ジャー・ファーメンター)。【選択図】 図4