タイトル: | 公開特許公報(A)_乳酸菌の処理方法 |
出願番号: | 2003274090 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12N13/00 |
三浦 靖 JP 2005034040 公開特許公報(A) 20050210 2003274090 20030714 乳酸菌の処理方法 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 丸岡 裕作 100093148 三浦 靖 7C12N13/00C12N13/00C12R1:01 JPC12N13/00C12N13/00C12R1:01 7 1 OL 11 4B033 4B033NG01 4B033NG02 4B033NH04 4B033NJ02 本発明は、乳酸菌の処理方法に係り、特に、乳酸菌に磁場を印加する乳酸菌の処理方法に関する。 一般に、乳酸菌は、ヨーグルトやチーズ,乳酸飲料などにおいて生成される乳酸やタンパク質・ペプチド系抗菌物質(バクテリシオン)により保存性を高めるために、あるいは、種々の漬物や発酵調味料などにおいて良い風味を付与するため利用されている。さらに、腸内で生存できる乳酸菌を摂取することで腸内環境を改善しようとして各種の乳酸菌発酵食品に使用されている。乳酸菌は乳酸菌発酵食品以外に日本酒,ビール,ワイン,ウィスキーなどのアルコール飲料の発酵中の醪や麹で仕込んだ甘酒,パン生地,熟成中の味噌や醤油などでその存在が認められている。 ところで、乳酸菌は自ら栄養素を作ることができない従属栄養細菌であり、生育するためには糖質,アミノ酸,ビタミン類,無機質を必要とし、場合によっては脂質まで要求するものがある。乳酸菌の代謝産物である乳酸による環境のpH低下により自身の生育が抑制されるため、その培養・発酵は回分処理に限られていた。そのため、長期間の乳酸発酵を行なう場合には活性のある乳酸菌を追加せざるを得なかった。 本願発明者は、先に、パンの製造方法において、これに使用される酵母や乳酸菌の生理活性を高める技術を提案した(特許文献1)。 これは、パンの製造において、酵母や乳酸菌に磁場を付与するもので、磁場の印加条件は、静磁場であれば磁束密度が0.1〜4T(テスラ)、印加時間が0.5〜72時間、印加温度が5〜50℃に設定されている。好ましい条件は、静磁場であれば磁束密度が0.5〜2.5T、印加時間が6〜48時間、印加温度は20〜40℃である。この磁場の印加条件において、酵母や乳酸菌を活性化して、パンの発酵促進を図るものである。特開2003−79306号公報 然しながら、上記乳酸菌の処理における条件では、必ずしも、十分な活性が得られるわけではなく、乳酸菌の活性をより一層増加させたいという要請がある。 本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、乳酸菌の活性をより一層増加させ、初期の乳酸菌使用量で長期間の乳酸発酵を可能にした乳酸菌の処理方法を提供することを目的とする。 このような目的を達成するための本発明の技術的手段は、乳酸菌に磁場を印加する乳酸菌の処理方法において、上記印加する磁場を静磁場とするとともに、該印加する静磁場の磁場強度Vを、4.1T(テスラ)≦Vとした構成としている。 これにより、対数増殖期にある乳酸菌は、静磁場であって、比較的強磁場に置かれ、増殖には影響を及ぼすことなく菌体の活性が増加させられる。そのため、乳酸発酵に用いる乳酸菌の寿命を延長することができる。 このように乳酸菌が活性化されるのは、次のように考えられる。すなわち、乳酸菌の生命活動では細胞膜を通して細胞の内側と外側とでイオンなど電解質が移動するので細胞膜界面には電位が生じている。これに磁場が印加されると渦電流が発生し、細胞膜を介しての物質移動に変化が引き起こされて、乳酸菌の代謝にとって好ましい変化の場合には活性が活性化される。 磁場強度Vが、4.1Tに満たないと、磁場に対して乳酸菌が応答性を示さないために期待する効果が得られないという不都合がある。 望ましくは、印加する静磁場の磁場強度Vを、9T(テスラ)≦V≦11T(テスラ)とした構成としている。9Tに満たないと、磁場に対する乳酸菌の応答性が低いために期待する効果を得るためには処理時間が長くなるという不都合がある。一方、11Tを超えると、磁場に対する乳酸菌の応答性が飽和してしまうので期待する効果が増加しないという不都合がある。 そして、必要に応じ、上記静磁場の印加を、超伝導磁石で形成された磁場空間内に上記乳酸菌を配置して行なう構成としている。確実に強磁場空間を形成でき、上記の作用,効果を確実に奏することができる。 そしてまた、必要に応じ、上記静磁場の印加温度tを、25℃≦t≦35℃とした構成としている。25℃に満たないと、乳酸菌の代謝活性が低くなり期待する効果が得られなかったり、極端な低温では乳酸菌が死滅してしまうという不都合がある。また、35℃を超えると、乳酸菌の代謝が活発になり過ぎて期待する効果が得られなかったり、極端な高温では死滅してしまうという不都合がある。望ましくは、上記静磁場の印加乳酸菌の温度tを、28℃≦t≦32℃とした。 これにより、乳酸菌が、良好に活性化させられる。 また、必要に応じ、上記静磁場の印加時間Qを、30min≦Q≦90minとした構成としている。30minに満たないと、乳酸菌が磁場に対して十分な応答を示す時間が採れないために期待する効果が得られないという不都合がある。一方、90minを超えると、乳酸菌の代謝活性に及ぼす磁場の効果が過剰になり期待する効果が得られなくなるという不都合がある。 望ましくは、上記静磁場の印加時間Qを、50min≦Q≦70minとした。これにより、乳酸菌が、良好に活性化させられる。 本発明の乳酸菌の処理方法によれば、乳酸菌に印加する磁場を静磁場とするとともに、印加する静磁場の磁場強度Vを、4.1T(テスラ)≦Vとしたので、対数増殖期にある乳酸菌を、その増殖には影響を及ぼすことなく菌体の活性を増加させることができる。そのため、乳酸発酵に用いる乳酸菌の寿命を延長することができる。 以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る乳酸菌の処理方法について詳細に説明する。本発明の実施の形態に係る乳酸菌の処理方法は、乳酸菌に磁場を印加するものであり、図1に示す処理装置を用いて実施される。 処理装置Sは、乳酸菌が密封されて入れられる容器1と、容器1を収納して保持するチャンバー2と、チャンバー2が収容されるシェル3と、シェル3の外側に設けられチャンバー2内の乳酸菌に静磁場を印加する超伝導磁石で形成された磁場発生部4とを備えて構成されている。印加する静磁場の磁場強度Vは、4.1 T(テスラ)≦V、望ましくは、9T(テスラ)≦V≦11T(テスラ)に設定されている。実施の形態では、V=10Tに設定されている。 チャンバー2には、恒温水が注入される注入口2aと、恒温水が排出される排出口2bとが設けられており、これらの注入口2a及び排水口2bは恒温水槽(図示せず)から恒温水を循環させるロータリーポンプ5に接続されている。チャンバー2内の水温は、印加温度tが、25℃≦t≦35℃、望ましくは、28℃≦t≦32℃になるように、設定されている。実施の形態では、t=30℃に設定されている。 従って、この処理装置Sを用いて乳酸菌を処理するときは、容器1に乳酸菌を密封し、チャンバー2に入れる。チャンバー2は、シェル3内に収容される。そして、ロータリーポンプ5を駆動して、恒温水を循環させ、チャンバ−2内を所定温度にするとともに、磁場発生部4を駆動して、乳酸菌に静磁場を印加する。静磁場の印加時間Qは、30min≦Q≦90min、望ましくは、50min≦Q≦70minに設定した。実施の形態では、Q=60minに設定した。 これにより、乳酸菌が活性化される。実験例 次に実験例について示す。実験では、乳酸菌としてホモ型乳酸球菌(Enterococcus faecalis,ATCC No. 19433)およびヘテロ発酵型乳酸球菌(Leuconostoc mesenteroides,ATCC No.8293)を用いた。1.試料 Lactobacilli MRS Broth (288130,DIFCO社)、伊那寒天(S−6,伊那寒天(株))、炭酸カルシウム(特級,関東化学(株))、塩化ナトリウム(特級,関東化学(株))、ATP測定用試薬キット(ルシフェール250プラス,キッコーマン(株))、ATP消去剤(ルシフェールATP消去剤,キッコーマン(株))、脱塩水を用いた。 2.培地の調製 乳酸菌の培養に使用したMRS培地は、1000mlの脱塩水にマグネティック・スターラーで攪拌しながら、Lactobacilli MRS Broth 55gを加え室温で溶解させた。なお、平面培養用の寒天培地の場合はさらに寒天15g、炭酸カルシウム10gを加え100℃に加熱し溶解させた。 3.培養および乳酸菌分散液の調製 ホモ型乳酸球菌(Enterococcus faecalis,ATCC No.19433)、ヘテロ発酵型乳酸球菌(Leuconostoc mesenteroides,ATCC No.8293)の種菌分散液1mlを丸型フラスコに入れてあるMRS培地300mlに均質になるように分散させ、低温恒温器(LTI−1001ED,東京理化器械(株))を用いて30℃でそれぞれ14,48,11,18時間だけ静置培養した。この培養液を1時間または2時間おきに10ml採取し、分光光度計(UV−1200型,(株)島津製作所)を用いて波長660nmで吸光度を計測した。また、pHメータ(F−24IIC,(株)堀場製作所)を用いてpHを測定した。採取した培養液を滅菌済みの0.85%(w/w)生理食塩水を用いて希釈倍数104 〜109 の範囲で段階希釈して、それぞれの希釈液の1mlを4枚の滅菌済みのポリスチレン製シャーレ(φ90mm・H15mm,旭テクノグラス(株))に分注し、予め滅菌して55℃に保ったMRS寒天培地を約10mlずつこれに注ぎ、直ちにシャーレを動かして希釈試料液が培地と十分に混和するようにした。これを30℃の低温恒温器に静置して培養し、48時間後に形成されたコロニー数を計数して生菌数を求めた。これらの操作を独立に3回繰り返して増殖曲線を作成した。 得られた増殖曲線を元にして図2に示してある手順で乳酸菌分散液を調製した。高層培地に植えられている乳酸菌を20mlのMRS培地が入った試験管に1白金線分だけ植菌し、培養したものを種菌とした。Leuconostoc mesenteroidesおよびEnterococcus faecalisの種菌分散液1mlを丸型フラスコに入れてあるMRS培地300mlに分散させ、低温恒温器(LTI−1001ED,東京理化器械(株))を用いて30℃でそれぞれ4,3時間培養した。波長660nmにおける吸光度を0.10±0.05(1試験区のみ0.03)にして菌体濃度を揃えたLeuconostoc mesenteroidesおよび波長660nmにおける吸光度を0.13±0.05(1試験区のみ0.03)にして菌体濃度を揃えたEnterococcus faecalisの栄養菌体分散液20mlをガラス製バイアル瓶(φ27mm・L 70mm)に採取して密封した。 4.乳酸菌栄養菌体の静磁場処理 乳酸菌栄養菌体の静磁場処理をするために、図1に示すようなアクリル樹脂製チャンバー(φ85mm×L 140mm,(株)成瀬器械)を製作した。なお、このチャンバーのコック部にはロータリーポンプ(RP−LV,古江サイエンス(株))を用いて恒温水槽(NTT‐1200,東京理化器械(株))から水を循環させるためにシリコンゴム製ホースを接続した。培養終了後の乳酸菌栄養菌体分散液を密封したガラス製バイアル瓶を発泡スチロール製板(W 75mm×D 135mm×H 20mm)の中央部に固定してアクリル樹脂製チャンバーに入れ、超伝導磁石(JMTD−10T100M,ジャパンマグネットテクノロジー(株))のボア部に試料を密封したガラス製バイアル瓶が後方端より270mmの位置になるように設置した。そして、1時間だけ恒温水を循環させてアクリル樹脂製チャンバー内の水温が30℃になるように調整し、静磁場処理(磁束密度10T)した。 5.乳酸菌分散液のpH測定 静磁場処理終了後の乳酸菌分散液を10ml取り出し、pHメータを用いてpHを測定した。 6.乳酸菌のATP量測定 それぞれの取扱い説明書に従ってATP(アデノシン三りん酸)消去剤とATP発光試薬を調製した。そして、図3に示した方法で乳酸菌のATP量を測定した。すなわち、磁場処理終了後に103 倍に希釈した試料液1mlをATP測定用ポリスチレン製試験管に採取し、これに1mlのATP消去剤を添加して試験管ミキサー(TTM−1,柴田科学(株))で攪拌した。この試料液をポリエチレン製ラップフィルムで密封し、室温で30分間反応させて乳酸菌体外のATPを消去した。反応終了後に試料液0.1mlずつをATP測定用ポリスチレン製試験管10本に分注し、これに0.1mlのATP抽出剤を添加し、20秒後にATP測定用発光試薬0.1mlを更に添加して攪拌し、15秒後に生物発光・化学発光測定装置(ルミネッセンセンサーPSN AB−2200,アトー(株))を用いてATP量を測定した。 7.生菌数の計数 磁場処理した培養液を滅菌済みの0.85%(W/W)生理食塩水を用いて希釈倍数105 〜107 の範囲で段階希釈し、この希釈液1mlずつを4枚の滅菌済みのポリスチレン製シャーレに分注し、予め滅菌して55℃に保ったMRS寒天培地を約10mlずつこれに注ぎ、直ちにシャーレを動かして希釈試料液が培地と十分に混和するようにした。これを30℃の低温恒温器に静置して培養し、48時間後に形成されたコロニー数を計数して生菌数を求めた。 結果は以下のとおりである。乳酸菌の増殖曲線 微生物の増殖曲線には、誘導期,対数増殖期,定常期および死滅期があり、誘導期は一般に微生物細胞を新しい環境に移すと増殖が始まるまでに一定の時間を要するために生じる。この期間に元の環境で退行状態にあった細胞が、新しい環境で正常な生理状態に復帰すると同時に、元の環境で蓄積した有害物質が除去されるものと考えられる。一方、対数増殖期は細胞の分裂増殖が最も盛んな時期であって、比増殖速度は一定に保たれている。そして、対数増殖期は代謝活動が最も活発である半面、種々の環境要因の影響を敏感に受け、薬剤などの外部からの刺激により死滅したり損傷したりしやすい。定常期は培地中の栄養分の減少、有害な代謝物の蓄積、pHの低下、酸素の供給不足などにより細胞が増殖を停止して細胞数が一定の値を示す時期であり、細胞は外部からの刺激に対して抵抗性が高い。死滅期は細胞の自己分解や物理的環境の変化、有害物質の影響により生細胞数が減少していく時期である。 Enterococcus faecalisの増殖曲線から誘導期が0〜1時間、対数増殖期が1〜5時間、定常期が5時間以降(図4)、Leuconostoc mesenteroidesでは誘導期が0〜2時間、対数増殖期が2〜8時間、定常期が8時間以降(図5)であることが分かった。 また、生菌数が増加するのにしたがって波長660nmでの吸光度も増加し、乳酸菌分散液のpHが低下していることから、乳酸菌分散液の吸光度を一定値に合わせることで磁場処理する試料の菌数をそろえることにした。本実験ではEnterococcus faecalisおよびLeuconostoc mesenteroidesの培養時間をそれぞれ対数増殖期の前期に相当する3時間および4時間に決定した。(A)Enterococcus faecalisの生育に及ぼす静磁場の影響 図6に示すように、静磁場処理していない対照としてのEnterococcus faecalis分散液および磁束密度10Tの静磁場を1時間だけ印加したEnterococcus faecalis分散液のpHはほぼ同等であり、1時間の静磁場処理はEnterococcus faecalisの乳酸産生量に影響を及ぼさないと考えられた。 一方、対照試料に比較して静磁場処理試料のATP量は有意に増加し(図7)、生菌数は両試料の間に有意差がなかった(図8)。 微生物はエネルギー獲得するために代謝を行ない、得られたエネルギーは生合成代謝でさまざまな細胞構造を組み立てるために費やされる。この生物の中でのエネルギーはATPという化学物質の形で存在していて、栄養分の分解過程でそのエネルギーがATPに変えられ、生合成代謝ではこのATPを用いて細胞成分が作られている。また、一般に微生物は生から直接に死に至るのではなく、損傷の程度に応じて生から死の間の状態で分布しているものと考えられる。コロニーカウント法では平板上での培養によって磁場処理後の損傷菌集団の少なくとも一部を回復させていることになる。しかし、本実験では乳酸菌が損傷しているかどうかは判別することができないので、乳酸菌が損傷しているわけではなく静磁場処理によって活性が上昇して静磁場処理によりATP量が増加していることも考えられる。Enterococcus faecalis において4回の繰り返し実験で静磁場処理によりATP量は有意に増加したが、生菌数およびpHは変化しなかったことから1時間の静磁場処理ではEnterococcus faecalisの増殖および乳酸産生量には影響を及ぼさないが、ATP量が有意に増加することが示唆された。(B)Leuconostoc mesenteroidesの生育に及ぼす静磁場の影響 図9に示すように、静磁場処理していない対照としてのLeuconostoc mesenteroides分散液および磁束密度10Tの静磁場を1時間だけ印加したLeuconostoc mesenteroides分散液のpHはほぼ同等であり、1時間の静磁場処理はLeuconostoc mesenteroidesの乳酸産生量に影響を及ぼさないと考えられた。 一方、対照試料および静磁場処理試料のATP量は有意差がなく(図10)、生菌数も有意差がなかった(図11)。 静磁場印加時の菌数が少なかった1試験区において、生菌数が有意に低下したがATP量には変化がなかった。これは静磁場処理によってLeuconostoc mesenteroidesの活性が単に上昇するためにATP量が増加しただけではなく、磁場印加によって損傷して死滅した菌もあるが、損傷しただけで死滅しなかった菌は回復するために代謝が活発になりATP量が増加した分も含まれると思われる。他の3試験区ではEnterococcus faecalisでの場合と同様に乳酸菌が損傷しているかどうかは判別することができないが、乳酸菌が損傷しているわけではなく静磁場処理によって活性が上昇しATP量が増加しているとも考えられる。本実験における静磁場処理はLeuconostoc mesenteroidesの生菌数には影響を及ぼさないが、ATP量を有意に増加させた。 上記を要約すると、Enterococcus faecalisおよびLeuconostoc mesenteroidesの生育に及ぼす30℃で磁束密度10T、1時間の静磁場の影響を、菌分散液のpH、菌体内のATP量および生菌数から検討した。それぞれ3時間,4時間の培養後に静磁場処理をしない対照としての乳酸菌分散液および静磁場処理した乳酸菌分散液のpHを測定し、乳酸菌体内のATP量を測定し、生菌数を混釈法で計数した。4回の繰り返し実験を行なったが乳酸菌分散液のpHはEnterococcus faecalisおよびLeuconostoc mesenteroidesの全ての試験区で有意な差がなかった。乳酸菌体内のATP量はEnterococcus faecalisの全ての試験区、およびLeuconostoc mesenteroidesの3試験区で有意に増加した。また、生菌数はEnterococcus faecalisおよびLeuconostoc mesenteroidesの3試験区で有意差がなかった。以上の結果より、Enterococcus faecalisおよびLeuconostoc mesenteroidesの対照試料と静磁場処理試料の生菌数およびpHには有意差が見られないが、静磁場処理試料のATP量は対照試料に比較して有意に増加することが示唆された。本発明の実施の形態に係る乳酸菌の処理方法が実施される処理装置の一例を示す図である。本発明の実験例に係り、乳酸菌分散液を調製する手順を示す図である。本発明の実験例に係り、乳酸菌のATP量の測定条件を示す図である。本発明の実験例に係り、Enterococcus faecalisの増殖曲線を示すグラフ図である。本発明の実験例に係り、Leuconostoc mesenteroidesの増殖曲線を示すグラフ図である。本発明の実験例に係り、Enterococcus faecalisの乳酸生産量(pH)と静磁場処理との関係を示す表図である。本発明の実験例に係り、Enterococcus faecalisの対照試料および静磁場処理試料のATP量の変化を示すグラフ図である。本発明の実験例に係り、Enterococcus faecalisの対照試料および静磁場処理試料の生菌数の変化を示すグラフ図である。本発明の実験例に係り、Leuconostoc mesenteroidesの乳酸生産量(pH)と静磁場処理との関係を示す表図である。本発明の実験例に係り、Leuconostoc mesenteroidesの対照試料および静磁場処理試料のATP量の変化を示すグラフ図である。本発明の実験例に係り、Leuconostoc mesenteroidesの対照試料および静磁場処理試料の生菌数の変化を示すグラフ図である。符号の説明 S 処理装置 1 容器 2 チャンバー 3 シェル 4 磁場発生部 5 ロータリーポンプ 乳酸菌に磁場を印加する乳酸菌の処理方法において、 上記印加する磁場を静磁場とするとともに、該印加する静磁場の磁場強度Vを、4.1T(テスラ)≦Vとしたことを特徴とする乳酸菌の処理方法。 印加する静磁場の磁場強度Vを、9T(テスラ)≦V≦11T(テスラ)としたことを特徴とする請求項1記載の乳酸菌の処理方法。 上記静磁場の印加を、超伝導磁石で形成された磁場空間内に上記乳酸菌を配置して行なうことを特徴とする請求項1または2記載の乳酸菌の処理方法。 上記静磁場の印加温度tを、25℃≦t≦35℃としたことを特徴とする請求項1,2または3記載の乳酸菌の処理方法。 上記静磁場の印加温度tを、28℃≦t≦32℃としたことを特徴とする請求項4記載の乳酸菌の処理方法。 上記静磁場の印加時間Qを、30min≦Q≦90minとしたことを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の乳酸菌の処理方法。 上記静磁場の印加時間Qを、50min≦Q≦70minとしたことを特徴とする請求項6記載の乳酸菌の処理方法。 【課題】 乳酸菌の活性をより一層増加させ、初期の乳酸菌使用量で長期間の乳酸発酵を可能にする。【解決手段】 超伝導磁石で形成された磁場空間内で、乳酸菌に静磁場を印加するとともに、印加する静磁場の磁場強度Vを、4.1T(テスラ)≦V、望ましくは、9T(テスラ)≦V≦11T(テスラ)とし、静磁場の印加温度tを、25℃≦t≦35℃、望ましくは、28℃≦t≦32℃とし、静磁場の印加時間Qを、30min≦Q≦90min、望ましくは、50min≦Q≦70minとした。【選択図】 図1