タイトル: | 公開特許公報(A)_硬化コンクリート・モルタル中の塩分測定方法 |
出願番号: | 2003188692 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,G01N31/00,G01N33/38 |
長井 義徳 斎藤 仁 JP 2005024348 公開特許公報(A) 20050127 2003188692 20030630 硬化コンクリート・モルタル中の塩分測定方法 太平洋マテリアル株式会社 501173461 長井 義徳 斎藤 仁 7 G01N31/00 G01N33/38 JP G01N31/00 Q G01N33/38 4 OL 6 2G042 2G042AA01 2G042AA05 2G042BB18 2G042CA04 2G042CB06 2G042DA02 2G042EA03 2G042EA07 2G042FA01 2G042FB02 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、硬化コンクリート又は硬化モルタル中の含有塩分量を簡易に測定する方法に関する。【0002】【従来の技術】硬化コンクリートや硬化モルタルの劣化状況を把握する上で、該コンクリートやモルタルの塩分量が測定される。硬化コンクリート中の塩分量を測定する方法は、社団法人日本コンクリート工学協会規格JCI−SC4「硬化コンクリート中に含まれる塩化物の分析方法」が用いられてきた。この分析方法では非常に高い精度で塩分濃度が得られるものの、測定には時間と熟練を要し、コンクリートからの塩化物の抽出に硝酸などの強酸を使用し、また加熱煮沸等の操作も要するなど安全面から作業上の制約も多い。また、抽出した塩化物量の測定がクロム酸銀−吸光光度法又は硝酸銀滴定法を使う必要があって、高価な測定装置の使用や煩雑な測定操作となる場合があり、コンクリート構築物の劣化診断現場などで簡単・容易に行えるような方法ではない。【0003】このため、硬化コンクリートや硬化モルタル中の塩分量をより簡易に測定できる方法が検討され、現場でも比較的容易に適用出来る方法として、有機酸によってコンクリートから抽出した塩化物を含む酸性液に対し、無水炭酸ナトリウムで中和し、中和により有機酸ナトリウムが生じた溶液の塩分濃度を測定する方法が報告されている。(例えば非特許文献1参照)。また、特に有機酸ナトリウムが生じた溶液の塩分濃度測定を、モール法の原理を利用した簡易且つ迅速測定可能な検出剤を使用した方法で行なうことも知られている。(例えば特許文献1参照)。しかるに、これらの方法で中和剤として用いる無水炭酸ナトリウムは比較的高い吸湿性があるため、現場等での長期保管には必ずしも適したものではない。また一般に入手容易な無水炭酸ナトリウムはその製造過程で0.05重量%程度の塩化物を含むため、中和時の使用量が多くなると、抽出液中の塩化物濃度が高まり、実際の硬化コンクリート中の塩化物量よりも高い値が測定される傾向があった。【0004】【非特許文献1】塩分量の簡易測定技術の開発、「コンクリートの耐久性向上技術の開発報告書 <第一編>」、建設省、1988年11月、P.109−114【特許文献1】特開昭62−91860号公報【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明は、コンクリート・モルタル構築物の劣化診断現場でも測定可能な硬化コンクリートや硬化モルタル中の塩分測定方法であって、作業上の制約や負荷が殆どなく、極めて簡易にかつ高い精度で測定することができる塩分測定方法を提供する。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題解決のための検討を重ねた結果、硬化したコンクリートやモルタルを有機酸処理した後に使用する中和剤を、一般にその原料及び製造工程上塩化物の混入が起らず、また吸湿性も比較的低い炭酸カルシウムや水酸化カルシウムにすることで系外からの塩化物混入を阻止し、また中和時に析出した低溶解度の有機酸カルシウムを濾過することで液中の塩分量測定を容易にし、総じて迅速かつ簡単に高精度で塩分量の測定ができる方法となったことから本発明を完成させた。【0007】即ち、本発明は、次の(1)〜(4)で表される硬化コンクリート・モルタル中の塩分測定方法である。(1)硬化コンクリート・モルタルに無水有機酸を加えて塩化物を抽出した後、炭酸カルシウム系又は水酸化カルシウム系中和剤を加えて中和し、中和により有機酸カルシウムが析出した液を濾過し、濾液の塩素濃度を測定することを特徴とする硬化コンクリート・モルタル中の塩分測定方法。(2)炭酸カルシウム系又は水酸化カルシウム系中和剤が炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムを主成分とする天然石粒であることを特徴とする前記(1)の硬化コンクリート・モルタル中の塩分測定方法。(3)濾液の塩化物濃度の測定をモール法で行なうことを特徴とする前記(1)又は(2)の硬化コンクリート・モルタル中の塩分測定方法。(4)硬化コンクリート・モルタルへの無水有機酸添加から中和による有機酸カルシウム析出までの工程を、ガス放出口を有する密封容器中で行なうことを特徴とする前記(1)〜(3)何れかの硬化コンクリート・モルタル中の塩分測定方法。【0008】【発明の実施の形態】本発明の塩分測定方法で測定対象となる硬化コンリートや硬化モルタルは特に限定されるものではない。測定試料としては、対象とするコンクリートやモルタル硬化物の所望の箇所から任意の手法、例えば穿孔や切削などによって小片又は粉末を採取する。本発明による測定に必要なコンクリート・モルタルの採取量は、1回の測定に付、2〜10g程度の少量で良い。また採取物が小片の場合、概ね0.5mmを超える大きさのものが含まれる時は粉砕し、できるだけ粉末状にするのが望ましい。【0009】採取したコンクリート・モルタルは脱イオン水に入れ、コンクリート・モルタル100重量部に対し、無水有機酸20〜100重量部を加えて塩化物を抽出する。脱イオン水としては塩素イオンを含まない水であれば良く、例えば蒸留水、イオン交換水、精製水等が使用できる。脱イオン水の使用量は、およそ200重量部以上が推奨される。また、塩化物抽出の際は撹拌を行なうことが望ましい。【0010】塩化物抽出に使用する無水有機酸は、水中で塩素イオンを放出しないものであれば何れの無水有機酸でも良く、例えば酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸、スルファミン酸等の無水物が挙げられる。好ましくは粉末状の無水有機酸を使用する。無水有機酸の使用量が20重量部未満では塩化物の抽出が不十分となるので好ましくなく、100重量部を超えると、大量の中和剤が必要になり、中和反応が激しくなるので好ましくない。無水有機酸による硬化コンクリート・モルタル中の塩化物抽出時間は、3〜10分が好ましい。3分未満の抽出時間では、抽出が不十分となるので好ましくなく、また10分を超えるような抽出時間にしても塩化物の抽出がそれ以上増えることはない。【0011】無水有機酸添加によって塩化物が抽出した液は、炭酸カルシウム系又は水酸化カルシウム系中和剤を加えて中和する。中和時間は概ね10〜20分が望ましい。炭酸カルシウム系中和剤は炭酸カルシウム粉末でも良く、また水酸化カルシウム系中和剤は水酸化カルシウム粉末であっても良いが、平均粒径がおよそ45μm以下の粉末では抽出液中和時に激しく反応し、反応容器から溢れることもあるので、好ましくは炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムを主成分とする天然石粒を使用する。炭酸カルシウムを主成分とする天然石粒は塩化物を含まないものであれば特に限定されず、例えば方解石、寒水石、石灰石等が使用できる。また、水酸化カルシウムを主成分とする天然石粒も塩化物を含まないものであれば特に限定されず、例えば消石灰等が使用できる。該天然石粒は炭酸カルシウムや水酸化カルシウムの粉末よりも概して反応活性が低いため、平均粒径が45μmより幾分小さいもの、例えば30μm程度のものでも支障なく使用できる。一方、平均粒径がおよそ200μmを超えると反応活性が乏しくなり、中和反応終了までに1時間以上要すこともあるので好ましくない。【0012】中和後の液内には、有機酸カルシウムが沈降析出するため、これを濾過によって除去し、得られた濾液の塩素含有濃度を測定する。濾液中の塩素含有濃度測定は、例えば従来から行なわれている測定手法を含め、何れの測定法でも可能であるが、好ましくは、その迅速性と精度からモール法に準拠した測定法が推奨される。尚、本発明ではコンクリート・モルタル採取物の溶解から濾液中の塩化物測定までの操作を全て常温付近(約5〜35℃)で行なうことができ、加熱等の処理は特に必要としない。【0013】また、本発明は、前記のコンクリート・モルタル採取物への無水有機酸添加から中和による有機酸カルシウム析出までの工程を密封容器中で行なうものである。該容器は、内容物の状態が外から目視で常時容易に確認できるものとし、具体的には容器の一部又は全てが無色透明若しくは淡い着色の半透明であることが望ましい。容器材質は使用薬剤に耐えるものなら制限されず、例えば硬質樹脂やガラス類が使用できる。また該容器は、振動等を加えた際に内容物が漏れ出ないように栓や蓋などで密封できる容器とする。更に、該容器には反応生成したガスを容器外へ放出するための小孔を有するのが望ましい。小孔は略直径が1〜10mm程度のものとし、望ましくは容器本体の上部に1ヶ所設けるか或いは密封用の蓋又は栓に1ヶ所有するもので良い。該小孔も密閉可能にすべく、小孔用に栓や蓋などを取り付けられる構造とするのが好ましいが、指や不透水テープ等で塞いで密閉使用しても良く、この場合は栓や蓋などを取り付けない開孔構造であっても良い。このような容器の形状や大きさは特に制限されないが、例えば外形が円柱や角柱状容器とし、携帯性の点から内容積が40〜500ml程度のものが推奨される。容器中での抽出・中和等の反応は、振動等を適宜加えると反応時間が短縮される傾向があるので好ましい。また、有機酸カルシウム析出後は、容器から内容物を全て取り出し、前記の濾過を行なった後、濾液中の塩素濃度を測定する。【0014】【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に詳しく説明する。【0015】[使用材料]次のA〜Dの材料から選定した。A:蒸留水(関東化学株式会社製「蛍光分析用蒸留水」)B1:酒石酸(関東化学株式会社製試薬)B2:クエン酸(関東化学株式会社製試薬)C1:平均粒子径約100μmの寒水石(日立寒水石株式会社製)C2:炭酸カルシウム(関東化学株式会社製試薬)C3:水酸化カルシウム(関東化学株式会社製試薬)D:無水炭酸ナトリウム(関東化学株式会社製試薬)【0016】[実施例1]コンクリート硬化体をハンマードリルを用いて穿孔し、コンクリート粉末(平均粒径約120μm)を採取した。【0017】直径2mmの小孔を底面から227mmの高さ位置の側面に1ヶ所有し、頂部に密封栓をねじ込み可能な、内径28mm、内寸高さ230mmのポリプロピレン製円柱状容器に、蒸留水(A)を20.0g入れ、更に採取したコンクリート粉末5.0gと有機酸として酒石酸(B1)2.0gを投入した。次いで容器を栓で密封し、小孔を指で塞いで約10秒間容器を振った後、小孔を塞いだ指を2〜3秒ゆるめ、容器内に発生したガスを器外へ放出した。この容器の振動とガス放出を5回繰り返した後、小孔を開放した状態で栓を開け、中和剤として寒水石(C1)2.0gを容器に入れて約1分間放置した。放置後は栓で密封し、小孔を指で塞いで約10秒間容器を振った後、小孔を塞いだ指を2〜3秒ゆるめ、容器内に発生したガスを器外へ放出した。この容器の振動とガス放出を5回繰り返した後、小孔を開放し、約10分間放置した。放置後、容器内容物を全て取り出して濾過した。濾過後の濾液は、モール法を利用した市販の塩化物濃度検出剤(商品名「カンタブ」、太平洋マテリアル株式会社製)で塩素濃度を測定した。その結果、塩素含有量は0.068重量%であった。【0018】[実施例2]実施例1と同じコンクリート硬化体採取物を測定対象とし、有機酸として酒石酸(B1)2.0gを使用する代わりにクエン酸(B2)2.0gを使用する以外は全て実施例1と同様の方法で、コンクリート硬化体中の塩素含有濃度を測定した。その結果、塩素含有量は0.067重量%であった。【0019】[実施例3]実施例1と同じコンクリート硬化体採取物を測定対象とし、中和剤として寒水石(C1)3.0gを使用する代わりに炭酸カルシウム(C2)3.0gを使用する以外は全て実施例1と同様の方法で、コンクリート硬化体中の塩素含有濃度を測定した。その結果、塩素含有量は0.067重量%であった。【0020】[実施例4]実施例1と同じコンクリート硬化体採取物を測定対象とし、中和剤として寒水石(C1)3.0gを使用する代わりに水酸化カルシウム(C3)3.0gを使用する以外は全て実施例1と同様の方法で、コンクリート硬化体中の塩素含有濃度を測定した。その結果、塩素含有量は0.066重量%であった。【0021】[比較例1]実施例1と同じコンクリート硬化体採取物を測定対象とし、中和剤として寒水石(C1)3.0gを使用する代わりに炭酸ナトリウム(D)3.0gを使用する以外は全て実施例1と同様の方法で、コンクリート硬化体中の塩素含有濃度を測定した。その結果、塩素含有量は0.098重量%であった。【0022】[比較例2]実施例1と同じコンクリート硬化体採取物を測定対象とし、中和後の液は濾過を一切行なわず、容器内容物をそのまま塩化物濃度測定対象とした以外は実施例1と同様の方法でコンクリート硬化体中の塩素含有濃度を測定した。その結果、塩素含有量は0.025重量%であった。【0023】[比較例3]実施例1と同じコンクリート硬化体採取物を測定対象とし、社団法人日本コンクリート工学協会規格JCI−SC4「硬化コンクリート中に含まれる塩化物の分析方法」に準拠した方法で採取物を処理し、硝酸銀滴定法にて全塩素含有濃度を測定した。その結果、塩素含有量は0.068重量%であった。【0024】以上の実施結果から、本発明による硬化コンクリート・モルタル中の塩分測定方法を用いれば、最も高精度で信頼性の高いJCI−SC4に準拠した方法で測定した全塩素含有濃度の値(比較例3)と殆ど遜色ない塩素含有濃度の値が測定され、高精度で信頼性の高い測定結果(実施例1〜4)が得られたことがわかる。【0025】【発明の効果】本発明の硬化コンクリート・モルタル中の塩分測定方法は、非熟練者が行なっても比較的短時間に極めて簡易に且つかなり高い精度で測定することができる。また、特に本発明による当該分析に適した密封容器を使用すれば、携帯性に優れるため作業現場等へも容易に持ち込むことができ、しかも多種の分析機器を駆使した煩雑な操作を行なう必要がないので、測定の作業効率が高まる。 硬化コンクリート・モルタルに無水有機酸を加えて塩化物を抽出した後、炭酸カルシウム系又は水酸化カルシウム系中和剤を加えて中和し、中和により有機酸カルシウムが析出した液を濾過し、濾液の塩素濃度を測定することを特徴とする硬化コンクリート・モルタル中の塩分測定方法。 炭酸カルシウム系又は水酸化カルシウム系中和剤が炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムを主成分とする天然石粒であることを特徴とする請求項1記載の硬化コンクリート・モルタル中の塩分測定方法。 濾液の塩化物濃度の測定をモール法で行なうことを特徴とする請求項1又は2記載の硬化コンクリート・モルタル中の塩分測定方法。 硬化コンクリート・モルタルへの無水有機酸添加から中和による有機酸カルシウム析出までの工程を、ガス放出口を有する密封容器中で行なうことを特徴とする請求項1〜3何れか記載の硬化コンクリート・モルタル中の塩分測定方法。 【課題】コンクリート・モルタル構築物の劣化診断現場でも測定可能な硬化コンクリートや硬化モルタル中の塩分測定方法であって、作業上の制約や負荷が殆どなく、極めて簡易にかつ高い精度で測定することができる塩分測定方法を提供する。【解決手段】硬化コンクリート・モルタルに無水有機酸を加えて塩化物を抽出した後、炭酸カルシウム系又は水酸化カルシウム系中和剤を加えて中和し、中和により有機酸カルシウムが析出した液を濾過し、濾液の塩化物濃度を測定することを特徴とする硬化コンクリート・モルタル中の塩分測定方法。【選択図】 なし