生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_乳酸の製造方法
出願番号:2003184259
年次:2005
IPC分類:7,C12P7/56


特許情報キャッシュ

佐藤 俊彦 福田 清春 JP 2005013131 公開特許公報(A) 20050120 2003184259 20030627 乳酸の製造方法 トーゼン産業株式会社 594017293 友松 英爾 100094466 岡本 利郎 100116481 佐藤 俊彦 福田 清春 7 C12P7/56 C12P7/56 C12R1:645 JP C12P7/56 C12P7/56 C12R1:645 5 OL 7 4B064 4B064AD33 4B064CA02 4B064CA05 4B064CB07 4B064CC03 4B064CD22 4B064CD24 4B064DA16 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、セルロース分解菌と乳酸菌を用いて、セルロースまたはセルロースと澱粉との混合物から乳酸を製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】従来から、澱粉をStreptococcus facealis、Latobacillus delbrueckii、Latobacillus casei、Latobacillus parecasei、Latobacillus salivarius、Latobacillus amylophilus等の乳酸菌やRhizopus oryzaeの真菌を用いて加水分解による糖化と同時発酵により乳酸を製造する方法が知られている。【0003】一方、セルロースでは、Trichoderma reesei菌(セルロース分解菌)で加水分解による糖化を行い、つぎに乳酸菌Latobacillus delbrueckiiを用いて乳酸発酵を行う方法が非特許文献1および2などにより報告されている。【0004】しかし、セルロースと澱粉の混合物をセルロース分解菌で同時に加水分解し糖化する方法はこれまで行われていないし、また、セルロースまたはセルロースと澱粉の混合物から、セルロースの分解菌と乳酸菌の共生系による混合培養法による同時糖化発酵を行って、乳酸を製造する方法も知られていない。【0005】【非特許文献1】Biotechnology Letters 21:371−373,1999【非特許文献2】Bioprocess Engineering 22:175−180,2000【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来、澱粉または澱粉を主成分とする材料でなければ乳酸の製造原料にはならないという前提を打破し、生ゴミや資源ゴミのようにセルロールを多量に含む系であっても乳酸の製造原料として使用できるという全く新しい乳酸の製造方法を提供する点にある。【0007】【課題を解決するための手段】本発明は、セルロースまたはセルロースと澱粉の混合物をセルロース分解菌により、加水分解し糖化を行うことができること、またセルロース分解菌と乳酸菌の共生系による混合培養が可能であることならびにこの混合培養により糖化と同時発酵を行うことが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。【0008】本発明の第1は、セルロース分解菌の存在下でセルロースと澱粉の混合物を同時に加水分解して糖化した後に、乳酸菌を用いて発酵を行うことを特徴とする乳酸の製造方法に関する。本発明の第2は、(1)セルロースまたは(2)セルロースと澱粉の混合物を、セルロース分解菌と乳酸菌を併用して、加水分解による糖化と同時に発酵を行うことを特徴とする乳酸の製造方法に関する。本発明の第3は、前記セルロース分解菌が木材腐朽菌である請求項1または2記載の乳酸の製造方法に関する。本発明の第4は、前記木材腐朽菌が木材白色腐朽菌である請求項3記載の乳酸の製造方法に関する。本発明の第5は、前記木材白色腐朽菌がヒイロタケ菌(Pycnoporuscoccineus)である請求項4記載の乳酸の製造方法に関する。【0009】本発明で用いるセルロースとしては、セルロースという概念に含まれるものを含有する材料であれば、すべて利用可能である。代表的なものとしては、農産物、植物、木材、パルプ、紙、綿花、綿繊維、その織物などの植物繊維含有材料、これらを主成分とするゴミなどを挙げることができる。【0010】本発明で用いる澱粉としては、澱粉という概念に含まれるものを含有する材料であればすべて利用可能である。代表的なものとしては、トウモロコシ、キャッサバ、サツマイモ、じゃがいも、米、麦、蕎麦、豆などの農産物、サゴ椰子の樹木から得られたサゴ澱粉、ゴミなどを挙げることができる。【0011】本発明で用いるセルロースと澱粉の混合物としては、前記材料を混合して使用することもできるが、これらが混在している生ゴミ、資源ゴミ、農産物、植物、サゴ椰子のように澱粉を含有する樹木などを挙げることができる。【0012】本発明に用いるセルロース分解菌としては、セルロースと澱粉の両方を分解する能力をもつものが好ましく、とりわけ、木材腐朽菌が好ましい。木材腐朽菌としては、木材白色腐朽菌、木材褐色腐朽菌および木材軟腐朽菌がいずれも好適に使用できるが、なかでも木材白色腐朽菌とくにヒイロタケ菌(Pycnoporus coccineus)が好ましい。【0013】本発明に用いる乳酸菌には、とくに制限はなく、いずれの乳酸菌でも使用できる。乳酸菌のなかにはL−乳酸を多く生成するタイプのもの、D−乳酸を多く生成するタイプのもの、前述のような優先性がとくになく、LとDの両方を生成するものがあるが、いずれのタイプのものも使用可能である。生分解性プラスチックスであるポリ乳酸を製造する場合には、L−乳酸を使用するので、このような場合にはL−乳酸を多く生成する、すなわちL−乳酸を優先的に生成するタイプのものが好ましい。L−乳酸を優先的に生成する乳酸の例としては、Streptococcusbovis、Streptococcus facealis、Latobacillus delbrueckii、Latobacillus amylovorus、Latobacillus amylophilus、Latobacillus casei、Latobacillus parecasei、Latobacillus salivarius等を挙げることができる。【0014】本発明は、第1発明〜第5発明においても、発酵工程が存在するが、これらの工程には通常の発酵工程に用いられている各種培地を使用することができる。基本的には、窒素源、炭素源、ミネラルよりなるものであり、窒素源としてはペプトン、ポリペプトン、トリプトン、酵母エキス(ミネラルも含む)などがあり、炭素源としては、グルコース、麦芽抽出物、大豆抽出物などがあり、ミネラルとしては塩化ナトリウム、リン酸塩、種々の無機塩などがある。具体的には、TYG培地、MRS培地などを挙げることができる。【0015】とくに本第2発明においては、発酵生成物により培養液のpHが低下するため、セルロース分解菌や乳酸菌の増殖が阻害されたり、活性が低下したりすることがある。これを避けるため、pHを5.0〜5.5の範囲に保つことが好ましい。そのためには、pH緩衝剤を添加することが好ましい。pH緩衝剤としては、例えば炭酸カルシウム、リン酸アンモニウム、水酸化ナトリウムなどを挙げることができる。【0016】【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。【0017】(1)ホロセルロースの調整スギ木粉(セルロース、ヘミセルロース、リグニンを含んでいる)をエタノール/ベンゼン(1/2)混合溶剤中で脂肪分を抽出脱脂処理して得られた脱脂木粉2.5gを、亜塩素酸ナトリウム1.0gと酢酸0.2mlを含む水溶液150mlに加え、加熱処理を繰り返してリグニンを除去し、白色のホロセルロース(セルロースとヘミセルロースを含む)を得た。(2)α−セルロースの調整前記ホロセルロース10gを17.5%水酸化ナトリウム水溶液250mlに加え、30分間、20℃でゆっくり撹拌した。つぎに酢酸で中和した後、十分洗浄してα−セルロースを得た。(3)サゴホロセルロースの調整サゴ粉末から澱粉を除去したサゴ絞り粕2.5gを亜塩素ナトリウム1.0gと酢酸0.2mlを含む水溶液150mlに加え、加熱処理を繰り返し、茶色のサゴホロセルロース(サゴから得られたホロセルロース)を得た。(4)接種用木材腐朽菌の調整オートクレーブで121℃、15分間高圧・蒸気滅菌したPDA培地(バレイショ、デキストロース、寒天培地)を試験管にとり、冷却した後、木材腐朽菌を1白金耳接種し、27〜37℃(ヒイロタケ菌のときは37℃)で7日間培養し、実施例で用いる接種用セルロース分解菌とした。(5)接種用乳酸菌の調整MRS培地5.5gを100mlの蒸留水に溶かし、オートクレーブで121℃、15分間高圧・蒸気滅菌した後、5mlを試験管にとり、Streptococcus bovisを接種して嫌気性雰囲気下、37℃1晩培養し、実施例で用いる接種用乳酸菌とした。(6)MRS培地Bacto Protease Peptone 10gBacto Best Extract 10gBacto Yeast Extract 5gBacto Dextrose 20gTween 80(商品名 界面活性剤) 1gクエン酸アンモニウム 2g酢酸ナトリウム 5g硫酸マグネシウム 0.1g硫酸マンガン 0.05gリン酸水素二カリウム 2g【0018】実施例1(請求項1に対応)0.3%ペプトン水溶液よりなる培養液(以下、単に0.3%ペプトン培養液という)20mlに1wt%のホロセルロースを加えて、オートクレーブで121℃、15分間高圧・蒸気滅菌し冷却した後に、ヒイロタケ菌(Pycnoporus coccineus)を1白金耳接種し、37℃で27日間振とう培養を行った。その結果、ホロセルロースが糖化し、蓄積したグルコース濃度は21日目で最大4.9g/lに達した。このようにして得られた糖化液をpH6.5に調整(初期調整)した後、イースト抽出物を0.5wt%無菌的に加えた。つぎに乳酸菌40μlを加え、37℃で3日間静地培養した。その結果、乳酸が最大3.0g/lに達し、ホロセルロース基質から30%の収率で乳酸が得られた。【0019】実施例2(請求項1に対応)0.3%ペプトン培養液20mlに1wt%のサゴ(サゴ澱粉の搾り粕、セルロース含有量約57.5%、澱粉含有量31%、リグニン含有量約11.5%)を加えて、オートクレーブで121℃、15分間高圧・蒸気滅菌し、冷却した後に、ヒイロタケ菌(Pycnoporus coccineus)を1白金耳接種し、37℃で14日間振とう培養を行った。その結果、サゴ木粉が糖化し、蓄積したグルコース濃度は、7日目で最大2.6g/lに達した。このようにして得られた糖化液をpH6.5に調整した後、イースト抽出物を0.5wt%無菌的に加えた。つぎに乳酸菌40μlを加え37℃で3日間静地培養した。その結果、乳酸が最大0.5g/lに達し、サゴ(澱粉搾り粕)基質から乳酸の収率は19%であった。【0020】参考例10.3%ペプトン培養液20mlに1wt%のα−セルロースを加えて、オートクレーブで121℃、15分間高圧蒸気滅菌し冷却した後に、ヒイロタケ菌(Pycnoporus coccineus)を1白金耳接種し、37℃で27日間振とう培養を行った。その結果、α−セルロースが糖化し、蓄積したグルコース濃度は24日目で最大4.2g/lに達した。【0021】参考例20.3%ペプトン培養液20mlに1wt%のサゴホロセルロースを加えて、オートクレーブで121℃、15分間高圧・蒸気滅菌し冷却した後に、ヒイロタケ菌(Pycnoporus coccineus)を1白金耳接種し、37℃で27日間振とう培養を行った。その結果、サゴホロセルロースが糖化し、蓄積したグルコース濃度は16日目で最大5.0g/lに達した。【0022】参考例30.3%ペプトン培養液20mlに1wt%のサゴ澱粉を加えて、オートクレーブで121℃、15分間高圧・蒸気滅菌し冷却した後に、ヒイロタケ菌(Pycnoporus coccineus)を1白金耳接種し、37℃で27日間振とう培養を行った。その結果、サゴ澱粉が糖化し、蓄積したグルコース濃度は10日目で最大6.2g/lに達した。【0023】実施例1〜2、参考例1〜3の場合、蓄積したグルコース濃度の結果は、図1のとおりである。【0024】実施例3MRS培地溶液20mlにペプトンを5wt%、炭酸カルシウム0.2gを加えた後、ホロセルロース0.2gを加えて、オートクレーブで121℃、15分間高圧・蒸気滅菌した。つぎにヒイロタケ菌(Pycnoporus coccineus)を1白金耳接種し、さらに乳酸菌20μlを接種した後、37℃で4日間振とう培養を行った。その結果、ホロセルロースが同時糖化発酵し、乳酸の濃度は最大4.6g/lに達し、ホロセルロース基質からの乳酸の収率は46%であった。【0025】実施例4MRS培地溶液20mlにペプトンを5wt%、炭酸カルシウム0.2gを加えた後、市販カルボキシメチルセルロース(CMC)0.2gを加えて、オートクレーブで121℃、15分間高圧・蒸気滅菌した。つぎにヒイロタケ菌(Pycnoporus coccineus)を1白金耳接種し、さらに乳酸菌20μlを接種した後、37℃で4日間振とう培養を行った。その結果、カルボキシメチルセルロースが同時糖化発酵し、乳酸の濃度は最大4.0g/lに達し、カルボキシメチルセルロース基質からの乳酸の収率は40%であった。【0026】比較例MRS培地溶液20mlにペプトンを5wt%、炭酸カルシウム0.2gを加えた後、サゴ澱粉0.2gを加えて、オートクレーブで121℃、15分間高圧蒸気滅菌した。つぎにヒイロタケ菌(Pycnoporus coccineus)を1白金耳接種し、さらに乳酸菌20μlを接種した後、37℃で4日間振とう培養を行った。その結果、サゴ澱粉が同時糖化発酵し、乳酸の濃度は最大5.2g/lに達し、サゴ澱粉基質からの乳酸の収率は52%であった。【0027】【発明の効果】本発明によれば、セルロース分解菌と乳酸菌による共生系での混合培養により、セルロースまたはセルロースと澱粉の混合物(例えば生ゴミや資源ゴミ)から効率的に乳酸が得られる。したがって、本発明は、ゴミとして捨てられている材料から、化粧品、医薬品、あるいは生分解性プラスチックスの原料などに有用な乳酸を製造できるという画期的方法を提供するものである。【図面の簡単な説明】【図1】セルロースのみ(参考例1)、セルロースとへミセルロース混合物(実施例1と参考例2)、セルロース類と澱粉との混合物(実施例2)、澱粉(参考例3)の各ケースにおけるヒイロタケ菌によるグルコースの生成状況を示すグラフである。 セルロース分解菌の存在下でセルロースと澱粉の混合物を同時に加水分解して糖化した後に、乳酸菌を用いて発酵を行うことを特徴とする乳酸の製造方法。 (1)セルロースまたは(2)セルロースと澱粉の混合物を、セルロース分解菌と乳酸菌を併用して、加水分解による糖化と同時に発酵を行うことを特徴とする乳酸の製造方法。 前記セルロース分解菌が木材腐朽菌である請求項1または2記載の乳酸の製造方法。 前記木材腐朽菌が木材白色腐朽菌である請求項3記載の乳酸の製造方法。 前記木材白色腐朽菌がヒイロタケ菌(Pycnoporuscoccineus)である請求項4記載の乳酸の製造方法。 【課題】生ゴミや資源ゴミのようにセルロールを多量に含む系であっても乳酸の製造原料として使用できるという全く新しい乳酸の製造方法の提供。【解決手段】セルロース分解菌の存在下でセルロースと澱粉の混合を同時に加水分解して糖化した後に、乳酸菌を用いて発酵を行うことを特徴とする乳酸の製造方法。【選択図】 なし


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