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タイトル:公開特許公報(A)_トリフルオロメチルシンナミルアルコールとその製造方法
出願番号:2003183386
年次:2005
IPC分類:7,C07C29/17,C07C33/30,C07B61/00,C07M9:00


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菅原 紀充 三枝 浩 樽井 隆直 成塚 智 JP 2005015400 公開特許公報(A) 20050120 2003183386 20030626 トリフルオロメチルシンナミルアルコールとその製造方法 セントラル硝子株式会社 000002200 西 義之 100108671 菅原 紀充 三枝 浩 樽井 隆直 成塚 智 7 C07C29/17 C07C33/30 C07B61/00 C07M9:00 JP C07C29/17 C07C33/30 C07B61/00 300 C07M9:00 7 OL 16 4H006 4H039 4H006AA01 4H006AA02 4H006AB01 4H006AB20 4H006AB84 4H006AC11 4H006AC24 4H006BA25 4H006BB11 4H006BB15 4H006BB25 4H006BC10 4H006BC11 4H006BC31 4H006BC34 4H006BE20 4H006BE22 4H006FC52 4H006FC74 4H039CA21 4H039CB10 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、医薬・農薬の中間体として有用なトリフルオロメチルシンナミルアルコールに関する。【0002】【従来の技術】従来、トランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造する公知の方法としては、4−トリフルオロメチルベンズアルデヒドをトリエチルホスホノアセテートを用いてトランス−4−(トリフルオロメチル)桂皮酸エチルへと変換し、その後ジイソブチルアルミニウムヒドリド−トルエン溶液を用いて還元し、トランス−4−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールを得る方法がある(特許文献1、特許文献2)。また、特許文献3には、トランス−3−(トリフルオロメチル)桂皮酸をエチルクロロホルメート、トリエチルアミンの存在下、硼水素化ナトリウムで還元してトランス−3−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールを得る方法が開示されている。さらに、非特許文献1には1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−2−プロペン−1−オールを硫酸存在下で転位させてトランス−3−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールを得る方法が開示されている。【0003】一方、シス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造する公知の方法としては、特許文献4において、1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−アセチレンを出発原料に用い、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドの存在下、二酸化炭素を通気させ3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−プロピノイック酸へと変換し、次いでジアゾメタンを用いて3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−プロピノイック酸メチルへと変換し、さらにリンドラー触媒(パラジウム−炭酸カルシウム−酢酸鉛)の存在下、水素を用いて3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−2(Z)−プロペノイック酸メチルへと還元し、最後にジイソブチルアルミニウムヒドリド−ヘキサン溶液を用いて還元し、シス−3,5−ビス(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールを得る方法が開示されている。【0004】【特許文献1】特開平10−158167号公報【特許文献2】特開平9−48792号公報【特許文献3】特開平2−76864号公報【特許文献4】特表2002−532458号公報【非特許文献1】Tetrahedron(英国),1994年,第50巻,第1号,P.171‐188【0005】【発明が解決しようとする課題】特許文献1、特許文献2などに開示された方法は、高価で取扱いが困難なジイソブチルアルミニウムヒドリドを用いており、工業的に実施するのには適さない。特許文献3に示された方法は有効な方法ではあるが、原料のトランス−(トリフルオロメチル)桂皮酸が必ずしも容易には製造できず、高価であるため工業的には採用し難い。また、非特許文献1の方法は原料が容易に入手できないため、工業的に実施するのは困難である。また、いずれの方法もトランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造する方法であり、これらの方法を用いてシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造するのは困難である。【0006】一方、特許文献4において開示された方法は、原料が高価であるばかりでなく、目的物を得るために多段階を要し、取扱いが困難な試薬を数多く用いているため工業的には実施し難い。さらにこの方法はシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造する方法であり、この方法を用いてトランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造するのは困難である。【0007】上述のように、将来にわたって実施できる工業的なトランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコール及びシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールの製造方法が確立されているとは言えない。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは、トリフルオロメチルシンナミルアルコールの新規製造方法について鋭意検討したところ、工業的に入手が容易なトリフルオロメチルハロベンゼン類と安価なプロパルギルアルコールを出発原料として、反応経路を選定することにより、上記の問題点を回避し、トランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコール及びシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールそれぞれを選択的に作り分けられることを見出し、本発明に到達したものである。【0009】すなわち、本発明は(式1)に示すように、トリフルオロメチルハロベンゼン類からトランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールまたはシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールをそれぞれ選択的に製造する方法を提供する。【0010】さらに本発明は、トランス−3,5−ビス(トリフルオロメチル)シンナミルアルコール、シス−4‐トリフルオロメチルシンナミルアルコール、シス−3‐トリフルオロメチルシンナミルアルコールをそれぞれ提供する。【0011】本発明の「第1の方法」は、下記の「工程▲2▼」によりなる、または「工程▲1▼」と「工程▲2▼」の2つの工程によりなる、トランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールの製造方法である。工程▲1▼:化合物[1]をプロパルギルアルコールとカップリングさせて、化合物[2]とする炭素−炭素カップリング工程。工程▲2▼:化合物[2]を還元して、位置選択的に化合物[3]を得る「トランス還元工程」。【0012】本発明の「第2の方法」は、下記の「工程▲3▼」によりなる、または「工程▲1▼」と「工程▲3▼」の2つの工程によりなる、シス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールの製造方法である。工程▲1▼:化合物[1]をプロパルギルアルコールとカップリングさせて、化合物[2]とする炭素−炭素カップリング工程。工程▲3▼:化合物[2]を還元して、位置選択的に化合物[4]を得る「シス還元工程」。【0013】【化11】【0014】(式中、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を表し、nは1または2を表す。)「工程▲1▼」の「炭素−炭素カップリング工程」は、トリフルオロメチルハロベンゼンをパラジウム触媒と塩基性物質の存在下、プロパルギルアルコールと反応させる工程であり、主生成物は3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オールである。「工程▲2▼」の「トランス還元工程」は、アルミニウムを含んだアート錯体型還元剤を用いて、3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オールを位置選択的にトランス体へ還元する工程である。主生成物はトランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールである。「工程▲3▼」の「シス還元工程」は、パラジウム触媒の存在下、水素を用いて、3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オールを位置選択的にシス体へ還元する工程である。主生成物はシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールである。「工程▲2▼」または「工程▲3▼」の終了後、蒸留、再結晶、晶析などにより、トランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールまたはシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールのみを高純度で取り出すことが可能である。【0015】まず、本発明の「工程▲1▼」の「炭素−炭素カップリング工程」について説明する。この「工程▲1▼」は、本発明「第1の方法」と「第2の方法」に共通するものであり、トリフルオロメチルハロベンゼンをパラジウム触媒と塩基性物質の存在下、プロパルギルアルコールと反応させる工程である。【0016】炭素−炭素カップリング工程で原料となる一般式[1]で表されるトリフルオロメチルハロベンゼンとしては、nが1であるものとして、2−フルオロベンゾトリフルオリド、3−フルオロベンゾトリフルオリド、4−フルオロベンゾトリフルオリド、2−クロロベンゾトリフルオリド、3−クロロベンゾトリフルオリド、4−クロロベンゾトリフルオリド、2−ブロモベンゾトリフルオリド、3−ブロモベンゾトリフルオリド、4−ブロモベンゾトリフルオリド、2−ヨードベンゾトリフルオリド、3−ヨードベンゾトリフルオリド、4−ヨードベンゾトリフルオリドがあげられる。nが2であるものとしては、1−フルオロ−2,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−フルオロ−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−フルオロ−2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−フルオロ−2,6−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−フルオロ−3,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−フルオロ−3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−クロロ−2,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−クロロ−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−クロロ−2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−クロロ−2,6−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−クロロ−3,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−クロロ−3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ブロモ−2,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ブロモ−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ブロモ−2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ブロモ−2,6−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ブロモ−3,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ブロモ−3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ヨード−2,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ヨード−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ヨード−2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ヨード−2,6−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ヨード−3,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ヨード−3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンがあげられる。これらのうち、反応性の点で、ハロゲンが臭素またはヨウ素であるものが好ましい。【0017】前記、一般式[1]で表されるトリフルオロメチルハロベンゼンと、プロパルギルアルコールとから一般式[2]で表される3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オールを得る反応に於いて、プロパルギルアルコールの使用量は、特に制限を加える必要はないが、トリフルオロメチルハロベンゼン1モル当たり、通常、0.8〜10モルであり、好ましくは1〜3モルである。【0018】パラジウム触媒としては、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、PdCl2[P(o−Me−Ph)3]2、PdCl2[P(m−Me−Ph)3]2、PdCl2[P(p−Me−Ph)3]2、PdCl2(PMe3)2、PdBr2(PPh3)2、PdCl2〔P(Ph)2CH2CH2P(Ph)2〕、PdCl2〔P(Ph)2CH2CH2CH2CH2P(Ph)2〕、PdCl2(PhCN)2、Pd(CO)(PPh3)3、PhPdI(PPh3)2、PhPdBr(PPh3)2、PhPdBr(PMePh2)2、PdCl2(PMePh2)2、PdCl2(PEt2Ph)2、PdCl2(PMe2Ph)2、Pd2Br4(PPh3)2、パラジウム/炭素など、一般的に入手できるパラジウム化合物が好適に用いられる。ここでPhはフェニル基、Meはメチル基、Etはエチル基、o−はオルト置換、m−はメタ置換、p−はパラ置換を表す。これらのパラジウム触媒の使用量は、一般式[1]で表されるトリフルオロメチルハロベンゼン1モル当たり、通常、0.001〜0.1モルの範囲である。【0019】この反応では上記金属触媒の他に、助触媒として、3価のリン化合物を用いても良い。それらとしては、一般式[5]R1 −(R2 −)P−R3 [5](式[5]中、R1 、R2 およびR3 は、同一または相異なるアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはハロゲン原子を示す。)で示される化合物が好ましく、具体的にはトリ−n−ブチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−o−トリルホスファイト、三塩化リンなどが例示される。またこの他に、一般式[6](R1)2P−Q−P(R2)2 [6](式中、R1およびR2は前記と同じ、Qは−(CH2)m−(mは1〜8の整数。より好ましくは1〜4の整数。)で表されるアルキレン基を表す)で表されるホスフィンも好ましい。具体的には1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンなどが例示できる。これらのリン化合物使用量は、上記の金属触媒1モル当たり、0.5 〜50モルが好ましく、さらに好ましくは10〜30モルである。【0020】さらにこれらの触媒に加え、銅触媒を用いることができ、かかる銅触媒としては、ヨウ化銅、臭化銅、塩化銅、酸化銅、シアン化銅などが挙げられるが、ヨウ化銅が特に好ましく、これらの使用量は、一般式[1]で表される原料トリフルオロメチルハロベンゼン1モル当たり、通常0.001〜0.1モルの範囲である。勿論これ以上使用することも可能であるが、特に大量使用するメリットもない。【0021】塩基性物質としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウムなど)、カルボン酸塩(酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなど)、金属アルコキシド(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなど)、水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなど)などや有機塩基が挙げられるが、3級アミンまたは2級アミン(有機塩基)が特に好ましく用いられ、これらとしてはジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−イソプロピルエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、ルチジン、2−メチルピリジン、N−メチルモルホリンなどが例示される。塩基の使用量は、通常、トリフルオロメチルハロベンゼン1モル当たり、1〜5モルである。【0022】必要により、適当な溶媒、例えばアセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリルアミド、N−メチルピロリドン、メタノール、トルエン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどを反応溶媒として使用することもできる。また、上記塩基を溶媒として用いることもできる。これらの反応溶媒の使用量は特に制限されない。【0023】上記反応は通常窒素、アルゴン等の不活性ガス中で行われる。該反応においては、反応温度を高めることにより目的とする化合物の収率を向上させることができるが、あまり高温では副生物が増加するので、通常、反応温度は15〜160℃が好ましく、さらに好ましくは30〜140 ℃である。【0024】反応時間については、特に制限はない。反応終了後、抽出、蒸留、再結晶等の通常の手段により、3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール[2]を得ることができる。また、必要によりカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶等により精製することもできる。【0025】次に、本発明の「工程▲2▼」の「トランス還元工程」について説明する。この「工程▲2▼」は、本発明の「第1の方法」の第2番目の反応工程であり、3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール[2]を、アルミニウムを含んだアート錯体型還元剤により還元し、トランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコール[3]へと変換する工程である。【0026】トランス還元工程では、アルミニウムを含んだアート錯体型還元剤を使用することが重要である。アルミニウムを含んだアート錯体型還元剤を使用することにより、3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール[2]の三重結合部位と反応し、トランス型のトリフルオロメチルシンナミルアルコール[3]を選択的に得ることができる。【0027】アルミニウムを含んだアート錯体型還元剤としては、水素化リチウムアルミニウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化トリス(t−ブトキシ)リチウムアルミニウム、水素化トリス(メトキシ)リチウムアルミニウム、水素化トリス(エトキシ)リチウムアルミニウム、水素化トリス(n−プロポキシ)リチウムアルミニウム、水素化トリス(イソプロポキシ)リチウムアルミニウム、水素化トリス(n−ブトキシ)リチウムアルミニウム、水素化トリス(イソブトキシ)リチウムアルミニウム、水素化t−ブトキシリチウムアルミニウム、水素化メトキシリチウムアルミニウム、水素化エトキシリチウムアルミニウム、水素化n−プロポキシリチウムアルミニウム、水素化イソプロポキシリチウムアルミニウム、水素化n−ブトキシリチウムアルミニウム、水素化イソブトキシリチウムアルミニウム、水素化ビス(イソブチル)メチルリチウムアルミニウムなどが好ましく使用できる。これらの中で操作性、安全性の面で、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムが特に好ましい。還元剤の使用量は、3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール[2]1モルに対して、次の(式2)で示されるモル数以上用いるのが好ましい。【0028】【化12】【0029】すなわち、水素化リチウムアルミニウムの場合には0.5モル以上であり、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムの場合には1.0モル以上である。水素化リチウムアルミニウムの場合には、通常、0.4モルから5.0モル使用されるが、0.5モルから2.5モル用いるのが好ましい。ナトリウム水素化ビス(メトキシエトキシ)アルミニウムの場合には0.8モルから10.0モル使用されるが、1.0モルから5.0モル用いるのが好ましい。勿論これ以上使用することも可能であるが、特に大量使用するメリットもない。【0030】トランス還元工程は、通常、溶媒を使用するのが好ましい。溶媒としては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等のアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物などがあげられるが、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、トルエン、n−ヘキサン、n−ヘプタンが好ましい。これらの反応溶媒の使用量は特に制限されないが、3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール[2]1gに対して0.5mlから100ml使用するのが好ましく、さらに好ましくは3mlから30mlの範囲である。勿論これ以上使用することも可能であるが、特に大量使用するメリットもない。【0031】上記反応は通常窒素、アルゴン等の不活性ガス中で行われる。該反応において、通常反応温度は−100〜+100 ℃であり、好ましくは−78〜+50 ℃である。反応時間については、特に制限はない。反応終了時、通常シス−トリフルオロメチルシンナミルアルコール[4]は全く生成していないか、生成していても微量である。従って、トランス体とシス体との分離は通常必要としない。しかしながら微量に残存する原料[2]や着色成分を除去するために、抽出、蒸留、再結晶等の通常の手段により、より高純度のトランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコール[3]を得ることができる。また、必要によりカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶等により精製することもできる。【0032】次に、本発明の「工程▲3▼」の「シス還元工程」について説明する。この「工程▲3▼」は、本発明の「第2の方法」の第2番目の反応工程であり、「工程▲1▼」で得られた3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール[2]を、パラジウム触媒の存在下、水素を用いて位置選択的に還元し、シス−トリフルオロメチルシンナミルアルコール[4]へと変換する工程である。【0033】本工程では、パラジウム触媒を用いることが特に重要である。パラジウム触媒を用いることにより、目的とするシス型のトリフルオロメチルシンナミルアルコールを選択的に得ることが可能となる。【0034】パラジウム触媒としては、基本的に水素を吸蔵し還元能力を有するものは全て使用することができる。具体的には、パラジウム担持活性炭、パラジウム担持アルミナ、パラジウム担持シリカゲル、パラジウム担持ポリマー、パラジウム−グラファイトなどを使用することもできる。しかし、パラジウムの他に、その活性を低下させる成分(バリウム、カルシウム、鉛、キノリンなど)が共存する触媒を用いると、目的物のオレフィンがさらに水素化し単結合まで還元されることを効果的に防止でき、目的物の選択率が向上するので、より好ましい。このような「敢えて触媒の活性を低下させた(被毒した)触媒」の例としては、パラジウム−硫酸バリウム、パラジウム−硫酸バリウム−キノリン、パラジウム−炭酸カルシウム、パラジウム−炭酸ストロンチウム、塩化パラジウム−ジメチルホルムアミド、パラジウム担持活性炭−キノリン、パラジウム−炭酸カルシウム−酸化鉛−塩化マンガン、水素化ホウ素パラジウム担持活性炭、酢酸パラジウム−水素化ナトリウム−キノリン、リンドラー触媒(パラジウム−炭酸カルシウム−酢酸鉛)などがあげられる。これらのうち、パラジウム−硫酸バリウム、パラジウム−硫酸バリウム−キノリン、パラジウム−炭酸カルシウム、リンドラー触媒(パラジウム−炭酸カルシウム−酢酸鉛)が特に好ましく、パラジウム−硫酸バリウム、パラジウム−硫酸バリウム−キノリンがさらに好ましい。【0035】これらのパラジウム触媒の使用量は、原料3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール1モル当たり通常、0.001〜0.1モルの範囲が好ましい。【0036】該反応において必要とされる水素の理論量は原料3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール[2]に対して1モルである。しかし実際には、反応器内に常圧または加圧で水素ガスを送り込んで反応させ、原料が十分に消費され目的物に変換されるか、水素ガスがもはや吸収されなくなった時点をもって反応工程を終了すればよい。反応器内に一時に過剰の水素ガスを送り込み、加圧したとしても、本発明の方法では、水素化の過反応により、二重結合が単結合まで還元されたり、水酸基が脱離したり、芳香環が還元を受けたりすることはないか、わずかに抑えられる。該反応において、水素の供給方式は、流通式でも密閉式でも良い。流通式の場合、供給する水素の量は特に制限されない。密閉式の場合、供給する水素の圧力は通常0.01MPaから2.0MPaであり、好ましくは0.05MPaから1.0MPaである。さらに好ましくは0.1MPaから0.5MPaである。【0037】シス還元工程では、原料3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール[2]が液体である場合、敢えて溶媒を使用する必要は無いが、溶媒を使用することもできる。[2]が固体である場合には溶媒を使用するのが好ましい。溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等のアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物などがあげられるが、メタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、トルエン、n−ヘキサン、n−ヘプタンが好ましい。これらの反応溶媒の使用量は特に制限されないが、3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール[2]1gに対して0.5mlから100ml使用するのが好ましく、さらに好ましくは3mlから30mlの範囲である。勿論これ以上使用することも可能であるが、特に大量使用するメリットもない。【0038】上記反応において、通常反応温度は、流通式の場合、−100℃以上、使用する溶媒の沸点以下の範囲であり、密封式の場合、−100℃から+100℃が好ましい。さらに好ましくは、−30℃〜+50℃である。【0039】反応時間については、特に制限はない。反応終了時、通常トランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコール[3]は全く生成していないか、生成していても微量である。従って、トランス体とシス体との分離は通常必要としない。しかしながら微量に残存する原料[2]や着色成分を除去するために、抽出、蒸留、再結晶等の通常の手段により、より高純度のシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコール[3]を得ることができる。また、必要によりカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶等により精製することもできる。【0040】【実施例】次に、実施例をもって本発明を例示するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。【0041】[実施例1] 3−〔4−(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール【0042】【化13】【0043】窒素雰囲気下、4―ブロモ―α,α,α―ベンズトリフロオリド135g(0.60mol)を1,4−ジオキサン400mlに溶かし、2−プロピン−1−オール52g(0.92mol)、酢酸パラジウム(II)147mg(0.65mmol)、トリフェニルホスフィン1.57g(6mmol)、ヨウ化銅(I)343mg(1.8mmol)、トリエチルアミン182g(1.8mol)を加えた後、90℃で24時間撹拌した。室温に冷却後、水を加えて撹拌し、有機層と水層を分離した。水層は1,4−ジオキサンで洗浄した。有機層を併せて水で洗浄した。溶媒を留去して得られる油状物を減圧蒸留(126℃/1.7kPa)し、留去液を冷やして目的化合物91.3g(収率76%・純度98.1%)を淡黄色結晶として得た。NMRスペクトル(400MHz,CDCl3)δppm:1.76(1H,br,OH), 4.52(2H,s), 7.53 (2H,d,J=8.4Hz), 7.58(2H,d,J=8.4Hz)。【0044】[実施例2] トランス−4−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコール【0045】【化14】【0046】窒素雰囲気下、3−〔4−(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール22.7g(0.11mol)をトルエン270mLに溶かし、0℃に冷却した。水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(70%,トルエン溶液)36g (0.13mol)を滴下により加えた後、25℃まで昇温し、4時間撹拌した。水を加えてクエンチし、溶媒、水、1N水酸化ナトリウム水溶液を加えて抽出し、溶媒留去した後、ヘキサン450mLを加え晶析により精製して目的化合物19.9g(収率87%・純度98.9%)を白色結晶として得た。このときシス−4−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールは全く得られなかった(トランス選択性100%)。NMRスペクトル(400MHz,CDCl3)δppm:1.63(1H,s,OH), 4.37(2H,dd,J=5.4,1.4Hz), 6.46(1H,dt,J=16.0,5.2Hz), 6.67(1H,m), 7.48(2H,d,J=8.0Hz),7.57(2H,d,J=8.0Hz)。【0047】[実施例3] シス−4−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコール【0048】【化15】【0049】3−〔4−(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール1.00g(5.0mmol),キノリン117mgをテトラヒドロフラン6mLに溶かし、反応器内を窒素で置換した。5%パラジウム/硫酸バリウム120mgを添加し、水素を吹き込んだ。反応終了後、反応液をセライトにて濾過した。濾液を濃縮後、酢酸エチルにて希釈し、2M塩酸水溶液、飽和重曹水で洗浄した。溶媒を留去して得られる油状物を減圧蒸留(106℃/0.7kPa)し、目的化合物0.74g(収率73%、純度99.6%)を得た。このときトランス−4−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールは全く得られなかった(シス選択性100%)。NMRスペクトル(400MHz,CDCl3)δppm:4.42(2H,dd,J=1.6,6.4Hz), 5.99(1H,dt, J=12.0,6.4Hz),6.65(1H,m), 7.31(1H,d,J=8.2Hz), 7.59(1H,d,J=8.2Hz)。【0050】[実施例4] 3−〔3−(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール【0051】【化16】【0052】窒素雰囲気下、3―ブロモ―α,α,α―ベンズトリフロオリド45.0g(0.20mol)を1,4−ジオキサン140mlに溶かし、2−プロピン−1−オール16g(0.28mol)、酢酸パラジウム(II)49mg(0.20mmol)、トリフェニルホスフィン523mg(4.00mmol)、ヨウ化銅(I)114mg(0.600mmol)、トリエチルアミン61g(0.60mol)を加えた後、90℃で35時間撹拌した。室温に冷却後、水を加え有機層と水層を分離した。水層は1,4−ジオキサンで洗浄した。有機層を併せて水で洗浄した。溶媒を留去して得られる油状物を減圧蒸留(128℃/1.7kPa)し、留去液を冷やして目的化合物16.5g(収率41%、純度98.3%)を淡黄色液体として得た。NMRスペクトル(400MHz,CDCl3)δppm:1.86(1H,br,OH), 4.51(2H,s), 7.43(1H,t, J=7.8Hz),7.56(1H,d,J=7.8Hz), 7.60(1H,d,J=7.8Hz), 7.69(1H,s)。【0053】[実施例5] トランス−3−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコール【0054】【化17】【0055】窒素雰囲気下、3−〔3−(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール4.00g(20mmol)をトルエン40mLに溶かし、0℃に冷却した。水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(70%,トルエン溶液)6.4g (22mmol)を滴下により加えた後、25℃まで昇温し、2時間撹拌した。水を加えてクエンチし、溶媒、水、1N水酸化ナトリウム水溶液を加えて抽出し、溶媒留去した。目的化合物3.97g(収率98%、純度99.4%)を得た。このときシス−3−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールは全く得られなかった(トランス選択性100%)。NMRスペクトル(400MHz, CDCl3)δppm:1.95(1H,br,OH), 4.36(2H,dd,J=1.6,5.6Hz),6.43(1H,dt,J=15.8,5.6Hz), 6.65(1H,dt,J=15.8,1.6Hz), 7.42(1H,t,J=7.8Hz),7.48(1H,d,J= 7.8 Hz), 7.54(1H,d,J=7.8Hz), 7.62(1H,s)。【0056】[実施例6] シス−3−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコール【0057】【化18】【0058】3−〔3−(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール2.00g(10.0mmol),キノリン250mgをテトラヒドロフラン20mLに溶かし、反応器内を窒素で置換した。5%パラジウム/硫酸バリウム200mgを添加し、水素を吹き込んだ。8時間攪拌後、反応液をセライトにて濾過した。濾液を濃縮後、酢酸エチルにて希釈し、2M塩酸水溶液、飽和重曹水で洗浄した。溶媒を留去して、目的化合物2.00g(収率99%、純度85.6%)を淡橙色液体として得た。このときトランス−3−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールは全く得られなかった(シス選択性100%)。NMRスペクトル(400MHz, CDCl3)δppm:4.42(2H,dd,J=1.7,6.6Hz), 5.98(1H,dt,J=12.0,6.6Hz), 6.59(1H,m), 7.39(1H,d,J=7.8Hz), 7.45(1H,s), 7.46(1H,t,J=7.8Hz),7.52(1H, d,J=7.8Hz)。【0059】[実施例7] 3−〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール【0060】【化19】【0061】窒素雰囲気下、1−ブロモ−3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン58.6g(0.20mol)を1,4−ジオキサン176mlに溶かし、2−プロピン−1−オール15g(0.28mol)、酢酸パラジウム(II)449mg(2.00mmol)、トリフェニルホスフィン525mg(4.00mmol)、ヨウ化銅(I)114mg(0.600mmol)、トリエチルアミン61g(0.60mol)を加えた後、70℃で9時間撹拌した。室温に冷却後、水を加え、有機層と水層を分離した。水層は1,4−ジオキサンで洗浄した。有機層を併せて水で洗浄した。溶媒を留去して得られる油状物を減圧蒸留(90℃/0.53kPa)し、目的化合物32.0g(収率60%、純度99.3%)を白色結晶として得た。NMRスペクトル(400MHz,CDCl3) δppm:1.98(1H,br, OH), 4.51(2H,s), 7.79(1H,s),7.84(2H,s)。【0062】[実施例8] トランス−3,5−ビス(トリフルオロメチル)シンナミルアルコール【0063】【化20】【0064】窒素雰囲気下、3−〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール5.36g(20mmol)をトルエン54mLに溶かし、0℃に冷却した。水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム)(70%,トルエン溶液)6.4g (22mmol)を滴下により加えた後、25℃まで昇温し、4時間撹拌した。水を加えてクエンチし、溶媒、水、1N水酸化ナトリウム水溶液を加えて抽出し、溶媒留去した。目的化合物5.28g(収率98%・純度92.9%)を白色固体として得た。このときシス−3,5−ビス(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールは全く得られなかった(トランス選択性100%)。NMRスペクトル(400MHz,CDCl3)δppm:1.95(1H,br,OH), 4.39(2H,dd,J=1.6,5.2Hz),6.52 (1H,dt,J=15.8,5.2Hz), 6.71(1H,dt,J=15.8,1.6Hz), 7.73(1H,s), 7.78(2H,s)。【0065】[実施例9] 3−〔4−(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール【0066】【化21】【0067】窒素雰囲気下、4―ヨード―α,α,α―ベンズトリフロオリド5.45g(20.0mmol)を1,4−ジオキサン16mlに溶かし、2−プロピン−1−オール1.2g(22mol)、酢酸パラジウム(II)4.9mg(0.022mmol)、トリフェニルホスフィン53mg(0.20mmol)、ヨウ化銅(I)11mg(0.67mmol)、トリエチルアミン6.1g(60mmol)を加えた後、70℃で3時間撹拌した。室温に冷却後、水を加え、有機層と水層を分離した。水層は1,4−ジオキサンで洗浄した。有機層を併せて水で洗浄した。溶媒を留去して得られる油状物を減圧蒸留(126℃/1.7kPa)し、留去液を冷やして目的化合物3.5g(収率87%・純度91.4%)を淡黄色結晶として得た。【0068】【発明の効果】本発明は、容易に入手可能なトリフルオロメチルハロベンゼンとプロパルギルアルコールを出発原料として、医・農薬の中間原料として有用なトランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコール及びシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールのそれぞれを選択的に効率良く得る手段を提供する。 一般式[2](式中、nは1または2を表す。)で表される3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オールを、アルミニウムを含んだアート錯体型還元剤により位置選択的に還元し、一般式[3](式中、nは1または2を表す。)で表されるトランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造する方法。 一般式[2](式中、nは1または2を表す。)で表される3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オールを、パラジウム触媒の存在下、水素を用いて位置選択的に還元し、一般式[4](式中、nは1または2を表す。)で表されるシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造する方法。 下記の2工程を含むトランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールの製造方法。▲1▼一般式[1](式中、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を表し、nは1または2を表す。)で表されるトリフルオロメチルハロベンゼンをパラジウム触媒と塩基性物質の存在下プロパルギルアルコールと反応させる工程。▲2▼ ▲1▼の工程から得られる一般式[2](式中、nは1または2を表す。)で表される3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オールを、アルミニウムを含んだアート錯体型還元剤により位置選択的に還元し、一般式[3](式中、nは1または2を表す。)で表されるトランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造する工程。 下記の2工程を含むシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールの製造方法。▲1▼一般式[1](式中、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を表し、nは1または2を表す)で表されるトリフルオロメチルハロベンゼンをパラジウム触媒と塩基性物質の存在下プロパルギルアルコールと反応させる工程。▲2▼ ▲1▼の工程から得られる一般式[2](式中、nは1または2を表す。)で表される3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オールを、パラジウム触媒の存在下、水素を用いて位置選択的に還元し、一般式[4](式中、nは1または2を表す。)で表されるシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造する工程。 トランス−3,5−ビス(トリフルオロメチル)シンナミルアルコール。 シス−4‐トリフルオロメチルシンナミルアルコール。 シス−3‐トリフルオロメチルシンナミルアルコール。 【課題】医薬、農薬の重要中間体であるトランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコール及びシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールの工業的な製造方法を提供する。【解決手段】トリフルオロメチルハロベンゼンをパラジウム触媒と塩基性物質の存在下プロパルギルアルコールと反応させ、得られた(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オールを位置選択的に還元し、トランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールまたはシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールに誘導する。【選択図】なし


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特許公報(B2)_トリフルオロメチルシンナミルアルコールとその製造方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_トリフルオロメチルシンナミルアルコールとその製造方法
出願番号:2003183386
年次:2009
IPC分類:C07C 29/17,C07C 33/30


特許情報キャッシュ

菅原 紀充 三枝 浩 樽井 隆直 成塚 智 JP 4316942 特許公報(B2) 20090529 2003183386 20030626 トリフルオロメチルシンナミルアルコールとその製造方法 セントラル硝子株式会社 000002200 花田 吉秋 100123401 菅原 紀充 三枝 浩 樽井 隆直 成塚 智 20090819 C07C 29/17 20060101AFI20090730BHJP C07C 33/30 20060101ALI20090730BHJP JPC07C29/17C07C33/30 C07C 29/17 特開2000−191523(JP,A) 4 2005015400 20050120 13 20060209 木村 敏康 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、医薬・農薬の中間体として有用なトリフルオロメチルシンナミルアルコールに関する。【0002】【従来の技術】 従来、トランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造する公知の方法としては、4−トリフルオロメチルベンズアルデヒドをトリエチルホスホノアセテートを用いてトランス−4−(トリフルオロメチル)桂皮酸エチルへと変換し、その後ジイソブチルアルミニウムヒドリド−トルエン溶液を用いて還元し、トランス−4−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールを得る方法がある(特許文献1、特許文献2)。また、特許文献3には、トランス−3−(トリフルオロメチル)桂皮酸をエチルクロロホルメート、トリエチルアミンの存在下、硼水素化ナトリウムで還元してトランス−3−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールを得る方法が開示されている。さらに、非特許文献1には1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−2−プロペン−1−オールを硫酸存在下で転位させてトランス−3−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールを得る方法が開示されている。【0003】 一方、シス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造する公知の方法としては、特許文献4において、1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−アセチレンを出発原料に用い、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドの存在下、二酸化炭素を通気させ3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−プロピノイック酸へと変換し、次いでジアゾメタンを用いて3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−プロピノイック酸メチルへと変換し、さらにリンドラー触媒(パラジウム−炭酸カルシウム−酢酸鉛)の存在下、水素を用いて3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−2(Z)−プロペノイック酸メチルへと還元し、最後にジイソブチルアルミニウムヒドリド−ヘキサン溶液を用いて還元し、シス−3,5−ビス(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールを得る方法が開示されている。【0004】【特許文献1】特開平10−158167号公報【特許文献2】特開平9−48792号公報【特許文献3】特開平2−76864号公報【特許文献4】特表2002−532458号公報【非特許文献1】Tetrahedron(英国),1994年,第50巻,第1号,P.171‐188【0005】【発明が解決しようとする課題】 特許文献1、特許文献2などに開示された方法は、高価で取扱いが困難なジイソブチルアルミニウムヒドリドを用いており、工業的に実施するのには適さない。特許文献3に示された方法は有効な方法ではあるが、原料のトランス−(トリフルオロメチル)桂皮酸が必ずしも容易には製造できず、高価であるため工業的には採用し難い。また、非特許文献1の方法は原料が容易に入手できないため、工業的に実施するのは困難である。また、いずれの方法もトランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造する方法であり、これらの方法を用いてシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造するのは困難である。【0006】 一方、特許文献4において開示された方法は、原料が高価であるばかりでなく、目的物を得るために多段階を要し、取扱いが困難な試薬を数多く用いているため工業的には実施し難い。さらにこの方法はシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造する方法であり、この方法を用いてトランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造するのは困難である。【0007】 上述のように、将来にわたって実施できる工業的なトランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコール及びシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールの製造方法が確立されているとは言えない。【0008】【課題を解決するための手段】 本発明者らは、トリフルオロメチルシンナミルアルコールの新規製造方法について鋭意検討したところ、工業的に入手が容易なトリフルオロメチルハロベンゼン類と安価なプロパルギルアルコールを出発原料として、反応経路を選定することにより、上記の問題点を回避し、シス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールそれぞれを選択的に作り分けられることを見出し、本発明に到達したものである。【0009】 すなわち、本発明は(式1)に示すように、トリフルオロメチルハロベンゼン類からシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールをそれぞれ選択的に製造する方法を提供する。【0010】 さらに本発明は、シス−4‐トリフルオロメチルシンナミルアルコール、シス−3‐トリフルオロメチルシンナミルアルコールをそれぞれ提供する。【0011】 本発明は、下記の「工程(3)」によりなる、または「工程(1)」と「工程(3)」の2つの工程によりなる、シス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールの製造方法である。工程(1):化合物[1]をプロパルギルアルコールとカップリングさせて、化合物[2]とする炭素−炭素カップリング工程。工程(3):化合物[2]を還元して、位置選択的に化合物[4]を得る「シス還元工程」。【0012】【化6】【0013】(式中、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を表し、nは1または2を表す。) 「工程(1)」の「炭素−炭素カップリング工程」は、トリフルオロメチルハロベンゼンをパラジウム触媒と塩基性物質の存在下、プロパルギルアルコールと反応させる工程であり、主生成物は3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オールである。「工程(3)」の「シス還元工程」は、パラジウム−硫酸バリウム、パラジウム−硫酸バリウム−キノリンの存在下、水素を用いて、3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オールを位置選択的にシス体へ還元する工程である。主生成物はシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールである。「工程(3)」の終了後、蒸留、再結晶、晶析などにより、シス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールのみを高純度で取り出すことが可能である。【0014】 まず、本発明の「工程(1)」の「炭素−炭素カップリング工程」について説明する。この「工程(1)」は、トリフルオロメチルハロベンゼンをパラジウム触媒と塩基性物質の存在下、プロパルギルアルコールと反応させる工程である。【0015】 炭素−炭素カップリング工程で原料となる一般式[1]で表されるトリフルオロメチルハロベンゼンとしては、nが1であるものとして、2−フルオロベンゾトリフルオリド、3−フルオロベンゾトリフルオリド、4−フルオロベンゾトリフルオリド、2−クロロベンゾトリフルオリド、3−クロロベンゾトリフルオリド、4−クロロベンゾトリフルオリド、2−ブロモベンゾトリフルオリド、3−ブロモベンゾトリフルオリド、4−ブロモベンゾトリフルオリド、2−ヨードベンゾトリフルオリド、3−ヨードベンゾトリフルオリド、4−ヨードベンゾトリフルオリドがあげられる。nが2であるものとしては、1−フルオロ−2,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−フルオロ−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−フルオロ−2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−フルオロ−2,6−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−フルオロ−3,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−フルオロ−3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−クロロ−2,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−クロロ−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−クロロ−2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−クロロ−2,6−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−クロロ−3,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−クロロ−3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ブロモ−2,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ブロモ−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ブロモ−2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ブロモ−2,6−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ブロモ−3,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ブロモ−3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ヨード−2,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ヨード−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ヨード−2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ヨード−2,6−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ヨード−3,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ヨード−3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンがあげられる。これらのうち、反応性の点で、ハロゲンが臭素またはヨウ素であるものが好ましい。【0016】 前記、一般式[1]で表されるトリフルオロメチルハロベンゼンと、プロパルギルアルコールとから一般式[2]で表される3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オールを得る反応に於いて、プロパルギルアルコールの使用量は、特に制限を加える必要はないが、トリフルオロメチルハロベンゼン1モル当たり、通常、0.8〜10モルであり、好ましくは1〜3モルである。【0017】 パラジウム触媒としては、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、PdCl2[P(o−Me−Ph)3]2、PdCl2[P(m−Me−Ph)3]2、PdCl2[P(p−Me−Ph)3]2、PdCl2(PMe3)2、PdBr2(PPh3)2、PdCl2〔P(Ph)2CH2CH2P(Ph)2〕、PdCl2〔P(Ph)2CH2CH2CH2CH2P(Ph)2〕、PdCl2(PhCN)2、Pd(CO)(PPh3)3、PhPdI(PPh3)2、PhPdBr(PPh3)2、PhPdBr(PMePh2)2、PdCl2(PMePh2)2、PdCl2(PEt2Ph)2、PdCl2(PMe2Ph)2、Pd2Br4(PPh3)2、パラジウム/炭素など、一般的に入手できるパラジウム化合物が好適に用いられる。ここでPhはフェニル基、Meはメチル基、Etはエチル基、o−はオルト置換、m−はメタ置換、p−はパラ置換を表す。これらのパラジウム触媒の使用量は、一般式[1]で表されるトリフルオロメチルハロベンゼン1モル当たり、通常、0.001〜0.1モルの範囲である。【0018】 この反応では上記金属触媒の他に、助触媒として、3価のリン化合物を用いても良い。それらとしては、一般式[5]R1 −(R2 −)P−R3 [5](式[5]中、R1 、R2 およびR3 は、同一または相異なるアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはハロゲン原子を示す。)で示される化合物が好ましく、具体的にはトリ−n−ブチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−o−トリルホスファイト、三塩化リンなどが例示される。またこの他に、一般式[6](R1)2P−Q−P(R2)2 [6](式中、R1およびR2は前記と同じ、Qは−(CH2)m−(mは1〜8の整数。より好ましくは1〜4の整数。)で表されるアルキレン基を表す)で表されるホスフィンも好ましい。具体的には1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンなどが例示できる。これらのリン化合物使用量は、上記の金属触媒1モル当たり、0.5 〜50モルが好ましく、さらに好ましくは10〜30モルである。【0019】 さらにこれらの触媒に加え、銅触媒を用いることができ、かかる銅触媒としては、ヨウ化銅、臭化銅、塩化銅、酸化銅、シアン化銅などが挙げられるが、ヨウ化銅が特に好ましく、これらの使用量は、一般式[1]で表される原料トリフルオロメチルハロベンゼン1モル当たり、通常0.001〜0.1モルの範囲である。勿論これ以上使用することも可能であるが、特に大量使用するメリットもない。【0020】 塩基性物質としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウムなど)、カルボン酸塩(酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなど)、金属アルコキシド(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなど)、水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなど)などや有機塩基が挙げられるが、3級アミンまたは2級アミン(有機塩基)が特に好ましく用いられ、これらとしてはジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−イソプロピルエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、ルチジン、2−メチルピリジン、N−メチルモルホリンなどが例示される。塩基の使用量は、通常、トリフルオロメチルハロベンゼン1モル当たり、1〜5モルである。【0021】 必要により、適当な溶媒、例えばアセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリルアミド、N−メチルピロリドン、メタノール、トルエン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどを反応溶媒として使用することもできる。また、上記塩基を溶媒として用いることもできる。これらの反応溶媒の使用量は特に制限されない。【0022】 上記反応は通常窒素、アルゴン等の不活性ガス中で行われる。該反応においては、反応温度を高めることにより目的とする化合物の収率を向上させることができるが、あまり高温では副生物が増加するので、通常、反応温度は15〜160℃が好ましく、さらに好ましくは30〜140 ℃である。【0023】 反応時間については、特に制限はない。反応終了後、抽出、蒸留、再結晶等の通常の手段により、3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール[2]を得ることができる。また、必要によりカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶等により精製することもできる。【0024】 次に、本発明の「工程(3)」の「シス還元工程」について説明する。この「工程(3)」は、「工程(1)」で得られた3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール[2]を、パラジウム触媒の存在下、水素を用いて位置選択的に還元し、シス−トリフルオロメチルシンナミルアルコール[4]へと変換する工程である。【0025】 本工程では、パラジウム触媒を用いることが特に重要である。パラジウム触媒を用いることにより、目的とするシス型のトリフルオロメチルシンナミルアルコールを選択的に得ることが可能となる。【0026】 パラジウム触媒としては、パラジウムの他に、その活性を低下させる成分(バリウム、キノリンなど)が共存する触媒を用いると、目的物のオレフィンがさらに水素化し単結合まで還元されることを効果的に防止でき、目的物の選択率が向上するので、より好ましい。このような「敢えて触媒の活性を低下させた(被毒した)触媒」の例としては、パラジウム−硫酸バリウム、パラジウム−硫酸バリウム−キノリンがあげられる。【0027】 これらのパラジウム触媒の使用量は、原料3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール1モル当たり通常、0.001〜0.1モルの範囲が好ましい。【0028】 該反応において必要とされる水素の理論量は原料3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール[2]に対して1モルである。しかし実際には、反応器内に常圧または加圧で水素ガスを送り込んで反応させ、原料が十分に消費され目的物に変換されるか、水素ガスがもはや吸収されなくなった時点をもって反応工程を終了すればよい。反応器内に一時に過剰の水素ガスを送り込み、加圧したとしても、本発明の方法では、水素化の過反応により、二重結合が単結合まで還元されたり、水酸基が脱離したり、芳香環が還元を受けたりすることはないか、わずかに抑えられる。該反応において、水素の供給方式は、流通式でも密閉式でも良い。流通式の場合、供給する水素の量は特に制限されない。密閉式の場合、供給する水素の圧力は通常0.01MPaから2.0MPaであり、好ましくは0.05MPaから1.0MPaである。さらに好ましくは0.1MPaから0.5MPaである。【0029】 シス還元工程では、原料3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール[2]が液体である場合、敢えて溶媒を使用する必要は無いが、溶媒を使用することもできる。[2]が固体である場合には溶媒を使用するのが好ましい。溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等のアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物などがあげられるが、メタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、トルエン、n−ヘキサン、n−ヘプタンが好ましい。これらの反応溶媒の使用量は特に制限されないが、3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール[2]1gに対して0.5mlから100ml使用するのが好ましく、さらに好ましくは3mlから30mlの範囲である。勿論これ以上使用することも可能であるが、特に大量使用するメリットもない。【0030】 上記反応において、通常反応温度は、流通式の場合、−100℃以上、使用する溶媒の沸点以下の範囲であり、密封式の場合、−100℃から+100℃が好ましい。さらに好ましくは、−30℃〜+50℃である。【0031】 反応時間については、特に制限はない。反応終了時、通常トランス−トリフルオロメチルシンナミルアルコール[3]は全く生成していないか、生成していても微量である。従って、トランス体とシス体との分離は通常必要としない。しかしながら微量に残存する原料[2]や着色成分を除去するために、抽出、蒸留、再結晶等の通常の手段により、より高純度のシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコール[4]を得ることができる。また、必要によりカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶等により精製することもできる。【0032】【実施例】 次に、実施例をもって本発明を例示するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。【0033】 [実施例1] 3−〔4−(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール【0034】【化7】【0035】 窒素雰囲気下、4―ブロモ―α,α,α―ベンズトリフルオリド135g(0.60mol)を1,4−ジオキサン400mlに溶かし、2−プロピン−1−オール52g(0.92mol)、酢酸パラジウム(II)147mg(0.65mmol)、トリフェニルホスフィン1.57g(6mmol)、ヨウ化銅(I)343mg(1.8mmol)、トリエチルアミン182g(1.8mol)を加えた後、90℃で24時間撹拌した。室温に冷却後、水を加えて撹拌し、有機層と水層を分離した。水層は1,4−ジオキサンで洗浄した。有機層を併せて水で洗浄した。溶媒を留去して得られる油状物を減圧蒸留(126℃/1.7kPa)し、留去液を冷やして目的化合物91.3g(収率76%・純度98.1%)を淡黄色結晶として得た。NMRスペクトル(400MHz,CDCl3)δppm:1.76(1H,br,OH), 4.52(2H,s), 7.53 (2H,d,J=8.4Hz), 7.58(2H,d,J=8.4Hz)。【0036】 [参考例1] トランス−4−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコール【0037】【化8】【0038】 窒素雰囲気下、3−〔4−(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール22.7g(0.11mol)をトルエン270mLに溶かし、0℃に冷却した。水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(70%,トルエン溶液)36g (0.13mol)を滴下により加えた後、25℃まで昇温し、4時間撹拌した。水を加えてクエンチし、溶媒、水、1N水酸化ナトリウム水溶液を加えて抽出し、溶媒留去した後、ヘキサン450mLを加え晶析により精製して目的化合物19.9g(収率87%・純度98.9%)を白色結晶として得た。このときシス−4−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールは全く得られなかった(トランス選択性100%)。NMRスペクトル(400MHz,CDCl3)δppm:1.63(1H,s,OH), 4.37(2H,dd,J=5.4,1.4Hz), 6.46(1H,dt,J=16.0,5.2Hz), 6.67(1H,m), 7.48(2H,d,J=8.0Hz),7.57(2H,d,J=8.0Hz)。【0039】 [実施例2] シス−4−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコール【0040】【化9】【0041】 3−〔4−(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール1.00g(5.0mmol),キノリン117mgをテトラヒドロフラン6mLに溶かし、反応器内を窒素で置換した。5%パラジウム/硫酸バリウム120mgを添加し、水素を吹き込んだ。反応終了後、反応液をセライトにて濾過した。濾液を濃縮後、酢酸エチルにて希釈し、2M塩酸水溶液、飽和重曹水で洗浄した。溶媒を留去して得られる油状物を減圧蒸留(106℃/0.7kPa)し、目的化合物0.74g(収率73%、純度99.6%)を得た。このときトランス−4−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールは全く得られなかった(シス選択性100%)。NMRスペクトル(400MHz,CDCl3)δppm:4.42(2H,dd,J=1.6,6.4Hz), 5.99(1H,dt,J=12.0,6.4Hz),6.65(1H,m), 7.31(1H,d,J=8.2Hz), 7.59(1H,d,J=8.2Hz)。【0042】 [実施例3] 3−〔3−(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール【0043】【化10】【0044】 窒素雰囲気下、3―ブロモ―α,α,α―ベンズトリフルオリド45.0g(0.20mol)を1,4−ジオキサン140mlに溶かし、2−プロピン−1−オール16g(0.28mol)、酢酸パラジウム(II)49mg(0.20mmol)、トリフェニルホスフィン523mg(4.00mmol)、ヨウ化銅(I)114mg(0.600mmol)、トリエチルアミン61g(0.60mol)を加えた後、90℃で35時間撹拌した。室温に冷却後、水を加え有機層と水層を分離した。水層は1,4−ジオキサンで洗浄した。有機層を併せて水で洗浄した。溶媒を留去して得られる油状物を減圧蒸留(128℃/1.7kPa)し、留去液を冷やして目的化合物16.5g(収率41%、純度98.3%)を淡黄色液体として得た。NMRスペクトル(400MHz,CDCl3)δppm:1.86(1H,br,OH), 4.51(2H,s), 7.43(1H,t, J=7.8Hz),7.56(1H,d,J=7.8Hz), 7.60(1H,d,J=7.8Hz), 7.69(1H,s)。【0045】 [参考例2] トランス−3−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコール【0046】【化11】【0047】 窒素雰囲気下、3−〔3−(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール4.00g(20mmol)をトルエン40mLに溶かし、0℃に冷却した。水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(70%,トルエン溶液)6.4g (22mmol)を滴下により加えた後、25℃まで昇温し、2時間撹拌した。水を加えてクエンチし、溶媒、水、1N水酸化ナトリウム水溶液を加えて抽出し、溶媒留去した。目的化合物3.97g(収率98%、純度99.4%)を得た。このときシス−3−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールは全く得られなかった(トランス選択性100%)。NMRスペクトル(400MHz, CDCl3)δppm:1.95(1H,br,OH), 4.36(2H,dd,J=1.6,5.6Hz),6.43(1H,dt,J=15.8,5.6Hz), 6.65(1H,dt,J=15.8,1.6Hz), 7.42(1H,t,J=7.8Hz),7.48(1H,d,J= 7.8 Hz), 7.54(1H,d,J=7.8Hz), 7.62(1H,s)。【0048】 [実施例4] シス−3−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコール【0049】【化12】【0050】 3−〔3−(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール2.00g(10.0mmol),キノリン250mgをテトラヒドロフラン20mLに溶かし、反応器内を窒素で置換した。5%パラジウム/硫酸バリウム200mgを添加し、水素を吹き込んだ。8時間攪拌後、反応液をセライトにて濾過した。濾液を濃縮後、酢酸エチルにて希釈し、2M塩酸水溶液、飽和重曹水で洗浄した。溶媒を留去して、目的化合物2.00g(収率99%、純度85.6%)を淡橙色液体として得た。このときトランス−3−(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールは全く得られなかった(シス選択性100%)。NMRスペクトル(400MHz, CDCl3)δppm:4.42(2H,dd,J=1.7,6.6Hz), 5.98(1H,dt,J=12.0,6.6Hz), 6.59(1H,m), 7.39(1H,d,J=7.8Hz), 7.45(1H,s), 7.46(1H,t,J=7.8Hz),7.52(1H, d,J=7.8Hz)。【0051】 [実施例5] 3−〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール【0052】【化13】【0053】 窒素雰囲気下、1−ブロモ−3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン58.6g(0.20mol)を1,4−ジオキサン176mlに溶かし、2−プロピン−1−オール15g(0.28mol)、酢酸パラジウム(II)449mg(2.00mmol)、トリフェニルホスフィン525mg(4.00mmol)、ヨウ化銅(I)114mg(0.600mmol)、トリエチルアミン61g(0.60mol)を加えた後、70℃で9時間撹拌した。室温に冷却後、水を加え、有機層と水層を分離した。水層は1,4−ジオキサンで洗浄した。有機層を併せて水で洗浄した。溶媒を留去して得られる油状物を減圧蒸留(90℃/0.53kPa)し、目的化合物32.0g(収率60%、純度99.3%)を白色結晶として得た。NMRスペクトル(400MHz,CDCl3) δppm:1.98(1H,br, OH), 4.51(2H,s), 7.79(1H,s),7.84(2H,s)。【0054】 [参考例3] トランス−3,5−ビス(トリフルオロメチル)シンナミルアルコール【0055】【化14】【0056】 窒素雰囲気下、3−〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール5.36g(20mmol)をトルエン54mLに溶かし、0℃に冷却した。水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム)(70%,トルエン溶液)6.4g (22mmol)を滴下により加えた後、25℃まで昇温し、4時間撹拌した。水を加えてクエンチし、溶媒、水、1N水酸化ナトリウム水溶液を加えて抽出し、溶媒留去した。目的化合物5.28g(収率98%・純度92.9%)を白色固体として得た。このときシス−3,5−ビス(トリフルオロメチル)シンナミルアルコールは全く得られなかった(トランス選択性100%)。NMRスペクトル(400MHz,CDCl3)δppm:1.95(1H,br,OH), 4.39(2H,dd,J=1.6,5.2Hz),6.52 (1H,dt,J=15.8,5.2Hz), 6.71(1H,dt,J=15.8,1.6Hz), 7.73(1H,s), 7.78(2H,s)。【0057】 [実施例6] 3−〔4−(トリフルオロメチル)フェニル〕−2−プロピン−1−オール【0058】【化15】【0059】 窒素雰囲気下、4―ヨード―α,α,α―ベンズトリフルオリド5.45g(20.0mmol)を1,4−ジオキサン16mlに溶かし、2−プロピン−1−オール1.2g(22mol)、酢酸パラジウム(II)4.9mg(0.022mmol)、トリフェニルホスフィン53mg(0.20mmol)、ヨウ化銅(I)11mg(0.67mmol)、トリエチルアミン6.1g(60mmol)を加えた後、70℃で3時間撹拌した。室温に冷却後、水を加え、有機層と水層を分離した。水層は1,4−ジオキサンで洗浄した。有機層を併せて水で洗浄した。溶媒を留去して得られる油状物を減圧蒸留(126℃/1.7kPa)し、留去液を冷やして目的化合物3.5g(収率87%・純度91.4%)を淡黄色結晶として得た。【0060】【発明の効果】 本発明は、容易に入手可能なトリフルオロメチルハロベンゼンとプロパルギルアルコールを出発原料として、医・農薬の中間原料として有用なシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールのそれぞれを選択的に効率良く得る手段を提供する。 一般式[2](式中、nは1または2を表す。)で表される3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オールを、パラジウム−硫酸バリウム、パラジウム−硫酸バリウム−キノリンの存在下、水素を用いて位置選択的に還元し、一般式[4](式中、nは1または2を表す。)で表されるシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造する方法。 下記の2工程を含むシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールの製造方法。(1)一般式[1](式中、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を表し、nは1または2を表す)で表されるトリフルオロメチルハロベンゼンをパラジウム触媒と塩基性物質の存在下プロパルギルアルコールと反応させる工程。(2) (1)の工程から得られる一般式[2](式中、nは1または2を表す。)で表される3−(トリフルオロメチルフェニル)−2−プロピン−1−オールを、パラジウム−硫酸バリウム、パラジウム−硫酸バリウム−キノリンの存在下、水素を用いて位置選択的に還元し、一般式[4](式中、nは1または2を表す。)で表されるシス−トリフルオロメチルシンナミルアルコールを製造する工程。 シス−4−トリフルオロメチルシンナミルアルコール。 シス−3−トリフルオロメチルシンナミルアルコール。


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