タイトル: | 公開特許公報(A)_新規抗腫瘍性蛋白質 |
出願番号: | 2003172939 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07K7/08,A61K35/78,A61K38/00,A61P35/00,C07K1/18,C07K1/22,C07K1/26,C07K1/34 |
戸松 誠 生田 安喜良 JP 2004075676 公開特許公報(A) 20040311 2003172939 20030618 新規抗腫瘍性蛋白質 秋田県 591108178 生田 安喜良 502218330 佐々 紘造 100098556 戸松 誠 生田 安喜良 JP 2002176525 20020618 7 C07K7/08 A61K35/78 A61K38/00 A61P35/00 C07K1/18 C07K1/22 C07K1/26 C07K1/34 JP C07K7/08 A61K35/78 M A61K35/78 X A61K35/78 Y A61P35/00 C07K1/18 C07K1/22 C07K1/26 C07K1/34 A61K37/02 5 OL 13 4C084 4C088 4H045 4C084AA02 4C084AA07 4C084BA01 4C084BA02 4C084BA08 4C084BA18 4C084CA13 4C084CA56 4C084MA01 4C084NA14 4C084ZB262 4C088AB16 4C088AC05 4C088AC11 4C088BA16 4C088CA12 4C088CA13 4C088CA14 4C088CA25 4C088MA01 4C088NA14 4C088ZB26 4H045AA10 4H045AA20 4H045AA30 4H045BA16 4H045CA30 4H045EA28 4H045FA71 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は抗腫瘍活性を有する新規蛋白質及びその製造法に関する。【0002】【従来の技術】これまで多くの抗腫瘍活性に関する報告がなされてきている。しかし、その多くは化学療法剤に代表されるように、直接腫瘍細胞とともに正常細胞も死に至らしめ、強い副作用を引き起こす等の問題点があるか、あるいは、キノコ多糖類に代表される免疫力増強すなわちアジュバント効果とされるものであった。腫瘍細胞選択的な致死活性を指標とした報告はわずかにマツタケの蛋白質に関するものだけである(特許文献1)。しかし、マツタケは高価であり、人工栽培ができず、その資源量も減少していると言われている。【0003】上記実情に鑑み、本発明者らは、キノコ、山菜、海藻等の各種試料抽出物について鋭意研究の結果、うこぎ科タラノキ属のタラノキ(Aralia elata)抽出物が腫瘍細胞に選択的な致死作用を有することを見いだした(特許文献2)。すなわち、ヒト子宮ガンに代表される扁平上皮ガンの原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)と同じ作用機作でガンを引き起こすSV40により形質転換(ガン化)したヒト胎児繊維芽細胞に対してのみ致死活性を示し、形質転換していない正常細胞には影響しない活性を指標として天然物中に探索した結果、新規な抗腫瘍性蛋白質をタラノキ抽出物中に見いだし、このタラノキ抽出物あるいは活性本体である抗腫瘍性蛋白質を含む抗腫瘍剤あるいはアポトーシス誘導剤の製造、提供を可能とした。しかし、植物資源であるタラノキの新芽を食することができるのは、春に季節が限定されることから、栽培が可能とはいえ、通年で安定的に該蛋白質を得ることは、困難であった。また、さらに高い腫瘍細胞選択的活性を有するものが望まれていた。【0004】【特許文献1】特開平6−80699号【特許文献2】特開平11−228598号【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、安定的に得ることができ、腫瘍細胞選択的活性がさらに高い蛋白質を提供することである。【0006】【課題を解決するための手段】上記実状に鑑み、本発明者らは鋭意検討の結果、うこぎ科植物カルス培養物からの抽出物が、植物体以上に腫瘍細胞に選択的な致死作用を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下のとおりである。(1)うこぎ科植物(ただし、タラノキを除く)のカルス由来の抗腫瘍性蛋白質。(2)タラノキ(Aralia elata)カルス由来で、SDS電気泳動によるサブユニットの分子量が約31kDaおよび約29kDaの抗腫瘍性蛋白質。(3)サブユニットのアミノ末端側のアミノ酸配列が、31kDaが配列番号1、29kDaが配列番号2である前記(2)のタンパク質。(4)うこぎ科植物カルスから水性溶媒で抽出した抽出物を、下記(A)乃至(E)から選択する一つ以上の工程を任意の順序に組み合わせて行うことを特徴とする前記(1)又は(2)記載の抗腫瘍性蛋白質の製造法。(A)陰イオン交換樹脂と接触せしめて吸着処理し、続いて溶離剤によりカラムから溶離する工程、(B)ゲル電気泳動で電荷および分子量分画処理により精製する工程、(C)レクチンカラムあるいはアフィニティーカラムと接触せしめて吸着処理し、続いて溶離剤によりカラムから溶離する工程、(D)疎水性カラムと接触せしめて吸着処理し、続いてカラムから溶離する工程、および(E)ゲル濾過カラムで分子量分画により精製する工程。(5)うこぎ科植物カルス抽出物(ただし、タラノキを除く)又は前記(1)若しくは(2)記載の蛋白質を有効成分として含有する抗腫瘍剤。【0007】タラノキには多くの生理機能が知られている。例えば、抗菌作用(Han’gak Nonghwa Hakhoechi,39巻,265−267項,1996年)、活性酸素消去能(特開平8−283172号)、糖吸収抑制効果(特開平8−283169号)等があるが、いずれも本発明の抗腫瘍性とは異なるものである。また、特開平11−228598号には、前述のようにタラノキから抽出された蛋白質が腫瘍細胞に選択的な致死作用を有することが開示されており、タラノキとして植物体のみならずカルス培養物でもよいことも開示されている。しかしながら、該蛋白質は本発明の蛋白質とはサブユニットの分子量が異なっており、異なる蛋白質であると考えられる。加えて、後述の実施例に示す様に、腫瘍細胞選択的活性は本発明よりも低い。【0008】【発明の実施の形態】以下においては、次のような略称を用いる。2,4−D:2,4 −ジクロロフェノキシ酢酸NAA :1−ナフタレン酢酸;Kin :カイネチン;B :ベンジールアデニン【0009】本発明の抗腫瘍性蛋白質はタラノキを除くうこぎ科植物カルス由来又はタラノキカルス由来で、例えば、これらのカルス抽出物、これらを精製したもの等である。うこぎ科植物としては、例えば、ウコギ属のAcanthopanax gracilistylus W.W. Smith( ウコギ)、A. trichodon Franch. et Savat.(ミヤマウコギ)、A. spinosus (L. fil.) Miq(ヤマウコギ)、(A. sieboldianus Makino(ヒメウコギ)、A. japonicus Franch. et Savat.(オカウコギ)、A. hypoleucus Makino(ウラジロウコギ)、A. senticosus (Rupr. et Maxim.)(エゾウコギ)、A. divaricatus (Sieb. et Zucc.)(ケヤマウコギ)、A. sciadophylloides (Franch. et Savat.)(コシアブラ)、A. sessiliflorus Seem.、A. nikaianum Koidz. ex Nakai(ウラゲウコギ)、A. henryi Herms.、A. verticillatus Hoo、タラノキ属のAralia elata (Miq.) Seemann(タラノキ)、Aralia elata (Miq.) Seemann ver. canescens (Fr. et Sav.) Nakai(メダラ)、A. bipinnata Blanco(ウラジロタラノキ)、A. bipinnata Blanco ver. inermis (Yanagita) Yamazaki(シチトウタラノキ)、A. cordata Thunb.(ウド)、A. glabra Matsum.(ミヤマウド)、A. racemosa L.、A. chinensis L.、Aralia hispida Vent、A. nudicaulis L. Wild、A. spinosa L. キヅタ属のHedera canariensis Willd(カナリーキヅタ)、H. helix L.(セイヨウキヅタ)、H. nepalensis K. Koch var. sinensis (Tobl.) Rehd.、H. rhombea (Miq.) Bean(キヅタ)、オタネニンジン属 (トチバニンジン属)のPanax ginseng C.A. Mey. (P. schinseng Nees)(オタネニンジン(チョウセンニンジン))、P. japonicus C. A. Mey.(トチバニンジン(チクセツニンジン))、P. japonicus C.A. var. angustatus Hara(ホソバチクセツニンジン)、P. quinquefolium L.(アメリカニンジン)、P. notoginseng BURKILL F.H.Chen、P. pseudoginseng WALICH、Panax trifolium L.、タイワンモミジ属のPolyscias fruticosa (L.) Karms、P. scutellaria (Burm.f.) Fosb.、フカノキ属のSchefflera arboricola Hayata(ヤドリフカノキ)、S. octophylla (Lour.) Harms(フカノキ)、ハリギリ属のKalopanax pictus (Thunb.) Nakai(ハリギリ)、ハリブキ属のOplopanax japonicus (Nakai) Nakai(ハリブキ)、カクレミノ属のDendoropanax trifidus (Thunb.) Makino(カクレミノ)、D. morbiferum Leb.(チョウセンカクレミノ)、エヒノパナックス属のEchinopanax horridum Decne、タカノツメ属のEvodiopanax innovans(Evodiopanax innovans)、ヤツデ属のFitsia japonica (Thunb.) Decne. et Planch.(ヤツデ)、Fitsia japonica (Thunb.) Decne. et Planch.ver. liukiuensis Hatusima(リュウキュウヤツデ)、F. oligocarpella (Nakai) Koidz.(ムニンヤツデ)、カミヤツデ属のTetrapanax papyriferus (Hook.) K. Koch(カミヤツデ)、Fatshedera Hort(セイヨウキズタとヤツデの属間雑種)、Aralia属のAralia nudicaulis L. wild Sarsaparilla、A. trifoliata MEYEN(ホソバカクレミノ)、Arthrophyllum属のArthrophyllum divesifolium BL.(ハネバカクレミノ)、Brassaia属のBrassaia actinophylla MUELL(オオフカノキ)、Nothopanax属のNothopanax balfouriana HORT(又はAralia balfouriana HORT)、N. filicifolia HORT(又は Aralia filicifolia HORT)( ホソバナンヨウウコギ)、N. fruticosum MIQ. (ナンヨウウコギ)、N. guilfoylei MIQ.(ヒロハナンヨウウコギ)、N. scutellarium MERR.(オワンバノキ)、Oplopanax属のOplopanax horridum (J. E. Smith) Miq. Devil’s Club、Schefflera属のSchefflera heterophylla HARMS.(又は S. junghuhniana (MIQ.) HARMS)(タラバフカノキ)、Trevesia属のTrevesia cheirantha RIQL(ナンヨウヤツデ)等が例示できる。タラノキカルス由来の場合、そのSDS電気泳動によるサブユニットの分子量は約31kDaおよび約29kDaである。該サブユニットのアミノ末端側のアミノ酸配列が、31kDaが配列番号1、29kDaが配列番号2であることが好ましい。【0010】本発明のうこぎ科植物カルスを得るには、公知のカルス培養法が使用できる、例えば、次のようにして得ることができる。うこぎ科植物の芽ばえ、根,茎、葉、成長点等を除菌・滅菌する。材料としては、うこぎ科植物の全組織を用いることができる。除菌方法としては、水道水、界面活性剤及び中性洗剤を用いることができる。滅菌方法としては、例えば100%エタノ−ル液に1分間浸した後、更に2O%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(或いは飽和さらし粉水溶液)に5分間以上浸すことで除菌することができる。次いで、適当な大きさ、好ましくはカミソリの刃で無菌的に1cm×lcm四方に刻み、各切片を培地上に静置する。培地としては、例えば、Murashige & Skoog(M&S)( Murashige, T. and Skoog. F. ”A revised mediumfor rapid growth and bioassay with tabacco tissue cultures”. Physiol.Plant 15:473−497(1962).)の無機培地にビタミン類、寒天9.5g/L、サッカロ−ス30g/Lを添加して、更に、植物ホルモンを種々組み合わせたもの、好ましくは、2,4−D(3mg/L)−Kin(0.1mg/L)または、NAA(3mg/L)−Kin(0.1mg/L)をそれぞれ別個に添加後、120℃、15分間滅菌したものを用いることができる。M&S培地に代えて、広く使用されているWhite (1963), B5培地(Gamborgら (1968)),Linsmaier & skoog (1965), Nitsch (1951)等を用いることもできる。その後、一定条件、好ましくは暗所中、 25±1℃のインキュベーター中で2〜5週間培養することでカルスを誘導することができる。この間にカルス細胞が誘導された植物片から細胞を切り離し、新たに調製した同じ培地に移植し培養することで、カルスを得ることができる。また、同培地から寒天のみを除いた液体培地で培養することでもカルスを得ることができる。【0011】うこぎ科植物カルスからの蛋白質の抽出方法としては、特に限定されないが、例えば原料のうこぎ科植物カルスを破砕した後、種々の適当な溶媒を用い、室温又は氷冷下において抽出する方法が挙げられる。抽出溶媒としては、例えば水、Tris・HCl緩衝液、リン酸緩衝液等の中性水性溶媒を用いることができる。【0012】この様にして得られるうこぎ科植物カルス抽出物はそのまま抗腫瘍剤に用いても良いが、さらに必要に応じて、例えば下記(A)乃至(E)から選択する一つ以上の工程を任意の順序に組み合わせて精製して用いることができる。(A)陰イオン交換樹脂と接触せしめて吸着処理し、続いて溶離剤によりカラムから溶離する工程、(B)ゲル電気泳動で電荷および分子量分画処理により精製する工程、(C)レクチンカラムあるいはアフィニティーカラムと接触せしめて吸着処理し、続いて溶離剤によりカラムから溶離する工程、(D)疎水性カラムと接触せしめて吸着処理し、続いて溶離剤によりカラムから溶離する工程、(E)ゲル濾過カラムで分子量分画により精製する工程。【0013】(A)の方法における陰イオン交換樹脂としては、例えばDEAE、QAE、QMA等の官能基を有するものを用いることができる。溶離剤としては例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム等を用いることができる。(C)の方法におけるレクチンカラムとしては、例えばConA、LCA、WGAカラム等を用いることができる。溶離剤としては例えばα−メチルグルコシド、塩化ナトリウム等を用いることができる。アフィニティーカラムとしては、セファロース−4B、ラクトース−セファロースカラム等を用いることができる。溶離剤としては例えばラクトース、ガラクトース等を用いることができる。(D)の方法における疎水性カラムとしては、例えばフェニル基、ブチル基等を有するアガロースカラム、セファロースカラム等を用いることができる。溶離剤としては例えばエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いることができる。(E)の方法におけるゲル濾過カラムとしては、例えばデキストラン系、アガロース系等のカラムを用いることができる。これらの方法における操作は、常法に準じて行うことができる。好ましくはAとCの工程を組み合わせて精製するのがよい。この様にして本発明の蛋白質を得ることができる。【0014】本発明の抗腫瘍剤は上記のうこぎ科植物カルスから抽出した蛋白質を有効成分とする。うこぎ科植物カルス蛋白質は抽出物そのものでもよく、前記の方法により抽出物から分離精製したものでもよい。なお、タラノキには多くの生理機能が知られている。例えば、抗菌作用(Han’gak Nonghwa Hakhoechi,39巻,265−267項,1996年)、活性酸素消去能(特開平8−283172号)、糖吸収抑制効果(特開平8−283169号)等があるが、いずれも本発明の抗腫瘍性とは異なるものである。【0015】本発明のうこぎ科植物カルス抽出物あるいは抗腫瘍性蛋白質を有効成分とする抗腫瘍剤は治療、予防、保健の用に供されるべく、経口用剤型または非経口用剤型の形態で摂取される。経口用剤型の形態としては、例えば散剤、錠剤、乳剤、カプセル剤、茶剤、顆粒剤、液剤(チンキ剤、流エキス剤、酒精剤、懸濁剤、リモナーデ剤を含む)が挙げられる。また、特定保健用食品、特殊栄養食品、栄養補助食品、健康食品等に食品添加物として配合することもできる。また、非経口用剤型の形態としては、例えば軟膏剤、硬膏剤、液剤(酒精剤、チンキ剤、ローション剤を含む)、湿布剤(ハップ剤、パスタ剤)、塗布剤、噴霧剤、散布剤、リニメント剤(塗擦剤)、クリーム剤、乳剤、浴剤が挙げられる。【0016】【実施例】次に本発明を実施例により詳細に説明する。抗腫瘍活性測定法は下記の如く行った。即ち、96穴マイクロプレートに1×104/mlの各細胞を100μlづつ播種し、37℃、5%CO2で24時間培養し細胞を付着させた後、試料を10μl加えて更に44時間同条件で培養する。生細胞を数えるため、WST法(和光純薬社製Cell Counting Kit)により、4時間後にマイクロプレートリーダーで測定し、コントロールに対する生細胞の割合すなわち、生存率を次式により算出した。【0017】【数1】【0018】なお、吸光度は波長450nmの値から655nmの値を引いた数値であり、ネガティブコントロールは細胞を播種せず、他は全て前述と同じ方法をとったものである。正常細胞としてはヒト繊維芽細胞であるWI38、形質転換細胞としてはWI38をSV40で形質転換したVA13を用いた。正常細胞の生存率が高く、形質転換細胞の生存率が低ければ、腫瘍細胞選択的致死作用があるといえる。【0019】実施例1[タラノキカルス培養物の調製]1.カルス誘導i)培地の調製カルス誘導培地はMurashige & Skoog(M&S)( Murashige, T. and Skoog. F. ”A revised medium for rapid growth and bioassay with tabacco tissue cultures”. Physiol. Plant 15:473−497 (1962).)の無機培地にビタミン類、寒天9.5g/L、サッカロ−ス30g/Lを添加して、更に、植物ホルモンを組み合わせた2,4−D(3mg/L)−Kin(0.1mg/L)及びNAA(3mg/L)−Kin(0.1mg/L)をそれぞれ別個に添加後、120℃、15分間滅菌し2種類の培地を作成した。ii)植物材料の調製材料のタラノキ(Aralia elata、ウコギ科)植物(芽ばえ、根、茎、葉、成長点等)を水道水及び中性洗剤で良く除菌する。除菌後、植物の各部位をクリーンベンチ中で適当な大きさに加工して、100%エタノ−ル液に1分間浸した後、更に2O%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(或いは飽和さらし粉水溶液)に5分間以上浸し滅菌した後、材料植物をカミソリの刃で無菌的に1cm×lcm四方に刻み、各切片を上記に作成したホルモン組成の異なる2種類の培地上に静置した。その後、暗所中、25±1℃のインキュベーター中で2〜5週間培養を行った。この間にカルス細胞が誘導された植物片から細胞を切り離し、新たに調製した同じM&S培地に移植した。iii)株の選択上記と同じ条件で培養を行い成長の良い細胞を選択し、新たな培地に移値をして同じ条件で培養を繰り返し、安定した成長の早い株を選抜した。【0020】2.カルスの継代培養の条件検討とタンパク質精製用材料の大量培養i)継代培養用の条件検討上記の安定したカルス選択株を用いて更に、種々組み合わせた植物ホルモン(2,4D−Kin、NAA−Kin、NA−B等)をM&S基本培地に添加して培地を作成し、カルス細胞を移植後、5〜6週間暗所、25±1℃で培養してカルス細胞の成長の良いホルモンの組み合わせを選択して継代培兼用のカルス株とした。ii)タンパク質精製用の大量培養タンパク質精製用のタラノキカルス大量培養は、 NAA(3mg/L)−B(O.1mg/L)のホルモン組成を用いて、5〜6週間暗所、25±1℃で培養を行い、生重量約3.2kgを作成した。【0021】実施例2[カルス抽出物の調製]上記のようにして得られたカルス1.1kgに対し氷冷下、3倍量の50mM Tris・HCl(pH7.4)、1mM EDTAを加え、ホモジナイザーで破砕抽出した後、遠心分離(7,000rpm,20min)し、上清を得た。この操作を2回繰り返し抽出物を得た。【0022】実施例3[カルスからの抗腫瘍性蛋白質の精製]上記のようにして得られた抽出物に硫安を80%飽和になるように溶解し、遠心分離により沈殿を得た。これをCentriPlus80(ミリポア社製)を用いて、脱塩・バッファー交換をした後、Q Sepharose HP(アマシャム社製)を用いる陰イオン交換カラムに供し、吸着洗浄後NaClの直線濃度勾配により該蛋白質を溶出させた。活性画分を集め、濃縮・バッファー交換した後、Sepharose 4B(アマシャム社製)カラムを用いるアフィニティークロマトに供し、吸着洗浄後0.1Mラクトースにより該蛋白質を溶出させ、さらにCentriPlus80を用いて濃縮・バッファー交換し、均一に精製した。【0023】実施例4[抗腫瘍性蛋白質の特性]実施例3で得られた蛋白質の分子量、糖鎖の有無、および部分アミノ酸配列を調べた。図1Aに示すように、SDS電気泳動では分子量約31,000および29,000の位置にバンドが認められた。同一条件で泳動した植物体から精製した抗腫瘍性蛋白質も2本のバンドが認められるものの、高分子側の分子量が異なっていた。また、SDS電気泳動後のゲルをGlycoprotein Detection Kit(シグマ社製)を用いた糖染色を行った。図1Bに示すように2本のバンドは、ともに染色されることから、糖蛋白質であることが示された。また、各サブユニットのアミノ末端側のアミノ酸配列は、31kDaが配列番号1、29kDaは配列番号2のとおりであった。【0024】試験例1[抗腫瘍活性]WST法により、精製蛋白質のヒト繊維芽細胞に対するLD50(50%生育阻止濃度)を求めた。図2Aに示すように、形質転換細胞VA13で、約1.2ng/ml、正常細胞WI38で約19.6ng/mlであり、LD50値に約16倍の差があったことから、選択的致死活性があることが示された。また、植物体由来の蛋白質について同様に活性測定した結果、図2Bに示すように、VA13、およびWI38に対し、それぞれ約1.7および13.0ng/mlであり、LD50値の差は、約7.6倍であった。すなわち、植物体由来の蛋白質に比べ、ガン細胞への選択性が強くなった抗腫瘍活性を示すことがわかった。【0025】実施例5[ウコギ科植物カルス培養物の調製]材料はいずれも、ウコギ科のカクレミノ(Dendropanax trifidus、カクレミノ属)、チョウセンニンジン(Panax ginseng、トチバニンジン属)、フカノキ(Schefflea octophylla、フカノキ属)、カミヤツデ(Tetrapanax papyriferum、カミヤデ属)、コシアブラ(Acanthopanax sciadophylloidesウコギ属)を用い、それぞれ実施例1と同様にカルス誘導および培養を行った。【0026】実施例6[カルス抽出物の調製]実施例5で得られた各カルスから実施例2と同様にして抽出物を得た。【0027】試験例2[抗腫瘍活性]各カルス抽出物のヒト繊維芽細胞に対する細胞障害活性の測定を試験例1と同様に行った。タラノキについても実施例2で得られた抽出物について測定した。図3に示すように、いずれのカルス抽出物も正常細胞WI38に比べ、形質転換細胞VA13に対して選択的に生育を抑制していることが示された。すなわち、タラノキカルスに見いだされたガン細胞に対する選択性の大きい抗腫瘍活性は、ウコギ科植物カルス全般に共通する活性であることが示された。【0028】【発明の効果】以上説明したように、本発明のうこぎ科植物カルス由来の抗腫瘍性蛋白質は、植物体由来の蛋白質に比べてガン細胞への選択性が大きい。また、植物体は蛋白質の供給源として季節性があり不安定であるが、本発明の蛋白質はカルス由来なので通年で安定的に該蛋白質を得ることができる。【0029】【配列表】【図面の簡単な説明】【図1】タラノキカルス及び植物体の抗腫瘍性蛋白質のSDS−PAGEによる蛋白質及び糖蛋白質の検出結果を表した図である。【図2】タラノキカルス抗腫瘍性蛋白質のヒト形質転換細胞に対する選択的致死効果を表した図である。【図3】各種うこぎ科植物カルス抽出物のヒト形質転換細胞に対する選択的致死効果を表した図である。 うこぎ科植物(ただし、タラノキを除く)のカルス由来の抗腫瘍性蛋白質。 タラノキ(Aralia elata)カルス由来で、SDS電気泳動によるサブユニットの分子量が約31kDaおよび約29kDaの抗腫瘍性蛋白質。 サブユニットのアミノ末端側のアミノ酸配列が、31kDaが配列番号1、29kDaが配列番号2である請求項2のタンパク質。 うこぎ科植物カルスから水性溶媒で抽出した抽出物を、下記(A)乃至(E)から選択する一つ以上の工程を任意の順序に組み合わせて行うことを特徴とする請求項1又は2記載の抗腫瘍性蛋白質の製造法。(A)陰イオン交換樹脂と接触せしめて吸着処理し、続いて溶離剤によりカラムから溶離する工程、(B)ゲル電気泳動で電荷および分子量分画処理により精製する工程、(C)レクチンカラムあるいはアフィニティーカラムと接触せしめて吸着処理し、続いて溶離剤によりカラムから溶離する工程、(D)疎水性カラムと接触せしめて吸着処理し、続いてカラムから溶離する工程、および(E)ゲル濾過カラムで分子量分画により精製する工程。 うこぎ科植物カルス抽出物(ただし、タラノキを除く)又は請求項1若しくは2記載の蛋白質を有効成分として含有する抗腫瘍剤。 【課題】安定的に得ることができ、腫瘍細胞選択的活性がさらに高い蛋白質を提供すること。【解決手段】うこぎ科植物カルス由来の抗腫瘍性蛋白質、該蛋白質の製造法及び該蛋白質を有効成分として含有する抗腫瘍剤。本発明の抗腫瘍性蛋白質は、植物体由来の蛋白質に比べてガン細胞への選択性が大きい。また、植物体は蛋白質の供給源として季節性があり不安定であるが、本発明の蛋白質はカルス由来なので通年で安定的に該蛋白質を得ることができ、さらに、培養条件の検討により生産性の向上も計れる。【選択図】 なし