生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_アブラナ科植物の抽出物とその用途
出願番号:2003167787
年次:2005
IPC分類:7,C07D307/80,A23L1/30,A61K31/121,A61K31/34,A61K31/343,A61K35/78,A61P7/00,A61P29/00,A61P43/00


特許情報キャッシュ

吉川 雅之 松田 久司 森川 敏生 永原 靖久 JP 2005002052 公開特許公報(A) 20050106 2003167787 20030612 アブラナ科植物の抽出物とその用途 株式会社青粒 597161090 野河 信太郎 100065248 吉川 雅之 松田 久司 森川 敏生 永原 靖久 7 C07D307/80 A23L1/30 A61K31/121 A61K31/34 A61K31/343 A61K35/78 A61P7/00 A61P29/00 A61P43/00 JP C07D307/80 A23L1/30 B A61K31/121 A61K31/34 A61K31/343 A61K35/78 C A61P7/00 A61P29/00 A61P43/00 101 A61P43/00 111 5 OL 12 特許法第30条第1項適用申請有り 平成15年3月5日 日本薬学会第123年会組織委員会発行の「日本薬学会第123年会要旨集」に発表 4B018 4C037 4C086 4C088 4C206 4B018MD07 4B018MD61 4B018ME14 4B018MF01 4C037PA07 4C086AA01 4C086AA02 4C086AA03 4C086BA06 4C086CA01 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA52 4C086NA14 4C086ZA31 4C086ZB05 4C086ZB11 4C086ZC20 4C088AB15 4C088AC01 4C088BA10 4C088CA06 4C088NA14 4C088ZA31 4C088ZB05 4C088ZB11 4C088ZC20 4C206AA01 4C206AA02 4C206AA03 4C206CB19 4C206KA01 4C206MA01 4C206MA04 4C206MA13 4C206MA16 4C206MA72 4C206NA14 4C206ZA31 4C206ZB05 4C206ZB11 4C206ZC20 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、アブラナ科植物の抽出物とその用途に関し、より詳細には、アブラナ科植物からの抽出液又は抽出エキスを有効成分とするNO産生抑制用組成物及び該抽出液に含まれる新規化合物に関する。【0002】【従来の技術】アブラナ科 (Cruciferae) 植物のアナスタチカ属アンザンジュ(Anastatica hierochuntica)は、一年生植物で、中央アジアからアフリカ北部の砂漠地帯に分布する。Marian Hand (聖母マリアの手)と通称され、最もよく知られているエジプト民間薬であり、エジプトの各都市のハーブ店などで広く市販されている。その全草は難産、子宮出血などの婦人病の治療に有効であると言われている。アンザンジュのエキスには、抗炎症作用や抗菌作用があることが報告されており、その主成分としては、パラフィン(C25H52, C29H60, C31H64)、ステロール類(主にβ−シトステロール)及びフラボノイドが含有されると報告されている(非特許文献1及び非特許文献2)。しかし、アンザンジュをはじめとするアブラナ科植物に含有される他の成分の詳細については未だ完全に解明されていない。【0003】【非特許文献1】Abou−Mandour A.ら、Plant Cell Report, 14, 657−661(1995)【非特許文献2】Rizk A. M.ら、Int. J. Pharmacog., 31,327−329(1993)【0004】【課題を解決するための手段】本発明の発明者らは、エジプト生薬の機能性成分の探索研究の一環として、アブラナ科植物に含まれる機能性成分について鋭意研究を行った結果、今までに報告されたことがない新規化合物を見出し、その化学構造を決定するとともに、アブラナ科植物の幾つかの抽出物に、無機の遊離ラジカルである一酸化窒素(NO)の産生抑制活性が認められることを新たに見出し、本発明の完成に至った。【0005】したがって、本発明によれば、アブラナ科植物から低級脂肪族アルコール又はその含水物による抽出によって得られる抽出液又は抽出エキスを有効成分として含有することを特徴とするNO産生抑制用組成物が提供される。また、本発明によれば、式1又は式2【化2】で表される新規化合物が提供される。【0006】【発明の実施の形態】本発明のNO産生抑制用組成物は、アブラナ科植物(Cruciferae)から低級脂肪族アルコール又はその含水物を用いて抽出した抽出液又は抽出エキスを有効成分として含有する。アブラナ科植物としては、アナスタチカ属(Anastatica)に属するものが挙げられ、さらに具体的には、アンザンジュ(hierochuntica)及びその同属植物が挙げられる。アブラナ科植物は、一年生植物で、その産地は特に限定されるものではないが、一般に、中央アジアからアフリカ北部の砂漠地帯に分布する。特に、エジプト産のものが好ましい。これらの植物は、通常、全草が用いられるが、その一部を用いてもよい。また、全草又はその一部は乾燥したものであってもよいし、そのままの形態であってもよい。【0007】アブラナ科植物から抽出液を得るために、例えば、全草をそのまま、又は乾燥し、あるいは粉砕して、1〜50倍(重量)程度、好ましくは1〜30倍程度の低級脂肪族アルコール又はその含水物を用いて抽出することが適当である。低級脂肪族アルコールとしては、炭素数1〜4の脂肪族アルコールが挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられる。また、1〜30重量%程度の水を含有する低級脂肪族アルコール含水物であってもよい。抽出は、温浸又は熱浸等で行うことができる。例えば、50〜85℃程度の温度で、振盪下又は非振盪下に、上記の全草を上記の溶媒に浸漬することによって行うことが適当である。振盪下に浸漬する場合には、30分間〜10時間程度行うことが適当であり、非振盪下に浸漬する場合は、1時間〜20日間程度行うことが適当である。なお、上記の温度より低い温度で浸漬することも可能であるが、その場合には、上記時間よりも長時間浸漬することが適当である。抽出処理は、同一原料について1回のみ行ってもよいが、複数回、例えば、2〜5回程度行うことが好ましい。【0008】得られた抽出液は、濃縮して抽出エキスとしてもよい。濃縮は、低温低圧下で行うことが好ましい。この濃縮は乾固するまで行ってもよい。なお、濃縮する前にろ過し、ろ液を濃縮してもよい。また、抽出エキスは、濃縮したままの状態であってもよいし、粉末状又は凍結乾燥品等としてもよい。濃縮する方法、粉末状又は凍結乾燥品とする方法は、当該分野で公知の方法を用いることができる。得られた抽出液は、濃縮する前後に、精製処理に付してもよい。精製処理は、クロマトグラフ法、イオン交換樹脂を使用する溶離法、溶媒による分配抽出等を単独又は組み合わせて採用することができる。例えば、クロマトグラフ法としては、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、遠心液体クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー等のいずれか又はそれらを組み合わせて行う方法が挙げられる。この際の担体、溶出溶媒等の精製条件は、各種クロマトグラフィーに対応して適宜選択することができる。【0009】なかでも、抽出液を濃縮して抽出エキスとしたものを、酢酸エチルと水を用いて分配し、得られた水相をさらにブタノールを用いて分配抽出することが好ましい。分配抽出は、室温下、振盪下又は非振盪下など、当該分野で通常行われる方法にしたがって行うことができ、さらに、得られた各可溶画分を上記の精製処理に付してもよい。【0010】本発明の抽出液又は抽出エキスは、通常、下記に示す化合物をいずれか1つ含有することが好ましく、式1〜3、5〜8及び11のいずれか1つを含有することがより好ましく、さらには式1、5〜8及び11のいずれか1つを含有することが好ましい。【化3】これらの化合物のうち、式1〜4、6及び9は、上記ブタノールで分配抽出して得られるブタノール可溶画分中に、その他の化合物は、酢酸エチルで分配抽出して得られる酢酸エチル可溶画分中に得ることができる。【0011】ここで、式3以降の化合物は既知化合物であるが、式1 (3−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−ヒドロキシメチル−7−メトキシ−2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル]−プロペノール)又は式2 (7−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシメチル−2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−カルバルデヒド)で表される化合物(2,3−ジヒドロベンゾフラン骨格の2位と3位は、それぞれ異なって、あるいはともにR又はSの立体配置を有していてもよい)は新規化合物として見出され、それぞれヒエロチン(hierochin) B及びCと命名された。また、式1の化合物と式5〜8及び11で示される化合物は、単独でNO産生抑制作用を有し、特に式5、7及び8の化合物は、誘導型NO合成酵素(iNOS)の誘導に顕著な阻害作用を有することが初めて見出された。【0012】菌体膜成分であるリポ多糖(LPS)やTNF−αなどの炎症性サイトカイン刺激を受けたマクロファージなどが産生するiNOSによって生成されるNOは、生体防御機構を担っている反面、敗血症におけるショック症状(エンドトキシンショック)や各種臓器障害、炎症性疾患の原因物質の一種であることが知られている。したがって、これらの化合物は、これらの症状の治療又は予防を目的としたNO産生抑制用組成物として用いることができる。上記のような抽出液又は抽出エキス及び化合物は、それぞれそのままの状態又は適当な媒体で希釈して、医薬品等の製造分野において公知の方法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤又は液剤等の種々の医薬品の形態で使用することができる。【0013】これらの形態においては、適当な媒体を添加してもよい。そのような媒体としては、医薬的に受容な賦形剤、例えば結合剤(例えばシロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガント又はポリビニルピロリドン);充填剤(例えば乳糖、砂糖、トウモロコシ澱粉、リン酸カルシウム、ソルビトール又はグリシン);錠剤用滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール又はシリカ);崩壊剤(例えば馬鈴薯澱粉)又は受容な湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)等が挙げられる。錠剤は、通常の方法でコーティングしてもよい。液体製剤は、例えば水性又は油性の懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップ又はエリキシルの形態であってもよく、使用前に水又は他の適切な賦形剤で再生する乾燥製品として提供してもよい。【0014】こうした液体製剤は、通常の添加剤、例えば懸濁化剤(例えばソルビトール、シロップ、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン水添加食用脂);乳化剤(例えばレシチン、ソルビタンモノオレエート又はアラビアゴム);(食用脂を含んでいてもよい)非水性賦形剤(例えばアーモンド油、分画ココヤシ油又はグリセリン、プロピレングリコール又はエチルアルコールのような油性エステル);保存剤(例えばp−ヒドロキシ安息香酸メチル又はプロピル、又はソルビン酸)及び所望により着色剤等を含んでいてもよい。また、上記抽出液又は抽出エキス及びそれらに含まれる個々の化合物は、健康食品に利用することができる。健康食品とは、通常の食品よりも積極的な意味で、保健、健康維持・増進等の目的とした食品を意味し、例えば、液体又は半固形、固形の製品、具体的には、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤又は液剤等のほか、クッキー、せんべい、ゼリー、ようかん、ヨーグルト、まんじゅう等の菓子類、清涼飲料、お茶類、栄養飲料、スープ等の形態が挙げられる。【0015】これらの食品の製造工程において、あるいは最終製品に、上記抽出液等を混合又は塗布、噴霧などして添加して、健康食品とすることができる。上記抽出液又は抽出エキス及び化合物の使用量は、濃縮、精製の程度、疾患の重篤度、服用者の体重、年齢等によって適宜調整することができ、例えば、成人1回につき抽出液又は抽出エキスでは精製度や水分含量等に応じて、1〜20000mg程度が挙げられ、化合物の状態では1〜1,000mg程度が挙げられ、食前30分位に1日3回服用するのが望ましい。また、健康食品としての使用時には、食品の味や外観に悪影響を及ぼさない量、例えば、対象となる食品1kgに対し、上記抽出液又は抽出エキス、あるいは化合物を、10〜100,000mg程度の範囲で用いることが適当である。【0016】【実施例】以下、本発明の抽出物、新規化合物及びそれらの作用についての実施例を具体的に説明する。アンザンジュ全草のメタノール抽出 アンザンジュ全草3.5 kg(エジプト産)を粉砕し、メタノール[ナカライテスク社製、特級](10 L)を加え、加熱還流下3時間抽出した。抽出後、ひだ折りろ紙(アドバンテック社製、No. 2ろ紙)にてろ過し、抽出残査にさらにメタノール(10 L)を加え、3時間加熱還流し、同様にろ過作業を行った。合計3回の抽出を行い、その抽出液をあわせ、ロータリーエバポレーターを用いて、減圧下、溶媒留去し、アンザンジュのメタノール抽出エキス183.5 g(生薬からの収率5.24%)を得た。【0017】アンザンジュメタノール抽出エキスの溶媒分画 アンザンジュのメタノール抽出エキス(151.1 g)を酢酸エチル−水(1:1、v/v)混液に分配抽出した。水層に、さらにブタノールを加えて溶媒抽出し、酢酸エチル移行部、ブタノール移行部及び水移行部から真空下、溶媒留去して、各移行部について69.8g(2.42%)、18.2g(0.63%)及び63.1g(2.19%)のエキスを得た。ブタノール移行部エキスの分離・精製 ブタノール移行部エキスを順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[富士シリシア社製、BW−200、150〜350メッシュ、540g、移動相:n−ヘキサン(ナカライテスク社製、特級):酢酸エチル(2:1−1:1)−クロロホルム(ナカライテスク社製、特級):メタノール:水(10:3:1、下層)−(7:3:1、下層)−(6:4:1)−メタノール]にて順次溶出した。【0018】さらに、得られたフラクションを逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[富士シリシア社製、Chromatrex ODS DM1020T、100〜200メッシュ、100 g、移動相:メタノール:水(20:80−40:60−60:40)−メタノール]及び高速液体クロマトグラフィー(以下HPLC)[検出器:島津示差屈折型検出器RID−6A、ポンプ:島津LC−10A、HPLCカラム:YMC社製YMC Pack−ODS−A、20 mm i.d. × 250mm、移動相:メタノール:水(45:55)]に付した。その結果、新規化合物であるヒエロチンB(1、0.0003%)及びヒエロチンC(2、0.0007%)が、ヒエロチンA(3、0.0005%)、4 (0.0010%)、9 (0.0006%)、(+)−ラリシレシノール(lariciresinol)(0.0024%)、(+)−ピノレシノール(6、0.005%)、ケンフェロール(0.0006%)、ルテオリン(0.0008%)、ルチン(0.0007%)及びβ−シトステロール3−O−β−D−グルコピラノシド(0.0025%)とともに得られた。【0019】酢酸エチル移行部エキスの分離・精製酢酸エチル移行部エキスを、ブタノール移行部エキスと同様に処理したところ、2,3−ジヒドロ−2−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−ヒドロキシメチル−5−(2−ホルミルビニル)−7−ヒドロキシベンゾフラン (5、0.0061%)、(+)−デヒドロジコニフェリルアルコール(7、0.0011%)、(+)−バラノフォニン(8、0.0005%)、10 (0.002%)、3−ヒドロキシ−1−[4−[2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−ヒドロキシメチルエトキシ]−3−メトキシフェニル]−プロパン−1−オン(11、0.0002%)、12 (0.0006%)、13 (0.0029%)、14 (0.0011%)及びエボフォリンB (15、0.0009%)が得られた。ブタノール移行部エキス及び酢酸エチル移行部エキスから得られた化合物の構造を以下に示す(化合物名とともに、又は化合物名に代えて記載する番号は、以下の化学構造式の番号を示す)。【0020】【化4】【0021】新規化合物の物性・ヒエロチンB:無色油状物;[α]D24 +29.7° (c 0.40, MeOH), [α]D26 +40.9° (c 0.30, CHCl3);CD (MeOH) λmax (Δε) 233 (−4.94), 269 (+3.89), 286 (+4.16);UV (MeOH) λmax (log ε) 279 (4.20);IR (フィルム) νmax 3567, 3420, 1653, 1636, 1507, 1264, 1026 cm−1;1H NMR (アセトン−d6, 500 MHz) δ3.53 (1H, m, H−8), 3.79, 3.80, 3.87 (それぞれ3H, 全てs, OCH3−3, 4, 及び 3’), 3.83 (2H, m, H2−9), 4.18 (2H, dd, J=1.2, 5.8 Hz, H2−9’), 5.60 (1H, d, J=6.4 Hz, H−7), 6.24 (1H, dt, J=15.9, 5.8 Hz, H−8’), 6.53 (1H, dt, J=15.9, 1.2 Hz, H−7’), 6.92 (1H, d, J=8.3 Hz, H−5), 6.95, 6.98 (それぞれ1H, いずれもd, J=1.8 Hz, H−2’ 及び6’), 6.96 (1H, dd, J=1.9, 8.3 Hz, H−6), 7.04 (1H, d, J=1.9 Hz, H−2);1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ3.86, 3.87, 3.91 (それぞれ3H, 全てs, OCH3−3, 4, 及び3’), 3.64 (1H, m, H−8), [3.93 (1H, dd, J = 4.9, 11.0 Hz), 3.99 (dd, J = 6.1, 11.0 Hz), H2−9], 4.31 (2H, dd, J = 1.5, 5.8 Hz, H2−9’), 5.60 (1H, d, J=6.4 Hz, H−7), 6.25 (1H, dt, J = 15.9, 5.8 Hz, H−8’), 6.56 (1H, dt, J = 15.9, 1.5 Hz, H−7’), 6.83 (1H, d, J = 8.5 Hz, H−5), 6.89, 6.90 (それぞれ1H, いずれもd, J = 1.8 Hz, H−2’ 及び6’), 6.93 (1H, d, J = 2.2 Hz, H−2), 6.95 (1H, dd, J = 2.2, 8.5 Hz, H−6);13C NMR データ、表1参照;EIMS m/z 372 [M+, 47], 354 [M+−H2O, 100]; HREIMS m/z 372.1606 (C21H24O6 [M+]について算出, 372.1573)。【0022】・ヒエロチンC:淡黄色油状物;[α]D27 −60.1° (c 1.00, MeOH);CD (MeOH) λmax (Δε) 233 (+5.17), 246 (−4.63), 295 (−4.02);UV (MeOH) λmax (log ε) 235 (4.28), 289 (4.10);IR (フィルム) νmax 3652, 3569, 1684, 1670, 1655, 1509, 1277, 1032 cm−1;1H NMR (CDl3OD, 500 MHz) δ3.58 (1H, m, H−8), 3.82 (3H, s, OCH3−3), 3.85 (2H, m, H2−9), 5.65 (1H, d, J=6.4 Hz, H−7), 6.78 (1H, d, J=8.3 Hz, H−5), 6.85 (1H, dd, J=2.1, 8.3 Hz, H−6), 6.97 (1H, d, J=2.1 Hz, H−2), 7.28, 7.39 (それぞれ1H, いずれもd, J=1.6 Hz, H−2’ 及び6’), 9.72 (1H, s, H−7’);13C NMR データ、表1参照;EIMS m/z 316 [M+, 41], 286 [100]; HREIMS m/z 316.0945 (C17H16O6 [M+]について算出, 316.0947)。【0023】【表1】【0024】リポ多糖活性化マクロファージにおけるNO産生に対する作用 Taoらの方法(Chem.Pharm.Bull., 51(6), 654−662 (2003)参照)に準じ、マウスのリポ多糖(LPS)−活性化マクロファージにおけるNO産生に対する各化合物の作用を検討した。あらかじめ4日前に4%チオグリコレート(TGC)培地を腹腔内注射したddY系雄性マウスの腹腔から腹腔滲出細胞を回収し、氷冷PBSで洗浄して、5%ウシ胎仔血清(FCS)、ペニシリン(100単位/ml)及びストレプトマイシン(100μg/ml)を加えたRPMI 1640培地に細胞を懸濁し、96−ウェルのマイクロプレートに1ウェル当り5×105細胞/200μlずつ播種した。5%CO2の空気存在下で37℃で1時間培養後、PBSで洗浄して非付着細胞を除き、付着細胞(ギムザ染色によれば95%以上がマクロファージ)を、10μg/ml LPSと試験化合物(1〜100μM)を含む新鮮な培地(200μl/ウェル)で20時間培養した。【0025】各ウェルにおけるNO産生量は、培養液中に蓄積した亜硝酸塩の濃度をグリース試薬を用いて測定することにより評価した。細胞毒性は、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロミド(MTT)比色アッセイ法によって測定した。すなわち、試験化合物と20時間インキュベーションした後、MTT(PBS中5mg/ml)溶液を各ウェルに10μlずつ加え、4時間培養後、培地を除き、0.04M HClを含むイソプロパノールを加えて細胞中に生じたホルマザンを溶解した。ホルマザン溶液の570nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーを用いて測定した。NG−モノメチル−L−アルギニン(L−NMMA)を比較対照薬として用いた。各被験物質はジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、溶液を培地に加えた(最終DMSO濃度0.5%)。阻害(%)は、以下の式より算出し、濃度−阻害曲線からIC50を求めた:阻害(%)=((A−B)/(A−C))×100[A:LPS(+)、化合物(−)のNO2−濃度(μM);B:LPS(+)、化合物(−)のNO2−濃度(μM);C:LPS(−)、化合物(−) のNO2−濃度(μM)]【0026】【表2】【0027】この結果、本発明により得られた植物の抽出化合物の幾つかは、細胞毒性を示さない濃度でLPS−活性化マクロファージからのNO産生阻害活性を有することが示された。5、7及び8の化合物の阻害活性は、非選択的NOS阻害剤であるL−NMMAよりも強かった。【0028】NOS誘導に対する化合物の作用マクロファージにおけるiNOS誘導の試験化合物の作用を、Taoらの方法を一部改変して評価した。雄性ddYマウス由来のTGC誘導性腹腔滲出細胞(7.5×106細胞/3mL/ウェル)を1時間6−ウェルのプレートで培養し、付着細胞を得た。洗浄後、培養培地を5%FCS、10μg/ml LPSと試験化合物を含む新鮮な培地に交換し、20時間培養した。溶解緩衝液(100mM NaCl、10mM Tris、プロテアーゼインヒビターカクテル(1tab/50mL)、0.1%Triton X−100、2mM エチレングリコールビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−テトラ酢酸(EGTA)、pH7.4)を用いて細胞を回収し、超音波処理した。【0029】BCA(登録商標)タンパク質アッセイキット(Pierce社製)を用いるBCA法により各懸濁液のタンパク質濃度を測定後、懸濁液にラエミリ緩衝液を加えて沸騰水浴中で5分間加熱した。SDS−PAGE用に、各試料からタンパク質40μg相当を7.5%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動に付した。電気泳動後、タンパク質をニトロセルロース膜に電気的に転写した。5%脱脂粉乳を含むTris−緩衝液(T−TBS、100mM NaCl、10mM Tris、0.1% Tween 20、pH 7.4)中で膜をインキュベートした後、T−TBSで洗浄し、iNOSに対するマウス由来モノクローナルIgG抗体(1000倍希釈)で処理した。次いで、膜をT−TBSで洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼが結合した抗マウスIgG抗体である二次抗体(5000倍希釈)で処理した。T−TBSで洗浄した後、ECL試薬(Amersham製)とX−線フィルムを用いて検出し、図1に示す結果を得た。【0030】LPSとの20時間のインキュベート後、iNOSが130kDaで検出され、5、7及び8の化合物が、NO産生とiNOSの誘導に阻害作用を示すことが認められた。これらの結果から、LPS−活性化マクロファージのiNOS誘導は、NOの産生阻害にも関わる化合物によって抑制されることが示され、化合物が、LPS−活性化マクロファージにおけるiNOS誘導に対する阻害活性に起因して、NO産生を阻害することが示唆された。【0031】【発明の効果】本発明によれば、植物由来の天然抽出物を、従来品と同等又はそれより高いNO産生阻害活性を有するNO産生抑制組成物として使用することができる。また、新規な化合物が提供される。【図面の簡単な説明】【図1】LPS−活性化マウスマクロファージにおけるiNOS誘導に対する抽出化合物の作用の結果を示す。 アブラナ科植物から低級脂肪族アルコール又はその含水物による抽出によって得られる抽出液又は抽出エキスを有効成分として含有することを特徴とするNO産生抑制用組成物。 前記抽出液又は抽出エキスが、ヒエロチンB、2,3−ジヒドロ−2−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−ヒドロキシメチル−5−(2−ホルミルビニル)−7−ヒドロキシベンゾフラン、(+)−デヒドロジコニフェリルアルコール、(+)−バラノフォニン、3−ヒドロキシ−1−[4−[2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−ヒドロキシメチルエトキシ]−3−メトキシフェニル]−プロパン−1−オン及び(+)−ピノレシノールからなる群から選択される1以上の化合物を含有する請求項1に記載のNO産生抑制用組成物。 アブラナ科植物がアナスタチカ属のアンザンジュである請求項1又は2に記載のNO産生抑制用組成物。 式1又は式2で表される化合物。 請求項1〜3のいずれかに記載の組成物を含有する健康食品。 【課題】アンザンジュをはじめとするアブラナ科植物に含有される成分の詳細について解明することを目的とする。【解決手段】アブラナ科植物から低級脂肪族アルコール又はその含水物による抽出によって得られる抽出液又は抽出エキスを有効成分として含有することを特徴とするNO産生抑制用組成物、さらには、アブラナ科植物から得られた新規化合物が提供される。【選択図】 なし


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特許公報(B2)_アブラナ科植物の抽出物とその用途

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_アブラナ科植物の抽出物とその用途
出願番号:2003167787
年次:2010
IPC分類:A61K 36/18,A61K 31/121,A61K 31/34,A61K 31/343,A61P 7/00,A61P 29/00,A61P 43/00,C07D 307/80,C07D 493/04,C07C 49/84


特許情報キャッシュ

吉川 雅之 松田 久司 森川 敏生 永原 靖久 JP 4554895 特許公報(B2) 20100723 2003167787 20030612 アブラナ科植物の抽出物とその用途 株式会社青粒 597161090 野河 信太郎 100065248 吉川 雅之 松田 久司 森川 敏生 永原 靖久 20100929 A61K 36/18 20060101AFI20100909BHJP A61K 31/121 20060101ALI20100909BHJP A61K 31/34 20060101ALI20100909BHJP A61K 31/343 20060101ALI20100909BHJP A61P 7/00 20060101ALI20100909BHJP A61P 29/00 20060101ALI20100909BHJP A61P 43/00 20060101ALI20100909BHJP C07D 307/80 20060101ALN20100909BHJP C07D 493/04 20060101ALN20100909BHJP C07C 49/84 20060101ALN20100909BHJP JPA61K35/78 CA61K31/121A61K31/34A61K31/343A61P7/00A61P29/00A61P43/00 101A61P43/00 111C07D307/80C07D493/04 101CC07C49/84 E A61K 35/78-35/84 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特許第4203282(JP,B2) 特開平08−325130(JP,A) 特表2003−518033(JP,A) 特開2003−081848(JP,A) 特開2004−359732(JP,A) 特開2004−043381(JP,A) Mabel S. M. Yuen, et al.,Tetrahedron ,1998年,54(41),12429-12444頁 2 2005002052 20050106 10 20051202 特許法第30条第1項適用 日本薬学会第123年会(平成15年3月28日)で発表、日本薬学会年会Webページ(平成15年2月1日公開)で発表、日本薬学会第123年会講演要旨集2(平成15年3月5日発行)に発表 鈴木 智雄 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、アブラナ科植物の抽出物とその用途に関し、より詳細には、アブラナ科植物からの抽出液又は抽出エキスを有効成分とするNO産生抑制用組成物及び該抽出液に含まれる新規化合物に関する。【0002】【従来の技術】アブラナ科 (Cruciferae) 植物のアナスタチカ属アンザンジュ(Anastatica hierochuntica)は、一年生植物で、中央アジアからアフリカ北部の砂漠地帯に分布する。Marian Hand (聖母マリアの手)と通称され、最もよく知られているエジプト民間薬であり、エジプトの各都市のハーブ店などで広く市販されている。その全草は難産、子宮出血などの婦人病の治療に有効であると言われている。アンザンジュのエキスには、抗炎症作用や抗菌作用があることが報告されており、その主成分としては、パラフィン(C25H52, C29H60, C31H64)、ステロール類(主にβ−シトステロール)及びフラボノイドが含有されると報告されている(非特許文献1及び非特許文献2)。しかし、アンザンジュをはじめとするアブラナ科植物に含有される他の成分の詳細については未だ完全に解明されていない。【0003】【非特許文献1】Abou-Mandour A.ら、Plant Cell Report, 14, 657-661(1995)【非特許文献2】Rizk A. M.ら、Int. J. Pharmacog., 31,327-329(1993)【0004】【課題を解決するための手段】本発明の発明者らは、エジプト生薬の機能性成分の探索研究の一環として、アブラナ科植物に含まれる機能性成分について鋭意研究を行った結果、今までに報告されたことがない新規化合物を見出し、その化学構造を決定するとともに、アブラナ科植物の幾つかの抽出物に、無機の遊離ラジカルである一酸化窒素(NO)の産生抑制活性が認められることを新たに見出し、本発明の完成に至った。【0005】したがって、本発明によれば、アブラナ科植物から低級脂肪族アルコール又はその含水物による抽出によって得られる抽出液又は抽出エキスを有効成分として含有することを特徴とするNO産生抑制用組成物が提供される。また、本発明によれば、式1又は式2【化2】で表される新規化合物が提供される。【0006】【発明の実施の形態】本発明のNO産生抑制用組成物は、アブラナ科植物(Cruciferae)から低級脂肪族アルコール又はその含水物を用いて抽出した抽出液又は抽出エキスを有効成分として含有する。アブラナ科植物としては、アナスタチカ属(Anastatica)に属するものが挙げられ、さらに具体的には、アンザンジュ(hierochuntica)及びその同属植物が挙げられる。アブラナ科植物は、一年生植物で、その産地は特に限定されるものではないが、一般に、中央アジアからアフリカ北部の砂漠地帯に分布する。特に、エジプト産のものが好ましい。これらの植物は、通常、全草が用いられるが、その一部を用いてもよい。また、全草又はその一部は乾燥したものであってもよいし、そのままの形態であってもよい。【0007】アブラナ科植物から抽出液を得るために、例えば、全草をそのまま、又は乾燥し、あるいは粉砕して、1〜50倍(重量)程度、好ましくは1〜30倍程度の低級脂肪族アルコール又はその含水物を用いて抽出することが適当である。低級脂肪族アルコールとしては、炭素数1〜4の脂肪族アルコールが挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール等が挙げられる。また、1〜30重量%程度の水を含有する低級脂肪族アルコール含水物であってもよい。抽出は、温浸又は熱浸等で行うことができる。例えば、50〜85℃程度の温度で、振盪下又は非振盪下に、上記の全草を上記の溶媒に浸漬することによって行うことが適当である。振盪下に浸漬する場合には、30分間〜10時間程度行うことが適当であり、非振盪下に浸漬する場合は、1時間〜20日間程度行うことが適当である。なお、上記の温度より低い温度で浸漬することも可能であるが、その場合には、上記時間よりも長時間浸漬することが適当である。抽出処理は、同一原料について1回のみ行ってもよいが、複数回、例えば、2〜5回程度行うことが好ましい。【0008】得られた抽出液は、濃縮して抽出エキスとしてもよい。濃縮は、低温低圧下で行うことが好ましい。この濃縮は乾固するまで行ってもよい。なお、濃縮する前にろ過し、ろ液を濃縮してもよい。また、抽出エキスは、濃縮したままの状態であってもよいし、粉末状又は凍結乾燥品等としてもよい。濃縮する方法、粉末状又は凍結乾燥品とする方法は、当該分野で公知の方法を用いることができる。得られた抽出液は、濃縮する前後に、精製処理に付してもよい。精製処理は、クロマトグラフ法、イオン交換樹脂を使用する溶離法、溶媒による分配抽出等を単独又は組み合わせて採用することができる。例えば、クロマトグラフ法としては、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、遠心液体クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー等のいずれか又はそれらを組み合わせて行う方法が挙げられる。この際の担体、溶出溶媒等の精製条件は、各種クロマトグラフィーに対応して適宜選択することができる。【0009】なかでも、抽出液を濃縮して抽出エキスとしたものを、酢酸エチルと水を用いて分配し、得られた水相をさらにブタノールを用いて分配抽出することが好ましい。分配抽出は、室温下、振盪下又は非振盪下など、当該分野で通常行われる方法にしたがって行うことができ、さらに、得られた各可溶画分を上記の精製処理に付してもよい。【0010】本発明の抽出液又は抽出エキスは、通常、下記に示す化合物をいずれか1つ含有することが好ましく、式1〜3、5〜8及び11のいずれか1つを含有することがより好ましく、さらには式1、5〜8及び11のいずれか1つを含有することが好ましい。【化3】これらの化合物のうち、式1〜4、6及び9は、上記ブタノールで分配抽出して得られるブタノール可溶画分中に、その他の化合物は、酢酸エチルで分配抽出して得られる酢酸エチル可溶画分中に得ることができる。【0011】ここで、式3以降の化合物は既知化合物であるが、式1 (3-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-ヒドロキシメチル-7-メトキシ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-イル]-プロペノール)又は式2 (7-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-3-ヒドロキシメチル-2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-カルバルデヒド)で表される化合物(2,3-ジヒドロベンゾフラン骨格の2位と3位は、それぞれ異なって、あるいはともにR又はSの立体配置を有していてもよい)は新規化合物として見出され、それぞれヒエロチン(hierochin) B及びCと命名された。また、式1の化合物と式5〜8及び11で示される化合物は、単独でNO産生抑制作用を有し、特に式5、7及び8の化合物は、誘導型NO合成酵素(iNOS)の誘導に顕著な阻害作用を有することが初めて見出された。【0012】菌体膜成分であるリポ多糖(LPS)やTNF-αなどの炎症性サイトカイン刺激を受けたマクロファージなどが産生するiNOSによって生成されるNOは、生体防御機構を担っている反面、敗血症におけるショック症状(エンドトキシンショック)や各種臓器障害、炎症性疾患の原因物質の一種であることが知られている。したがって、これらの化合物は、これらの症状の治療又は予防を目的としたNO産生抑制用組成物として用いることができる。上記のような抽出液又は抽出エキス及び化合物は、それぞれそのままの状態又は適当な媒体で希釈して、医薬品等の製造分野において公知の方法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤又は液剤等の種々の医薬品の形態で使用することができる。【0013】これらの形態においては、適当な媒体を添加してもよい。そのような媒体としては、医薬的に受容な賦形剤、例えば結合剤(例えばシロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガント又はポリビニルピロリドン);充填剤(例えば乳糖、砂糖、トウモロコシ澱粉、リン酸カルシウム、ソルビトール又はグリシン);錠剤用滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール又はシリカ);崩壊剤(例えば馬鈴薯澱粉)又は受容な湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)等が挙げられる。錠剤は、通常の方法でコーティングしてもよい。液体製剤は、例えば水性又は油性の懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップ又はエリキシルの形態であってもよく、使用前に水又は他の適切な賦形剤で再生する乾燥製品として提供してもよい。【0014】こうした液体製剤は、通常の添加剤、例えば懸濁化剤(例えばソルビトール、シロップ、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン水添加食用脂);乳化剤(例えばレシチン、ソルビタンモノオレエート又はアラビアゴム);(食用脂を含んでいてもよい)非水性賦形剤(例えばアーモンド油、分画ココヤシ油又はグリセリン、プロピレングリコール又はエチルアルコールのような油性エステル);保存剤(例えばp−ヒドロキシ安息香酸メチル又はプロピル、又はソルビン酸)及び所望により着色剤等を含んでいてもよい。また、上記抽出液又は抽出エキス及びそれらに含まれる個々の化合物は、健康食品に利用することができる。健康食品とは、通常の食品よりも積極的な意味で、保健、健康維持・増進等の目的とした食品を意味し、例えば、液体又は半固形、固形の製品、具体的には、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤又は液剤等のほか、クッキー、せんべい、ゼリー、ようかん、ヨーグルト、まんじゅう等の菓子類、清涼飲料、お茶類、栄養飲料、スープ等の形態が挙げられる。【0015】これらの食品の製造工程において、あるいは最終製品に、上記抽出液等を混合又は塗布、噴霧などして添加して、健康食品とすることができる。上記抽出液又は抽出エキス及び化合物の使用量は、濃縮、精製の程度、疾患の重篤度、服用者の体重、年齢等によって適宜調整することができ、例えば、成人1回につき抽出液又は抽出エキスでは精製度や水分含量等に応じて、1〜20000mg程度が挙げられ、化合物の状態では1〜1,000mg程度が挙げられ、食前30分位に1日3回服用するのが望ましい。また、健康食品としての使用時には、食品の味や外観に悪影響を及ぼさない量、例えば、対象となる食品1kgに対し、上記抽出液又は抽出エキス、あるいは化合物を、10〜100,000mg程度の範囲で用いることが適当である。【0016】【実施例】以下、本発明の抽出物、新規化合物及びそれらの作用についての実施例を具体的に説明する。アンザンジュ全草のメタノール抽出 アンザンジュ全草3.5 kg(エジプト産)を粉砕し、メタノール[ナカライテスク社製、特級](10 L)を加え、加熱還流下3時間抽出した。抽出後、ひだ折りろ紙(アドバンテック社製、No. 2ろ紙)にてろ過し、抽出残査にさらにメタノール(10 L)を加え、3時間加熱還流し、同様にろ過作業を行った。合計3回の抽出を行い、その抽出液をあわせ、ロータリーエバポレーターを用いて、減圧下、溶媒留去し、アンザンジュのメタノール抽出エキス183.5 g(生薬からの収率5.24%)を得た。【0017】アンザンジュメタノール抽出エキスの溶媒分画 アンザンジュのメタノール抽出エキス(151.1 g)を酢酸エチル-水(1:1、v/v)混液に分配抽出した。水層に、さらにブタノールを加えて溶媒抽出し、酢酸エチル移行部、ブタノール移行部及び水移行部から真空下、溶媒留去して、各移行部について69.8g(2.42%)、18.2g(0.63%)及び63.1g(2.19%)のエキスを得た。ブタノール移行部エキスの分離・精製 ブタノール移行部エキスを順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[富士シリシア社製、BW-200、150〜350メッシュ、540g、移動相:n-ヘキサン(ナカライテスク社製、特級):酢酸エチル(2:1−1:1)−クロロホルム(ナカライテスク社製、特級):メタノール:水(10:3:1、下層)−(7:3:1、下層)−(6:4:1)−メタノール]にて順次溶出した。【0018】さらに、得られたフラクションを逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[富士シリシア社製、Chromatrex ODS DM1020T、100〜200メッシュ、100 g、移動相:メタノール:水(20:80−40:60−60:40)−メタノール]及び高速液体クロマトグラフィー(以下HPLC)[検出器:島津示差屈折型検出器RID-6A、ポンプ:島津LC-10A、HPLCカラム:YMC社製YMC Pack-ODS-A、20 mm i.d. × 250mm、移動相:メタノール:水(45:55)]に付した。その結果、新規化合物であるヒエロチンB(1、0.0003%)及びヒエロチンC(2、0.0007%)が、ヒエロチンA(3、0.0005%)、4 (0.0010%)、9 (0.0006%)、(+)-ラリシレシノール(lariciresinol)(0.0024%)、(+)-ピノレシノール(6、0.005%)、ケンフェロール(0.0006%)、ルテオリン(0.0008%)、ルチン(0.0007%)及びβ-シトステロール3-O-β-D-グルコピラノシド(0.0025%)とともに得られた。【0019】酢酸エチル移行部エキスの分離・精製酢酸エチル移行部エキスを、ブタノール移行部エキスと同様に処理したところ、2,3-ジヒドロ-2-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-ヒドロキシメチル-5-(2-ホルミルビニル)-7-ヒドロキシベンゾフラン (5、0.0061%)、(+)-デヒドロジコニフェリルアルコール(7、0.0011%)、(+)-バラノフォニン(8、0.0005%)、10 (0.002%)、3-ヒドロキシ-1-[4-[2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-ヒドロキシメチルエトキシ]-3-メトキシフェニル]-プロパン-1-オン(11、0.0002%)、12 (0.0006%)、13 (0.0029%)、14 (0.0011%)及びエボフォリンB (15、0.0009%)が得られた。ブタノール移行部エキス及び酢酸エチル移行部エキスから得られた化合物の構造を以下に示す(化合物名とともに、又は化合物名に代えて記載する番号は、以下の化学構造式の番号を示す)。【0020】【化4】【0021】新規化合物の物性・ヒエロチンB:無色油状物;[α]D24 +29.7° (c 0.40, MeOH), [α]D26 +40.9° (c 0.30, CHCl3);CD (MeOH) λmax (Δε) 233 (-4.94), 269 (+3.89), 286 (+4.16);UV (MeOH) λmax (log ε) 279 (4.20);IR (フィルム) νmax 3567, 3420, 1653, 1636, 1507, 1264, 1026 cm-1;1H NMR (アセトン-d6, 500 MHz) δ3.53 (1H, m, H-8), 3.79, 3.80, 3.87 (それぞれ3H, 全てs, OCH3-3, 4, 及び 3'), 3.83 (2H, m, H2-9), 4.18 (2H, dd, J=1.2, 5.8 Hz, H2-9'), 5.60 (1H, d, J=6.4 Hz, H-7), 6.24 (1H, dt, J=15.9, 5.8 Hz, H-8'), 6.53 (1H, dt, J=15.9, 1.2 Hz, H-7'), 6.92 (1H, d, J=8.3 Hz, H-5), 6.95, 6.98 (それぞれ1H, いずれもd, J=1.8 Hz, H-2' 及び6'), 6.96 (1H, dd, J=1.9, 8.3 Hz, H-6), 7.04 (1H, d, J=1.9 Hz, H-2);1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ3.86, 3.87, 3.91 (それぞれ3H, 全てs, OCH3-3, 4, 及び3'), 3.64 (1H, m, H-8), [3.93 (1H, dd, J = 4.9, 11.0 Hz), 3.99 (dd, J = 6.1, 11.0 Hz), H2-9], 4.31 (2H, dd, J = 1.5, 5.8 Hz, H2-9'), 5.60 (1H, d, J=6.4 Hz, H-7), 6.25 (1H, dt, J = 15.9, 5.8 Hz, H-8'), 6.56 (1H, dt, J = 15.9, 1.5 Hz, H-7'), 6.83 (1H, d, J = 8.5 Hz, H-5), 6.89, 6.90 (それぞれ1H, いずれもd, J = 1.8 Hz, H-2' 及び6'), 6.93 (1H, d, J = 2.2 Hz, H-2), 6.95 (1H, dd, J = 2.2, 8.5 Hz, H-6);13C NMR データ、表1参照;EIMS m/z 372 [M+, 47], 354 [M+-H2O, 100]; HREIMS m/z 372.1606 (C21H24O6 [M+]について算出, 372.1573)。【0022】・ヒエロチンC:淡黄色油状物;[α]D27 -60.1° (c 1.00, MeOH);CD (MeOH) λmax (Δε) 233 (+5.17), 246 (-4.63), 295 (-4.02);UV (MeOH) λmax (log ε) 235 (4.28), 289 (4.10);IR (フィルム) νmax 3652, 3569, 1684, 1670, 1655, 1509, 1277, 1032 cm-1;1H NMR (CDl3OD, 500 MHz) δ3.58 (1H, m, H-8), 3.82 (3H, s, OCH3-3), 3.85 (2H, m, H2-9), 5.65 (1H, d, J=6.4 Hz, H-7), 6.78 (1H, d, J=8.3 Hz, H-5), 6.85 (1H, dd, J=2.1, 8.3 Hz, H-6), 6.97 (1H, d, J=2.1 Hz, H-2), 7.28, 7.39 (それぞれ1H, いずれもd, J=1.6 Hz, H-2' 及び6'), 9.72 (1H, s, H-7');13C NMR データ、表1参照;EIMS m/z 316 [M+, 41], 286 [100]; HREIMS m/z 316.0945 (C17H16O6 [M+]について算出, 316.0947)。【0023】【表1】【0024】リポ多糖活性化マクロファージにおけるNO産生に対する作用 Taoらの方法(Chem.Pharm.Bull., 51(6), 654-662 (2003)参照)に準じ、マウスのリポ多糖(LPS)-活性化マクロファージにおけるNO産生に対する各化合物の作用を検討した。あらかじめ4日前に4%チオグリコレート(TGC)培地を腹腔内注射したddY系雄性マウスの腹腔から腹腔滲出細胞を回収し、氷冷PBSで洗浄して、5%ウシ胎仔血清(FCS)、ペニシリン(100単位/ml)及びストレプトマイシン(100μg/ml)を加えたRPMI 1640培地に細胞を懸濁し、96-ウェルのマイクロプレートに1ウェル当り5×105細胞/200μlずつ播種した。5%CO2の空気存在下で37℃で1時間培養後、PBSで洗浄して非付着細胞を除き、付着細胞(ギムザ染色によれば95%以上がマクロファージ)を、10μg/ml LPSと試験化合物(1〜100μM)を含む新鮮な培地(200μl/ウェル)で20時間培養した。【0025】各ウェルにおけるNO産生量は、培養液中に蓄積した亜硝酸塩の濃度をグリース試薬を用いて測定することにより評価した。細胞毒性は、3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロミド(MTT)比色アッセイ法によって測定した。すなわち、試験化合物と20時間インキュベーションした後、MTT(PBS中5mg/ml)溶液を各ウェルに10μlずつ加え、4時間培養後、培地を除き、0.04M HClを含むイソプロパノールを加えて細胞中に生じたホルマザンを溶解した。ホルマザン溶液の570nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーを用いて測定した。NG-モノメチル-L-アルギニン(L-NMMA)を比較対照薬として用いた。各被験物質はジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、溶液を培地に加えた(最終DMSO濃度0.5%)。阻害(%)は、以下の式より算出し、濃度-阻害曲線からIC50を求めた:阻害(%)=((A−B)/(A−C))×100[A:LPS(+)、化合物(−)のNO2-濃度(μM);B:LPS(+)、化合物(−)のNO2-濃度(μM);C:LPS(−)、化合物(−) のNO2-濃度(μM)]【0026】【表2】【0027】この結果、本発明により得られた植物の抽出化合物の幾つかは、細胞毒性を示さない濃度でLPS-活性化マクロファージからのNO産生阻害活性を有することが示された。5、7及び8の化合物の阻害活性は、非選択的NOS阻害剤であるL-NMMAよりも強かった。【0028】NOS誘導に対する化合物の作用マクロファージにおけるiNOS誘導の試験化合物の作用を、Taoらの方法を一部改変して評価した。雄性ddYマウス由来のTGC誘導性腹腔滲出細胞(7.5×106細胞/3mL/ウェル)を1時間6-ウェルのプレートで培養し、付着細胞を得た。洗浄後、培養培地を5%FCS、10μg/ml LPSと試験化合物を含む新鮮な培地に交換し、20時間培養した。溶解緩衝液(100mM NaCl、10mM Tris、プロテアーゼインヒビターカクテル(1tab/50mL)、0.1%Triton X-100、2mM エチレングリコールビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-テトラ酢酸(EGTA)、pH7.4)を用いて細胞を回収し、超音波処理した。【0029】BCA(登録商標)タンパク質アッセイキット(Pierce社製)を用いるBCA法により各懸濁液のタンパク質濃度を測定後、懸濁液にラエミリ緩衝液を加えて沸騰水浴中で5分間加熱した。SDS-PAGE用に、各試料からタンパク質40μg相当を7.5%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動に付した。電気泳動後、タンパク質をニトロセルロース膜に電気的に転写した。5%脱脂粉乳を含むTris-緩衝液(T-TBS、100mM NaCl、10mM Tris、0.1% Tween 20、pH 7.4)中で膜をインキュベートした後、T-TBSで洗浄し、iNOSに対するマウス由来モノクローナルIgG抗体(1000倍希釈)で処理した。次いで、膜をT-TBSで洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼが結合した抗マウスIgG抗体である二次抗体(5000倍希釈)で処理した。T-TBSで洗浄した後、ECL試薬(Amersham製)とX-線フィルムを用いて検出し、図1に示す結果を得た。【0030】LPSとの20時間のインキュベート後、iNOSが130kDaで検出され、5、7及び8の化合物が、NO産生とiNOSの誘導に阻害作用を示すことが認められた。これらの結果から、LPS-活性化マクロファージのiNOS誘導は、NOの産生阻害にも関わる化合物によって抑制されることが示され、化合物が、LPS-活性化マクロファージにおけるiNOS誘導に対する阻害活性に起因して、NO産生を阻害することが示唆された。【0031】【発明の効果】本発明によれば、植物由来の天然抽出物を、従来品と同等又はそれより高いNO産生阻害活性を有するNO産生抑制組成物として使用することができる。また、新規な化合物が提供される。【図面の簡単な説明】【図1】 LPS-活性化マウスマクロファージにおけるiNOS誘導に対する抽出化合物の作用の結果を示す。 アブラナ科アナスタチカ属のアンザンジュから低級脂肪族アルコール又はその含水物による抽出によって得られる抽出液又は抽出エキスを有効成分として含有することを特徴とするNO産生抑制用組成物(ただし、肝疾患の予防又は治療剤を除く)。 前記抽出液又は抽出エキスが、ヒエロチンB、2,3-ジヒドロ-2-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-ヒドロキシメチル-5-(2-ホルミルビニル)-7-ヒドロキシベンゾフラン、(+)-デヒドロジコニフェリルアルコール、(+)-バラノフォニン、3-ヒドロキシ-1-[4-[2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-ヒドロキシメチルエトキシ]-3-メトキシフェニル]-プロパン-1-オン及び(+)-ピノレシノールからなる群から選択される1以上の化合物を含有する請求項1に記載のNO産生抑制用組成物。


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