生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_魚卵外皮の酵素分解によるアミノ酸成分の製法
出願番号:2003163724
年次:2004
IPC分類:7,C12P21/06,A23L1/30


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小▲高▼ 邦彦 JP 2004073186 公開特許公報(A) 20040311 2003163724 20030609 魚卵外皮の酵素分解によるアミノ酸成分の製法 有限会社フジ・バイオ研究所 396006697 川上 宣男 100098844 小▲高▼ 邦彦 JP 2002180591 20020620 7 C12P21/06 A23L1/30 JP C12P21/06 A23L1/30 Z 2 OL 7 4B018 4B064 4B018LB10 4B018LE03 4B018MD22 4B018ME02 4B018ME04 4B018MF10 4B018MF12 4B064AG01 4B064CA21 4B064CB05 4B064DA10 【0001】【発明が属する技術分野】本発明は、鱈、ニシン、鮭、カツオ等の腹子外皮である魚卵外皮から、生理活性物質あるいは食品の栄養強化剤等として有用なアミノ酸成分を製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】水産加工に伴い発生する廃棄される魚体の魚肉、魚皮、魚骨等は、魚粉、魚油、畜産用飼料、農業用肥料等に加工し利用されているが、魚卵の加工並びに水産加工により発生する魚卵外皮については、ほとんどが産業廃棄物として処分されている。ところで、魚介類の利用法としては、魚介類を高温処理して魚介類に含まれている自己分解酵素を不活化した後、枯草菌産生蛋白分解酵素及び麹菌産生蛋白分解酵素により成分中の蛋白をペプタイドアミノ酸及び遊離アミノ酸に分解して、得られた魚介類エキスが抗潰瘍作用、インシュリン樣作用、高脂血症治癒作用等の医薬効果を有するとされている(例えば、特許文献1参照)。【0003】また、魚皮、魚骨、魚鱗等の利用法としては、魚皮、魚骨をプロテアーゼ処理等により得られたゼラチンを食品素材として利用する方法(例えば、特許文献2参照)、あるいは、魚鱗(例えば、特許文献3参照)、魚皮(例えば、特許文献4参照)から抽出したコラーゲンを医療用生体材料あるいは化粧品材料などとして利用する方法等が考えられている。【0004】一方、最近明太子の卵巣膜を乾燥した、食事のおかず、お酒のつまみ等に向けられた、唐辛子味の乾燥食品が提案されているが(例えば、特許文献5参照)、ほとんどが繊維蛋白から構成されている卵巣膜の性状からその乾燥食品としての商品価値には疑問がある。また、本発明者は、先に大量に発生する明太子の漬け汁の有効利用を目的に、漬け汁を酵素分解処理することによって、明太子風味の食品調味料を提案した(例えば、特許文献6参照)。この調味料には、漬け汁中に残存している明太子の卵及びその外皮中の蛋白が分解した低分子のペプチド及びアミノ酸成分を含み、さらに味付けのために添加した各種の主に天然調味料が含まれており、明太子風味の調味料として期待されている。しかし、各種の魚卵の利用によって発生する魚卵外皮自体の利用については、外皮がほとんど筋原線維蛋白質である収縮蛋白質(ミオシン)から構成されていながらその有効利用についての提案はなされていない(表1:魚卵外皮精製物成分表参照)。【0005】【表1】【0006】【特許文献1】特公平1−14885号公報【特許文献2】特開平10−276680号公報【特許文献3】特開平5−93000号公報【特許文献4】特開2000−50811号公報【特許文献5】特開平10−57016号公報【特許文献6】特願2001−390691号【非特許文献1】日本食品工業学会誌・第40巻 第11号【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、鱈、ニシン、鮭等の腹子外皮である魚卵外皮から、その構成蛋白である筋原線維蛋白質(収縮蛋白質:ミオシン)を酵素分解して、生理活性物質として、あるいは食品用栄養強化剤等として有用なペプチド及びアミノ酸を採取し、廃棄処分されていた魚卵外皮を有効利用しようとするものである。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者は、上記目的を達成するため魚卵外皮の有効利用について検討を進めた結果、魚卵外皮を予めオゾン水で処理した後、その構成蛋白である筋原線維蛋白質を酵素分解することにより、生理活性物質としてあるいは食品強化剤等として有用なアミノ酸成分を取り出すことに成功した。【0009】すなわち、本発明は、1)オゾン水処理した魚卵外皮をバチルス属(Bacillus subtilis)が産生する蛋白分解酵素により魚卵外皮を構成している筋原線維蛋白(収縮蛋白質)を分解せしめることによりアミノ酸成分を採取することを特徴とする魚卵外皮の酵素分解によるアミノ酸及びペプチドの製法。2)オゾン水処理した魚卵外皮をバチルス属(Bacillus subtilis)が産生する蛋白分解酵素及び絲状菌(Aspergillus oryzae)が産生する蛋白分解酵素により魚卵外皮を構成している筋原線維蛋白(収縮蛋白質)を分解せしめることによりアミノ酸成分を採取することを特徴とする魚卵外皮の酵素分解によるアミノ酸及びペプチドの製法。を提供するものである。【0010】【発明の実施の形態】本発明の魚卵外皮の酵素分解によるアミノ酸及びペプチド(両者を併せてアミノ酸成分とも記す)の製法は、魚卵外皮を冷水で洗浄した後、室温以下のオゾン水で処理することが重要である。低温のオゾン水で処理することによって、付着細菌の除菌及び脱脂肪等が行なわれ、さらに構成蛋白である筋原線維蛋白の収縮蛋白質(ミオシン)の変成が防止される。その結果、後工程の酵素分解反応が充分に進行して栄養価の高いアミノ酸成分を含む溶液として、また当該溶液を濃縮・乾燥することにより格別精製を行なうことなく食品用の栄養強化剤等として利用することができるアミノ酸成分を粉末として得ることができる。【0011】オゾン水処理は、洗浄、脱水した魚卵外皮を冷水を入れたタンク中で撹拌しながら、オゾン発生装置から、オゾン濃度0.2〜10ppm/Lで供給し、5〜30分間室温以下で処理される。魚卵外皮が分散状態で存在しているオゾン処理液は、溶存しているオゾンを消失させるために、撹拌しながら酵素反応温度、35〜50℃付近まで加温される。オゾンが消失した後、バチルス属(Bacillus subtilis)の産生する蛋白分解酵素により収縮蛋白質(ミオシン)を分解する。この分解液に直接、或いは分解液中の酵素を80℃以上に加温し、15分間以上撹拌し酵素を失活させた後、絲状菌(Aspergillus oryzae)の産生する蛋白分解酵素を用いて、さらに低分子化と他種類の魚卵蛋白に由来する苦味やアミノ酸臭等の分解処理を行なう。この両酵素による処理は、魚卵外皮に対し0.02〜0.2重量%の酵素を用いて、撹拌の下、処理温度35〜55℃、処理時間2〜5時間、いずれもほぼ同じ条件で行なわれる。【0012】酵素処理を終えた処理液は、酵素を失活させた後、800メッシュの濾布を用いた遠心分離により固形物を、さらに限外濾過法によりコロイド状不純物を除去する。得られたアミノ酸成分を含む濾液は、使用目的により、そのままの状態であるいは、適度の濃度に濃縮して、液状で利用することができる。アミノ酸成分を粉末として得る場合は、濾液を常圧乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥法などにより、成分の分解を極力回避する観点から水分を速やかに除去することが望ましい。かかる観点から、乾燥方法としては、減圧乾燥法あるいは噴霧乾燥法が適している。また、乾燥温度についても、130℃以下で行うことが望ましく、この温度を超えると有効成分の分解が始まり、品質の低下を招く。好ましい乾燥温度は70〜130℃である。【0013】このようにして減圧乾燥法または噴霧乾燥法等により得られたアミノ酸成分からなる粉末は、ペプチドおよび各種のアミノ酸が含まれ、タンパク分解酵素、特にバチルス属(Bacillus subtilis)の産生する蛋白分解酵素の使用量が少ない場合(0.05重量%以下)、ペプチドが多く含まれたアミノ酸成分がえられる。このようにして得られたアミノ酸成分は、それ自体健康補助食品等として利用することができるが、各種の食品に栄養強化を目的に補助添加剤として有用である。また、ペプチドが多く含まれているアミノ酸成分はACE阻害活性を有する。その他、本発明のアミノ酸成分は、人体に無害なデキストリン等の安定剤、あるいはビタミン、ミネラル等を加えて、栄養価を高めてもよいし、さらに所望により、公知の食品用造粒剤を加えて顆粒等に成形して利用してもよい。次に実施例を挙げてさらに本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。【0014】【実施例】実施例1:明太子の卵粒が除かれた魚卵外皮5kgを洗浄糟で冷水20Lで3回洗浄し、籠型遠心脱水装置で脱水する。酵素分解タンク(5L)内に脱水魚卵外皮1.5kgと冷水4.5Lを入れ、攪拌しながらオゾン発生装置((株)ジャール・400型)からオゾンを濃度0.5ppm/Lで供給し、10分間、約10℃のオゾン水で処理を行なった後、溶存するオゾンを消失させるため攪拌を行ないながら酵素反応温度付近まで加温する。次に、この処理液に、約45℃程度で筋原線維蛋白である収縮蛋白(ミオシン)を分解するため、バチルス属(Bacillus subtilis)が産生する蛋白分解酵素(ヤクルト薬品・アロアーゼAP−10)を乾燥魚卵外皮換算で0.2重量%添加し、約2.5時間撹拌処理して収縮蛋白(ミオシン)を分解した。【0015】さらに、この分解液に絲状菌(Aspergillus oryzae)が産生する蛋白分解酵素(ヤクルト薬品・パンチダーゼNP−2)を魚卵外皮換算で0.2重量%添加し、同温度で、同時間撹拌処理して、魚卵外皮がもつ魚肉蛋白等に由来する苦味成分やアミノ酸臭等を分解除去しさらに低分子化を行った。上記2種の蛋白分解酵素で酵素分解を行った後、処理液を液温80℃に加温し、残留酵素の失活並びに減菌処理を行った。【0016】失活処理した分解液(液温・60℃)を定量ポンプで噴霧乾燥装置に時間当たり200mL供給し、乾燥入口熱風温度130℃、乾燥出口熱風温度70℃で乾燥を行い、含水率7%以下の乾燥魚卵外皮由来の各種アミノ酸成分からなる粉末を得た。【0017】参考例:実施例のオゾン処理に代えて75℃の温水で15分前処理を行なったほかは、実施例1と同様に酵素処理を行ない、含水率7%以下の魚卵外皮由来の各種アミノ酸を含有する粉末を得た。上記、実施例及び参考例で得たアミノ酸成分の分析結果、及び特公平1−14885号公報に記載された鯖エキスのアミノ酸組成を合わせて表2及びグラフ化して図1に示す。【0018】【表2】注:*は必須アミノ酸である。【0019】表2及び図1から明らかなように、実施例1により得られたアミノ酸成分は、そのほとんどが17種に及ぶアミノ酸からなり、特に必須アミノ酸(7種)の含有量が参考例及び鯖エキスに比べて顕著に多いことが認められた。このアミノ酸の含有量が多いのはオゾン処理によって蛋白の変成あるいは分解が抑制されたことと、酵素により蛋白質がほぼ完全に分解されたことを示している。これに対して、参考例及び鯖エキスのアミノ酸含有量が少ないのは、70℃以上での熱処理による蛋白の変成が起こっていることによるものと推測される。【0020】実施例2:魚卵外皮40kgを水洗・乾燥を行なった後、オゾン冷却水(水温・10℃ オゾン濃度・5ppm)で殺菌処理を行ない、実施例1記載の方法に準じて、バチルス属(Bacillus subtilis)の生産する魚肉蛋白質分解酵素(ヤクルト薬品・アロアーゼAP−10)を乾燥魚卵外皮換算で0.03重量%添加し、3時間攪拌処理して筋原繊維蛋白(ミシオン、アクチン)を分解した。分解液を温度85℃で15分間処理し酵素を失活させた。【0021】さらに、酵素失活させた分解液に、実施例1に記載の方法に準じて、低分子化と他種類の魚卵蛋白に由来する苦味やアミノ酸臭等の分解させるため絲状菌(Aspergillus oryzae)の生産する蛋白質分解酵素(ヤクルト薬品・NP−2)を乾燥魚卵外皮換算で0.03重量%添加し、3時間分解処理を行なった後、同様に酵素失活を行い、魚卵外皮ペプチドを含むアミノ酸成分の抽出分解溶液100Lを得た。【0022】この抽出分解溶液を超遠心分離機((株)コクサン・シャープレスS・NO6型・15000rpm)で微粒子を除去した後、限外濾過膜((株)日東電工・NTU−3250)で透過し、分子量が6,000以下のペプチドを含むアミノ酸成分を含有する溶液を得た。この溶液を真空減圧濃縮装置で温度65℃で、40Lに濃縮した。濃縮液をスプレ・ドラヤー((株)坂本技研・DA2SW)で乾燥し、含水率約4%の乾燥物、約3.6kgを得た(平均粒度・50μ)。濾過原液及び限外濾過液のアミノ酸成分の分析値を表3に示す。【0023】【表3】【0024】また、上記魚卵外皮由来のペプチド及びアミノ酸を含む濾過原液及び限外濾過液のACE阻害活性を測定(Lieberman変法)した結果、そのACE阻害活性は、イワシ由来のアンジオテンシンI転換酵素阻害ペプチド(例えば、非特許文献1参照)と比較したところ、ほぼ同等の活性が認められた。(ACE阻害活性)文献値       0.754(mg protein/mL)濾過原液      0.87(mg protein/mL)(M.W.<6000)限外濾過液     1.17(mg protein/mL)【0025】【発明の効果】以上説明したように、本発明のアミノ酸成分を含む魚卵外皮の酵素分解液、あるいは該分解液から得られる魚卵外皮パウダーは、アミノ酸成分からなるもので、特に必須アミノ酸が多く含まれていることから、機能性栄養補助食品等として極めて有用である。また、ペプチドを多く含有するアミノ酸成分にはACE阻害活性が認められた。したがって、本発明は、産業廃棄物として処分されていた魚卵外皮が有効利用されたことにより、環境汚染のうえからも、その意義は極めて大である。【図面の簡単な説明】【図1】図1は、実施例1、比較例、及び鯖エキスのアミノ酸組成をグラフに表したものである。 オゾン水処理した魚卵外皮をパチルス属が産生する蛋白分解酵素により魚卵外皮を構成している収縮蛋白を分解せしめることを特徴とするアミノ酸及びペプチドの製法。 オゾン水処理した魚卵外皮をパチルス属が産生する蛋白分解酵素及び絲状菌が産生する蛋白分解酵素により魚卵外皮を構成する収縮蛋白質を分解せしめることを特徴とするアミノ酸及びペプチドの製法。 【課題】各種魚の卵粒の利用によって発生する魚卵外皮から、その構成蛋白を酵素分解によりペプチド及びアミノ酸を採取し、その有効利用を図る。【解決手段】冷水で洗浄した魚卵外皮を室温以下のオゾン水で処理した後、バチルス属(Bacillus subtilis)が産生する蛋白分解酵素により分解し、あるいはさらに絲状菌(Aspergillus oryzae)が産生する蛋白分解酵素で処理して、魚卵外皮中の筋原線維蛋白(収縮蛋白:ミオシン)を分解せしめた後、分解液を濃縮・乾燥することによる魚卵外皮から食品の栄養強化剤等として有用なアミノ酸及びペプチドの製法。


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特許公報(B2)_魚卵外皮の酵素分解によるアミノ酸成分の製法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_魚卵外皮の酵素分解によるアミノ酸成分の製法
出願番号:2003163724
年次:2005
IPC分類:7,C12P21/06,A23J1/04,A23J3/34,A23L1/30


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小▲高▼ 邦彦 JP 3691497 特許公報(B2) 20050624 2003163724 20030609 魚卵外皮の酵素分解によるアミノ酸成分の製法 有限会社フジ・バイオ研究所 396006697 川上 宣男 100098844 小▲高▼ 邦彦 JP 2002180591 20020620 20050907 7 C12P21/06 A23J1/04 A23J3/34 A23L1/30 JP C12P21/06 A23J1/04 A23J3/34 A23L1/30 7 C12P21/00-21/06 特開平5−244979(JP,A) 特開昭61−195651(JP,A) 特開2003−180290(JP,A) 特開平10−57016(JP,A) 2 2004073186 20040311 7 20040119 高堀 栄二 【0001】【発明が属する技術分野】本発明は、鱈、ニシン、鮭、カツオ等の腹子外皮である魚卵外皮から、生理活性物質あるいは食品の栄養強化剤等として有用なアミノ酸成分を製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】水産加工に伴い発生する廃棄される魚体の魚肉、魚皮、魚骨等は、魚粉、魚油、畜産用飼料、農業用肥料等に加工し利用されているが、魚卵の加工並びに水産加工により発生する魚卵外皮については、ほとんどが産業廃棄物として処分されている。ところで、魚介類の利用法としては、魚介類を高温処理して魚介類に含まれている自己分解酵素を不活化した後、枯草菌産生蛋白分解酵素及び麹菌産生蛋白分解酵素により成分中の蛋白をペプタイドアミノ酸及び遊離アミノ酸に分解して、得られた魚介類エキスが抗潰瘍作用、インシュリン樣作用、高脂血症治癒作用等の医薬効果を有するとされている(例えば、特許文献1参照)。【0003】また、魚皮、魚骨、魚鱗等の利用法としては、魚皮、魚骨をプロテアーゼ処理等により得られたゼラチンを食品素材として利用する方法(例えば、特許文献2参照)、あるいは、魚鱗(例えば、特許文献3参照)、魚皮(例えば、特許文献4参照)から抽出したコラーゲンを医療用生体材料あるいは化粧品材料などとして利用する方法等が考えられている。【0004】一方、最近明太子の卵巣膜を乾燥した、食事のおかず、お酒のつまみ等に向けられた、唐辛子味の乾燥食品が提案されているが(例えば、特許文献5参照)、ほとんどが繊維蛋白から構成されている卵巣膜の性状からその乾燥食品としての商品価値には疑問がある。また、本発明者は、先に大量に発生する明太子の漬け汁の有効利用を目的に、漬け汁を酵素分解処理することによって、明太子風味の食品調味料を提案した(例えば、特許文献6参照)。この調味料には、漬け汁中に残存している明太子の卵及びその外皮中の蛋白が分解した低分子のペプチド及びアミノ酸成分を含み、さらに味付けのために添加した各種の主に天然調味料が含まれており、明太子風味の調味料として期待されている。しかし、各種の魚卵の利用によって発生する魚卵外皮自体の利用については、外皮がほとんど筋原線維蛋白質である収縮蛋白質(ミオシン)から構成されていながらその有効利用についての提案はなされていない(表1:魚卵外皮精製物成分表参照)。【0005】【表1】【0006】【特許文献1】特公平1−14885号公報【特許文献2】特開平10−276680号公報【特許文献3】特開平5−93000号公報【特許文献4】特開2000−50811号公報【特許文献5】特開平10−57016号公報【特許文献6】特願2001−390691号【非特許文献1】日本食品工業学会誌・第40巻 第11号【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、鱈、ニシン、鮭等の腹子外皮である魚卵外皮から、その構成蛋白である筋原線維蛋白質(収縮蛋白質:ミオシン)を酵素分解して、生理活性物質として、あるいは食品用栄養強化剤等として有用なペプチド及びアミノ酸を採取し、廃棄処分されていた魚卵外皮を有効利用しようとするものである。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者は、上記目的を達成するため魚卵外皮の有効利用について検討を進めた結果、魚卵外皮を予めオゾン水で処理した後、その構成蛋白である筋原線維蛋白質を酵素分解することにより、生理活性物質としてあるいは食品強化剤等として有用なアミノ酸成分を取り出すことに成功した。【0009】 すなわち、本発明は、 1)オゾン水処理した魚卵外皮をバチルス属(Bacillus subtilis)が産生する蛋白分解酵素により処理し、魚卵外皮を構成している筋原線維蛋白(収縮蛋白質)を分解せしめることによりアミノ酸成分を採取することを特徴とする魚卵外皮の酵素分解によるアミノ酸及びペプチドの製法。 2)オゾン水処理した魚卵外皮をバチルス属(Bacillus subtilis)が産生する蛋白分解酵素及び絲状菌(Aspergillus oryzae)が産生する蛋白分解酵素により処理し、魚卵外皮を構成している筋原線維蛋白(収縮蛋白質)を分解せしめることによりアミノ酸成分を採取することを特徴とする魚卵外皮の酵素分解によるアミノ酸及びペプチドの製法。を提供するものである。【0010】【発明の実施の形態】本発明の魚卵外皮の酵素分解によるアミノ酸及びペプチド(両者を併せてアミノ酸成分とも記す)の製法は、魚卵外皮を冷水で洗浄した後、室温以下のオゾン水で処理することが重要である。低温のオゾン水で処理することによって、付着細菌の除菌及び脱脂肪等が行なわれ、さらに構成蛋白である筋原線維蛋白の収縮蛋白質(ミオシン)の変成が防止される。その結果、後工程の酵素分解反応が充分に進行して栄養価の高いアミノ酸成分を含む溶液として、また当該溶液を濃縮・乾燥することにより格別精製を行なうことなく食品用の栄養強化剤等として利用することができるアミノ酸成分を粉末として得ることができる。【0011】オゾン水処理は、洗浄、脱水した魚卵外皮を冷水を入れたタンク中で撹拌しながら、オゾン発生装置から、オゾン濃度0.2〜10ppm/Lで供給し、5〜30分間室温以下で処理される。魚卵外皮が分散状態で存在しているオゾン処理液は、溶存しているオゾンを消失させるために、撹拌しながら酵素反応温度、35〜50℃付近まで加温される。オゾンが消失した後、バチルス属(Bacillus subtilis)の産生する蛋白分解酵素により収縮蛋白質(ミオシン)を分解する。この分解液に直接、或いは分解液中の酵素を80℃以上に加温し、15分間以上撹拌し酵素を失活させた後、絲状菌(Aspergillus oryzae)の産生する蛋白分解酵素を用いて、さらに低分子化と他種類の魚卵蛋白に由来する苦味やアミノ酸臭等の分解処理を行なう。この両酵素による処理は、魚卵外皮に対し0.02〜0.2重量%の酵素を用いて、撹拌の下、処理温度35〜55℃、処理時間2〜5時間、いずれもほぼ同じ条件で行なわれる。【0012】酵素処理を終えた処理液は、酵素を失活させた後、800メッシュの濾布を用いた遠心分離により固形物を、さらに限外濾過法によりコロイド状不純物を除去する。得られたアミノ酸成分を含む濾液は、使用目的により、そのままの状態であるいは、適度の濃度に濃縮して、液状で利用することができる。アミノ酸成分を粉末として得る場合は、濾液を常圧乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥法などにより、成分の分解を極力回避する観点から水分を速やかに除去することが望ましい。かかる観点から、乾燥方法としては、減圧乾燥法あるいは噴霧乾燥法が適している。また、乾燥温度についても、130℃以下で行うことが望ましく、この温度を超えると有効成分の分解が始まり、品質の低下を招く。好ましい乾燥温度は70〜130℃である。【0013】このようにして減圧乾燥法または噴霧乾燥法等により得られたアミノ酸成分からなる粉末は、ペプチドおよび各種のアミノ酸が含まれ、タンパク分解酵素、特にバチルス属(Bacillus subtilis)の産生する蛋白分解酵素の使用量が少ない場合(0.05重量%以下)、ペプチドが多く含まれたアミノ酸成分がえられる。このようにして得られたアミノ酸成分は、それ自体健康補助食品等として利用することができるが、各種の食品に栄養強化を目的に補助添加剤として有用である。また、ペプチドが多く含まれているアミノ酸成分はACE阻害活性を有する。その他、本発明のアミノ酸成分は、人体に無害なデキストリン等の安定剤、あるいはビタミン、ミネラル等を加えて、栄養価を高めてもよいし、さらに所望により、公知の食品用造粒剤を加えて顆粒等に成形して利用してもよい。次に実施例を挙げてさらに本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。【0014】【実施例】実施例1:明太子の卵粒が除かれた魚卵外皮5kgを洗浄糟で冷水20Lで3回洗浄し、籠型遠心脱水装置で脱水する。酵素分解タンク(5L)内に脱水魚卵外皮1.5kgと冷水4.5Lを入れ、攪拌しながらオゾン発生装置((株)ジャール・400型)からオゾンを濃度0.5ppm/Lで供給し、10分間、約10℃のオゾン水で処理を行なった後、溶存するオゾンを消失させるため攪拌を行ないながら酵素反応温度付近まで加温する。次に、この処理液に、約45℃程度で筋原線維蛋白である収縮蛋白(ミオシン)を分解するため、バチルス属(Bacillus subtilis)が産生する蛋白分解酵素(ヤクルト薬品・アロアーゼAP−10)を乾燥魚卵外皮換算で0.2重量%添加し、約2.5時間撹拌処理して収縮蛋白(ミオシン)を分解した。【0015】さらに、この分解液に絲状菌(Aspergillus oryzae)が産生する蛋白分解酵素(ヤクルト薬品・パンチダーゼNP−2)を魚卵外皮換算で0.2重量%添加し、同温度で、同時間撹拌処理して、魚卵外皮がもつ魚肉蛋白等に由来する苦味成分やアミノ酸臭等を分解除去しさらに低分子化を行った。上記2種の蛋白分解酵素で酵素分解を行った後、処理液を液温80℃に加温し、残留酵素の失活並びに減菌処理を行った。【0016】失活処理した分解液(液温・60℃)を定量ポンプで噴霧乾燥装置に時間当たり200mL供給し、乾燥入口熱風温度130℃、乾燥出口熱風温度70℃で乾燥を行い、含水率7%以下の乾燥魚卵外皮由来の各種アミノ酸成分からなる粉末を得た。【0017】参考例:実施例のオゾン処理に代えて75℃の温水で15分前処理を行なったほかは、実施例1と同様に酵素処理を行ない、含水率7%以下の魚卵外皮由来の各種アミノ酸を含有する粉末を得た。上記、実施例及び参考例で得たアミノ酸成分の分析結果、及び特公平1−14885号公報に記載された鯖エキスのアミノ酸組成を合わせて表2及びグラフ化して図1に示す。【0018】【表2】注:*は必須アミノ酸である。【0019】表2及び図1から明らかなように、実施例1により得られたアミノ酸成分は、そのほとんどが17種に及ぶアミノ酸からなり、特に必須アミノ酸(7種)の含有量が参考例及び鯖エキスに比べて顕著に多いことが認められた。このアミノ酸の含有量が多いのはオゾン処理によって蛋白の変成あるいは分解が抑制されたことと、酵素により蛋白質がほぼ完全に分解されたことを示している。これに対して、参考例及び鯖エキスのアミノ酸含有量が少ないのは、70℃以上での熱処理による蛋白の変成が起こっていることによるものと推測される。【0020】実施例2:魚卵外皮40kgを水洗・乾燥を行なった後、オゾン冷却水(水温・10℃ オゾン濃度・5ppm)で殺菌処理を行ない、実施例1記載の方法に準じて、バチルス属(Bacillus subtilis)の生産する魚肉蛋白質分解酵素(ヤクルト薬品・アロアーゼAP−10)を乾燥魚卵外皮換算で0.03重量%添加し、3時間攪拌処理して筋原繊維蛋白(ミシオン、アクチン)を分解した。分解液を温度85℃で15分間処理し酵素を失活させた。【0021】さらに、酵素失活させた分解液に、実施例1に記載の方法に準じて、低分子化と他種類の魚卵蛋白に由来する苦味やアミノ酸臭等の分解させるため絲状菌(Aspergillus oryzae)の生産する蛋白質分解酵素(ヤクルト薬品・NP−2)を乾燥魚卵外皮換算で0.03重量%添加し、3時間分解処理を行なった後、同様に酵素失活を行い、魚卵外皮ペプチドを含むアミノ酸成分の抽出分解溶液100Lを得た。【0022】この抽出分解溶液を超遠心分離機((株)コクサン・シャープレスS・NO6型・15000rpm)で微粒子を除去した後、限外濾過膜((株)日東電工・NTU−3250)で透過し、分子量が6,000以下のペプチドを含むアミノ酸成分を含有する溶液を得た。この溶液を真空減圧濃縮装置で温度65℃で、40Lに濃縮した。濃縮液をスプレ・ドラヤー((株)坂本技研・DA2SW)で乾燥し、含水率約4%の乾燥物、約3.6kgを得た(平均粒度・50μ)。濾過原液及び限外濾過液のアミノ酸成分の分析値を表3に示す。【0023】【表3】【0024】また、上記魚卵外皮由来のペプチド及びアミノ酸を含む濾過原液及び限外濾過液のACE阻害活性を測定(Lieberman変法)した結果、そのACE阻害活性は、イワシ由来のアンジオテンシンI転換酵素阻害ペプチド(例えば、非特許文献1参照)と比較したところ、ほぼ同等の活性が認められた。(ACE阻害活性)文献値 0.754(mg protein/mL)濾過原液 0.87(mg protein/mL)(M.W.<6000)限外濾過液 1.17(mg protein/mL)【0025】【発明の効果】以上説明したように、本発明のアミノ酸成分を含む魚卵外皮の酵素分解液、あるいは該分解液から得られる魚卵外皮パウダーは、アミノ酸成分からなるもので、特に必須アミノ酸が多く含まれていることから、機能性栄養補助食品等として極めて有用である。また、ペプチドを多く含有するアミノ酸成分にはACE阻害活性が認められた。したがって、本発明は、産業廃棄物として処分されていた魚卵外皮が有効利用されたことにより、環境汚染のうえからも、その意義は極めて大である。【図面の簡単な説明】【図1】図1は、実施例1、比較例、及び鯖エキスのアミノ酸組成をグラフに表したものである。 オゾン水処理した魚卵外皮をバチルス属が産生する蛋白分解酵素により処理し、魚卵外皮を構成している収縮蛋白を分解せしめることを特徴とするアミノ酸及びペプチドの製法。 オゾン水処理した魚卵外皮をバチルス属が産生する蛋白分解酵素及び絲状菌が産生する蛋白分解酵素により処理し、魚卵外皮を構成する収縮蛋白質を分解せしめることを特徴とするアミノ酸及びペプチドの製法。


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