生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_多点型ガス濃度検出方法及びそのシステム
出願番号:2003157010
年次:2009
IPC分類:G01N 21/39


特許情報キャッシュ

熊澤 稔雄 中桐 信晴 櫻井 雅利 穂苅 弘一 桔梗谷 智 相馬 正孝 中村 晃之 JP 4217109 特許公報(B2) 20081114 2003157010 20030602 多点型ガス濃度検出方法及びそのシステム 東京電力株式会社 000003687 日立電線株式会社 000005120 絹谷 信雄 100068021 熊澤 稔雄 中桐 信晴 櫻井 雅利 穂苅 弘一 桔梗谷 智 相馬 正孝 中村 晃之 20090128 G01N 21/39 20060101AFI20090108BHJP JPG01N21/39 G01N21/00-21/61 G01M11/00-11/08 JSTPlus(JDreamII) 特開平10−132737(JP,A) 特開平06−148071(JP,A) 特開平06−148072(JP,A) 特開平08−101123(JP,A) 特開平04−231837(JP,A) 2 2004361129 20041224 16 20060519 横尾 雅一 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、レーザ光の透過量から雰囲気中のガス濃度を検出するガス濃度検出方法及びそのシステムに係り、特に、光路長の違いにより生じる信号の位相ずれを補正し、複数箇所のガス濃度を安定して高精度に検出する多点型ガス濃度検出方法及びそのシステムに関するものである。【0002】【従来の技術】従来のガス濃度検出方法には、ガスを検出するためのセンサとして、半導体式など電気式センサを使用する方法がある。この方法では、センサ近傍に電源設備が必要であり、また、定期的に校正が必要なため、長距離監視の場合、保守性や経済性の面で問題となっている。【0003】一方で、ガスを検出するためのセンサとして、光を応用したセンサを使用する方法がある。この方法は、ある特定波長のレーザ光をガス分子が吸収する性質を持っていることから、この現象を利用してガスの有無を検出でき、この原理を応用したセンシング技術が工業計測、公害監視などで広く用いられている。また、このレーザ光を光ファイバで伝送すれば、遠隔監視も可能となる。【0004】そこで、本発明者らは特許文献1に開示されている発明を応用して、光ファイバを伝送路とした新規の遠隔ガス検出装置を開発した。この原理を応用した方法では、半導体レーザの駆動電流を所定の電流を中心として高周波で変調し、波長及び強度の変調されたレーザ光を発振させる。さらに電流及び温度を制御して発振の中心波長がガス吸収線の中心になるよう半導体レーザの後方に出射するレーザ光をモニタ用として用いる。そうして安定し前方に出射されたレーザ光を、光ファイバを介して未知濃度を含む測定用のガスセルに透過させ、その透過光を対向する別の光ファイバで受光部まで導き、レーザ光の2倍波検波信号、または基本波検波信号により、ガス濃度を高いSN比で検出できる。【0005】以下に、光ファイバを伝送路としてガス濃度を検出する方法の原理を説明する。検出対象ガスはメタンとする。【0006】光の周波数を何らかの手段で変調し、その光が対象吸収ガスを通過すると、受光した光信号は、変調周波成分とその高調波成分をもつ。そのうち、基本波成分、2倍波成分を位相敏感検波すると、それぞれガスの吸収線の周波数に関する一次微分、二次微分に対応する信号を得ることができる。ここで、位相敏感検波とは、信号のうちの特定の周波数、位相を持つ成分だけを抽出してその振幅を測定することを意味し、位相検波器として、例えばロックインアンプ用いることで実現できる。【0007】メタンの濃度(分圧)をc、光路長をlとしたときのレーザ光の透過率Tは、【0008】【数1】【0009】と表せる。αはメタンの吸収係数であり、大気圧中では、一つの吸収線に着目すると次のようなローレンツ型の周波数依存性を有する。【0010】【数2】【0011】αcl≪1の場合、数1、数2より、【0012】【数3】【0013】と近似できる。【0014】光源として半導体レーザ(LD)を用いた場合、LDの発振周波数Ωは温度と駆動電流の関数であるが、温度一定で駆動電流を周波数ωで変調すると、Ωは次式で表せる。【0015】【数4】【0016】数3でTをΩ=Ω0においてテーラー展開し、ΔΩの二次まで求めると、次式で表せる。【0017】【数5】【0018】T0,T01,T02の大きさと周波数の関係を図8に示す。【0019】数5で示される透過率Tのうちcosωt,cos2ωtの成分を位相敏感検波すれば、それぞれT01,T02に比例した信号が得られる。図8からわかるように、レーザの中心周波数Ω0とメタンの吸収線の中心ωmが一致したときT0は最小、T01は0、T02は最大となる。【0020】LDの駆動電流を変調すると、レーザの発振周波数だけが変調されると考えているが、発振強度も同時に変調を受ける。LDの駆動電流を周波数ωで変調すると、発振周波数は、数4で与えられるのに対して、発振強度Iは、【0021】【数6】【0022】で与えられる。【0023】ここで、図9に示すように、LD91からのレーザ光を往路用光ファイバ92を介してガスセル93内に導き、ガスセル93を透過したレーザ光を復路用光ファイバ94を介して受光器95で受光するものとする。LD91から出射したレーザ光が往路光伝送路92とカップリングした光強度をIとする。【0024】往路伝送路損失係数をK1としたときガスセル93を出射する光強度は、出射強度K1・Iと透過率Tに比例するのでK1・I・Tとなる。受光器95で検知される光強度は、復路伝送路損失係数をK2としたときK2・K1・T・Iとなる。ここでΔΩが微少周波数変調振幅であるとき、K1・K2は一定値とおくことができるので、K1・K2=Aとすれば受光器95で検知する光強度Pは、【0025】【数7】【0026】で表せる。数7に数5、数6を代入すると、【0027】【数8】【0028】となる。【0029】数8を展開して、周波数ωで変化する部分は、微小項を無視すれば、【0030】【数9】【0031】となり、光強度P(ω)は位相の異なる2つの項から成ることになる。【0032】ここで、数9の第1項の寄与が最大になる位相で基本波検波して得られる信号をP(ω)maxとすると、次式で表せる。【0033】【数10】【0034】メタンの吸収は、レーザの駆動電流を周波数ωで変調し、透過光の基本波および2倍波での位相敏感検波信号により検出することができる。【0035】レーザの周波数をメタンの吸収線の中心に安定化させた後、ガス雰囲気通過後の光検出信号から周波数2ωに同期した信号成分を、位相敏感検波して得られる信号P(2ω)は、数8より、【0036】【数11】【0037】となる。【0038】P(ω)maxは、数10より、【0039】【数12】【0040】となり、それぞれの比Rをとると次式で表される。【0041】【数13】【0042】従って、光学系損失Aに無関係にメタン濃度cと光路長lとの積clが求まる。さらに、発振強度Iが分かればメタン濃度が検出できることになる。【0043】【特許文献1】特開平5−256769号公報【0044】【発明が解決しようとする課題 】しかしながら、従来の方法では以下のような問題がある。【0045】上述したように、電気式センサを使用する方法は、センサ(ガス検出部)近傍に電源設備が必要であり、また、定期的に校正が必要なため、長距離監視の場合、保守性や経済性の面で問題である。【0046】一方、光式センサを使用する方法においても、長距離で複数箇所のガスを検出する場合、光路長の違いにより生じる信号の位相ずれを補正することは行われていないという問題がある。したがって、ガス濃度を十分に安定して高精度に検出していない可能性がある。【0047】 そこで、本発明の目的は、多点ガス濃度計測において、計測対象箇所の光路長が変化しても、ガス濃度を安定して高濃度に検出できる多点型ガス濃度検出方法及びそのシステムを提供することにある。【0048】【課題を解決するための手段】 本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、レーザ光を測定対象とするガス雰囲気に通して得られる透過光の強度を多点で検出し、得られた各信号からガス濃度を検出する多点型ガス濃度検出方法であって、 レーザと受光器間に光切替器を接続し、該光切替器に、ガス雰囲気を通過しない基準光路を接続すると共に、ガス雰囲気を通過する送受信光路にガス検出部を設けたガス検出光路を複数接続し、該各ガス検出光路の光路長の違いにより生じる信号の位相ずれをそれぞれ補正して多点のガス濃度を検出するに際し、前記基準光路より得られる2倍波信号と基本波信号の比と、前記各ガス検出光路より得られる2倍波信号と基本波信号の比とを、cos成分とsin成分に分けてそれぞれ求め、ガス濃度に依存しない波長の部分で位相差をそれぞれ一致させ、前記各ガス検出光路の光路長の違いにより生じる信号の位相ずれをそれぞれ補正し、前記基準光路より得られる2倍波信号と基本波信号の比と、前記各ガス検出光路より得られる2倍波信号と基本波信号の比との差分を各成分毎に行い、該cos成分とsin成分の2乗和の平方根からガス信号をそれぞれ求め、該各ガス信号から多点のガス濃度を検出する多点型ガス濃度検出方法である。 請求項2の発明は、レーザ光を測定対象とするガス雰囲気に通して得られる透過光の強度を多点で検出し、得られた各信号からガス濃度を検出する多点型ガス濃度検出システムであって、ガス雰囲気を通過しない基準光路と、ガス雰囲気を通過する送受信光路にガス検出部を設けた複数のガス検出光路と、前記基準光路と前記各ガス検出光路を切り替えるための光切替器と、該光切替器を切り替え、前記各ガス検出光路から得られる信号と前記基準光路から得られる信号とをそれぞれ差分する処理装置とを備え、該処理装置は、前記基準光路より得られる2倍波信号と基本波信号の比と、前記各ガス検出光路より得られる2倍波信号と基本波信号の比とを、cos成分とsin成分に分けてそれぞれ求め、ガス濃度に依存しない波長の部分で位相差をそれぞれ一致させ、前記各ガス検出光路の光路長の違いにより生じる信号の位相ずれをそれぞれ補正し、前記基準光路より得られる2倍波信号と基本波信号の比と、前記各ガス検出光路より得られる2倍波信号と基本波信号の比との差分を各成分毎に行い、該cos成分とsin成分の2乗和の平方根からガス信号をそれぞれ求め、該各ガス信号から多点のガス濃度を検出する多点型ガス濃度検出システムである。【0050】【発明の実施の形態】以下、本発明の好適実施の形態を添付図面にしたがって説明する。【0051】図1は、本発明の好適実施の形態である多点型ガス濃度検出方法を実施するために使用される多点型ガス濃度検出システムの概略図を示したものである。【0052】図1に示すように、多点型ガス濃度検出システム1は、主として地下街・高層ビル等の都市ガス(メタンガス)の漏洩やLNGタンク周辺のガス漏れを多点(複数箇所)検出するものであり、レーザ2を駆動してレーザ光を発振させるためのレーザ部3と、発振したレーザ光を導くための光学系4と、光学系4を通過したレーザ光を受光器5で検出し、その検出信号を処理する信号処理部6とから全体が構成されている。【0053】レーザ部3は、単一波長のレーザ光を発振させる分布帰還型半導体レーザ(DFB−LD)2と、DFB−LD2を搭載してその温度をペルチェ素子用電源7により制御するためのペルチェ素子8と、周波数fの正弦波信号を出力する発振器9と、この周波数fの信号により周波数fの2倍波信号を生成する倍周器10と、DFB−LD2にバイアス電流を付加するためのバイアス電流源11と、バイアス電流源11の掃引の仕方を決定する三角波掃引器12とから構成されている。【0054】また、バイアス電流源11の出力側には、発振器9の出力による影響を防ぐためにインダクタンスLが接続されており、発振器9の出力側には、直流分をカットするためのコンデンサCが接続されている。【0055】このレーザ部3により、発振器9からの周波数fの正弦波信号が、バイアス電流源11からの出力に重畳されて、DFB−LD2が駆動される。【0056】光学系4は、DFB−LD2と受光器5間に接続される光切替器13と、光切替器13に接続され、ガス雰囲気を通過しないループ状の基準光路用光ファイバ14と、光切替器13にそれぞれ接続され、ガス雰囲気を通過する送受信光路15a〜n,16a〜nにガス検出部17a〜nをそれぞれ設けた複数のループ状のガス検出光路18a〜nとから構成されている。【0057】すなわち、各ガス検出光路18a〜nは、送信用光ファイバ15a〜nと、受信用光ファイバ16a〜nと、各送信用光ファイバ15a〜nと各受信用光ファイバ16a〜n間にそれぞれ接続されるガス検出部17a〜nとからなっている。【0058】光切替器13は、基準光路用光ファイバ14と各ガス検出光路18a〜nを切り替えるためのものであり、2×nの構成となっている。より具体的に言えば、DFB−LD2からの1入力に対し、送信用光ファイバ15a〜nへのn出力を有し、受信用光ファイバ16a〜nからのn入力に対し、受光器5への1出力を有している。【0059】この光切替器13は、後述する処理装置に接続されており、その処理装置により、DFB−LD2から受光器5までのレーザ光の経路を、まず基準光路用光ファイバ14、次にガス検出光路18a,18b…、と順次光の送受信を切り替えるようにしている。【0060】各検出対象ガス検出部17a〜nは、測定対象である未知濃度の種々のガス(メタン等)が充填される容器であり、検出対象とする位置に、容易に設置することができるようになっている。各ガス検出部17a〜nの一端には、送信用光ファイバ15a〜nがそれぞれ接続され、各ガス検出部17a〜nの他端には、受信用光ファイバ16a〜nがそれぞれ接続されており、DFB−LD2からのレーザ光の一部が測定対象ガス雰囲気を通過し、受光器5で受光されるようになっている。【0061】信号処理部6は、基準光路用光ファイバ14、各ガス検出光路18a〜nのいずれかを通過したレーザ光を受光する受光器5と、発振器9からの正弦波信号の周波数fに同期して受光器5の出力の位相敏感検波を行う位相検波器19と、倍周器10からの正弦波信号の周波数2fに同期して受光器5の出力の位相敏感検波を行う位相検波器20と、両位相検波器19,20の出力や出力比を記録・演算処理すると共に、光切替器13を切り替える処理装置としてのコンピュータ21とから構成されている。位相検波器19,20としては、例えば、ロックインアンプを使用することができる。【0062】さて、本発明に係る多点型ガス濃度検出方法を説明する。【0063】まず、コンピュータ21により、DFB−LD2からのレーザ光が、基準光路用光ファイバ14を介して受光器5で受光されるように、光切替器13を予め切り替えておく。【0064】レーザ部3では、レーザ光の中心波長をガス吸収波長線上に掃引するため、DFB−LD2の温度をペルチェ素子用電源7によって制御するペルチェ素子8により一定に固定し、DFB−LD2のバイアス電流を三角波掃引器12により三角波状にし、一方向に掃引させる。このとき、同時に、発振器9により正弦波状に、交流電源(変調電流)を重畳させる。【0065】このようにして発振されたレーザ光は、光切替器13、基準用光ファイバ14、光切替器13を通って受光器5で受光される。受光器5で検出された基準光路用光ファイバ14からの信号の内、発振器9からの正弦波信号の周波数fに同期した信号は位相検波器19で検出され、倍周器10の正弦波信号の周波数2fに同期した信号は位相検波器20によって検出される。両位相検波器19,20で抽出された信号は、それぞれコンピュータ21に伝送される。【0066】コンピュータ21は、後述するように、基準光路用光ファイバ14より得られる2倍波信号と基本波信号の比を、cos成分とsin成分に分けてそれぞれ求め、予め基準値として記憶しておく。【0067】その後、コンピュータ21は、DFB−LD2からのレーザ光が、ガス検出光路18aを介して受光器5で受光されるように、光切替器13を切り替える。この場合、レーザ光は、光切替器13、送信用光ファイバ15a、ガス検出部17a、受信用光ファイバ16a、光切替器13を通って受光器5で受光される。上述と同様にして、受光器5で検出されたガス検出光路18aからの信号の内、両位相検波器19,20で抽出された信号は、それぞれコンピュータ21に伝送される。【0068】以後同様にして、コンピュータ21により、光切替器13を順次切り替え、受光器5で検出された各ガス検出光路18b〜nからの信号の内、両位相検波器19,20で抽出された信号は、それぞれコンピュータ21に伝送される。【0069】コンピュータ21は、後述するように、各ガス検出光路18a〜nより得られる2倍波信号と基本波信号の比を、cos成分とsin成分に分けてそれぞれ求める。【0070】より詳細には、コンピュータ21は、多点(複数箇所)のガス濃度を安定して高精度に検出するために以下の処理を行う。【0071】受光器5からの信号は、位相検波器19,20により、その基本波成分と2倍波成分が位相検波される。位相検波器19で得られる基本波成分は、電圧をV1f、周波数変調との間に生じる位相差をθfとすれば、【0072】【数14】【0073】と表され、V1fが最大となるよう位相検波器19においてθfを調整すると、数15となる。【0074】【数15】【0075】一方、位相検波器20で得られる2倍波成分は、電圧をV2f、周波数変調との間に生じる位相差をθ2fとすれば、【0076】【数16】【0077】と表され、V2fが最大となるよう位相検波器20においてθ2fを微調整すると、数17に示す最大感度を得る。【0078】【数17】【0079】しかし、多点計測する場合、光ファイバ長の長さ(本実施の形態では、各ガス検出光路18a〜nの長さ)の違いにより、θf,θ2fが異なる。本実施の形態では、基本波成分のθfについては、ガス濃度に依存せず調整しやすいため、計測の都度、V1fが最大となるよう位相検波器19を調整する方法とした。【0080】そこで、その微調整方法を以下に説明する。説明の便宜上、基準光路用光ファイバ14とガス検出光路18aの例で説明するが、基準光路用光ファイバ14と他の各ガス検出光路18b〜nについても同様である。【0081】ガス検出光路18aより得られる信号のうち、基本波成分をPc(1f)、2倍波成分のcos成分をPc(2f)cos、2倍波成分のsin成分をPc(2f)sinとする。【0082】また、基準光路用光ファイバ14より得られる信号のうち、基本波成分をPr(1f)、2倍波成分のcos成分をPr(2f)cos、2倍波成分のsin成分をPr(2f)sinとする。【0083】コンピュータ21は、これら各信号をもとに、以下の▲1▼〜▲4▼及び図2〜図7で説明する処理を施し、ガス信号を求める。【0084】▲1▼まず、ガス検出光路18a側と基準光路用光ファイバ14側の各々において、各成分毎に、ガス検出光路18aより得られる2倍波信号と基本波信号の比Pc(cos),Pc(sin)と、基準光路用光ファイバ14より得られる2倍波信号と基本波信号の比Pr(cos),Pr(sin)とを算出する(図2)。コンピュータ21は、Pr(cos),Pr(sin)を予め基準値として記憶しておく。これらPr(cos),Pr(sin),Pr(cos),Pr(sin)は数18で示される。【0085】【数18】【0086】図2には、算出したPc(cos),Pc(sin)とPr(cos),Pr(sin)の一例を示した。図2では、横軸を光源電流(波長)にとり、縦軸を2倍波信号と基本波信号の比P(2f/1f)にとって、Pr(sin)を波形a、Pr(cos)を波形b、Pc(sin)を波形c、Pc(cos)を波形dでそれぞれ示している。【0087】▲2▼次に、光ファイバ長の違いにより生ずる信号の位相ずれを補正するため、ガス検出光路18a側と基準光路用光ファイバ14側の各々において、Pc(cos),Pc(sin)とPr(cos),Pr(sin)を、計測初期(ガス濃度に依存しない箇所、あるいはガス濃度に依存しない波長)で0点移動する{図3、図4(a)}。さらに、基準光路用光ファイバ14側のPr(cos),Pr(sin)については、0点付近でcos成分、sin成分の角度差を求め、それぞれが一致するように回転させる{図4(b)}。【0088】図3には、横軸をPc(cos)にとり、縦軸をPc(sin)にとって0点移動後のPc(cos),Pc(sin)を波形eで示している。図3では、ガス濃度に依存しない箇所は円で囲まれたX部である。【0089】同様に、図4(a)には、横軸をPr(cos)にとり、縦軸をPr(sin)にとって0点移動後のPr(cos),Pr(sin)を波形fで示している。図4(a)では、ガス濃度に依存しない箇所は円で囲まれたY部である。また、図4(b)には、横軸をPr(cos)にとり、縦軸をPr(sin)にとって、図4(a)の波形fを0点付近で各成分の角度差が一致するように回転したものを波形gで示している。図5は、図3と図4(b)を重ね合わせた図である。【0090】▲3▼さらに、回転後の基準光路用光ファイバ14側の信号Pr(cos),Pr(sin)と、ガス検出光路18a側の信号Pc(cos),Pc(sin)との差分をcos成分、sin成分でそれぞれ算出する(図6)。これら各成分の差分Ps(cos),Ps(sin)は、数19で示される。【0091】【数19】【0092】図6には、横軸を光源電流にとり、縦軸をPs(cos)あるいはPs(sin)にとって、差分信号であるPs(cos)を波形hで、差分信号であるPs(sin)を波形iでそれぞれ示している。【0093】▲4▼最後に、Ps(cos)とPs(sin)の2乗和の平方根を算出してガス信号を求め(図7)、そのガス信号の波高値の高さからガス検出部17aのガス濃度Psvを算出する。Psvは数20で示される。【0094】【数20】【0095】図7には、横軸を光源電流(波長)にとり、縦軸をPsvにとって、ガス信号であるPsvを波形jで示している。このガス信号の波高値の高さは、横軸からガス吸収の中心波長を示す縦太線と波形jの交点までの高さである。【0096】以後同様に、コンピュータ21は、基準光路用光ファイバ14と他の各ガス検出光路18b〜nの各信号についても、上述した▲1▼〜▲4▼及び図2〜図7で説明した処理を行う。【0097】このように、本発明に係る多点型ガス濃度検出方法は、コンピュータ21により、基準光路用光ファイバ14を通過し得られた信号の各成分毎の出力比2f/1f{Pr(cos),Pr(sin)}を予め基準値として記憶しておき、光切替器13を切り替え、順次、記憶した基準値と、ガス検出光路18a〜nを通過し得られた信号の各成分毎の出力比2f/1f{Pc(cos),Pc(sin)}との差分を、互いの位相差を一致させた後に行うことにより、各ガス検出光路18a〜nの光路長の違いにより生じる信号の位相ずれをそれぞれ補正しているので、光切替器を13を切り替えても、光路長によらず、多点(複数箇所)のガス信号を安定して高精度に得ることができる。【0098】基準光路用光ファイバ14を通過し得られた信号の各成分毎の出力比2f/1f(基準)を予め記憶し、この信号を差分処理に用いることで、レーザ部3、光切替器13などの光学系4、信号処理部6の波長依存性を除去でき、さらに、各ガス検出光路18a〜n側の位相θ2fを自動的に補正することとなり、安定して正確なガス信号を得ることができる。【0099】この得られたガス信号の波高値{Psvの波高値:Ps(cos)とPs(sin)の2乗和の平方根の波高値}から、例えば、予めコンピュータ21内にデータベースとして記憶されている波高値と基準ガス濃度の関係により、各ガス検出部17a〜nのガス濃度をそれぞれ安定して高精度に求めることができる。【0100】【発明の効果】以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、次のような優れた効果を発揮する。【0101】 (1)光路長によらず、多点(複数箇所)のガス濃度を安定して高精度に検出することができる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の好適実施の形態を示す概略図である。【図2】基準光路およびガス検出光路より得られる2倍波信号と基本波信号の比を、各成分毎に示す波形図である。【図3】ガス検出光路より得られる信号をガス濃度に依存しない箇所で0点移動した波形図である。【図4】図4(a)は、基準光路より得られる信号をガス濃度に依存しない箇所で0点移動した波形図である。図4(b)は、図4(a)を0点付近で各成分の位相差が一致するように回転させた波形図である。【図5】図3と図4(b)を重ね合わせた図である。【図6】回転後の基準光路より得られる信号と0点移動後のガス検出光路から得られる信号を各成分毎に差分した波形図である。【図7】図6の波形図からcos成分とsin成分の2乗和の平方根を求めて得られるガス信号の波形図である。【図8】ガスの吸収線の微分信号を示す図である。【図9】光伝送路中を伝搬するレーザの光強度を説明する図である。【符号の説明】1 多点型ガス濃度検出システム2 DFB−LD(分布帰還型半導体レーザ)5 受光器13 光切替器14 基準光路用光ファイバ15a〜n 送信用光ファイバ16a〜n 受信用光ファイバ17a〜n ガス検出部18a〜n ガス検出光路21 コンピュータ(処理装置) レーザ光を測定対象とするガス雰囲気に通して得られる透過光の強度を多点で検出し、得られた各信号からガス濃度を検出する多点型ガス濃度検出方法であって、 レーザと受光器間に光切替器を接続し、該光切替器に、ガス雰囲気を通過しない基準光路を接続すると共に、ガス雰囲気を通過する送受信光路にガス検出部を設けたガス検出光路を複数接続し、該各ガス検出光路の光路長の違いにより生じる信号の位相ずれをそれぞれ補正して多点のガス濃度を検出するに際し、前記基準光路より得られる2倍波信号と基本波信号の比と、前記各ガス検出光路より得られる2倍波信号と基本波信号の比とを、cos成分とsin成分に分けてそれぞれ求め、ガス濃度に依存しない波長の部分で位相差をそれぞれ一致させ、前記各ガス検出光路の光路長の違いにより生じる信号の位相ずれをそれぞれ補正し、前記基準光路より得られる2倍波信号と基本波信号の比と、前記各ガス検出光路より得られる2倍波信号と基本波信号の比との差分を各成分毎に行い、該cos成分とsin成分の2乗和の平方根からガス信号をそれぞれ求め、該各ガス信号から多点のガス濃度を検出することを特徴とする多点型ガス濃度検出方法。 レーザ光を測定対象とするガス雰囲気に通して得られる透過光の強度を多点で検出し、得られた各信号からガス濃度を検出する多点型ガス濃度検出システムであって、 ガス雰囲気を通過しない基準光路と、ガス雰囲気を通過する送受信光路にガス検出部を設けた複数のガス検出光路と、前記基準光路と前記各ガス検出光路を切り替えるための光切替器と、該光切替器を切り替え、前記各ガス検出光路から得られる信号と前記基準光路から得られる信号とをそれぞれ差分する処理装置とを備え、該処理装置は、前記基準光路より得られる2倍波信号と基本波信号の比と、前記各ガス検出光路より得られる2倍波信号と基本波信号の比とを、cos成分とsin成分に分けてそれぞれ求め、ガス濃度に依存しない波長の部分で位相差をそれぞれ一致させ、前記各ガス検出光路の光路長の違いにより生じる信号の位相ずれをそれぞれ補正し、前記基準光路より得られる2倍波信号と基本波信号の比と、前記各ガス検出光路より得られる2倍波信号と基本波信号の比との差分を各成分毎に行い、該cos成分とsin成分の2乗和の平方根からガス信号をそれぞれ求め、該各ガス信号から多点のガス濃度を検出することを特徴とする多点型ガス濃度検出システム。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る