タイトル: | 特許公報(B2)_カフェ酸の製造方法 |
出願番号: | 2003154358 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12P 7/42,C12F 3/10,C12R 1/66 |
塚田 定清 池田 浩二 吉元 誠 倉田 理恵 藤井 信 侯 徳興 JP 4336746 特許公報(B2) 20090710 2003154358 20030530 カフェ酸の製造方法 田苑酒造株式会社 301017765 村田 幸雄 100090985 栫 生長 100105670 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 501203344 藤井 信 500527487 侯 徳興 502096004 栫 生長 100105670 塚田 定清 池田 浩二 吉元 誠 倉田 理恵 藤井 信 侯 徳興 20090930 C12P 7/42 20060101AFI20090903BHJP C12F 3/10 20060101ALI20090903BHJP C12R 1/66 20060101ALN20090903BHJP JPC12P7/42C12F3/10C12P7/42C12R1:66 C12P 7/00-7/66 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/CAplus/EMBASE(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 米国特許第04426448(US,A) 特表平10−501216(JP,A) J.Agric.Food Chem.,Vol.50(2002)p.3718-3722 薬学雑誌,Vol.119,No.4(1999)p.237-248 BBB,Vol.66,No.11(2002)p.2336-2341 6 2004350619 20041216 7 20060421 三原 健治 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、カフェ酸の誘導体を主な成分とするポリフェノールからカフェ酸を製造する方法に関するものである。併せて、甘しょ焼酎蒸留粕やサツマイモ葉等未利用資源の有効利用に関するものである。【0002】【従来の技術】カフェ酸は機能性のカフェ酸エステル類などを合成するときの原料として利用されているが、製造が困難で多額の費用がかかり、少量しか供給されていなかった。そこで、カフェ酸の製造方法として、クロロゲン酸やその誘導体を加水分解する方法が提案されているが、カフェ酸をジエチルエーテルを用いて抽出することから、引火性の溶媒であるジエチルエーテルを多量に用いるため危険性が大きいという問題があった(例えば特許文献1。)。また、甘しょ焼酎蒸留粕は処理が困難である一方で、機能性成分を含む可能性があるものの、その有効利用が十分なされていなかった。【0003】【特許文献】特表平10−501216号公報(第18〜19頁、実施例1)【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、カフェ酸を簡便かつ安全に、しかも効率良く製造する方法を提供しようとするものである。併せて、甘しょ焼酎蒸留粕やサツマイモ葉等、未利用資源を有効に活用しようとするものである。【0005】【課題を解決するための手段】(1)本発明の第1は、甘しょ焼酎蒸留粕に含まれるカフェ酸の誘導体を主な成分とするポリフェノールに、麹菌又はその抽出液を作用させカフェ酸を製造することを特徴とする。これは、甘しょ焼酎蒸留粕の有効利用をはかるためである。【0006】(2)本発明の第2は、カフェ酸の誘導体がモノ又はジカフェオイルキナ酸であることを特徴とする前項(1)記載のカフェ酸の製造方法である。これらカフェ酸の誘導体としては、クロロゲン酸や、4,5ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸等が含まれる。【0007】(3)本発明の第3は、使用する麹菌が白麹菌又は黒麹菌であることを特徴とする前項(1)又は(2)記載のカフェ酸の製造方法である。 これら白麹菌,黒麹菌はクエン酸生成能力が高く雑菌汚染にも強いことから特にこれらを選択した。【0008】(4)本発明の第4は、甘しょ焼酎蒸留粕に含まれるカフェ酸の誘導体を主な成分とするポリフェノールに、麹菌又はその抽出液を作用させた後、合成吸着剤による吸着処理をして吸着画分を得、該吸着画分をアルコール水溶液を用いて溶出することを特徴とする前項(1)乃至(3)のいずれか1項記載のカフェ酸の製造方法である。この方法により高純度のカフェ酸を得ることができる。【0009】(5)本発明の第5は、アルコール水溶液が、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、第2ブチルアルコール、第3ブチルアルコールからなる群のうちから選ばれた1又は2以上からなる水溶液であることを特徴とする前項(4)記載のカフェ酸の製造方法である。 これは脂肪族低級アルコールを指定したものであり、水に対する溶解度の低いものは他のアルコールに混合して使用するものとする。【0010】(6)本発明の第6は、アルコール水溶液のアルコール濃度が30〜50質量%であることを特徴とする前項(4)又は(5)記載のカフェ酸の製造方法である。カフェ酸はアルコール濃度40質量%で最も良く溶出され、アルコール濃度60質量%以上又は30質量%以下ではほとんど溶出しないからである。【0013】【発明の実施の形態】甘しょ焼酎蒸留粕液(酵素処理した液)と、サツマイモもろみ酢(甘しょ焼酎蒸留粕液にセルラーゼ系酵素と20%の米麹を添加して処理し得られた液)についてポリフェノールの高速液体クロマトグラフィによる分析を行った。分析方法は以下のとおりである。試料はセルロース膜(0.20μmアドバンテック)でろ過後、高速液体クロマトグラフィにより分析した。分析条件を下記に示す。【0014】ポンプ:LC−10ATオートインジェクター:SIL−10AXL検出器:SPD−M10AVP フォトダイオードアッレイカラム:A YMC−Pack ODS−AM−302 column (4.6mm ID×150mm,5μm)温度:40℃溶媒:0.2%(V/V)蟻酸(A),メチルアルコール(B),2%B(0−15分),2%−45%Bグラジエント(15−50分),45%B(50−65分)流速:1ml/分【0015】高速液体クロマトグラフィによる分析結果は図1に示すとおりであって、図中、焼酎粕液とあるのは、甘しょ焼酎蒸留粕を酵素処理した液であり、もろみ酢とあるのは、甘しょ焼酎蒸留粕を酵素と20%麹を添加して処理したものである。甘しょ焼酎蒸留粕液には少なくとも4種類のポリフェノール化合物が確認されたが、サツマイモもろみ酢ではほぼ単一のピークが確認され、このピークはカフェ酸とコクロマトグラフィにより同定された。この結果は、甘しょ焼酎蒸留粕を麹で処理することにより、他のポリフェノールがカフェ酸に変化したものと考えられる。またサツマイモもろみ酢のカフェ酸のピークの高さは、甘しょ焼酎蒸留粕液のカフェ酸のピークの高さの約2倍程度となっている。【0016】サツマイモもろみ酢の吸着クロマトグラフィ画分のポリフェノール含量:サツマイモもろみ酢を合成吸着剤(MCI gel CHP 20P樹脂、三菱化学製、カラムサイズ2.5×50cm)に吸着後、吸着画分をメチルアルコールの濃度の異なる水溶液で溶出した。各画分のポリフェノール含量は、メチルアルコールの濃度が80%画分>40%画分>60%画分>100%画分>20%画分>非吸着画分の順であった。図2に以上の吸着クロマトグラフィの結果を示した。【0017】図2において、40%画分は高速液体クロマトグラフィによる検討の結果、カフェ酸であることが確認された。60%画分及び80%画分は未同定の成分である。【0018】【実施例1】原料の異なるもろみ酢におけるポリフェノール類の組成を高速液体クロマトグラフィで測定した結果は図3に示すとおりである。特にサツマイモもろみ酢(図3の中で米麹・イモ蒸留粕・米麹と記載されたもの)のカフェ酸含量が多いことが特徴的である。【0019】【実施例2】サツマイモの葉は高濃度のポリフェノール類を含有している。これらのポリフェノール類のほとんどはモノ及びジカフェオイルキナ酸であり、カフェ酸は極微量しか含まれていない。そこで、麹抽出液とサツマイモ葉ポリフェノール画分を調製し、これらを反応させることとした。麹抽出液は、麹4gに酢酸緩衝液(86mM NaCl+0.1M酢酸緩衝液(pH5.0))20mlを加え、20℃で3時間シェーカーで撹拌・抽出し、上澄を0.45μmフィルターでろ過して調製した。【0020】サツマイモ葉ポリフェノール画分は、試料100gを4リットルのメチルアルコールで抽出し、エバポレーターで濃縮乾固後、蒸留水500mlに溶解し、同量のヘキサンを加え、分液ロートで分層し、水層をポリフェノール画分として回収した。さらに、ゴボウ葉、ヨモギについても同様にポリフェノール画分を調製した。【0021】麹抽出液とポリフェノール画分を6:4で混合後、50℃で16時間反応させ、ポリフェノールの分解状況を高速液体クロマドグラフィで確めた。【0022】【表1】註: +++:著量,++:やや多量,+:中程度,±:少量,−:微量又はなし【0023】表1によると、サツマイモ葉のモノ及びジカフェオイルキナ酸のピークは麹抽出液処理により減少し、カフェ酸に相当するピークが著しく大きくなっている。さらに、ゴボウ葉及びヨモギのポリフェノール類も麹抽出液処理により分解され、カフェ酸が増加していることがわかった。これらの結果は、麹菌(本実施例では白麹菌)を使えば、カフェ酸誘導体を含有する作物又はこれらを加工した際に発生する残渣等から容易にカフェ酸が製造可能なことを示している。【0024】【発明の効果】 以上のように本発明では、請求項1に係る発明により、甘しょ焼酎蒸留粕に含まれるカフェ酸の誘導体を主な成分とするポリフェノールに、麹菌又はその抽出物を作用させることで、ポリフェノールを分解し、容易にカフェ酸を生成させることができた。 そして、甘しょ焼酎蒸留粕の有効利用をはかることができた。【0025】請求項2に係る発明では、カフェ酸の誘導体がモノ又はジカフェオイルキナ酸である場合、容易にカフェ酸が生成させることがわかった。【0026】請求項3に係る発明では、麹菌が焼酎製造用に広く用いられている白麹菌又は黒麹菌が有効であることを示された。【0029】 請求項4に係る発明では、生成したカフェ酸を合成吸着剤で処理することにより、高純度のカフェ酸が得られることが示された。【0030】 請求項5に係る発明では、高純度のカフェ酸を得るために用いる溶媒が脂肪族低級アルコールを用いることとし、比較的安全性の高い条件で操作が行われることが示された。【0031】 請求項6に係る発明では、使用するアルコール濃度が30〜50質量%の範囲であることから操作上、特に引火の危険性は低いことが示された。【図面の簡単な説明】【図1】焼酎粕液ともろみ酢のポリフェノール組成の比較図である。【図2】吸着クロマトグラフィ溶出画分のポリフェノール含量を示す図である。【図3】原料の異なるもろみ酢におけるポリフェノール類組成の比較図である。 甘しょ焼酎蒸留粕に含まれるカフェ酸の誘導体を主な成分とするポリフェノールに、麹菌又はその抽出液を作用させることを特徴とするカフェ酸の製造方法。 カフェ酸の誘導体がモノ又はジカフェオイルキナ酸であることを特徴とする請求項1記載のカフェ酸の製造方法。 麹菌が白麹菌又は黒麹菌であることを特徴とする請求項1又は2記載のカフェ酸の製造方法。 甘しょ焼酎蒸留粕に含まれるカフェ酸の誘導体を主な成分とするポリフェノールに、麹菌又はその抽出液を作用させた後、合成吸着剤による吸着処理をして吸着画分を得、該吸着画分をアルコール水溶液を用いて溶出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のカフェ酸の製造方法。 アルコール水溶液が、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、第2ブチルアルコール、第3ブチルアルコールからなる群のうちから選ばれた1又は2以上からなる水溶液であることを特徴とする請求項4記載のカフェ酸の製造方法。 アルコール水溶液のアルコール濃度が30〜50質量%であることを特徴とする請求項4又は5記載のカフェ酸の製造方法。