タイトル: | 特許公報(B2)_1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートの製造方法 |
出願番号: | 2003152849 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07D 251/34 |
村井 信之 坂本 幸宏 狩野 直喜 JP 4392827 特許公報(B2) 20091023 2003152849 20030529 1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートの製造方法 四国化成工業株式会社 000180302 村井 信之 坂本 幸宏 狩野 直喜 20100106 C07D 251/34 20060101AFI20091210BHJP JPC07D251/34 E C07D 251/34 CAplus/REGISTRY(STN) 特開2001−011057(JP,A) 特表2001−502003(JP,A) 2 2004352662 20041216 9 20051202 榎本 佳予子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、エポキシ樹脂の硬化剤やポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の原料として有用な、化1に示される1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートの製造方法に関するものである。【0002】【化1】【0003】【従来の技術】特許文献1には、化2に示されるシアヌル酸三アルカリ金属塩と、化3に示されるハロゲン化酪酸エステルを出発原料として、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートを製造する方法が開示されている。【0004】【化2】【0005】【化3】(但し、式中のXは、塩素、臭素、ヨウ素を表わし、Rは、低級アルキル基を表わす。)【0006】この製造方法によれば、シアヌル酸三アルカリ金属塩とハロゲン化酪酸エステルを反応させて、化4に示される1,3,5−トリス(2−カルボキシプロピル)イソシアヌレートのエステル化合物を合成し、次いで該エステル化合物を塩酸、硫酸等の鉱酸存在下で加水分解することにより、目的とする1,3,5−トリス(2−カルボキシプロピル)イソシアヌレートを得ることができる。【0007】【化4】(但し、Rは、低級アルキル基を表わす。)【0008】しかしながら、前記の製造方法は、出発原料となるシアヌル酸三アルカリ金属塩及びハロゲン化酪酸エステルが工業用薬品として容易に入手できないので、これら原料を別途製造しなければならず、また、中間体である1,3,5−トリス(2−カルボキシプロピル)イソシアヌレートのエステル化合物を一旦製造し、これを加水分解しなければならない等、製造工程数が多くなり甚だ煩わしいものであった。更には、収率も低く、製造コストが高くなるという難点があった。【0009】【特許文献1】特開2001−110573号公報【0010】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、工業用薬品として容易に入手できる原料を使用し、製造工程が少なく、高収率、低コストで得ることができる1,3,5−トリス(2−カルボキシプロピル)イソシアヌレートの製造方法を提供することを目的とする。【0011】【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、イソシアヌル酸とγ−ブチロラクトンを第三級アミン化合物の存在下において、溶媒中で反応させることにより、一工程で且つ高収率で1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートが得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。【0012】【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明は、化5の反応式に示されるとおり、イソシアヌル酸とγ−ブチロラクトンを、第三級アミン化合物の存在下において、溶媒中で加熱反応させることにより、1,3,5−トリス(2−カルボキシプロピル)イソシアヌレートを製造する方法に関するものである。【0013】【化5】【0014】本発明で使用する三級アミン化合物の例としては、N、N’−ジメチルピペラジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(通称:DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、N、N、N’、N’−テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン等が挙げられるが、沸点が100℃以上であることが好ましい。トリメチルアミンの如き沸点が100℃未満のアミン化合物の場合には、加熱反応中にアミンが揮発し、反応収率の低下を招くので好ましくない。【0015】アミン化合物がピペラジン、エチレンジアミンの如き第一級アミンまたは第二級アミンの場合には、該アミン化合物が活性な水素原子を有するため、ラクトン化合物と反応して酸アミドの如き副生成物を生じるため使用することができない。また、ピリジン、N,N−ジメチルアニリンの如き芳香族アミン化合物は、反応活性が劣るため好ましくない。【0016】本発明で使用する溶媒の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N、N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジエチレングルコールジメチルエーテル(ジグライム)等が挙げられる。なお、トルエン、キシレンの如き非極性溶媒は、イソシアヌル酸の溶解度が低いため好ましくない。【0017】本発明の製造方法における反応温度は、反応時の溶媒に対するイソシアヌル酸の溶解度を高めるために100℃以上とすることが好ましいが、反応温度を180℃より高くした場合には、加熱に要するエネルギーを徒に消費するばかりか、副反応による収率の低下を招く虞がある。【0018】本発明の製造方法により得られる1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(以下、本化合物という)は、分子内に耐熱性に優れるトリアジン環構造を有するため、樹脂に配合した場合には、従来の多価カルボン酸とは異なって優れた特性が得られることが期待される。例えば、本化合物をエポキシ樹脂の硬化剤として使用した場合には、従来の多価カルボン酸型硬化剤を使用したものに比べ、優れた耐熱性、低温硬化性、透明性を有するエポキシ樹脂硬化物が得られることが知られている(特開2001−11057号公報)。【0019】また、本化合物を架橋剤として、エポキシ変成アクリル樹脂と配合した場合には、低温硬化性および塗膜の耐擦傷性に優れた熱硬化性アクリル樹脂系粉体塗料組成物を得ることができる(特願2001−340981号)。【0020】前記エポキシ変成アクリル樹脂は、グリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマーおよび(メタ)アクリレートモノマーを必須成分とし、必要に応じてこれら以外の重合性不飽和モノマーを加えて共重合することによって得られるものである。グリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。【0021】(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアクリル酸、メタクリル酸の炭素数1〜24のアルキルエステルまたは環状アルキルエステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。【0022】その他重合可能な不飽和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等のビニル芳香族化合物、ヒドロキシエチルビニルエーテル等の水酸基含有不飽和モノマー類等が挙げられる。【0023】また、本化合物と併用しうる架橋剤として、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、エイコサン二酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート等のカルボン酸化合物が挙げられる。これらのうち、特にドデカン二酸が好適である。また、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートを併用することにより、艶消し塗膜を得ることができる。【0024】このような粉体塗料は、エポキシ変成アクリル樹脂と架橋剤であるカルボン酸化合物が、加熱により付加反応を起こして硬化するものである。従って、エポキシ変成アクリル樹脂と、本化合物および他のカルボン酸化合物との配合割合は、グリシジル基とカルボキシル基の比が基本的に1:1になるように調整されるべきである。【0025】また、着色顔料、着色染料等の着色成分を配合することもできる。該着色成分として、例えば二酸化チタン、弁柄、黄色酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アゾ系顔料などの着色顔料および染料等を例示することができる。【0026】更に、上記着色成分の他に、必要に応じて粉体塗料の分野において通常用いられる各種添加剤を使用することができる。該添加剤としては、例えば、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウムなどの体質顔料、AEROSIL130、AEROSIL 200(日本アエロジル株式会社製)等の流動付与剤、ジメチルシリコーンやメチルシリコーンなどのシリコーン類およびアクリルオリゴマーなどの表面調整剤、ポリアクリレートまたはシリコーンを基礎とする流展剤、ベンゾインやベンゾイン誘導体などの発泡防止剤、可塑剤、帯電制御剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料分散剤、難燃剤、またアミン化合物、イミダゾール化合物、カチオン重合触媒等の硬化促進剤(または硬化触媒)などを例示することができる。【0027】【実施例】以下、実施例および参考例により本発明を具体的に説明するが、実施例および参考例において使用した主原料、評価試験方法は以下のとおりである。【0028】[原料]・イソシアヌル酸(四国化成工業社製)・γ−ブチロラクトン(和光純薬工業社製、試薬)・1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(和光純薬工業社製、試薬)・エポキシ変成アクリル樹脂(三井化学社製、「アルマテックスPD7690」、エポキシ当量471)・1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート(四国化成工業社製)・ドデカン二酸(和光純薬工業社製、試薬)・二酸化チタン(デュポン社製、「TiPure(タイピュア)R960」)・流展剤(Estron Chemical社製、「Resiflow P−67」)【0029】[低温硬化性の評価]JIS C2105に準じて、120、140、160、180℃におけるゲルタイム(熱板法)を測定した。各温度でのゲルタイムが短いものほど、低温硬化性に優れていると判定した。【0030】[塗膜の作成法]JISK5400に準じて、粉体塗料組成物を表面処理した鋼板SPCC−SB上に静電塗装し、120、140、160、180℃の各温度で加熱硬化させて調製した。【0031】[塗膜外観の評価]目視により、塗膜の平滑感を以下の3段階にて評価した。○;良好、△;若干の凹凸、×;大きな凹凸【0032】[塗膜の艶消し効果の評価]塗膜の60度鏡面光沢(JIS Z8741)を光沢度計(日本電色工業(株)製VGS−1D)で測定し、つや消し効果を評価した。【0033】[塗膜硬度の評価]JISK−5400(鉛筆引っ掻き試験)に準じて行った。【0034】[密着性の評価]JISK−5400(碁盤目試験)に準じて行った。【0035】[実施例1]<1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートの調製>環流器および攪拌機を備えたフラスコに、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記)50mlとイソシアヌル酸10g(0.077モル)を投入し攪拌を行いながら、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(以下、DBUと略す)18.5g(0.122モル)を添加した。反応液を130℃に加熱後、γ−ブチロラクトン22g(0.256モル)を添加し、130℃を維持しながら6時間に渡って反応を継続した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、35%塩酸57gを加えた後、減圧蒸留により溶媒のDMFを除去した。フラスコに残った濃縮液に1,4−ジオキサン200mlを加えて2時間加熱還流した。1,4−ジオキサンの層を分離し、濾過後、減圧蒸留により1,4−ジオキサンを除去し、クロロホルム10mlを加えて析出した結晶を濾取し、乾燥することにより、目的物である1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートの白色結晶21.3gを得た(収率71.0%)。なお、得られた生成物の物性およびスペクトルデータは下記の通りであり、標本のデータと一致した。【0036】融点:116.2℃(DTA)熱分解開始温度:366.7℃(DTA)IR(KBr):3000〜2500,1746,1703cm-1(COOH)、1684,766cm-1(イソシアヌレート)NMR(DMSO-d6+CDCl3):δ1.78〜2.60ppm(m,4H,CH2CH2-COOH)、δ3.89ppm(t,2H,N-CH2)【0037】特開2001−11057号公報に記載された製造方法によれば、イソシアヌル酸の三ナトリウム塩から、1,3,5-トリス(3-カルボキシプロピル)イソシアヌレートのエチルエステル化合物を合成した場合の収率が83%である。また前記エチルエステル化合物を加水分解して1,3,5-トリス(3-カルボキシプロピル)イソシアヌレートを得た場合の収率が72%であるので、イソシアヌル酸の三ナトリウム塩から、1,3,5-トリス(3-カルボキシプロピル)イソシアヌレートを合成する場合の収率は60%である。これに対して、本発明の製造方法では、イソシアヌル酸の三ナトリウム塩を合成する必要がなく、且つイソシアヌル酸から一工程で1,3,5-トリス(3-カルボキシプロピル)イソシアヌレートを70%以上の高収率で得ることができる。【0038】[参考例1]64.5重量部のエポキシ変成アクリル樹脂、15.7重量部の実施例1において調製した1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、21.5重量部の二酸化チタン及び1.0重量部の流展剤を混合した。これらをドライブレンドし、100℃に温調した二本ロールミルで5分間溶融混練したのち、粉砕して熱硬化性アクリル樹脂系粉体塗料を調製した。この粉体塗料のゲルタイムを測定し、低温硬化性を評価した。また前記粉体塗料を加熱硬化させて塗膜を調製し、塗膜の外観、光沢度、硬度および密着性を評価した。これらの試験結果は表1に示したとおりであった。【0039】[参考例2]64.5重量部のエポキシ変成アクリル樹脂、4.0重量部の実施例1において調製した1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、10.5重量部のドデカン二酸、21.5重量部の二酸化チタン及び1.0重量部の流展剤を混合し、これらをドライブレンドした以外は、参考例1と同様にして熱硬化性アクリル樹脂系粉体塗料を調製し、この粉体塗料および該粉体塗料の塗膜について、評価試験を行った。これらの試験結果は表1に示したとおりであった。【0040】[参考例3]64.5重量部のエポキシ変成アクリル樹脂、4.0重量部の実施例1において調製した1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、10.5重量部の1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、21.5重量部の二酸化チタン及び1.0重量部の流展剤を混合し、これらをドライブレンドした以外は、参考例1と同様にして熱硬化性アクリル樹脂系粉体塗料を調製し、この粉体塗料および該粉体塗料の塗膜について、評価試験を行った。これらの試験結果は表1に示したとおりであった。【0041】[参考例4]1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートの代わりに、ドデカン二酸を用いた以外は、参考例1と同様にして熱硬化性アクリル樹脂系粉体塗料を調製し、塗料および塗膜の評価試験を行った。これらの試験結果は表1に示したとおりであった。【0042】[参考例5]64.5重量部のエポキシ変成アクリル樹脂、10.0重量部の1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、4.0重量部のドデカン二酸、21.5重量部の二酸化チタン及び1.0重量部の流展剤を混合し、これらをドライブレンドした以外は、参考例1と同様にして熱硬化性アクリル樹脂系粉体塗料を調製し、この粉体塗料および該粉体塗料の塗膜について、評価試験を行った。これらの試験結果は表1に示したとおりであった。【0043】【表1】【0044】表1の試験結果より、参考例1〜3において調製した熱硬化性アクリル樹脂系粉体塗料は、参考例4〜5のものに比べてゲルタイムが短くなっており、低温硬化性に優れているものと認められる。また、参考例1〜3の塗膜の硬度は、参考例4〜5のものに比べて高くなっており、耐擦傷性に優れているものと認められる。【0045】【発明の効果】本発明によれば、工業用薬品として容易に入手できる原料を使用して、一工程で且つ高収率、低コストで1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートを製造することができる。また、熱硬化性アクリル樹脂粉体塗料の原料として好適に使用することができる等、産業上の利用効果は多大である。 イソシアヌル酸とγ−ブチロラクトンを反応させることを特徴とする1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートの製造方法。 イソシアヌル酸とγ−ブチロラクトンを、第三級アミン化合物の存在下において溶媒中で反応させることを特徴とする1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートの製造方法。