タイトル: | 特許公報(B2)_DNA増幅反応の効率向上方法 |
出願番号: | 2003140577 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12Q 1/68 |
小泉 雄史 濱野 葉子 山本 敏 JP 4322554 特許公報(B2) 20090612 2003140577 20030519 DNA増幅反応の効率向上方法 株式会社ニチレイフーズ 505126610 棚井 澄雄 100106909 志賀 正武 100064908 小泉 雄史 濱野 葉子 山本 敏 20090902 C12N 15/09 20060101AFI20090813BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20090813BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/68 A C12N 15/00-15/90 C12Q 1/68 G-Search JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 国際公開第02/057487(WO,A1) 国際公開第01/094638(WO,A1) 国際公開第99/024452(WO,A1) Genome Research, 1997, Vol.7, p.389-398 第23回日本食品微生物学会学術総会講演要旨集(2002)p.42 2 2004337124 20041202 14 20060518 特許法第30条第1項適用 第25回日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集(2002年11月25日)第25回日本分子生物学会年会組織委員会発行 第689ページに発表 三原 健治 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、DNA増幅反応の効率向上方法及びオリゴヌクレオチドのDNAへの特異的結合性向上方法に関する。【0002】【従来の技術】DNAの増幅は、遺伝子の検出の際等に極めて重要であり、このうちPCR法は、DNAの目的とする一部分の塩基配列のみを大幅に増幅させることができる方法であり、バイオテクノロジーをはじめ、多くの分野で利用されている。【0003】【特許文献1】特開平8−256798号公報【非特許文献1】イニスら(Innis M.A. et al.)、PCRプロトコール:ア・ガイド・トゥ・メソッド・アンド・アプリケーション(PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications)、(米国)、アカデミック・プレス、1990年、p.39-45【0004】【発明が解決しようとする課題】ところで、特異的な検出プライマーをデザインする場合、プライマーは、標的配列に特異的な塩基ポジションを含むことが必要である。しかしながら、そのようなポジションを含む配列がプライマーとして適していないことがしばしばある。すなわち、例えばat含量が極端に高かったり、フォワードとリバースの融解温度(Tm)が合わないような場合には、増幅効率が悪くなるため、プライマーとして実用的でない。特に、微量のDNAを検出しようとする場合には非常に不利である。【0005】また、PCR法では、増幅効率を向上させるため、増幅の至適温度条件を見出す必要がある。しかしながら、至適温度条件を見出すには、煩雑な予備実験が必要である。【0006】したがって、本発明は、至適温度条件を見出すための操作を簡略化でき、かつDNA増幅反応の効率向上方法を提供することを目的とする。また、本発明は、オリゴヌクレオチドのDNAへの特異的結合性向上方法を提供することを目的とする。【0007】本発明者らは、驚くべき事実を見出した。すなわち、デジェネレートプライマーの5’末端に、非特異的配列が結合していると、PCRの増幅効率が上昇し、当該5’末端配列を除去してPCRを行うと、PCRの増幅効率はかえって低下した。【0008】そこで、本発明者らはさらに研究した結果、全く意外にも、非特異的配列のみならず、LCRed705(商標名)等の化合物を5’末端に結合させても、PCRの増幅効率を向上させることができ、結果としてDNA増幅反応の効率を向上させることができることを見出し、本発明を完成した。本発明においては、5’末端の配列や化合物により、アニーリングの至適温度範囲が広がるため、アニーリング条件の検討等の予備実験を簡略化でき、操作を大幅に簡素化することができる。【0009】【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の第一の発明は、DNA増幅反応の効率向上方法であって、前記のDNA増幅反応がPCRであり、プライマーの5’末端に、LCRed705(商標名)、炭素数が3の炭化水素基をリンカーとするアミノ基、リン酸基、ビオチン、DIG、DNP、TAMRA、Texas−Red、ROX、XRITC、ローダミン、LCRed640(商標名)、BODIPY564/570、BODIPY500/510(商標名)、BODIPY530/550、及びBODIPY581/591(以下、「特定化合物群」という)からなる群より選ばれる化合物を結合したものをプライマーとして用いることを特徴とするDNA増幅反応の効率向上方法を提供するものである。【0010】 前記のPCRは、非対称PCR又はデジェネレートPCRであることが好ましい。【0011】【発明の実施の形態】本発明の第一の発明及び第二の発明(参考)において、特定化合物群、特定塩基より選ばれる化合物を結合させるプライマー又は特定化合物群より選ばれる化合物を結合させるオリゴヌクレオチドとしては、通常のDNAの増幅に用いることができるプライマー又はオリゴヌクレオチドであれば、特に制限はない。また、本発明においては、DNAの増幅効率を向上させることができるのであるから、通常のDNAの増幅には用いることができないプライマーも用いることができる。 なお、本願明細書において、本発明の第二の発明(参考)とは、オリゴヌクレオチドのDNAへの特異的結合性向上方法であって、DNAにハイブリダイズさせるものとして、オリゴヌクレオチドの5’末端に、特定化合物群より選ばれる化合物を結合したものを使用することを特徴とする、オリゴヌクレオチドのDNAへの特異的結合性向上方法である。【0012】 本発明の第一の発明及び第二の発明(参考)において、特定化合物群は、DNA増幅法により増幅させる標的配列に対して非特異的である。DIGとはジゴキシゲニンであり、DNPとはジニトロフェニルであり、TAMRAとはカルボキシテトラメチルローダミンであり、Texas−Redとは1H,5H,11H,15H−Xantheno[2,3,4−ij:5,6,7−i’j’]diquinolizin−18−ium,9−[2(or4)−[[[6−(2,5−dioxo−1−pyrrolidinyl)oxy]−6−oxohexyl]amino]sulfonyl]−4(or2)sulfophenyl]−2,3,6,7,12,13,16,17−octahydro−,innersaltであり、ROXとはローダミンXであり、XRITCとはローダミンXイソチオシアネートであり、FITCとはフルオレセインイソチオシアネートであり、6−FAMとは6−カルボキシフルオレセインであり、TETとはテトラクロロフルオレセインであり、BODIPY564/570とは4,4−difluoro−5−styryl−4−bora−3a,4a−diaza−s−indacene−3−propionicacid,succinimidylesterであり、BODIPY530/550とは4,4−difluoro−5,7−diphenyl−4−bora−3a,4a−diaza−s−indacene−3−propionicacid,succinimidylesterであり、BODIPY581/591とは4,4−difluoro−5−(4−phenyl−1,3−butadienyl)−4−bora−3a,4a−diaza−s−indacene−3−propionicacid,succinimidylesterである。【0013】また、本発明の第一の発明において、特定塩基は、ハイブリダイズさせる塩基配列に対して非特異的な配列でも特異的な配列でもよい。ここで、「特異的である場合」とは、プライマーが鋳型と相補的に結合する領域とは連続しない領域と、当該付加配列とが相補性を有している場合のみならず、プライマ-が鋳型と相補的に結合する領域と連続する領域(特に鋳型の3’末端側(プライマ-の5’末端側に相当する領域))と、当該付加配列とが相補性を有している場合も含まれる。後者の手法は、従来においてもプライマーのTm値を調整するために行われることがあったが、本発明においては、増幅効率を上昇させるために用いられている。【0014】一方、「非特異的である場合」とは、プライマーが鋳型の配列とは無関係である場合、即ち付加配列が、標的核酸との間に連続してGC、ATの塩基対でもって二本鎖を形成しない配列を有していることを意味する。このように非特異的な場合であっても、本発明においてはプライマーのアニールの上限温度上昇に貢献することが可能となっている。【0015】このように本発明の第一の態様において、特定塩基は、ハイブリダイズされる塩基配列(鋳型DNA)に対して非特異的な配列でもよく、特異的でもよいが、増幅効率の上昇の点では、非特異的な配列の場合が好ましい。【0016】 本発明の第一の発明においては、特定化合物群、特定塩基から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。 第二の発明(参考)においては、特定化合物群から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。【0017】 本発明の第一の発明及び第二の発明(参考)においては、オリゴヌクレオチド又はプライマーと特定化合物群より選ばれる化合物とをリンカーを介して結合させてもよい。リンカーとしては、例えば炭素数が2〜16の炭化水素基等が挙げられる。【0018】本発明の第一の発明において、プライマーの5’末端に結合するオリゴヌクレオチド(付加配列)は、gc含量が高いことが好ましい。具体的には、gc含量が50%以上であることが好ましい。gc含量は高い方が、DNA増幅反応の効率が高くなる傾向があり、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、そして100%とすることが可能である。gc含量をこれらの何れの割合で選択するかは、付加配列自体の長さ、付加配列自体と増幅する配列やプライマーとの間に相補性が生じないようにすること等を考慮することにより、当業者が適宜選択することができるものである。付加配列が長くなりすぎると、DNA増幅反応の効率は低下する場合もあるため、付加配列は40塩基以下であることが好ましい。また、プライマーダイマーを形成させにくくするため、gとcの一方の塩基の含有量が50%以上の割合、aとtの一方の塩基の含有量が50%以上の割合で含まれることが好ましい。【0019】具体的な好ましい塩基配列として、例えば以下の2-8塩基のものを例示することができる。また、9塩基以上の配列については、以下の2〜8塩基のものを適宜組み合わせればよい。なお、Sとはc又はgを表し、Wとはa又はtを表す。gとcの一方の塩基の含有量が50%以上の割合、aとtの一方の塩基の含有量が50%以上の割合であることが好ましい。SS、SW、WS、SSS、SSW、SWS、WSS、SSSS、SSSW、SSWS、SWSS、WSSS、SSSSS、SSSSW、SSSWS、SSWSS、SWSSS、WSSSS、SSSSSS、SSSSSW、SSSSWS、SSSWSS、SSWSSS、SWSSSS、WSSSSS、SSSSSSS、SSSSSSW、SSSSSWS、SSSSWSS、SSSWSSS、SSWSSSS、SWSSSSS、WSSSSSS、SSSSSSSS、SSSSSSSW、SSSSSSWS、SSSSSWSS、SSSSWSSS、SSSWSSSS、SSWSSSSS、SWSSSSSS、WSSSSSSS、SSSSSSWW、SSSSSWSW、SSSSWSSW、SSSWSSSW、SSWSSSSW、SWSSSSSW、WSSSSSSW、SSSSSWWS、SSSSWSWS、SSSWSSWS、SSWSSSWS、SWSSSSWS、WSSSSSWS、SSSSWWSS、SSSWSWSS、SSWSSWSS、SWSSSWSS、WSSSSWSS、SSSWWSSS、SSWSWSSS、SWSSWSSS、WSSSWSSS、SSWWSSSS、SWSWSSSS、WSSWSSSS、SWWSSSSS、WSWSSSSS、WWSSSSSSまた、具体的には、agtc、aagt、ggac又はgggcの繰り返し単位からなる20塩基までのオリゴヌクレオチドを例示することができる。【0020】また、付加配列は2次構造を形成して増幅反応を阻害しないような配列を有することが好ましいが、より具体的には配列間で塩基対形成が低いことが好ましく、塩基対形成がないことが特に好ましい。少なくとも、連続して塩基対が形成されないことが好ましい。さらに、配列が付加されたプライマーに対しても、塩基対形成が低いことが好ましく、塩基対形成が無いことが特に好ましい。【0021】本発明の第一の発明においては、上記特定化合物群及び特定塩基より選ばれる化合物を、常法に従ってプライマーの5’末端に結合させることができる。特定化合物群、特定塩基の2種以上を結合させる場合には、まず化合物を結合させてから特定塩基の配列を含んだオリゴヌクレオチドを合成してもよいし、特定塩基の配列を含んだオリゴヌクレオチドを合成してから化合物を結合させてもよい。2種以上の化合物群、特定塩基を結合させるものとしては、例えばFITCにgggcの2回繰り返し配列を結合させたものが挙げられる。【0022】 第二の発明(参考)においては、上記特定化合物群より選ばれる化合物を、常法に従ってオリゴヌクレオチドの5’末端に結合させることができる。特定化合物群、特定塩基の2種以上を結合させる場合には、まず化合物を結合させてから特定塩基の配列を含んだオリゴヌクレオチドを合成してもよいし、特定塩基の配列を含んだオリゴヌクレオチドを合成してから化合物を結合させてもよい。【0023】本発明の第一の発明は、プライマーに特定化合物群、特定塩基より選ばれる化合物を結合させることにより、プライマーの増幅産物との結合速度や結合安定性が向上するため、通常のPCRに適用することが好ましい。この結合速度や結合安定性の向上は、特定塩基が鋳型DNAに対して非特異的な場合であっても観察される(例えば表1、表2の結果を参照)。【0024】従って本発明の方法は、非対称PCRに好適に適用することができる。非対称PCRは、標的DNA断片を直接シークエンスしたいとき等、一本鎖DNAを迅速に増幅する目的に適した方法である。すなわち、通常のPCRでは、用いる1組のプライマーの濃度を等しくするが、非対称PCRでは、一方のプライマーの濃度を他方の濃度の数倍から数十倍にしておく。このようにしておくと、他方のプライマーのみが先に消費されるため、残りのPCRは、過剰な一方のプライマーのみから進行し、一方のDNA鎖が大量に生産される。また、非対称PCRの一種であるサーマルアシメトリックPCR法は、1組のプライマーのTmの差が10℃以上あるものを用い、まずTmが低い方のプライマーもアニールする条件でPCRを行い、次にTmが高い方のプライマーのみがアニールする条件でPCRを行う。【0025】しかしながら、非対称PCRには、以下のような問題点がある。すなわち、鋳型になるDNAとプライマーの濃度を最適化しないと、一本鎖の増幅は低いものとなる(非特許文献1)。しかしながら、最適化するためには、煩雑な予備実験が必要である。また、サーマルアシメトリックPCRでは、10℃以上の極端なアニール温度差を有する特異プライマーのセットを作成しなければならないが、これは必ずしも容易ではない。【0026】さらに、一本鎖DNAを迅速に増幅する他の方法として、1組のプライマーの増幅能力の差を利用する方法がある。例えば、DNAとRNAのハイブリッドプライマーを用いる。RNAプライマーは、伸長反応への寄与がDNAプライマーより弱いので、該ハイブリットプライマーを用いてPCRを行うと、純粋なDNA側の増幅が大きくなり、DNAの一本鎖が得られる。【0027】しかしながら、この方法は、RNA側の増幅能力が低い結果としてDNA一本鎖が得られたのであり、所望するDNAの増幅能力が向上したのではないという問題を有する。【0028】しかしながら、本発明の第一の発明においては、1組のプライマーのうちの1本についてのみ特定化合物群、特定塩基より選ばれる化合物を結合させておくことにより、両プライマーの増幅効率に大きな差が生じるため、鋳型になるDNAとプライマーの濃度の最適化という煩雑な操作をする必要がない。このため、本発明の第一の発明を非対称PCRに適用することにより、1本鎖DNAの増幅効率を大幅に向上させることができる。また、本発明の第一の発明は、プライマーの至適温度範囲を広げることができるため、サーマルアシメトリックPCRにおいて、一方のプライマーのTm値を所望の値に変化させるために本発明を適用することも可能である。【0029】従来の非対称PCRは、片方のプライマーの合成を阻害することにより、すなわち全体としてのPCRの効率を低下させることにより行われてきた。これに対し、本発明の第一の発明は、片方のプライマーの増幅効率を向上させることによって非対称PCRを行うものである。すなわち、通常のPCRと比較して、増幅効率が下がることがない。したがって、本発明の第一の発明は、病原体等の微量のDNAを迅速、簡便に検出、型別する場合のように、1本鎖の生成とともに高い増幅効率が必要な場合に特に有効である。【0030】また、本発明の方法は、デジェネレートPCRに適用することが好ましい。デジェネレートPCRにおいては、例えば数100〜数1000種類程度のプライマーを混合して用いるため、混在するそれぞれの配列で至適アニール温度が異なる。そのため、増幅温度の設定が比較的難しい。しかしながら、このような問題も、本発明により回避可能である。また、アニール温度を高く設定することが可能であるため、非特異的な増幅を抑えることができ、効率よく増幅することができる。【0031】本発明の第一の発明に用いる特定化合物群より選ばれる化合物が結合したプライマーは、プローブとして用いることもできる。【0032】 第二の発明(参考)は、オリゴヌクレオチドの5’末端に、特定化合物群からより選ばれる化合物を結合したものを使用することにより、オリゴヌクレオチドのDNAへの特異的結合性を向上させるものである。すなわち、かかる化合物を結合したオリゴヌクレオチドは、かかる化合物が結合していないオリゴヌクレオチドと比較して、DNAへの結合速度や結合安定性が向上する。【0033】【実施例】次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。【0034】実施例1増幅可能なアニール上限温度の比較腸炎ビブリオ検出用プライマーの5’末端に、特定化合物群より選ばれる化合物を結合させたものを用い、GradientBlockModuleを装着したHYBAID社製PCRExpressを用い、下記条件でPCRを行うことにより、増幅可能なアニール上限温度を測定した。腸炎ビブリオ検出用プライマーとして、フォワード側を配列番号1で表される塩基配列、リバース側を配列番号2で表される塩基配列を用いた。該フォワード側プライマー及び該リバース側プライマーの5’末端に、表1に示す各特定化合物群を結合させた。これとは別に、腸炎ビブリオのタイプストレイン(IFO12711T)から抽出した染色体DNAを鋳型とし、rpoD遺伝子増幅用ユニバーサルプライマー(特許文献1:配列番号3、4)を用いてPCRを行い、増幅産物を調製した。次いで、該増幅産物を鋳型とし、上記各特定化合物群結合プライマーを用いて複数アニール温度条件のPCRを行った。【0035】PCRの条件は、以下の通りである。(1)Taqポリメレース(Applied Biosystems社製AmpliTaqGold)の活性化:95℃で10分;(2)変性:94℃で1分;(3)アニール:55.1℃、55.5℃、56.3℃、57.7℃、59.4℃、61.4℃、63.3℃、65.3℃、67.6℃、69.0℃、69.7℃及び70.2℃で30秒;(4)伸長反応:72℃で1分上記(2)-(4)を40サイクル繰り返す。(5)伸長反応:72℃で10分;(6)冷却:4℃まで冷却次いで、得られた増幅断片をアガロースゲル電気泳動により解析し、アニール上限温度を決定した。なお、プライマーに特定化合物群を結合させないものをコントロールとした。アニール上限温度及びアニール上限温度のコントロールに対する上昇温度を表1、及び表2に示す。【0036】【表1】【0037】【表2】【0038】特定化合物群を結合させたプライマーは、アニール上限温度が上昇し、増幅効率が向上したことが確認された。【0039】 実施例2(参考) 増幅可能なアニール上限温度の比較 プライマーとして、フォワード側を配列番号3で表される塩基配列、リバース側を配列番号4で表される塩基配列を用いた。該プライマーの5’末端に、表2に示す塩基配列を繰り返し単位とした4mer−20merを結合させたものを用い、GradientBlockModuleを装着したHYBAID社製PCRExpressを用い、腸炎ビブリオのタイプストレイン(IFO12711T)から抽出した染色体DNAを鋳型とし、アニール時間を1分として、実施例1と同様の条件でPCRを行い、増幅可能なアニール上限温度を測定した。なお、プライマーに塩基を結合させないものをコントロールとした。また、gc含量が0%であるaaatを繰り返し単位とした4mer−20merを結合させたものを比較例とした。アニール上限温度及びアニール上限温度のコントロールに対する上昇温度(かっこ内)を表3に示す。【0040】【表3】【0041】gc含量が25%以上で4塩基以上のオリゴヌクレオチドを結合させたプライマーは、増幅効率が向上し、特にgc含量が高い塩基を結合させたプライマーにおいてその効果が著しかった。【0042】 実施例3 プライマーの5’末端に特定化合物群、特定塩基より選ばれる化合物を結合させたことによる増幅効率の検討 プライマーとして、フォワード側を配列番号1で表される塩基配列、リバース側を配列番号2で表される塩基配列を用いた。該フォワード側プライマー及び該リバース側プライマーの5’末端に、cy3、cy5、ビオチン、ggacを繰り返し単位とする12mer又はaagtを繰り返し単位とする12merを結合させたものを用い、LightCyclerSystem(ロシュ・ダイアグノスティック(株)製)を用い、腸炎ビブリオのタイプストレイン(IFO 12711T)から抽出した染色体DNAを鋳型とし、以下の条件でリアルタイムPCRを行うことにより、PCRサイクル数と蛍光強度との関係を調べた。【0043】PCRの条件は、以下の通りである。(1)変性:95℃で1.5分;(2)変性:95℃で0秒;(3)アニール:60℃で0秒、5秒もしくは10秒又は64℃で5秒;(4)伸長反応:72℃で15秒上記(2)-(4)を40サイクル繰り返す。次いで、各サイクルで得られた増幅断片の蛍光強度を測定した。なお、プライマーに特定塩基より選ばれる化合物を結合させないものをコントロールとした。結果を図1-4に示す。なお、この蛍光強度は、プライマーに付加した特定化合物群に由来するものではなく、2本鎖に結合したサイバーグリーンに由来するものであり、増幅DNA量を示す。【0044】図1は、アニール条件60℃で0秒におけるPCRサイクル数と蛍光強度との関係を示したものである。図2は、アニール条件60℃で5秒におけるPCRサイクル数と蛍光強度との関係を示したものである。図3は、アニール条件60℃で10秒におけるPCRサイクル数と蛍光強度との関係を示したものである。図4は、アニール条件64℃で5秒におけるPCRサイクル数と蛍光強度との関係を示したものである。【0045】特定化合物群、特定塩基より選ばれる化合物を結合させたプライマー(修飾プライマー)は、すべての増幅条件で特定化合物群、特定塩基より選ばれる化合物を結合させていないプライマー(非修飾プライマー)よりも増幅反応の立ち上がりが早くなる。すなわち、一定の蛍光強度となるためのサイクルが短くなる(図2、図3)。【0046】同じアニール温度でアニール時間を短くしていくと(10秒(図3)→5秒(図2)→0秒(図1))、非修飾プライマーでは増幅が始まるサイクルが顕著に遅くなる(すなわち、増幅が弱くなる。)。例えば、蛍光強度が10を超えるのに、アニール時間10秒(図3)では14サイクル目であったが、アニール時間5秒(図2)では20サイクル目となり、アニール時間0秒では40サイクルでも蛍光強度が10を超えない。これに対し、修飾プライマーでは、アニール時間の減少による増幅開始サイクルの遅れは、非修飾プライマーの場合より緩やかである。すなわち、検出系に使用された場合は、感度の向上もたらす。この修飾の効果は、アニール時間が0秒の場合に非常に顕著であり、修飾プライマーの中でも、ggacを繰り返し単位とする12merを結合した場合の効果が特に高い。【0047】非修飾プライマーでは増幅が起こらないアニール温度、アニール時間であっても、修飾プライマーでは実用となり得るレベルの増幅が起こる(図4)。この場合もggacを繰り返し単位とする12merを結合した場合の効果が特に高い。【0048】40サイクル目の最終増幅産物の量は、修飾プライマーの方が非修飾プライマーよりも顕著に多い(図1-4)。通常のPCRでは、40サイクル以上の増幅反応は行わないため、修飾プライマーは、実用範囲で明らかな優位性を有する。【0049】以上より、温度上昇とアニール時間短縮の両者で修飾の効果が認められたため、かかる効果は、プライマーと鋳型DNA間の結合の熱的安定性の向上、すなわち結合力の増大に由来すると考えられる。【0050】【発明の効果】本発明の第一の発明を用いれば、アニーリング条件の検討等の予備実験を大幅に簡略化することができるとともに、PCRの増幅効率を向上させることができる。かかる効果は、PCRが、非対称PCR又はデジェネレートPCRである場合に特に著しい。【0051】【配列表】【図面の簡単な説明】【図1】 アニール条件60℃で0秒におけるPCRサイクル数と蛍光強度との関係を示したものである。【図2】 アニール条件60℃で5秒におけるPCRサイクル数と蛍光強度との関係を示したものである。【図3】 アニール条件60℃で10秒におけるPCRサイクル数と蛍光強度との関係を示したものである。【図4】 アニール条件64℃で5秒におけるPCRサイクル数と蛍光強度との関係を示したものである。 DNA増幅反応の効率向上方法であって、前記のDNA増幅反応がPCRであり、プライマーの5’末端に、LCRed705(商標名)、炭素数が3の炭化水素基をリンカーとするアミノ基、リン酸基、ビオチン、DIG、DNP、TAMRA、Texas−Red、ROX、XRITC、ローダミン、LCRed640(商標名)、BODIPY564/570、BODIPY500/510(商標名)、BODIPY530/550、及びBODIPY581/591からなる群より選ばれる化合物を結合したものをプライマーとして用いることを特徴とするDNA増幅反応の効率向上方法。 前記のPCRが、非対称PCR又はデジェネレートPCRである請求項1に記載のDNA増幅反応の効率向上方法。