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タイトル:特許公報(B2)_アルカリ性ホスファターゼ6の測定方法およびそれに用いるキット
出願番号:2003131941
年次:2008
IPC分類:G01N 33/573,C12Q 1/42,G01N 33/577


特許情報キャッシュ

大橋 建也 佐藤 豊二 三浦 俊英 池田 孝和 野村 文夫 朝長 毅 須永 雅彦 片山 勝博 JP 4075682 特許公報(B2) 20080208 2003131941 20030509 アルカリ性ホスファターゼ6の測定方法およびそれに用いるキット 日東紡績株式会社 000003975 浅村 皓 100066692 浅村 肇 100072040 長沼 暉夫 100088926 池田 幸弘 100102897 大橋 建也 佐藤 豊二 三浦 俊英 池田 孝和 野村 文夫 朝長 毅 須永 雅彦 片山 勝博 20080416 G01N 33/573 20060101AFI20080327BHJP C12Q 1/42 20060101ALI20080327BHJP G01N 33/577 20060101ALI20080327BHJP JPG01N33/573 BC12Q1/42G01N33/577 B G01N 33/573 C12Q 1/42 G01N 33/577 特開平02−035098(JP,A) 14 2004333385 20041125 18 20050908 宮澤 浩 【0001】【発明が属する技術分野】本発明は、アルカリ性ホスファターゼ 6(以下、ALP 6 と記載することもある)の測定方法およびそれに用いるキットに関する。更に詳細には、測定対象検体中にアルカリ性ホスファターゼ 6 を含む場合、これまでのように電気泳動による煩雑な操作や視覚的判断を必要とせず、正確な定量値として ALP 6 の値を知ることができる方法およびそれに用いるキットであり、肝疾患の状態把握、慢性関節リウマチ、悪性腫瘍、潰瘍性大腸炎などの臨床検査医学の分野において極めて有効となる。【0002】【従来の技術】アルカリ性ホスファターゼ(Alkaline Phosphatase:ALP)(EC.3.1.3.1)はリン酸モノエステルを加水分解する酵素のうちでアルカリ側に至適 pH をもち、活性中心に亜鉛イオンを有する酵素の総称である。また生体中での機能は物質やエネルギー輸送、無機リン酸の供給、骨の石灰化に関与するものと考えられている。血清中においては主に肝型、骨型、小腸型、胎盤型や腫瘍型(Nagao 型、Reagan型、Kasahara 型、胎児小腸型など)など臓器特異性を示すアイソザイムが存在し、これまでも肝胆道系疾患、骨疾患、腫瘍などの診断に広く用いられてきた。しかし、血清中総 ALP 活性が広く用いられて有効である一方で、測定結果単独では疾患の特定に結びつきづらい。それには先の血清中アイソザイムの問題がある。ALP の電気泳動をおこなうと 6、7 本のバンドが分離されるが、抗血清を用いて蛋白質としての抗原性から ALP を考察すると、臓器特異型(Tissue Specific ALP:TSALP) と臓器非特異型 (Tissue-Non Specific ALP:TNSALP) の 2 種類に大きく分類される。臓器特異型 (Tissue Specific ALP:TSALP) と呼ばれている胎盤型 (ALP 4)、小腸型 (ALP 5)、生殖細胞型の 3 種については、2q34-37に存在する遺伝子によって産生されていることがわかっている。次に臓器非特異型 (Tissue-Non Specific ALP:TNSALP) は肝、骨、腎、白血球に見られるタイプで同一のアミノ酸配列を有し、遺伝子 1p34-36.1 から発現することが知られている。その中でも肝型と骨型では同一遺伝子から転写調節の違いで二種類の mRNA が作られるが、酵素の成熟にしたがってまた全く同一の配列を持つようになることが知られている(非特許文献1)。しかし、酵素に結合する糖鎖の違いからN 型糖鎖を 3 本持つ肝型(ALP 2)と N 型糖鎖 2 本と O 型糖鎖 1 本をもつ骨型(ALP 3)が電気泳動上で分けられると考えられる。さらに膜成分、GPI アンカーとの結合から ALP 1、そして免疫グロブリンの結合から ALP 6 が分離確認される。そしてこの全てのアイソザイム活性の総和が血清中 ALP 値として反映されるため、ALP 高値が疾患と一対一対応しにくい現状である。【0003】これらアイソザイムの総和としての ALP 測定では、使用される試薬の基質や緩衝液の種類、pH などにおいて活性が異なるため、近年標準化が盛んに行われるようになり、現在では国際臨床化学連合(IFCC)や日本臨床化学会(JSCC)から勧告法が提示されて総 ALP 測定値の標準化が進んでいる。しかしながら依然としてアイソザイム自体の標準検出法は未だに無い状況にある(非特許文献2)。アイソザイムの測定法としては、これまでに L-フェニルアラニンによる肝型、骨型(ALP 2、3)の測定、L-ホモアルギニンによる胎盤型、小腸型(ALP 4、5)の測定など阻害アミノ酸を利用してアイソザイムを測定する方法や(非特許文献3)、加熱によって胎盤型 (ALP 4) 活性だけを残し、ALP 4 を特異的に測定する方法 (非特許文献4、非特許文献5)、先に述べた肝型、骨型 ALP 糖鎖の差を利用してレクチンを利用し、肝型 (ALP 2) や骨型 (ALP 3)を測定する方法 (非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9)、骨型 ALP (ALP 3) に対する特異的モノクローナル抗体を使用する方法(非特許文献10)などが開発されていくつかのアイソザイムは測定が可能となっている。しかし、イムノグロブリン結合型である ALP 6 は臨床的にも意義が唱えられながら依然その絶対値を知る方法がないために電気泳動法から存在の有無を知ることで臨床診断に使用されている状況にある。【0004】はじめ、ALP 6 は ALP 結合型イムノグロブリン (非特許文献11)として Nagamine らによって、厚生労働省指定難治性疾患である潰瘍性大腸炎において発見された (非特許文献12)。その後加野らがこの ALP 6 が病態を反映して増減することを報告し(非特許文献13)、さらに 1981 年に菅野らが全国アンケートを行って病態解析をまとめた(非特許文献14)。その結果、多くの症例が自己抗体であることがわかった。イムノグロブリンの結合するアイソザイム種については Crofton らが ALP 6 のイムノグロブリン結合 ALP はそのほとんどが TNSALP であると報告している (非特許文献15)。イムノグロブリンについても最近 Owen らはマクロ ALP に IgG のκ鎖が結合しているという報告をしている (非特許文献16)。今日では一般に健常人では上記高分子複合体である ALP 6 発現は低頻度であるが、他方総 ALP 活性が 1,000 単位以上にもなるような高活性の ALP を含む血清には高頻度に ALP 6 が検出されるようになること、また慢性関節リウマチや腫瘍などでも ALP 6 が高値となることがあることが知られている。このような状況において臨床的意義をより確立するために ALP 6 の精密測定が行われることが強く望まれていた。【0005】【非特許文献1】Biochem Biophys Res Com 168,993-1000:1990【非特許文献2】臨床検査 37(9), 1041-1044:1993【非特許文献3】Histochem J. 13,941-951:1981【非特許文献4】Prenat Diagn. 16,1051-1054:1996【非特許文献5】Enzyme Protein. 49,313-203:1996【非特許文献6】J Clin Pathol. 1992 45,68-71:1992【非特許文献7】Clin Chem. 40,1749-1756:1994【非特許文献8】Clin Chem. 42,1970-1974:1996【非特許文献9】Calcif Tissue Int. 71:508-518:2002【非特許文献10】Clin Chem 44,2139-2147:1998【非特許文献11】Clin Chim Acta 65,39-46:1975【非特許文献12】日消誌 73,162-168:1976【非特許文献13】生物物理化学20,325:1977【非特許文献14】酵素結合性免疫グロブリンの我が国での発症頻度ならびに分布に関する研究報告:1981【非特許文献15】Clin Chim Acta 112,33-42:1981【非特許文献16】Ann Clin Biochem 39,523-5:2002【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明で測定対象とする ALP 6 はその精密測定が臨床的に有意な意義を持つと言われながら長く不可能であった。それにはどの ALP アイソザイムに自己免疫的イムノグロブリンが結合しやすいのか、またどのクラスのイムノグロブリンが ALP 6 として結合しているのかが不明であったことが原因であった。本発明はかかる問題に鑑み、例えば、まず ALP と反応する一次抗体とその ALP に自己免疫的に結合していたイムノグロブリンと反応する二次抗体を組み合わせて使用することで反応系中の他の ALP の影響を除き、ALP 6 を特異的に精密測定する測定系の提供を目的とする。この方法で開発した ALP 6 測定を臨床診断薬として利用可能であり、また自己抗体のメカニズムなど基礎医学の発展にも貢献し利用できるものである。【0007】【課題を解決するための手段】本発明は、検体中のアルカリ性ホスファターゼ 6 の測定方法であって、検体中のアルカリ性ホスファターゼ 6 と、アルカリ性ホスファターゼ 6 の構成成分であるアルカリ性ホスファターゼ部位を認識するアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質と、アルカリ性ホスファターゼ 6 の構成成分である免疫グロブリン部位を認識する免疫グロブリン部位認識物質とを反応させ、得られるアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質とアルカリ性ホスファターゼ 6 と免疫グロブリン部位認識物質との結合物のレベルからアルカリ性ホスファターゼ 6 を測定することを特徴とする、アルカリ性ホスファターゼ 6 の測定方法である。より具体的には、本発明は、検体中のアルカリ性ホスファターゼ 6 の測定方法であって、検体中のアルカリ性ホスファターゼ 6 とヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼに反応する抗体とを抗原抗体反応させ、次いで、得られる抗原抗体反応物と、アルカリ性ホスファターゼ 6 の構成成分である免疫グロブリン部位を認識する免疫グロブリン部位認識物質とを反応させ、得られるヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼに反応する抗体とアルカリ性ホスファターゼ 6 と免疫グロブリン部位認識物質との結合物のレベルからアルカリ性ホスファターゼ 6 を測定することを特徴とする、アルカリ性ホスファターゼ 6 の測定方法である。【0008】更に本発明は、検体中のアルカリ性ホスファターゼ 6 の測定方法であって、 i)検体中のヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼをヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼに反応する抗体と抗原抗体反応させ、次いで、抗原抗体反応したヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼを、アルカリ性ホスファターゼ用酵素基質と反応させ、反応した酵素活性のレベルから、検体中のヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼ活性を求め、ii)上記 i)とは独立に、上記の測定方法により検体中のアルカリ性ホスファターゼ 6 のレベルを求め、iii)上記 i)で得られるヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼ活性値と上記 ii)で得られるアルカリ性ホスファターゼ 6 のレベル値との乗法値を求め、その乗法値から検体中のアルカリ性ホスファターゼ 6 の量を求める、ことを特徴とする、アルカリ性ホスファターゼ 6 の測定方法である。更に本発明は、検体中のアルカリ性ホスファターゼ 6 を測定するためのキットであって、i)固相支持体、ii)アルカリ性ホスファターゼ 6 の構成成分であるアルカリ性ホスファターゼ部位を認識するアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質、iii)アルカリ性ホスファターゼ 6 の構成成分である免疫グロブリン部位を認識する、標識された免疫グロブリン部位認識物質、およびiv)標識を検出するための成分、を含むキットである。【0009】本発明の測定方法により、これまで使用されてきた電気泳動法よりも更に精密に ALP 6 を測定することができる。例えば、ヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼ(TNSALP)以外のアイソザイムと殆ど反応しない第一のモノクローナル抗体として、抗 TNSALP モノクローナル抗体を用い、第二のモノクローナル抗体として、ALP 6 の構成成分である免疫グロブリン部位と反応する標識抗ヒト IgG1 モノクローナル抗体を利用することにより、またはこれら2種の抗体を組み合わせて利用することで、免疫グロブリン非結合血中アイソザイム(肝型、骨型、小腸型、胎盤型、他腫瘍型)の影響を殆ど受けず、ALP 6 のみを特異的に測定することができる。【0010】【発明の実施の形態】本発明において、検体とは、ALP 6 を含む可能性のある液体または混合物であれば特に限定しないが、通常、血液、血清、血漿、尿等の生体内試料が好適である。本発明の ALP 6 の測定方法においては、ALP 6 の構成成分であるアルカリ性ホスファターゼ部位を認識するアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質と、ALP 6 の構成成分である免疫グロブリン部位を認識する免疫グロブリン部位認識物質とを反応させ、得られるアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質と ALP 6 と免疫グロブリン部位認識物質との結合物のレベルから ALP 6 を測定する。【0011】本発明において、アルカリ性ホスファターゼ部位認識物質とは、ALP 6 中のアルカリ性ホスファターゼ部位と結合可能な物質をいう。具体的には、肝臓由来 ALP 、骨由来 ALP 等のヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼ(TNSALP)に結合可能な物質を例示できる。ヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼ(TNSALP)は、通常、遺伝子 1P34-36.1 から発現する蛋白質を指すが、一般的には、肝型 ALP(ALP 2)、骨型 ALP(ALP 3)、腎臓型 ALP、白血球型 ALP を例示できる。TNSALP に結合可能な物質としては、TNSALP に対する抗体が好ましく挙げられる。抗体としては、抗血清、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもよい。ALP 6 を正確に測定するためには、TNSALP に特異的なモノクローナル抗体であることが好ましい。具体的には、後述する参考例1に示すように、同じ酵素活性量の小腸型、胎盤型、肝臓型および骨型 ALP と反応させた時に、小腸型 ALP と反応する ALP 酵素活性値と胎盤型 ALP と反応する ALP 酵素活性値との和が、肝臓型 ALP と反応する ALP 酵素活性値と骨型 ALP と反応する ALP 酵素活性値との和の 1/10 以下である抗ヒト TNSALP モノクローナル抗体が好ましい。特に、骨型 ALP と反応する ALP 酵素活性値が、肝臓型 ALP と反応する ALP 酵素活性値の 0.7 以下である抗ヒト TNSALP モノクローナル抗体が更に好ましい。本発明に使用可能な抗ヒト TNSALP 抗体としては、本発明者が確立し製造法を後述する製造例1で示すモノクローナル抗体 3-29-3R、2C5-32 および 1A5-7 を例示でき、モノクローナル抗体 3-29-3R および 2C5-32 が好ましい。また、HLMS―1、HLMS―2、HLMS―3、HLMS―4(以上、特開平2−35098号公報 )等のモノクローナル抗体も好ましく、それらと類似している既知の抗 TNSALP モノクローナル抗体も使用可能である。【0012】本発明において、免疫グロブリン部位認識物質とは、ALP 6中の免疫グロブリン部位と結合可能な物質をいう。好ましくは IgG1 に結合可能な物質、具体的には、 IgG1 に対する抗体である。抗体としては、抗血清、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもよいが、特に抗ヒト IgG1 モノクローナル抗体が好ましい。また、IgG1 に結合可能な物質として、プロテイン G、プロテイン A も例示できる。この場合、上記したアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質として抗体を用いるとき、あらかじめ、その抗体中の CH2CH3 部位をブロックしておき、プロテイン G 等がその抗体には結合しないようにしておくことはもちろん必要である。【0013】以上に記載した、例えば TNSALP あるいは IgG1 に対する抗血清、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体は、それ自体周知の方法により調製することができる。IgG1 に対する抗血清、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体は、市販品を利用することもできる。以下に、TNSALP に対するモノクローナル抗体を例にとってその調製について詳細に説明する。本発明に使用可能な抗 TNSALP モノクローナル抗体は、例えば、ヒト血液由来精製 ALP 6 を免疫原として使用することにより得ることができる。また、ALP 6は、その構造から ALP 部位と免疫グロブリン部位にわけられることから、ALP と免疫グロブリンそれぞれを抗原として用いることもできる。ALP 抗原として培養骨芽細胞株による抗原により免疫を行なうことができるが、これに限らず、正常骨芽細胞などの ALP も抗原として用いることができる。遺伝子工学的に作製された完全長の組換え体、変異体、部分抗原を用いることも常套手段であり、これは抗免疫グロブリン抗体作製についても全く同様であって利用されうるものである。モノクローナル抗体は精製ヒト ALP 6 単独に、または、ALP と免疫グロブリンとを別に、免疫原として動物を免疫し、その抗ヒト ALP 6 抗体産生細胞、または抗 ALP 抗体産生細胞もしくは抗免疫グロブリン抗体産生細胞と、骨髄腫瘍細胞とを融合させることによって得られるハイブリドーマによって産生される。【0014】ハイブリドーマは以下の方法によって得ることができる。即ち上述したような例えば ALP をフロイントの完全、不完全アジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント、百日咳アジュバント等既に公知のものを用いてともに混和し、感作用アジュバント液を作製して数回に分けてマウス、ラット等の動物に 1〜3 週間おきに腹腔内皮下、または尾静脈投与することによって免疫する。感作抗原量は 1μg〜100 mg の間とされているが、一般的には 50μg 程度が好ましい。免疫回数は 2〜7 回が一般的であるがさまざまな方法が知られている。次いで脾臓等に由来する抗体産生細胞と骨髄腫瘍細胞(ミエローマ細胞)等の試験管内で増殖能力を有する細胞を融合する。抗体産生細胞はマウス、ヌードマウス、ラットより得ることができる。【0015】融合法としては既にそれ自体公知であるケーラーとミルスタインの定法(Nature.256,495.1975)によってポリエチレングリコール(PEG)を用いることで融合できる。またセンダイウィルス、電気融合法によっても融合を行うことができる。融合した細胞からヒト ALP を認識する抗体を産生するハイブリドーマを選択する方法としては以下のようにして行うことができる。即ち、上記融合した細胞から限界希釈法によって HAT 培地及び HT 培地で生存している細胞により作られるコロニーからハイブリドーマを選択する。96 穴ウェルなどにまかれた融合細胞からできたコロニー培養上清中にヒト ALP に対する抗体が含まれている場合には、ヒト ALP をプレート上に固定化したアッセイプレート上に上清をのせ、反応後に抗マウス免疫グロブリン-HRP 標識抗体等、二次標識抗体を反応させる ELISA 法により、ヒト ALP に対するモノクローナル抗体産生クローンを選択できる。標識抗体の標識物質には HRP の他、アルカリ性ホスファターゼなどの酵素、蛍光物質、放射性物質等を用いることができる。またコントロールとしてブロッキング剤である BSA のみを結合したアッセイプレートによる ELISA を同時に行うことでヒト ALP 特異的抗体のスクリーニングができる。つまりヒト ALP プレートで陽性であり、BSA による ELISA で陰性のクローンを選択する。また、同時に抗マウス免疫グロブリン抗体をマイクロタイタープレートにまき、ここに融合細胞培養上清を加えて反応させ、更に精製 ALP を加えて活性酵素を結合させて免疫複合体を作製し、この結合酵素活性をフェニルリン酸のような発色基質を利用して測定することもできる。【0016】本発明で使用可能な抗体を産生するハイブリドーマとしては、ヒト ALP を特異的に認識するモノクローナル抗体のうち、特に活性型ヒト TNSALP と反応し、かつヒト胎盤型 ALP、ヒト小腸型 ALP と殆ど交差反応しないモノクローナル抗体が産生するものが好ましい。例えば本発明者が樹立したハイブリドーマ 3-29-3R および 2C5-32 が挙げられる。ハイブリドーマ 3-29-3R および 2C5-32 は、平成15年4月16日に工業技術院生命工学工業技術研究所にそれぞれ、受託番号 FERM BP-8360 および FERM BP-8359 として寄託されている。【0017】ハイブリドーマは、通常細胞培養に用いられる培地、例えばα-MEM、RPMI1640、ASF、S-clone などで培養し、その培養上清よりモノクローナル抗体を回収することができる。またハイブリドーマが由来する動物、ヌードマウスをあらかじめプリスタン処理しておき、その動物に細胞を腹腔内注射することによって腹水を貯留させ、その腹水からモノクローナル抗体を回収することもできる。上清、腹水よりモノクローナル抗体を回収する方法としては、常法を用いることができる。例えば硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどによる塩析法やクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、プロテインAなどによるアフィニティークロマトグラフィーなどが挙げられる。【0018】以上に説明したような抗 TNSALP モノクローナル抗体等のアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質と、抗 IgG1 モノクローナル抗体等の免疫グロブリン部位認識物質とを、検体中の ALP 6 と反応させ、得られるアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質と ALP 6 と免疫グロブリン部位認識物質との結合物のレベルを求めることにより、検体中の ALP 6 を測定することができる。より具体的には、、例えば ELISA 法により、検体中の ALP 6 と抗ヒト TNSALP モノクローナル抗体とを抗原抗体反応させ、次いで、得られる抗原抗体反応物と抗 IgG1 モノクローナル抗体とを反応させ、得られる抗ヒト TNSALP モノクローナル抗体と ALP 6と抗 IgG1 モノクローナル抗体との結合物のレベルから検体中の ALP 6 を測定することができる。ELISA 法により、抗原抗体反応した結合物のレベルを求めるためには、抗 IgG1 モノクローナル抗体などの免疫グロブリン部位認識物質としては、標識された免疫グロブリン部位認識物質を用いることが好ましい。標識法としては、通常、免疫測定法で標識に使用できるものであれば、とくに限定しないが、ペルオキシダーゼ等の酵素、放射線同位元素、蛍光物質、磁性物質、コロイドなどでもよい。【0019】本発明の測定方法として、サンドイッチアッセイ ELISA 法により実施する具体例は、以下の通りである。まず一次抗体として、アルカリ性ホスファターゼ部位認識物質である抗 TNSALP モノクローナル抗体を、固相支持体、例えば、プレートに吸着させ、血清などの検体中の ALP 6 のアルカリ性ホスファターゼ部位と反応させ、固相支持体を洗浄する。次いで、吸着した ALP 6 の免疫グロブリン部位と、二次抗体として、免疫グロブリン部位認識物質である、例えばビオチン化した抗 IgG1 モノクローナル抗体とを反応させ、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンと反応させた後、ペルオキシダーゼ酵素反応、次いで、発色反応を行うことにより、ALP 6 を検出することができる。また、二次抗体として、直接、HRP 等のペルオキシダーゼにより酵素標識した抗 IgG1 モノクローナル抗体を用いることにより、ALPと二次抗体と反応させた後、標識酵素に対する基質、例えば、OPD(o-フエニレンジアミン)、DAB(ジアミノベンジジン)、TMB(テトラメチルベンジジン)等と更に反応させて発色させることにより、ALP 6 を検出することもできる。また、二次標識抗体に結合させる標識物質は測定方法によって酵素に限られるものではなく、放射線同位元素、蛍光物質、磁性物質、コロイドなどでもよい。【0020】本発明の測定方法では、上記した測定方法により検体中の ALP 6 のレベルを求め、他方それとは独立に、検体中のヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼ(TNSALP)活性を求め、検体中の ALP 6 のレベル値と検体中のヒト TNSALP 活性値との乗法値を求め、その乗法値から検体中の ALP 6 の量を求めることもできる。この乗法値を利用する方法の場合には、上記した測定方法により検体中の ALP 6 のレベルを求める際に実施する、検体中の ALP 6 と一次抗体であるヒト TNSALP に対する抗体との抗原抗体反応において、検体中に存在する ALP 6 以外の他の ALP との競争反応の影響を考慮することができ、従って上記の乗法値は、検体中の ALP 6 の実際の存在量をより反映した値となる。この乗法値を利用する測定方法において、検体中のヒト TNSALP 活性を求めるには、検体中のヒト TNSALP をヒト TNSALP に反応する抗体と抗原抗体反応させ、次いで、抗原抗体反応したヒト TNSALP を、アルカリ性ホスファターゼ用酵素基質と反応させ、反応した酵素活性のレベルから、検体中のヒト TNSALP 活性を求めることにより実施できる。アルカリ性ホスファターゼ用酵素基質としては、通常用いられる基質を用いることができる。例えば、フェニルリン酸などの発色基質を、抗原抗体反応したヒト TNSALP と酵素反応させて発色させ、吸光度を測定すことにより、検体中のヒト TNSALP を求めることができる。【0021】本発明において、上記したように、例えば ELISA 法により検体中の ALP 6 の測定を行うときは、ELISA 用のキットを用いて実施することができる。ELISA 法で本発明の測定方法を実施するときは、例えば、ALP 6 を測定するためのキットであって、i) 固相支持体、ii) TNSALP に対するモノクローナル抗体等のアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質、iii) 抗 IgG1 モノクローナル抗体等の標識された免疫グロブリン部位認識物質及び iv)標識を検出するための成分を含むキットを用いることによって、効率良く ALP 6 を測定することができる。標識を検出するための成分とは、抗体が標識されたものを測定するための成分で、標識がビオチンの場合、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン、テトラメチルベンジジンのペルオキシダーゼ酵素基質、及び過酸化水素水を含む試薬であり、標識がペルオキシダーゼの場合、OPD (o−フエニレンジアミン)、DAB(ジアミノベンジジン)、TMB(テトラメチルベンジジン)等のペルオキシダーゼ基質を含む試薬である。このキットには、必要に応じ、洗浄剤液含んでもよい。本発明において、このキットを使用するときは、検体中の ALP 6 を一次抗体に結合させた後、固相支持体に吸着しなかった成分を除去するために、洗浄液を含むことが好ましい。洗浄液としては、例えば、界面活性剤を含むトリス緩衝液を使用することができる。さらに、本発明のキットには、必要に応じ、検体希釈液を加えて含むこともできる。検体希釈液としては、例えば、トリス等緩衝液を使用できる。その緩衝液には、必要に応じて、EDTA・2Na 等のキレート剤、食塩等の無機塩を加えてもよい。【0022】【実施例】以下、本発明を製造例、参考例および実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。製造例1抗ヒト TNSALP モノクローナル抗体の製造(1)モノクローナル抗体作製用抗原の選択と準備本発明者達は抗ヒト TNSALP モノクローナル抗体作成のための抗原として、TNSALP を発現していることが知られているヒト骨芽細胞株 Saos-2 由来の ALP を精製した。以下に精製法を述べる。Saos-2(HTB-85)は ATCC(American Type Culture Collection)より入手し、10% 牛胎児血清(FCS)を含むα-MEM(大日本製薬)にて培養した。80% 程度細胞がコンフルーエントになったら、50 mMトリス緩衝液(pH 7.5)にて 3 回デイッシュを洗浄し、0.5% アデカトール SO-135 を含む 50 mMトリス緩衝液(pH 7.5)を加えた。ラバーポリスマンを使用して上記細胞を回収し、氷上にて超音波ホモジナイザーにて 1 分間ホモジナイズした。その細胞破砕液を遠心分離(22,000 rpm 30 min RT)操作してその上清を40% 硫安分画した。遠心分離(10,000 rpm 30 min RT)を行って、その上清に硫安を追加溶解して 60% 硫安となるように調整し再分画を行った。この 40-60% 硫安分画沈殿を 50 mM トリス緩衝液(pH 7.5)に再溶解して 50 mM トリス緩衝液(pH 7.5)に対して透析した。透析済みサンプルを DEAE カラム(アマシャム バイオサイエンス社)にアプライし、吸着したタンパク質は NaCl を含む上記トリス緩衝液の直線濃度勾配(0-0.5 M NaCl)で溶出した。ピークの ALP 活性は日立 7150 自動分析装置を使用して、N−アッセイ ALP-LS 試薬(日東紡)を用いて測定した。活性のあったフラクションは限外ろ過法によって濃縮し、S-300 カラム(アマシャム バイオサイエンス)によって精製した。この活性フラクションを先の DEAE と同様に濃縮して SDS-PAGE により確認するとほぼ TNSALP がメジャーになっており、これを免疫用抗原として使用した。【0023】(2)免疫精製 TNSALP を 1 mg/ml となるように 50 mM トリス酸緩衝液(pH 7.5)で希釈し、50μg(50μl)をとってフロインド完全アジュバンド(WAKO)50μl と乳化するまでよく混和した。調製した懸濁液を Balb/c 6週齢 雌マウス(日本クレアー)にジエチルエーテル麻酔下にて腹腔内投与した。2 週間後には同量の TNSALP (50μg/ml)をフロインド不完全アジュバンド(和光純薬)と混和してフロインド完全アジュバンドの時と全く同様の操作により乳化懸濁液とし、それぞれマウスに感作した。以降 2 週間後に同様の操作を行い、4 回目には最終免疫として TNSALP 50μg/ml を 50 mM トリス酸緩衝液(pH 7.5)で調製しマウス尾静脈注射により投与した。【0024】(3)ハイブリドーマの確立最終免疫より 3 日後に TNSALP により感作済みのマウスよりジエチルエーテル麻酔下に外科的摘出された脾臓を無菌的に分散し脾臓細胞を調製した。融合はケーラーとミルスタインの方法(Nature. 256, 495. 1975)に従って行われ、ポリエチレングリコール(PEG 4000)(メルク社)を用いて脾細胞と骨髄腫細胞 P3-X63-Ag8-U1 (P3U1) を融合した。その融合比率は脾臓細胞数 10×107 個に対して骨髄腫細胞 P3-X63-Ag8-U1 (P3U1) 2×107 個で、 5:1 であった。 融合細胞は 10% FCS(インビトロジェン)α-MEM(アーバイン)HAT(コスモバイオ)培地に分散し 96 穴マイクロタイターカルチャープレート(住友ベークライト)に分注して 37 ℃、5% CO2 条件にて培養した。【0025】(4)スクリーニング約 2 週間後にコロニーの生育を確認してスクリーニングを実施した。スクリーニングの実施法を以下に述べる。スクリーニング用プレートを作製するために上記(1)にて精製した TNSALP を 50 mM トリス酸緩衝液中に溶解し、0.5 μg/100μl/well となるように 96 穴ウエル(ヌンク社)に分注した。プレートを 4℃ で 2 晩静置した後に 0.05% Tween 20 を含むトリス緩衝液で 3 回洗浄し、非特異的反応を抑えるために 1.5% BSA 溶液を 200μl 分注して、更に 4℃ で 1 晩静置した。完成したプレートを 0.05% Tween 20 を含むトリス緩衝液で 3 回洗浄した後に培養上清 100μlを反応させ、更に洗浄を行った後に二次抗体である HRP 標識抗マウスイムノグロブリン抗体(ザイメッド社) を加えて反応させた。洗浄後に HRP の発色基質である 3 mg/ml o-フェニレンジアミン (OPD) (ナカライテスク社)クエン酸発色溶液を 100μl 加えて一定時間の発色後、1 N 硫酸を停止液として更に 100μl 添加し、測定波長 492 nm にて吸光度を測定した。上記のようにして陽性になったクローンは限界希釈法によって再クローニングされ上清を再度チェックした。【0026】(5)抗体の確認ELISA によって精製 TNSALP との反応性を確認し、発明者達はクローン 3-29-3R、2C5-32、1A5-7 の 3 種類が TNSALP を認識したものとして選択した。得られた抗体をモノクローナル抗体タイピングキット(アマシャム バイオサイエンス社)にて検定した結果を以下の表1に示す。【0027】【表1】【0028】(6)モノクローナル抗体の作製及び精製上記(5)で得られたハイブリドーマ 3-29-3R、2C5-32、1A5-7 細胞 1×107細胞個をプリスタン(アルドリッチ社)0.5 ml 投与後 2 週間の Balb/c マウス(日本クレアー社)、10 週齢、雌性に腹腔内投与し、約 2 週間後にマウス腹腔内に貯留した腹水をジエチルエーテル麻酔下にて外科的に採取した。スクリーニングで行った ELISA 法により、腹水をサンプルとして段階希釈して確認すると高濃度のモノクローナル抗体が含まれていた。この腹水を硫安 40% で処理し、PBS に透析した後、3-29-3R、1A5-7 はプロテイン G カラム(アマシャム バイオサイエンス社)により精製して SDS-PAGE により確認した。2C5-32 は S-300 を用いて精製した。その結果 3-29-3R、1A5-7 は非還元では分子量約 150,000 に単一の、メルカプトエタノール還元では分子量約 50,000 のバンドと 25,000 の 2 本のバンドが確認された。2C5-32 は非還元では分子量約 900,000 に単一の、メルカプトエタノール還元では分子量約 70,000 のバンドと 25,000 の 2 本のバンドが確認された。精製されたモノクローナル抗体 3-29-3R、1A5-7、2C5-32 ともにマウス1匹あたりそれぞれ約 10mg 以上であって工業的利用を行うには十分量であった。【0029】参考例1抗ヒト TNSALP モノクローナル抗体の特異性検定モノクローナル抗体 3-29-3R、2C5-32、1A5-7 の特異性を調べるためにさまざまなアイソザイム(Saos-2 由来 TNSALP、肝型 ALP (常光)、骨型 ALP (常光)、小腸型 ALP (常光)、胎盤型 ALP(シグマ社)を用いて下記の実験を行った。測定方法は以下のとおりである。固層プレート(ヌンク社)上に精製したモノクローナル抗体を 2μg/100μL PBS/well になるように分注し、4℃で 2 日間静置した。0.05% Tween 20 を含む 20mM トリス緩衝液(pH 7.0)洗浄液にて 3 回洗浄した後、1.5% BSA トリス緩衝液(pH 7.0)を 200μl 加えて 4℃で一晩ブロッキングした。このようにして作製したプレートを先の洗浄液で 1 回洗浄して、各種アイソザイムを反応させた。アイソザイムの酵素活性は Kind-King 変法(ホルマザン法,日東紡 N−テスト ALP K-K キット使用)試薬を用いて測定し、全て 25IU/L にあわせてその 100μl を抗体結合プレート上に加えた。室温で 2 時間反応させ、反応終了後、前出の洗浄液にて 3 回洗浄して Kind-King 変法(ホルマザン法)に従い酵素活性を測定した。すなわち、抗体プレートに結合した ALP に、100μl の基質溶液(フェニルリン酸二ナトリウムと 4−アミノアンチピリン溶液とを含む溶液)を加えて、37℃、1 時間反応させて、抗体が捕らえた ALP 酵素と合成基質とで酵素反応させ、ついで、得られる混合物に発色試薬(メタ過ヨウ素酸ナトリウムを含む溶液)を加えて発色させ、492nm で吸光度を測定した。このときのデータを表2に示す。なお、このとき、ALP を入れないで同様に操作して得られるブランク値を求め、各測定値からブランク値を差し引いた値が抗体に対する各 ALP の活性値となる。【0030】【表2】【0031】表2から分かるように、抗体 3-29-3R、2C5-32 は Saos-2 由来 TNSALP、肝型、骨型としか反応せず、他アイソザイムとの交差反応性を殆ど示さないことからヒト TNSALP に特異性の高いモノクローナル抗体であることがわかった。すなわち、抗体 3-29-3R、2C5-32 は、TNSALP に特異的、例えば、小腸型 ALP 活性値と胎盤型 ALP 活性値との和が、肝臓型 ALP 活性値と骨型 ALP 活性値との和の 1/10 以下であることが判明した。また、1A5-7 は Saos-2 由来 TNSALP をはじめ全てのアイソザイムとよく反応した。つまり 1A5-7 はあらゆる ALP アイソザイムと反応することがわかった。尚、2 つのモノクローナル抗体の 25 IU/L における肝型、骨型反応比率(肝:骨 反応比率)はそれぞれ 3-29-3R が 1:0.50 であり、2C5-32 が 1:0.93 であった。ところで、高 ALP 検体の電気泳動結果で一般的に骨型よりも肝型が強くなった場合に ALP 6 が現れやすい。そのため、抗体 3-29-3R では、骨型 ALP 活性が肝型 ALP 活性の 0.7 以下なので、本発明に用いると、より有効である。【0032】参考例2モノクローナル抗体を用いた血清中 ALP 6 の精製、およびその構造決定(1)アフィニティーカラム作製ALP 6 を構成する ALP はほとんどが TNSALP と考えられることから、実際に抗 TNSALP モノクローナル抗体である 3-29-3R を利用して ALP 6 の精製を試みた。はじめに血清中から TNSALP だけを精製するために TNSALP に対して反応することが確認されたクローン 3-29-3R を腹腔内投与したマウスの腹水から精製されたモノクローナル抗体をプレパックカラムである HiTrap NHS-activated HP(アマシャム バイオサイエンス社)に結合させ、抗ヒト TNSALP カラムを作製した。以下、簡単に実験方法を示す。はじめに未使用カラムを開封し 5 mL の氷冷した 1 mM 塩酸溶液を流速 1 mL/min で送液した。次に 1 mL のモノクローナル抗体溶液(15 mg/mL)を送液し、ドムナットで密閉して 4℃、4 時間静置した。放置後、カップリングバッファー(0.2 M 炭酸水素ナトリウム緩衝液 0.5 M NaCl pH 8.3)を 3 mL 流して、6 mL のブロッキングバッファー(0.5 M モノエタノールアミン溶液 0.5 M NaCl pH 8.3)にてブロッキングした。6mL の洗浄液(0.1 M 酢酸ナトリウム緩衝液 0.5 M NaCl pH 4.0)にて洗浄後、再び 6 mL のブロッキングバッファー(0.5 M モノエタノールアミン溶液 0.5 M NaCl pH 8.3)を通して、室温にて 30 分間放置した。その後 6 mL の洗浄液、ブロッキング液、洗浄液と交互に流して最後に 20 mM Tris 緩衝液 pH 8.0 にてカラムを平衡化した。【0033】(2)アフィニティーカラムによる血清中 TNSALP の精製完成した 3-29-3R の HiTrap NHS-activated HP カラムを用いて血清中反応物を精製した。はじめにボランティアより得た成人血清 40 mL を 4℃、流速 0.2 mL/min で一晩、カラムに環流させた。その後 20 mM Tris 緩衝液 pH 8.0 にてカラムを洗浄し、100 mM グリシン緩衝液 pH 2.7 で溶出させた。また、全く同様にインフォームド・コンセントを行って得た 700 IU/L 以上の ALP 高値検体プール 40 mL を環流しつづけた後、同様に溶出フラクションを回収した。回収フラクションには 1/10 量の 1 M Tris 緩衝液 pH 9.0 を加えておき、回収後即座に中和した。【0034】(3)アフィニティーカラム溶出分画からの Protein G カラムによる ALP 6 の精製この 3-29-3R アフィニティーカラム溶出フラクションを健常人、ALP 高値にわけて解析した。方法は製造例1の(6)でおこなった抗体精製と同様である。簡単には、3-29-3R カラム溶出フラクションを更に 5 mL のHiTrap プロテイン G カラム(アマシャム バイオサイエンス)にかけて精製を行った。まず、3-29-3R アフィニティーカラム溶出フラクションピークを 5 mL にあわせてカラムへ充填し、4℃で一晩反応させた。その後 100 mMトリス緩衝液(pH 8.0)で洗浄し、はじめのスルー画分を予備に 5 mL 集めた後続いて比色計にて A280 がブランクと同値になるまで洗浄した。続いて 100 mM グリシン緩衝液(pH 2.0)にて溶出させ、直ちにフラクションを 1 M トリス緩衝液(pH 9.0)で中和した。すると ALP 高値検体からのフラクションのみに特に高い濃度の蛋白質の溶出が認められた。健常人検体からは殆ど溶出が認められなかった。【0035】(4)電気泳動及びウエスタン・ブロッティングこの高 ALP 患者検体フラクション及び健常人検体フラクションを電気泳動法、ウエスタン・ブロッティングにより解析した。溶出フラクション蛋白質を 20μg/Lane にあわせて 10% SDS-PAGE をおこなった。ゲルは PAG ミニ「第一」4/20% グラジエントゲル(第一化学薬品)である。泳動終了後一部を切り取りクマシーブリリアントブルー染色による蛋白質染色を実施した。残りのゲルはウエットブロットによりウエスタン・ブロッティングを行った。ブロッテイングが終了したら、ブロックエース(大日本製薬)を用いて 4℃、一晩ブロッキングをした。翌日、0.05% Tween 20 を含む 50 mMトリス溶液(pH 7.5)にて膜を軽く洗浄し、室温、2 時間、抗体を反応させた。ウエスタン・ブロッティングの反応抗体は 1/500 希釈抗 IgG1-HRP(大日本製薬)と 1/300 希釈抗 3-29-3R-HRP 標識である。反応後 10 分づつ 3 回 0.05% Tween 20 を含む 50 mM トリス溶液(pH 7.5)にて膜を洗浄し、HRP 用発色試薬(和光純薬)を用いて発色した。【0036】結果を図1に示した。図1の結果から ALP 高値検体のサンプル中に分子量約 220 kDa と 300 kDa 近い巨大分子が存在することがわかった。この分子はウエスタン・ブロッティングによって IgG1 とも TNSALP とも反応し、同じ位置に反応バンドが検出されることから一量体 ALP (68 kDa) と IgG1 (150 kDa) の結合した ALP 6 (218 kDa) と二量体 ALP (136 kDa) と IgG1 が結合した ALP 6 (286 kDa) と考えられた。一方、健常人フラクションは全く反応しなかった。上記実験から以下のことが言える。1)抗 3-29-3R アフィニティークロマトグラフィーで ALP 6 が TNSALP を抗原部位としてカラムに結合し、その際溶出に使用するグリシン緩衝液(pH 2.0)によって、ALP とイムノグロブリンの結合を解除しながらフラクションサンプルとなった。2)1)で分離した TNSALP とイムノグロブリンは中和操作によって再び in vitro において高分子化 ALP 複合体となった。これは native PAGE によるウエスタン・ブロッティングにて高分子量域に ALP、IgG どちらとも反応するバンドがあることで証明された。よって抗体 3-29-3R は IgG の結合、非結合に関係なく TNSALP を認識して結合させ、この TNSALP に自己免疫的に結合していた IgGを認識する標識二次抗体が結合する反応系によって ALP 6 が測定可能であることが示された。【0037】参考例3免疫酵素活性測定法による血清中の TNSALP 値の測定上記方法によって作製、精製されたモノクローナル抗体 3-29-3R 、1A5-7 を参考例1と全く同様の方法で Nunc 社製プレートに 2μg/100μL PBSで分注、ブロッキングして抗体結合プレートを作製した。使用前にそのプレートを、0.05% Tween 20 を含む 100 mM トリス緩衝液 (pH 7.5) 200 μL で 1 回洗浄し、ここにインフォームド・コンセントを行ったボランティア及び患者検体 10 μL と 100 mM トリス緩衝液 (pH 7.5) 90μL を加えて室温、1 時間反応させた。反応終了後、そのプレートを 0.05% Tween 20 を含む 100 mM トリス緩衝液 (pH 7.5) 200 μL で 3 回洗浄した。次いで、そのプレートに 100 μl の N テスト ALP Kind-King 試薬 (日東紡) の基質溶液、すなわち、フェニルリン酸二ナトリウムと4-アミノアンチピリンを含む溶液) を加えて更に 37℃、pH 10 で 1 時間、酵素反応させた。さらに、その反応液に、発色試薬(メタ過ヨウ素酸ナトリウムを含む溶液) 100 μL を添加してその発色値を 492 nm にて比色することにより TNSALP 値を求めた。測定範囲を超える高値検体については希釈して再測定をした。表3に、モノクローナル抗体 3-29-3R、1A5-7 を用いて得られる TNSALP 値の結果を示す。これらの結果を、Total ALP 活性値 (JSCC 準拠値) と比較した。【0038】【表3】【0039】モノクローナル抗体 3-29-3R を用いて得られる TNSALP 値と Total ALP 活性値とは、検体 15 のデータにおいて強く乖離している。一方、モノクローナル抗体 1A5-7 を用いて得られる TNSALP 値と、Total ALP 活性値(JSCC 準拠値)とは、検体 15 のデータも含め、両値に相関関係が強くみられる。つまり、抗体 3-29-3R を用いて得られる TNSALP 活性値は、胎盤型 ALP や小腸型 ALP の活性値は含まれない点で Total ALP 活性値とは異なり、妊娠、腫瘍からくる胎盤型(ALP)の上昇や血液型 O、B 型の食後における小腸型分泌(ALP)による ALP 上昇などの原因で ALP 値が上昇するのを排除できている。したがって、一次抗体として抗体 3-29-3R を用いることは、ALP 6 を ELISA 法で測定する際にさらに有利と考えられる。【0040】実施例1種々の二次抗体を用いた ELISA 法による ALP 6 の測定ALP 6 内の免疫グロブリンに対する各種抗体の親和性を調査するため、二次抗体として各種抗体を用い、ELISA 法により ALP 6 を測定した。その結果、二次抗体としてヒト IgG1 モノクローナル抗体を用いると最良の結果を得た。以下に詳述する。一次抗体として二種類の抗体 3-29-3R 、1A5-7 プレートを用い、二次抗体として、(1)免疫グロブリン結合物質として 200 倍希釈 HRP 標識抗ヒト IgG1 モノクローナル抗体(大日本製薬)、(2) 200 倍希釈 HRP 標識抗ヒト IgM モノクローナル抗体(第日本製薬)、(3) 1/200 希釈 HRP 標識抗 IgA モノクローナル抗体(ザイメッド社)、(4) 250 倍希釈 HRP 標識抗ヒトイムノグロブリンポリクローナル抗体(ダコ社)、(5) 500 倍希釈 HRP 標識抗ヒトイムノグロブリンポリクローナル抗体(ダコ社)を用いた。検体としては、参考例3と同一検体を用いた。まず、抗体 3-29-3R または 1A5-7 プレートを、0.05% Tween 20 を含む 100 mMトリス緩衝液(pH 7.5)200μL で 1 回洗浄した。次いで、これらのプレートに、インフォームド・コンセントを行った健常人ボランティア及び患者検体 30 μL と100 mM トリス緩衝液(pH 7.5)70μL を加えて室温、1 時間反応させた。一次抗体反応終了後、そのプレートを、0.05% Tween 20 を含む 100 mMトリス緩衝液(pH 7.5)200μL で 3 回洗浄し、100μl の上記 (1)〜(5)の各種二次標識抗体を加えて更に 37℃、1 時間反応させた。1 時間後に洗浄を行い、標識 HRP に対する基質溶液(OPD 溶液)を反応させ、一定時間後に発色停止試薬 1 N 硫酸 100μL を添加してその発色値を 492 nm にて比色し ELISA 法による ALP 6 値を求めた。【0041】結果として一次抗体が 3-29-3R、1A5-7 のどちらであっても、免疫グロブリン部位認識物質に関しては、ほぼ同様の結果が得られた。つまり二次抗体として抗 IgG1 モノクローナル抗体を使用した時には電気泳動法の結果とよく相関する結果を得た(実施例2で結果を詳述する)。一方、抗 IgM 抗体、抗 IgA 抗体ではほとんど発色せずブランクと変わらなかった。更に、二次抗体として、イムノグロブリンのポリクローナル抗体を用いた実験区では全て吸光度それぞれ 1.5、2.6 程度に高くなってしまい、結果が不明瞭になった。なお、以上のことから、ALP に結合している自己免疫様イムノグロブリンはほとんどが IgG1 であり、IgM、IgA はあまり結合していないと判明した。したがって、二次抗体として IgG1 と結合可能な抗体を用いると特に良好な結果をもたらすことが判明した。【0042】実施例2ELISA 法、乗法値法による ALP6 値と電気泳動検出法との比較一次抗体として抗体 3-29-3R、抗体 1A5-7 を用い、かつ、二次抗体として抗 IgG1 モノクローナル抗体を用いて、ELISA 法による ALP 6 値、また、乗法値による ALP 6 値を求めた。ELISA 法による ALP 6 値は、実施例1と同様な方法により求めた。また、乗法値による ALP 6 値は、「ELISA 法による ALP 6 値」と「表3に示される TNSALP 値」との乗法値を計算して求めた。また、比較のため、キャピラリー等電点電気泳動法による ALP 6 の判定、TNSALP の肝型と骨型との優勢判定を行った。これらの結果を表4及び図2に示す。そのうち特に、検体9から12について電気泳動の実際の結果を図3に示す。【0043】【表4】【0044】表4の結果より、ALP 6 値を測定する際、乗法値法の方が ELISA 法より、電気泳動の結果によく一致することが判明した。また、一次抗体として抗体 3-29-3Rを用いたときは、ALP 6 の ELISA 値や乗法値は、特に電気泳動の結果に良く相関していた。このことは、本発明において、アルカリ性ホスファターゼ部位認識物質として、TNSALP を特異的に結合するモノクローナル抗体を用いることが特に好ましい結果をもたらすことを示している。また、電気泳動の TNSALP の判定では、肝型 ALP が骨型 ALP 優勢のときと本発明の ALP 6 値は高い傾向を示し、そのとき、電気泳動の ALP 6 は陽性になりやすいことが判明した。よって抗体 3-29-3R は IgG の結合、非結合に関係なく TNSALP を認識して結合させ、この TNSALP に自己免疫的に結合していた IgG を認識する標識二次抗体が結合する反応系によって ALP 6 が特に正確に測定可能であることが示された。以上の結果から本発明の反応系例(一次抗体:ヒト TNSALP 認識モノクローナル抗体、二次標識抗体:HRP 標識抗ヒト IgG1 モノクローナル抗体)を用いて ALP 6 精密測定を行うことが可能となった。【図面の簡単な説明】【図1】ウエスタン・ブロッティング及び SDS-PAGE の結果を示す。矢印に ALP 6 のバンドが確認できる。二量体 ALP (136 kDa) と IgG (150 kDa) の結合した分子は約 286 kDaに、一量体 ALP (68 kDa) と IgG の結合分子は 218 kDa に確認できる。【図2】本発明の乗法値法による ALP 6 値と電気泳動法の判定を比較している。結果として TNSALP 認識抗体 3-29-3R と二次抗体HRP 標識抗 IgG1 の組み合わせ結果が電気泳動の結果とも特によく相関していた。【図3】キャピラリー電気泳動法の結果を示す。検体 9、10、11 は肝型が強く、12 は骨型が強い。ALP 6 は検体 No.10、11 で強陽性であり、No.9 は陽性、No. 12 では ALP 6 がほとんど認められなかった。 検体中のアルカリ性ホスファターゼ 6 の測定方法であって、検体中のアルカリ性ホスファターゼ 6 と、アルカリ性ホスファターゼ 6 の構成成分であるアルカリ性ホスファターゼ部位を認識するアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質と、アルカリ性ホスファターゼ 6 の構成成分である免疫グロブリン部位を認識する免疫グロブリン部位認識物質とを反応させ、得られるアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質とアルカリ性ホスファターゼ 6 と免疫グロブリン部位認識物質との結合物のレベルからアルカリ性ホスファターゼ 6 を測定することを特徴とする、アルカリ性ホスファターゼ 6 の測定方法。 アルカリ性ホスファターゼ部位認識物質がヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼと結合可能な物質である請求項1の測定方法。 ヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼと結合可能な物質が抗ヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼモノクローナル抗体である請求項2の測定方法。 免疫グロブリン部位認識物質が IgG1 と結合可能な物質である請求項1から3のいずれかの測定方法。 IgG1 と結合可能な物質が抗ヒト IgG1 モノクローナル抗体である請求項4の測定方法。 検体中のアルカリ性ホスファターゼ 6 の測定方法であって、検体中のアルカリ性ホスファターゼ 6 とヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼに反応する抗体とを抗原抗体反応させ、次いで、得られる抗原抗体反応物と、アルカリ性ホスファターゼ 6 の構成成分である免疫グロブリン部位を認識する免疫グロブリン部位認識物質とを反応させ、得られるヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼに反応する抗体とアルカリ性ホスファターゼ 6 と免疫グロブリン部位認識物質との結合物のレベルからアルカリ性ホスファターゼ 6 を測定することを特徴とする、アルカリ性ホスファターゼ 6 の測定方法。 免疫グロブリン部位認識物質が IgG1 と結合可能な物質である請求項6の測定方法。 IgG1 と結合可能な物質が抗ヒト IgG1 モノクローナル抗体である請求項7の測定方法。 検体中のアルカリ性ホスファターゼ 6 の測定方法であって、i)検体中のヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼをヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼに反応する抗体と抗原抗体反応させ、次いで、抗原抗体反応したヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼを、アルカリ性ホスファターゼ用酵素基質と反応させ、反応した酵素活性のレベルから、検体中のヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼ活性を求め、ii)上記 i)とは独立に、請求項6から8のいずれかの方法により検体中のアルカリ性ホスファターゼ 6 のレベルを求め、iii)上記 i)で得られるヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼ活性値と上記 ii)で得られるアルカリ性ホスファターゼ 6 のレベル値との乗法値を求め、その乗法値から検体中のアルカリ性ホスファターゼ 6 の量を求める、ことを特徴とする、アルカリ性ホスファターゼ 6 の測定方法。 検体中のアルカリ性ホスファターゼ 6 を測定するためのキットであって、i)固相支持体、ii)アルカリ性ホスファターゼ 6 の構成成分であるアルカリ性ホスファターゼ部位を認識するアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質、iii)アルカリ性ホスファターゼ 6 の構成成分である免疫グロブリン部位を認識する、標識された免疫グロブリン部位認識物質、およびiv)標識を検出するための成分、を含むキット。 アルカリ性ホスファターゼ部位認識物質がヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼと結合可能な物質である請求項10のキット。 ヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼと結合可能な物質が抗ヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼモノクローナル抗体である請求項11のキット。 免疫グロブリン部位認識物質が IgG1 と結合可能な物質である請求項10から12のいずれかのキット。 IgG1 と結合可能な物質が抗ヒト IgG1 モノクローナル抗体である請求項13のキット。


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