タイトル: | 公開特許公報(A)_環状エーテル化合物 |
出願番号: | 2003119070 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07D323/00 |
樫原 宏 JP 2004002403 公開特許公報(A) 20040108 2003119070 20030423 環状エーテル化合物 樫原 宏 596170402 樫原 宏 JP 1996315237 19961126 7 C07D323/00 JP C07D323/00 1 1997131083 19970521 OL 45 4C022 4C022NA02 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、新規な光学活性環状エーテル化合物及び環状エーテル化合物、その製造方法およびその使用方法に関するものである。また、本発明は、新規な光学活性環状ポリエーテル化合物及び環状ポリエーテル化合物、それらの製造方法、それらを脱塩剤として用いる脱塩溶媒の製法、保持されたイオンの溶出法(再生法)、ならびにラセミ体の光学分割および不斉反応への利用に関するものである。【0002】【従来の技術】生命が生存するために最も必要な水は、これまで簡単に得られるものと思われてきた。ところが、様々な環境破壊が行われてきた結果、地球温暖化が進み異常気象をもたらし、水不足、水飢饉となる地域が急速に増えて来た。生活用水や工業用水の確保が大変厳しくなっており、一時的に水不足が解消されても再び水不足になることが十分予想される現状である。【0003】これまでの水の確保は、自然降雨に頼ることがほとんどであったが、1960年頃から海水を淡水化して生活用水や工業用水に利用する研究が本格的に始められた。現在、実用化されている海水の淡水化法には、蒸発法と膜法があり、膜法にはさらに、電気透析法と逆浸透法がある。蒸発法は、大量の淡水が得られるメリットがあるが、水蒸気をつくる際に大量のエネルギーを消費しなくてはならず、運転温度が100℃−120℃と高いため、海水によるプラントの腐食やスケールの付着が起こりやすいのが欠点である。また、蒸発法で得られた淡水はミネラル含有量が少ないため、飲料水のプラントではミネラルの添加を行わなくてはならないという問題もある。電気透析法は、造水能力がまだまだ低く、透析電力が大量を要するためコスト高である。逆浸透法は、最も造水能力が高いが、膜の老化や水温の変化などにより水質が変動すること、半透膜を使う関係上、海水中の濁質などを除去するための前処理を十分に行う必要があるなどの問題点が残されている。【0004】その他の淡水化法として、冷熱利用淡水化法、透過気化淡水化法、太陽熱利用淡水化法などがあるが、まだ実用化には至っていない。【0005】一方、これまでの光学分割剤および不斉反応試薬は多数開発されているが、電気陰性度が高い原子と結合するルイス酸基(ホウ素原子) と電気陰性度が低い原子と結合する環状エーテル基(酸素原子)を両方持ち合わせた光学分割剤および不斉反応試薬はほとんど知られていない。光学分割剤については、産業に利用されているものが多いが、その分割能はラセミ体の分子構造に依存するものがほとんどであり、一般性は低い。不斉反応試薬については、開発されても技術面および生産コストの面で難点が多く実用化されているものは極めて少ない。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、簡便な操作で水溶液および有機溶媒中の塩分を除去し脱塩溶媒を安価に大量につくることができる化学物質およびこれを用いた脱塩水および脱塩有機溶媒を提供することにある。【0007】さらに、本発明は、ラセミ体の分子構造に依存しない一般性が高い光学分割剤および不斉反応試薬を提供することにある。【0008】【課題を解決する手段】本発明者は、海水などの塩分を含んだ溶液から脱塩溶媒を製造することができる優れた化学物質ならびに脱塩溶媒の製造方法について鋭意研究した結果、クラウンエーテル化合物を化学修飾して得られる特殊な化学物質に脱塩作用があることを見出し、この化学物質により海水などの塩分を含んだ溶液から脱塩溶媒を製造することを考案した。さらに、この化学物質にラセミ化合物の光学分割および不斉反応における有用性を見出して、本発明を完成させるに至った。【0009】一方、これまでの光学分割剤および不斉反応試薬は多数開発されているが、電気陰性度が高い原子と結合するルイス酸基(ホウ素原子) と電気陰性度が低い原子と結合する環状エーテル基(酸素原子)を両方持ち合わせた光学分割剤および不斉反応試薬はほとんど知られていない。光学分割剤については、産業に利用されているものが多いが、その分割能はラセミ体の分子構造に依存するものがほとんどであり、一般性は低い。不斉反応試薬については、開発されても技術面および生産コストの面で難点が多く実用化されているものは極めて少ない。【0010】【発明の実施の形態】本発明に係る光学活性環状エーテル化合物は、次の一般式[I]によって表すことができる。つまり、一般式[I]:【化12】【0011】{式中、R1 は、一般式[IIi ]:Rm−COO−(CH2)d−:(式中、Rmは、一般式[IIa]:【0012】【化13】で表される残基、一般式[IIb ]:【0013】【化14】(式中、Phはフェニル基を意味する)で表される残基、 一般式[IIc ]:【0014】【化15】(式中、Phは前記と同じ意味を有する)で表される残基もしくは一般式[IId ]:【0015】【化16】で表される残基を意味し、dは1ないし7の整数を意味する)または【0016】一般式[IIii]:Rp−COO−(CH2)d−:[式中、Rpは、一般式[IIe ]:【0017】【化17】(式中、p は30ないし100 の整数を意味する)、一般式[IIf]:【0018】【化18】(式中、Phおよびp は前記と同じ意味を有する)、一般式[IIg]:【0019】【化19】(式中、Phおよびp は前記と同じ意味を有する)もしくは一般式[IIh]:【0020】【化20】(式中、p は前記と同じ意味を有する)で表される残基を意味し、qは前記と同じ意味を有する]で表される残基を意味し、R2は、水素原子または一般式[IIIa]:【0021】【化21】(式中、Xはカルボキシレート残基、2− フェノラート残基、ホスホネート残基、ホスフィネート残基またはスルホネート残基を意味し、Mはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアンモニウムイオンを意味し、q は1ないし8の整数を意味する)もしくは一般式[IIIb]:【0022】【化22】[式中、R3およびR4は、同じであっても異なっていてよく、それぞれC1−C6アルキル基、C3−C6シクロアルキル基、C7−C11アラルキル基またはC6−C10アリール基を意味し、また、R3およびR4は互いに結合して、C2−C3アルキレン基、光学活性置換基−CHAr−(CH2)v−CHAr− (式中、Arはtert− ブチル基、フェニル基またはナフチル基を意味し、vは0または1を意味する)もしくは芳香環またはボランエーテル残基を意味し、qは前記と同じ意味を有する]で表される置換アルキレン基を意味する)で表される。【0023】上記式中における置換基について、それぞれ説明することにする。置換基R2における一般式[IIIa ]のMで表されるアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなどが挙げられる。また、置換基R2おける一般式{IIIb]のR3およびR4で表されるC1−C6アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−へキシル等が挙げられる。C3−C6シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。C7−C11アラルキル基としては、例えば、ベンジル、o−メチルベンジル、m−メチルベンジル、p−メチルベンジル、p−クロロベンジル、1−メチルベンジル、フェネチル、o−、m−またはp−メチルフェネチル、3−フェニルプロピル、3−(o−メチルフェニル)プロピル、3−(m− メチルフェニル) プロピル、3−(p− メチルフェニル) プロピル、4−フェニルブチル、o−ナフチルメチル、3−ナフチルメチル等が挙げられる。C6−C10アリール基としては、例えば、フェニル、o−、m−またはp−トリル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,3,4−トリメチルフェニル、2,3,5−トリメチルフェニル、2,3,6−トリメチルフェニル、3,4,5−トリメチルフェニル、3,4,6−トリメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル等が挙げられる。また、R3とR4とが結合して形成される芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられ、これらは前記のC1−C6アルキル基などや、後述するハロゲン原子などの置換基で置換されていてもよい。更にまた、R3とR4とが結合して形成するボランエーテル残基としては、例えば、一般式[IIIc]:【0024】【化23】(式中、Ra基は、C1−C6 アルキル基、C3−C7 シクロアルキル基、C7−C11アラルキル基またはC6−C10アリール基を意味し、w1は1から3までの整数を意味し、w2は1から3までの整数を意味する。なお、これら置換基の具体例としては、前述したものが挙げられる)で表される残基が挙げられる。【0025】本発明に係る光学活性環状エーテル化合物は、その種類によって種々の方法で製造することができる。本発明に係る環状エーテル化合物[I]は、公知の方法により数工程を経て容易に製造することができ、例えば、次ぎの方法Cによって製造することができる。【0026】【化24】【0027】【化25】【0028】【化26】【0029】(式中、R5はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアンモニウムイオンを意味し、n’ は2以上の整数、nよりも1少ない整数を意味し、X, M, m およびq は前記と同じ意味を有する)【0030】まず、上記方法C のC1工程において、一般式 [XV]で表されるジオール体が、反応溶媒中で塩素化剤によってその水酸基部分が塩素化されて一般式 [XVI]で表されるジクロリド体に変換される。この工程において使用される塩素化剤としては、例えば、チオニルクロリド、スルフリルクロリド、五塩化リン、三塩化リンなどを使用することができる。好ましい塩素化剤としては、例えば、チオニルクロリド、五塩化リンなどが挙げられる。使用される反応溶媒としては、例えば、ピリジン、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−または1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒を使用することができ、好ましい反応溶媒としては、例えば、ピリジンなどが挙げられる。この塩素化反応は、−20℃から150℃までの範囲で行うことができ、好ましくは、−10 ℃から105℃までの範囲で行うのがよい。【0031】上記C1 工程において得られたジクロリド体[XVI ]は、次いで、C2工程において、塩基の存在下において、反応溶媒中において、エチレングリコールとの求核置換反応により一般式[XVII]で表されるクロロアルコール体に変換される。使用される塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウム、n−ブチルリチウムなどをエチレングリコールと同モルの割合で使用することができるが、好ましくは、水素化ナトリウムなどを使用するのがよい。また反応溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−または1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒を使用することができ、好ましい反応溶媒としては、例えば、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフランなどが挙げられる。この求核置換反応は、−78℃から60℃までの範囲で行うことができ、好ましくは、−10℃から20℃までの範囲で行うのがよい。【0032】上記C2工程で得られたクロロアルコール体[XVII]は次いで、C3工程において、反応溶媒中で塩素化剤によってその水酸基部分が更に塩素化されて一般式[XVIII]で表されるジクロリド体に変換される。この工程において使用される塩素化剤としては、例えば、チオニルクロリド、スルフリルクロリド、五塩化リン、三塩化リンなどを使用することができる。好ましい塩素化剤としては、例えば、チオニルクロリド、五塩化リンなどが挙げられる。使用される反応溶媒としては、例えば、ピリジン、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−または1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒を使用することができ、好ましい反応溶媒としては、例えば、ピリジンなどが挙げられる。この塩素化反応は、−78℃から150℃までの範囲で行うことができ、好ましくは、−10 ℃から105 ℃までの範囲で行うのがよい。【0033】上記C3工程において得られたジクロリド体[XVIII ]は、次いで、C4工程において、一般式 [XIX ]で表されるジオール体とのカッブリング反応によって一般式[XX]で表されるクラウンエーテル化合物に変換される。この反応は塩基の存在下において反応溶媒中で行われる。使用される塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウム、n−ブチルリチウムなどをエチレングリコールと同モルの割合でしようすることができるが、好ましい塩基としては、水素化ナトリウムが用いられる。反応溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−または1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒を用いることができる。好ましい反応溶媒としては、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフランを用いるのがよい。このカッブリング反応は、−78℃から30℃までの範囲で行うことができ、好ましくは、−30℃から10℃までの範囲で行うのがよい。【0034】上記C4工程におけるカッブリング反応によって得られたクラウンエーテル化合物[XX]は、次ぎに、C5工程において、そのエステル基部分がアルカリ加水分解によって、一般式[XXI]で表される環状エーテル化合物が得られる。このアルカリ加水分解反応は、アルカリの存在下において反応溶媒中で行われる。使用されるアルカリとしては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化アルカリ土類金属、水酸化アンモニウムなどを用いることができる。好ましいアルカリは、水酸化リチウムなどが挙げられる。使用される反応溶媒は、例えば、水、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−または1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒または水とこれらのエーテル系溶媒との混合溶媒などが使用される。好ましい反応溶媒としては、例えば、水、テトラヒドロフランまたは水とテトラヒドロフランとの混合溶媒などが挙げられる。このアルカリ加水分解反応は、1℃から60℃まで、好ましくは、10℃から40℃までの温度範囲で行うのがよい。【0035】上記方法C のC4工程において使用されるジオール体[XIX ]は、例えば、下記方法Dによって製造することができる。【0036】【化27】(式中、R6は、エステル残基を意味する)【0037】上記方法Dのジオール体[XIX ]の製造において、D1工程は、一般式[XXV ]で表されるリンゴ酸エステルのエステル基の選択的還元反応による一般式 [XXVI]で表されるアルコール体の合成反応である。使用される還元剤としては、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、ボラン−テトラヒドロフラン錯体、ボラン− ジエチルエーテル錯体、ボラン− ピリジン錯体、ボラン− アンモニア錯体、ボラン−tert−ブチルアミン錯体、ボラン−N,N−ジエチルアニリン錯体、ボラン−4−ジメチルアミノピリジン錯体、ボラン−4− エチルモルホリン錯体、ボラン− トリフェニルホスフィン錯体、ボラン− トリフェニルホファイト錯体等を用いることができる。好ましくは、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、ボラン−テトラヒドロフラン錯体、ボラン− ジエチルエーテル錯体であり、より好ましくは、ボラン− ジメチルスルフィド錯体、ボラン− テトラヒドロフラン錯体である。反応溶媒は、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−もしくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒を用いることができる。好ましくは、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフランなどが挙げられる。反応温度は、−78℃ないし50℃までの範囲、好ましくは、−10℃ないし20℃の範囲で行うのがよい。続くD2工程では、得られたアルコール体[XXVI]と2−クロロエタノールとの置換反応によって一般式[XXVII ]で表されるジオール体が合成される。使用される塩基としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、n−ブチルリチウムをアルコール体[XXVI]と同モル用いることができるが、好ましくは、水素化ナトリウムを用いるのがよい。反応溶媒は、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−もしくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒を用いることができる。好ましくは、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフランなどが挙げられる。反応温度は、−78℃ないし30℃までの範囲、好ましくは、−30℃ないし10℃の範囲で行うのがよい。【0038】更にまた、方法C のC4工程で使用されるジオール体(XIX) (式中、m は0である)は、次ぎのような方法Eによっても得ることができる。【0039】【化28】(式中、R5, Xおよびq は前記と同じ意味を有する)【0040】この方法では、まず、E1工程において、一般式 [XXVIII]で表されるオキソジオール体が一般式[XXIX]で表されるジアルデヒド体に酸化される。E1工程に使用できる酸化剤としては、例えば、コリンズ試薬(クロム酸とピリジン)、ジョーンズ試薬(クロム酸と硫酸)、PCC(ピリジニウムクロロクロメート) 、クロム酸カリウム、クロム酸ナトリリム、三酸化クロム、重クロム酸カリウム、重クロム酸ナトリウムなどを用いることができる。好ましくは、コリンズ試薬(クロム酸とピリジン)、ジョーンズ試薬(クロム酸と硫酸)、PCC(ピリジニウムクロロクロメート) などを用いるのがよい。反応溶媒は、ジエチルエーテル、ジ−n− プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−もしくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒を用いることができる。好ましくは、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフランなどが挙げられる。反応温度は、−30℃ないし50℃までの範囲、好ましくは、10℃ないし20℃の範囲で行うのがよい。上記ジアルデヒド[XXIX]は、次いで、E2工程において、有機亜鉛試薬とのレホルマッキー(Reformatsky) 反応による一般式[XXX ]で表されるアルコール体に変換される。有機亜鉛試薬としては、例えば、亜鉛と、α−ブロモ酢酸メチル、α−ヨード酢酸メチル、β− ブロモプロピオン酸メチル、β− ヨードプロピオン酸メチル、γ− ブロモ酪酸メチル、γ− ヨード酪酸メチル、δ−ブロモ吉草酸メチル、δ−ヨード吉草酸メチルなどのハロゲン化脂肪酸低級アルキルエステル、2−ブロモ安息香酸メチル、2−ヨード安息香酸メチルなどのハロゲン化芳香族カルボン酸低級アルキルエステル、o−ブロモフェニル酢酸メチル、o−ヨードフェニル酢酸メチルなどのハロゲン置換フェニル脂肪酸低級アルキルエステル、3−ブロモプロパンホスホン酸メチル、4−ヨードブタンホスホン酸メチルなどのハロゲン化アルキルホスホン酸低級アルキルエステル、3−ブロモプロパンホスフィン酸メチル、4−ヨードブタンホスフィン酸メチルなどのハロゲン化アルキルホスフィン酸低級アルキルエステル、3−ブロモプロパンスルホン酸メチル、4−ヨードブタンスルホン酸メチルなどのハロゲン化アルキルスルホン酸低級アルキルエステルなどとから調製されたものが使用される。反応溶媒は、ベンゼン、ヘキサン、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−もしくは1,4−ジオキサン等の有機溶媒を用いることができる。好ましくは、ベンゼンなどが挙げられる。反応温度は、−30℃ないし50℃までの範囲、好ましくは、10℃ないし20℃の範囲で行うのがよい。【0041】更に、得られたアルコール体[XXX ]は、E3工程において、そのアルデヒド基が還元されて一般式[XIX]で表されるジオール体が得られる。使用できる還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウムなどの水素化ホウ素アルカリ金属、シアン化水素化ホウ素ナトリウムなどのシアン化水素化ホウ素アルカリ金属を用いることができ、好ましくは、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムなどの水素化ホウ素アルカリ金属がよい。反応溶媒は、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−もしくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒を用いることができる。好ましくは、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。反応温度は、−30℃ないし50℃までの範囲、好ましくは、−10℃ないし0 ℃の範囲で行うのがよい。【0042】一般式[I]において、R1およびR2が共に水素原子以外の置換基である本発明に係る環状エーテル化合物[I]、つまり一般式[Id]:【0043】【化29】(式中、R’2 は、一般式[IIIa]もしくは[IIIb]で表される残基、芳香環またはボランエーテル残基を意味し、R mおよびdは前記と同じ意味を有する)で表される環状エーテル化合物は、公知の方法により数工程を経て容易に製造することができる。一般式[Id]で表される環状エーテル化合物のうち、例えば、R’2が一般式[IIIa]で表される残基を有する環状エーテル化合物は、例えば、次ぎの方法Fによって製造することができる。【0044】【化30】【0045】【化31】【0046】【化32】【0047】【化33】【0048】【化34】【0049】(式中、R7はエステル残基を意味し、R8はエステル残基を意味し、t は1から7までの整数を意味し、m’は2の整数を意味し、R5, R8, X, m, q, n および tは前記と同じ意味を有する)【0050】まず、上記方法F のF1工程において、クロロアルコール体[XVII] (式中、nは前記と同じ意味を有する) が酸化されて、一般式[XXXV]で表されるアルデヒド体が合成される。使用できる酸化剤としては、例えば、コリンズ試薬(クロム酸とピリジン)、ジョーンズ試薬(クロム酸と硫酸)、PCC(ピリジニウムクロロクロメート) 、クロム酸カリウム、クロム酸ナトリウム、三酸化クロム、重クロム酸カリウム、重クロム酸ナトリウムなどを用いることができ、好ましい酸化剤としてはコリンズ試薬、PCCなどを挙げることができる。反応溶媒としては、例えば、クロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−又は1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒を用いることができ、好ましくはジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランを挙げることができる。反応温度は、−30℃ないし50℃までの範囲、好ましくは−10℃ないし20℃の範囲で行うのがよい。【0051】F1工程で得られたアルデヒド体[XXXV]は、次いでF2工程において、有機亜鉛試薬を用いてレホルマッキー (Reformatsky) 反応に付されて、一般式[XXXVI]で表されるアルコール体が合成される。この反応に使用される有機亜鉛試薬としては、例えば、亜鉛とα−ブロモ酢酸メチル、亜鉛とα− ヨード酢酸メチル、亜鉛とβ−ブロモプロピオン酸メチル、亜鉛とβ− ヨードプロピオン酸メチル、亜鉛とγ− ブロモ酪酸メチル、亜鉛とγ−ヨード酪酸メチル、亜鉛とδ− ブロモ吉草酸メテル、亜鉛とδ−ヨード吉草酸メチル、亜鉛と2−ブロモ安息香酸メチル、亜鉛と2−ヨード安息香酸メチル、亜鉛とo−ブロモフェニル酢酸メチル、亜鉛とo−ヨードフェニル酢酸メチル、亜鉛と3−ブロモプロパンホスホン酸メチル、亜鉛と4−ヨードブタンホスホン酸メチル、亜船と3−ブロモプロパンホスフィン酸メチル、亜鉛と4−ヨードブタンホスフィン酸メチル、亜鉛と3−ブロモプロパンスルホン酸メル、亜鉛と4−ヨードブタンスルホン酸メチルなどから調製したものを用いることができる。反応溶媒としては、例えば、ベンゼン、ヘキサン、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−又は1,4−ジオキサン等の溶媒を用いることができ、好ましくは、ベンゼンなどを挙げることができる。反応温度は−30℃から100℃までの範囲、好ましくは、−20 ℃ないし80℃の範囲で行うのがよい。【0052】F3工程においては、F2工程において得られたアルコール体[XXXVI ]の水酸基部分が塩素化されて、一般式[XXXVII]で表されるジクロル体に変換される。使用できる塩素化剤としては、例えば、チオニルクロリド、スルフリルクロリド、五塩化リン、三塩化リンなどの塩化リン化合物を用いることができ、好ましくはチオニルクロリド、五塩化リンなどを挙げることができる。反応溶媒としては、例えば、ピリジン、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−又は1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒を用いることができ、好ましくはピリジン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。反応温度は−30℃から120℃までの範囲、好ましくは−10 ℃ないし105 ℃の範囲で行うのがよい。【0053】次いで、F4工程においては、上記F3工程において得られたジクロル体[XXXVII]のエステル基が還元されて、一般式[XXXVIII ]で表されるジクロロアルコ―ル体に変換される。使用できる還元剤としては、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジアルコキシアルミニウムナトリウム、水素化ホウ素リチウム等を用いることができ、好ましくは水素化アルミニウムリチウムなどを挙げることができる。反応溶媒としては、例えば、ジエテルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−又は1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒を用いることができ、好ましくはピリジン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。反応温度は−78℃から50℃までの範囲、好ましくは−10℃ないし20℃の範囲で行うのがよい。【0054】F4工程で得られたジクロロアルコール体[XXXVIII ]は、F5工程において、アシル化剤を用いてアシル化されて、一般式[XXXIX ]で表されるエステル体が合成される。使用できるアシル化剤としては、例えば、塩化アセチル、臭化アセチル、ヨウ化アセチル、塩化プロピオニル、臭化プロピオニル、ヨウ化プロピオニル、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、ヨウ化ベンゾイルなどのカルボン酸ハライド、無水酢酸、無水プロピオン酸などの無水脂肪族カルボン酸、無水安息香酸などの無水芳香族カルボン酸などを用いることができ、好ましくは塩化アセチル、無水酢酸などを挙げることができる。反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒などを用いることができ、好ましくはジクロロメタンなどを挙げることができる。塩基としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどの3級アミン系塩基を用いることができる。反応温度は、−30℃から60℃までの範囲、好ましくは−10 ℃ないし20℃の範囲で行うのがよい。【0055】F6工程においては、F5工程で得られたエステル体[XXXIX ]は、一般式[XIX ]で表されるジオール体とカップリング反応に供されて、一般式[XL]で表されるクラウンエーテルエステル体の合成反応である。使用できる塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウム、n−ブチルリチウムなどを用いることができ、好ましくは水素化ナトリウムなどを挙げることができる。また塩基の使用量は、ジオール体の2倍モル用いることができる。反応溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−又は1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒を用いることができ、好ましくはピリジン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。反応温度は−78℃から50℃までの範囲、好ましくは−30℃ないし10℃の範囲で行うのがよい。【0056】F7工程においては、F6工程で得られたクラウンエーテルジエステル体[XL]のエステル基部分がアルカリ加水分解されて、一般式[XLI ]で表されるクラウンエーテルアルコール体が合成される。使用できるアルカリとしては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属化合物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化アルカリ土類金属化合物、水酸化アンモニウムなどの水酸化アンモニウム化合物などを用いることができ、好ましくは水酸化リチウムなどを用いることができる。反応溶媒としては、例えば、水、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−又は1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒または水とこれらのエーテル系溶媒との混合溶媒などを用いることができ、好ましくは水、テトラヒドロフラン、水とテトラヒドロフランとの混合溶媒などを挙げることができる。反応温度は1℃から40℃までの範囲、好ましくは20℃ないし40℃の範囲で行うのがよい。【0057】更に、F8工程においては、F7工程で得られたクラウンエーテルアルコール体[XLI ]は、一般式[XLIa]:Rm −CO − X’(式中、X’はハロゲン原子を意味し、Rmは前記と同じ意味を有する)で表されるカルボン酸ハライドまたは一般式[XLIb]:Rm−CO− O − CO − Rm(式中、R’は前記と同じ意味を有する)で表されるカルボン酸無水物と反応させて、一般式[XLII]で表されるクラウンエーテル化合物に変換される。使用できるアシル化剤としては、例えば、メタクリロイルクロリド、メタクリロイルブロミド、メタクリロイルヨーダイドなどのカルボン酸ハライド、無水メタクリル酸などのカルボン酸無水物を用いることができ、好ましくはメタクリロイルクロリドを用いるのがよい。反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒を用いることができ、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムなどを用いることができる。塩基としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどの3級アミン系塩基を用いることができ、好ましくはピリジン、トリエチルアミンなどを挙げることができる。反応温度は−10℃から40℃までの範囲、好ましくは0 ℃ないし20℃の範囲で行うのがよい。【0058】F9工程において、F8工程で得られたクラウンエーテル化合物[XLII]は、必要に応じて、不斉付加重合反応に付されて、一般式[XLIII ]で表されるポリエーテル化合物が得られる。使用できる不斉配位子としては、例えば、(−)−スパルテイン、(+)−ジメトキシ−1,4−ビス(ジメチルアミノ) ブタン、(+)−1−(2− ピロリジニルメチル) ピロリジンなどを用いることができ、好ましくは(−)−スパルテインなどを用いるのがよい。有機リチウム化合物としては、例えば、フルオレニルリチウム、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウムなどを用いることができ、好ましくはフルオレニルリチウムなどを用いるのがよい。反応溶媒としては、たとえば、トルエン、m−キシレン、ヘキサン、ペンタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、酢酸エチル、クロロホルムなどを用いることができ、好ましくはトルエン、テトラヒドロフランなどを用いるのがよい。反応温度は−100℃から20℃までの範囲、好ましくは−80℃ないし0℃の範囲、更に好ましくは−78 ℃ないし−50 ℃の範囲で行うのがよい。【0059】一般式[I]において、R1 がHであり、R2が式一般式[IIIb]で表される置換アルキレン基である本発明に係る環状エーテル化合物[I]は、公知の方法により数工程を経て容易に製造することができる。例えば、一般式[XLVII]で表されるクラウンエーテル化合物は、次ぎのような方法Gによって製造することができる。【0060】【化35】【0061】(式中、R9 はエステル残基を意味し、R’1 は一般式[I’a]で表される残基を意味し、R’2 は一般式[IIIb]で表される置換アルキレン基を意味し、R3, R4, m, n および qは前記と同じ意味を有する)【0062】(G1 工程)G1工程は、一般式[XLV ]で表されるクラウンカルボン酸エステルのエステル基の還元による一般式[XLVI]で表されるアルコール体の合成反応である。使用できる還元剤としては、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジアルコキシアルミニウムナトリウム、水素化ホウ素リチウム等を用いることができ、好ましくは水素化アルミニウムリチウムを用いるのがよい。反応溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−又は1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒を用いることができ、好ましくはジエチルエーテル又はテトラヒドロフランを用いるのがよい。反応温度は−78℃ないし50℃の範囲、好ましくは、−10℃ないし20℃の範囲で行うのがよい。【0063】(G2 工程)G2工程においては、G1工程で得られたアルコール体[XLVI]をジアルコキシボランとカップリング反応させて、一般式[XLVII ]で表されるクラウンエーテル化合物が得られる。使用できるアルコキシボランとしては、例えば、カテコ―ルボラン、エチレングリコールボラン、プロピレングリコールボラン、メトキシボラン、(1S,2S)−または(1R,2R)−1,2−ジフェニルエチレングリコールボラン、(1S,2S)−または(1R,2R)−1,3−ジフェニルプロピレングリコールボランなどを用いることができる。好ましいカップリング化剤としては、カテコールボラン又は(1S,2S)−または(1R,2R)−1,2−フェニルエチレングリコールボランを用いるのがよい。反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒を用いることができる。好ましい溶媒としてはテトラヒドロフラン又はジエチルエーテルを用いるのがよい。反応温度は−10℃ないし20℃の範囲、好ましくは0℃ないし10℃の範囲で行うのがよい。【0064】また、一般式[I]において、R1が一般式[I’a]:光学活性環状エーテル化合物、つまり、一般式[Ie ]:【0065】【化36】(式中、R‘1は、−(CH2)d OCO−R3で表される残基であり、R‘2は一般式[IIIb]で表される置換アルキレン基である)【0066】で表される環状エーテル化合物は、それ自体公知の方法で合成することができる。かかる光学活性環状エーテル化合物は、例えば、下記方法F’によって製造することができる。【0067】【化37】【0068】【化38】【0069】【化39】【0070】(式中、Mは、例えば、ナトリウムなどのアルカリ金属またはカルシウムなどのアルカリ土類金属を意味し、R3, R4, Rm, Rp, d, m, nおよびqは前記と同じ意味を有する)【0071】(F10工程)上記方法F’において、F10工程は、一般式[XLV ]で表されるアルコール体と、一般式[XLVI]で表されるアルコキシボランとのカップリング反応ならびにカルボン酸塩部分の中和反応であって、F10工程によって、一般式[XLII]で表されるボラン・カルボン酸体が得られる。この反応に使用できるアルコキシボランとしては、例えば、エチレングリコールボラン、プロピレングリコールボラン、ジメトキシボラン、カテコールボラン、(1S,2S)−または(1R,2R)−1,2−ジフェニルエチレングリコールボラン、(1S,2S)−または(1R,2R)−1,3−ジフェニルプロピレングリコールボランなどが挙げられる。好ましいアルコキシボランとしては、例えば、カテコールボラン、(1S,2S)−または(1R,2R)−1,2−ジフェニルエチレングリコールボラン、(1S,2S)−または(1R,2R)−1,3−ジフェニルプロピレングリコールボランなどが挙げられる。中和に使用する酸としては、例えば、1N塩酸、2N塩酸、1N硫酸、2N硫酸などが挙げられ、好ましい酸としては、例えば、1N塩酸などが挙げられる。F10工程は反応溶媒中で行われ、使用される反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系有機溶媒が挙げられる。好ましい反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどが挙げられる。また反応温度は、例えば、ー10℃から20℃、好ましくは0℃から10℃までの範囲であるのがよい。【0072】(F11工程)F11工程は、一般式[XMVII ]で表されるボラン・カルボン酸体を還元して、一般式[XLVIII]で表されるアルコール体を合成する反応である。使用される還元剤としては、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウムナトリウム、水素化ジメトキシアルミニウムナトリウムなどの水素化ジアルコキシアルミニウムナトリウム、ボラン、水素化ホウ素リチウムなどが挙げられ、好ましくは、例えば、水素化アルミニウムリチウム、ボランなどが挙げられる。使用される反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系有機溶媒が挙げられる。好ましい反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどが挙げられる。また反応温度は、例えば、ー78℃から50℃、好ましくはー10℃から20℃までの範囲であるのがよい。【0073】更に、F8’工程においては、F11工程で得られた一般式[XLVIII]で表されるクラウンエーテルカルボン酸塩の水酸基部分のアシル化反応であって、一般式[XLIX]で表されるクラウンエーテルエステルが得られる。使用できるアシル化剤としては、例えば、メタクリロイルクロリド、メタクリロイルブロミド、メタクリロイルヨーダイド、無水メタクリル酸などのメタクリロイル化剤を用いることができ、好ましくはメタクリロイルクロリドを用いるのがよい。反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒を用いることができ、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムなどを用いることができる。塩基としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどの3級アミン系塩基を用いることができ、好ましくはピリジン、トリエチルアミンなどを挙げることができる。反応温度はー80℃から20℃までの範囲、好ましくはー80℃ないし0℃までの範囲、より好ましくはー78℃ないしー50℃までの範囲で行うのがよい。【0074】更に、F9’工程においては、F8’工程で得られたクラウンエーテルエステル[XLIX]を不斉付加重合反応に付して、一般式[L]で表されるポリエーテル化合物が得られる。使用できる不斉配位子としては、例えば、(−)−スパルテイン、(+)−ジメトキシ−1,4−ビス(ジメチルアミノ) ブタン、(+)−1−(2− ピロリジニルメチル) ピロリジンなどを用いることができ、好ましくは(−)−スパルテインなどを用いるのがよい。有機リチウム化合物としては、例えば、フルオレニルリチウム、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウムなどを用いることができ、好ましくはフルオレニルリチウムなどを用いるのがよい。反応溶媒としては、たとえば、トルエン、m−キシレン、ヘキサン、ペンタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、酢酸エチル、クロロホルムなどを用いることができ、好ましくはトルエン、テトラヒドロフランなどを用いるのがよい。反応温度はー100℃から20℃までの範囲、好ましくはー80℃ないし0℃の範囲、更に好ましくはー78℃ないしー50℃の範囲で行うのがよい。【0075】また、一般式[I]において、R1が水素原子であり、R2が一般式[IIIc]で表される環状ボレート残基である環状エーテル化合物、つまり一般式[If]:【0076】【化40】(式中、w1 は1から7までの整数を意味し、w2 は、1から6までの整数を意味する)で表される環状ボレートが、例えば、下記方法Hで製造される。【0077】【化41】2つに分ける【0078】【化42】【0079】【化43】矢印(H5工程を入れる)(式中、Rm, Rp, d, m, n, q, w1 およびw2は前記と同じ意味を有する)【0080】つまり、上記方法Hで示すように、まず、H1工程において、例えば、一般式[LI]で表されるジオール化合物にボラン錯体を反応させて、一般式[LII ]で表されるジボレート体を合成する。この合成反応に使用するジオール化合物[LI]としては、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールなどの炭素原子数が1から6までの低級アルカンジオールなどが挙げられる。好ましいジオール化合物としては、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。また、使用されるボラン錯体としては、例えば、ボラン・ジエチルエーテル錯体、ボラン・テトラヒドロフラン錯体、ボラン・ジメチルスフィド錯体、ボラン・ピリジン錯体、ボラン・アンモニア錯体、ボラン・第三級ブチルアミン錯体、ボラン・N,N−ジエチルアニリン錯体、ボラン・4ージメチルアミノピリジン錯体、ボラン・ジエチルエーテル錯体、ボラン・4ーエチルモルホリン錯体、ボラン・トリメチルアミン錯体、ボラン・トリフェニルホスフィン錯体、ボラン・トリフェニルホスファイト錯体などが挙げられる。好ましいボラン錯体としては、たとえば、ボラン・ジエチルエーテル錯体、ボラン・テトラヒドロフラン錯体などが挙げられる。H1工程は反応溶媒中で行われ、使用される反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系有機溶媒が挙げられる。好ましい反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどが挙げられる。また反応温度は、例えば、ー50℃から40℃、好ましくはー10℃から20℃までの範囲であるのがよい。【0081】次いで、H2工程において、得られたジボレート体[LII ]を更にジオール化合物と反応させて、一般式[LIII]で表されるジオール体を合成する。H2工程において使用されるジオール化合物は、H1工程において使用されるジオール化合物[LI]と同様であって、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールなどの低級アルカンジオールなどが挙げられ、また好ましいジオール化合物としては、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。本反応も、H1工程における反応と同様に、反応溶媒中で行われ、使用される反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系有機溶媒が挙げられ、好ましい反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどが挙げられる。また反応温度は、例えば、ー50℃から40℃、好ましくはー10℃から20℃までの範囲であるのがよい。【0082】H2工程で得られたジオール体[LIII]は、更に、H3工程において、ボラン錯体と反応させて、一般式[If]で表される環状ボレート体に変換される。この工程において使用されるボラン錯体としては、例えば、ボラン・ジエチルエーテル錯体、ボラン・テトラヒドロフラン錯体、ボラン・ジメチルスフィド錯体、ボラン・ピリジン錯体、ボラン・アンモニア錯体、ボラン・第三級ブチルアミン錯体、ボラン・N,N−ジエチルアニリン錯体、ボラン・4ージメチルアミノピリジン錯体、ボラン・ジエチルエーテル錯体、ボラン・4ーエチルモルホリン錯体、ボラン・トリメチルアミン錯体、ボラン・トリフェニルホスフィン錯体、ボラン・トリフェニルホスファイト錯体などが挙げられる。好ましいボラン錯体としては、たとえば、ボラン・ジエチルエーテル錯体、ボラン・テトラヒドロフラン錯体などが挙げられる。H3工程も反応溶媒中で行われ、使用される反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系有機溶媒が挙げられる。好ましい反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどが挙げられる。また反応温度は、例えば、ー50℃から40℃、好ましくはー10℃から20℃までの範囲であるのがよい。【0083】次ぎに、H4工程において、得られた環状ボレート体[If]を、一般式[LV]で表されるクラウンエーテルカルボン酸と、一般式[LVI ]:Ra − COOH (式中、Raは、水素原子、炭素原子数が1から6までの非置換もしくは置換低級アルキル基、炭素原子数が1から6までの非置換もしくは置換低級アルケニル基、芳香族カルボン酸残基、芳香脂肪族カルボン酸残基、ジカルボン酸残基またはアミノ酸残基を意味する)で表されるカルボン酸とカップリングして、一般式[LVII]で表される環状エーテル化合物を合成する。H4工程において使用されるクラウンエーテルカルボン酸[LV]としては、例えば、2−(12−クラウン−4)−酢酸、2−(12−クラウン−4)−プロピオン酸、2−(12−クラウン−4)−酪酸、2−(12−クラウン−4)−吉草酸、2−(12−クラウン−4)−ヘキサン酸、3−(15−クラウン−5)−酢酸、3−(15−クラウン−5)−プロピオン酸、3−(15−クラウン−5)−酪酸、3−(15−クラウン−5)−吉草酸、3−(15−クラウン−5)−ヘキサン酸、4−(18−クラウン−6)−酢酸、4−(18−クラウン−6)−プロピオン酸、4−(18−クラウン−6)−酪酸、4−(18−クラウン−6)−吉草酸、4−(18−クラウン−6)−ヘキサン酸などを挙げることができる。これらのクラウンエーテルカルボン酸のうち、好ましいものとしては、例えば、2−(12−クラウン−4)−プロピオン酸、3−(15−クラウン−5)−プロピオン酸、4−(18−クラウン−6)−プロピオン酸、、4−(18−クラウン−6)−酢酸などが挙げられる。【0084】また、使用されるカルボン酸[LVI ]としては、非置換もしくは置換、飽和もしくは不飽和、脂肪族、芳香族もしくは芳香脂肪族カルボン酸ならびにジカルボン酸およびアミノ酸が包含される。飽和脂肪族カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、乳酸などの炭素原子数が1ないし7個の直鎖状もしくは分岐状の低級アルカンカルボン酸が挙げられる。芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸などが挙げられる。芳香脂肪族カルボン酸としては、例えば、トランス桂皮酸、シス桂皮酸などが挙げられる。飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、d−酒石酸、l−酒石酸、メソ酒石酸、アジピン酸などが挙げられる。不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。またアミノ酸としては、例えば、グリシン、L−バリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−チロシンなどが挙げられる。更に、これらのカルボン酸は置換されていても、置換されていなくてもよく、置換されている場合の置換基としては、例えば、塩素、フッ素、臭素、ヨードのハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、メチル、エチル、プロピルなどの低級アルキル基、ビニルなどの不飽和低級アルキル基、アセチルなどのアルキルカルボニル基などが挙げられる。これらの置換基を持つカルボン酸としては、例えば、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリブロモ酢酸、トリヨード酢酸、d−乳酸、l−乳酸、dl−乳酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、サリチル酸、ビニル酢酸、アセチルサリチル酸などが挙げられる。これらのカルボン酸のうち、好ましいものとしては、例えば、酢酸、安息香酸、サリチル酸、d−酒石酸、l−酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、d−乳酸、l−乳酸、トリフルオロ酢酸、L−トリプトファン、L−チロシンなどが挙げられる。H4工程も反応溶媒中で行われ、使用される反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系有機溶媒が挙げられる。好ましい反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどが挙げられる。また反応温度は、例えば、ー50℃から40℃まで、好ましくはー10℃から20℃までの範囲であるのがよい。【0085】上記のH4工程で得られた環状エーテル化合物[LVII](式中、R’1 が一般式[1’a ]で表されるRm−COO(CH2)d−残基を意味する)は、次いで、前述した方法と同様にして不斉付加重合反応に付されて、一般式[LVIII]で表される環状ポリエーテル化合物が得られる。【0086】次ぎに、上記各方法にて得ることができる光学活性環状エーテル化合物[I]を脱塩剤として用いて脱塩溶媒を製造する脱塩溶媒の製造方法について説明する。本発明において、脱塩水または脱塩有機溶媒を製造する方法は、光学活性環状エーテル化合物[I]に、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジンなどの極性有機溶媒中で陽イオンと陰イオンの両方を同時に保持させることによって行うことができる。【0087】この脱塩溶媒の製造方法においては、環状エーテル化合物[I]を、例えば、カラムクロマトグラフィー用のガラス管に充填し、塩類が溶解した水溶液又は有機溶媒を展開して、そのフラクションを集めることにより脱塩溶媒を製造することができる。使用できる塩類の種類としては、無機塩に限らず有機塩も使用することができる。保持される無機塩の陽イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオンなどのアルカリ金属イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオンなどが挙げられる。また、無機塩の陰イオンとしては、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、水酸化物イオン、アミドイオンなどが挙げられる。他方、有機塩の陽イオンとしては、例えば、4級アンモニウムイオン、ジアゾニウムイオン、オキソニウムイオンなどが挙げられる。また、有機塩の陰イオンとしては、例えば、ギ酸イオン、酢酸イオンなどの脂肪族カルボン酸イオン、安息香酸イオンなどの芳香族カルボン酸イオン、メトキシドイオン、エトキシドイオンなどのアルコキシドイオン、フェノキシドイオンなどの芳香族アルコラート、ナトリウムアミドなどのアミドイオンなどが挙げられる。【0088】次ぎに、保持されたイオンの溶出法、つまり脱塩剤の再生法について説明する。つまり、本発明に係る環状エーテル化合物[I]に保持された前述したようなイオンは、加温した脱塩水、加温した脱塩有機溶媒(例えば、ジクロロメタンなどの脱塩有機溶媒)、加温した非脱塩水、加温した非脱塩有機溶媒(例えば、メタノールなどの非脱塩有機溶媒)などを展開させることによって、保持したイオンを溶出させて、簡単に再生することができる。加温した脱塩水または加温した脱塩有機溶媒の温度条件としては、20℃〜50℃の範囲、好ましくは30℃〜40℃の範囲であるのがよい。他方、加温した非脱塩水または加温した非脱塩有機溶媒の温度条件としては、40℃〜80℃の範囲、好ましくは50℃〜60℃の範囲であるのがよい。【0089】更に、本発明に係る光学活性環状エーテル化合物[I]を光学分割剤として用いるラセミ体の光学分割法について、以下に説明する。【0090】本発明に係る光学活性環状エーテル化合物[I]を、例えば、カラムクロマトグラフィー用のガラス管に充填し、ラセミ化合物を吸着させた後、適当な溶媒で展開し、得られたフラクションを集めることにより光学分割することができる。【0091】使用することができるラセミ化合物としては、例えば、フェニルグリシンなどのアミノ酸類、プロリノールなどのアミノアルコール類、α− フェネチルアルコールなどのアルコール類、α−フェネチルアミンなどのアミン類、3−メチルヘキサンなどのアルカン、トランス−1,2−ジメチルシクロヘキサンなどのシクロアルカン、3−メチル−1− ペンテンなどのアルケン、3−メチル−1−ペンチンなどのアルキン、2−フェニルブタンなどの芳香族炭化水素、2−クロロペンタンなどのハロゲン化アルキル、3−クロロペンテンなどのハロゲン化アルケニル、3−クロロ−1−ペンチンなどのハロゲン化アルキニル、α−フェネチルクロリドなどのハロゲン化芳香族炭化水素、トランス−1,2− シクロペンタンジオールなどのC2キラリティー化合物、ビナフトールなどの軸不斉化合物、ヘキサヘリセンなどの面不斉化合物、ポリメタクリル酸トリフェニルメチルなどのラセン構造の化合物などが挙げられる。また、使用できる溶媒としては、ラセミ化合物は溶解するが、光学活性環状エーテル化合物[I]を溶解しないかまたはほとんど溶解しないものであればいずれも使用することができる。かかる溶媒としては、例えば、水またはヘキサンなどが挙げられる。【0092】また他の光学分割法として、優先晶出法を用いることができる。この方法では、光学活性環状エーテル化合物[I]と塩や錯体を形成することができるラセミ化合物を光学分割することができる。このようなラセミ化合物としては、例えば、フェニルグリシンなどのアミノ酸類、プロリノールなどのアミノアルコール類、α−フェネチルアルコールなどのアルコール類、α− フェネチルアミンなどのアミン類、3−メチルヘキサンなどのアルカン、トランス−1,2−ジメチルキクロヘキサンなどのシクロアルカン、3−メチル−1−ペンテンなどのアルケン、3−メチル−1−ペンチンなどのアルキン、2−フェニルブタンなどの芳香族炭化水素、2−クロロペンタンなどのハロゲン化アルキル、3−クロロペンテンなどのハロゲン化アルケニル、3−クロロ−1−ペンチンなどのハロゲン化アルキニル、α−フェネチルクロリドなどのハロゲン化芳香族炭化水素、トランス−1,2−シクロペンタンジオールなどのC2キラリティー化合物、ビナフトールなどの軸不斉化合物、ヘキサヘリセンなどの面不斉化合物、ポリメタクリル酸トリフェニルメチルなどのラセン構造の化合物などが挙げられる。この優先晶出法による光学分割法に使用できる溶媒としては、ラセミ化合物を溶解し、かつ、光学活性環状エーテル化合物[I]をも溶解するものが用いられる。かかる溶媒としては、例えば、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、イソプロパノールなどのアルコール類)などを挙げることができる。【0093】本発明に係る光学活性環状エーテル化合物[I]は高い光学分割能を有している。というのは、本発明に係る光学活性環状エーテル化合物[I]は、分子構造中に陰性が大きい原子と相互作用する部位と、陽性が大きい原子と相互作用する部位との両方を持ち、更にその不斉点がその相互作用する部位と極めて近い位置に存在するためである。【0094】以下に、本発明に係る光学活性環状エーテル化合物[I]の不斉反応への利用法について説明する。本発明に係る光学活性環状エーテル化合物[I]は、不斉還元反応、不斉アルキル化反応、不斉アルドール反応、不斉マイケル付加反応、不斉脱離反応などの一般的な不斉反応に利用することが可能である。また、光学活性環状エーテル化合物[I]を触媒量用いることで不斉触媒反応も可能である。一般式[I]で表される本発明に係る光学活性環状エーテル化合物は、前述したように、分子構造中に陰性が大きい原子と相互作用する部位と、陽性が大きい原子と相互作用する部位との両方を持ち、更にその不斉点がその相互作用する部位と極めて近い位置に存在するために、前述したような種々の不斉反応に利用することができることによって、高い立体選択性を有している。【0095】【発明の効果】一般式[I]で表される本発明に係る環状エーテル化合物又は光学活性環状エーテル化合物は、水溶液又は有機溶媒中の塩類を保持することができ、脱塩水及び脱塩有機溶媒を製造するために使用することができる。前述した各種のイオンを保持させた環状エーテル化合物又は光学活性環状エーテル化合物[I]は、それを加温した脱塩水、加温した脱塩有機溶媒、加温した非脱塩水または加温した非脱塩有機溶媒で処理することによって、簡単に再生することができる。また、一般式[I]で表される光学活性環状エーテル化合物を光学分割剤として用いることによって、ラセミ化合物を光学分割することができる。更にまた、一般式[I]で表される光学活性環状エーテル化合物を不斉反応へ利用することによって高い立体選択性を得ることができる。【0096】実施例1:クラウンエーテル化合物[XXIa]の合成クラウンエーテル化合物[XXIa]は、下記方法によって製造することができる。【0097】【化44】【0098】【化45】【0099】まず、ジエチレングリコール[XVa ] 100 g (1 mol)とピリジン87 g (1.1 mol)の溶液を−10 ℃に冷却し、撹拌しながらチオニルクロリド309.4g(2.6 mol) を2 時間掛けて滴下した。その俊、105 ℃で6 時間加熱した。温度を室温まで戻し、精製水300 ml を加えた後、エーテル2L(200mlx 10) で抽出し、無水硫酸水ナトリウムで乾燥した。次いで、無水硫酸水ナトリウムをろ去した後、溶媒を減圧留去し、残査を蒸留により精製して、ジクロル体[XVIa]105.8g (0.74mol) を得た。【0100】次ぎに、水素化ナトリウム44.4 g (40%, 0.74 mol)を無水ジエチルエーテル2Lに溶解し、−10 ℃に冷却した後、撹拌しながらエチレングリコール45.9 g (0.74mol)をゆっくりと加え、徐々に室温まで戻し、ガスの発生が終わった後、得られたジクロル体[XVIa]105.8 g (0.74mol) を徐々に加えて4 時間撹拌した。この混合物を氷冷した後、精製水5O ml を加え、エーテル層を精製水 (50ml x 2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ついで、無水硫酸ナトリウムをろ去した後、溶媒を減圧留去し、残査を蒸留によって精製し、クロルアルコ一ル体[XVIIa]85.9 g (0.51 mol)を得た。得られたクロロアルコール体[XVIIa ]85.9 g (0.51mol)をピリジン44.3 g(0.56 mol) に溶解して−10 ℃に冷却し、撹拌しながらチオニルクロリド78.98g(0・66mol) を2 時間かけて滴下した。次いで、105 ℃で6 時間加熱した後、温度を室温まで戻し、精製水 300 ml を加え、エーテル 1L(100 ml x10) で抽出した。続いて、得られた抽出物を、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、その無水硫酸ナトリウムをろ去した後、溶媒を減圧留去して得られた残査を蒸留により精製したところ、ジクロル体[XVIIIa]76.8g(0.40 mol) を得た。【0101】次ぎに、水素化ナトリウム48 g (40%, 0.80 mol)を無水ジエチルエーテル2 Lに溶解し、−10 ℃に冷却した後、撹拌しながらジオールエステル[XIXa]45.9g(0.74 mol)をゆっくりと加え、徐々に室温まで戻し、ガスの発生が終わった後、得られたジクロル体[XVIIIa] 74.39 g (0.40mol) を徐々に加えて4時間撹拌した。この混合物を氷冷した後、精製水5O ml を加え、エーテル層を精製水(50 mlx 2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ついで、無水硫酸ナトリウムをろ去した後、溶媒を減圧留去し、残査を蒸留によって精製し、3−(15−クラウン−5)−プロピオン酸メチル[XXa]26.4 g (92 mmol) を得た。【0102】更に、得られた3−(15− クラウン−5)−プロピオン酸メチル[XXa ] 26.4 g (92 mmol) を2M 水酸化リチウム水溶液 46 mlに添加し、40℃で3時間撹拌した。溶媒を減圧留去して、残査を乾燥させると、3−(15−クラウン−5)−プロピオン酸リチウム[XXIa]が25.6g (92 mmol)の割合で定量的に得られた。【0103】実施例2:3−( ジエチレングリコール)−プロピオン酸メチル[XXXIa ]の合成3−( ジエチレングリコール)−プロピオン酸メチル[XXXIa ]は、下記方法によって合成することができる。【0104】【化46】【0105】まず、無水ジクロロメタン50 ml 中にPCC 64.6 g (0.3 mol)を懸濁させ、十分に撹拌しながら、無水ジクロロメタン5O ml に溶解したジエチレングリコール[XXVIII]10.6g (0.1 mol) を一度に加え、室温で2 時間撹拌した。沈殿物を分離し、ジクロロメタン200 mlで洗浄した後、ジクロロメタン層と合わせ、精製水(100mlx 2)で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、得られた残査を蒸留により精製し、ジアルデヒド体[XXIX] 8.67 g(85mmol) を定量的に得た。β− ブロモプロピオン酸メチルと亜鉛より調製した有機亜鉛試薬19.7 g (85mmol)を無水ベンゼン200 mlに溶解し、上記で得たジアルデヒド体[XXIX]8.67g(85mmol)の無水ベンゼン溶液50 ml を滴下し、1 時間加熱還流した。氷冷後、飽和塩化アンモニウム水溶液60 ml を注意して加え、撹拌し、ベンゼン層を分取した。水層をベンゼン(30mlx 3) で抽出し、ベンゼン層に合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(30 ml x 2) で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧流去し、得られた残査を蒸留により精製すると、アルコール体[XXXa]11.8g(62mmol) が得られた。得られたアルコール体[XXXa] 11.8 g (62 mmol) をエタノール50 ml に溶解し、撹拌しながら水素化ホウ素ナトリウム1.178 g(31mmol) を徐々に加え、室温で2 時間撹拌した。精製水20 ml を加えて撹拌し、溶媒を減圧留去し、得られた残査をジエチルエーテル100 mlで抽出し、飽和塩化ナトリウム水溶液(10ml)で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、得られた残査を蒸留により精製すると、3−(ジエチレングリコール)− プロピオン酸メチル[XXXIa] 9.8 g (51 mmol)が定量的に得られた。【0106】実施例3:ポリメタクリル酸8−( γ− プロピオン酸リチウム) 15− クラウン−5−(2−n− プロピル) [XLIIIa]の合成ポリメタクリル酸8−( γ− プロピオン酸リチウム) 15− クラウン−5−(2−n−プロピル) [XLIIIa]は下記方法によって得ることができた。【0107】【化47】【0108】【化48】【0109】【化49】【0110】【化50】【0111】(F1a工程)無水ジクロ口メタン300ml 中にPCC32.3 g (0.15 mol)を懸濁させ、十分に撹拌しながら、無水ジクロロメタン50mlに溶解したクロロアルコールール[XVIIa]16.85g (0.1m mol)を一度に加え、室温で2 時間撹拌した。沈殿物を分離し、ジクロロメタン100 mlで洗浄した後、ジクロロメタンと合わせ、精製水(50ml×2)で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、残査を蒸留により精製すると、アルデヒド体[XXXVa]15.15 g (91mmol) を定量的に得た。【0112】(F2a工程)β− ブロモプロピオン酸メチルと亜船より調製した有機亜鉛試薬21.1 g (91mmol)を無水ベンゼン200 mlに溶解し、F1a 工程において得られたアルデヒド[XXXVa]15.15g (91 mmol) の無水ベンゼン溶液50mlを滴下し、1時間加熱還流した。氷冷後、飽和塩化アンモニウム水溶液65mlを注意して加えて撹拌し、ベンゼン層を分取した。水層をベンゼン(30mlx3)で抽出し、ベンゼン層と合わせて、飽和塩化ナトリウム水溶液(30ml×2)で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、残査を蒸留により精製すると、アルコ―ル体[XXXVIa]19.9g (78mmol)を得た。【0113】(F3a工程)F2a 工程で得られたアルコール体[XXXVIa]19.9 g (78 mmol)とピリジン6.78g (85.8 mmol) の混液を―10℃に冷却し、撹拌しながらチオニルクロリド12.0g(101mmol) を30分掛けて滴下した。その後、105 ℃で6 時間加熱した。温度を室温まで戻して精製水50mlを加えた後、エーテル200ml(50ml x 4)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。次いで、無水硫酸ナトリウムをろ去し、溶媒を減圧留去し、残査を蒸留により精製すると、ジクロル体[XXXVIIa]14.7g (53.8 mmol)が得られた。【0114】(F4a工程)F3a 工程で得られたジクロル体[XXXVIIa ]14.7 g (53.8 mmol)を無水エーテル200ml に溶解し、−10 ℃に冷却し、撹拌しながら水素化アルミニウリチウム1.64g(43.2 mmol)を少しずつ加え、室温に戻し、懸濁したまま5 時間撹拌した。氷冷後、精製水10mlを注意して加えた後、1N硫酸20mlを加えて、撹拌して沈殿物を分取した。これをエ―テル30mlで洗浄し、有機層と合わせた。分離した水層をエーテル60ml(20mlx3)で抽出し、有機層に合わせた後、飽和食塩水25mlで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。次いで、無水硫酸ナトリウムをろ去した後、溶媒を減圧留去し、残査を蒸留により精製すると、クロロアルコール体[XXXVIIIa]11.9g(48 mmol)が定量的に得られた。【0115】(F5a工程)F4a 工程で得られたジクロロアルコ―ル体[XXXVIIIa]11.9 g (48 mmol)をジクロロメタン300ml に溶解し、ピリジン11.6gを加えて撹件した後、氷冷した。次いで、塩化アセチル3.82g (48.6 mmol)を徐々に加え、10分間撹拌した後、室温に戻して3 時問撹拌した。このようにして得られた反応液に精製水30mlを加えて2−3分間撹拌し、ジクロロメタン2Lで抽出し、飽和食塩水(150ml×3)で洗浄した。次いで、無水硫酸マグネシウムで30分間乾燥し、ろ過した後、ろ液を減圧留去し、残査を蒸留により精製すると、アセテート体[XXXIXa]13.1g(45.6 mmol)が定量的に得られた。【0116】(F6a工程)水素化ナトリウム5.47 g (40%、91.2 mmol)を無水ジエチルエーテル2Lに溶解して、−10 ℃に冷却した後、撹拌しながらジオールエステル[XIXa]8.76g(45mmol) をゆっくりと加え、徐々に室温にまで戻し、ガスの発生が終わった後、アセテート体13.1 g (45.6 mmol)を徐々に加えた。この混合物を4時間撹拌した後、氷冷し、精製水6mlを加えて、エーテル層を精製水(6ml×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。次いで、無水硫酸ナトリウムをろ去して、溶媒を減圧留去し、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製すると、クラウンエーテルジエステル体[XL]4.81g(11.8 mmol)が得られた。【0117】(F7a工程)F6a 工程で得られたクラウンエーテルジエステル体[XL]4.81 g (0117 mmol)を2N水酸化リチウム水溶液12mlに加え、40℃で3時間撹拌したた後、溶媒を減圧留去し、残査をジエチルエーテル200mlで抽出し、飽和食塩水(10ml ×2)で洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、無水硫酸ナトリウムをろ去した後、溶媒を減圧留去すると、クラウンエーテルカルボン酸塩[XLI]3.99g (11.2mmol) が定量的に得られた。【0118】(F8a工程)F7a 工程で得られたクラウンエーテルカルボン酸塩[XLI ]3.99 g (11.2m mol)をジクロロメタン80mlに溶解し、ピリジン2.7gを加えて撹拌し、氷冷後、メタクリロイルクロライド1.17g(11.2 mmol)を徐々に加えた。この混合液を10分間撹拌した後、室温に戻し、3 時間撹拌した。得られた反応液に精製水10m1を加えて2−3 分間撹拌し、ジクロロメタン1Lで抽出した。飽和食塩水(50ml×2)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで30分間乾燥し、ろ過した後、ろ液を減圧留去し、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付して精製すると、クラウンエーテルメタクリル酸エステル[XLIIa]4.13g (9.74 mmol)が定量的に得られた。【0119】(F9a工程)F8a 工程で得られたクラウンエーテルメタクリル酸エステル[XLIIa ]4.24 g(10 mmol)をトルエン120ml に溶解し、−78℃に冷却した。この溶液に(−)−スパルテイン40mg(0.17mmol) と9−フルオレニルリチウム29mg(0.17 mmol) との錯体(トルエン溶液)を加えて、20時間撹拌した。得られた反応液に精製水30mlを加えて2−3分間撹拌した後、トルエン層を精製水(30ml ×3)で洗浄した。次いで、無水硫酸マグネシウムで30分間乾燥し、ろ過した後、ろ液を減圧留し、残査を再結晶すると、ポリメタクリル酸8−(γ−プロピオン酸リチウム)−15− クラウン−5−(2−n−プロピル) [XLIIIa](4.07 g)が得られた。【0120】実施例4:2−(0− カテコールボランオキシ)−n−プロピル−15−クラウン−5[XLVIIa]の合成法【0121】【化51】【0122】(G1a工程)3−(15−クラウンー5)− プロピオン酸メチル[XLVa]2.87 g (10 mmol)を無水エーテル40 ml に溶解し、−10℃に冷却し、撹拌しながら水素化アルミニウムリチウム304mg (8 mmol) を少しずつ加え、室温に戻し、懸濁したまま5時間撹拌した。次いで、精製水2mlを注意して添加した後、1N硫酸4 mlを加えて撹拌し、沈殿物を分取した。これをエーテル6mlで洗浄し有機層に合わせた。次ぎに、水層をエーテル15 ml(5ml x 3) で抽出し、有機層を合わせ、飽和食塩水5 mlで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。更に、無水硫酸ナトリウムをろ去した後、溶媒を減圧留去し、残査を蒸留により精製したところ、3−(15−クラウン−5)−n−プロパノール[XLVIa]2.38g (9.2 mmol) が定量的に得られた。【0123】(G2a工程)3−(15−クラウン−5)−n−プロパノール[XLVIa ]2.38 g (9.2 mmol) をジエチルエーテル40 mに溶解し、氷冷後撹拌しながら1N−カテコールボランジエチルエーテル溶液9.2mlを注意しながら少しずつ加えた。その後、30分間撹拌した後、反応液に精製水20 ml を加えて数分間撹拌し、水層を分取し、ジエチルエーテル(10ml x 2) で抽出後、有機層に合わせ、飽和食塩水(5ml x 2)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。次いで、無水硫酸ナトリウムをろ去した、ろ液を減圧留去し、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付して精製したところ、2−(0−カテコ−ルボランオキン)−n−プロピル−15−クラウン−5[XLVIIa]3.33g(8.8 mmol) が定量的に得られた。【0124】実施例5:上記実施例1または2に従って同様にして下記の化合物[IX](式中、R1およびR2はそれぞれ水素原子を、m は整数2を表す)を製造した。【0125】【表1】【0126】【表2】【0127】実施例6:上記実施例1または2に従って同様にして下記の化合物[X](式中、R1およびR2はそれぞれ水素原子を、m は整数2を表す)を製造した。【0128】【表3】【0129】【表4】【0130】実施例7:ポリメタクリル酸8−(カテコールボランオキシ−n− プロピル)−15−クラウン−5−(2−n− プロピル) の合成法(方法Fa)【0131】【化52】【0132】【化53】【0133】(F10a 工程)F10a 工程において、一般式[XLVa]で表されるアルコール体と、一般式[XLVIa ]で表されるアルコキシボランとがカップリング反応に付されると共に、そのカルボン酸塩部分が中和されて、一般式[XLVIIa]で表されるクラウンエーテル・ボレート体が得られた。クラウンエーテル・カルボン酸塩[XLVa]3.5 mg (10 mmol)をテトラヒドロフラン40 ml に溶解し、得られた溶液を氷冷後、撹拌しながら1Mカテコールボランテトラヒドロフラン溶液[XLVIa]10ml を注意しながら少しずつ添加した。添加終了後、混合液を30分間撹拌した後、反応液に精製水 10 mlを添加して数分間撹拌し、1M塩酸水 20 mlを添加した後、更に10分間撹拌した。得られた反応液から溶媒を減圧留去して得られた残査をジエチルエーテル100ml で抽出し、飽和食塩水 (5 ml x 2) で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムをろ去した後、ろ液を減圧留去し、残査をシリカゲルクロマトグラフィーに付して精製したところ、クラウンエーテル・ボレート体[XLVIIa]が4.40g (9.4 mmol)の収量で定量的に得られた。【0134】(F11a 工程)F11a 工程において、得られたクラウンエーテル・ボレート体[XLVIIa]が還元されて、一般式[XLVIIIa ]で表されるクラウンエーテル・アルコール体が合成された。クラウンエーテル・ボレート体[XLVIIa]4.40 g (9.4 mmol) を無水エーテル40 ml に溶解し、−10 ℃に冷却し、撹拌しながら水素化アルミニウムリチウム285mg(7.5 mmol)を少しづつ添加した。この混合液を室温に戻して、懸濁したまま5時間撹拌した後、氷冷して、精製水 2 ml を注意深く添加し、その後、更に1N硫酸4ml を添加した。この混合液を撹拌して得られた沈殿物を分取した。この分取した沈殿物をエーテル 6 ml で洗浄して有機層に合わせた。水層をエーテル15ml (5 ml x 3) で抽出し、有機層と合わせ、飽和食塩水 5 ml で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。次いで、無水硫酸ナトリウムをろ去した後、溶媒を減圧留去して、得られた残査をシリカゲルクロマトグラフィーに付して精製したところ、クラウンエーテル・アルコール体[XLVIIIa]が3.97 g (8.7 mmol)の収量で定量的に得られた。【0135】(F8’a工程)F8’a工程においては、F11a 工程で得られたクラウンエーテル・アルコール体[XLVIIIa ]の水酸基部分がメタクリロイル化されて、一般式[XLIXa]で表されるクラウンエーテルメタクリル酸エステルが得られた。クラウンエーテル・アルコール体[XLVIIIa ]3.97 g (8.7 mmol) をジクロロメタン 80 mlに溶解し、これにピリジン 2.1 gを添加して撹拌し氷冷した。その後、メタクリロイルクロリド0.91g (8.7 mmol) を徐々に添加して、10分間撹拌した後、室温に戻して3時間撹拌した。得られた反応液に精製水 10 mlを添加して、2−3分間撹拌した後、ジクロロメタン1Lで抽出した。この抽出液を飽和食塩水 (50 ml x 2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで30分間乾燥し、ろ過した。得られたろ液を減圧留去し、得られた残査をシリカゲルクロマトグラフィーに付して精製したところ、クラウンエーテルメタクリル酸エステル体[XLIXa]が4.23g (8.1 mmol)の収量で定量的に得られた。【0136】(F9’a 工程)F9’a 工程においては、F8’a 工程で得られたクラウンエーテルメタクリル酸エステル体[XLIXa ]が不斉付加重合反応に付されて、一般式[La]で表されるポリメタクリル酸8−(カテコールボランオキシ−n−プロピル)−15−クラウン−5−(2−n−プロピル) が得られた。クラウンエーテルメタクリル酸エステル体[XLIXa ]4.18 g (8 mmol) をトルエン 100 ml に溶解し、−78 ℃に冷却した後、(−)−スパルテイン33mg (0.14mmol)と 7− フルオレニルリチウム 24 mg (0.14 mmol)との錯体(トルエン溶液)を添加して20時間撹拌した。この反応液に精製水30mlを添加して、2ないし3分間撹拌した後、トルエン層を精製水(30 ml x 3) で洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで30分間乾燥し、ろ過して得られたろ液を減圧留去し、得られた残査を再結晶して精製したところ、ポリメタクリル酸8−(カテコールボランオキシ−n−プロピル)−15−クラウン−5−(2−n−プロピル))が 4.02 g の収量でに得られた。【0137】実施例8:[2−3’−(15− クラウン−5− プロピオニルオキシ)−8,14−(ジアセチルオキシ)−1,3,7.9.13.15− ヘキサオキサ−2,8,14−トリボロ]シクロオクタデカン[LVa]の合成法【0138】【化54】【0139】【化55】【0140】(H1a 工程)まずH1a 工程において、ジオール化合物[LIa]にボラン錯体を反応させて、一般式[LIIa]で表されるジボレート体が合成された。1,3−プロパンジオール[LIa]7.6 g (100 mmol)を無水ジエチルエーテル 100ml に溶解し、得られた溶液を氷冷した後、1Mボラン・ジエチルエーテル錯体15.0g (198 mmol) を水素ガスの発生に注意しながら徐々に添加し、1時間撹拌した。この反応液から溶媒を留去したところ、ジボレート体[LIIa]を粗生成物として9.9gの収量で定量的に得た。【0141】(H2a 工程)得られたジボレート体[LIIa]( 粗生成物 9.9 g) を無水ジエチルエーテル100 ml に溶解し、氷冷後、1,3−プロパンジオール 15.0 g(198mmol)を水素ガスの発生を注意しながら徐々に添加し、ゆっくりと室温に戻して、1時間撹拌した。得られた反応液から溶媒を留去して、残査をシリカゲルクロマトグラフィーに付して精製したところ、ジオール体[LIIIa]が21.9g の収量で得られた。【0142】(H3a 工程)得られたジオール体[LIIIa ]21.9 g (88 mmol)を無水ジエチルエーテル 4 Lに溶解し、1Mボラン・ジエチルエーテル錯体 88 mlを水素ガスの発生を注意しながら徐々に添加し、1時間撹拌した。得られた反応液から溶媒を留去して、残査をシリカゲルクロマトグラフィーに付して精製したところ、環状ボレート体[LIVa]が5.68 g の収量で得られた。【0143】(H4a 工程)得られた環状ボレート体[LIVa] 5.68 g を無水ジエチルエーテル 30 mlに溶解し、氷冷後、3−(15−クラウン−5)−プロピオン酸 6.42g(22 mmol) を添加し、更に酢酸 2.64 g (44 mmol) を添加して1時間撹拌した。得られた反応液を水洗した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して、得られた残査をシリカゲルクロマトグラフィーに付して精製したところ、クラウンエーテル・環状ボレート体[LVa]が9.93g の収量で得られた。【0144】実施例9:ポリ[γ−(2’−15−クラウン−5−)−11’−(β−2− プロピオニルオキシ−8.14− ジアセチルオキシ−1,3,7,9,13,15− ヘキサオキサ−2,8,14−トリボロ)シクロオクタデカンメタクリル酸n−プロピル](LIIa)の合成方法【0145】【化56】【0146】【化57】【0147】(H4b 工程)得られた環状ボレート体[LIVa]5.68 gを無水ジエチルエーテル 30 mlに溶解し、氷冷後、3−(15−クラウン−5)−プロピオン酸のメタクリル酸プロピル置換体9.20g (2 mmol) 3−(15− クラウン−5)−プロピオン酸のプロパノール置換体をメタクリロイルクロリドでメタクリロイル化することによって得た)を添加し、更に酢酸2.64g (44 mmol) を添加して1時間撹拌した。得られた反応液を水洗した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して、得られた残査をシリカゲルクロマトグラフィーに付して精製したところ、クラウンエーテル・環状ボレート・メタクリル酸エステル[LVIIIb]が12,49gの収量で得られた。【0148】(H5a工程)H4b 工程で得られたクラウンエーテル・環状ボレート・メタクリル酸エステル体[LVIIIb]を不斉付加重合反応に付して、ポリ[γ−(2’−15−クラウン−5−)−11’−(β−2−プロピオニルオキシ−8.14−ジアセチルオキシ−1,3,7,9,13,15−ヘキサオキサ−2,8,14−トリボロ)シクロオクタデカンメタクリル酸n−プロピル](LIIa)が得られた。クラウンエーテル・環状ボレート・メタクリル酸エステル[LVIIIb]6.32 g (8mmol) をトルエン 100 ml に溶解し、−78 ℃に冷却した後、(−)−スパルテイン33mg(0.14 mmol)と 9− フルオレニルリチウム 24 mg (0.14 mmol)との錯体(トルエン溶液)を添加して20時間撹拌した。この反応液に精製水30mlを添加して、2ないし3分間撹拌した後、トルエン層を精製水(30 ml x 3) で洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで30分間乾燥し、ろ過して得られたろ液を減圧留去し、得られた残査を再結晶して精製したところ、ポリ[γ−(2’−15−クラウン−5−)−11’−(β−2−プロピオニルオキシ−8.14−ジアセチルオキシ1,3,7,9,13,15− ヘキサオキサ−2,8,14−トリボロ)シクロオクタデカンメタクリル酸n−プロピル](LIIa)が5.87g の収量で得られた。 一般式[I]:{式中、R1 は、一般式[IIi ]:Rm−COO−(CH2)d−:(式中、Rmは、一般式[IIa]:で表される残基、一般式[IIb]::(式中、Phはフェニル基を意味する)で表される残基、一般式[IIc]:(式中、Phは前記と同じ意味を有する)で表される残基もしくは一般式[IId]:で表される残基を意味し、dは1ないし7の整数を意味する]または一般式[IIii]:Rp−COO−(CH2)d−:[式中、Rpは、一般式[IIe]:(式中、p は30ないし100 の整数を意味する)、一般式[IIf]:(式中、Phおよびpは前記と同じ意味を有する)、一般式[IIg]:(式中、Phおよびp は前記と同じ意味を有する)もしくは一般式[IIh]:(式中、p は前記と同じ意味を有する)で表される残基を意味し、dは前記と同じ意味を有する]で表される残基を意味し、R2は、水素原子または一般式[IIIa]:(式中、Xはカルボキシレート残基、2− フェノラート残基、ホスホネート残基、ホスフィネート残基またはスルホネート残基を意味し、Mはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアンモニウムイオンを意味し、qは1ないし8の整数を意味する)もしくは一般式[IIIb]:[式中、R3およびR4は、同じであっても異なっていてよく、それぞれC1−C6アルキル基、C3−C6シクロアルキル基、C7−C11アラルキル基またはC6−C10アリール基を意味し、また、R3およびR4は互いに結合して、C2−C3アルキレン基、光学活性置換基−CHAr−(CH2)v−CHAr−(式中、Arはtert− ブチル基、フェニル基またはナフチル基を意味し、vは0または1を意味する)もしくは芳香環またはボランエーテル残基を意味し、qは前記と同じ意味を有する]で表される置換アルキレン基を意味し、mは、1または2の整数を意味し、nは、0または1から7 までの整数を意味する}で表される光学活性環状エーテル化合物。 【課題】簡便な操作で水溶液や有機溶媒中の塩分を除去し、脱塩溶媒を安価に大量に作り、かつ、ラセミ体の分子構造に依存しない一般性が高い光学分割剤ならびに不斉反応試薬を提供すること。【解決手段】一般式[I]:で表される光学活性環状エーテル化合物が、簡便な操作で水溶液や有機溶媒中の塩分を除去し、脱塩溶媒を安価に大量に作り、かつ、ラセミ体の分子構造に依存しない一般性が高い光学分割剤ならびに不斉反応試薬を提供することができる。