タイトル: | 特許公報(B2)_水蒸気バリア性評価用セルおよび水蒸気バリア性評価方法 |
出願番号: | 2003079224 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | G01N 17/00,G01N 15/08 |
藤本 健太郎 杉崎 敦 窪 英樹 伊東 寿 JP 3958235 特許公報(B2) 20070518 2003079224 20030324 水蒸気バリア性評価用セルおよび水蒸気バリア性評価方法 住友ベークライト株式会社 000002141 藤本 健太郎 杉崎 敦 窪 英樹 伊東 寿 JP 2002103394 20020405 JP 2003063585 20030310 20070815 G01N 17/00 20060101AFI20070726BHJP G01N 15/08 20060101ALI20070726BHJP JPG01N17/00G01N15/08 C G01N 17/00 G01N 15/08 JMEDPlus(JDream2) 13 2004333127 20041125 12 20051021 福田 裕司 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、フィルムシートの水蒸気バリア性を評価する方法とこれに用いる評価用セルに関するものである。【0002】【従来の技術】従来、透明防湿性フィルムシートの水蒸気透過性の評価には、カップ法(非特許文献1)、モコン法(非特許文献2)等が用いられてきた。最近、透明防湿性フィルムシートが包装材料のみならず、液晶基板や有機EL基板等の超高バリア分野に用いられるようになるに伴い、要求される水蒸気バリアのレベルは10-3g/m2/day以下まで飛躍的に向上した。従来、高バリア性フィルムシートの水蒸気透過性の評価に用いられてきたモコン法は、測定限界が0.03〜0.1g/m2/day程度であり、液晶基板や有機EL基板等の超高バリアフィルムシートの水蒸気透過性は評価できない。従って、これら超高バリア性フィルムシートの評価方法の開発は、有機EL用のプラスチック基板や液晶用プラスチック基板等の分野の研究、開発、生産を迅速に進める上で必要不可欠となっている。最近、カルシウムの腐食により、プラスチック基板のバリア性を評価する方法が開発された(例えば、非特許文献3)。この中では2種類の評価用セルを作製し、カルシウムの腐食を評価している。一つ目の方法は、グローブボックスの中で、評価に供されるサンプルにカルシウムを蒸着させ、透明な接着剤とガラス板で封止する方法である。しかし、この方法では、透明接着剤の中にある水分や、シール部分を透過してくる水分の影響を除去することができず、被評価サンプルの水蒸気バリア性を正確には評価できなかった。また、封止工程を全てグローブボックスの中で行わなくてはならず、作業性も悪かった。二つ目の方法は、カルシウム蒸着後金属封止を行い、その後UV硬化樹脂をオーバーコートし、ガラスに接着する方法である。この方法では封止金属の厚みを特に規定していない。封止金属を500nm以上つけないと、プラスチック基板上のゴミや凹凸の影響を受け、封止が不十分となるため正確な水蒸気バリア性を測定できない。また、UV硬化樹脂は水蒸気遮断性が乏しいので、水蒸気遮断性能を良くするために、UV硬化樹脂の架橋密度を上げる必要性があるが、架橋密度を上げると硬化収縮が大きくなり、この際、封止金属やガラスとの剥離を引き起こすことがあった。さらに、この硬化収縮は被評価サンプルのバリア膜自体を破壊する可能性すらある。したがって、これらの方法では、水蒸気バリア性を正確には評価できなかった。さらに、これらの方法は、封止の際に接着剤がバリア膜の表面を覆い硬化してしまうため、水蒸気バリア性評価後に、セルからフィルムシートを非破壊に取り外し、バリア膜表面の欠陥点を直接観察するのには適さなかった。【0003】【非特許文献1】JIS Z 0208【非特許文献2】JIS K 7129 B法【非特許文献3】Asia Display/IDW’01 p1435〜p1438【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来行うことができなかった超高バリア性フィルムシートの水蒸気バリア性評価、水蒸気透過量測定及び欠陥点の評価を簡便な評価セルを用いて精度良く実施できる水蒸気バリア性評価方法を提供し、かつこれに用いる評価用セルを提供するものである。【0005】【課題を解決するための手段】本発明は、(1) 水蒸気バリア性を評価するフィルムシートの片面に、水分と反応して腐食する金属層を真空プロセスにて形成させた後、水蒸気不透過性金属層でこの面を封止した水蒸気バリア性評価用セル。(2) 前記水分と反応して腐食する金属層の厚さが30nm〜500nmである(1)の水蒸気バリア性評価用セル。(3) 前記水蒸気不透過性金属層の厚さが500nm〜20μmである(1)、(2)の水蒸気バリア性評価用セル。(4) 前記水蒸気不透過性金属層の表面粗さが、算術平均値(Ra)でRa<20nm、最大高さ及び最大深さで最大高さ<600nm及び最大深さ<200nm、である(1)〜(3)の水蒸気バリア性評価用セル。(5) 前記水分と反応して腐食する金属層の厚さ(a)に対する水蒸気不透過性金属層の厚さ(b)の比、すなわち、(b)/(a)が2以上である(1)〜(4)の水蒸気バリア性評価用セル。(6) 前記水蒸気不透過性金属層の上層に、温度40±0.5℃、相対湿度90±2%の条件下に暴露したときにその質量変化が、暴露面積50cm2で1mg/24時間以下の有機物で密閉した(1)〜(5)の水蒸気バリア性評価用セル。(7) 前記水分と反応して腐食する金属層の材質にカルシウムを含む(1)〜(6)の水蒸気バリア性評価用セル。(8) 前記水蒸気不透過性金属層の材質にアルミニウム、亜鉛、錫、インジウム、鉛、銀、銅の何れかを含む(1)〜(7)の水蒸気バリア性評価用セル。・ (9) 前記水蒸気不透過性金属層が異なる材質の多層構造である(1)〜(8)の水蒸気バリア性評価用セル。(10) 前記水蒸気不透過性金属層の材質が2種類以上の金属の合金である(1)〜(9)の水蒸気バリア性評価用セル。(11)(1)〜(10)の水蒸気バリア性評価用セルを用い、任意の条件で恒温恒湿度処理を行ったあと、水分と反応して腐食する金属の腐食状態を観察する水蒸気バリア性評価方法。(12) (11)の水蒸気バリア性評価後に、セルからフィルムシートを、非破壊に取り外し、洗浄後、水分と反応して腐食した金属の腐食中心部分に対応するフィルムシート表面を、直接観察することにより、基材の欠陥部分の状態を評価する水蒸気バリア性評価方法。(13)(1)〜(10)の水蒸気バリア性評価用セルを用い、恒温恒湿度処理を行ったあと、水分と反応して腐食する金属の腐食面積と腐食金属の厚みから算出される金属腐食物の体積から、金属と反応する水分量を定量的に評価する水蒸気バリア性評価方法。である。【0006】【発明の実施の形態】本発明は、真空蒸着装置や恒温恒湿度オーブン及び実体顕微鏡、光学顕微鏡、レーザー顕微鏡等各種顕微鏡、さらにデジタルカメラあるいはスキャナ等の簡易的な装置で水蒸気バリア性評価用セルの作製から、試験、評価までを行う方法を提供するものである。【0007】水蒸気バリア性評価用セルの作製は、例えば以下のように実施する。金属蒸着源を2つ以上持つ真空蒸着装置を用い、まず水分と反応して腐食する金属を、蒸着させたい部分以外をマスクした評価対象のフィルムシートに蒸着させる。この水分と反応して腐食する金属層の膜厚は、30nm〜500nmであることが好ましい。蒸着によって形成された水分と反応して腐食する金属層の厚さが30nm以下であると、量が少なすぎてこの金属層が被評価基板上に均一に形成されないことがあるので好ましくない。一方、500nm以上であると、水蒸気不透過性金属層で封止する際に、水分と反応して腐食する金属層が形成されている部分と形成されていない部分の境目の段差が大きくなり、境界部での剥離や封止欠陥ができやすくなるため好ましくない。水分と反応して腐食する金属としては、カルシウム、マグネシウム等を例示することができる。その後、真空状態のままマスクを取り去った後、実際上水蒸気不透過性の金属を、もう一つの金属蒸着源から蒸着させ封止する。この水蒸気不透過性金属層は、500nm〜20μmの厚さでつけられることが好ましい。この厚さが500nm以下であると、水蒸気等のガスに対する封止性能が不十分となることがあり好ましくない。また、20μm以上の厚さは、真空プロセスで形成する場合、現実的ではない。このとき水蒸気不透過性の金属を500nm以上つけるため、金属蒸着源を複数設けても良い。水蒸気不透過性金属層はその表面粗さが、表面粗さ算術平均値(Ra)でRa<20nm、最大高さ及びが、最大高さ<600nm及び最大深さ<200nmであることが好ましい。表面粗さがこれ以上の値では、水蒸気不透過性金属層がピンホール等の欠陥を有しやすく、十分に水分と反応して腐食する金属表面を封止できない場合がある。また、このような場合、水蒸気不透過性金属層が粗になりやすく、本来の水蒸気遮断性能を発揮できないことがあるので好ましくない。また、水分と反応して腐食する金属層の厚さ(a)に対する水蒸気不透過性金属層の厚さ(b)の比、すなわち、(b)/(a)が2以上であることが好ましい。これは、水蒸気不透過性の金属で封止する際に、水分と反応して腐食する金属の端部を欠陥なく封止するために必要である。水蒸気不透過性の金属としては、アルミニウム、亜鉛、錫、インジウム、鉛、銀、銅等を用いることができる。水蒸気不透過性金属層は2種類以上の金属の多層でもよい。例えば、アルミニウム/銀、アルミニウム/亜鉛/アルミニウム等の多層膜を用いることもできる。この際、水分と反応して腐食する金属層のすぐ上に来る金属層は、アルミニウムなどの水蒸気不透過性の金属が好ましい。さらに最外層の金属も水蒸気不透過性の金属が好ましい。また、水蒸気不透過性の金属として、例えば真空プロセス中の共蒸着等により、2種以上の金属の合金を水蒸気不透過性金属層に用いることもできる。水蒸気不透過性の金属膜を多層や合金として形成する際の金属も、前記のアルミニウム、亜鉛、錫、インジウム、鉛、銀、銅などを用いることができる。水蒸気不透過性の金属膜を形成した後、セルの水蒸気不透過性金属層表面を保護するために、温度40±0.5℃、相対湿度90±2%の条件下に暴露したときにその質量変化が、暴露面積50cm2で1mg/24時間以下の有機物でさらに密閉しても良い。この有機物保護層を設けることで、被評価サンプルの取り扱い時のキズ、曲げ等による封止破れの心配が無くなり、セルが取り扱い易くなる利点がある。この際の有機物としては、蜜蝋等を用いることができる。【0008】以上のように作製した水蒸気バリア性評価用セルは、有機物で封止した場合には、その融点以下が好ましいが、それ以外は、任意の条件下で恒温恒湿度処理を施し、腐食する金属の状態を経過時間ごとに観察すること等によって評価できる。【0009】腐食状態の観察は、観察したい範囲の広さに応じ、レーザー顕微鏡、光学顕微鏡、デジタルカメラ、スキャナ等、任意の装置を用いることができ、これを単位面積あたりの腐食点個数、腐食面積、腐食の色調等の値として定量化することもできる。【0010】さらに、水蒸気バリア性評価後に、フィルムシートの金属を蒸着していない面から腐食部中心近傍をマーキングした後、有機物を溶かす等の方法によりその封止を解き、封止金属部及び水分と反応して腐食する金属部分を酸等で洗浄して、フィルムシートを非破壊的に取り出し、腐食中心部分に対応するフィルムシート表面の欠陥点を観察する等の方法で、水蒸気バリア性を損なう原因となるフィルムシートの欠陥部分の形状、組成等を評価・分析することが可能である。【0011】また、本発明により作製した水蒸気バリア性評価用セルは、有機物で封止した場合には、その融点以下が好ましいが、それ以外は、任意の条件下で恒温恒湿度処理を施し、腐食する金属の腐食面積とその厚みから算出される腐食金属物の総体積を経時的に観察することによって、腐食性金属と反応した水分量が算出されるためバリア性フィルムシートの水蒸気透過量を定量的に評価できる。腐食性の金属は水分と反応することで金属水酸化物に変化する。式1に示すように、価数aの金属1molはamolの水分と反応し、1molの金属水酸化物を生成する。【0012】M + aH2O → M(OH)a + (a/2)H2 (式1)よって水蒸気透過量は、恒温恒湿処理時間、評価用セルの腐食性金属面積と処理後の腐食された金属面積、腐食性金属の厚み、腐食後の金属水酸化物の密度から求めることができる。【0013】恒温恒湿処理後の金属水酸化物のモル量(X)=(δ*t*d(MOH))/M(MOH) (式2)水蒸気透過度(g/m2/day)=X*18*m*(10000/A)*(24/T)(式3)恒温恒湿処理時間 : T(hour)腐食性金属の面積 : A(cm2)腐食性金属の厚み : t(cm)腐食された金属面積 : δ(cm2)腐食後の金属水酸化物分子量 : M(MOH)腐食後の金属水酸化物密度 : d(MOH)(g/cm3)腐食性金属の価数 : m以上のように本発明は、これまで評価が困難であった水蒸気バリア性を精度良く評価できるばかりでなく水蒸気透過量の定量的な評価が可能である。【0014】【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。本実施例では、以下に示す装置および原材料を用いた。<装置>▲1▼蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE-400▲2▼恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M▲3▼レーザー顕微鏡:KEYENCE VK-8500▲4▼原子間力顕微鏡(AFM):Digital Instrments社製DI3100<原材料>▲1▼水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)▲2▼水蒸気不透過性の金属(実施例1,2,3及び比較例1の金属):アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)▲3▼水蒸気不透過性の別の金属(比較例の金属):インジウム(φ3〜6mm、粒状)▲4▼ 有機物保護層:i)蜜蝋(融点 60〜62℃)とii)パラフィン(融点 60〜62℃)を1:1の割合で溶融混合した混合物【0015】(1)水蒸気バリア性評価用セルの作製真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE-400)を用い、蒸着させたい部分(1mm×1mmを約50箇所)以外をマスクした評価用透明フィルムシート基材サンプルに金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかにi)蜜蝋(融点 60〜62℃)とii)パラフィン(融点 60〜62℃)を1:1の割合で溶融混合した混合物をガラス容器中に80℃〜100℃の温度で溶融させたものに、金属蒸着面を接触させた後、この混合物を冷却固化させ封止することにより水蒸気バリア性評価用セルを得た。【0016】(2)水蒸気バリア性試験及び評価得られた水蒸気バリア性評価用セルを、恒温恒湿オーブン(Yamato Humidic Chamber IG47M)中で、50℃、湿度95%の条件下に24時間暴露し、カルシウムの腐食状態を観察した。カルシウムの腐食状態は、レーザー顕微鏡(KEYENCE VK-8500)を用い、1.0mm×1.4mm範囲の画像を撮影し記録した。腐食した部分は、金属カルシウムが水分と反応し、水酸化カルシウムになり、撮影すると変色あるいは白色部として観察された。各サンプルにつき、蒸着-封止直後と、恒温恒湿度50℃、湿度95%の条件下で24時間処理後の画像を約50ショット評価した。実施例には、最も腐食が少ない部分▲1▼、平均的な部分▲2▼、最も腐食の進んだ部分▲3▼の3ショットを示した。実施例1〜4および比較例2および3における各セルの腐食状態をそれぞれ表1〜4、6および7に示す。【0017】(3)欠陥点の評価次に、この水蒸気バリア性評価用セルを、金属蒸着した反対面から腐食部中心近傍をマーキングした後、有機物の封止を溶融させて解き、封止金属部を1規定塩酸で洗浄し、腐食中心部に対応するバリア性フィルムシート表面の欠陥点をレーザー顕微鏡(KEYENCE VK-8500)にて観察することにより、基材の欠陥部分を評価した。レーザー顕微鏡で、大まかな欠陥点形状を調べた後、AFMにてさらに詳細に形状を調査した。結果は(実施例5)に示した。【0018】(4)蒸着膜厚の測定レーザー顕微鏡(KEYENCE VK-8500)を用い、全ての評価終了後、蒸着金属をセロハンテープで一部剥がし段差を測定することにより、水蒸気不透過性の金属の膜厚を測定した。カルシウムについては、蒸着時に膜厚が約200μnmになるよう調整した。【0019】(5)蒸着膜表面凹凸の測定原子間力顕微鏡(AFM)にて表面粗さパラメーターRa,最大高さ,最大深さを評価した。AFMは20μm×20μm角の領域を測定した。【0020】(実施例1)サンプルにバリアフィルム1、すなわち、厚さ200μmのポリエーテルサルホンフィルム/厚さ5μm紫外線(UV)硬化性樹脂(有機層▲1▼)/厚さ50nmのSiOx(無機層▲1▼)/厚さ1μmのUV硬化性樹脂(有機層▲2▼)/ 厚さ50nmのSiOx(無機層▲2▼)の順に積層された構造を持つフィルムを用いた。有機層▲1▼、▲2▼はスピンコートで塗布後、UVを照射し固化した。無機層▲1▼、▲2▼はスパッタリングにて形成した。この有機層▲2▼の表面平滑性をAFMにて評価したところ、Ra=0.6nm, 最大高さ=60nm,最大深さ10nm以上の穴欠点が無かった。また、目視外観も非常に良好な平滑性の高いフィルムであった。このバリアフィルム1を用いて水蒸気バリア性評価用セルを作成した。評価用セルの封止アルミニウムの膜厚は、4.1μm。表面粗さは、Ra=4.6nm,最大高さ=78.5nm,最大深さ=3.1であった。【0021】先に記述した条件での恒温恒湿度処理後、カルシウムの腐食状態を観察したところ、表1中の矢印で示した部分に僅かに腐食が認められた。【0022】【表1】【0023】(実施例2)サンプルにバリアフィルム2、すなわち、厚さ200μmのポリエーテルサルホンフィルム/厚さ5μm紫外線(UV)硬化性樹脂(有機層▲1▼)/厚さ50nmのSiOx(無機層▲1▼)の順に積層された構造を持つフィルムを用いた。有機層▲1▼はスピンコートで塗布後、UVを照射し固化した。無機層▲1▼はスパッタリングにて形成した。この有機層▲1▼の表面平滑性をAFMにて評価したところ、Ra=0.3nm, 最大高さ=30nm,最大深さ10nm以上の穴欠点が無かった。また、目視外観も非常に良好な平滑性の高いフィルムであった。このバリアフィルム2を用いて水蒸気バリア性評価用セルを作成した。この評価用セルの封止アルミニウムの膜厚は、4.8μm。表面粗さは、Ra=4.1nm,最大高さ=25.1 nm,最大深さ=3.0 nmであった。【0024】【表2】【0025】(実施例3)サンプルにバリアフィルム3、すなわち、厚さ200μmのポリエーテルサルホンフィルム/厚さ2μm紫外線(UV)硬化性樹脂(有機層▲1▼)/厚さ50nmのSiOx(無機層▲1▼)の順に積層された構造を持つフィルムを用いた。有機層▲1▼はバーコートで塗布後、UVを照射し固化した。無機層▲1▼はスパッタリングにて形成した。この有機層▲1▼の表面平滑性をAFMにて評価したところ、Ra=0.8nm, 最大高さ=500nm,最大深さ10nm以上の穴欠点が20μm□サイズに5点確認された。このバリアフィルム3を用いて水蒸気バリア性評価用セルを作成した。この評価用セルの封止アルミニウム膜厚は、4.7μm, 表面粗さは、Ra=5.0 nm,最大高さ=250 nm,最大深さ=10.2nmであった。【0026】【表3】【0027】(実施例4)サンプルに実質上水蒸気透過性の無いTFT用ガラス(厚さ0.7mm)を用いた。このTFT用ガラスを用いて水蒸気バリア性評価用セルを作成した。この評価用セルの封止アルミニウムの膜厚は、6.2μm。表面粗さは、Ra=5.1 nm,最大高さ=62.3 nm,最大深さ=8.7 nmであった。【0028】本評価を実施することにより、従来の評価方法では正確に評価できないレベルの水蒸気バリア性を簡単に評価できることが確認された。例えば、本実施例に示すように、従来のモコン法で検出限界以下のレベルの超高ガスバリア性フィルムシート(バリアフィルム1とバリアフィルム2)について、バリアフィルム1の方がバリアフィルム2よりも水蒸気が透過しにくいことが分かる。一方、実施例3に示すように、従来のモコン法で検出できるレベルのバリア性を有するフィルムシートは、著しくカルシウム部分の腐食が進行することが認められた。本評価方法より得られた結果は、バリア層の構成および有機層表面の平滑性から考えてもリーズナブルである。なぜなら、バリアフィルム1はポリエーテルサルフォン上に有機層▲1▼/無機層▲1▼/有機層▲2▼/無機層▲2▼の順に多層構成されたものであり、バリアフィルム2のポリエーテルサルフォン上に有機層▲1▼/無機層▲1▼の積層構造よりもバリア性が高いと考えられる。本評価結果により、バリアフィルム1とバリアフィルム2とのガスバリア性の差を見出すことができた。また、バリアフィルム2とバリアフィルム3では、有機層▲1▼の表面平滑性においてバリアフィルム2の方が優れており、この表面性の差によるバリア性の違いも、腐食されたカルシウムの状態の差として見出すことができた。【0029】実際上水蒸気透過性が無いと考えられるガラス板を本発明の方法で評価した(実施例4)。TFT用のガラスは、カルシウムの腐食が進行していないことが、確認された。表4の写真でしみ状に見えるものはガラス表面の汚れで蒸着直後から見られるものである。このことから、この水蒸気バリア性評価法の妥当性が確認された。【0030】【表4】【0031】(比較例1) JISK7129B法(モコン法)による水蒸気透過度の評価比較例1の結果から、従来の防湿性フィルムシートの水蒸気透過性に用いられてきたモコン法では、表5に示すように、バリアフィルム1,2およびTFTガラスの水蒸気透過性の差を検出できなかった。【0032】【表5】【0033】(比較例2)サンプルに実質上水蒸気透過性の無いTFT用ガラス(厚さ0.7mm)を用いた。このTFT用ガラスを用いて水蒸気バリア性評価用セルを作成した。この評価用セルの封止アルミニウムの膜厚は、0.1μm。表面粗さは、Ra=4.3nm,Ry=121.0,Rz=5.9であった。【0034】【表6】【0035】(比較例3)サンプルに実質上水蒸気透過性の無いTFT用ガラス(厚さ0.7mm)を用いた。このTFT用ガラスを用いて水蒸気バリア性評価用セルを作成した。この評価用セルの封止インジウムの膜厚は、7.7μm。表面粗さは、Ra=66.5nm,最大高さ=1081nm,最大深さ=374.1nmであった。【0036】比較例2および比較例3より、水蒸気不透過性の金属の膜厚が薄い場合や、凹凸が著しい場合、封止能力が不十分となり、十分な水蒸気バリア性評価用セルにはなり得ないことが確認された。【0037】(比較例4)実施例4と同様のTFT用ガラス(厚さ0.7mm)を用いた。このTFT用ガラスを用いて水蒸気バリア性評価用セルを作成した。この評価用セルの封止アルミニウムの膜厚は、5.0μm。表面粗さは、Ra=3.7nm,最大高さ=32.3nm,最大深さ=7.6nmであった。このサンプルは、アルミニウム封止後UV硬化樹脂をオーバーコートし、ガラス板に密着させた後、UVを照射し、硬化した。硬化に伴い蒸着金属の剥離が見られる部分があった。恒温恒湿度50℃、湿度95%の条件下で24時間処理後、UV硬化樹脂側剥離部から、樹脂中の水分による腐食が現れた。またこの評価用セルは、UV硬化樹脂部の剥離困難なため、腐食中心部に対応するバリア性フィルムシート表面の欠陥点観察ができなかった。【0038】【表7】【0039】(実施例5) バリア性フィルムシートの欠陥点の観察本発明の方法で、腐食中心部に対応するバリア性フィルムシート表面の欠陥点観察をした結果、腐食中心部に対応するバリア性フィルムシートの欠陥点を有効に確認することができた。例えば、(実施例2)の腐食中心をAFMにて4点形状評価した。内2つはバリア膜(SiOx(無機層▲1▼))の剥れ(いずれも深さ50nm、幅4μmと5μm)、1つはバリア膜(SiOx(無機層▲1▼))の亀裂(長さ30μm)、もう1つはバリア膜(SiOx(無機層▲1▼))から上に凸な異物(高さ110nm、幅4μm)であった。【0040】(実施例6)バリア性フィルムシートの水蒸気透過度測定厚さ200μmのポリエーテルサルホンフィルム/厚さ5μm紫外線(UV)硬化性樹脂(有機層▲1▼)/厚さ50nmのSiOx(無機層▲1▼)の順に積層された構造を持つバリア性フィルムを用いた。有機層▲1▼はスピンコートで塗布後、UVを照射し固化した。無機層▲1▼はスパッタリングにて形成した。このバリアフィルムを用いて水蒸気バリア性評価用セルを作成した。評価用セルは、カルシウムを2x2mm、厚み200nmに蒸着し、続いて封止アルミニウムを20x20mm、厚み4μmで作製した。【0041】作製した評価用セルを恒温恒湿度50℃、湿度95%の条件下で24時間処理した後に、顕微鏡で腐食状態を観察した。2mm□サイズのカルシウム薄膜中に40〜130μ径の腐食が確認でき、腐食総面積は2.64x10-4cm2であった。腐食として観察される水酸化カルシウムの分子量と比重は76.1と2.24g/cm3であることから、24時間の恒温恒湿処理で生成した水酸化カルシウムのモル数は1.55x10-10molである。よって、水蒸気透過度は0.0014(g/m2/day)と見積もることができた。【0042】(実施例7)バリア性フィルムシートの水蒸気透過度測定厚さ200μmのポリエーテルサルホンフィルム/厚さ2μm紫外線(UV)硬化性樹脂(有機層▲1▼)/厚さ50nmのSiOx(無機層▲1▼)の順に積層された構造を持つバリア性フィルムを用いた。有機層▲1▼はスピンコートで塗布後、UVを照射し固化した。無機層▲1▼は実施例6と異なるスパッタリング条件にて形成した。用いるバリアフィルム以外は実施例6と同様な条件でバリア評価セルを作製した。【0043】作製した評価用セルを恒温恒湿度40℃、湿度90%の条件下で24時間処理した後に、顕微鏡で腐食状態を観察した。2mm□サイズのカルシウム薄膜中に50〜180μ径の腐食が確認でき、腐食総面積は2.87x10-2cm2であった。24時間の恒温恒湿処理で生成した水酸化カルシウムのモル数は1.6x10-8molである。よって、水蒸気透過度は0.144(g/m2/day)と見積もることができた。用いたバリアフィルムをモコン法により評価した結果、水蒸気透過度は0.18(g/m2/day)であったことから、本発明による水蒸気透過測定の定量性は十分実用レベルと判断できる。【0044】【発明の効果】本発明に従えば、従来行うことができなかった超高バリア性フィルムシートの定量的な水蒸気バリア性評価法及び欠陥点の評価法を簡便な評価セルを用いて精度良く実施する方法を提供することができる。 水蒸気バリア性を評価するフィルムシートの片面に、水分と反応して腐食する金属層を真空プロセスにて形成させた後、水蒸気不透過性金属層でこの面を封止した水蒸気バリア性評価用セル。 前記水分と反応して腐食する金属層の厚さが30nm〜500nmである請求項1記載の水蒸気バリア性評価用セル。 前記水蒸気不透過性金属層の厚さが500nm〜20μmである請求項1又は2記載の水蒸気バリア性評価用セル。 前記水蒸気不透過性金属層の表面粗さが、算術平均値(Ra)でRa<20nm、最大高さ及び最大深さで最大高さ<600nm及び最大深さ<200nm、である請求項1〜3何れか一項記載の水蒸気バリア性評価用セル。 前記水分と反応して腐食する金属層の厚さ(a)に対する水蒸気不透過性金属層の厚さ(b)の比、すなわち、(b)/(a)が2以上である請求項1〜4何れか一項記載の水蒸気バリア性評価用セル。 前記水蒸気不透過性金属層の上層に、温度40±0.5℃、相対湿度90±2%の条件下に暴露したときにその質量変化が、暴露面積50cm2で1mg/24時間以下の有機物で密閉した請求項1〜5何れか一項記載の水蒸気バリア性評価用セル。 前記水分と反応して腐食する金属層の材質にカルシウムを含む請求項1〜6何れか一項記載の水蒸気バリア性評価用セル。 前記水蒸気不透過性金属層の材質にアルミニウム、亜鉛、錫、インジウム、鉛、銀、銅の何れかを含む請求項1〜7何れか一項記載の水蒸気バリア性評価用セル。 前記水蒸気不透過性金属層が異なる材質の多層構造である請求項1〜8何れか一項記載の水蒸気バリア性評価用セル。 前記水蒸気不透過性金属層の材質が2種類以上の金属の合金である請求項1〜9何れか一項記載の水蒸気バリア性評価用セル。 請求項1〜10何れか一項記載の水蒸気バリア性評価用セルを用い、任意の条件で恒温恒湿度処理を行ったあと、水分と反応して腐食する金属の腐食状態を観察する水蒸気バリア性評価方法。 請求項11記載の水蒸気バリア性評価後に、セルからフィルムシートを、非破壊に取り外し、洗浄後、水分と反応して腐食した金属の腐食中心部分に対応するフィルムシート表面を、直接観察することにより、基材の欠陥部分の状態を評価する水蒸気バリア性評価方法。 請求項1〜10何れか一項記載の水蒸気バリア性評価用セルを用い、恒温恒湿度処理を行ったあと、水分と反応して腐食する金属の腐食面積と腐食金属の厚みから算出される金属腐食物の体積から、金属と反応する水分量を定量的に評価する水蒸気バリア性評価方法。