生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_咀嚼・嚥下困難者用食品ならびに咀嚼・嚥下補助組成物
出願番号:2003078740
年次:2009
IPC分類:A23L 1/30,A23L 1/05,A23L 1/06,A61K 47/36


特許情報キャッシュ

船見 孝博 岸本 一宏 小島 直人 大本 俊郎 浅井 以和夫 JP 4263513 特許公報(B2) 20090220 2003078740 20030320 咀嚼・嚥下困難者用食品ならびに咀嚼・嚥下補助組成物 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 000175283 船見 孝博 岸本 一宏 小島 直人 大本 俊郎 浅井 以和夫 20090513 A23L 1/30 20060101AFI20090416BHJP A23L 1/05 20060101ALI20090416BHJP A23L 1/06 20060101ALI20090416BHJP A61K 47/36 20060101ALI20090416BHJP JPA23L1/30 BA23L1/30 ZA23L1/04A23L1/06A61K47/36 A23L 1/29-1/308 JSTPlus(JDreamII) JMEDPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) WPI(DIALOG) FOODLINE(DIALOG) Foods Adlibra(DIALOG) Food Sci.&Tech.Abs(DIALOG) BIOSIS(DIALOG) 特開2000−041594(JP,A) 特開平11−124342(JP,A) 特開平11−322624(JP,A) 特開2000−210036(JP,A) 特開2002−153219(JP,A) 5 2004283073 20041014 20 20051114 ▲高▼ 美葉子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、咀嚼・嚥下障害者や高齢者等、咀嚼又は嚥下機能が低下している者が、安全且つ容易に摂食できるように調製された食品ならびに既存食品にかかる性質を付与する目的で添加される咀嚼・嚥下補助組成物に関し、詳しくは咀嚼・嚥下障害者や高齢者が食品本来の香味や食感を楽しみ且つ安全に嚥下でき、更に常温で長時間放置しても咀嚼・嚥下適性が優れている食品ならびに既存の食品にかかる性質を付与する目的で添加される咀嚼・嚥下補助組成物に関する。【0002】【従来の技術】高齢者の増加に伴い、食物を噛み砕き飲み込むという一連の動作に障害をもつ、いわゆる咀嚼・嚥下障害者が増加している。加えて、脳血管障害、腫瘍等の疾病が咀嚼・嚥下障害を引き起こす場合も多く、その増加を一層加速させている。これら咀嚼・嚥下障害者は窒息や誤嚥肺炎を起こしやすいため、栄養摂取の方法を、経口から経管あるいは経静脈へと変えなければならないことが多い。経管あるいは経静脈栄養法の技術的進歩は目覚しく、咀嚼・嚥下障害者の栄養管理のうえでそれらが果たす役割は大きい。反面、経口的に食物を摂取できないという精神的苦痛を伴うため、QOL(Quality of Life)の改善という観点からみると、できるだけ「口から摂取できる食事」を工夫することが重要である。このような状況のもと、経口摂食が可能で食べる楽しみが得られ、かつ、摂食機能を向上させることが出来る嚥下障害者用の食品の開発が盛んに行われている。【0003】咀嚼・嚥下障害者に適した食品として、1)食塊形成性(食品の口中でのまとまりやすさ)に優れること、2)のどへの付着性が少ないことなどが挙げられ、このようなテクスチャー条件を満たす食品、あるいは既存食品にかかる性質を付与するためのゲル化剤、増粘剤の開発が種々検討されている。既存食品のテクスチャーを上記のごとく改良するゲル化剤、増粘剤としては、例えば、「キサンタンガム含有流動状食品」(特許文献1)にみられるキサンタンガム、「易嚥下補助組成物並びにこれを用いた食品組成物及び医薬品用組成物」(特許文献2)にみられるタラガムおよび/またはローカストビーンガムとキサンタンガムの併用、「嚥下補助食品」(特許文献3)にみられるローメトキシルペクチン、アルギン酸ナトリウムおよびカラギナンから選択される1種類または2種類以上の併用、「液状食品粘稠化剤」(特許文献4)にみられるタピオカ澱粉又はバレイショ澱粉の使用、「ゲル状組成物及びその製造方法」(特許文献5)にみられる寒天及び/又はファーセルランとネイティブ型ジェランガムの併用、κカラギナンとキサンタンガム及び/又はネイティブ型ジェランガムの併用、およびジェランガムとグアガム及び/又はローカストビーンガムの併用等が知られている。【0004】ゲル化剤や増粘剤を利用して、食品物性を咀嚼・嚥下しやすいものに改良するためには素材の選択と使用量の設定が重要である。脱アシル型ジェランガムや寒天は、食品工業の分野で汎用される代表的なゲル化剤である。しかし、これらの素材は総じて脆い食感のゲルを形成し、一度破砕したゲルは再結着しにくいという性質を有する。また、脆さを低減するために低濃度で使用すると、離水が多くなるという問題もある。つまり、これらのゲルは咀嚼したときに均一な食塊を形成しにくく、咀嚼・嚥下困難者用食品の基盤素材として必ずしも有効ではない。【0005】一方、サイリウムシードガムは、食品の保水性を向上させる素材として知られており、例えば、ゼリー状食品の離水防止及び食感改良の目的で他のゼリー化剤と併用できる(特許文献6)。【0006】しかし、食品への応用に際しては、サイリウムシードガムが有する高い粘稠性が問題となることがある。サイリウムシードガムの粘稠性を抑える方法として、化工澱粉、アラビアガム、アラビノガラクタン、グアガム分解物、プルラン、食物繊維及びこれらの組合せから選択されるサイリウム粘性低下用多糖類(特許文献7)、多糖類を造粒したサイリウム粘性低下造粒多糖類(特許文献8)、サイリウム溶液にプロテアーゼを作用させたサイリウム溶液の低粘化方法(特許文献9)などが知られているものの、飲み込み時に喉(咽頭相)へ付着する性質が依然として強いため、咀嚼・嚥下困難者用食品の基盤素材として使用されることは殆どない【0007】サイリウムシードガムと他のゲル化剤、増粘剤との併用も知られており、例えば、「易嚥下補助組成物並びにこれを用いた食品用組成物及び医薬品用組成物」(特許文献2)にみられるようにタラガム及び又はローカストビーンガムとキサンタンガムとを併用してなる易嚥下補助組成物に、食塊形成性を付与する目的でサイリウムシードガムを配合する方法が記載されている。しかし、この補助組成物も粘稠性、付着性が依然として高く、必ずしも優れた飲み込み特性を再現できるわけではない。また、サイリウムシードガムを添加することで、特有の植物臭が付与され、透明性が低下するなど、嗜好性の面での劣化も避けられない。【特許文献1】特開平11-318356号公報【特許文献2】特開2000-191553号公報【特許文献3】特開2000-325041号公報【特許文献4】特開平5-38262号公報【特許文献5】特開2002-300854号公報【特許文献6】特開昭60-137252号公報【特許文献7】特許第2977823号【特許文献8】特開2001-103934号公報【特許文献9】特開2002-320460号公報【0008】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、咀嚼・嚥下障害者や高齢者等の咀嚼・嚥下機能が低下した者に適した嚥下食について、食感的には1)食塊形成性(食品の口中でのまとまりやすさ)に優れ、2)のどへの付着性が少なく、機能的には1)無味無臭で、2)透明性があり、3)保水性に優れた嚥下障害者用食品を提供することを目的とする。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、脱アシル型ジェランガム及び又は寒天と、サイリウムシードガムとを一定添加量で併用することにより、弱いゲル構造が構築されて、水のような液状食品の流動性が適度に抑制され、且つ口腔及び咽頭相への付着性が著しく小さく、更に経時的な物性変化が少ないという、咀嚼・嚥下に最適な特性を食品に付与できることを見いだした。また脱アシル型ジェランガム及び又は寒天とサイリウムシードガム混合比率、および脱アシル型ジェランガム及び又は寒天とサイリウムシードガムからなる組成物の配合量によって、形成されるゲル状構造の硬さを自由に調節し、咀嚼・嚥下に適した物性を調製することができる。【0010】更に本発明者等は検討を重ね、精製されたサイリウムシードガムを使用することにより、透明性が高くなり、特有の植物臭が低下することを見いだした。即ち、精製されたサイリウムシードガムを使用することにより、食品の外観や嗜好性を損なうことなく、咀嚼・嚥下に適した物性を付与できることを見いだした。【0011】本発明は、以下の態様を有する咀嚼・嚥下困難者用食品に関する。項1.脱アシル型ジェランガム及び又は寒天と、サイリウムシードガムとを含むことを特徴とする咀嚼・嚥下困難者用食品であって、脱アシル型ジェランガム及び又は寒天と、サイリウムシードガムの混合物を100重量%とした場合、以下(a)〜(c)のいずれかの配合量で含有する、咀嚼・嚥下困難者用食品;(a)脱アシル型ジェランガム1〜35重量%、サイリウムシードガム65〜99重量%、(b)寒天5〜70重量%、サイリウムシードガム30〜95重量%、(c)脱アシル型ジェランガム0.2〜35重量%、寒天1〜50重量%、サイリウムシードガム15〜98.8重量%。項2.咀嚼・嚥下困難者用食品に対する添加量が、脱アシル型ジェランガム及び又は寒天が0.02〜1重量%、サイリウムシードガムが0.1〜5重量%である項1に記載の咀嚼・嚥下困難者用食品。項3.サイリウムシードガムが、透過率70%以上(波長720nm、濃度1%、温度25℃における測定値)の精製品である、項1又は2に記載の咀嚼・嚥下困難者用食品。【0012】また、本発明は、以下の態様を有する咀嚼・嚥下補助組成物に関する。項4.脱アシル型ジェランガム及び又は寒天と、サイリウムシードガムとを併用することを特徴とする咀嚼・嚥下補助組成物であって、脱アシル型ジェランガム及び又は寒天と、サイリウムシードガムの混合物を100重量%とした場合、配合量が以下(a)〜(c)のいずれかの範囲内である、咀嚼・嚥下補助組成物;(a)脱アシル型ジェランガム1〜35重量%、サイリウムシードガム65〜99重量%、(b)寒天5〜70重量%、サイリウムシードガム30〜95重量%、(c)脱アシル型ジェランガム0.2〜35重量%、寒天1〜50重量%、サイリウムシードガム15〜98.8重量%。項5.サイリウムシードガムが、透過率70%以上(波長720nm、濃度1%、温度25℃における測定値)の精製品である、項4に記載の咀嚼・嚥下補助組成物。【0013】【発明の実施の形態】(1)咀嚼・嚥下困難者用食品本発明の咀嚼・嚥下困難者用食品は、脱アシル型ジェランガム及び又は寒天と、サイリウムシードガムとを併用することを特徴とする。【0014】本発明で用いられる脱アシル型ジェランガムは、水生植物の表面から分離された非病原性微生物Sphingomonas elodeaが産出する発酵多糖類であり、β-D-グルコース、β-D-グルクロン酸、β-D-グルコース、α-L-ラムノースの繰り返し構造をモノマーとする直鎖状の多糖類である。脱アシル型ジェランガムは食品工業の分野で、デザートゼリー、ゼリー飲料、プリン、ジャム、およびフィリング等の基盤素材、マイクロゲルの様態でドレッシング類や果肉飲料の分散剤、あるいは菓子類のコーティング剤として広く用いられており、商業的に入手可能な製品として、シーピーケルコ社製のケルコゲルを挙げることができる。【0015】本発明で用いられる寒天は、β-D-ガラクトースと3,6-アンヒドロ-α-L-ガラクトースの繰り返し構造(アガロビオース)をモノマーとする、紅藻由来の多糖類である。寒天はアガロースとアガロペクチンの2成分からなるが、ゲル化を支配するアガロースは酸性基を殆ど持たない。食品工業の分野では、主にデザートゼリー、ようかん、およびところてん等の基盤素材として古くから使用されてきている。原料種や製造方法により種々の特性を有する寒天を調製することが可能であり、例えば、従来品に比べてゲルの融点が高い「高融点寒天」、低分子で糸曳性の小さい「ウルトラ寒天」、溶解温度が低い「即溶性寒天」、及び粘性の高い「高粘性寒天」等が市販されており、これによりドレッシング、マヨネーズ、および飲料等でも寒天が使用されるようになっている。なお、商業的に入手可能な製品としては、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ゲルアップJ-1630」、「ゲルアップJ-3749」、「ゲルアップJ-3762」などを挙げることができる。【0016】本発明で用いられるサイリウムシードガムとはオオバコの一種であるPlantago種(Plantaginaceae)植物の中の、主にPlantago ovata Forskal等の種子から採った天然植物ガムのことである。サイリウムシードガムは種子の外側を包む外皮の部分を用い、この種皮はサイリウムハスク(Psyllium Husk)あるいはイサゴール( Isapgol, Isabgol)とも呼ばれている。サイリウムシードガム中の非セルロース多糖類は、キシランを主鎖として高度に分岐した構造を持ち、側鎖は、アラビノース、キシロース、ガラクツロン酸、ラムノースからなっている。【0017】サイリウムシードガムの特徴としては、1)冷水でも十分に膨潤増粘して、高い吸水性を示すこと、2)低濃度では非ニュートン粘性を、高濃度では弾力性の強いゲル状物を形成すること、3)耐酸、耐塩、耐酵素性に優れ、粘性は長期間安定であること、4)腸内細菌による被分解性が低く、食物繊維として有効であること等が挙げられる。食品工業の分野では、麺類、水産練製品、惣菜類の保水剤あるいは健康食品の食物繊維源として使用されており、一般的に入手可能な製品として三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ビストップ[商標]D-2071」などを挙げることができる。【0018】本発明において、脱アシル型ジェランガムとサイリウムシードガムを咀嚼・嚥下者用食品に使用する場合、その配合量の組合せとして、脱アシル型ジェランガム0.02〜0.2重量%、サイリウムシードガム0.1〜5重量%(いずれも最終食品中の配合量)、好ましくは脱アシル型ジェランガム0.03〜0.15重量%、サイリウムシードガム0.3〜3%、更に好ましくは脱アシル型ジェランガム0.04〜0.1重量%、サイリウムシードガム0.5〜1重量%を挙げることができる。【0019】一方、寒天とサイリウムシードガムを咀嚼・嚥下者用食品に使用する場合、その配合量の組合せとして、寒天0.1〜1重量%、サイリウムシードガム0.1〜5重量%(いずれも最終食品中の配合量)、好ましくは寒天0.15〜0.75重量%、サイリウムシードガム0.3〜3%、更に好ましくは寒天0.2〜0.5重量%、サイリウムシードガム0.5〜1重量%を挙げることができる。【0020】更には、脱アシル型ジェランガムと寒天を併用して、サイリウムシードガムとともに使用することも出来る。その場合の添加量は、脱アシル型ジェランガム0.01〜0.1重量%、寒天0.05〜0.5重量%、サイリウムシードガム0.1〜5重量%を例示することができる。【0021】脱アシル型ジェランガム及び又は寒天とサイリウムシードガムを併用することにより、脱アシル型ジェランガム及び又は寒天の脆さ、及びサイリウムシードガムの付着性が相互に低減され、食塊形成能及び保水性に優れたゲル状食品を調製することができる。これらの性質は咀嚼・嚥下困難者用食品に要求される食感的および機能的性質を十分に満足するものである。【0022】なお本発明においては、サイリウムシードガムとして、特に食品の外観や嗜好性への悪影響が少ない精製品を使用するのが好ましく、その透過率は70%以上であることが望ましい。かかる製品のうち、商業的に入手可能なものとして三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ビストップ[商標]D-2074」を挙げることができる。【0023】なお、本発明でいう透過率は、80℃の脱イオン水にサイリウムシードガムを膨潤し(濃度1%)、25℃まで冷却した後、石英セル(光路長1cm)に充填し、波長720nmで脱イオン水をレファレンスとして測定した値であり、値が100%に近いほど透過性が脱イオン水に近いことを意味する。【0024】本発明の咀嚼・嚥下困難者用食品は、少なくとも上記成分を含有するものであればよいが、本発明の効果を奏する限りにおいて、他に任意の成分を配合することもできる。【0025】特に、脱アシル型ジェランガムを添加する場合は、2価のカチオンを添加するのが好ましい。脱アシル型ジェランガムは分子内に酸性基(カルボキシル基)を有するため、そのゲル物性はカチオンの添加により大きく異なる。特にカルシウム等の二価のカチオンを添加した場合、分子間架橋(二重螺旋の会合)が促進され、ゲルの弾性率が増加する傾向にある。本発明の咀嚼・嚥下困難者用食品においても、脱アシル型ジェランガムが形成するゲル構造を強化する目的で二価のカチオンを添加することが可能であり、カルシウム塩、好適には乳酸カルシウムや塩化カルシウムなどが用いられる。例えば、乳酸カルシウムを使用する場合、脱アシル型ジェランガムの20〜200重量%が添加量の目安となるが、塩濃度が過剰になると弾性率が低下する場合がある。また、下記記載のキレート剤を使用する場合では、ゲル化に必要なカチオンがキレート剤に補足され、ゲル化因子としての効力を失うことがある。【0026】また、脱アシル型ジェランガムの水溶解性を高める目的でキレート剤を添加することも可能であり、クエン酸三ナトリウムやメタリン酸ナトリウムが好適に用いられる。例えば、クエン酸三ナトリウムを使用する場合、脱アシル型ジェランガムの10〜100重量%が添加量の目安となる。【0027】本発明の咀嚼・嚥下困難者用食品には、食品原材料は無論のこと、脱アシル型ジェランガム又は寒天、及びサイリウムシードガムの効果を妨げない範囲において、他の食品添加物、例えば、L-アスパラギン酸ナトリウム等のアミノ酸またはその塩、5'-イノシン酸二ナトリウム等の核酸またはその塩、クエン酸一カリウム等の有機酸またはその塩、および塩化カリウム等の無機塩類に代表される調味料;、カラシ抽出物、ワサビ抽出物、およびコウジ酸等の日持向上剤;、シラコたん白抽出物、ポリリシン、およびソルビン酸等の保存料;α、βアミラーゼ、α、βグルコシダ−ゼ、パパイン等の酵素;、クエン酸、フマル酸、コハク酸等のpH調整剤;、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、レシチン等の乳化剤;、香料;、β-カロチン、アナトー色素等の着色料;、カラギナン(κ、ι、λ)、アルギン酸及びアルギン酸塩、LM及びHMペクチン、グアガム、タラガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、水溶性大豆多糖類、サバクヨボギシードガム、コンニャクグルコマンナン、澱粉、化工及び加工澱粉、澱粉加水分解物、キサンタンガム、ラムザンガム、ウェランガム、カードラン、プルラン、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、ガッティガム、微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、カルボキシメチルセルロース塩、メチルセルロース、エチルメチルセルロース、ハイドロキシプロピルセルロース、キチン、キトサン等の増粘剤、ゲル化剤;膨張剤;乳清たん白質、大豆たん白質等のたん白質;ショ糖、果糖、還元デンプン糖化物、エリスリトール、キシリトール等の糖類;スクラロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、アスパルテーム等の甘味料;ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK等のビタミン類;鉄、カルシウム等のミネラル類等を添加することができる。【0028】また対象とする食品としては、水分補給ゼリー、栄養補給ゼリー及びプリン、ミキサー加工食品、うらごし野菜、キザミ食、ムース状食品、高栄養流動食品、及びたんぱく質調整食品等を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。【0029】(2)咀嚼・嚥下補助組成物本発明の咀嚼・嚥下補助組成物は、脱アシル型ジェランガム及び又は寒天と、サイリウムシードガムとを併用してなることを特徴とする。本発明の咀嚼・嚥下補助組成物は、咀嚼・嚥下困難者用食品を製造する際の原料としても使用できるし、任意の既知食品に添加して咀嚼・嚥下困難者用食品とすることもできる。【0030】脱アシル型ジェランガムとサイリウムシードガムの混合物を咀嚼・嚥下補助組成物として使用する場合、その配合量の組合せとして、脱アシル型ジェランガム0.4〜70重量%、サイリウムシードガム30〜99.6重量%(いずれも該組成物中の配合量)、好ましくは脱アシル型ジェランガム1〜35重量%、サイリウムシードガム65〜99重量%、更に好ましくは脱アシル型ジェランガム3〜20重量%、サイリウムシードガム80〜97重量%を挙げることができる。なお、該組成物の食品への添加量は0.05〜3重量%、好ましくは0.08〜2重量%、更に好ましくは0.1〜1.5重量%である。【0031】一方、寒天とサイリウムシードガムの混合物を咀嚼・嚥下補助組成物として使用する場合、その配合量の組合せとして、寒天2〜90重量%、サイリウムシードガム10〜98重量%(いずれも該組成物中の配合量)、好ましくは寒天5〜70重量%、サイリウムシードガム30〜95重量%、更に好ましくは寒天15〜50重量%、サイリウムシードガム50〜85重量%を挙げることができる。なお、該組成物の食品への添加量は0.3〜3重量%、好ましくは0.4〜2重量%、更に好ましくは0.5〜1重量%である。【0032】更に、脱アシル型ジェランガムと寒天を併用し、サイリウムシードガムと合わせて使用する場合は、その配合量の組合せとして、脱アシル型ジェランガム0.2〜35重量%、寒天1〜50重量%、サイリウムシードガム15〜98.8重量%を例示することができる。【0033】これらの咀嚼・嚥下補助組成物は、任意の既存食品に添加することができるが、そのゲル化特性を発揮させるためには、該組成物を溶媒中で分散・溶解し、冷却させるという熱履歴を経ることが望ましい。このように処理することで、脱アシル型ジェランガム及び又は寒天の脆さ、及びサイリウムシードガムの付着性が相互に低減され、食塊形成能及び保水性に優れたゲル状食品を調製することができる。【0034】なお本発明においては、サイリウムシードガムとして、特に食品の外観や嗜好性への悪影響が少ない精製品を使用するのが好ましく、その透過率(波長720nm、濃度1%、温度25℃における測定値)は70%以上であることが望ましい。かかる製品のうち、商業的に入手可能なものとして三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のビストップD-2074」を挙げることができる。【0035】本発明の咀嚼・嚥下補助組成物は、少なくとも上記成分を含有するものであればよいが、本発明の効果を奏する限りにおいて、他に任意の成分を配合することもでき、例えば前述の乳酸カルシウムやクエン酸三ナトリウムを挙げることができる。【0036】本発明の咀嚼・嚥下補助組成物には、その効果を妨げない範囲において、他の食品添加物、例えば、L-アスパラギン酸ナトリウム等のアミノ酸またはその塩、5'-イノシン酸二ナトリウム等の核酸またはその塩、クエン酸一カリウム等の有機酸またはその塩、および塩化カリウム等の無機塩類に代表される調味料;カラシ抽出物、ワサビ抽出物、およびコウジ酸等の日持向上剤;、シラコたん白抽出物、ポリリシン、およびソルビン酸等の保存料;α、βアミラーゼ、α、βグルコシダ−ゼ、パパイン等の酵素;クエン酸、フマル酸、コハク酸等のpH調整剤;ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、レシチン等の乳化剤;、香料;β-カロチン、アナトー色素等の着色料;カラギナン(κ、ι、λ)、アルギン酸及びアルギン酸塩、LM及びHMペクチン、グアガム、タラガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、水溶性大豆多糖類、サバクヨモギシードガム、コンニャクグルコマンナン、澱粉、化工及び加工澱粉、澱粉加水分解物、キサンタンガム、ラムザンガム、ウェランガム、カードラン、プルラン、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、ガッティガム、微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、カルボキシメチルセルロース塩、メチルセルロース、エチルメチルセルロース、ハイドロキシプロピルセルロース、キチン、キトサン等の増粘剤、ゲル化剤;膨張剤;乳清たん白質、大豆たん白質等のたん白質;ショ糖、果糖、還元デンプン糖化物、エリスリトール、キシリトール等の糖類;スクラロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、アスパルテーム等の甘味料;ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK等のビタミン類;鉄、カルシウム等のミネラル類等を添加することができる。【0037】本発明の咀嚼・嚥下補助組成物が対象とする食品は、例えばアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等の冷菓類;牛乳、乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、菜汁飲料、茶飲料、イオン飲料、スポーツ飲料、機能性飲料、ビタミン補給飲料、栄養補給バランス飲料、粉末飲料等の飲料類;カスタードプリン,ミルクプリン及び果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、タフィ等のキャラメル類;ソフトビスケット、ソフトクッキー等の菓子類;セパレートドレッシングやノンオイルドレッシングなどのドレッシング、ケチャップ、たれ、ソースなどのソース類;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ等のジャム類;赤ワイン等の果実酒;シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ等の加工用果実;ハム、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、魚肉すり身、蒲鉾、竹輪、はんぺん、薩摩揚げ、伊達巻き、鯨ベーコン等の水産練り製品;うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ及びワンタン等の麺類;コンソメスープ、ポタージュスープ、クリームスープ、中華スープ等の各種スープ、味噌汁、清汁、シチュウ、カレー、グラタンなどのスープ類;その他、各種総菜及び蒲鉾、麩、田麩等、種々の食品及びこれらの食品を更に加工した、加工食品等も挙げることができる。また、このような一般食品に加えて、蛋白質・リン・カリウム調整食品、塩分調整食品、油脂調整食品、整腸作用食品、カルシウム・鉄・ビタミン強化食品、低アレルギー食品、濃厚流動食、ミキサー食、及びキザミ食等の特殊食品や治療食を挙げることができる。【0038】本発明の咀嚼・嚥下補助組成物の製造方法は、上記の必須成分を含むものであれば特に制限されず、例えば1)リボンミキサーやVブレンダーを用いて粉体で混合する方法、2)水中で加熱することによって溶解、均一分散させ液状とする方法、3)別々に溶液を調製し、使用時に混合する方法、4)溶液化したものをスプレードライ等により分散粉末化する方法、5)粉体で混合し、プレス機で圧縮することにより打錠し、錠剤状にする方法、及び6)溶液化したものを造粒機により、顆粒化して使用する方法等によって調製することができる。【0039】本発明の咀嚼・嚥下補助組成物は、脱アシル型ジェランガム及び又は寒天と、サイリウムシードガムとを必須成分として含有するものであり、食品に適度なゲル構造を付与し、食塊形成能を改良する。また付着性や経時的な物性変化が少ないので高齢者や咀嚼・嚥下補助組成物としては理想的な性状を備えている。更に、サイリウムシードガムとして精製品を使用することにより、食品の外観や味をほとんど損なわないので、嗜好面でも優れている。【0040】【実施例】以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは、「重量部」を意味するものとする。【0041】実験例1(脱アシル型ジェランガムと未精製サイリウムシードガムの併用)(1)ゲルの調製表1に示す処方に従い、ゲルを調製した。具体的には、90℃に加熱した脱イオン水に、脱アシル型ジェランガム、サイリウムシードガムを分散・溶解させた後、予め水に溶解した乳酸カルシウムを添加し、更に90℃で10分間攪拌した。脱イオン水を用いて重量を補正した後、カップ(直径6.2cm、高さ5.4cm)充填し、8℃の恒温水槽中で約1時間冷却してゲルを調製した。得られたゲルは4℃で保存して、各種測定に供した。【0042】(2)ゲルの評価以下の3項目について評価した。なお、いずれも保存1日後にゲルを25℃まで戻して評価した。なお、離水については7日後にも測定した。結果を表1に併せて示す。【0043】1.食感について、ゲルのマトリックス(脱アシル型ジェランガムの食感に近いか、サイリウムシードガムの食感に近いか)を、官能評価により判断した。即ち、脆さが粘りよりも強く感じる場合は脱アシル型ジェランガム(表中の標記はジェラン)、粘りが脆さよりも強く感じる場合はサイリウムシードガム(表中の標記はサイリウム)とした。2.食感について、食塊形成のしやすさを4段階(1: 悪い、2: やや悪い、3: やや良い、4: 良い、5: 非常に良い)で評価した。3.離水について、カップ表面に遊離した水分をペーパータオルでふき取り、重量の減少分から算出した。表中、「<1%」は、離水が1%より低いことを示す。【0044】【表1】【0045】表1より、脱アシル型ジェランガム単独使用区(比較例1〜3)は脆く、食塊のまとまりがないため飲み込みにくかった。サイリウムシードガムを併用すると、脱アシル型ジェランガムゲル特有の脆さが少なくなり、しなやかさが付与されて、食塊がまとまりやすくなった。また、実施例1のゲルのマトリックスは脱アシル型ジェランガムとサイリウムシードガムの中間となったが、このマトリックスが脱アシル型ジェランガムとサイリウムシードガムの中間領域のときに、食塊がまとまりやすく、非常に飲み込みやすい物性となった。【0046】脱アシル型ジェランガム単独使用区(比較例1〜3)では、ゲル表面に離水が発生し、ジェランガム添加量が低いほど離水は多くなった。また、これらのいずれの試料においても、保存により離水は増加した。サイリウムシードガムを併用することにより、目視では殆ど観察できない程度にまで離水は減少し、経時的な変化も認められなかった。【0047】このように、脱アシル型ジェランガム及びサイリウムシードガムを併用したゲルの食感が所望のものとなり、咀嚼・嚥下困難者用食品として優れることが判った。【0048】実験例2(脱アシル型ジェランガムと精製サイリウムシードガムの併用、未精製サイリウムシードガムとの効果比較)(1)咀嚼・嚥下補助組成物の調製脱アシル型ジェランガムとして「ケルコゲル」(シーピーケルコ社製)を、精製サイリウムシードガムとして「ビストップ[商標]D-2074」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、未精製サイリウムシードガムとして「ビストップ[商標]D-2701」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を使用し、下記表2に示す処方に従い、咀嚼・嚥下補助組成物を調製した。【0049】なお、精製サイリウムシードガムとは、未精製のサイリウムシードガムを水に溶解後、例えばイソプロピルアルコールのようなアルコールを用いて沈殿、洗浄、乾燥したもののうち、(2)に示す透過度を有するものを、未精製サイリウムシードガムとは前記のような精製を行わない未精製品を指す。【0050】【表2】【0051】(2)透過率の測定80℃の脱イオン水にサイリウムシードガムを溶解し(濃度1%)、25℃まで冷却した。これを石英セル(光路長1cm)に充填し、波長720nmで脱イオン水をレファレンスとして透過率を測定した。結果を表3に示す。【0052】【表3】【0053】未精製サイリウムシードガムは茶色に着色していたのに対し、精製サイリウムシードガムはわずかに白濁するものの、透明性の高い溶液となった。【0054】(3)ゲルの調製表2に示す嚥下・咀嚼補助組成物を、表4に示す添加量で使用して、ゲルを調製した。具体的には、90℃に加熱した脱イオン水に、表2の組成物を分散・溶解させた後、予め水に溶解した乳酸カルシウムを濃度0.1%になるように添加し、更に90℃で10分間攪拌した。脱イオン水を用いて重量を補正した後、カップ(直径6.2cm、高さ5.4cm)充填し、8℃の恒温水槽中で約1時間冷却してゲルを調製した。得られたゲルは4℃で保存して、各種測定に供した。【0055】(4)ゲルの評価実験例1と同様の3項目及び色調について評価した。なお、いずれも保存1日後にゲルを25℃まで戻して評価した。なお、離水については7日後にも測定した。結果を表4に併せて示す。【0056】1.食感について、ゲルのマトリックス(脱アシル型ジェランガムの食感に近いか、サイリウムシードガムの食感に近いか)を、官能評価により判断した。即ち、脆さが粘りよりも強く感じる場合は脱アシル型ジェランガム(表中の標記はジェラン)、粘りが脆さよりも強く感じる場合はサイリウムシードガム(表中の標記はサイリウム)とした。2.食感について、食塊形成のしやすさを4段階(1: 悪い、2: やや悪い、3: やや良い、4: 良い、5: 非常に良い)で評価した。3.色調について、カップ中のゲルを目視で観察し、4段階(1:あきらかに着色、2:やや着色、3:やや透明、4:透明)で評価した。4.離水について、カップ表面に遊離した水分をペーパータオルでふき取り、重量の減少分から算出した。表中、「<1%」は、離水が1%より低いことを示す。【0057】【表4】(脱アシル型ジェランガムと精製サイリウムシードガムの併用系)【表5】(脱アシル型ジェランガムと未精製サイリウムシードガムの併用系)【0058】脱アシル型ジェランガム及びサイリウムシードガムを併用すると、精製品、未精製品ともに、サイリウムシードガムの添加量の増加に従って、脱アシル型ジェランガムゲル特有の脆さが少なくなり、しなやかさが付与されて、食塊がまとまりやすくなった。ただし、脱アシル型ジェランガムに対するサイリウムシードガムの相対量が多くなると、サイリウムシードガム特有の粘りがでて、若干飲み込みにくくなる傾向となった。【0059】更に、ゲルのマトリックスが脱アシル型ジェランガムとサイリウムシードガムの中間領域のときに、特に食塊がまとまりやすく、非常に飲み込みやすい物性となった。【0060】また、サイリウムシードガムについて、精製品を添加したゲルと未精製品を添加したゲルを比較すると、同一添加濃度において、未精製品添加ゲルは精製品添加ゲルに比べて付着性が強く、若干、のど越しが悪くなる傾向にあった。色調について、未精製サイリウムシードガムでは、添加量の増加に従ってゲルの透明度は低下したが、精製サイリウムシードガムでは外観上の変化は殆ど認められなかった。【0061】また、脱アシル型ジェランガム単独使用区(比較例aの嚥下・咀嚼補助組成物使用品)は保水性が悪く、咀嚼時にゲルの内部から水分が浸出してくるという現象が認められた。精製品、未精製品いずれのサイリウムシードガムの添加によっても、目視観察では殆ど離水が認められない程度にまで保水性は向上し、咀嚼によるゲル内部からの水分浸出も殆どなかった。精製サイリウムシードガム添加区(表4記載)では、保存による離水の増加は殆ど認められなかったが、未精製サイリウムシードガム添加区(表5参照)では、添加濃度0.5%において、保存により離水が増加する傾向が認められた。【0062】本結果から、脱アシル型ジェランガム及びサイリウムシードガムを併用したゲルのうち、特に、表4に示す、脱アシル型ジェランガムと精製サイリウムシードガムとを1:9の割合で混合し、最終食品中に脱アシル型ジェランガム濃度として0.05-0.1%程度添加したゲルが、ゲルマトリックスが「中間」を示し、食塊形成能(飲み込み特性)、外観、及び保水性(経時変化が少ないことも含めて)に優れることが明らかとなった。【0063】更に、未精製のサイリウムシードガムを使用した表5の例であっても、脱アシル型ジェランガムと精製サイリウムシードガムとを約1:6の割合で混合し、最終食品中に脱アシル型ジェランガム濃度として0.2%程度添加したゲルについて、外観は茶褐色に着色するが、ゲルマトリックスが「中間」を示し、食塊形成能(飲み込み特性)及び保水性(経時変化が少ないことも含めて)に特に優れることが判った。【0064】実験例3(寒天と精製サイリウムシードガムの併用)(1)咀嚼・嚥下補助組成物の調製寒天として「ゲルアップ[商標]J-1630」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を、精製サイリウムシードガムとして「ビストップ[商標]D-2074」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を使用し、表6に示す配合処方に従って本発明の咀嚼・嚥下補助組成物(実施例i-m)を調製した。比較として、「ゲルアップJ-1630」のみを使用した組成物(比較例b)を調製した。【0065】【表6】【0066】(2)ゲルの調製表6に示す嚥下・咀嚼補助組成物を、表7に示す添加量使用して、ゲルを調製した。具体的には、90℃に加熱した脱イオン水に、表6の組成物を分散・溶解させ、更に90℃で10分間攪拌した。脱イオン水を用いて重量を補正した後、カップ(直径6.2cm、高さ5.4cm)充填し、8℃の恒温水槽中で約1時間冷却してゲルを調製した。得られたゲルは4℃で保存して、各種測定に供した。【0067】(3)ゲルの評価実験例2と同様に以下の4項目について評価した。なお、いずれも保存1日後にゲルを25℃まで戻して評価した。結果を表7に併せて示す。1.食感について、ゲルのマトリックス(脱アシル型ジェランガムの食感に近いか、サイリウムシードガムに近いか)を、官能評価により判断した。即ち、脆さが粘りよりも強く感じる場合は脱アシル型ジェランガム(表中の標記はジェラン)、粘りが脆さよりも強く感じる場合はサイリウムシードガム(表中の標記はサイリウム)とした。【0068】2.食感について、食塊形成のしやすさを4段階(1: 悪い、2: やや悪い、3: やや良い、4: 良い、5: 非常に良い)で評価した。3.色調について、カップ中のゲルを目視で観察し、4段階(1:あきらかに着色、2:やや着色、3:やや透明、4:透明)で評価した。4.離水について、カップ表面に遊離した水分をペーパータオルでふき取り、重量の減少分から算出した。【0069】【表7】(寒天と精製サイリウムシードガムの併用系)【0070】食感について、寒天単独使用区(比較例bの嚥下・咀嚼補助組成物使用品)は脆く、食塊のまとまりがないため飲み込みにくかった。精製サイリウムシードガムの添加量の増加に従って、寒天ゲル特有の脆さが少なくなり、しなやかさが付与されて、食塊がまとまりやすくなった。【0071】ただし、寒天に対する精製サイリウムシードガムの相対量が多くなると、特有の粘りがでて飲み込みにくくなる傾向となった。ただし、寒天濃度0.5%のときは、精製サイリウムシードガムの添加濃度を1%にまで上げても、特有の粘りは発現せず、寒天に起因する比較的脆い食感のゲルであった。ゲルのマトリックスが寒天とサイリウムシードガムの中間領域のときに、食塊がまとまりやすく、非常に飲み込みやすい物性となった。【0072】色調について精製サイリウムシードガムの添加により、外観上の変化は殆ど認められなかった。【0073】また、離水について精製サイリウムシードガムの添加により、目視観察では殆ど離水が認められない程度にまで保水性は向上し、咀嚼によるゲル内部からの水分浸出も殆どなかった。【0074】本結果から、特に、寒天と精製サイリウムシードガムとを1:(2.5〜3)の割合で混合し、最終食品中に寒天濃度として0.2〜0.3%程度添加することにより、特に食塊形成能(飲み込み特性)、外観、及び保水性に優れた食品を調製できることが明らかとなった。【0075】実施例2〜3:水分補給ゼリー(中性領域)90℃に加熱した脱イオン水に、嚥下・咀嚼補助組成物と粉末緑茶エキスを添加し、90℃10分間攪拌溶解した。嚥下・咀嚼補助組成物に「ゲルアップJ-3857」を使用する系では、更に予め水に溶解した乳酸カルシウムを添加した。脱イオン水を用いて重量を補正した後、カップ(直径6.2cm、高さ5.4cm)に充填し、8℃の恒温水槽中で約1時間冷却した。これを121℃20分間レトルト加熱殺菌して水分補給ゼリーを調製した。【0076】【表8】【0077】嚥下・咀嚼補助組成物の説明・ゲルアップJ-3856:寒天20%と精製サイリウムシードガム60%を含有する組成物・ゲルアップJ-3857:脱アシル型ジェランガム8%、精製サイリウムシードガム70%、クエン酸三ナトリウム5%を含有する組成物・pH測定の説明ホモジナイザーを用い、試料を10倍量の脱イオン水に分散、温度25℃で測定【0078】実施例4:水分補給ゼリー(酸性領域)脱イオン水に、グラニュー糖、嚥下・咀嚼補助組成物及びクエン酸三ナトリウムの混合物を添加し、80℃10分間攪拌した。これに、予め水に溶解した乳酸カルシウム、グレープ果汁、クエン酸(無水)及び香料を順に添加し、更に80℃5分間攪拌した。脱イオン水を用いて重量を補正した後、カップ(直径6.2cm、高さ5.4cm)充填し、8℃の恒温水槽中で約1時間冷却した。これを85℃30分間加熱殺菌して水分補給ゼリーを調製した。出来上がった水分補給ゼリーのpH(ホモジナイザーを用い、試料を10倍量の脱イオン水に分散、温度25℃で測定)は3.6であった。【0079】処方 部グラニュー糖 125倍濃縮グレープ透明果汁 2嚥下・咀嚼補助組成物(ゲルアップ※J-3843*) 1.2クエン酸三ナトリウムF* 0.1乳酸カルシウム 0.05クエン酸(無水)N* 0.18香料(グレープエッセンス No.53572*) 0.2脱イオン水 84.27計 100【0080】・嚥下・咀嚼補助組成物の説明ゲルアップJ-3843:脱アシル型ジェランガム4%、精製サイリウムシードガム85%、クエン酸三ナトリウム0.8%を含有する組成物【0081】実施例5:水分補給ゼリー(中性領域)80℃に加熱した脱イオン水に、精製サイリウムシードガム、寒天、脱アシル型ジェランガム、粉末緑茶エキス及びクエン酸三ナトリウムの混合物を溶解、予め水に溶解した乳酸カルシウムを添加し、更に90℃10分間攪拌した。30℃以下まで冷却して、脱イオン水により重量を補正した後、L-アスコルビン酸ナトリウムを添加した。これをカップ(直径6.2cm, 高さ5.4cm)充填し、8℃の恒温水槽中で約1時間冷却した。最後に121℃ 20分間レトルト加熱殺菌して、水分補給ゼリーを調製した。【0082】出来上がった水分補給ゼリーのpH(ホモジナイザーを用い、試料を10倍量の脱イオン水に分散、温度25℃で測定)は5.9であった。【0083】処方 部精製サイリウムシードガム(ビストップ※D-2704*) 1寒天(ゲルアップ※J-3762*) 0.15脱アシル型ジェランガム(ケルコゲル) 0.05粉末緑茶エキス(FD中国緑茶エキスパウダーNo. 16323*)0.2乳酸カルシウム 0.15クエン酸三ナトリウム 0.05L-アスコルビン酸ナトリウム 0.03脱イオン水 98.37計 100 脱アシル型ジェランガム及び又は寒天と、サイリウムシードガムとを含むことを特徴とする咀嚼・嚥下困難者用食品であって、脱アシル型ジェランガム及び又は寒天と、サイリウムシードガムの混合物を100重量%とした場合、以下(a)〜(c)のいずれかの配合量で含有する、咀嚼・嚥下困難者用食品;(a)脱アシル型ジェランガム1〜35重量%、サイリウムシードガム65〜99重量%、(b)寒天5〜70重量%、サイリウムシードガム30〜95重量%、(c)脱アシル型ジェランガム0.2〜35重量%、寒天1〜50重量%、サイリウムシードガム15〜98.8重量%。 咀嚼・嚥下困難者用食品に対する添加量が、脱アシル型ジェランガム及び又は寒天が0.02〜1重量%、サイリウムシードガムが0.1〜5重量%である請求項1に記載の咀嚼・嚥下困難者用食品。 サイリウムシードガムが、透過率70%以上(波長720nm、濃度1%、温度25℃における測定値)の精製品である、請求項1又は2に記載の咀嚼・嚥下困難者用食品。 脱アシル型ジェランガム及び又は寒天と、サイリウムシードガムとを併用することを特徴とする咀嚼・嚥下補助組成物であって、脱アシル型ジェランガム及び又は寒天と、サイリウムシードガムの混合物を100重量%とした場合、配合量が以下(a)〜(c)のいずれかの範囲内である、咀嚼・嚥下補助組成物;(a)脱アシル型ジェランガム1〜35重量%、サイリウムシードガム65〜99重量%、(b)寒天5〜70重量%、サイリウムシードガム30〜95重量%、(c)脱アシル型ジェランガム0.2〜35重量%、寒天1〜50重量%、サイリウムシードガム15〜98.8重量%。 サイリウムシードガムが、透過率70%以上(波長720nm、濃度1%、温度25℃における測定値)の精製品である、請求項4に記載の咀嚼・嚥下補助組成物。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る