タイトル: | 特許公報(B2)_免疫測定用ラテックス組成物 |
出願番号: | 2003064436 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 33/543 |
元田 昭策 JP 4121400 特許公報(B2) 20080509 2003064436 20030311 免疫測定用ラテックス組成物 デンカ生研株式会社 591125371 谷川 英次郎 100088546 元田 昭策 20080723 G01N 33/543 20060101AFI20080703BHJP JPG01N33/543 583 G01N 33/48-98 特開平09−236602(JP,A) 特開2000−206115(JP,A) 特開2002−340899(JP,A) 特開平10−248559(JP,A) 特開2000−221196(JP,A) 特表平06−017911(JP,A) グッドの緩衝液,生化学辞典,1992年12月 1日 5 2004271416 20040930 9 20060220 青野 佳子 【0001】【発明の属する技術分野】検体中の抗原又は抗体を測定する免疫測定法として、ラテックス粒子を用いたラテックス凝集法、ラテックス粒子を用いたフロースルー免疫測定法並びにラテラルフロー免疫測定法等が実用化されている。ラテックス凝集法は測定すべき抗原又は抗体に対応する抗体又は抗原をその表面に吸着させたラテックス粒子が用いられる。このようなラテックス粒子は緩衝液等の媒体中に浮遊され、これに検体が加えられる。検体中の抗原又は抗体と、これと対応するラテックス表面上の抗体又は抗原とが抗原抗体反応を起こし結合する。検体中の抗原又は抗体は、抗原抗体反応部位を通常複数有するので検体中の抗原又は抗体を介してラテックス粒子が架橋され凝集する。この凝集の程度は、検体中の測定すべき抗原又は抗体の量に比例するので、この凝集の程度を見ることによって検体中の抗原又は抗体を測定することができる。通常、凝集の程度は検体と対応する抗体又は抗原を結合させたラテックス粒子浮遊液との混合物を肉眼的に観察して測定、また、分光光度計などの専用の分析機器によって測光することにより、簡単に行うことができる。これらの方法は、測定方法が簡単で感度が高く、一般的に広く用いられている。【0002】ラテックス凝集法に用いられる抗体又は抗原が表面に結合されたラテックス粒子は、ラテックス粒子の自然凝集を防止する目的の水溶性化合物とpH緩衝能を有する水溶性化合物とを溶解した水溶液に浮遊された状態で保存される。すなわち、媒体としての緩衝液に更に自然凝集防止剤を添加した状態で用いられている。自然凝集を防止する化合物としては1分子内にアミノ基を2個以上有するアミノ酸(特公平6−17911号公報)、塩化コリン、多価アルコール等が用いられている。他方、媒体としての緩衝液はグリシン緩衝液、リン酸緩衝液、トリス緩衝液等が用いられている。さらに、塩濃度調整のために塩化ナトリウム、安定剤としてウシ血清アルブミン、ゼラチン、サッカロース等が適宜添加される。【0003】このように自然凝集を防止する化合物と緩衝能を保つための化合物をそれぞれ使用しているため、そのぶん試薬組成が複雑となり、また比重や粘度が上昇するため検出感度に影響を及ぼす等の欠点があった。【0004】【特許文献1】特公平6−17911号公報【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、優れた自然凝集防止効果を発揮する、新規な自然凝集防止剤を含む免疫測定用ラテックス組成物を提供することである。また、本発明の目的は、緩衝剤を別途用いなくてもpH緩衝能を有する免疫測定用ラテックス組成物を提供することである。【0006】【課題を解決するための手段】本願発明者は、鋭意研究の結果、グリシンアミドが、免疫測定用ラテックス粒子の自然凝集を効果的に防止することができることを見出し、本発明を完成した。また、本願発明者は、上記グリシンアミドに加え、さらに塩基性の金属水酸化物を加えることにより、組成物がpH緩衝能を獲得し、別途緩衝剤を添加しなくてもpHをほぼ一定に保持することができることを見出した。【0007】すなわち、本発明は、抗体若しくはその抗原結合性断片又は抗原を結合させたラテックス粒子と、これを浮遊させる媒体とを含む免疫測定用ラテックス組成物において、グリシンアミドを組成物全量に対し0.8ないし4.5Mの濃度で含有することを特徴とするラテックス組成物を提供する。また、本発明は、上記本発明のラテックス組成物において、塩基性の金属水酸化物をさらに含み、pH緩衝能を有するラテックス組成物をも提供する。【0008】【発明の実施の形態】この発明のラテックス組成物は、表面に抗体若しくはその抗原結合性断片又は抗原が結合されたラテックス粒子と、該ラテックス粒子を浮遊させる媒体とを含むラテックス組成物に、ラテックス粒子の自然凝集防止の目的でグリシンアミドを含有させたものである。なお、ここで、「抗原結合性断片」とは、抗体のF(ab)断片やF(ab')2断片等のように、対応抗原と抗原抗体反応可能な断片である。これらの抗体断片も抗体と同様に用いられている。この発明の組成物中のラテックス粒子、これに吸着される抗体若しくはその抗原結合性断片又は抗原、及び、これを浮遊させる媒体並びにそれらの組成物中のグリシンアミド以外の含量はこの発明にとって何ら特徴的なものではなく、従来から用いられているいずれのものをも用いることができる。従って、これらの説明は省略する。【0009】この発明に用いられるグリシンアミドは、分子式がH2NCH2CONH2で表される化合物であり、酸付加塩(例えば塩酸塩)のような塩の形態にあってもよい。この発明の組成物に含まれるグリシンアミドの濃度は、0.8ないし4.5Mであり、好ましくは0.8ないし3Mである。グリシンアミドの濃度が低過ぎると組成物を長期間保存した場合、自然凝集が生じるため、この組成物を用いて測定を行うと正確な測定結果を得ることができない。一方、グリシンアミドの濃度が高過ぎると測定感度が低下する。また、グリシンアミドの濃度が4.6Mを超えるとグリシンアミドの結晶が生じ正確な測定に支障をきたす。【0010】グリシンアミドに加え、さらに、塩基性の金属水酸化物を添加することにより、組成物にpH緩衝能が付与され、別途緩衝剤を用いる必要がなくなるので、有利である。塩基性の金属水酸化物としては、特に限定されないが、アルカリ金属水酸化物が好ましく、特に水酸化ナトリウムが好ましい。塩基性の金属水酸化物の添加濃度は、組成物が所望のpHを達成する濃度が好ましく、通常、組成物が弱塩基性になる濃度、好ましくは組成物のpHが約7.4〜9.0になる濃度である。なお、グリシンアミド及び塩基性の金属水酸化物を含む本発明のラテックス組成物は、別途緩衝剤を添加しなくても実用上支障のないpH緩衝作用を発揮するが、測定に悪影響が生じない範囲で別途緩衝剤を添加して用いることも可能である。【0011】この発明のラテックス組成物の使用方法は、従来のラテックス組成物の使用方法と全く同じである。すなわち、検体と組成物とを混合し、反応させ、それによって生じるラテックス粒子の凝集の程度を、肉眼的に観察して測定、あるいは専用の分析機器を用いて測光することによって測定するのである。より具体的な測定法としては平板を用いて行うスライド法、マイクロプレートを用いて行うプレート法、専用分析機器を用いて行う自動分析法が例として挙げられる。更には着色ラテックスを用いたフロースルー免疫測定法、ラテラルフロー免疫測定法等も例として上げられるが、これらに限定されることなく、抗体若しくはその抗原結合性断片又は抗原を固定化したラテックス粒子を用いる免疫測定法に広く使用され得るものである。【0012】【実施例】以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。【0013】実施例1抗ヒト免疫グロブリンE抗体(マウスモノクロ−ナル抗体、デンカ生研製)を粒径0.266μmのラテックス粒子(積水化学製)に結合させ、グリシンアミド塩酸塩(アルドリッチケミカル製)0.5〜4.5M、pH7.6となる量の水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム 0.1M、ウシ血清アルブミン 0.1w/v%、アジ化ナトリウム0.085w/v%を含む水溶液にラテックス粒子の濃度が0.12w/v%になるように浮遊させた。これらの浮遊液を4〜8℃で長期間保存した。長期間保存における自然凝集・沈殿の有無を肉眼的に観察した。グリシンアミド 0.6M以下では90日間の内に自然凝集・沈殿が認められたが、0.7Mでは90日間、0.8Mでは360日間、0.9M以上では540日間保存しても自然凝集・沈殿はまったく認められず、ラテックス粒子は均一に分散していた。その結果を下記表1に示す。【0014】【表1】表1 自然凝集・沈殿の有無−;自然凝集・沈殿なし+;自然凝集・沈殿あり【0015】実施例2実施例1と同様にして、粒径0.266μmのラテックス粒子に抗ヒト免疫グロブリンE抗体(マウスモノクロ−ナル抗体)を結合させ、グリシンアミド塩酸塩 1.5M、pH7.6となる量の水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム 0.1M、ウシ血清アルブミン 0.1w/v%、アジ化ナトリウム 0.085w/v%を含む水溶液にラテックス粒子の濃度が0.12w/v%になるように浮遊させた。グリシンアミドの存在により測定精度が落ちないことを示すために以下の実験を行った。【0016】種々の濃度既知ヒト免疫グロブリンEの生理食塩水溶液3μLに、塩化ナトリウム 0.1Mを含む0.17M グリシン緩衝液(pH7.6)200μL、抗ヒト免疫グロブリンE抗体(マウスモノクロ−ナル抗体)を結合させた粒径0.266μmのラテックス粒子浮遊液(0.12w/v%)100μLを加え、37℃で反応させ,吸光度変化率を波長572nmで測定して検量線を作成し、次いで,検体として種々の未知濃度のヒト免疫グロブリンEを含むヒト血清を用いて上記と同様な操作を行い検量線から検体中のヒト免疫グロブリンE濃度を求めた。上記の操作工程は自動化学分析装置(東芝TBA−30R)を用いて行った。【0017】一方、従来から広く用いられているラテックス凝集法試薬を用いて同検体について測定を行い、上記の発明の方法により得られた結果と比較した。上記2法による測定値の相関図を図1に示す。【0018】この相関図の相関係数は0.9967、回帰式はy=0.9992x−4.141であり,上記2法による測定値がほぼ完全に一致していることがわかる。すなわち、本発明の組成物を用いた場合、グリシンアミドの存在により測定精度に悪影響がおよぼされないことが明らかである。【0019】実施例3定性法として用いられているスライド凝集法で実験を行った。粒径0.3μmのラテックス粒子(積水化学製)に抗病原大腸菌O157抗体(マウスモノクロ−ナル抗体、デンカ生研製)を結合させ、グリシンアミド塩酸塩 1.8M、pH8.0となる量の水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム 0.1M、ウシ血清アルブミン 0.2w/v%、アジ化ナトリウム 0.085w/v%を含む水溶液にラテックス粒子の濃度が0.5w/v%になるように浮遊させた。試験用抗原として、病原大腸菌O157の菌体懸濁液を100℃、10分間加熱処理した後、2000G、5分間遠心して、この上清を用いた。菌体を含まないものを陰性対照とした。【0020】試験法スライド凝集試験用板に抗原50μLを乗せ、次に抗体結合ラテックス粒子浮遊液25μLを加えて室温で3分間緩やかに撹拌し、凝集の有無を肉眼で観察した。一方、従来から広く用いられているスライドラテックス凝集法試薬を用いて同検体について測定を行い、上記の発明の方法により得られた結果と比較した。その結果を下記表2に示す。【0021】【表2】表2判定基準+++ : 強い凝集が見られるもの− : 凝集が見られないもの【0022】表2に示されるように、本発明の組成物を用いた場合、グリシンアミドの存在により測定精度に悪影響がおよぼされないことが明らかである。【0023】実施例4フロースルー免疫測定法で実験を行った。粒径0.290μmの青色ラテックス粒子(CM/BL、セラダイン製)に抗A型インフルエンザウイルス抗体(マウスモノクロ−ナル抗体、デンカ生研製)を共有結合させ、グリシンアミド塩酸塩 1.5M、pH8.0となる量の水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム 0.2M、ウシ血清アルブミン 0.2w/v%、アジ化ナトリウム 0.085w/v% を含む水溶液にラテックス粒子の濃度が0.01w/v%になるように浮遊させた。【0024】デバイスニトロセルロース膜(AE100、ポアサイズ12μm、S&S製)上に直径約4mmになる量の抗A型インフルエンザウイルス抗体(マウスモノクロ−ナル抗体;上記と別のクローン、デンカ生研製)液を滴下して、減圧下で良く乾燥させて抗体を固相化した。この膜を厚手の濾紙の上に重ねてフロースルー免疫測定用容器に組み込んでデバイスを作製した。【0025】測定検体としてA型インフルエンザウイルス抗原、B型インフルエンザウイルス抗原をそれぞれ用いた。インフルエンザウイルス抗原をウシ血清アルブミン 3w/v%並びにポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート 2w/v%に加えた50mM トリス緩衝液、pH8.0で10倍希釈した。希釈したインフルエンザウイルス抗原500μLに抗A型インフルエンザウイルス抗体結合ラテックス粒子浮遊液500μLを加えて良く混ぜて全量をデバイスのサンプルウエルに入れた。判定は10分後に下記の方法で行った。【0026】判定および結果判定は抗A型インフルエンザウイルス抗体を固相化した部分への抗原抗体反応によるラテックス粒子の付着による着色の有無を肉眼で観察して行った。その結果を表3に示す。【0027】【表3】表3判定基準+ : 青の着色が見られるもの− : 青の着色が見られないもの【0028】A型インフルエンザウイルス抗原は陽性でB型インフルエンザウイルス抗原は陰性となり特異的にA型インフルエンザウイルス抗原を検出できることが確かめられた。【0029】実施例5ラテラルフロー免疫測定法で実験を行った。粒径0.290μmの青色ラテックス粒子(CM/BL、セラダイン製)に抗A型インフルエンザウイルス抗体(マウスモノクロ−ナル抗体、デンカ生研製)を共有結合させ、グリシンアミド塩酸塩 1.5M、pH8.0となる量の水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム 0.2M、ウシ血清アルブミン 0.1w/v%、アジ化ナトリウム 0.085w/v%を含む水溶液にラテックス粒子の濃度が0.015w/v%になるように浮遊させた。【0030】デバイスニトロセルロース膜(ポアサイズ12μm、AE100、S&S製)を幅20cm、高さ1.2cmに切り、接着剤を塗布した厚さ約0.2mm、大きさ20cm×3.5cmのプラスチック板に下端をよく合わせて貼り付け、更に残りの接着剤塗布部分に20cm×2.6cmの大きさの濾紙(No.590、アドバンテック製)をニトロセルロース膜に3mm重ねて貼り付けた。このニトロセルロース膜の下端から0.6cmの位置に太さ約1mm幅になる量の抗A型インフルエンザウイルス抗体(マウスモノクロ−ナル抗体;上記と別のクローン、デンカ生研製)液で20cmの線を描き、減圧下で良く乾燥させて抗体を固相化した。つぎに、カッターで幅5mmの短冊に細切してデバイスを作製した。【0031】測定検体としてA型インフルエンザウイルス抗原、B型インフルエンザウイルス抗原をそれぞれ用いた。インフルエンザウイルス抗原をウシ血清アルブミン 3w/v%並びにポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート 2w/v%に加えた50mM トリス緩衝液、pH8.0で10倍希釈した。平底マイクロプレートのウエルに希釈したインフルエンザウイルス抗原40μL並びに抗A型インフルエンザウイルス抗体結合ラテックス粒子浮遊液40μLを入れて良く混ぜ、つぎにデバイスの下端を液に浸して立て反応させた。判定は15分後に下記の方法で行った。【0032】判定および結果判定は抗A型インフルエンザウイルス抗体を固相化した部分への抗原抗体反応によるラテックス粒子の付着による着色線の有無を肉眼で観察して行った。その結果を表4に示す。【0033】【表4】表4判定基準+ : 青の着色が見られるもの− : 青の着色が見られないもの【0034】A型インフルエンザウイルス抗原は陽性でB型インフルエンザウイルス抗原は陰性となり特異的にA型インフルエンザウイルス抗原を検出できることが確かめられた。【0035】【発明の効果】この発明の免疫測定用ラテックス組成物は、長期間保存してもラテックス粒子の凝集が起こらない。従って、長期間保存後も検体中の抗原又は抗体を精度良く測定することができる。また、塩基性の金属水酸化物を含む本発明のラテックス組成物は、pH緩衝作用を発揮するので、別途緩衝剤を添加することが不要であり、試薬組成を単純化することができ、また比重や粘度が従来の組成物のように上昇することを回避することができる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の組成物を用いた免疫測定方法と、従来法による免疫測定方法により、試料中の免疫グロブリンEを測定した値の相関図である。 抗体若しくはその抗原結合性断片又は抗原を結合させたラテックス粒子と、これを浮遊させる媒体とを含む免疫測定用ラテックス組成物において、グリシンアミドを組成物全量に対し0.8ないし4.5Mの濃度で含有することを特徴とするラテックス組成物。 前記グリシンアミドの濃度が0.8ないし3Mである請求項1記載のラテックス組成物。 塩基性の金属水酸化物をさらに含み、pH緩衝能を有する請求項1又は2記載の組成物。 前記金属水酸化物がアルカリ金属水酸化物である請求項3記載の組成物。 前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムである請求項4記載の組成物。